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ここだけホビーバトル大会 その1

1o7SK7L7zxJvm:2017/09/01(金)21:17:47 ID:ZyY()
時は現代より少しだけ近未来、世界を熱狂させるホビーバトルの世界大会が今年も開催されようとしていました。
そしてあなたは大会が開催されるこの地へと訪れました。かけがえのないパートナーと共に、この大会で優勝する為に。
それは栄光の為に、賞金の為に、約束の為に、夢の為に……理由はそれぞれでしょうが、立ち塞がるのは数多くのライバル達。
この大会が終わった時、誰が勝利の栄光を手にするのか……それはまだ、誰にもわかりません。


・大会について
World Hobby Battle Tournament……略して WHBT。一年に一度、数ヶ月に渡って開催されるホビーバトルの祭典です。
巨大な会場内では幾つものドームで連日競技が催され、それ以外にも数々の催し物や大会参加者向けの宿泊施設も存在しています。
ただし最大の会場となるメインアリーナは本戦の開始までは解放されず、そのアリーナには大会優勝者に送られるトロフィーも安置されています。


・バトルシステムとホビーついて
フィールドはバーチャルグラフィックで対戦の度に形成され、その内容は地上から宇宙まで、市街地から火山地帯まで自在に用意することが可能です。
またフィールド内ではホビーの耐久値は数値として可視化され、相手の耐久値を0にすることがこの競技の勝利条件となります。
貴方はホビーを実際に操縦しても、戦闘は機体AIに任せて自分はサポートに回っても構いません。その戦い方は全て貴方次第です。
またバトルでホビーが負った損傷は実際のダメージとしてフィードバックされます。ただ戦うだけでなく、修理や改修もこの競技の要の一つなのです。

レギュレーションで定められた、大会で使用可能なホビーは三種類存在します。
人型ロボット模型として展開する『闘機』シリーズ。
獣型ロボット模型として展開する『鋼獣』シリーズ。
美少女ロボット模型として展開する『戦姫』シリーズ。
どれもサイズは平均として10〜20cm、また全てのホビーには最高で人間と同等の知能を有するAIを搭載することが可能となっています(『戦姫』のみAIはデフォルトで搭載)。
ホビーの性能はその完成度に依存します。例え強力な武装であっても作り込みが甘ければ性能が発揮されることはなく、その逆も当然あり得ます。
またAIを搭載した機体であれば競技中でなくとも自立稼働が可能となっており、 AIを搭載せずともバトルシステムを流用すれば競技外での駆動は可能でしょう。


キャラシート1(キャラクター)
【名前】キャラクターの名前
【性別】キャラクターの性別
【年齢】キャラクターの年齢
【風貌】キャラクターの風貌
【概要】キャラクターの概要

キャラシート1(ホビー)
【名前】ホビーの名前
【シリーズ】『闘機』/『鋼獣』/『戦姫』のいずれか
【風貌】ホビーの風貌
【装備】ホビーの装備
【概要】ホビーの概要

雑談スレ
http://kohada.open2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1504192694/
2o7SK7L7zxJvm :2017/09/01(金)21:18:46 ID:ZyY()
World Hobby Battle Tournament……略して WHBT。一年に一度開催されるホビーバトルの祭典であり、最強のホビーの座をかけて多くのプレイヤーが凌ぎを削る。
そこには必ずやドラマがある。勝利の栄光があれば敗北の挫折があり、夢を叶える者が存在すれば夢破れる者も存在する。

けれども、今は大会が開催される直前の期間。競技の会場となる幾つものドームはまだどれも解放されておらず、戦いの火蓋はまだ切られてはいない。
けれども会場は既に多くの人々で賑わっている。多くの屋台や催し物が開かれ、大会の参加者もそうでない者もこの”お祭り“を心から楽しんでいる。
また、大会が待ちきれないのか、至る所で野良バトルが行われており、その周囲では観戦する人々で小さな人だかりもできていた。

大会はまだまだ、始まってすらいない。けれども皆の熱気は、闘志は、既に熱く燃え盛っている!!
3瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/01(金)22:29:37 ID:ZyY()
大会会場である広大な敷地は、どこもかしこも人々と活気に満ち溢れていた。
例えば美味しそうな香りを漂わせる屋台の数々、一般客向けの大道芸やパフォーマンス、そして模型の製作体験会なんてものまで開かれている。
この辺り一帯が巨大なお祭りの舞台となっていた。大会競技そのものはまだ開催されていないにも関わらず、伝わる熱気は凄まじいものだった。

「……ああっ!?すいません通してもらっても……ってうわっとっと!!?」

そんな活気の中、人混みの中を掻き分けるようにして、少女は街道を進んでいく。
しかし小柄な彼女の体では人並みにさらわれないようにするのが精一杯で、片手に握った地図を見る余裕なんてなかったらしく。

やがて彼女がなんとか辿り着いたのは小さな広場。木製のベンチやお洒落な噴水が存在し、自分と同じように人混みから逃れた人々が休息している、そんな場所。
そして彼女もまた人々と同じようにベンチの一つに腰を下せば、大きなため息を一零した。インドア派な人間にとって、この環境は少々過酷だった。

「は……どこでやってるんだろ。この人混みじゃあ目的の場所さえよくわかんないや」

現在地もよくわからず、くしゃくしゃになった地図をひらひらと団扇代わりに扇ぎながら、そんな愚痴をぽろりと零す。
当然、独り言で答える相手などいるはずもない……筈なのだが、彼女の言葉に答えるものが存在した。それは彼女の懐から『ワオン』と鳴き声を発していた。
そしてそれは次の瞬間、彼女の懐からぴょんと飛び出して姿を現す……その正体は純白の狼型『鋼獣』、彼女こと瑞樹 カナデのパートナー。

「あはは〜シルバーもごめんね。大会はまだ開催されてないから、戦うのはもう少し後。それまでは我慢していてね」

『ワンっ』

そう答えた手乗り狼は、カナデの肩に飛び移れば器用に丸くなって寛ぐ様子を見せる。まるで気にするなと言わんばかりに。
一人と一匹……もとい一人の一機、彼女たちは一般客ではなくこの大会に参加するために訪れたプレイヤーであり、同じようなプレイヤーが既にこの会場には何人も存在していた。
しかしこれからどのような出会いが、どのような物語が始まるかはまだ誰にも分からない。
4佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/01(金)22:55:14 ID:gnm
>>3

「うぅ~…こ、この人混みはっ…死にますっ…死んでしまいますぅ…」

人混みに揉みくちゃにされながら、そんな情けない声をあげて流されているのは少女だった。
ひ弱そうな見た目の通り、人混みの流れに逆らおうとはしているものの到底叶うはずがなく。

そうしてやっと放り出された場所は小さな広場だった。目的の場所とはほど遠く、しかしあの人混みにもう一度揉まれるというのは流石に遠慮したい。
どうやらここは自分と同じような人たちで溢れているようでベンチに座って休憩している人が沢山いるようだ。
ならば自分も少し休憩しようと適当なベンチに腰掛ける。

『マスターは相変わらずだ、もう少し体力を付けたらどうだ?』

「う、うるさいなぁ…だって仕方ないでしょ…こんな人混みじゃあ……」

カバンの中から聞こえてくる声に渋々とそう答える。知らない人から見れば変人に見えるが、その声はミナホが出した声では決して無い。
そんなことを話していると、隣から何やら犬のような鳴き声が聞こえてくる。確か近くに犬は居なかったのにとチラリと隣を見ればそこには見たことのあるフォルムの狼が少女の肩に乗っていた。
あれは確か『鋼獣』シリーズのシルバーウルフ…でも少しシルエットが違うような……

『ほう、どうやら隣の女人も参加者なのではないか?』

「そうなのかな…って外ではあまり出たらダメって言ったでしょっ!もしも迷子とかになっちゃったらっ………」

いつの間にか膝の上に立っていたのは『戦姫』シリーズの忍者を彷彿とさせる姿。今は武装は外していて装甲も必要最低限までしか付けていないようだ。
とそこまで言ったところで自分がかなりの大声を出していたことに気付き慌てて隣を見る。

「す、すいませんっ…大声、出してしまってっ……」

オドオドとした様子でそんな風に謝るのだった。
5瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/01(金)23:21:08 ID:ZyY()
>>4

「……ん?どうしたのシルバー」

丸まっていた筈のシルバーウルフがいつの間にか立ち上がり、ある一点をバイザー越しに見つめていた。そして大声に釣られてカナデも視線を移したなら。
そこには一人と一機の姿があった。相手は慌てて何やら謝っているようだったが、その瞬間にカナデの興味は一人ではなく一機の方に釘付けにされていた。
ベンチから立ち上がると、つかつかつかと駆け足で間合いを詰める。そしてじっと見つめる先は、彼女の膝の上にいる『戦姫』。その瞳はキラキラと輝いていて。

「おおー!!『戦姫』シリーズの改造機体!!いいないいなあ、この娘は貴方が作ったんだよね?こうしてみるとやっぱり可愛いなー
 ふむふむふむ……武装は外してあるのかな、それとも素体のみの作例?あー肌の仕上げが丁寧でいいなあこれ!!トップコートはどうしたの?それからそれからーーー」

瑞樹カナデはモデラーであるが基本的に『鋼獣』シリーズしか触らない。しかしその理由は個人の拘りであり、他のシリーズに関心がないという訳でもない。
作品の良し悪しを図るだけの審美眼はあるつもりで、それが力の籠った作品であるなら興味が湧かない筈がない。そうして気がつけばマシンガンの如き言葉の雨を発していた。
無論、悪気はない。ただホビーのことになると歯止めが効かなってしまうだけなのだ。ただしそんな態度を相手が好意的に受け取ってくれるかは別問題で。

『ワン』

「———あ痛っ!!?」

見かねシルバーウルフが肩から飛び上がると、そのままカナデの後頭部に軽い蹴りをいれた。
結構痛かったのか、そのまま彼女は黙って頭を抱えて蹲る。くるりと回転して地面に着地したウルフはといえば涼しい顔を浮かべるだけ。
表情なんてないのだが、実際にそういう態度なのだから仕方ない。そうしてバイザー越しにミナホと戦姫を見つめる狼はまるで『すまないね』とでも言っているようだった。

「……はい、ごめんなさいシルバー。また我を忘れてしまいました」

「ええっと……始めまして。貴方もこの大会の参加者ということでい……宜しいでしょうか?」

反省した様子のカナデもやがて立ち上がったなら、改めて丁寧語でそう尋ねるだろう。
いつの間にかシルバーウルフも肩の上に戻っていて、どうやらそこが彼にとっての定位置のようだった。
6佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/01(金)23:43:03 ID:gnm
>>5

「えっ、あっ、うっ、えっとっ…!!?」

そのさながらマシンガンのような剣幕に圧倒されまともな言葉が出てこない。普通の人でも圧倒されそうなのにそれがミナホともなれば言葉さえ返すことはできないほど。
しかしその場を救ってくれたのはまさかの少女の肩に乗っていたシルバーウルフだった。

(うぅ怖いぃ…こんな人ばっかりなのかな……)

ミナホが抱くその第一印象は「怖い人」で決定したらしい。あのシルバーウルフには本当に感謝しないといけない。
気を取り直して、一旦深呼吸をするとさきほどとは打って変わって丁寧に話し始めた相手に返す言葉を探す。
他人と話すときはしっかりと目を見て話す。そう教わった通りにじーっと相手の目を見つめながら自己紹介。

「は、はいっ…さ、佐々木部ミナホと、申しますっ…」

『相変わらずなマスターだ、私はシラヌイと言う。こちらのマスターは小心者の人見知りでな、大目に見てもらえると助かる』

「ち、ちょっとシラヌイっ…!」

シラヌイの発言に顔を真っ赤にしながらシラヌイに文句を言う。主人に対して相変わらずの口調だがそういう性格なのだから仕方がない。
むしろこんな風に言ってくれるものが近くにいたほうがやりやすいのかもしれなかった。

