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ここだけホビーバトル大会 その1

1o7SK7L7zxJvm:2017/09/01(金)21:17:47 ID:ZyY()
時は現代より少しだけ近未来、世界を熱狂させるホビーバトルの世界大会が今年も開催されようとしていました。
そしてあなたは大会が開催されるこの地へと訪れました。かけがえのないパートナーと共に、この大会で優勝する為に。
それは栄光の為に、賞金の為に、約束の為に、夢の為に……理由はそれぞれでしょうが、立ち塞がるのは数多くのライバル達。
この大会が終わった時、誰が勝利の栄光を手にするのか……それはまだ、誰にもわかりません。


・大会について
World Hobby Battle Tournament……略して WHBT。一年に一度、数ヶ月に渡って開催されるホビーバトルの祭典です。
巨大な会場内では幾つものドームで連日競技が催され、それ以外にも数々の催し物や大会参加者向けの宿泊施設も存在しています。
ただし最大の会場となるメインアリーナは本戦の開始までは解放されず、そのアリーナには大会優勝者に送られるトロフィーも安置されています。


・バトルシステムとホビーついて
フィールドはバーチャルグラフィックで対戦の度に形成され、その内容は地上から宇宙まで、市街地から火山地帯まで自在に用意することが可能です。
またフィールド内ではホビーの耐久値は数値として可視化され、相手の耐久値を0にすることがこの競技の勝利条件となります。
貴方はホビーを実際に操縦しても、戦闘は機体AIに任せて自分はサポートに回っても構いません。その戦い方は全て貴方次第です。
またバトルでホビーが負った損傷は実際のダメージとしてフィードバックされます。ただ戦うだけでなく、修理や改修もこの競技の要の一つなのです。

レギュレーションで定められた、大会で使用可能なホビーは三種類存在します。
人型ロボット模型として展開する『闘機』シリーズ。
獣型ロボット模型として展開する『鋼獣』シリーズ。
美少女ロボット模型として展開する『戦姫』シリーズ。
どれもサイズは平均として10〜20cm、また全てのホビーには最高で人間と同等の知能を有するAIを搭載することが可能となっています(『戦姫』のみAIはデフォルトで搭載)。
ホビーの性能はその完成度に依存します。例え強力な武装であっても作り込みが甘ければ性能が発揮されることはなく、その逆も当然あり得ます。
またAIを搭載した機体であれば競技中でなくとも自立稼働が可能となっており、 AIを搭載せずともバトルシステムを流用すれば競技外での駆動は可能でしょう。


キャラシート1(キャラクター)
【名前】キャラクターの名前
【性別】キャラクターの性別
【年齢】キャラクターの年齢
【風貌】キャラクターの風貌
【概要】キャラクターの概要

キャラシート1(ホビー)
【名前】ホビーの名前
【シリーズ】『闘機』/『鋼獣』/『戦姫』のいずれか
【風貌】ホビーの風貌
【装備】ホビーの装備
【概要】ホビーの概要

雑談スレ
http://kohada.open2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1504192694/
2o7SK7L7zxJvm :2017/09/01(金)21:18:46 ID:ZyY()
World Hobby Battle Tournament……略して WHBT。一年に一度開催されるホビーバトルの祭典であり、最強のホビーの座をかけて多くのプレイヤーが凌ぎを削る。
そこには必ずやドラマがある。勝利の栄光があれば敗北の挫折があり、夢を叶える者が存在すれば夢破れる者も存在する。

けれども、今は大会が開催される直前の期間。競技の会場となる幾つものドームはまだどれも解放されておらず、戦いの火蓋はまだ切られてはいない。
けれども会場は既に多くの人々で賑わっている。多くの屋台や催し物が開かれ、大会の参加者もそうでない者もこの”お祭り“を心から楽しんでいる。
また、大会が待ちきれないのか、至る所で野良バトルが行われており、その周囲では観戦する人々で小さな人だかりもできていた。

大会はまだまだ、始まってすらいない。けれども皆の熱気は、闘志は、既に熱く燃え盛っている!!
3瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/01(金)22:29:37 ID:ZyY()
大会会場である広大な敷地は、どこもかしこも人々と活気に満ち溢れていた。
例えば美味しそうな香りを漂わせる屋台の数々、一般客向けの大道芸やパフォーマンス、そして模型の製作体験会なんてものまで開かれている。
この辺り一帯が巨大なお祭りの舞台となっていた。大会競技そのものはまだ開催されていないにも関わらず、伝わる熱気は凄まじいものだった。

「……ああっ!?すいません通してもらっても……ってうわっとっと!!?」

そんな活気の中、人混みの中を掻き分けるようにして、少女は街道を進んでいく。
しかし小柄な彼女の体では人並みにさらわれないようにするのが精一杯で、片手に握った地図を見る余裕なんてなかったらしく。

やがて彼女がなんとか辿り着いたのは小さな広場。木製のベンチやお洒落な噴水が存在し、自分と同じように人混みから逃れた人々が休息している、そんな場所。
そして彼女もまた人々と同じようにベンチの一つに腰を下せば、大きなため息を一零した。インドア派な人間にとって、この環境は少々過酷だった。

「は……どこでやってるんだろ。この人混みじゃあ目的の場所さえよくわかんないや」

現在地もよくわからず、くしゃくしゃになった地図をひらひらと団扇代わりに扇ぎながら、そんな愚痴をぽろりと零す。
当然、独り言で答える相手などいるはずもない……筈なのだが、彼女の言葉に答えるものが存在した。それは彼女の懐から『ワオン』と鳴き声を発していた。
そしてそれは次の瞬間、彼女の懐からぴょんと飛び出して姿を現す……その正体は純白の狼型『鋼獣』、彼女こと瑞樹 カナデのパートナー。

「あはは〜シルバーもごめんね。大会はまだ開催されてないから、戦うのはもう少し後。それまでは我慢していてね」

『ワンっ』

そう答えた手乗り狼は、カナデの肩に飛び移れば器用に丸くなって寛ぐ様子を見せる。まるで気にするなと言わんばかりに。
一人と一匹……もとい一人の一機、彼女たちは一般客ではなくこの大会に参加するために訪れたプレイヤーであり、同じようなプレイヤーが既にこの会場には何人も存在していた。
しかしこれからどのような出会いが、どのような物語が始まるかはまだ誰にも分からない。
4佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/01(金)22:55:14 ID:gnm
>>3

「うぅ~…こ、この人混みはっ…死にますっ…死んでしまいますぅ…」

人混みに揉みくちゃにされながら、そんな情けない声をあげて流されているのは少女だった。
ひ弱そうな見た目の通り、人混みの流れに逆らおうとはしているものの到底叶うはずがなく。

そうしてやっと放り出された場所は小さな広場だった。目的の場所とはほど遠く、しかしあの人混みにもう一度揉まれるというのは流石に遠慮したい。
どうやらここは自分と同じような人たちで溢れているようでベンチに座って休憩している人が沢山いるようだ。
ならば自分も少し休憩しようと適当なベンチに腰掛ける。

『マスターは相変わらずだ、もう少し体力を付けたらどうだ?』

「う、うるさいなぁ…だって仕方ないでしょ…こんな人混みじゃあ……」

カバンの中から聞こえてくる声に渋々とそう答える。知らない人から見れば変人に見えるが、その声はミナホが出した声では決して無い。
そんなことを話していると、隣から何やら犬のような鳴き声が聞こえてくる。確か近くに犬は居なかったのにとチラリと隣を見ればそこには見たことのあるフォルムの狼が少女の肩に乗っていた。
あれは確か『鋼獣』シリーズのシルバーウルフ…でも少しシルエットが違うような……

『ほう、どうやら隣の女人も参加者なのではないか?』

「そうなのかな…って外ではあまり出たらダメって言ったでしょっ!もしも迷子とかになっちゃったらっ………」

いつの間にか膝の上に立っていたのは『戦姫』シリーズの忍者を彷彿とさせる姿。今は武装は外していて装甲も必要最低限までしか付けていないようだ。
とそこまで言ったところで自分がかなりの大声を出していたことに気付き慌てて隣を見る。

「す、すいませんっ…大声、出してしまってっ……」

オドオドとした様子でそんな風に謝るのだった。
5瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/01(金)23:21:08 ID:ZyY()
>>4

「……ん?どうしたのシルバー」

丸まっていた筈のシルバーウルフがいつの間にか立ち上がり、ある一点をバイザー越しに見つめていた。そして大声に釣られてカナデも視線を移したなら。
そこには一人と一機の姿があった。相手は慌てて何やら謝っているようだったが、その瞬間にカナデの興味は一人ではなく一機の方に釘付けにされていた。
ベンチから立ち上がると、つかつかつかと駆け足で間合いを詰める。そしてじっと見つめる先は、彼女の膝の上にいる『戦姫』。その瞳はキラキラと輝いていて。

「おおー!!『戦姫』シリーズの改造機体!!いいないいなあ、この娘は貴方が作ったんだよね?こうしてみるとやっぱり可愛いなー
 ふむふむふむ……武装は外してあるのかな、それとも素体のみの作例?あー肌の仕上げが丁寧でいいなあこれ!!トップコートはどうしたの?それからそれからーーー」

瑞樹カナデはモデラーであるが基本的に『鋼獣』シリーズしか触らない。しかしその理由は個人の拘りであり、他のシリーズに関心がないという訳でもない。
作品の良し悪しを図るだけの審美眼はあるつもりで、それが力の籠った作品であるなら興味が湧かない筈がない。そうして気がつけばマシンガンの如き言葉の雨を発していた。
無論、悪気はない。ただホビーのことになると歯止めが効かなってしまうだけなのだ。ただしそんな態度を相手が好意的に受け取ってくれるかは別問題で。

『ワン』

「———あ痛っ!!?」

見かねシルバーウルフが肩から飛び上がると、そのままカナデの後頭部に軽い蹴りをいれた。
結構痛かったのか、そのまま彼女は黙って頭を抱えて蹲る。くるりと回転して地面に着地したウルフはといえば涼しい顔を浮かべるだけ。
表情なんてないのだが、実際にそういう態度なのだから仕方ない。そうしてバイザー越しにミナホと戦姫を見つめる狼はまるで『すまないね』とでも言っているようだった。

「……はい、ごめんなさいシルバー。また我を忘れてしまいました」

「ええっと……始めまして。貴方もこの大会の参加者ということでい……宜しいでしょうか?」

反省した様子のカナデもやがて立ち上がったなら、改めて丁寧語でそう尋ねるだろう。
いつの間にかシルバーウルフも肩の上に戻っていて、どうやらそこが彼にとっての定位置のようだった。
6佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/01(金)23:43:03 ID:gnm
>>5

「えっ、あっ、うっ、えっとっ…!!?」

そのさながらマシンガンのような剣幕に圧倒されまともな言葉が出てこない。普通の人でも圧倒されそうなのにそれがミナホともなれば言葉さえ返すことはできないほど。
しかしその場を救ってくれたのはまさかの少女の肩に乗っていたシルバーウルフだった。

(うぅ怖いぃ…こんな人ばっかりなのかな……)

ミナホが抱くその第一印象は「怖い人」で決定したらしい。あのシルバーウルフには本当に感謝しないといけない。
気を取り直して、一旦深呼吸をするとさきほどとは打って変わって丁寧に話し始めた相手に返す言葉を探す。
他人と話すときはしっかりと目を見て話す。そう教わった通りにじーっと相手の目を見つめながら自己紹介。

「は、はいっ…さ、佐々木部ミナホと、申しますっ…」

『相変わらずなマスターだ、私はシラヌイと言う。こちらのマスターは小心者の人見知りでな、大目に見てもらえると助かる』

「ち、ちょっとシラヌイっ…!」

シラヌイの発言に顔を真っ赤にしながらシラヌイに文句を言う。主人に対して相変わらずの口調だがそういう性格なのだから仕方がない。
むしろこんな風に言ってくれるものが近くにいたほうがやりやすいのかもしれなかった。

「じゃあ…やっぱりあなたも参加者、なんですね…そ、さっきそのシルバーウルフが目に入って……カスタム機、ですか…?」
7瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/02(土)00:08:54 ID:vuU()
>>4

「私は瑞樹カナデ、学生とモデラーやってます。で、こっちは私の相棒のシルバー
 そう!!ご覧の通り『鋼獣』シリーズの名作キット、シルバーウルフのオリジナルカスタム機。今回はこの子と一緒に大会に参加するつもりなのです!!」

『ワン』

改めて自己紹介をすれば、それに応じるようにシルバーウルフも一鳴きして挨拶する。人語を発さない動物型といっても感情豊かなAIのようだった。
カナデはというとうずうずと相手の戦姫について色々と尋ねたいようだったが、口を開けば先ほどのようになるのが目に見えているので自重する。
というか、自重しなければシルバーウルフの蹴りが再び炸裂するだけなので、したくてもできないと表現するのが正しかったが。

しかしシルバーウルフについて尋ねられれば、今度は別の意味でその瞳を輝かせる。
モデラーであるならば、自分の作った作品に関心をもたれて嬉しくない筈がない。そして彼女はシルバーを掌にの上に乗せたなら、楽しそうに語り出す。

「ふふふ……やっぱり気になる?実はこの子は私の一番の自信作でねー
 元々スタイルの良いキットだからプロモーションを損なわないように調整して、追加装甲も稼働に極力干渉しないように工夫したんだ。いやー大会に間に合ってほんと良かった!!」

シルバーウルフ、『鋼獣』シリーズとしては初期の品でありながらシャープなプロモーションと優れた稼働範囲で今も尚色褪せない名作と呼ばれるキット。
そのキットに惚れ込んだ彼女が、この大会の為に多くの時間と努力を費やして作り上げたのがこの作品、シルバーウルフ・カスタムである。
それを掲げる彼女はとても誇らしげで、そして嬉しそうで、最も肝心のシルバーウルフはというと眠たげに欠伸をしているのだったが。

「けれども貴方の機体……えっと、シラヌイちゃんだね。その子もよくできてるね
 私は普段『鋼獣』以外は作らないからさ、こうして力の籠った『戦姫』を見る機会なんてなかなかなかったんだよねー」

そういった出逢いを求める意味でも、この大会に参加する意味があったと付け足せば、カナデは楽しそうに微笑んだ。
彼女は模型熱さえ発症しなければ、明朗快活で大まかな性格の少女であることに違いないのだった。
8佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/02(土)16:05:17 ID:u9P
>>7

「み、瑞樹さんとシルバーさん…ですねっ…よろしく、です…」

『カナデ殿に銀狼か、こちらは見てわかる通り私が出場するつもりだ』

今は武装や装甲は外しているが、それらを装着すればたちまちに戦闘ができる状態になる。
ミナホもまだビクビクとはしているもののだいぶ会話に慣れてきたのか最初よりかはスムーズに会話が進んでいる。シルバーウルフがカナデを制止してくれているのも大きいだろう。