「じゃあ…やっぱりあなたも参加者、なんですね…そ、さっきそのシルバーウルフが目に入って……カスタム機、ですか…?」
7瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/02(土)00:08:54 ID:vuU()
>>4

「私は瑞樹カナデ、学生とモデラーやってます。で、こっちは私の相棒のシルバー
 そう!!ご覧の通り『鋼獣』シリーズの名作キット、シルバーウルフのオリジナルカスタム機。今回はこの子と一緒に大会に参加するつもりなのです!!」

『ワン』

改めて自己紹介をすれば、それに応じるようにシルバーウルフも一鳴きして挨拶する。人語を発さない動物型といっても感情豊かなAIのようだった。
カナデはというとうずうずと相手の戦姫について色々と尋ねたいようだったが、口を開けば先ほどのようになるのが目に見えているので自重する。
というか、自重しなければシルバーウルフの蹴りが再び炸裂するだけなので、したくてもできないと表現するのが正しかったが。

しかしシルバーウルフについて尋ねられれば、今度は別の意味でその瞳を輝かせる。
モデラーであるならば、自分の作った作品に関心をもたれて嬉しくない筈がない。そして彼女はシルバーを掌にの上に乗せたなら、楽しそうに語り出す。

「ふふふ……やっぱり気になる?実はこの子は私の一番の自信作でねー
 元々スタイルの良いキットだからプロモーションを損なわないように調整して、追加装甲も稼働に極力干渉しないように工夫したんだ。いやー大会に間に合ってほんと良かった!!」

シルバーウルフ、『鋼獣』シリーズとしては初期の品でありながらシャープなプロモーションと優れた稼働範囲で今も尚色褪せない名作と呼ばれるキット。
そのキットに惚れ込んだ彼女が、この大会の為に多くの時間と努力を費やして作り上げたのがこの作品、シルバーウルフ・カスタムである。
それを掲げる彼女はとても誇らしげで、そして嬉しそうで、最も肝心のシルバーウルフはというと眠たげに欠伸をしているのだったが。

「けれども貴方の機体……えっと、シラヌイちゃんだね。その子もよくできてるね
 私は普段『鋼獣』以外は作らないからさ、こうして力の籠った『戦姫』を見る機会なんてなかなかなかったんだよねー」

そういった出逢いを求める意味でも、この大会に参加する意味があったと付け足せば、カナデは楽しそうに微笑んだ。
彼女は模型熱さえ発症しなければ、明朗快活で大まかな性格の少女であることに違いないのだった。
8佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/02(土)16:05:17 ID:u9P
>>7

「み、瑞樹さんとシルバーさん…ですねっ…よろしく、です…」

『カナデ殿に銀狼か、こちらは見てわかる通り私が出場するつもりだ』

今は武装や装甲は外しているが、それらを装着すればたちまちに戦闘ができる状態になる。
ミナホもまだビクビクとはしているもののだいぶ会話に慣れてきたのか最初よりかはスムーズに会話が進んでいる。シルバーウルフがカナデを制止してくれているのも大きいだろう。

「凄いですね…私は戦闘用に組んだのは初めてなんです…普段は観賞用でしか作らなくて……」

元々プラモ作りは趣味でやっていたことで誰かに見せようなどはしたことがない。モデラーとして有名になる人も居るのだろうがそんなことには興味は無く、故に今目の前にいるのが学生モデラーとして有名な人物だということを知る由もない。
だがこのシルバーウルフの完成度はよく分かる。しっかりと細部まで作り込まれていてなおかつ戦闘に支障が出ないように配慮されている。昨日今日で作れるものでは無く作品への愛が感じられる。そう思えば誇らしげに語るその姿はどことなく親しみを感じられるものだ。

「う、うん…今は素体のままだけど……んしょっと…」

そう言ってカバンの中から取り出したのは何やらおしゃれな文字で『SHIRANUI』と書かれたケースのようなものを取り出した。

「この中に武装と装甲が入ってるの、普段は付けたままだとシラヌイも大変かなって……」

『そんなことは無いのだがな、我がマスターは心配性だ』

微笑むカナデにまだぎこちないながらも笑顔を返す。
最初の「怖い人」という評価は撤回だ。この人は「良い人」なんだから。
9瑞樹 カナデ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)01:27:49 ID:gTq()
>>8

「初の戦闘用モデル……つまりあなたにとってこの大会はデビュー戦でもあるということだね
 ああ、いいなあ……ここからまた新たなモデラーが一人、過酷ながらも華やかなバトルの道に踏み出すという訳なんだね……」

『ワン』

シルバーの鳴き声はやはり人に理解できる言語ではなかったが、それでも“何バカなこと言ってるんだ”みたいなニュアンスは伝わるだろう。

この調子でやや自分の世界に篭り気味なカナデであったが、その本音は自分と同じように模型に対して情熱を持った人と知り合えたと言うことが嬉しくて仕方がないというシンプルな感情だった。
目の前の彼女がシラヌイに籠めた想いというのは、その丁寧な作り込みを見れば言われずとも理解できる。肌の仕上げ、丁寧な化粧、強さよりも可愛らしさが伝わる作り込みは、彼女の作品愛に他ならない。
そして、自分の作品に愛や情熱を込められる人間に悪い人間はいない……この出会いはそれだけで、この大会に訪れる価値があったと言えるものだった。

「武装も見せて……っていう訳にはいかないね。何せ、大会はまだまだこれからなんだから」

「あっ、装甲に関してはシルバーだって凄いんだよ!!。今は最低限の追加装甲しか装着してないけど実践ではもっとたくさんの増加装甲にブースターも……あっ、あとは大会でのお楽しみで!!」

実践となればまた別の姿を見せるのはお互い同じ。それぞれにおいて全く別の顔が見られるのがこの大会の醍醐味であり、製作者の拘りポイントでもある。
このシルバーウルフだって、今でこそペットの犬のような態度を見せているものの、いざ戦いとなれば優秀な猟犬……否、狼となって戦場を駆ける予定なのだ。
それは彼女だって、シラヌイだって同じだろう。ここにいるということは、同好の士であると同時にこれから凌ぎを削りあうライバルなのだから。

「これ、私の連絡先!!もしよかったら何時でも連絡してね
 大会中は基本会場で遊んでいるか模型弄ってるかバトルしているからだし、よかったら何時でも遊ぼう!」

そうしてカナデはモデラー名義の名刺を差し出し、押し付けるように渡すだろう。
そもそも彼女は遠方からこの会場に訪れている身であり、参加者用の宿泊施設を利用していることもあって大会中はこの会場にずっといるつもりだった。
だから、なにかあったら連絡してね、なんでも力になるからと告げて微笑んだ……次の瞬間。

「…………あ、いけないもうすぐイベント始まる!!
 大会限定使用の『鋼獣』シリーズ直売会!!早くいかないと売り切れる……というわけでそれじゃあまたっっ!!!」

『ワオン』

当初の予定を思い出したカナデは慌てて立ち上がったなら、手をぶんぶんと振りながら再び人混みの中へと突撃しておく。
果たして彼女が目的の品を購入できるかどうかは不明だったが……次に会う時は友人としてか、それとも対戦相手としてか、それはまだわからない。
10佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)15:32:51 ID:yQV
>>9

「う、うんそんな感じ…かな…?」

『はははっ!まさにそういうことだな!マスターと私の初の門出というわけだ』

片方は若干困惑気味でもう片方は豪快に笑い飛ばす。
性格は正反対なようでもその信頼は確かなものだ。カナデとシルバーにも負けてはいられない。

今までは誰かと模型に関する話をすることなど一度も無かった。だからこそカナデとこうして会話をすることは新鮮で楽しいものだった。
自分の作品を褒められることやいろんな人の力作に出会うことができる。カナデのシルバーだってどれだけの時間を使って作られたものなのか分からない。それを思えばどこか通じるものを感じてしまう。

「今度見るときは、大会のときだね…もし、よければっ…私たちの試合、見てくれると、うれしいかな…な、なんちゃって……」

そうは言ってももしかすればカナデと対戦することになるかもしれない。だがそのときには手を抜いてはいけない。シラヌイだってきっとそうだろう。
自分を変えたいと思ってこの大会に出場したのだ。そんなことをしたらきっと私は私のまま変われないだろうから。

「あ、ありがとう…!じゃあ、困ったこととかあったら連絡するね……!
あっ…じ、じゃあ私の連絡先もっ…」

カナデの名刺をマジマジと眺めながら大事そうに受け取ると慌てるようにお礼を言う。
遠方から来ているカナデとは違いミナホは近くのアパートで一人暮らしをしているためそこから直に来ている。だから今日の開会式やら諸々が終われば今日のところはそのまま帰るつもりだ。
そうして自分の連絡先も渡そうとした瞬間、その声は届かずカナデは最後まで騒がしく人混みの中へと去っていってしまう。

「あ………」

『フラれたようだなマスター?』

「ち、違うもんっ…!」

次に再会するのはいつになるのか。そんなこともわからないままミナホは初めての出会いに想いを馳せ、シラヌイはといえばその闘争心を密かに燃やしているのだった。
11Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)20:23:08 ID:gTq()
大会、メインアリーナ。会場内で最大のフィールドであるこのスタジアムは、今や満員の観客によって埋め尽くされていた。
その理由はいうまでもなく、大会オープニングセレモニー。本来ならば本戦の開始まで解放されないハズのメインアリーナも、今日この日限りは特別に解放されていた。

熱狂が、興奮が、人々を包んでいた。ここまで数々のパフォーマンスがあり、その光景はアリーナ内でなく会場全域に中継されていた。
バトルフィールドシステムを利用した闘機の空戦ショー、戦姫によるダンスパフォーマンス、1分の1鋼獣の登場など……他にも数々の見世物が人々を盛り上げていた。
しかし、ピークはこれからである。これから始まるのはオープニングセレモリーの名物であり目玉……ルーキーとチャンピオンによる、エキシビジョンマッチ!!



『さーーあ、フィールドの準備は整いましたっっっ!!舞台に立つのはこの大会に挑戦する輝かしき新星達———っっっっ!!!!』


爆発のような歓声に迎えられ、貴方達はバトルのステージに並び立つ。その場所で貴方が抱くものは、興奮か、緊張か、それとも闘志か。
そして、貴方達の視線の先に、対戦相手となる人物もまたすぐに姿を現すだろう。その顔を貴方はもしかすれば知っているかもしれない。
彼もまた、歓声に包まれながらステージに立つ。その手にするのは純白の『闘機』、挑戦者の貴方たちに対して、不敵な笑みを崩さない彼の正体は。


『そして立ち塞がるのはーーーーっっ!!!前年度世界大会優勝者と、その優勝を成し遂げた機体っっ!!!『蒼き閃光』こと武藤ツカサだーーーっ!!!』


彼こそは、前年度大会優勝者。そしてその手にあるものは、優勝を成し遂げた……すなわち前年度最強の機体。
それは貴方たちがこれから乗り越えるべき巨星、相手にとって不足はないはずだ。そしてこのバトルは…………新たな大会の開幕を告げるものとして最高の戦いになるだろう!!


「…………さあ、最高のバトルにしよう!」

彼も、ツカサもこの戦いが楽しくて仕方がないように。
あふれんばかりの闘志と共に、貴方たちへとそう告げるのだった。
12アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)20:39:15 ID:rcD
>>11

「――当たっちゃったものは、仕方ないわよね」


五月蝿いまでの喧騒に包まれたステージに、ひとりの少女が登り出る。気怠げな足取りで、溜め息と共に、ゴシックロリータのフリルをはためかせながら。
その右肩に座るのは、ひとりの戦姫。流麗なる黒い鎧を纏い、先鋭たる黒い翼と――「天」の一文字を背負った。
微かに、会場の一部がどよめいた――ように、見えるかもしれない。然しそれは所詮なにかの間違いであると、この日の熱狂にかき消される。


「ビギナー向けのエキシビジョンマッチに、身元を偽って応募――しかも、それに当選してしまうなんて。
 流石の御幸運です。それに、丁度いい機会ですもの。奮戦致しましょう、マスター」

「奮戦? ――ふン。所詮、去年度の優勝者。学べるものは多いだろうと思って、ここに来たのは事実だけれど」


まるきり慣れていると言わんばかりに、彼女は煩わしげに首を振るって、前髪を払った。躊躇わない剣呑な赤い視線が、己が対戦者に向けられる。
従者の戦姫もまた立ち上がる。そのまま悠然と飛び上がって、アーマーの擦れる微かな音を立てながら、バトルフィールドのスタンバイ・ポジションに降り立つ。


「来たのであれば、勝つだけよ。――覚悟なさい、Blaues Glitzern(蒼き閃光)!」


ぎり、と奥歯を噛み締めた後。言い捨てる言葉は、しかし侮辱も軽蔑もない、確かな戦いへの敬意であった。
13赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)20:43:34 ID:5zz
>>11
その瞳に闘志を映さず、足取りに緊張も無く。少年、赤鉄シンヤはまるで普段どおりにステージへ昇っていく。
無感情にすら思えるその仕草の一つ一つが自身の表れでもあった。
各地の大会にて、敵機を壊して壊して優勝を重ねる大会荒らし。それが少年の名が持つ意味であり。
故に、今日もまた普段と変わりやしない。何時もどおりに壊して、壊して賞品を頂く。
渦巻く思考など無く、その程度の事しか考えていない。

腰のホルダーからひょっこりと顔を出していた『戦姫』、『ジャンク』をバトルフィールドへセットする。
全身が衆目へと晒されれば、『戦姫』の下半身は『獣姫』であり、所謂ケンタウロスと呼ばれる魔獣の形状を持っていた。
装甲は灰色の整形色のままで、『戦姫』の肌を除けばその色で殆ど統一されている。しかしシルエットに統一感は無く、『ジャンク』の名の通りの印象を与えるだろう。
事実、構成するパーツのすべては"捨てられた"物である。廃棄された旧式のパーツを集めて、それでいて大会荒らしを可能とする。
それが赤鉄シンヤと『ジャンク』である。

「……相変わらずキレーな機体使ってんなァ」

ふと、口から漏れた言葉は舌打ち混じりに。何か恨みでもあるとでもいわんばかりの攻撃性を孕む。

「まずはやっぱ、頭か?羽をもぎ取るのも悪くねェ。」

声は口に出すほどに熱を帯びていく。隠し切れない興奮が露になる。

「いや、いいや。シンプルにいこう。
 無様に、惨めに―――――真っ二つだ!!」

その言葉と同時に、バトルステージの『ジャンク』が切っ先を向ける。
小さな『戦姫』の体には余りに不釣合いな『両断剣』を、言葉通りの意味を載せて。
14佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)20:44:23 ID:yQV
>>11

「ど、どうしようシラヌイ…!?こんなに人が沢山~っ…!?」

『落ち着けマスター、こうなってしまえば後はやりきるしかないぞ?』

人、人、人。辺り一面人だらけ。
人見知りのミナホにとってはまさに地獄絵図だがここでやっぱりやめます、なんてことは許されるはずがない。
目を白黒とさせあたふたと落ち着きがない様子で一目見ただけでも緊張しているのが丸わかりだろう。

「あ、あれがエキシビションマッチの応募用紙なんて聞いてないよぉっ…!」

『当たり前だ、言ってないからな』

一方ミナホの肩の上に立っているシラヌイはといえば堂々とした立ち振る舞い。笑みまでも浮かべてこれから始まるであろう激しい戦闘を楽しみにしているようだ。
見つめる先は武藤ツカサと言うらしい大会優勝者が手にする純白の機体。まだ動いてすらいないのに立ち姿だけで覇気のようなものが感じられるほどに完成度の高い機体ということは見て明らか。流石は優勝者ということなのだろう。

「よ、よろしくお願いしまちゅっ!……っ!?//」

しかし挨拶でミナホが思い切り噛みそんな空気を台無しにする。
顔を真っ赤にして両手で顔を覆う自分の主人を見てシラヌイはやれやれ、と首を振るのだった。
15Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)21:05:17 ID:gTq()
>>13

「そして……ほう、悪名高き“壊し屋”か
 確かに噂通りのジャンク品から作られた機体……だが、なるほど」

相手の機体の破壊を目的とする大会荒らし、その存在もまたツカサが知らない筈がなかった。
だが、向ける感情は敵意ではない。それは同じ選手として、戦えることを誇りにするという歓喜である。
そして、彼の機体……ジャンク品、捨てられてパーツで構成された機体を見て、何か思うところがあったのか。

「……いや、この場で言うことでもない……今はただ、この戦いを楽しもう!!」

>>14

「ああ、確かに緊張せざるを得ないな。私とてこの歓声は未だに慣れないさ
 だが……それだけ皆がこの戦いを楽しみにしているということだ。そしてそれは私も同じこと」

ビギナー向け、という募集要項に正しく合致するのは彼女だけだろうか。
彼女の緊張を解きほぐすように、そしてこれからの戦いを楽しんでもらうように言葉を贈ったツカサは、そのまま彼女の戦姫も一瞥する。
戦いを楽しむ、という点では彼女の戦姫はマスターよりも向いているようだった。まるで正反対、しかしだからこそのパートナー。

「……………いい機体だな。相手にとって、不足はない!!」




そしてステージにツカサの機体がセットされる。
純白のボディにクリアパーツがめぐされた、さながら天使の如き意匠の機体。

そしてーーーーバトスシステムが起動する。その瞳に光が灯り、クリアパーツが蒼き輝きを放ち出す。
その機体は珍しくAIを搭載していない。しかし意志はなくとも魂は確かに宿り、ツカサと共に幾多もの戦場を駆け抜けてきた。
その機体の名はーーーーファルシオンⅡ。1年前、頂点に君臨した蒼き閃光!!!


「ファルシオンⅡ、武藤ツカサーーー出撃する!!!」

機体が飛翔し、バトルフィールドへと突入する。同時にバーチャルシステムによって、この戦いの舞台となるステージが一瞬で構築されていく。
構築された今回のステージは“荒野”。荒れ果てた地を舞台に、戦いが始まろうとしている。
16Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)21:06:19 ID:gTq()
>>12

「……ふ、とやかく言うつもりはないさ。“鏡中の女帝”
 噂は予々耳にしている。かのダークニンジャとこうして対峙できるとは、心を滾らせてくれる」

ホビーバトルの一線に立つツカサがそれを知らない筈がない。天才アーキテクトとして名を轟かせる彼女の名前と、その戦いを支えるパートナーのことを。
ビギナー向けだとか、規約違反だとか、そんなつまらないことは気にするまでもない。今ここで戦うことだけが、唯一の真実なのだから。
だからこそーーーー楽しむしかない。この戦いを全力で。


//>>15の内容の先頭に、このレスを脳内補完お願いします……
17アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)21:22:28 ID:rcD
>>13>>14>>15

宣戦布告を受けて尚も、彼女は眉一つ動かさない。しかしその相棒は、鎧姿のまま口元のマスクだけは下げて、ひとつ深々と頭を下げた。
「宜しくお願い致します」と、挨拶の一言まで添えて。それはきっと、傲岸不遜なる主人の無礼を補うための、彼女にとっての習慣であったのだろろう。
横に並んだ共闘者の顔を、彼女は一瞥たりともしなかった。元より彼女が信じるのは、己の腕と自身の相棒のみ。――見るのであれば、戦いの中、その機体の姿と身のこなしだけ。

バトルフィールドがVRホログラムを背景に投影し、電子の戦場を作り上げていく。漸く「女帝」は身構えた。赤肩の忍が背負う噴進装置が、徐々に高くなる回転音を上げる。
指定フィールドは、「荒野」。遮蔽物の決して多くない、逃げも隠れもできないマップのひとつ。


(「荒野」か。公式戦じゃ珍しくない。武装構成は、互いに割れているはず。であれば、……)

(組替式のウェポン・システム。あれを真っ先に破壊すれば、相手の攻撃手段を一気に削れる――!!)

「フヨウ。プランN、ドライスィヒ」「了解、マスター」


呟かれた指示コードは、ともすれば武藤の知るところであるかもしれない。「女帝」が嘗て、幾つかの大会で口にしたことのあるもの。
『対戦相手の武器破壊』を意味するその暗号を理解できたのならば――フライトユニットを全速に吹かせて吶喊する、その戦姫の行動も理解できるであろう。
砂塵を巻き上げて、黒い戦姫が翔ぶ。同時に背部から射出されて飛来するのは、合計6機の「自律攻撃機(オービット・ファンネル)」。
ごく小さな短剣にも似たその装置は、ファルシオンIIの周囲を取り囲むように陣取ろうとする。

(先ずは牽制。これは布石。)

すれば、6機のビットからの射撃が始まるだろう。機体の周辺を飛び回りながら、低出力の電磁砲を機関銃のように連射する。
被弾したのならば、然しその威力は大したものではない。数発を食らったところで、ファルシオンIIの耐久値は決して大きく減少しないだろう。
だが、前大会の優勝者であるなら――青い粒子射撃の弾幕に紛れ、黒い戦姫が自機の背後を取ろうとしていることに、気付くだろうか。
18佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)21:30:10 ID:yQV
>>13>>15>>17

「皆が、楽しみにしている…」

その言葉を聞くと身体が更に強張ってしまう。だが逆にその言葉で目も覚めた。
そうだ、これはみんなが見てる。だから情けないところは見せられない。もしかすればカナデも見ているかもしれないのだから。


「────いくよ、シラヌイ…!」

『やっと覚めたかマスター、相手にとって不足無し。全力で行こうぞ』

シラヌイがステージにセットされる。真紅の装甲を身に纏い、武装も既に装備されている。
"忍者"をイメージして作られたその機体は高い機動力を持っている。そこに改良を加えて限界まで機動力を高めたカスタム機。
大和魂を宿したその機体はあるときは影に潜み、あるときは正面から。変幻自在のその動きは果たしてどこまで通用するのか。

『シラヌイ…参るッ!!』


──────
────
──


『荒野…おあつらえ向きのフィールドだな』

周りを見渡し呟く。
多対一という一見すればこちら有利の状況だろう。だがいくら人が多くても連携が取れないのであればそれはマイナスにすらなり得る。
だからこそシラヌイは一歩下がり距離を取る。上方修正は基礎中の基礎。敵と味方両方の情報をまずは集める。
19赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)21:47:20 ID:5zz
>>15>>12>>14
起動するバトルフィールド。電子の速度でステージは荒野へと変わり、そこに4機のホビーが立つ。
廃棄パーツで構成された彼の機体は確かに見た目こそ正しく『ジャンク』ではあるが、その完成度を見れば生半可な物ではないと伝わるか。
手に持つ両断剣と、『鋼獣』の四肢に取り付けられた4門の砲もまた廃棄品の改造ではあるが、半ばオリジナルと化しているほどのものである。

「おう―――――楽しませろやァ!!」

その叫びと共に、ブースターが火を噴き前進を開始する。
怒声とは裏腹に、その思考は冷静である。瞬時に周囲状況を把握し、戦術を組み立てる。

共闘する一人は女帝、ここに呼ばれるようなルーキーでは決して無いのだがその分邪魔にはならないのは確実だろう。
6機のビットが牽制を放つ。評判どおりのハイレベルな機体を目に、バトルが『共闘』であることを悔やんだが、仕方ない。
第一の目標は目の前である。