「凄いですね…私は戦闘用に組んだのは初めてなんです…普段は観賞用でしか作らなくて……」

元々プラモ作りは趣味でやっていたことで誰かに見せようなどはしたことがない。モデラーとして有名になる人も居るのだろうがそんなことには興味は無く、故に今目の前にいるのが学生モデラーとして有名な人物だということを知る由もない。
だがこのシルバーウルフの完成度はよく分かる。しっかりと細部まで作り込まれていてなおかつ戦闘に支障が出ないように配慮されている。昨日今日で作れるものでは無く作品への愛が感じられる。そう思えば誇らしげに語るその姿はどことなく親しみを感じられるものだ。

「う、うん…今は素体のままだけど……んしょっと…」

そう言ってカバンの中から取り出したのは何やらおしゃれな文字で『SHIRANUI』と書かれたケースのようなものを取り出した。

「この中に武装と装甲が入ってるの、普段は付けたままだとシラヌイも大変かなって……」

『そんなことは無いのだがな、我がマスターは心配性だ』

微笑むカナデにまだぎこちないながらも笑顔を返す。
最初の「怖い人」という評価は撤回だ。この人は「良い人」なんだから。
9瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)01:27:49 ID:gTq()
>>8

「初の戦闘用モデル……つまりあなたにとってこの大会はデビュー戦でもあるということだね
 ああ、いいなあ……ここからまた新たなモデラーが一人、過酷ながらも華やかなバトルの道に踏み出すという訳なんだね……」

『ワン』

シルバーの鳴き声はやはり人に理解できる言語ではなかったが、それでも“何バカなこと言ってるんだ”みたいなニュアンスは伝わるだろう。

この調子でやや自分の世界に篭り気味なカナデであったが、その本音は自分と同じように模型に対して情熱を持った人と知り合えたと言うことが嬉しくて仕方がないというシンプルな感情だった。
目の前の彼女がシラヌイに籠めた想いというのは、その丁寧な作り込みを見れば言われずとも理解できる。肌の仕上げ、丁寧な化粧、強さよりも可愛らしさが伝わる作り込みは、彼女の作品愛に他ならない。
そして、自分の作品に愛や情熱を込められる人間に悪い人間はいない……この出会いはそれだけで、この大会に訪れる価値があったと言えるものだった。

「武装も見せて……っていう訳にはいかないね。何せ、大会はまだまだこれからなんだから」

「あっ、装甲に関してはシルバーだって凄いんだよ!!。今は最低限の追加装甲しか装着してないけど実践ではもっとたくさんの増加装甲にブースターも……あっ、あとは大会でのお楽しみで!!」

実践となればまた別の姿を見せるのはお互い同じ。それぞれにおいて全く別の顔が見られるのがこの大会の醍醐味であり、製作者の拘りポイントでもある。
このシルバーウルフだって、今でこそペットの犬のような態度を見せているものの、いざ戦いとなれば優秀な猟犬……否、狼となって戦場を駆ける予定なのだ。
それは彼女だって、シラヌイだって同じだろう。ここにいるということは、同好の士であると同時にこれから凌ぎを削りあうライバルなのだから。

「これ、私の連絡先!!もしよかったら何時でも連絡してね
 大会中は基本会場で遊んでいるか模型弄ってるかバトルしているからだし、よかったら何時でも遊ぼう!」

そうしてカナデはモデラー名義の名刺を差し出し、押し付けるように渡すだろう。
そもそも彼女は遠方からこの会場に訪れている身であり、参加者用の宿泊施設を利用していることもあって大会中はこの会場にずっといるつもりだった。
だから、なにかあったら連絡してね、なんでも力になるからと告げて微笑んだ……次の瞬間。

「…………あ、いけないもうすぐイベント始まる!!
 大会限定使用の『鋼獣』シリーズ直売会!!早くいかないと売り切れる……というわけでそれじゃあまたっっ!!!」

『ワオン』

当初の予定を思い出したカナデは慌てて立ち上がったなら、手をぶんぶんと振りながら再び人混みの中へと突撃しておく。
果たして彼女が目的の品を購入できるかどうかは不明だったが……次に会う時は友人としてか、それとも対戦相手としてか、それはまだわからない。
10佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)15:32:51 ID:yQV
>>9

「う、うんそんな感じ…かな…?」

『はははっ!まさにそういうことだな!マスターと私の初の門出というわけだ』

片方は若干困惑気味でもう片方は豪快に笑い飛ばす。
性格は正反対なようでもその信頼は確かなものだ。カナデとシルバーにも負けてはいられない。

今までは誰かと模型に関する話をすることなど一度も無かった。だからこそカナデとこうして会話をすることは新鮮で楽しいものだった。
自分の作品を褒められることやいろんな人の力作に出会うことができる。カナデのシルバーだってどれだけの時間を使って作られたものなのか分からない。それを思えばどこか通じるものを感じてしまう。

「今度見るときは、大会のときだね…もし、よければっ…私たちの試合、見てくれると、うれしいかな…な、なんちゃって……」

そうは言ってももしかすればカナデと対戦することになるかもしれない。だがそのときには手を抜いてはいけない。シラヌイだってきっとそうだろう。
自分を変えたいと思ってこの大会に出場したのだ。そんなことをしたらきっと私は私のまま変われないだろうから。

「あ、ありがとう…!じゃあ、困ったこととかあったら連絡するね……!
あっ…じ、じゃあ私の連絡先もっ…」

カナデの名刺をマジマジと眺めながら大事そうに受け取ると慌てるようにお礼を言う。
遠方から来ているカナデとは違いミナホは近くのアパートで一人暮らしをしているためそこから直に来ている。だから今日の開会式やら諸々が終われば今日のところはそのまま帰るつもりだ。
そうして自分の連絡先も渡そうとした瞬間、その声は届かずカナデは最後まで騒がしく人混みの中へと去っていってしまう。

「あ………」

『フラれたようだなマスター?』

「ち、違うもんっ…!」

次に再会するのはいつになるのか。そんなこともわからないままミナホは初めての出会いに想いを馳せ、シラヌイはといえばその闘争心を密かに燃やしているのだった。
11Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)20:23:08 ID:gTq()
大会、メインアリーナ。会場内で最大のフィールドであるこのスタジアムは、今や満員の観客によって埋め尽くされていた。
その理由はいうまでもなく、大会オープニングセレモニー。本来ならば本戦の開始まで解放されないハズのメインアリーナも、今日この日限りは特別に解放されていた。

熱狂が、興奮が、人々を包んでいた。ここまで数々のパフォーマンスがあり、その光景はアリーナ内でなく会場全域に中継されていた。
バトルフィールドシステムを利用した闘機の空戦ショー、戦姫によるダンスパフォーマンス、1分の1鋼獣の登場など……他にも数々の見世物が人々を盛り上げていた。
しかし、ピークはこれからである。これから始まるのはオープニングセレモリーの名物であり目玉……ルーキーとチャンピオンによる、エキシビジョンマッチ!!



『さーーあ、フィールドの準備は整いましたっっっ!!舞台に立つのはこの大会に挑戦する輝かしき新星達———っっっっ!!!!』


爆発のような歓声に迎えられ、貴方達はバトルのステージに並び立つ。その場所で貴方が抱くものは、興奮か、緊張か、それとも闘志か。
そして、貴方達の視線の先に、対戦相手となる人物もまたすぐに姿を現すだろう。その顔を貴方はもしかすれば知っているかもしれない。
彼もまた、歓声に包まれながらステージに立つ。その手にするのは純白の『闘機』、挑戦者の貴方たちに対して、不敵な笑みを崩さない彼の正体は。


『そして立ち塞がるのはーーーーっっ!!!前年度世界大会優勝者と、その優勝を成し遂げた機体っっ!!!『蒼き閃光』こと武藤ツカサだーーーっ!!!』


彼こそは、前年度大会優勝者。そしてその手にあるものは、優勝を成し遂げた……すなわち前年度最強の機体。
それは貴方たちがこれから乗り越えるべき巨星、相手にとって不足はないはずだ。そしてこのバトルは…………新たな大会の開幕を告げるものとして最高の戦いになるだろう!!


「…………さあ、最高のバトルにしよう!」

彼も、ツカサもこの戦いが楽しくて仕方がないように。
あふれんばかりの闘志と共に、貴方たちへとそう告げるのだった。
12アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)20:39:15 ID:rcD
>>11

「――当たっちゃったものは、仕方ないわよね」


五月蝿いまでの喧騒に包まれたステージに、ひとりの少女が登り出る。気怠げな足取りで、溜め息と共に、ゴシックロリータのフリルをはためかせながら。
その右肩に座るのは、ひとりの戦姫。流麗なる黒い鎧を纏い、先鋭たる黒い翼と――「天」の一文字を背負った。
微かに、会場の一部がどよめいた――ように、見えるかもしれない。然しそれは所詮なにかの間違いであると、この日の熱狂にかき消される。


「ビギナー向けのエキシビジョンマッチに、身元を偽って応募――しかも、それに当選してしまうなんて。
 流石の御幸運です。それに、丁度いい機会ですもの。奮戦致しましょう、マスター」

「奮戦? ――ふン。所詮、去年度の優勝者。学べるものは多いだろうと思って、ここに来たのは事実だけれど」


まるきり慣れていると言わんばかりに、彼女は煩わしげに首を振るって、前髪を払った。躊躇わない剣呑な赤い視線が、己が対戦者に向けられる。
従者の戦姫もまた立ち上がる。そのまま悠然と飛び上がって、アーマーの擦れる微かな音を立てながら、バトルフィールドのスタンバイ・ポジションに降り立つ。


「来たのであれば、勝つだけよ。――覚悟なさい、Blaues Glitzern(蒼き閃光)!」


ぎり、と奥歯を噛み締めた後。言い捨てる言葉は、しかし侮辱も軽蔑もない、確かな戦いへの敬意であった。
13赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)20:43:34 ID:5zz
>>11
その瞳に闘志を映さず、足取りに緊張も無く。少年、赤鉄シンヤはまるで普段どおりにステージへ昇っていく。
無感情にすら思えるその仕草の一つ一つが自身の表れでもあった。
各地の大会にて、敵機を壊して壊して優勝を重ねる大会荒らし。それが少年の名が持つ意味であり。
故に、今日もまた普段と変わりやしない。何時もどおりに壊して、壊して賞品を頂く。
渦巻く思考など無く、その程度の事しか考えていない。

腰のホルダーからひょっこりと顔を出していた『戦姫』、『ジャンク』をバトルフィールドへセットする。
全身が衆目へと晒されれば、『戦姫』の下半身は『獣姫』であり、所謂ケンタウロスと呼ばれる魔獣の形状を持っていた。
装甲は灰色の整形色のままで、『戦姫』の肌を除けばその色で殆ど統一されている。しかしシルエットに統一感は無く、『ジャンク』の名の通りの印象を与えるだろう。
事実、構成するパーツのすべては"捨てられた"物である。廃棄された旧式のパーツを集めて、それでいて大会荒らしを可能とする。
それが赤鉄シンヤと『ジャンク』である。

「……相変わらずキレーな機体使ってんなァ」

ふと、口から漏れた言葉は舌打ち混じりに。何か恨みでもあるとでもいわんばかりの攻撃性を孕む。

「まずはやっぱ、頭か?羽をもぎ取るのも悪くねェ。」

声は口に出すほどに熱を帯びていく。隠し切れない興奮が露になる。

「いや、いいや。シンプルにいこう。
 無様に、惨めに―――――真っ二つだ!!」

その言葉と同時に、バトルステージの『ジャンク』が切っ先を向ける。
小さな『戦姫』の体には余りに不釣合いな『両断剣』を、言葉通りの意味を載せて。
14佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)20:44:23 ID:yQV
>>11

「ど、どうしようシラヌイ…!?こんなに人が沢山~っ…!?」

『落ち着けマスター、こうなってしまえば後はやりきるしかないぞ?』

人、人、人。辺り一面人だらけ。
人見知りのミナホにとってはまさに地獄絵図だがここでやっぱりやめます、なんてことは許されるはずがない。
目を白黒とさせあたふたと落ち着きがない様子で一目見ただけでも緊張しているのが丸わかりだろう。

「あ、あれがエキシビションマッチの応募用紙なんて聞いてないよぉっ…!」

『当たり前だ、言ってないからな』

一方ミナホの肩の上に立っているシラヌイはといえば堂々とした立ち振る舞い。笑みまでも浮かべてこれから始まるであろう激しい戦闘を楽しみにしているようだ。
見つめる先は武藤ツカサと言うらしい大会優勝者が手にする純白の機体。まだ動いてすらいないのに立ち姿だけで覇気のようなものが感じられるほどに完成度の高い機体ということは見て明らか。流石は優勝者ということなのだろう。

「よ、よろしくお願いしまちゅっ!……っ!?//」

しかし挨拶でミナホが思い切り噛みそんな空気を台無しにする。
顔を真っ赤にして両手で顔を覆う自分の主人を見てシラヌイはやれやれ、と首を振るのだった。
15Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)21:05:17 ID:gTq()
>>13

「そして……ほう、悪名高き“壊し屋”か
 確かに噂通りのジャンク品から作られた機体……だが、なるほど」

相手の機体の破壊を目的とする大会荒らし、その存在もまたツカサが知らない筈がなかった。
だが、向ける感情は敵意ではない。それは同じ選手として、戦えることを誇りにするという歓喜である。
そして、彼の機体……ジャンク品、捨てられてパーツで構成された機体を見て、何か思うところがあったのか。

「……いや、この場で言うことでもない……今はただ、この戦いを楽しもう!!」

>>14

「ああ、確かに緊張せざるを得ないな。私とてこの歓声は未だに慣れないさ
 だが……それだけ皆がこの戦いを楽しみにしているということだ。そしてそれは私も同じこと」

ビギナー向け、という募集要項に正しく合致するのは彼女だけだろうか。
彼女の緊張を解きほぐすように、そしてこれからの戦いを楽しんでもらうように言葉を贈ったツカサは、そのまま彼女の戦姫も一瞥する。
戦いを楽しむ、という点では彼女の戦姫はマスターよりも向いているようだった。まるで正反対、しかしだからこそのパートナー。

「……………いい機体だな。相手にとって、不足はない!!」




そしてステージにツカサの機体がセットされる。
純白のボディにクリアパーツがめぐされた、さながら天使の如き意匠の機体。

そしてーーーーバトスシステムが起動する。その瞳に光が灯り、クリアパーツが蒼き輝きを放ち出す。
その機体は珍しくAIを搭載していない。しかし意志はなくとも魂は確かに宿り、ツカサと共に幾多もの戦場を駆け抜けてきた。
その機体の名はーーーーファルシオンⅡ。1年前、頂点に君臨した蒼き閃光!!!