もう一人は先ほど舌をかんでいた、この場に相応しいルーキーの少女である。
『戦姫』が一歩距離を取り、周囲状況の把握を試みる。操縦者ははっきり言って不安でしかないが、AIはマトモなようだ。
まあ、邪魔になるようなら諸共につぶしてしまえばいいだけの話。
赤鉄シンヤに共闘の意思はない。あくまで二人が邪魔になるかどうか程度の判断しかなく、仮に一人でも前年度優勝者を相手取るつもりなのだ。

突き進む『ジャンク』の前脚より、砲が一つ放たれる。射出された杭はワイヤーを伴って閃光へと迫る。
8本が同時に射出され、その一本でも突き刺されば距離におけるマウントを取れるが、難しいだろう。牽制程度にしかならないか。
20Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)22:00:14 ID:gTq()
>>17>>18>>19

荒野ステージ。遮蔽物は僅かに限られ、直接対決を余儀なくされるステージ。
つまり、地の利を生かして数の差を埋めるという戦い方は不可能。だからこそ───面白い。


「三対一だがハンデとは言うまい。さあ、どう出てくる」


両翼を広げ、ファルシオンは荒野の空を飛翔する。相対する敵をものともせず、一気に加速し距離を詰めに向かう。
コンソールに表示される警告は、黒の戦姫から放たれた六基もの自律兵器の存在を告げるもの。
ビット、またはファンネル───足を止めれば蜂の巣だろうが、“当たらなければどうということはない”。


次の瞬間、全身の姿勢制御スラスターを一斉に吹かす。立体的な回避機動によって、電磁砲の包囲射撃を次々と回避していく。
続けてジャンクから放たれた杭も同様に躱していく。それはファルシオンの反応速度、そしてツカサの操縦技術、両方あって可能となる芸当。

同時にその翼が展開し、タクティカル・エッジ・ウェポンズを起動———それは“組み換え遊び”というコンセプトの元にツカサがゼロから作り上げた複合兵装。
クリアパーツをメインに構成されたユニットを自由な発想によって組み替えられ、使い手の思うがままにその姿を変えるファルシオンⅡのメインウェポン。
幾つかのユニットがバインダーから離れ、ファルシオンの手の中で合体していく。同時に機体は身を翻るように転身したなら───背後の戦姫に向けて一気に加速する!!


「なるほど、確かに忍者の異名は伊達ではい──────が!!」


手にした武器はロングロード、背後からの奇襲に対して先んずる形で、突撃加速からの強烈な斬撃がフヨウに向けて放たれる。
もし直撃したならば、その一撃にて機体耐久値を一気に削らることになるだろうが、果たして。
21アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)22:14:24 ID:rcD
>>20


         (――流石に、早いな)


オービットキャノンから放たれた射撃弾幕は、その全てが回避された。行き場を失った青い電磁弾は、赤い大地を抉り、或いは虚空に消える。
1発か2発ほど、当たったのならば僥倖であったろう。しかしあの蒼眼の機体には、未だ傷ひとつ付かず。――何らかの射撃を仕掛けたらしい僚機も、徒労に終わっていた。
一瞬だけ、アリスは視線を横に向けた。不意に視界の中に入った、自身と共に攻撃した機体。
半身半馬の怪物にも似た、ロールアウト・カラーのままの、異形。その姿を確かめて、彼女はひとつ頷く。
なるほど、面白い。だが今はその作り手にも、機体にも、気を向けられない。ただ微かに汗ばんだ掌を、握り締める。


「被害なし。続行」「イエス、マスター」


その腰に携えた刀を一振り、黒い戦姫は引き抜いた。ブースター出力をレッドゾーンにまで引き上げる。砂塵の混じった大気が歪む。
片手にて握られたヴィヴロブレードが、単発式イオンジェットの凄まじい速度に乗って、横薙ぎにて振るわれる。車両型闘機の重厚なる正面装甲であろうと、紙片のように斬り伏せる鋭鋒が。
これが「女帝」の所以。勝利のためであれば、例え勝負の範疇においてだとしても、しかし手段は選ばない。――切っ先の狙う先は、己の機体に振るわれた剛刃。
その苛烈なる戦いぶりに反して、アリスは決して基礎を怠らない。自身が手がけた模型のマスタリングには、幾らでも時間をかけられる気質である。
故にそのブレードも幾ら細身の刃と言えど、ロングソードと打ち合えるだけの強度を有してはいた。だが片手ともなれば、鍔迫り合いに敗れるは必至。
無論のこと刃を重ねている間、ファルシオンの動きを止めることはできるだろう。だが、本当にそれが狙いなのか――?
22赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)22:17:30 ID:5zz
>>20
杭は回避され、ここまでは『予想通り』。ツカサの戦いを何度もみてシミュレーションした通りにことが進んでいる。

「オイオイ……」

『ジャンク』は正面から、そして『フヨウ』が背後から奇襲を仕掛けたのならば、挟撃の形となる。
そして背後へと翻ると言うのならば、無防備な背面は『ジャンク』へと向けられる。

「主役無視して楽しんでんじゃねェよ!!!」

振り下ろされる剣は、そのあまりに巨大な板は。剣の間合いとは思えない距離からも届きうる。
また翻ると言うのなら当然隙はできるし、正面には別の戦姫がいる。少なくとも、被害なしではいられないはずだと。
の剣は巨大であり、相手が盾を構えるというのならそのまま潰してみせるだろう。もし仮に二機に何の動きも無いのであれば、それは『フヨウ』ごと両断する。
あくまで形は『共闘』である。味方ごと斬る様な輩は居ないと断定するのであれば、それすらも利用する。

同時に、再び射出される前脚の杭。『ジャンク』の武装はこの両断剣のみであり、言ってしまえば只管距離を取られれば詰む。
それをカバーするのがこの武装であり、ワイヤーの長さ以上は距離を取らせない。

この状況で振り下ろす剣は、もしくは射出する杭のどちらかは叶うだろうと常識的に思考する。
しかし一度世界を制した男であるならば、常識程度は軽々超えるか。
23赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)22:18:08 ID:5zz
>>22
>>18>>17
安価抜けです
24佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)22:23:16 ID:yQV
>>20

『……なるほど、これまた厄介な面子と組まされたものだ』

これはビギナー向けだというのにとてもそうとは思えない特徴的で癖のある者たちが集まったものだ。
だが、だからこそやり甲斐があるというもの。普通の者が集まったところできっとあれには勝てないだろう。必要なのは、その意志力だ。

『だがこうも遮蔽物がないというのはやりにくい……だが、やりようはある』

ファルシオンがその武器を合体させ、ロングソードとしてフヨウに斬撃を浴びせようとした瞬間、それは降り注いでくるだろう。
粒子で構成された手裏剣。それがいくつも空からファルシオン目掛けて飛んでくる。手のひら大の大きさだ、しかし数があり更に他の機体に当たらぬようファルシオンだけに当たるような正確な投擲。これならば多少は足を止め、注意を逸らすくらいはできるはずだ。

空を見上げればそこには太陽を背に宙を舞う"もう一人の忍者"の姿があった。
そのままヒート機能が備えられた"SAMURAIブレード"を抜刀。刃はすぐさま高温へ到達し赤熱する。それを両手で構え、真下にいるファルシオンへと上空から斬り掛かる。
味方ごと巻き込まん勢いで鉄板のような剣を振るうあの馬姫然り、高度な武装を備える鏡姫然り、その攻撃の邪魔にならず、なおかつその隙間を縫って一撃を与えようとすることが出来る程度には"小手先では負けてはいない"
25Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)22:49:03 ID:gTq()

>>21>>22>>23


「当然、無視などしていない……だからこそ、利用させて貰う!!」


剣と剣が打ち合った、その瞬間───ファルシオンⅡは腕部に力を込めるのではなく、まるで撫でるように相手のヴィブロブレードを“後方へと受け流す”。
そして受け流したフヨウの刃が向かう先は、『ジャンク』の放った大剣による斬撃。そこに発生するのは味方同士の攻撃による衝突だろう。
『ジャンク』にはフヨウのブレードによる斬撃が、フヨウには『ジャンク』の大剣と杭による同時攻撃が。攻撃を止めるなり避けるなりしなければ、同士討ちせざるを得ないが。

同時に上空へと飛翔したファルシオンの追撃が二人に向けて放たれる────のを、シラヌイの放った手裏剣が阻止した。
ロングソードにて手裏剣を弾いて見せたなら、ファルシオンは空を睨む。太陽を背負って跳ぶその姿は、確かに“もう一人の忍者”に他ならない。


「なるほど、忍ぶ者か……良いアシストだが」


ロングソードを水平に構え、SAMURAIの刃を受け止める。ブースターを吹かし地上に叩き落とされずにすんだなら更にバーニアを使い機体を回転、そのまま鍔迫り合いする相手を巻き込み、地面へと叩き落そうとするだろう。
そしてそれが成功しようがしまいがファルシオンは眼下に向けてロングソードの切っ先を向けて───次の瞬間には背面バインダーから展開するユニットが組み合わさり、ロングソードをより巨大な別の姿に変える。
それはクリアパーツを銃口に見立てた巨大な砲塔、ファルシオンの誇る武装の中でもとりわけ強大な火力を有する“バスターライフル”。


「……ワンマンプレイが相手であれば───まだまだ負けるわけにはいかないな!!」


銃口から放たれるのは強大な粒子砲。青い閃光が奔流となってジャンクとフヨウ、そして場合によってはシラヌイをも巻き込まんと解き放たれる。
回避なり、防御なり、なんとかしなければ一撃で戦闘不能に追い込まれるだけの火力。やはりこれを討ち果たすには……“力を合わせること”が必要なのかもしれないが。
26佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/03(日)23:08:26 ID:yQV
>>25

『……ならば、ここは私が受けさせてもらう。どうやら此度の戦、手を組まねば厳しいようだ』

叩き落とされるような形ではなく、受け身を取り安全に着地する。
どうやら周りも同じようで一様に地面の上だ。上空を見上げればそこにはファルシオンはまだ悠々としている。
見事な受けだった。あの三方向からの一斉攻撃を捌き切りなおも健在。
そしてあのユニットの姿は明らかに銃身だ。それもかなり強力なもの。恐らく掠っただけでもかなりの痛手を負うことになるだろう。

だが逆を言えば、それほどの威力のものならば隙が生まれるのも必然というもの。だからこそここを"一人で捌けば"他二人は隙ができたファルシオンへの攻撃に回れる。

抜刀するのはもう片方の"SAMURAIブレード"
この武装はビームを"拡散"させる!!

『ここは私が引き受けるッ!!』

前に出て、その光の奔流へと刀を振るう。
選んだのは回避ではなく防御。青い閃光は真っ二つに両断され他の二機からも逸れて左右へと分断していく。
しかしこの状態ではシラヌイは動けない。あとは馬姫と鏡姫に託すしかない。
27アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)23:10:51 ID:rcD
>>25


(――かかった、か?   ……、いや――違う)


受け流された斬撃。「プランN、放棄。左8cm、イヴェイド」間髪入れずに、アリスの指示。
向かい来るのは、人馬のシルエットを象った機体から振るわれた大剣の一撃。だがそれもまた、アリスの視界には入っていた。
微かにフヨウはブースターの推力を偏向させて、機体を横にずらす。鉄塊のような刃が、肩部装甲をちり、と掠めた。


(……簡単には、勝たせてくれないみたいね。)
(それにこれは、3対1じゃない。1対1を、それぞれ繰り返しているだけ。)


――フヨウの後に続いた機体さえも、容易くいなす態勢に入ったファルシオンを見て、ひとりアリスは歯噛みした。
そのまま展開・変形されて構えられる大型粒子砲への対処を、彼女は既に内心で決めていた。しかしこれでは、後手に回るばかり。
唇を噤んで思考を走らせる。負けたくない。湧き上がる闘志が戦術眼を濁らせるまでに、勝ち筋を見つけなければ。

(――考えろ。私。待て……「まだ」?「負けるわけには」?)