「ファルシオンⅡ、武藤ツカサーーー出撃する!!!」

機体が飛翔し、バトルフィールドへと突入する。同時にバーチャルシステムによって、この戦いの舞台となるステージが一瞬で構築されていく。
構築された今回のステージは“荒野”。荒れ果てた地を舞台に、戦いが始まろうとしている。
16Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)21:06:19 ID:gTq()
>>12

「……ふ、とやかく言うつもりはないさ。“鏡中の女帝”
 噂は予々耳にしている。かのダークニンジャとこうして対峙できるとは、心を滾らせてくれる」

ホビーバトルの一線に立つツカサがそれを知らない筈がない。天才アーキテクトとして名を轟かせる彼女の名前と、その戦いを支えるパートナーのことを。
ビギナー向けだとか、規約違反だとか、そんなつまらないことは気にするまでもない。今ここで戦うことだけが、唯一の真実なのだから。
だからこそーーーー楽しむしかない。この戦いを全力で。


//>>15の内容の先頭に、このレスを脳内補完お願いします……
17アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)21:22:28 ID:rcD
>>13>>14>>15

宣戦布告を受けて尚も、彼女は眉一つ動かさない。しかしその相棒は、鎧姿のまま口元のマスクだけは下げて、ひとつ深々と頭を下げた。
「宜しくお願い致します」と、挨拶の一言まで添えて。それはきっと、傲岸不遜なる主人の無礼を補うための、彼女にとっての習慣であったのだろろう。
横に並んだ共闘者の顔を、彼女は一瞥たりともしなかった。元より彼女が信じるのは、己の腕と自身の相棒のみ。――見るのであれば、戦いの中、その機体の姿と身のこなしだけ。

バトルフィールドがVRホログラムを背景に投影し、電子の戦場を作り上げていく。漸く「女帝」は身構えた。赤肩の忍が背負う噴進装置が、徐々に高くなる回転音を上げる。
指定フィールドは、「荒野」。遮蔽物の決して多くない、逃げも隠れもできないマップのひとつ。


(「荒野」か。公式戦じゃ珍しくない。武装構成は、互いに割れているはず。であれば、……)

(組替式のウェポン・システム。あれを真っ先に破壊すれば、相手の攻撃手段を一気に削れる――!!)

「フヨウ。プランN、ドライスィヒ」「了解、マスター」


呟かれた指示コードは、ともすれば武藤の知るところであるかもしれない。「女帝」が嘗て、幾つかの大会で口にしたことのあるもの。
『対戦相手の武器破壊』を意味するその暗号を理解できたのならば――フライトユニットを全速に吹かせて吶喊する、その戦姫の行動も理解できるであろう。
砂塵を巻き上げて、黒い戦姫が翔ぶ。同時に背部から射出されて飛来するのは、合計6機の「自律攻撃機(オービット・ファンネル)」。
ごく小さな短剣にも似たその装置は、ファルシオンIIの周囲を取り囲むように陣取ろうとする。

(先ずは牽制。これは布石。)

すれば、6機のビットからの射撃が始まるだろう。機体の周辺を飛び回りながら、低出力の電磁砲を機関銃のように連射する。
被弾したのならば、然しその威力は大したものではない。数発を食らったところで、ファルシオンIIの耐久値は決して大きく減少しないだろう。
だが、前大会の優勝者であるなら――青い粒子射撃の弾幕に紛れ、黒い戦姫が自機の背後を取ろうとしていることに、気付くだろうか。
18佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)21:30:10 ID:yQV
>>13>>15>>17

「皆が、楽しみにしている…」

その言葉を聞くと身体が更に強張ってしまう。だが逆にその言葉で目も覚めた。
そうだ、これはみんなが見てる。だから情けないところは見せられない。もしかすればカナデも見ているかもしれないのだから。


「────いくよ、シラヌイ…!」

『やっと覚めたかマスター、相手にとって不足無し。全力で行こうぞ』

シラヌイがステージにセットされる。真紅の装甲を身に纏い、武装も既に装備されている。
"忍者"をイメージして作られたその機体は高い機動力を持っている。そこに改良を加えて限界まで機動力を高めたカスタム機。
大和魂を宿したその機体はあるときは影に潜み、あるときは正面から。変幻自在のその動きは果たしてどこまで通用するのか。

『シラヌイ…参るッ!!』


──────
────
──


『荒野…おあつらえ向きのフィールドだな』

周りを見渡し呟く。
多対一という一見すればこちら有利の状況だろう。だがいくら人が多くても連携が取れないのであればそれはマイナスにすらなり得る。
だからこそシラヌイは一歩下がり距離を取る。上方修正は基礎中の基礎。敵と味方両方の情報をまずは集める。
19赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)21:47:20 ID:5zz
>>15>>12>>14
起動するバトルフィールド。電子の速度でステージは荒野へと変わり、そこに4機のホビーが立つ。
廃棄パーツで構成された彼の機体は確かに見た目こそ正しく『ジャンク』ではあるが、その完成度を見れば生半可な物ではないと伝わるか。
手に持つ両断剣と、『鋼獣』の四肢に取り付けられた4門の砲もまた廃棄品の改造ではあるが、半ばオリジナルと化しているほどのものである。

「おう―――――楽しませろやァ!!」

その叫びと共に、ブースターが火を噴き前進を開始する。
怒声とは裏腹に、その思考は冷静である。瞬時に周囲状況を把握し、戦術を組み立てる。

共闘する一人は女帝、ここに呼ばれるようなルーキーでは決して無いのだがその分邪魔にはならないのは確実だろう。
6機のビットが牽制を放つ。評判どおりのハイレベルな機体を目に、バトルが『共闘』であることを悔やんだが、仕方ない。
第一の目標は目の前である。

もう一人は先ほど舌をかんでいた、この場に相応しいルーキーの少女である。
『戦姫』が一歩距離を取り、周囲状況の把握を試みる。操縦者ははっきり言って不安でしかないが、AIはマトモなようだ。
まあ、邪魔になるようなら諸共につぶしてしまえばいいだけの話。
赤鉄シンヤに共闘の意思はない。あくまで二人が邪魔になるかどうか程度の判断しかなく、仮に一人でも前年度優勝者を相手取るつもりなのだ。

突き進む『ジャンク』の前脚より、砲が一つ放たれる。射出された杭はワイヤーを伴って閃光へと迫る。
8本が同時に射出され、その一本でも突き刺されば距離におけるマウントを取れるが、難しいだろう。牽制程度にしかならないか。
20Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)22:00:14 ID:gTq()
>>17>>18>>19

荒野ステージ。遮蔽物は僅かに限られ、直接対決を余儀なくされるステージ。
つまり、地の利を生かして数の差を埋めるという戦い方は不可能。だからこそ───面白い。


「三対一だがハンデとは言うまい。さあ、どう出てくる」


両翼を広げ、ファルシオンは荒野の空を飛翔する。相対する敵をものともせず、一気に加速し距離を詰めに向かう。
コンソールに表示される警告は、黒の戦姫から放たれた六基もの自律兵器の存在を告げるもの。
ビット、またはファンネル───足を止めれば蜂の巣だろうが、“当たらなければどうということはない”。


次の瞬間、全身の姿勢制御スラスターを一斉に吹かす。立体的な回避機動によって、電磁砲の包囲射撃を次々と回避していく。
続けてジャンクから放たれた杭も同様に躱していく。それはファルシオンの反応速度、そしてツカサの操縦技術、両方あって可能となる芸当。

同時にその翼が展開し、タクティカル・エッジ・ウェポンズを起動———それは“組み換え遊び”というコンセプトの元にツカサがゼロから作り上げた複合兵装。
クリアパーツをメインに構成されたユニットを自由な発想によって組み替えられ、使い手の思うがままにその姿を変えるファルシオンⅡのメインウェポン。
幾つかのユニットがバインダーから離れ、ファルシオンの手の中で合体していく。同時に機体は身を翻るように転身したなら───背後の戦姫に向けて一気に加速する!!


「なるほど、確かに忍者の異名は伊達ではい──────が!!」


手にした武器はロングロード、背後からの奇襲に対して先んずる形で、突撃加速からの強烈な斬撃がフヨウに向けて放たれる。
もし直撃したならば、その一撃にて機体耐久値を一気に削らることになるだろうが、果たして。
21アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)22:14:24 ID:rcD
>>20


         (――流石に、早いな)


オービットキャノンから放たれた射撃弾幕は、その全てが回避された。行き場を失った青い電磁弾は、赤い大地を抉り、或いは虚空に消える。
1発か2発ほど、当たったのならば僥倖であったろう。しかしあの蒼眼の機体には、未だ傷ひとつ付かず。――何らかの射撃を仕掛けたらしい僚機も、徒労に終わっていた。
一瞬だけ、アリスは視線を横に向けた。不意に視界の中に入った、自身と共に攻撃した機体。
半身半馬の怪物にも似た、ロールアウト・カラーのままの、異形。その姿を確かめて、彼女はひとつ頷く。
なるほど、面白い。だが今はその作り手にも、機体にも、気を向けられない。ただ微かに汗ばんだ掌を、握り締める。


「被害なし。続行」「イエス、マスター」


その腰に携えた刀を一振り、黒い戦姫は引き抜いた。ブースター出力をレッドゾーンにまで引き上げる。砂塵の混じった大気が歪む。
片手にて握られたヴィヴロブレードが、単発式イオンジェットの凄まじい速度に乗って、横薙ぎにて振るわれる。車両型闘機の重厚なる正面装甲であろうと、紙片のように斬り伏せる鋭鋒が。
これが「女帝」の所以。勝利のためであれば、例え勝負の範疇においてだとしても、しかし手段は選ばない。――切っ先の狙う先は、己の機体に振るわれた剛刃。
その苛烈なる戦いぶりに反して、アリスは決して基礎を怠らない。自身が手がけた模型のマスタリングには、幾らでも時間をかけられる気質である。
故にそのブレードも幾ら細身の刃と言えど、ロングソードと打ち合えるだけの強度を有してはいた。だが片手ともなれば、鍔迫り合いに敗れるは必至。
無論のこと刃を重ねている間、ファルシオンの動きを止めることはできるだろう。だが、本当にそれが狙いなのか――?
22赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)22:17:30 ID:5zz
>>20
杭は回避され、ここまでは『予想通り』。ツカサの戦いを何度もみてシミュレーションした通りにことが進んでいる。

「オイオイ……」

『ジャンク』は正面から、そして『フヨウ』が背後から奇襲を仕掛けたのならば、挟撃の形となる。
そして背後へと翻ると言うのならば、無防備な背面は『ジャンク』へと向けられる。

「主役無視して楽しんでんじゃねェよ!!!」

振り下ろされる剣は、そのあまりに巨大な板は。剣の間合いとは思えない距離からも届きうる。
また翻ると言うのなら当然隙はできるし、正面には別の戦姫がいる。少なくとも、被害なしではいられないはずだと。
の剣は巨大であり、相手が盾を構えるというのならそのまま潰してみせるだろう。もし仮に二機に何の動きも無いのであれば、それは『フヨウ』ごと両断する。
あくまで形は『共闘』である。味方ごと斬る様な輩は居ないと断定するのであれば、それすらも利用する。

同時に、再び射出される前脚の杭。『ジャンク』の武装はこの両断剣のみであり、言ってしまえば只管距離を取られれば詰む。
それをカバーするのがこの武装であり、ワイヤーの長さ以上は距離を取らせない。

この状況で振り下ろす剣は、もしくは射出する杭のどちらかは叶うだろうと常識的に思考する。
しかし一度世界を制した男であるならば、常識程度は軽々超えるか。
23赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)22:18:08 ID:5zz
>>22
>>18>>17
安価抜けです
24佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)22:23:16 ID:yQV
>>20

『……なるほど、これまた厄介な面子と組まされたものだ』

これはビギナー向けだというのにとてもそうとは思えない特徴的で癖のある者たちが集まったものだ。
だが、だからこそやり甲斐があるというもの。普通の者が集まったところできっとあれには勝てないだろう。必要なのは、その意志力だ。

『だがこうも遮蔽物がないというのはやりにくい……だが、やりようはある』

ファルシオンがその武器を合体させ、ロングソードとしてフヨウに斬撃を浴びせようとした瞬間、それは降り注いでくるだろう。
粒子で構成された手裏剣。それがいくつも空からファルシオン目掛けて飛んでくる。手のひら大の大きさだ、しかし数があり更に他の機体に当たらぬようファルシオンだけに当たるような正確な投擲。これならば多少は足を止め、注意を逸らすくらいはできるはずだ。

空を見上げればそこには太陽を背に宙を舞う"もう一人の忍者"の姿があった。
そのままヒート機能が備えられた"SAMURAIブレード"を抜刀。刃はすぐさま高温へ到達し赤熱する。それを両手で構え、真下にいるファルシオンへと上空から斬り掛かる。
味方ごと巻き込まん勢いで鉄板のような剣を振るうあの馬姫然り、高度な武装を備える鏡姫然り、その攻撃の邪魔にならず、なおかつその隙間を縫って一撃を与えようとすることが出来る程度には"小手先では負けてはいない"
25Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)22:49:03 ID:gTq()

>>21>>22>>23


「当然、無視などしていない……だからこそ、利用させて貰う!!」


剣と剣が打ち合った、その瞬間───ファルシオンⅡは腕部に力を込めるのではなく、まるで撫でるように相手のヴィブロブレードを“後方へと受け流す”。
そして受け流したフヨウの刃が向かう先は、『ジャンク』の放った大剣による斬撃。そこに発生するのは味方同士の攻撃による衝突だろう。
『ジャンク』にはフヨウのブレードによる斬撃が、フヨウには『ジャンク』の大剣と杭による同時攻撃が。攻撃を止めるなり避けるなりしなければ、同士討ちせざるを得ないが。

同時に上空へと飛翔したファルシオンの追撃が二人に向けて放たれる────のを、シラヌイの放った手裏剣が阻止した。
ロングソードにて手裏剣を弾いて見せたなら、ファルシオンは空を睨む。太陽を背負って跳ぶその姿は、確かに“もう一人の忍者”に他ならない。


「なるほど、忍ぶ者か……良いアシストだが」


ロングソードを水平に構え、SAMURAIの刃を受け止める。ブースターを吹かし地上に叩き落とされずにすんだなら更にバーニアを使い機体を回転、そのまま鍔迫り合いする相手を巻き込み、地面へと叩き落そうとするだろう。
そしてそれが成功しようがしまいがファルシオンは眼下に向けてロングソードの切っ先を向けて───次の瞬間には背面バインダーから展開するユニットが組み合わさり、ロングソードをより巨大な別の姿に変える。
それはクリアパーツを銃口に見立てた巨大な砲塔、ファルシオンの誇る武装の中でもとりわけ強大な火力を有する“バスターライフル”。


「……ワンマンプレイが相手であれば───まだまだ負けるわけにはいかないな!!」


銃口から放たれるのは強大な粒子砲。青い閃光が奔流となってジャンクとフヨウ、そして場合によってはシラヌイをも巻き込まんと解き放たれる。
回避なり、防御なり、なんとかしなければ一撃で戦闘不能に追い込まれるだけの火力。やはりこれを討ち果たすには……“力を合わせること”が必要なのかもしれないが。
26佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)23:08:26 ID:yQV
>>25

『……ならば、ここは私が受けさせてもらう。どうやら此度の戦、手を組まねば厳しいようだ』

叩き落とされるような形ではなく、受け身を取り安全に着地する。
どうやら周りも同じようで一様に地面の上だ。上空を見上げればそこにはファルシオンはまだ悠々としている。
見事な受けだった。あの三方向からの一斉攻撃を捌き切りなおも健在。
そしてあのユニットの姿は明らかに銃身だ。それもかなり強力なもの。恐らく掠っただけでもかなりの痛手を負うことになるだろう。

だが逆を言えば、それほどの威力のものならば隙が生まれるのも必然というもの。だからこそここを"一人で捌けば"他二人は隙ができたファルシオンへの攻撃に回れる。

抜刀するのはもう片方の"SAMURAIブレード"
この武装はビームを"拡散"させる!!

『ここは私が引き受けるッ!!』

前に出て、その光の奔流へと刀を振るう。
選んだのは回避ではなく防御。青い閃光は真っ二つに両断され他の二機からも逸れて左右へと分断していく。
しかしこの状態ではシラヌイは動けない。あとは馬姫と鏡姫に託すしかない。
27アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)23:10:51 ID:rcD
>>25


(――かかった、か?   ……、いや――違う)


受け流された斬撃。「プランN、放棄。左8cm、イヴェイド」間髪入れずに、アリスの指示。
向かい来るのは、人馬のシルエットを象った機体から振るわれた大剣の一撃。だがそれもまた、アリスの視界には入っていた。
微かにフヨウはブースターの推力を偏向させて、機体を横にずらす。鉄塊のような刃が、肩部装甲をちり、と掠めた。


(……簡単には、勝たせてくれないみたいね。)
(それにこれは、3対1じゃない。1対1を、それぞれ繰り返しているだけ。)


――フヨウの後に続いた機体さえも、容易くいなす態勢に入ったファルシオンを見て、ひとりアリスは歯噛みした。
そのまま展開・変形されて構えられる大型粒子砲への対処を、彼女は既に内心で決めていた。しかしこれでは、後手に回るばかり。
唇を噤んで思考を走らせる。負けたくない。湧き上がる闘志が戦術眼を濁らせるまでに、勝ち筋を見つけなければ。

(――考えろ。私。待て……「まだ」?「負けるわけには」?)

(そうだ。これは、エキシビジョン・マッチ。しかも、ルーキーが相手の。だとすれば、……もしかしたら。
そうよ。彼はエンターテイナー。でも、そこまでして得る勝利に――価値は、あるのかしら? 本当に?)

(……馬鹿らしい。勝つためには、手段を選ばない。そうでしょう? 嫌味なら、後で言ってやればいいじゃない)


       「――――フヨウ!」

「右150cm回避」「ブースター出力、限界値。推力偏向強化、ドライ」「両腕保持、『光芒』起動」
「プランU。フュンフツェーン」「『ヴィルベルヴィント』射撃開始」「――弾着、今。状況、始め」


     「Wilco, マスター」


アリスの口から滔々と紡がれた指示に、その従者は了解の意を示す。綿密極まるその命令を、されどフヨウはどこまでも忠実に実行できた。
それが、「彼女たち」の強さだった。精緻かつ大胆な戦況判断を、堅実かつ正確に組み上げられた機体が実行する。不足もなければ、過誤もない。計算された天性。
ブースターから噴き出る蒼炎に白いものが混じる。限界まで高められたその速度は、発車までには粒子砲の加害半径から逃れられるか。


「おふたりさん。今から私は、ライフルとオービットで射撃支援にあたるわ。――このまま続けていても、ラチが開かない」
「彼の動きは、私とフヨウが制限する。手痛いのを一発、かましてやって頂戴」
28アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)23:12:37 ID:rcD
>>27
//「右150cm」のところは、「上150cm」でお願いします…。
29赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)23:28:30 ID:5zz
>>25
振り下ろした剣は地面を割る。どうせならばその『戦姫』を砕いてくれとも思ったが、女帝の名は甘くない。
然して状況は一気に転じてこちら側の不利へ。利用するといわれたとおりに、敵の隙は今正にこちらの隙へと変化していた。

「……チッ」

舌打ちと歯軋り。世界を目指す以上、この相手と戦うことは考えていたはずだ。
相手の手札は代わらず、シミュレーションのまま。数の利すらもこちらにある。なのに――――
思考をいったん打ち切るのは青い閃光。巨大な粒子砲は『ジャンク』を飲み込もうとし

「―――――ッァラアア!!」

その激昂は、誰に向けられたものか。前に出た『シラヌイ』か、それとも余裕な顔して、先ほどの事すら忘れた様に見せる『フヨウ』と女帝へか。
それとも―――『ジャンク』を光へ呑み込ませかけた自分へか。
二人の提案を断る理由は無かった。きっと、ツカサの思惑通り。勝つにはそれしかないのだから。

「やってやらァよ!!!クソがッ!」

本来『ジャンク』は飛行を苦手とする。その重い板を背負って、下半身をつれて飛び上がる能力は無い。
だがしかし、赤鉄シンヤはそれを思考に入れていないわけではない。
放たれたワイヤーを巻き取る機構は、思いのほかに強い。それを空へ、残ったすべての、16本の杭を。
それだけでは終わらない。既に放たれたワイヤーを手繰り、カウボーイの如く投げつける。
計30を超える糸、粒子砲を発射した今ならばそのどれかは"引っかかる"筈であり
その狙いが当たったのであれば。きっと機体を一つ地面へと叩きつけ、剣はその身へ届くはず。
きっと、ツカサの思惑通りに。それは奇しくも正しい共闘の形である。
30Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)23:52:48 ID:gTq()
>>21>>22>>23

放たれた大出力砲撃は、しかし一人の手によって断たれていく。
それは一か八かの賭けだっただろう。これだけの火力を一人で背負込むなど、普通であれば躊躇する筈なのに。
しかし、彼女は止めて見せた。そしてそこから続く二人の行動は――――間違いなく『共闘』と呼べるもの。

一人が盾となり、一人が前衛に立ち、一人が後衛を務める。
それを彼等が意識的に選んだかどうかは解らずとも、スリーマンセルであれば理想の形だろう。


「……それでこそ、戦い甲斐があるというもの!!」


粒子砲を放つ銃身にワイヤーが絡みつく。砲撃は中断され、ファルシオンは『ジャンク』の思うがままに地面へと引き摺り堕とされる。
但し、地表との衝突の寸前にバスターライフルを分解、その拘束から解放されたなら激突寸前のところでバーニアを吹かして姿勢を立て直し。
その推力を一点に集中させたなら、ファルシオンⅡは地上を滑空しながら『ジャンク』へと目がけて爆発的な加速を開始する!!!

複合兵装を構成する幾つかのユニットは投棄されたが、全てが手元から離れたわけでもない。
残されたユニットの中から瞬時に武装が組み上げられ、そしてファルシオンⅡが新たに手にしたのは巨大な突撃槍──それは加速の勢いのままに、目の前の敵を貫かんとする一撃。


「敢えて言わせて貰う───私とてエンターテイナーである前に、一人の競技者」

「故に、例えエキシビジョンだとしても───勝ちを譲る気など一切ないッッ!!!!」

その台詞と同時に背面バインダーに搭載されたユニットが砲身を形成し、幾筋もの粒子砲撃を放つ。
『ジャンク』本体と、その足場に向けて放たれた砲撃は爆風によって粉塵を巻き上げ───彼女の視界を一瞬だけ覆い隠す。


そして暗幕が晴れた時、目の前にファルシオンの姿はないだろう───何故ならば。
既に純白の機体は『ジャンク』の頭上へと辿り着いており、そしてその本体めがけて一直線にランスが振り下ろされた───!!!
31赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/04(月)00:12:47 ID:0Vl
>>30
赤鉄シンヤは『共闘』等望まない。心を許した選手などどこにも居ない。
故に、そのシミュレーションはいつでも一人を想定していたし、であればこの『共闘』は想像以上の効果を挙げるはずだった。
彼は一人でも倒せると思っていた。叶わなかった。望まぬ形であったが、共闘すらした。その結果は―――

振るった剣は、ファルシオンが構えるランスと正面から激突する。
単純な重量による勝負であれば、下からと言えど『ジャンク』に分があったかもしれない。
しかし全力のブースターの速度が乗ったその一撃は、万全な『ジャンク』にすら受けきれるものではない。
ましてや途中で外れた拘束に対応して、強引に姿勢を変えた状態では―――

槍は剣を貫く。巨大かつ堅牢であり重厚。一切を弾いて潰す、そのために作り上げられたそれを砕いていく。
そして、そのまま、『ジャンク』の肩まで辿り着き

「―――――っっがぁあぁあああああ!!!」

剣を握る腕は胴体から離れて、辺りに散る肌色のプラスチック片。
それはそのまま、下半身の『鋼獣』部分をも破壊し。辺りへ嘗て『ジャンク』を構成していたものが散らばった。
暗幕は晴れて、その一瞬を強調するかの様にはっきりと。露になるのは"機能を停止した"『ジャンク』の姿。
その一撃は機体を破壊し、ゲージを削る切るには十分であり。
駆動音はもうしない。彼の叫びと、コントロールパネルを叩く音だけが響き渡るだろう。
32アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)00:15:10 ID:LRT
>>30

「――――はッ!! そりゃ良かったわ! 『それ』で上等よ!!」


――初めて、アリスが表情を変えた。その口許を緩ませて、微かに声を荒げ、不敵に、されど心底から楽しそうに。
どこか安堵のようであった。当然のことだった。自身が全力を尽くしているのだ。舐めた真似をされては困るのだ。まして、全大会のチャンプである男に。
主人の高揚を感じ取ったか。フヨウもまた楽しげに微笑んだ。そうして、握ったままのブレードを腰に収めた。
代わりに背部ハードポイントから取り出されるのは、指定通りの粒子レールガン。ブルパップ方式を採用した、ストックに加速機構を備える近未来的な形状の一挺。
未だ展開中のオービットキャノンに、重ねて背部から6機を射出。計12機を起動させて包囲陣形、吶喊するファルシオンへと向けて再びの一斉射撃。
短剣状のビットシステムから、青い電磁弾が雨霰と降り注いでゆく。だがやはり、それは「本命」ではないのだ。


「――悪いわね! 囮にしちゃって!」

「『パレットシステム』、正常に起動中!」「回転数、1200を突破!」「出力インジケータ、レベル3にまで到達!!」


「充填状況」をフヨウへと伝える、アリスの声。携行ライフルと同等の大きさであった筈の、黒い戦姫が構えていた小銃は、しかし。
内部から展開された延伸バレルにより、その身の丈を超えてしまう大きさにまで、その砲身を「伸ばして」いた。
――煌々と光る青白い砲口を、人馬と組み合わんとするファルシオンに向けて。そして。


「――今ッ!」「当たれッッ、Verdammte Scheiße(ド畜生)ッッ!!!」


狙うは胴体。その威力をほとんど対物狙撃銃クラスにまで引き上げた、「光芒」のトリガーが引かれる。
輝く砲身。疾る光条。それは果たして、王者を射抜くか。致命の一撃と、成りうるか。
33アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)00:16:12 ID:LRT
>>30>>31

「――――はッ!! そりゃ良かったわ! 『それ』で上等よ!!」


――初めて、アリスが表情を変えた。その口許を緩ませて、微かに声を荒げ、不敵に、されど心底から楽しそうに。
どこか安堵のようであった。当然のことだった。自身が全力を尽くしているのだ。舐めた真似をされては困るのだ。まして、全大会のチャンプである男に。
主人の高揚を感じ取ったか。フヨウもまた楽しげに微笑んだ。そうして、握ったままのブレードを腰に収めた。
代わりに背部ハードポイントから取り出されるのは、指定通りの粒子レールガン。ブルパップ方式を採用した、ストックに加速機構を備える近未来的な形状の一挺。
未だ展開中のオービットキャノンに、重ねて背部から6機を射出。計12機を起動させて包囲陣形、吶喊するファルシオンへと向けて再びの一斉射撃。
短剣状のビットシステムから、青い電磁弾が雨霰と降り注いでゆく。だがやはり、それは「本命」ではないのだ。


「――悪いわね! 囮にしちゃって!」

「『パレットシステム』、正常に起動中!」「回転数、1200を突破!」「出力インジケータ、レベル3にまで到達!!」


「充填状況」をフヨウへと伝える、アリスの声。携行ライフルと同等の大きさであった筈の、黒い戦姫が構えていた小銃は、しかし。
内部から展開された延伸バレルにより、その身の丈を超えてしまう大きさにまで、その砲身を「伸ばして」いた。
――煌々と光る青白い砲口を、人馬と組み合い、そして撃破に至ったファルシオンに向けて。そして。


「――今ッ!」「当たれッッ、Verdammte Scheiße(ド畜生)ッッ!!!」


その反応が、「間に合ってしまう」前に。狙うは胴体。その威力をほとんど対物狙撃銃クラスにまで引き上げた、「光芒」のトリガーが引かれる。
輝く砲身。疾る光条。それは果たして、王者を射抜くか。致命の一撃と、成りうるか。
34アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)00:17:04 ID:LRT
//わー連投しちゃいました…>>33が決定稿です、よろしくお願いします
35佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/04(月)00:21:47 ID:TIK
>>30

『くぅっ…』

あれだけの大出力砲撃を凌いだのだ。身体にダメージが無いはずがない。
これでもファルシオンを墜とすことは出来なかった。身体は動かすことができず満身創痍、ここからの攻撃への糸口が掴めない。
万事休す、あと一歩まで追い詰めたと思った相手は、未だ遥か彼方に────