(そうだ。これは、エキシビジョン・マッチ。しかも、ルーキーが相手の。だとすれば、……もしかしたら。
そうよ。彼はエンターテイナー。でも、そこまでして得る勝利に――価値は、あるのかしら? 本当に?)

(……馬鹿らしい。勝つためには、手段を選ばない。そうでしょう? 嫌味なら、後で言ってやればいいじゃない)


       「――――フヨウ!」

「右150cm回避」「ブースター出力、限界値。推力偏向強化、ドライ」「両腕保持、『光芒』起動」
「プランU。フュンフツェーン」「『ヴィルベルヴィント』射撃開始」「――弾着、今。状況、始め」


     「Wilco, マスター」


アリスの口から滔々と紡がれた指示に、その従者は了解の意を示す。綿密極まるその命令を、されどフヨウはどこまでも忠実に実行できた。
それが、「彼女たち」の強さだった。精緻かつ大胆な戦況判断を、堅実かつ正確に組み上げられた機体が実行する。不足もなければ、過誤もない。計算された天性。
ブースターから噴き出る蒼炎に白いものが混じる。限界まで高められたその速度は、発車までには粒子砲の加害半径から逃れられるか。


「おふたりさん。今から私は、ライフルとオービットで射撃支援にあたるわ。――このまま続けていても、ラチが開かない」
「彼の動きは、私とフヨウが制限する。手痛いのを一発、かましてやって頂戴」
28アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/03(日)23:12:37 ID:rcD
>>27
//「右150cm」のところは、「上150cm」でお願いします…。
29赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/03(日)23:28:30 ID:5zz
>>25
振り下ろした剣は地面を割る。どうせならばその『戦姫』を砕いてくれとも思ったが、女帝の名は甘くない。
然して状況は一気に転じてこちら側の不利へ。利用するといわれたとおりに、敵の隙は今正にこちらの隙へと変化していた。

「……チッ」

舌打ちと歯軋り。世界を目指す以上、この相手と戦うことは考えていたはずだ。
相手の手札は代わらず、シミュレーションのまま。数の利すらもこちらにある。なのに――――
思考をいったん打ち切るのは青い閃光。巨大な粒子砲は『ジャンク』を飲み込もうとし

「―――――ッァラアア!!」

その激昂は、誰に向けられたものか。前に出た『シラヌイ』か、それとも余裕な顔して、先ほどの事すら忘れた様に見せる『フヨウ』と女帝へか。
それとも―――『ジャンク』を光へ呑み込ませかけた自分へか。
二人の提案を断る理由は無かった。きっと、ツカサの思惑通り。勝つにはそれしかないのだから。

「やってやらァよ!!!クソがッ!」

本来『ジャンク』は飛行を苦手とする。その重い板を背負って、下半身をつれて飛び上がる能力は無い。
だがしかし、赤鉄シンヤはそれを思考に入れていないわけではない。
放たれたワイヤーを巻き取る機構は、思いのほかに強い。それを空へ、残ったすべての、16本の杭を。
それだけでは終わらない。既に放たれたワイヤーを手繰り、カウボーイの如く投げつける。
計30を超える糸、粒子砲を発射した今ならばそのどれかは"引っかかる"筈であり
その狙いが当たったのであれば。きっと機体を一つ地面へと叩きつけ、剣はその身へ届くはず。
きっと、ツカサの思惑通りに。それは奇しくも正しい共闘の形である。
30Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/03(日)23:52:48 ID:gTq()
>>21>>22>>23

放たれた大出力砲撃は、しかし一人の手によって断たれていく。
それは一か八かの賭けだっただろう。これだけの火力を一人で背負込むなど、普通であれば躊躇する筈なのに。
しかし、彼女は止めて見せた。そしてそこから続く二人の行動は――――間違いなく『共闘』と呼べるもの。

一人が盾となり、一人が前衛に立ち、一人が後衛を務める。
それを彼等が意識的に選んだかどうかは解らずとも、スリーマンセルであれば理想の形だろう。


「……それでこそ、戦い甲斐があるというもの!!」


粒子砲を放つ銃身にワイヤーが絡みつく。砲撃は中断され、ファルシオンは『ジャンク』の思うがままに地面へと引き摺り堕とされる。
但し、地表との衝突の寸前にバスターライフルを分解、その拘束から解放されたなら激突寸前のところでバーニアを吹かして姿勢を立て直し。
その推力を一点に集中させたなら、ファルシオンⅡは地上を滑空しながら『ジャンク』へと目がけて爆発的な加速を開始する!!!

複合兵装を構成する幾つかのユニットは投棄されたが、全てが手元から離れたわけでもない。
残されたユニットの中から瞬時に武装が組み上げられ、そしてファルシオンⅡが新たに手にしたのは巨大な突撃槍──それは加速の勢いのままに、目の前の敵を貫かんとする一撃。


「敢えて言わせて貰う───私とてエンターテイナーである前に、一人の競技者」

「故に、例えエキシビジョンだとしても───勝ちを譲る気など一切ないッッ!!!!」

その台詞と同時に背面バインダーに搭載されたユニットが砲身を形成し、幾筋もの粒子砲撃を放つ。
『ジャンク』本体と、その足場に向けて放たれた砲撃は爆風によって粉塵を巻き上げ───彼女の視界を一瞬だけ覆い隠す。


そして暗幕が晴れた時、目の前にファルシオンの姿はないだろう───何故ならば。
既に純白の機体は『ジャンク』の頭上へと辿り着いており、そしてその本体めがけて一直線にランスが振り下ろされた───!!!
31赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/04(月)00:12:47 ID:0Vl
>>30
赤鉄シンヤは『共闘』等望まない。心を許した選手などどこにも居ない。
故に、そのシミュレーションはいつでも一人を想定していたし、であればこの『共闘』は想像以上の効果を挙げるはずだった。
彼は一人でも倒せると思っていた。叶わなかった。望まぬ形であったが、共闘すらした。その結果は―――

振るった剣は、ファルシオンが構えるランスと正面から激突する。
単純な重量による勝負であれば、下からと言えど『ジャンク』に分があったかもしれない。
しかし全力のブースターの速度が乗ったその一撃は、万全な『ジャンク』にすら受けきれるものではない。
ましてや途中で外れた拘束に対応して、強引に姿勢を変えた状態では―――

槍は剣を貫く。巨大かつ堅牢であり重厚。一切を弾いて潰す、そのために作り上げられたそれを砕いていく。
そして、そのまま、『ジャンク』の肩まで辿り着き

「―――――っっがぁあぁあああああ!!!」

剣を握る腕は胴体から離れて、辺りに散る肌色のプラスチック片。
それはそのまま、下半身の『鋼獣』部分をも破壊し。辺りへ嘗て『ジャンク』を構成していたものが散らばった。
暗幕は晴れて、その一瞬を強調するかの様にはっきりと。露になるのは"機能を停止した"『ジャンク』の姿。
その一撃は機体を破壊し、ゲージを削る切るには十分であり。
駆動音はもうしない。彼の叫びと、コントロールパネルを叩く音だけが響き渡るだろう。
32アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)00:15:10 ID:LRT
>>30

「――――はッ!! そりゃ良かったわ! 『それ』で上等よ!!」


――初めて、アリスが表情を変えた。その口許を緩ませて、微かに声を荒げ、不敵に、されど心底から楽しそうに。
どこか安堵のようであった。当然のことだった。自身が全力を尽くしているのだ。舐めた真似をされては困るのだ。まして、全大会のチャンプである男に。
主人の高揚を感じ取ったか。フヨウもまた楽しげに微笑んだ。そうして、握ったままのブレードを腰に収めた。
代わりに背部ハードポイントから取り出されるのは、指定通りの粒子レールガン。ブルパップ方式を採用した、ストックに加速機構を備える近未来的な形状の一挺。
未だ展開中のオービットキャノンに、重ねて背部から6機を射出。計12機を起動させて包囲陣形、吶喊するファルシオンへと向けて再びの一斉射撃。
短剣状のビットシステムから、青い電磁弾が雨霰と降り注いでゆく。だがやはり、それは「本命」ではないのだ。


「――悪いわね! 囮にしちゃって!」

「『パレットシステム』、正常に起動中!」「回転数、1200を突破!」「出力インジケータ、レベル3にまで到達!!」


「充填状況」をフヨウへと伝える、アリスの声。携行ライフルと同等の大きさであった筈の、黒い戦姫が構えていた小銃は、しかし。
内部から展開された延伸バレルにより、その身の丈を超えてしまう大きさにまで、その砲身を「伸ばして」いた。
――煌々と光る青白い砲口を、人馬と組み合わんとするファルシオンに向けて。そして。


「――今ッ!」「当たれッッ、Verdammte Scheiße(ド畜生)ッッ!!!」


狙うは胴体。その威力をほとんど対物狙撃銃クラスにまで引き上げた、「光芒」のトリガーが引かれる。
輝く砲身。疾る光条。それは果たして、王者を射抜くか。致命の一撃と、成りうるか。
33アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)00:16:12 ID:LRT
>>30>>31

「――――はッ!! そりゃ良かったわ! 『それ』で上等よ!!」


――初めて、アリスが表情を変えた。その口許を緩ませて、微かに声を荒げ、不敵に、されど心底から楽しそうに。
どこか安堵のようであった。当然のことだった。自身が全力を尽くしているのだ。舐めた真似をされては困るのだ。まして、全大会のチャンプである男に。
主人の高揚を感じ取ったか。フヨウもまた楽しげに微笑んだ。そうして、握ったままのブレードを腰に収めた。
代わりに背部ハードポイントから取り出されるのは、指定通りの粒子レールガン。ブルパップ方式を採用した、ストックに加速機構を備える近未来的な形状の一挺。
未だ展開中のオービットキャノンに、重ねて背部から6機を射出。計12機を起動させて包囲陣形、吶喊するファルシオンへと向けて再びの一斉射撃。
短剣状のビットシステムから、青い電磁弾が雨霰と降り注いでゆく。だがやはり、それは「本命」ではないのだ。


「――悪いわね! 囮にしちゃって!」

「『パレットシステム』、正常に起動中!」「回転数、1200を突破!」「出力インジケータ、レベル3にまで到達!!」


「充填状況」をフヨウへと伝える、アリスの声。携行ライフルと同等の大きさであった筈の、黒い戦姫が構えていた小銃は、しかし。
内部から展開された延伸バレルにより、その身の丈を超えてしまう大きさにまで、その砲身を「伸ばして」いた。
――煌々と光る青白い砲口を、人馬と組み合い、そして撃破に至ったファルシオンに向けて。そして。


「――今ッ!」「当たれッッ、Verdammte Scheiße(ド畜生)ッッ!!!」


その反応が、「間に合ってしまう」前に。狙うは胴体。その威力をほとんど対物狙撃銃クラスにまで引き上げた、「光芒」のトリガーが引かれる。
輝く砲身。疾る光条。それは果たして、王者を射抜くか。致命の一撃と、成りうるか。
34アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)00:17:04 ID:LRT
//わー連投しちゃいました…>>33が決定稿です、よろしくお願いします
35佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/04(月)00:21:47 ID:TIK
>>30

『くぅっ…』

あれだけの大出力砲撃を凌いだのだ。身体にダメージが無いはずがない。
これでもファルシオンを墜とすことは出来なかった。身体は動かすことができず満身創痍、ここからの攻撃への糸口が掴めない。
万事休す、あと一歩まで追い詰めたと思った相手は、未だ遥か彼方に────

「まだ…!まだ終わってないっ…!」

不意にシラヌイの元にそんな言葉が響く。
それは聞き間違えようのない、シラヌイのマスターの声だった。
まだ終わってない、諦めるな。まだ機体は"壊れていない"

最後の力を振り絞る。
無理矢理手足を動かし、狙いはファルシオン。
手のひらに粒子を集め、段々と星型が形付けられていく。やがてそれはシラヌイの大きさをも軽く超えるほどの大きさまで巨大化している。
粒子残量ももう僅か。きっとこれが最後の一撃だ。

『残粒子全固定化ッ!形状安定!"ビームSHURIKEN"最大出力ッ!』
『嘶け!青き流星ッ!!』

そしてそれを、ファルシオンへとぶん投げる。
余りに大きなそれは簡単な回避行動など容易く狩り取ってしまうほどのものだ。
青白く残光を残しながらその巨星はファルシオンへと向かっていく。
36Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/04(月)00:49:03 ID:Cr3()
>>31>>33>>35

「だが、その刃は届いたぞ。赤鉄シンヤ……!!」

……『ジャンク』の剣は砕かれた。然し、それは果たして彼の意地が、それもと執念か。
砕かれても尚進み続けた大剣の刃が、ファルシオンのボディに、腕部に確かな傷を刻みつけていた。

まだ、健闘は讃えまい。バトルはまだ終わっていないのだから。
そう、これはショーではなくバトルなのだ。ただ、楽しむのが目的ではなく、勝利を掴みたいからこそ皆がこのステージに立つ。
それはツカサとて例外ではない。相手と全力でぶつかり合い、そして全力で勝利したいからこそ、彼はこの舞台に立っている。


「……………っ!!」


ビットによる飽和射撃、それに対してファルシオンは槍を組み替え、大型のシールドにすることで尽く弾いていく。
然し……反応速度が僅かながらに落ちている。それは『ジャンク』が残した確かな爪痕であり、そして。

機体が僅かによろめいた、その瞬間。
二つの閃光が直撃し、炸裂した。爆風に巻き上げられた粉塵が、辺り一体を飲み込む。



勝負は決したかに見えた。然しシステムは未だにファルシオンの敗北を告げようとはしない。
そして、粉塵が晴れた時───そこには未だ立ち続ける、純白の機体の姿があった。

但し、満身創痍。辛うじで直撃を逸らした光芒の一射は武装ユニットの全てと機体の大部分に傷を刻み。
シラヌイの放った蒼き流星は、ファルシオンの右腕部を根元からばっさりと切り落としており。
それでも、まだ立っている。蒼き閃光の輝きは、未だに失われてはいない。


「……ああ、そうとも。まだ終わってはいない!!
  ならば、もう少しばかり私の我儘に付き合って頂こうか!!」


残された左手にてバインダー内に格納されていたビームサーベルを掴み、その刃を展開する。
未だ、闘志衰えず。然しお互いに限界は間近。それでも機体が答えてくれるのであれば───蒼き残光を伴って、ファルシオンⅡは再び二人に向けて加速を開始する。
その目的は言うまでもなく“真正面”から“押し切る”こと。これが最後のぶつかり合いになるだろうが、だからこそ、全てを込めて!!
37アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)01:07:17 ID:LRT
>>36

――ビットシステムに対する反応速度が落ちていることが、熟練のバトラーたるアリスの目には確かに映っていた。
当たらないわけではない。負けないわけではない。格の違う相手かもしれない。けれど、私が、私たちが全力を尽くしたのなら、きっと。
そこに重ねたレールガンによる砲撃。確かにそれは、直撃した。ファルシオンの耐久値を示すゲージが、一気に削り取られてゆく。


(よし、いける、勝てる! ここで刺し違えたって構わない! だから、今、ありったけを――!!)


白煙の消え失せた先、未だ倒れぬ王者の機体。その確かさに敬意を示して、アリスは声高らかに叫んだ。


「――フヨウッ!!」「マスター!!」


再びの突撃。狙いは、此方。もはや無用となったレールガンユニットを投げ棄てて、黒い戦姫は両腰に収めた2振りの直刀を、それぞれの手に握る。
この至近であるならば、白兵武装に頼るしかない。ブースターの出力を再び限界値に引き上げる。2機の進行方向が重なる。
正面角度からの格闘戦。勝者を決める、ヘッドオン。イオンキャブレターが悲鳴を上げて、ノズル周りの塗装さえ焦がしてゆく。


     「――っっっ!!!」


――交錯する、3つの機体。ビームサーベルは、ATD-X・フヨウの横腹部装甲を深々と抉った。
被弾を知らせるダメージアラートがフヨウの電子系に鳴り響き、耐久値のゲージ残量は見る間に削れてゆく。あと数秒接触を続けるだけで、彼女もまた戦闘不能に至るだろう。
だが、それでも。最後の意地とばかりに、袈裟懸けに振り下ろされた、二刀のヴィヴロブレードが――白い装甲を斬り開くことは、叶うだろうか。
38佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/04(月)01:09:42 ID:TIK
>>36

『そう、来なくては…!!まだ、まだ終われっ…!!』

シラヌイもそれに応えようと一歩を踏み出そうとする。
だが、もはや立てるものでは無かった。元々あの大出力砲撃を受け止めたときからもうほとんど限界だったのだ。そして追い討ちはあのビームSHURIKEN。
もはやシラヌイは動ける状態ではなく、一歩を踏み出そうとしたところでそのまま前のめりに倒れてしまった。
それと同時にシラヌイの視界は白い光に包まれ、戦闘不能の文字が浮かび上がる。

やれることはやった。思い残しはない。
もしも仮に一つあげるとすれば、自らの手で倒すことができなかった、ということだろうか。
39Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/04(月)01:33:36 ID:Cr3()
静寂が戦場を、会場を包み込む。誰も彼もが次の瞬間訪れる結末を、固唾を飲んで見つめていた。
刺し違えた二機は動かない。ファルシオンの刃はフヨウを、フヨウの刃はファルシオンを貫き、そして刹那とも永劫ともつかぬ時間が流れて。


そして、純白の王者が崩れ落ちた。
ゲームセットを告げるシステム音が鳴り、そして勝者である三人の名前が大画面に映し出される。
一瞬の沈黙を経て───会場は大きな歓声に包まれた。


『……け、決着───っっ!!エキシビジョンマッチを制したのは輝かしき新星!!挑戦者達!!
アリス・"エンプレス"・リリエンリッター!!赤鉄 シンヤ
!!佐々木部 ミナホの三人がチャンピオンを見事下した───っっっ!!!』


会場は熱狂の渦に包まれたいた。そしてその興奮こそが、これから始まる大会の幕開けを告げる号砲でもあった。
前回チャンピオンが敗北し、幾つもの新星が輝く予感を告げている。今年の大会は大いに荒れ、そして盛り上がるに違いないと。
その光景は、興奮は大会会場中に伝わっていた。誰も彼もがこれから開催される戦いの日々に、心を踊らせ、滾らせている!!



「…………ありがとう。良い戦いだった
 少々……いや、かなり悔しくもあるがね」


バトルが終わったなら、全損したファルシオンを手にツカサはあなた達に素直な思いを告げるだろう。
戦いが終わったなら、健闘を讃えることに理由はいらない。それでも負けたのはやはり、悔しいに違いないのだが。
だからこそ、彼は貴方たちに再戦を誓う。次に戦う時は、必ずや勝利してみせると。


「次に戦う機会があるとすれば、大会本戦だろう。予選を勝ち抜き、再びこのアリーナに立つ時
 その時は私も“最新作”でその舞台に立つだろう……その時を楽しみにしているよ、三人とも」


そして、前大会チャンピオンはステージを後にする。勝者が讃えられるべきステージに、敗者が長居する訳にはいかないだろうと。
こうして、エキシビジョンマッチは熱狂のうちに幕を下ろし……そしてこれから始まるさらなる戦いの幕開けにふさわしいニュースとして轟いた。
40Exhibition match◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/04(月)20:28:02 ID:Cr3()
エキシビジョンマッチは興奮と熱狂の中で決着を迎え、オープニングセレモニーは最高の形で幕を降ろすことになる。
そしてそれが意味するところは、これより大会が本格的に開催されるということであり───とうとう皆が待ち望んでいた戦いの日々が始まるのだ。


───世界大会は前半にあたる“予選”と後半の“本戦”、二つの段階に分けられる。

予選では大会会場に設けられた幾つものアリーナや専用施設にて、連日ホビーバトルが繰り広げられる。その中には通常形式の競技に限らず、乱戦やチーム戦といった特殊なルールによる戦いも存在している。
そして予選の総合成績で上位に食い込んだ僅かな参加者のみが、メインアリーナにて開催されるトーナメント形式の本戦に駒を進めることができるという仕組みになっていた。

予選の間、メインアリーナ以外の大会施設は全てが参加者に向けて解放されており、参加者同士であればどの施設でも利用し、戦うことが可能となっている。
そしてその勝敗は公式戦記録としてデータベースに記録され、そうして積み重ねた勝ち星の数こそ貴方が本戦に進めるかどうかの鍵になるだろう。
また、予選中はイベント戦と呼ばれる特殊なルール下における競技も行われるようだが……どうやらその情報は直前まで開示されないようだ。

無論、バトルだけがこの大会の全てではない。競技を観戦するもよし、同好の士と交友を深めるもよし、一般客やモデラー向けのイベントに参加するもよし、この大会には色んな楽しみ方が存在する。
予選の期間は25日間……その時間をどのように過ごすかは、参加者である貴方次第である。
41アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)21:49:11 ID:LRT
>>39


「――やっ、た」


熱狂の大気に溶けてゆくVRフィールド。スクリーンに現れる勝者たちの名。一瞬遅れて、沸き立つ歓声。
それが彼女に、勝利を自覚させた。確かめるように、まずは小さく呟いた。固唾を呑んだ胸の奥から湧き上がる喜びが、少しずつその表情を緩ませてゆく。


「……――やったっ、やったわ、フヨウ!! お疲れ様、ごめんねっ、本当に、ありがとう……!!」


きっと彼女にも、歓喜は抑えられなかった。フリルが千切れんばかりに両腕を振り回しながら、その場で何度も飛び跳ねた。
やがてフィールドにへたり込む己の戦姫を抱き上げて、ちいさく白い掌に包み込み、踊るようにくるくると回り出す始末。
あくまで淑やかなその黒い戦姫は、傷を負っていながら微笑んでいた。主人のあたたかい掌の中、歳相応の仕草で燥ぐ姿に苦笑しながら、それでもやはり喜びに頬を緩ませてもいるのだった。
――そんな中、不意にアリスも我に返ったか。まだ醒めやらぬ興奮の中、無理やり気取った顔をして、こんな台詞まで言ってのける。


「ふんッ。所詮戦ってみれば、こんなものかしら。わたしとフヨウの実力なら、どうってことなかったわ」

「――ま、その、一応。……楽しかった、けれど。その辺りは、流石ね」
「それに。期待できる新人たちも、育っているみたいじゃない?」


それでも彼女の言葉には、王者に対する敬いと、同胞に対する労いが籠っていた。ただ背伸びしたプライドが、それを隠しているだけのこと。
目を泳がせてそっぽを向きながら、彼女は恥じらうその本心を、しかし確かに言葉にした。


「お疲れ様。また会いましょう? きちんと勝ち上がってきて頂戴、張り合いがないじゃない」


そうして、アリスは悠然とステージを去ろうとした。長く伸ばした銀色の髪を、熱い大気の中に煌めかせながら。
しかし壇上から降りる前に、彼女は一度だけ振り向くことだろう。どこまでも不敵に、されど楽しげに笑っていることだろう。
赤い真っ直ぐな瞳で、ツカサを見つめていることだろう。――ちいさな白い人差し指を突き出して、こう言い残すのだ。