「まだ…!まだ終わってないっ…!」

不意にシラヌイの元にそんな言葉が響く。
それは聞き間違えようのない、シラヌイのマスターの声だった。
まだ終わってない、諦めるな。まだ機体は"壊れていない"

最後の力を振り絞る。
無理矢理手足を動かし、狙いはファルシオン。
手のひらに粒子を集め、段々と星型が形付けられていく。やがてそれはシラヌイの大きさをも軽く超えるほどの大きさまで巨大化している。
粒子残量ももう僅か。きっとこれが最後の一撃だ。

『残粒子全固定化ッ!形状安定!"ビームSHURIKEN"最大出力ッ!』
『嘶け!青き流星ッ!!』

そしてそれを、ファルシオンへとぶん投げる。
余りに大きなそれは簡単な回避行動など容易く狩り取ってしまうほどのものだ。
青白く残光を残しながらその巨星はファルシオンへと向かっていく。
36Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/04(月)00:49:03 ID:Cr3()
>>31>>33>>35

「だが、その刃は届いたぞ。赤鉄シンヤ……!!」

……『ジャンク』の剣は砕かれた。然し、それは果たして彼の意地が、それもと執念か。
砕かれても尚進み続けた大剣の刃が、ファルシオンのボディに、腕部に確かな傷を刻みつけていた。

まだ、健闘は讃えまい。バトルはまだ終わっていないのだから。
そう、これはショーではなくバトルなのだ。ただ、楽しむのが目的ではなく、勝利を掴みたいからこそ皆がこのステージに立つ。
それはツカサとて例外ではない。相手と全力でぶつかり合い、そして全力で勝利したいからこそ、彼はこの舞台に立っている。


「……………っ!!」


ビットによる飽和射撃、それに対してファルシオンは槍を組み替え、大型のシールドにすることで尽く弾いていく。
然し……反応速度が僅かながらに落ちている。それは『ジャンク』が残した確かな爪痕であり、そして。

機体が僅かによろめいた、その瞬間。
二つの閃光が直撃し、炸裂した。爆風に巻き上げられた粉塵が、辺り一体を飲み込む。



勝負は決したかに見えた。然しシステムは未だにファルシオンの敗北を告げようとはしない。
そして、粉塵が晴れた時───そこには未だ立ち続ける、純白の機体の姿があった。

但し、満身創痍。辛うじで直撃を逸らした光芒の一射は武装ユニットの全てと機体の大部分に傷を刻み。
シラヌイの放った蒼き流星は、ファルシオンの右腕部を根元からばっさりと切り落としており。
それでも、まだ立っている。蒼き閃光の輝きは、未だに失われてはいない。


「……ああ、そうとも。まだ終わってはいない!!
  ならば、もう少しばかり私の我儘に付き合って頂こうか!!」


残された左手にてバインダー内に格納されていたビームサーベルを掴み、その刃を展開する。
未だ、闘志衰えず。然しお互いに限界は間近。それでも機体が答えてくれるのであれば───蒼き残光を伴って、ファルシオンⅡは再び二人に向けて加速を開始する。
その目的は言うまでもなく“真正面”から“押し切る”こと。これが最後のぶつかり合いになるだろうが、だからこそ、全てを込めて!!
37アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)01:07:17 ID:LRT
>>36

――ビットシステムに対する反応速度が落ちていることが、熟練のバトラーたるアリスの目には確かに映っていた。
当たらないわけではない。負けないわけではない。格の違う相手かもしれない。けれど、私が、私たちが全力を尽くしたのなら、きっと。
そこに重ねたレールガンによる砲撃。確かにそれは、直撃した。ファルシオンの耐久値を示すゲージが、一気に削り取られてゆく。


(よし、いける、勝てる! ここで刺し違えたって構わない! だから、今、ありったけを――!!)


白煙の消え失せた先、未だ倒れぬ王者の機体。その確かさに敬意を示して、アリスは声高らかに叫んだ。


「――フヨウッ!!」「マスター!!」


再びの突撃。狙いは、此方。もはや無用となったレールガンユニットを投げ棄てて、黒い戦姫は両腰に収めた2振りの直刀を、それぞれの手に握る。
この至近であるならば、白兵武装に頼るしかない。ブースターの出力を再び限界値に引き上げる。2機の進行方向が重なる。
正面角度からの格闘戦。勝者を決める、ヘッドオン。イオンキャブレターが悲鳴を上げて、ノズル周りの塗装さえ焦がしてゆく。


     「――っっっ!!!」


――交錯する、3つの機体。ビームサーベルは、ATD-X・フヨウの横腹部装甲を深々と抉った。
被弾を知らせるダメージアラートがフヨウの電子系に鳴り響き、耐久値のゲージ残量は見る間に削れてゆく。あと数秒接触を続けるだけで、彼女もまた戦闘不能に至るだろう。
だが、それでも。最後の意地とばかりに、袈裟懸けに振り下ろされた、二刀のヴィヴロブレードが――白い装甲を斬り開くことは、叶うだろうか。
38佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/04(月)01:09:42 ID:TIK
>>36

『そう、来なくては…!!まだ、まだ終われっ…!!』

シラヌイもそれに応えようと一歩を踏み出そうとする。
だが、もはや立てるものでは無かった。元々あの大出力砲撃を受け止めたときからもうほとんど限界だったのだ。そして追い討ちはあのビームSHURIKEN。
もはやシラヌイは動ける状態ではなく、一歩を踏み出そうとしたところでそのまま前のめりに倒れてしまった。
それと同時にシラヌイの視界は白い光に包まれ、戦闘不能の文字が浮かび上がる。

やれることはやった。思い残しはない。
もしも仮に一つあげるとすれば、自らの手で倒すことができなかった、ということだろうか。
39Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/04(月)01:33:36 ID:Cr3()
静寂が戦場を、会場を包み込む。誰も彼もが次の瞬間訪れる結末を、固唾を飲んで見つめていた。
刺し違えた二機は動かない。ファルシオンの刃はフヨウを、フヨウの刃はファルシオンを貫き、そして刹那とも永劫ともつかぬ時間が流れて。


そして、純白の王者が崩れ落ちた。
ゲームセットを告げるシステム音が鳴り、そして勝者である三人の名前が大画面に映し出される。
一瞬の沈黙を経て───会場は大きな歓声に包まれた。


『……け、決着───っっ!!エキシビジョンマッチを制したのは輝かしき新星!!挑戦者達!!
アリス・"エンプレス"・リリエンリッター!!赤鉄 シンヤ
!!佐々木部 ミナホの三人がチャンピオンを見事下した───っっっ!!!』


会場は熱狂の渦に包まれたいた。そしてその興奮こそが、これから始まる大会の幕開けを告げる号砲でもあった。
前回チャンピオンが敗北し、幾つもの新星が輝く予感を告げている。今年の大会は大いに荒れ、そして盛り上がるに違いないと。
その光景は、興奮は大会会場中に伝わっていた。誰も彼もがこれから開催される戦いの日々に、心を踊らせ、滾らせている!!



「…………ありがとう。良い戦いだった
 少々……いや、かなり悔しくもあるがね」


バトルが終わったなら、全損したファルシオンを手にツカサはあなた達に素直な思いを告げるだろう。
戦いが終わったなら、健闘を讃えることに理由はいらない。それでも負けたのはやはり、悔しいに違いないのだが。
だからこそ、彼は貴方たちに再戦を誓う。次に戦う時は、必ずや勝利してみせると。


「次に戦う機会があるとすれば、大会本戦だろう。予選を勝ち抜き、再びこのアリーナに立つ時
 その時は私も“最新作”でその舞台に立つだろう……その時を楽しみにしているよ、三人とも」


そして、前大会チャンピオンはステージを後にする。勝者が讃えられるべきステージに、敗者が長居する訳にはいかないだろうと。
こうして、エキシビジョンマッチは熱狂のうちに幕を下ろし……そしてこれから始まるさらなる戦いの幕開けにふさわしいニュースとして轟いた。
40Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/04(月)20:28:02 ID:Cr3()
エキシビジョンマッチは興奮と熱狂の中で決着を迎え、オープニングセレモニーは最高の形で幕を降ろすことになる。
そしてそれが意味するところは、これより大会が本格的に開催されるということであり───とうとう皆が待ち望んでいた戦いの日々が始まるのだ。


───世界大会は前半にあたる“予選”と後半の“本戦”、二つの段階に分けられる。

予選では大会会場に設けられた幾つものアリーナや専用施設にて、連日ホビーバトルが繰り広げられる。その中には通常形式の競技に限らず、乱戦やチーム戦といった特殊なルールによる戦いも存在している。
そして予選の総合成績で上位に食い込んだ僅かな参加者のみが、メインアリーナにて開催されるトーナメント形式の本戦に駒を進めることができるという仕組みになっていた。

予選の間、メインアリーナ以外の大会施設は全てが参加者に向けて解放されており、参加者同士であればどの施設でも利用し、戦うことが可能となっている。
そしてその勝敗は公式戦記録としてデータベースに記録され、そうして積み重ねた勝ち星の数こそ貴方が本戦に進めるかどうかの鍵になるだろう。
また、予選中はイベント戦と呼ばれる特殊なルール下における競技も行われるようだが……どうやらその情報は直前まで開示されないようだ。

無論、バトルだけがこの大会の全てではない。競技を観戦するもよし、同好の士と交友を深めるもよし、一般客やモデラー向けのイベントに参加するもよし、この大会には色んな楽しみ方が存在する。
予選の期間は25日間……その時間をどのように過ごすかは、参加者である貴方次第である。
41アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)21:49:11 ID:LRT
>>39


「――やっ、た」


熱狂の大気に溶けてゆくVRフィールド。スクリーンに現れる勝者たちの名。一瞬遅れて、沸き立つ歓声。
それが彼女に、勝利を自覚させた。確かめるように、まずは小さく呟いた。固唾を呑んだ胸の奥から湧き上がる喜びが、少しずつその表情を緩ませてゆく。


「……――やったっ、やったわ、フヨウ!! お疲れ様、ごめんねっ、本当に、ありがとう……!!」


きっと彼女にも、歓喜は抑えられなかった。フリルが千切れんばかりに両腕を振り回しながら、その場で何度も飛び跳ねた。
やがてフィールドにへたり込む己の戦姫を抱き上げて、ちいさく白い掌に包み込み、踊るようにくるくると回り出す始末。
あくまで淑やかなその黒い戦姫は、傷を負っていながら微笑んでいた。主人のあたたかい掌の中、歳相応の仕草で燥ぐ姿に苦笑しながら、それでもやはり喜びに頬を緩ませてもいるのだった。
――そんな中、不意にアリスも我に返ったか。まだ醒めやらぬ興奮の中、無理やり気取った顔をして、こんな台詞まで言ってのける。


「ふんッ。所詮戦ってみれば、こんなものかしら。わたしとフヨウの実力なら、どうってことなかったわ」

「――ま、その、一応。……楽しかった、けれど。その辺りは、流石ね」
「それに。期待できる新人たちも、育っているみたいじゃない?」


それでも彼女の言葉には、王者に対する敬いと、同胞に対する労いが籠っていた。ただ背伸びしたプライドが、それを隠しているだけのこと。
目を泳がせてそっぽを向きながら、彼女は恥じらうその本心を、しかし確かに言葉にした。


「お疲れ様。また会いましょう? きちんと勝ち上がってきて頂戴、張り合いがないじゃない」


そうして、アリスは悠然とステージを去ろうとした。長く伸ばした銀色の髪を、熱い大気の中に煌めかせながら。
しかし壇上から降りる前に、彼女は一度だけ振り向くことだろう。どこまでも不敵に、されど楽しげに笑っていることだろう。
赤い真っ直ぐな瞳で、ツカサを見つめていることだろう。――ちいさな白い人差し指を突き出して、こう言い残すのだ。


「次は、一対一」


「一対一よ。その時だって、絶対に負けないわ。首を洗って待ってなさい、武藤ツカサ!」
42アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)23:52:41 ID:LRT

「……あーもう、……。本当に。どうしてマスコミってのは、こうもウザったいのかしら?」


昼下がり。WHBTの会場近辺に構えられた無数のホビーショップ。その中でも、幾ばくか路地裏の奥まった所にある個人経営店。
燦燦と降り注ぐ陽光も、ここにはさして届かない。色褪せた店先の雨樋をくぐれば、打ちっ放しのコンクリートを床壁にして、鉄組みの陳列棚に詰め込まれたプラモデルたち。
大通りに店を置く、多くの小綺麗なホビーチェーンとは、雰囲気も品揃えもまるで違う店であった。そこに、「彼女」はいた。


「貴女の実力を、誰もが認めているのですよ。ひとりの競技者として、ね?」

「ふン。いい飯のタネでないといいんだけれどね――あ、エボルタ。……貴女にも、労いが必要よね。買ってく?」


憮然として愚痴をこぼしながら、彼女は品定めをしているようだった。腰にまで伸ばされた艶めく銀髪は、埃っぽい空気の中にあって煌めいていた。
傍若無人なゴシックロリータを纏い、上質なシルクハットを被って、ストライプのハイソックスにローファーを履き――その小さな白い手で、8個セットの単4アルカリ電池を握る。
腕に提げた買い物カゴには、恐らくは本来メーカーにランナーごと発注するであろうスペアパーツ。その殆どが海外製だった。


「ええ、お願い致します。――我が儘を言わせていただければ、プラカラーも。腰の辺りの塗装を、直しておきたいのです」


ゴスロリのフリルを心地よいシーツのようにして、その右肩には1人の戦姫が座り込んでいた。薄紫の髪に、黒塗りのボディ。
したたかにも主人の良心につけ込んで、欲しいものを強請る彼女。わかったわよ、と呆れたように返事をして、主人は塗料用コーナーへと向かう。
――その姿を、あるいは知っている者もいるかもしれない。だが頑固そうな壮年の主人は、ひとりプラモデル雑誌を読みふけっていた。
43菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/05(火)00:23:27 ID:3zF
>>42

「……転用するならレガグドの機体だろうけど、何を持たせるべきかな。今のアイちゃんに足りないものを補いたいんだけど……何が良いかなぁ。
 いっそ既存のをくっ付けてオリジナルを作ってもいいけど、やっぱり軍特有の記号をもたせたいよね。ねえ、アイちゃんはどんなのが良い?」

 個人経営の模型店……となると、最新のホビーの取扱は少々となってくる。それらを求めるならば表通りの大手企業の店舗に行けばいい。
 となると求められるのはそれらとは一風かわったものであり、彼女、蓮見菱華の求めるものも同様であった。
 彼女が見ているのは、とあるアニメシリーズの所謂旧キットと言われる商品である。
 今となってはモナカキットとも揶揄される、古き良き時代を子供達と駆け抜けたそれらが、今、ここにはずらりと並んでいる。
 そのラインナップには、現在の最新キット達の中に含まれていない超マイナーな機体も存在する。主に、雑誌企画等でちらりと顔を見せたようなそんなものたちが。
 彼女はそんな古強者達にインスピレーションを貰いたくてこの店にふらりと足を踏み入れたわけだが。 