「次は、一対一」


「一対一よ。その時だって、絶対に負けないわ。首を洗って待ってなさい、武藤ツカサ!」
42アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/04(月)23:52:41 ID:LRT

「……あーもう、……。本当に。どうしてマスコミってのは、こうもウザったいのかしら?」


昼下がり。WHBTの会場近辺に構えられた無数のホビーショップ。その中でも、幾ばくか路地裏の奥まった所にある個人経営店。
燦燦と降り注ぐ陽光も、ここにはさして届かない。色褪せた店先の雨樋をくぐれば、打ちっ放しのコンクリートを床壁にして、鉄組みの陳列棚に詰め込まれたプラモデルたち。
大通りに店を置く、多くの小綺麗なホビーチェーンとは、雰囲気も品揃えもまるで違う店であった。そこに、「彼女」はいた。


「貴女の実力を、誰もが認めているのですよ。ひとりの競技者として、ね?」

「ふン。いい飯のタネでないといいんだけれどね――あ、エボルタ。……貴女にも、労いが必要よね。買ってく?」


憮然として愚痴をこぼしながら、彼女は品定めをしているようだった。腰にまで伸ばされた艶めく銀髪は、埃っぽい空気の中にあって煌めいていた。
傍若無人なゴシックロリータを纏い、上質なシルクハットを被って、ストライプのハイソックスにローファーを履き――その小さな白い手で、8個セットの単4アルカリ電池を握る。
腕に提げた買い物カゴには、恐らくは本来メーカーにランナーごと発注するであろうスペアパーツ。その殆どが海外製だった。


「ええ、お願い致します。――我が儘を言わせていただければ、プラカラーも。腰の辺りの塗装を、直しておきたいのです」


ゴスロリのフリルを心地よいシーツのようにして、その右肩には1人の戦姫が座り込んでいた。薄紫の髪に、黒塗りのボディ。
したたかにも主人の良心につけ込んで、欲しいものを強請る彼女。わかったわよ、と呆れたように返事をして、主人は塗料用コーナーへと向かう。
――その姿を、あるいは知っている者もいるかもしれない。だが頑固そうな壮年の主人は、ひとりプラモデル雑誌を読みふけっていた。
43菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/05(火)00:23:27 ID:3zF
>>42

「……転用するならレガグドの機体だろうけど、何を持たせるべきかな。今のアイちゃんに足りないものを補いたいんだけど……何が良いかなぁ。
 いっそ既存のをくっ付けてオリジナルを作ってもいいけど、やっぱり軍特有の記号をもたせたいよね。ねえ、アイちゃんはどんなのが良い?」

 個人経営の模型店……となると、最新のホビーの取扱は少々となってくる。それらを求めるならば表通りの大手企業の店舗に行けばいい。
 となると求められるのはそれらとは一風かわったものであり、彼女、蓮見菱華の求めるものも同様であった。
 彼女が見ているのは、とあるアニメシリーズの所謂旧キットと言われる商品である。
 今となってはモナカキットとも揶揄される、古き良き時代を子供達と駆け抜けたそれらが、今、ここにはずらりと並んでいる。
 そのラインナップには、現在の最新キット達の中に含まれていない超マイナーな機体も存在する。主に、雑誌企画等でちらりと顔を見せたようなそんなものたちが。
 彼女はそんな古強者達にインスピレーションを貰いたくてこの店にふらりと足を踏み入れたわけだが。 

「そんなことよりー! バトル! バトルしたいの!」

 菱華が目線を落としながら問いかけた。それに答えたのは、商品棚の上に立つ、一機の戦姫であった。
 今まさにずらりと並んでいる作品の機体を擬人化した彼女は、然し並ぶ同胞達に背を向けて、両手を上げて持ち主の問いかけなんてどうでも良いとばかりにそう叫ぶ。

「謝るならくらいならバトルさせてよ! 私はバトルしたいの! というか、なんでエキシビジョンに私が出れなかったの!?」

「そんなこと言われても……エキシビジョンは抽選だから……」

「菱華がさっさと登録してればもしかしたら当たってたかもしれないじゃないか! 何さ、恥ずかしいーって、尻込みしちゃって! どうせ皆の前に立つことになるんだから同じじゃん!」

「ご、ごめんね、アイちゃん……でも、抽選の結果は早い遅いじゃないと思うけど……」

「そんなの関係無いって! ……ん?」 

 ふと……騒がしく叫ぶアイちゃん、と呼ばれる戦姫の視線が、店の一箇所に注がれた。
 どうしたんだろう、とその視線を追いかけてみると……一人の、同じく戦姫を侍らせた女性がどうも同じように品定めをしているらしい。
 それに対して、どうにもピンと来ない様子の菱華だったが。

「アイツ!! エキシビジョンに参戦してた戦姫だ!!」

「わぁああ! アイちゃん声が大きいよ!!」

 中継に齧りついていたアイゼルネスは、それが一瞬で何者か、を見抜いてみせて。

「ねぇねぇ! エキシビジョンはもう良いから、私アイツとバトルしたい! ねぇ良いでしょ菱華、ねぇねぇねぇ!!」

「だ、だめだよアイちゃん。そんな、いきなり失礼だよ、それに声が大きいよ、しーって。もう少し静かにぃ……」

 強請るのは、自身の強化パーツではなくバトルであり。
 大声でそう叫ぶ戦姫へと向けて、人差し指を立てて菱華は彼女へと静まるように頼むのだが――――さて、この静かな店内。聞こえないはずがない。
44アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/05(火)00:46:50 ID:JsZ
>>43


「――あら、」


レジ近くのピッチブラックスプレーを手に取ろうとしていた、彼女の手が止まった。長い銀髪をたなびかせて、優雅に身を翻す。
微かに、銀髪の少女は目を細めた。切れ長の、決して良いとは言えない目つきに、不機嫌そうな三白眼。
それは或いは、声の主を睨め付けるような仕草にも見えたかもしれないが――。


「……ふうん。悪くない仕上げしてるじゃない」


――その呟きは、果たして2人へと聞こえたであろうか。ともあれ銀髪の少女は会計を取りやめて、その2人の元へと歩み寄ってゆく。
程近くにまで至ったところで、肩に座っていた黒い戦姫が翔んだ。アイと呼ばれた戦姫の目前、同じ棚に着地する
恐らくはバランサー系のリミッタを外して、独自制御のマニュアルスクリプトを組み込んでいるであろう其の挙動は、実に悠然としていた。


「ええ、仰る通り。――先日のエキシビジョン・マッチに出場させていただきましたACGシリーズは第5弾、ATD-X。
 マスターからは、『フヨウ』と呼ばれておりますが。こんにちは、アイさん?」


懇切丁寧な挨拶と共に、先ずは戦姫がお辞儀をした。1回目はアイに向けて、2回目はその主人に向けて。
にこやかな微笑みと共に、アイに差し出されるのは握手の掌。


「……まあ、パパラッチに追い回されるよりは、ずっと楽しそうね」

「私はアリス。アリス・リリエンリッター。この子は、フヨウ。
 それで、その子は……アイゼルネス・クロイツ、かしら? いい趣味ね」


ゴシックロリータの少女もまた、どこかダウナーなものを声に滲ませながら、しかし微かに微笑んで言葉を綴る。
――ともすれば、少女は知っているかもしれない。先日のエキシビジョン・マッチに、確かに彼女が勝利したこと。
だが、それ以上に――彼女の姿を、例えばホビー雑誌の1ページにて、或いは新聞のスポーツ欄で。「女帝」と称される、少女の姿。


「バトルが希望かしら? 私としては、メイキングの四方山話もお伺いしたいわね。良い出来よ、貴女」


マスターがプラモの出来を褒めるだなんて中々ないんですよと、フヨウの口から。決してそれは世辞などではなかった。
45日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/05(火)00:57:42 ID:c7d

「……なーんで、こうなっちゃったんだろうな……」
 
WHBT会場に程近い駅前の、チェーンのビジネスホテル前。
そこにポツリとそんな事を呟く、一人の影が立っている。
整髪料で適度に整えられた黒髪の短髪に地味な眼鏡、グレースーツと言った、一見出張でこの街にきたサラリーマンに見える男、日向武士。
しかし、そのとなりには彼がそういったサラリーマン的な目的で来たわけでは無いことを示す、台車とそれに載せられたやたらでかい段ボール箱が鎮座している……。
 
「ハァ……勘弁してくれよ……」
 
その箱にでかでかと記された「日向製作所」のロゴを見て、ため息と口癖が漏れる。
もし数ヵ月前、親父が大会開催を告げるCMを見なければ。
もし、日向製作所が悪ノリのない、真面目な社風であったなら。
もし子供の頃、ホビーに夢中になることがなければ……。
そんなifが、この街に来てから武士の頭のなかで渦巻きっぱなしだ。

「……ハァ」
 
もう一度小さくため息をつくと、大通りの方へ向かって歩き出す。
「こいつ」を持って歩くのは憂鬱だが、大会本選までホテルに引きこもるというのもそれはそれで気が滅入る。
46菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/05(火)01:19:31 ID:3zF
>>44

「痛い痛い痛い! 抓るのはやめてよぉ!!」 

 駄々を捏ねるアイゼルネスを無理矢理持ち帰ろうとした菱華が、その手の甲を思い切り抓られ、やいのやいのとより騒がしくなっていく。
 何とも程度の低い喧嘩をしている二人の前に。そう、今正しく二人の話題の中心に立っていた黒い戦姫――――それが、アイの前に現れた。
 たった今持ち主と喧嘩をしていたアイの表情が、ぱぁっと明るくなった。抓る手を離された量かも……そこでようやく、少女がこちらへとやってきていたのを認識する。

「やった! そっちから来てくれるなんてツイてるね、菱華!!!」

 いぇーい、と握り拳を挙げてはしゃぐアイ。

「私はレガグド軍のOMX-05C アイゼルネス・カスタム! フヨウって言うんだね、よろしくー!!」

「は、はい……こんにちは」

 品のある姿にほえーと面食らい、おずおずと挨拶を返す菱華に反して、差し出された手を元気良く握り返して握手を返す。
 そして、ロリィタに身を包んだ少女へと視線を据えて……そこでようやく、その少女の顔を思い出すことが出来た。
 確か有名人。引きこもりの間にもインターネットで見たことがあるような――有名な。

「ああ! あ、あ、あの、アリスさんですかぁ!!??」

 そう、確か天才アーキテクトの。年齢は全然変わらないのに、凄いなあと漠然と菱華が思っていた人物だった。
 目の前にはマスメディアからのインタビューの申し出は数知れず、有名企業からのオファーは引く手数多。そんな彼女が、今……自分に話しかけ。

「え、うぇぇぇ!? あ、アイちゃんがですか!? いえ、そんな、大したことないんですけど、そのアイちゃんはぁ!!」

「大したことないってなに!? 私は強いんだけど!!!」

 あわあわとテンパる少女の言葉の綾に、アイゼルネスが抗議を叫ぶ。
 兎も角、バトルの希望にせよ、彼女が言うようなお話にせよ――

「い、いえそんな! 私なんかが話すことなんて何も――」


「勿論良いってさ!」


「うぇぇ!?」
47マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/05(火)01:24:24 ID:5d0
>>45
「おー……? アレは……日向製作所? どこの企業だったっけなー……
 喉のココらへんまでは出かかってるんだけどなー、なんだったかなー?」

男性の正面から、少し大きめのリュックを抱えた青年が、抱える箱の文字を見ながら頭を抱えているのが見えるだろうか。
赤いキャップにジーパン、胸に”定礎”の二文字が堂々と鎮座する謎のTシャツを着た、一見大学生程の青年である。

「あーもうめんどくせえや。直接聞けば即時解決、一件落着ってヤツよ」

「もしもし、そこのお兄さん、その箱の中身をちょーっとばかり見せては貰えないかねー?
 ちょっと前辺りのパーツとか取り扱ってたらめーっちゃくちゃ喜ぶんだけどね。特にチタニア社製のパーツとかさ」