「そんなことよりー! バトル! バトルしたいの!」

 菱華が目線を落としながら問いかけた。それに答えたのは、商品棚の上に立つ、一機の戦姫であった。
 今まさにずらりと並んでいる作品の機体を擬人化した彼女は、然し並ぶ同胞達に背を向けて、両手を上げて持ち主の問いかけなんてどうでも良いとばかりにそう叫ぶ。

「謝るならくらいならバトルさせてよ! 私はバトルしたいの! というか、なんでエキシビジョンに私が出れなかったの!?」

「そんなこと言われても……エキシビジョンは抽選だから……」

「菱華がさっさと登録してればもしかしたら当たってたかもしれないじゃないか! 何さ、恥ずかしいーって、尻込みしちゃって! どうせ皆の前に立つことになるんだから同じじゃん!」

「ご、ごめんね、アイちゃん……でも、抽選の結果は早い遅いじゃないと思うけど……」

「そんなの関係無いって! ……ん?」 

 ふと……騒がしく叫ぶアイちゃん、と呼ばれる戦姫の視線が、店の一箇所に注がれた。
 どうしたんだろう、とその視線を追いかけてみると……一人の、同じく戦姫を侍らせた女性がどうも同じように品定めをしているらしい。
 それに対して、どうにもピンと来ない様子の菱華だったが。

「アイツ!! エキシビジョンに参戦してた戦姫だ!!」

「わぁああ! アイちゃん声が大きいよ!!」

 中継に齧りついていたアイゼルネスは、それが一瞬で何者か、を見抜いてみせて。

「ねぇねぇ! エキシビジョンはもう良いから、私アイツとバトルしたい! ねぇ良いでしょ菱華、ねぇねぇねぇ!!」

「だ、だめだよアイちゃん。そんな、いきなり失礼だよ、それに声が大きいよ、しーって。もう少し静かにぃ……」

 強請るのは、自身の強化パーツではなくバトルであり。
 大声でそう叫ぶ戦姫へと向けて、人差し指を立てて菱華は彼女へと静まるように頼むのだが――――さて、この静かな店内。聞こえないはずがない。
44アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/05(火)00:46:50 ID:JsZ
>>43


「――あら、」


レジ近くのピッチブラックスプレーを手に取ろうとしていた、彼女の手が止まった。長い銀髪をたなびかせて、優雅に身を翻す。
微かに、銀髪の少女は目を細めた。切れ長の、決して良いとは言えない目つきに、不機嫌そうな三白眼。
それは或いは、声の主を睨め付けるような仕草にも見えたかもしれないが――。


「……ふうん。悪くない仕上げしてるじゃない」


――その呟きは、果たして2人へと聞こえたであろうか。ともあれ銀髪の少女は会計を取りやめて、その2人の元へと歩み寄ってゆく。
程近くにまで至ったところで、肩に座っていた黒い戦姫が翔んだ。アイと呼ばれた戦姫の目前、同じ棚に着地する
恐らくはバランサー系のリミッタを外して、独自制御のマニュアルスクリプトを組み込んでいるであろう其の挙動は、実に悠然としていた。


「ええ、仰る通り。――先日のエキシビジョン・マッチに出場させていただきましたACGシリーズは第5弾、ATD-X。
 マスターからは、『フヨウ』と呼ばれておりますが。こんにちは、アイさん?」


懇切丁寧な挨拶と共に、先ずは戦姫がお辞儀をした。1回目はアイに向けて、2回目はその主人に向けて。
にこやかな微笑みと共に、アイに差し出されるのは握手の掌。


「……まあ、パパラッチに追い回されるよりは、ずっと楽しそうね」

「私はアリス。アリス・リリエンリッター。この子は、フヨウ。
 それで、その子は……アイゼルネス・クロイツ、かしら? いい趣味ね」


ゴシックロリータの少女もまた、どこかダウナーなものを声に滲ませながら、しかし微かに微笑んで言葉を綴る。
――ともすれば、少女は知っているかもしれない。先日のエキシビジョン・マッチに、確かに彼女が勝利したこと。
だが、それ以上に――彼女の姿を、例えばホビー雑誌の1ページにて、或いは新聞のスポーツ欄で。「女帝」と称される、少女の姿。


「バトルが希望かしら? 私としては、メイキングの四方山話もお伺いしたいわね。良い出来よ、貴女」


マスターがプラモの出来を褒めるだなんて中々ないんですよと、フヨウの口から。決してそれは世辞などではなかった。
45日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/05(火)00:57:42 ID:c7d

「……なーんで、こうなっちゃったんだろうな……」
 
WHBT会場に程近い駅前の、チェーンのビジネスホテル前。
そこにポツリとそんな事を呟く、一人の影が立っている。
整髪料で適度に整えられた黒髪の短髪に地味な眼鏡、グレースーツと言った、一見出張でこの街にきたサラリーマンに見える男、日向武士。
しかし、そのとなりには彼がそういったサラリーマン的な目的で来たわけでは無いことを示す、台車とそれに載せられたやたらでかい段ボール箱が鎮座している……。
 
「ハァ……勘弁してくれよ……」
 
その箱にでかでかと記された「日向製作所」のロゴを見て、ため息と口癖が漏れる。
もし数ヵ月前、親父が大会開催を告げるCMを見なければ。
もし、日向製作所が悪ノリのない、真面目な社風であったなら。
もし子供の頃、ホビーに夢中になることがなければ……。
そんなifが、この街に来てから武士の頭のなかで渦巻きっぱなしだ。

「……ハァ」
 
もう一度小さくため息をつくと、大通りの方へ向かって歩き出す。
「こいつ」を持って歩くのは憂鬱だが、大会本選までホテルに引きこもるというのもそれはそれで気が滅入る。
46菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/05(火)01:19:31 ID:3zF
>>44

「痛い痛い痛い! 抓るのはやめてよぉ!!」 

 駄々を捏ねるアイゼルネスを無理矢理持ち帰ろうとした菱華が、その手の甲を思い切り抓られ、やいのやいのとより騒がしくなっていく。
 何とも程度の低い喧嘩をしている二人の前に。そう、今正しく二人の話題の中心に立っていた黒い戦姫――――それが、アイの前に現れた。
 たった今持ち主と喧嘩をしていたアイの表情が、ぱぁっと明るくなった。抓る手を離された量かも……そこでようやく、少女がこちらへとやってきていたのを認識する。

「やった! そっちから来てくれるなんてツイてるね、菱華!!!」

 いぇーい、と握り拳を挙げてはしゃぐアイ。

「私はレガグド軍のOMX-05C アイゼルネス・カスタム! フヨウって言うんだね、よろしくー!!」

「は、はい……こんにちは」

 品のある姿にほえーと面食らい、おずおずと挨拶を返す菱華に反して、差し出された手を元気良く握り返して握手を返す。
 そして、ロリィタに身を包んだ少女へと視線を据えて……そこでようやく、その少女の顔を思い出すことが出来た。
 確か有名人。引きこもりの間にもインターネットで見たことがあるような――有名な。

「ああ! あ、あ、あの、アリスさんですかぁ!!??」

 そう、確か天才アーキテクトの。年齢は全然変わらないのに、凄いなあと漠然と菱華が思っていた人物だった。
 目の前にはマスメディアからのインタビューの申し出は数知れず、有名企業からのオファーは引く手数多。そんな彼女が、今……自分に話しかけ。

「え、うぇぇぇ!? あ、アイちゃんがですか!? いえ、そんな、大したことないんですけど、そのアイちゃんはぁ!!」

「大したことないってなに!? 私は強いんだけど!!!」

 あわあわとテンパる少女の言葉の綾に、アイゼルネスが抗議を叫ぶ。
 兎も角、バトルの希望にせよ、彼女が言うようなお話にせよ――

「い、いえそんな! 私なんかが話すことなんて何も――」


「勿論良いってさ!」


「うぇぇ!?」
47マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/05(火)01:24:24 ID:5d0
>>45
「おー……? アレは……日向製作所? どこの企業だったっけなー……
 喉のココらへんまでは出かかってるんだけどなー、なんだったかなー?」

男性の正面から、少し大きめのリュックを抱えた青年が、抱える箱の文字を見ながら頭を抱えているのが見えるだろうか。
赤いキャップにジーパン、胸に”定礎”の二文字が堂々と鎮座する謎のTシャツを着た、一見大学生程の青年である。

「あーもうめんどくせえや。直接聞けば即時解決、一件落着ってヤツよ」

「もしもし、そこのお兄さん、その箱の中身をちょーっとばかり見せては貰えないかねー?
 ちょっと前辺りのパーツとか取り扱ってたらめーっちゃくちゃ喜ぶんだけどね。特にチタニア社製のパーツとかさ」

二人がすれ違うであろう数メートル前で、青年は頭のひねりを止め、真っすぐに男性へと足を進めるではないですか。
そして上記の言葉。どうもこの青年、男性をショップの店員か何かと勘違いしているらしい。そうでもなければこんなことは言わないはず。
彼の真剣に箱の文字とにらめっこする姿は単純というかバカというか。とにかくそんな感じ。

「しっかし、お兄さんどこから来たクチ? 日向製作所なんて名前初めて聞いたよボクねぇ……
 ああ、気を悪くしないでちょーだいよ? あんまり企業とか詳しくないんだよねえ。いやーホンっト申し訳ない」

両手を顔の前に出して何度も顔を下げる青年。自分の無知を詫びているつもりだろうが、あまり誠意は見えてこない。
その最中でも視線はたびたび段ボールの口に行っている。そこまで中身が気になるらしい。
48アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/05(火)01:42:04 ID:JsZ
>>46

「――まあ、多分。『その』アリスよ。大したことは、していないのだけれどね。
 だから。そんなに肩肘を張らないで頂戴、菱華さん?」


――菱華、と呼ばれたその少女へと、あくまでアリスは落ち着き払った言葉遣いで、或いはそこに苦笑も交えて。
だが口ぶりとは裏腹に、その声音には決して吝かでない喜色が籠っていた。己の名声を、少なからず彼女は誇りに思っている。
同じくしてアイの手を握り返すフヨウの表情にも、斯様な主人の従者として尽くすことのできる矜持が、穏やかな微笑みの中でも確かに見て取れた。


「もっと自信を持つべきよ、貴女。アイゼルネスは、とても良い機体。それに、貴女の手腕だって。
 謙遜は日本の良い文化だけれど、度が過ぎれば無礼でもある。――優れたプレーヤーがプレッシャーに潰れていく姿を、私は何度も見たことがあるわ」


やや囂しい(さらに言えば、かなり一方的な)言い争いを前に、諭すような彼女の言葉。――その真偽はさておき、少しばかり先輩風を吹かせるような。
鼻につく高慢さを感じるかもしれない。恐らくそれは、アリス自身が意図しているものではないのだろうけれど。


「……そうね。この分だと、言葉よりも実戦の方が分かりやすそうね?」


アイの言葉を聞き遂げて、アリスはひとり頷く。そうして、「親父さん。フィールド、どこにあるかしら?」
――カウンターの奥で、今度は成人誌を開いていた壮年の主人は、無言のうちに店の隅を指差す。
申し分程度に設けられたバトルスペースとその筐体は、恐らくは数世代ほど前のモデル。



「1回、バトルしてみましょうか。ルールは5分のデュエルマッチ。
 先に相手を撃破するか、時間切れになった時点で耐久値の多かった方の勝ち。――どうかしら?」


そうして、彼女はひとつ提案する。あるいはそれは、宣戦布告。またも跳び上がった黒い戦姫は、やすやすとまたアリスの肩に乗ってみせた。
49日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/05(火)01:57:57 ID:c7d
>>47
 
「……はい?チタニア?」
 
取り敢えず大きめの本屋にでも行こうか、とでも考えていたところに突如声をかけてきた青年に、間抜けな声を出してしまう。
今回の大会に挑むに辺りホビーについてある程度勉強してはきたが、如何せん付け焼き刃に近いためか、「チタニア社」の名前にはぴんとこなかったようだ。
 
「はあ……すいません、私もホビーについてあまり詳しいわけじゃないので……。
 地方から大会のために来てるんで、うちの名前知らなくても無理はないですよ」
 
愛想笑いを浮かべながら、さっきから視線をちょくちょく向けられている台車を横にゆっくり滑らせ、隅っこへおいておこうとする。
多分間違いなく、箱を見られたら面倒なことになる。そんな直感に従って……。
武士の内心は、早くこの場を抜け出したい気持ちで一杯だ。
50菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/05(火)02:06:43 ID:3zF
>>48
「う、うぅ……すみません、でも、私……だって……」

 人との会話に慣れていないが故か、それとも元からそういう質か―――兎も角、アリスの言葉に対して菱華は必要以上にしゅんと縮こまっていた。
 相手の言葉を過剰に考え過ぎる、裏側を考え過ぎるというか。兎も角、彼女は最早怒られたような気にすらなっている。
 帽子に飾られたリボンが俯いた。ブツブツと言いながら、肩を竦める菱華に対して。アイゼルネスが、彼女を『駆け上って』その肩へと辿り着き。

「良いから、バトルだって! やったー! バトルだー!!」

「い、痛い痛い痛い痛いよアイちゃん!!」

 その頬を掴んで、ぐいーっと引っ張る。
 縮こまっていた身体が痛みによって飛び上がる。店の隅においてあるのは随分と年季の入ったバトルスペース群、一応ではあるが舞台は整っている。
 経験としては貴重だろう。有名人である彼女と直にバトルが出来るなど――然し、それでもと悩む菱華に対して、アイゼルネスは耳元へと叫ぶ。

「大丈夫! 私は強い!!」 

 だから、早く早くと叫ぶアイゼルネス――そうして、それに押し負けるようにまたおずおずと小さな声で。

「……はい、分かりました。やってみます」

 どうせ大会にエントリーしているのだから、その内対戦はしなければならない。大会には勝ち残れる気はしないし、それならば有名人と対戦しておくのも思い出作りには丁度いいだろうか。
 そんな風に思いながら……少々卑屈ではあるものの、大戦をようやく承諾し。彼女とアイゼルネスは、バトルスペースへと向かうのだ。


「いぇーい! ばとる、ばとる、ばっとっるー!!」
51赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/05(火)02:15:12 ID:Sg3
>>39>>41
素晴らしい戦いだったと、プレイヤーも観客も誰もがそう思って、会場は万雷の拍手に埋め尽くされる。
敗北したはずのプレイヤーすらも、強敵への敬意を持って表象を送る。
そんな中に一人だけ。勝者の側に居るはずのシンヤだけが、悔しさだけを持って立っていたのだろう。
ホビーバトルは所詮遊びである。だがしかし―――否、だからこそ譲れない物が有り、それを機体に篭めているのだ。
形式上は勝利であれど、彼は『ファルシオン』に敗北して、『フヨウ』の囮となって機体を傷つけた。エキシビジョンだ、敗北が何をもたらすわけでもないが
両手に抱える二つに分かれた『ジャンク』は。彼の抱えるそれは敗北を許さない。ホビーバトルを楽しむという感情よりも、ただ勝利が必要なのだ。

「……次は全員俺が潰す。」

それは明確な宣戦布告。
全員だ。嘗ての王者であろうと、女帝であろうと、忍であろうと、その全てを潰すと言い切った。
52マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/05(火)02:28:39 ID:5d0
>>49
「あーやっぱり取り扱ってない感じ。そりゃ申し訳ないね。ボクずうーっとチタニア社製品を探しててさあ、まあ無理だよねー……」

ガックリと肩を落とすマキト。もはや店員からこの言葉を聞かされたのは一度や二度ではないが、何度聞いても辛いモノは辛い。

軽く説明を挟ませてもらうが、チタニア社はこの大会が行われる前に畳んでしまった今は亡きホビー開発企業である。
会社を畳むことになってしまったきっかけは、度重なるコストを度外視したロマン溢れるパーツの販売による財政難なのであるが、この話は追々。
ともかく、現在においては店舗の倉庫の片隅に眠っていた製品が見つかる度に、一部の物好きたちがこぞって買い付けに来る、知る人ぞ知るやヤバイ物なのであるが……
そしてここにいるマキトも、そんな危険物に心を奪われてしまった被害者の一人なのであった。

「これだけ人の多い場所なら一個ぐらい見つかると思ったんだけどなー……、いやホント残念
 ま、無いなら仕方ない。付き合わせてしまってスイマセンねえ」

再び武士に向けて何度も頭を下げるマキト。その最中でもやはり視線は、社名の刷られた段ボール箱へと。
何かあるのではないかと言うプレイヤーのカンか、はたまた単なる興味か。

「ちょーっとちょっと! せっかくだからその箱の中身見せてもらえませんかねえ!
 どうせお兄さんも大会関係者なんでしょ? だったら見たって問題ないっしょ!」

さりげなく端に寄せられる箱を運ぶ台車を両手でつかみ、目標物を逃がすまいと力を籠める。
そのまま抵抗するならば、箱の封を開けるために手を伸ばすことだろう。
箱をその場で開封されたくないのならば、そちらも少々手を出す必要が出てくることになるかもしれない。
53ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)21:26:31 ID:Lay
大盛り上がりを見せたエキシビションの翌日、大会開始まで活気の冷めやらない街の広場には何やら人集りが出来ていた。

「ハイ!皆さまどうぞ御覧になって行って下さい!いえいえお代はいりません、すこーし足を止めて頂ければそれだけで!」

集まった人々の視線を集めているのは、タキシードにシルクハットという〝いかにも〟な服装をした青年の姿。
笑顔を浮かべる顔には星と涙のペイントが描かれ、奇抜な赤い髪の色の上でキラキラとラメが輝いていた。

青年は何も持たない手を叩きあわせ、ゆっくりとそれを開くとその中からステッキを出して見せ、空っぽのシルクハットをステッキで叩くとその中から白い鳩を出して見せた。

「え?これだけかって?いやいやそれだけではありませんよ!」
「それでは!私の優秀な相棒を皆さまにご紹介します!ジョーカー!!」

ただのよくある大道芸と鼻で笑った観客に、人差し指をチッチッと横に振ると空を飛ぶ鳩をステッキで指し示した。
すると鳩が空中で跡形も無く破裂し、白い煙と紙吹雪に変化して、その中から一体のホビーが現れた。
赤と白の縞模様、ピエロの造形そのままな姿のホビーは、空中から落下して青年の持つステッキの先端に軽やかに着地、そのまま片脚立ちになって観客の方にお辞儀をする。

「彼は私の優秀な相棒、そして無二の親友であるマジカルジョーカーでございます、どうか皆様宜しくお願い致します!」

そして青年もまた、ホビーの乗ったステッキを器用に人差し指の先に立たせたまま恭しくお辞儀をする。
人とホビーで行う大道芸、珍しい物が見れると観客達は大いに盛り上がっていた。
54天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)22:05:52 ID:sBv
>>53

「おぉ、スゲー!スゲー!」

 ついに開催された大会の興奮も冷めぬ日の頃、人々は出店に並び大祭りを象徴するかの様に人でごった返し縁日のようだ。
少年、天空ショウはたこ焼き、ヨーヨーとお好み焼き、お面、その他…ext あらゆるモノを買い占め存分に祭りを楽しんでた。

そこに、随分と賑わってる人だかりに野次馬な様に駆けつければ帽子から白い鳩が飛び出す芸を見れば驚嘆の声をあげる。

「おぉ!カッケー! おーい!俺にもっとみせてくれよー!」

ホビーを見ると直ぐ様眼の色を変え、大道芸人に向かい元気よく手を振る。
55ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)22:17:32 ID:Lay
>>54
ステッキの上で逆立ちをしていたジョーカーは、青年が投げたピンポン球をキャッチしてそのままステッキの上で玉乗り、しかもその上でも逆立ちを披露すると歓声が上がった。
その後も綱渡りや寸劇など、まるで人間のように滑らかな芸を見せるジョーカー、青年もまた話術や手際で人々を魅了する。

「さて!それでは本日のメインイベントと行きましょう!」
「まずは皆様の中から一人!お手伝いして下さるゲストの方をお選びします!」

一頻り芸を見せた青年はメインイベントと称し、今回一番の大技の準備に取り掛かった。
その為には一人観客から選ばなくてはならない、よくある手法だがこれがまた受けるのだ、特に子供に。

「それじゃあジョーカー、君は誰が良いと思う?」

それを選ぶのは青年の相棒、青年の肩に乗ったジョーカーは、少し悩む身振りをしてからビシッと観客を指差した。
観客達の視線がその方向に集まる、ジョーカーが指した方向にいたのは元気の良い少年、天空ショウだった。

「おおっと、これは元気の良いお子さんだ!それじゃあ君、こっちの方に来てくれるかな!?」
56天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)22:31:23 ID:sBv
>>55

「すっげえ…」

 熱い歓声に応える様にジョーカーと大道芸人は次々と芸をこなし気付けば周りの人々も魅了され、彼もまたその一人となる。
少年の心は軽業をこなすホビー、ジョーカーに視線を奪われ目を離せずにただ単純に驚嘆の声をあげるだけとなった…。

「……ッ!
 はい!おれ!おれ!てつだいます!」

 この瞬間を待ってました!と言わんばかりの大声でアピールをし更にはその場で大きくジャンプをして見せたが、勿論背の低い彼では注目を浴びる事は無いだろう。
しかし声だけは人一倍あり、それを幸をなし見事選出されガッツポーズを見せる。

「おれ!天空ショウって言います!
よろしくおねがいします!!」
「で、こっちが相棒のプロトユニコーンです!!」

 
 勢いよく駆けつければズボンの裾で手を拭き握手を求めるだろう。
そしていつの間に肩に乗る灰色の四足歩行の幻獣を自慢するように見せる
57ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)22:55:34 ID:Lay
>>56
「はい、元気があっていいねえ!そちらのユニコーン君もよろしく!」

元気良く前に飛び出して来たショウを笑顔で迎え、握手を交わすと観客に向き直る。
片手をショウの肩に置き、もう一度観客に挨拶をした。

「じゃあショウ君、早速だけどお手伝いをお願い出来るかな?」
「そうだなあ……あそこの石畳が黒くなっているところに立っていてもらえるかい?」

そう言って青年がステッキで指し示すのは3m程離れた場所だ、周りには何もなく指示に従えば本当に立っているだけになるだろう。

「それでは皆様には、これからジョーカーが見せてくれるショーの内容をおしらせします!」
「此処にリンゴが一つありますね?」

ショウを移動させている間に青年は観客に説明を始める、何処からともなくリンゴを取り出して観客に見せると、肩に乗ったジョーカーはその手にナイフ型の武器を取り出した。
それは丁度『黒ひげ危機一発』なんかでよく見るようなカラフルな色に染まった物で、玩具のようにしか見えない。

「今からこのリンゴをあの少年の頭に乗せ、ジョーカーがナイフを投げて見事あのリンゴに当ててみせましょう!!」
「しかも!ただ投げるだけじゃありません!ジョーカーはロープにぶら下がったまま、ナイフを投げるというのです!!」

青年の説明を受けた観客はよくある内容ではあるが、実際に目の前で、しかもホビーがそれをやるというのだから期待が高まった。
「勿論、玩具じゃありませんよ」と、ジョーカーのナイフをリンゴに突き刺すとしっかりと突き刺さり、果汁が染み出した。

「……それじゃあ、君はここに立ったまま動かないでね、動くと逆に危険だから」
「大丈夫大丈夫、この芸は1000回以上やったけど怪我人は3人しか出てないから

などと笑えない冗談を吐かしながらショウの頭にリンゴを乗せようとする青年、ちなみにトリックでもなんでもなくしっかりとナイフはリンゴに突き刺さっている。
58天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)23:12:21 ID:FVZ
>>57

「おうッ!元気とホビーバトルだけなら誰にもまけないぜ!」

 悪ガキであり褒められる事が少ないショウにとってこんな些細な事でもへへっ!と照れくさそうに頬を掻き、観客に向かってVサインを送る。

そして「わかった」と二つ返事で暢気に黒い石畳の上に何故か誇らしげに仁王立ちで佇む。

「ん? お、おう?」
「って!けが人出てんのかよ!!」

 そして素直に間抜け面の上に真っ赤な林檎が置かれ、ようやく理解するこの危機的な状況に…喚こうが時既に遅しと言わんばかりに辺りは静寂に満ちている。
 肩に乗った機体の一本角が微かに揺らぐ、主人に危機を察知したのか、それとも偶然なのか何故か、機械的な眼は鋭くジョーカーを睨む様に見える。

「おれも男だ! 覚悟はで、できたぞ!」

ドン!と胸を張り「神様、仏様、かーちゃん」と呟く
59ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)23:32:09 ID:Lay
>>58
「さあ、それでは皆様ご注目……」

街の街灯に括り付けられたロープに逆さまにぶら下がり、その手にナイフを構えるジョーカー、観客はゴクリと唾を飲み込んで見守る。
シンとした静寂、精神を統一するような間、表情の一切変わらないジョーカーの目が、ショウの肩に乗るプロトユニコーンの方を見た。

その瞬間、ジョーカーは一瞬で3つのナイフを投擲、空気を斬り裂きながらナイフはリンゴを捉えるが、しかし様子がおかしい。
3つのナイフの内2つはリンゴに間違いなく突き刺さるだろう、しかし残りの1つが大きく方向をそれている。
それはショウに───否、ショウの肩に乗るプロトユニコーンに向かって突き進む、大道芸の一環とは言えこれもれっきとしたホビー用の武器、本来はバトルで攻撃に使われるもの。
すなわちプロトユニコーンに当たればタダでは済まない、しかもその方向のズレに青年は気付いている様子を見せていなかった。
60天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)23:53:22 ID:sBv
>>59

「やっぱこえぇーーッ!!」

 流石に年相応の反応を示し、動こうにも身体が公硬直した様に動けず生唾を飲み瞼を閉じ、刃の投擲が静寂の均衡を打ち破る。

ーーザクッ、ザクッ。………キン! ザクリ。
心地好い音色を奏で予想通りに、頭上の林檎に刺さる音を耳に伝わる。そして僅かの時間を経て遅れ3本目のナイフが垂直に林檎を刺す。

 襲い掛かる“魔手”による投擲に、高機動力を生かしプロトユニコーンは角を振ればナイフを器用に反らし、頭上の林檎にナイフを乗せる離れ業を見せる。

一瞬の出来事なので周りからしたら、ワープの類いだと思うだろう。

 勿論、このまま失敗かと思われた種も仕掛けも無い正真正銘のショーを成功に導いた張本人(?)は肩でジョーカーの事を見据えていた。
プロトタイプのAIには言語は積まれておらず喋る事は無いが何処か言いたげな表情だった。



「すげぇよ兄ちゃん! 俺もうダメかと…」

 林檎を掴むとするする腰が抜ける様に、座り込む。
61ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/06(水)00:04:17 ID:uAy
>>60
「───………」

音が違う、青年は一瞬の出来事の中で限られた違和感という情報から、何が起きたかを瞬間的に理解した。
観客に笑顔を見せたまま、横目でジョーカーとプロトユニコーンを見て、納得する。

少し遅れて拍手喝采、見事にリンゴにナイフを突き刺したジョーカーと、勇気ある少年に対して観客が歓声を浴びせる。
青年はショウの手を取って立つのを手伝い、そのまま観客に大きくお辞儀をした、これにて今日のショーは幕引き。


大道芸の披露が終わり、客が散り散りに帰って行く前で青年は後片付けをしながら退散の準備をする。
その途中、まだショウがその場を離れていなかったのなら、そこにいるショウに気が付いて笑顔を向けるだろう。

「いやあ助かったよ、君のお陰で最高のショーにする事が出来た」
「僕の名前はジョセフ・ドーソン、よろしくね」
62天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/06(水)00:17:51 ID:qSo
>>61

「やーどうも!どうも!俺は天空ショウ!
 この大会で優勝しますッ!」

 何故か拍手に応える様に勢いよく手を借り立ち上がれば大きく跳躍して宣伝活動を始め眩しい太陽の笑顔を見せるだろう。
先程まで怯えたのはどこ吹く風だろうか、コロコロと表情を変え、最後のお客が居なくなるまで宣伝活動を続けるだろう。

「いやいやぁ~そんな俺のお陰なんて~」
「おう、よろしくなジョセフの兄ちゃん! 俺、ショウ!天空ショウ!」

 疎らとなった客足を見納めて二度めの挨拶を済ます。
鈍感で謙遜にも気付かず先程の出来事はどうやらショウは気付いておらず尊敬の眼差しでジョセフに応える。
 
「ジョセフの兄ちゃんの機体スゲー精度だな! じょーかー?だっけ?」
「兄ちゃんも大会でんの?」

気付けば成り行きで片付けの準備を手伝う。
63アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)00:21:34 ID:aPu
>>50

「――あら、本当にいいんですか? わたしも、マスターも、手加減の難い性分ですが」

押し合うようなふたりのやり取りを、フヨウは目を丸くして見ていた。不承不承の返事であることも理解していた。
マスター、いかがいたしましょう。そう言いたげに、彼女は主人の顔を見つけるけれど。

「大丈夫、大丈夫。貴女たちとなら、きっと良い勝負ができるわ。……さ、始めましょう?」

そのような機微など知ったことではないとばかりに、彼女もまたウインクして、誰に宛てたわけでもない言葉。
「――マスターのご命令とあらば、仰せのままに。」そうフヨウも言葉を返して、またも主人の肩から跳び上がった。
続けてアリスは、その懐から無造作に何かを放る。眼で追うことができたのならば、それは戦姫の武装パーツ。
艶のない一緒の黒に、肩口だけは赤く塗られて、背中に天一文字を背負ったもの。黒い戦姫のムーンサルトが、下弦を描く。
――そのまま彼女は、宙に舞ったパーツを目掛けて手を伸ばす。脚で薙いで、落ちる中で背負いつつ、着地点は既に計算済み。
ほんの刹那のことだった。素体姿だった筈の黒い戦姫は、瞬く間に着身を完了させて、バトルフィールドに立っていた。


「とはいえ、アンフェアよね。此方の耐久値は、半分に設定しておきましょうか――」
「……それに、まだ組み直せてない武装もあるし……ま、いいか」


その片手間に筐体の入力系を弄りつつ、アリスはVR出力するステージを決めてゆく。
俗に「都市」と呼ばれる、荒れ果てた夜のビル街をモデルとしたフィールド。
コンクリートの所々が罅割れた大通りに、両者は向かい合って立つことになる。
「宜しくお願い致します」――ホログラムが、フィールドを包みゆく中。素知らぬ様子で、フヨウは一礼してみせた。


「先手は譲るわ。かかってきて頂戴?」


造作もない言葉だった。無形の位のままに、フヨウは立っている。黒い装甲に仮初めの月光が照って、微かな艶めきを宿していた。
64ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/06(水)00:35:21 ID:uAy
>>62
「うんうん、君と君の相棒ならきっと優勝出来るさ」
「僕も大会には参加するんだけどね、まあただの賑やかしだよ、勝ちには期待していないかな」

ショウが大会参加者だとわかると、自分もそうであることを明かした、しかし同じ大会参加者でもそのスタンスはまったく違う。
彼はバトルであっても楽しませる事を目的としている為勝敗に対しては執着は無かった。

「さて、と……それじゃあ、僕等はここで失礼するよ」

そうして片付け終えた荷物を纏めると、もう用はないこの場からジョセフ場を歩いて立ち去る。
65天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/06(水)00:46:33 ID:qSo
>>64

「んー、…人を楽しませるのはモチロンだけどよー
 自分も楽しまなきゃいみねーんじゃねーか」

 不満げに頬を膨らませ文句を垂れる大人の思考は未だに判らない、先ずは自分が楽しまなきゃお客を満足させる事は出来ないと思うのは少年の持論である。
賑やかしで参加と言う言葉に妙に取っ掛かりを覚え純粋な少年の心は疑問に包まれる。

「へへっ!じゃ次会ったらライバル同士だなッ!」
「またなー!」

 また何時か会えると直感が告げているのか別れを惜しむこと無く手を大きく笑顔で振る。

唯一、肩に乗る幻獣だけは《ジョーカー》を見失うまで直視し続けていた
66菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)00:47:07 ID:1vM
>>63
「いや、私は別にハンデなんかいらないんだけどねぇー」

「ちょ、アイちゃん、駄目だよ、まともに戦ったら勝負になんて……」

「……まぁ、いっか」

 何か思うところがありそうな表情のまま、まあ良いかと納得するアイゼルネスを尻目に菱華は後腰のポーチの中から一つ箱を取り出した。
 ……それを開く前に、アリスの戦姫の装着を見た。何とも華麗、言うなればまるで『変身』でも見ているかのような鮮やかさであった。
 流石にその技術には菱華も素直に感動しつつ――――「私だってあれくらい出来るもん!」と喚くアイゼルネスの前に、箱を置いた。
 内部は格納庫をイメージした戦姫のパーツ収納ケースとなっていた。その中にアイゼルネスが立ち入ると、伸びたロボットアームが自動でパーツを装着していく。


「よーっし、準備完了。コンディション良好、過不足一切無し!!」


 重装高機動である機体をモチーフとしたアイゼルネス・クロイツ――――黒と紺を貴重とし、僅かに入れられた赤色がよく映える。
 巨大なバックパックと各部に搭載された巨大な、そして更に細かく搭載された姿勢制御用ブースター達がその機体がどのようなコンセプトで作り出されたかを物語る。
 頭部……性格には目元付近を、蒼色の光を放つモノアイ型補助バイザーが覆った。その右手には長大なビーム・ライフル、左手には縦長の角ばったシールド。
 高級機ながら、それでいて量産機らしい質実剛健さが、其処からは垣間見えるだろうか。

「へぇ、優しいね……じゃあ、行くよ菱華!!」

「う、うん。分かった、頑張る……」

 お言葉に甘えてと、アイゼルネスは先手は貰うことにする。さてどう攻めるかと一瞬彼女は考えたが、元より相手機体のコンセプトは分かったものではない。
 ならばいつも通りにやるのみである……として。先ずはその場から、ビーム・ライフルによる射撃を敢行する。
 様子見とは言え、その射撃は正確無比にその右足を撃ち貫こうとしていた。先ずは機動性を奪い取る腹積もりだった。
67アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)01:07:45 ID:aPu
>>66


    「……いい機体、してるなァ」


戦場に降り立ったアイゼルネスの姿に、ひとり「女帝」は呟いた。精鋭無比の重武装を、強靭な推力で振り回すコンセプト。
それは単なる強引さのように見えて、確かな構築理論に裏打ちされねば成立しないもの。当の本人に、その自覚があるかは知れずとも――。
油断ならない邂逅の中、しかしアリスは思索に耽る。フヨウとは、別のコンセプトの機体も。そう、例えば重装甲型。フルスクラッチも楽しそうね、と。


(動いた。でも距離は詰めない。射撃戦か。)


そして、濃紺の機体が動く。装甲に包まれた片腕が持ち上がった。トリガーが引かれるより先に、アリスはそれを知覚していた。
粒子ライフルの閃光が夜を駆ける。黒い戦姫もまた、その動きを見切っていた。――射線を染める光条。
されどそれは、微かにフヨウの脚部を掠めるのみ。ひらりと突風に舞う木の葉のような動きで、彼女はその一撃を躱した。
――ゆらり揺らめいた黒い機体が、背部に搭載したイオンスラスターを閃かせる。


     「フヨウ。プランA、ドライスィヒ」
         「イエス、マスター」


淡々と、そう告げる。次の一刹那には、真横に聳り立つビル壁へと、彼女は「跳んで」いた。
スラスターを不規則に起動させ、回線数を不安定に上下させながら――三角飛びの要領で、或いは街頭、或いはベンチ、あらゆゆものを足蹴にしつつ。
時には遮蔽物に身を隠しながら、その撹乱的挙動を以って、フヨウは距離を詰めようとする。両腰に収められた2振りのロングブレードは、既に握られていた。
68菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)01:34:45 ID:1vM
>>67

「――――バック!」

「はいよっ!!」

 或いはまるで夜闇の如く……単純な高速起動ではない。オンとオフを繰り返すことによる上下動による撹乱機動。
 当然の話ではあるが簡単には、一筋縄には行かない相手だ。そして手に握るロングブレードを見るに、恐らくは近接格闘戦闘にも覚えがあるのだろう。
 なれば、態々相手の間合いに入って戦う必要はない……と。菱華は判断し、そしてその言葉とともにバック・ブースターを噴射しながらアイゼルネスが後退する。
 僅かに足を浮かして足裏のブースターを前方に向ければ、その出力が重厚な機体を後方へと持っていく……踵が擦れて、火花を散らしながら。

(……ただ、早いだけじゃない。不規則な機動で的確に車線をズラしてくる。しかもそれを高水準で。私がフリーでやってきた誰よりも……)

「兎に角距離を取りながら何時も通りの戦いをやって、アイちゃん! 但し回避機動は絶対に忘れないで!隙を見せたら絶対やられちゃう!」

「了解! そっちもいざという時には頼んだよ!!」

 そして後退と共にレーザー・ライフルを放つ。
 目標はロングブレードを握る内、その右肩。そしてそれと同時に、背部ミサイルランチャーを展開する。
 ロックオン対象は無論、『フヨウ』。ロックオンサイトがいくつも重なり、六発分、左右両方で十二発分のロックオンが完了したのであれば。


「生憎そっちの思う通りにはやるつもりはないもんねっ、吹き飛べ!!」


 そして、垂直に十二発の対艦ミサイルが発射される。
 上空より、僅かに間を開けながら動く彼女を僅かに追尾しつつ落下する形でミサイルは彼女に襲いくることだろう。
 そして、その着弾開始と同時に。今度は頭部へとめがけて、ビーム・ライフルの一撃を放つ。
69アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)02:08:44 ID:aPu
>>68

ブースターが大気を灼き、アイゼルネスの重き躯体を動かしてゆく。後退射撃の典型例。格闘戦への最もポピュラーな対応策。
今のフヨウは実の所、真っ当な攻撃手段をこのロングブレードしか有していない。先日のエキシビジョン・マッチにて、2人は射撃武装の大半を全損させていた。
現在彼女が用いられるのは両腕のブレードと、それぞれ掌に仕込んだ拡散縮退パルス砲のみ。距離を詰めねばならぬのは、必然であり――。
――フヨウの電脳に、鳴り響くロックオンアラート。またも構えられるビームライフル。展開されるミサイルポッド。

(ミサイル。高威力型を、あんなにも。躱しきれないな。)
(間違いなく数発は当たる。これはダメコン必至として……問題は、その追撃)

(機動力ではこちらが勝ってる。ブースターが無くったって、距離の詰められる相手――!!)


 「イヴェイド。レフト150mm、アイン」「ライト85mm、ツヴァイ」「パワーダイヴ、フェルマータ」
 「――プランJ、ツェーン!」     「イエス、マスター!」


矢継ぎ早にアリスはそう命じた。転瞬、フライトパックから青白い噴射炎。回転数を限界まで引き上げる。プロンプトから「武装解除」の実行を、3秒後。
先ず放たれたレーザーライフルを軽く横に躱して、続くミサイルの先ずは3発を直角機動でビル壁に打つける。
そのまま機体は急降下。ほとんど地面に腹部を掠めるようにして、残る3発のミサイルは地面へと。そのままの機動で、アイゼルネスへと真っ直ぐに突撃する。
――残る6発が、フヨウの背を撃ち抜こうとした瞬間。その背中から「分離」したフライトパックがインメルマン・ターン。
全てのミサイルを引き付けながら、やがて追い付かれ夜空に爆散する。――最後に放たれたライフルに、右肩部を撃ち抜かれながらも。


「――生憎、わたしからも。そう簡単に吹き飛ぶつもりは、御座いませんよ」


だンッ、とフヨウの装甲脚が地面を踏み抜く。耐久値を3分の1ほど削られながらも、ブレードの射程内まで踏み込んだ、その黒い神姫は。
紅い眼光を残像にして、紺碧の装甲に一太刀の逆袈裟を見舞おうとするだろう。――もし受けたのならば、それだけでは致命とは成らずとしても。
70菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)02:38:22 ID:1vM
>>69

「やったぁ!!」

 十二発のミサイルがフヨウを捉え、そしてそうなれば敵機は必然その対応に追われざるをえない。
 対艦ミサイル達が直接的にダメージを与えられたわけではない。それは正しく技巧、数多の機動を駆使してあらぬ場所へと叩きつけられた。
 そしてフライトパックを一息に犠牲にする思い切りの良さ。流石は、天才アーキテクトであるが。ビームライフルの一撃は、確りと肩部を撃ち抜いた。

「まだ戦いは終わってないってば!!!」

 然し。その喜びに対して致命的であったのは、ブレードの範囲内に彼女を入れてしまったことだろう。
 無論それを見逃すほどに彼女も優しくはないだろう。であれば必然、その刃はアイゼルネスの装甲を叩き切ってしまわんと振るわれる。
 咄嗟にアイゼルネスが左腕のシールドを構える――――一太刀の下に真っ二つにされたそれを直ぐ様自分から切り離した。
 確かにダメージは稼いだ……だが。その代償として、アイゼルネスは酷く追い詰められることになる。

「菱華ァ、何やってんの! インコム!!!」

「は、はい!! ごめんねアイちゃん!!」

 背部バックパックより、二つのディスク状の子機が射出される。有線によって接続されたそれらは、不規則な軌道を描きながら展開され。 
 正しく至近、ライフルでは対応しきれない距離にまでやってきたフヨウに対して、両側面からの射撃を以てして撃ち抜かんとするだろう。
 所謂、オールレンジ攻撃を行う機器の内の一つ……マスター側が制御する、特殊遠隔操作型兵器であった。


「だったら、懇切丁寧に吹き飛ばしてやればいいんでしょォ!!!」


 そして、更にバック・ブースターを加速させながらレーザー・ライフルを撃つ……次の狙いは胸部。 
 余り長引かせるのは得策ではない。遠距離から此処まで迫ることが出来る機動力と、実力が向こうにある。出来ることならば、一気に勝負を決めたいが――――
71アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)03:08:11 ID:aPu
>>70

ヴィヴロブレードの一閃が、確実にアイゼルネスの装甲を断ち切る。実体刃ゆえの確かな感触。然しそれでも、斬り得たのは防盾に過ぎない。
アイゼルネスの素体には、未だにダメージを与えられていない。そしてまたフヨウは飛行手段を失った。苛烈な機動戦による翻弄は、もはや望めず。
――決して良からぬ状況にあるのは、彼女たちも同じだった。ひとつ、アリスは歯噛みをする。


(ちィ――流石に、武装が少なすぎた。攻め手に欠けるわ、これじゃ)
(……全損覚悟ね。まったく、楽しませてくれるじゃないの)


それでもアリスは笑うのだ。不敵に唇を歪ませて、心の底から楽しげに。彼女自身、きっとそれは不可解であったろう。
幾らプラモの出来が良いとは言え、単なるアマチュアと戦っているに過ぎないのに。しかも、少なからぬハンデを自身に課しながら。
自身の実力が十全に発揮できない環境を、彼女はひどく嫌う筈なのに――不思議と頬を緩ませてしまう、この情動は何なのか。


(また何か射した。マスター操作の有線兵器か――でも、それが命取りだッ!)

「スロー、サイド!」「マージン保持!」「RNG26