二人がすれ違うであろう数メートル前で、青年は頭のひねりを止め、真っすぐに男性へと足を進めるではないですか。
そして上記の言葉。どうもこの青年、男性をショップの店員か何かと勘違いしているらしい。そうでもなければこんなことは言わないはず。
彼の真剣に箱の文字とにらめっこする姿は単純というかバカというか。とにかくそんな感じ。

「しっかし、お兄さんどこから来たクチ? 日向製作所なんて名前初めて聞いたよボクねぇ……
 ああ、気を悪くしないでちょーだいよ? あんまり企業とか詳しくないんだよねえ。いやーホンっト申し訳ない」

両手を顔の前に出して何度も顔を下げる青年。自分の無知を詫びているつもりだろうが、あまり誠意は見えてこない。
その最中でも視線はたびたび段ボールの口に行っている。そこまで中身が気になるらしい。
48アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/05(火)01:42:04 ID:JsZ
>>46

「――まあ、多分。『その』アリスよ。大したことは、していないのだけれどね。
 だから。そんなに肩肘を張らないで頂戴、菱華さん?」


――菱華、と呼ばれたその少女へと、あくまでアリスは落ち着き払った言葉遣いで、或いはそこに苦笑も交えて。
だが口ぶりとは裏腹に、その声音には決して吝かでない喜色が籠っていた。己の名声を、少なからず彼女は誇りに思っている。
同じくしてアイの手を握り返すフヨウの表情にも、斯様な主人の従者として尽くすことのできる矜持が、穏やかな微笑みの中でも確かに見て取れた。


「もっと自信を持つべきよ、貴女。アイゼルネスは、とても良い機体。それに、貴女の手腕だって。
 謙遜は日本の良い文化だけれど、度が過ぎれば無礼でもある。――優れたプレーヤーがプレッシャーに潰れていく姿を、私は何度も見たことがあるわ」


やや囂しい(さらに言えば、かなり一方的な)言い争いを前に、諭すような彼女の言葉。――その真偽はさておき、少しばかり先輩風を吹かせるような。
鼻につく高慢さを感じるかもしれない。恐らくそれは、アリス自身が意図しているものではないのだろうけれど。


「……そうね。この分だと、言葉よりも実戦の方が分かりやすそうね?」


アイの言葉を聞き遂げて、アリスはひとり頷く。そうして、「親父さん。フィールド、どこにあるかしら?」
――カウンターの奥で、今度は成人誌を開いていた壮年の主人は、無言のうちに店の隅を指差す。
申し分程度に設けられたバトルスペースとその筐体は、恐らくは数世代ほど前のモデル。



「1回、バトルしてみましょうか。ルールは5分のデュエルマッチ。
 先に相手を撃破するか、時間切れになった時点で耐久値の多かった方の勝ち。――どうかしら?」


そうして、彼女はひとつ提案する。あるいはそれは、宣戦布告。またも跳び上がった黒い戦姫は、やすやすとまたアリスの肩に乗ってみせた。
49日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/05(火)01:57:57 ID:c7d
>>47
 
「……はい?チタニア?」
 
取り敢えず大きめの本屋にでも行こうか、とでも考えていたところに突如声をかけてきた青年に、間抜けな声を出してしまう。
今回の大会に挑むに辺りホビーについてある程度勉強してはきたが、如何せん付け焼き刃に近いためか、「チタニア社」の名前にはぴんとこなかったようだ。
 
「はあ……すいません、私もホビーについてあまり詳しいわけじゃないので……。
 地方から大会のために来てるんで、うちの名前知らなくても無理はないですよ」
 
愛想笑いを浮かべながら、さっきから視線をちょくちょく向けられている台車を横にゆっくり滑らせ、隅っこへおいておこうとする。
多分間違いなく、箱を見られたら面倒なことになる。そんな直感に従って……。
武士の内心は、早くこの場を抜け出したい気持ちで一杯だ。
50菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/05(火)02:06:43 ID:3zF
>>48
「う、うぅ……すみません、でも、私……だって……」

 人との会話に慣れていないが故か、それとも元からそういう質か―――兎も角、アリスの言葉に対して菱華は必要以上にしゅんと縮こまっていた。
 相手の言葉を過剰に考え過ぎる、裏側を考え過ぎるというか。兎も角、彼女は最早怒られたような気にすらなっている。
 帽子に飾られたリボンが俯いた。ブツブツと言いながら、肩を竦める菱華に対して。アイゼルネスが、彼女を『駆け上って』その肩へと辿り着き。

「良いから、バトルだって! やったー! バトルだー!!」

「い、痛い痛い痛い痛いよアイちゃん!!」

 その頬を掴んで、ぐいーっと引っ張る。
 縮こまっていた身体が痛みによって飛び上がる。店の隅においてあるのは随分と年季の入ったバトルスペース群、一応ではあるが舞台は整っている。
 経験としては貴重だろう。有名人である彼女と直にバトルが出来るなど――然し、それでもと悩む菱華に対して、アイゼルネスは耳元へと叫ぶ。

「大丈夫! 私は強い!!」 

 だから、早く早くと叫ぶアイゼルネス――そうして、それに押し負けるようにまたおずおずと小さな声で。

「……はい、分かりました。やってみます」

 どうせ大会にエントリーしているのだから、その内対戦はしなければならない。大会には勝ち残れる気はしないし、それならば有名人と対戦しておくのも思い出作りには丁度いいだろうか。
 そんな風に思いながら……少々卑屈ではあるものの、大戦をようやく承諾し。彼女とアイゼルネスは、バトルスペースへと向かうのだ。


「いぇーい! ばとる、ばとる、ばっとっるー!!」
51赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/05(火)02:15:12 ID:Sg3
>>39>>41
素晴らしい戦いだったと、プレイヤーも観客も誰もがそう思って、会場は万雷の拍手に埋め尽くされる。
敗北したはずのプレイヤーすらも、強敵への敬意を持って表象を送る。
そんな中に一人だけ。勝者の側に居るはずのシンヤだけが、悔しさだけを持って立っていたのだろう。
ホビーバトルは所詮遊びである。だがしかし―――否、だからこそ譲れない物が有り、それを機体に篭めているのだ。
形式上は勝利であれど、彼は『ファルシオン』に敗北して、『フヨウ』の囮となって機体を傷つけた。エキシビジョンだ、敗北が何をもたらすわけでもないが
両手に抱える二つに分かれた『ジャンク』は。彼の抱えるそれは敗北を許さない。ホビーバトルを楽しむという感情よりも、ただ勝利が必要なのだ。

「……次は全員俺が潰す。」

それは明確な宣戦布告。
全員だ。嘗ての王者であろうと、女帝であろうと、忍であろうと、その全てを潰すと言い切った。
52マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/05(火)02:28:39 ID:5d0
>>49
「あーやっぱり取り扱ってない感じ。そりゃ申し訳ないね。ボクずうーっとチタニア社製品を探しててさあ、まあ無理だよねー……」

ガックリと肩を落とすマキト。もはや店員からこの言葉を聞かされたのは一度や二度ではないが、何度聞いても辛いモノは辛い。

軽く説明を挟ませてもらうが、チタニア社はこの大会が行われる前に畳んでしまった今は亡きホビー開発企業である。
会社を畳むことになってしまったきっかけは、度重なるコストを度外視したロマン溢れるパーツの販売による財政難なのであるが、この話は追々。
ともかく、現在においては店舗の倉庫の片隅に眠っていた製品が見つかる度に、一部の物好きたちがこぞって買い付けに来る、知る人ぞ知るやヤバイ物なのであるが……
そしてここにいるマキトも、そんな危険物に心を奪われてしまった被害者の一人なのであった。

「これだけ人の多い場所なら一個ぐらい見つかると思ったんだけどなー……、いやホント残念
 ま、無いなら仕方ない。付き合わせてしまってスイマセンねえ」

再び武士に向けて何度も頭を下げるマキト。その最中でもやはり視線は、社名の刷られた段ボール箱へと。
何かあるのではないかと言うプレイヤーのカンか、はたまた単なる興味か。

「ちょーっとちょっと! せっかくだからその箱の中身見せてもらえませんかねえ!
 どうせお兄さんも大会関係者なんでしょ? だったら見たって問題ないっしょ!」

さりげなく端に寄せられる箱を運ぶ台車を両手でつかみ、目標物を逃がすまいと力を籠める。
そのまま抵抗するならば、箱の封を開けるために手を伸ばすことだろう。
箱をその場で開封されたくないのならば、そちらも少々手を出す必要が出てくることになるかもしれない。
53ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)21:26:31 ID:Lay
大盛り上がりを見せたエキシビションの翌日、大会開始まで活気の冷めやらない街の広場には何やら人集りが出来ていた。

「ハイ!皆さまどうぞ御覧になって行って下さい!いえいえお代はいりません、すこーし足を止めて頂ければそれだけで!」

集まった人々の視線を集めているのは、タキシードにシルクハットという〝いかにも〟な服装をした青年の姿。
笑顔を浮かべる顔には星と涙のペイントが描かれ、奇抜な赤い髪の色の上でキラキラとラメが輝いていた。

青年は何も持たない手を叩きあわせ、ゆっくりとそれを開くとその中からステッキを出して見せ、空っぽのシルクハットをステッキで叩くとその中から白い鳩を出して見せた。

「え?これだけかって?いやいやそれだけではありませんよ!」
「それでは!私の優秀な相棒を皆さまにご紹介します!ジョーカー!!」

ただのよくある大道芸と鼻で笑った観客に、人差し指をチッチッと横に振ると空を飛ぶ鳩をステッキで指し示した。
すると鳩が空中で跡形も無く破裂し、白い煙と紙吹雪に変化して、その中から一体のホビーが現れた。
赤と白の縞模様、ピエロの造形そのままな姿のホビーは、空中から落下して青年の持つステッキの先端に軽やかに着地、そのまま片脚立ちになって観客の方にお辞儀をする。

「彼は私の優秀な相棒、そして無二の親友であるマジカルジョーカーでございます、どうか皆様宜しくお願い致します!」

そして青年もまた、ホビーの乗ったステッキを器用に人差し指の先に立たせたまま恭しくお辞儀をする。
人とホビーで行う大道芸、珍しい物が見れると観客達は大いに盛り上がっていた。
54天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)22:05:52 ID:sBv
>>53

「おぉ、スゲー!スゲー!」

 ついに開催された大会の興奮も冷めぬ日の頃、人々は出店に並び大祭りを象徴するかの様に人でごった返し縁日のようだ。
少年、天空ショウはたこ焼き、ヨーヨーとお好み焼き、お面、その他…ext あらゆるモノを買い占め存分に祭りを楽しんでた。

そこに、随分と賑わってる人だかりに野次馬な様に駆けつければ帽子から白い鳩が飛び出す芸を見れば驚嘆の声をあげる。

「おぉ!カッケー! おーい!俺にもっとみせてくれよー!」

ホビーを見ると直ぐ様眼の色を変え、大道芸人に向かい元気よく手を振る。
55ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)22:17:32 ID:Lay
>>54
ステッキの上で逆立ちをしていたジョーカーは、青年が投げたピンポン球をキャッチしてそのままステッキの上で玉乗り、しかもその上でも逆立ちを披露すると歓声が上がった。
その後も綱渡りや寸劇など、まるで人間のように滑らかな芸を見せるジョーカー、青年もまた話術や手際で人々を魅了する。

「さて!それでは本日のメインイベントと行きましょう!」
「まずは皆様の中から一人!お手伝いして下さるゲストの方をお選びします!」

一頻り芸を見せた青年はメインイベントと称し、今回一番の大技の準備に取り掛かった。
その為には一人観客から選ばなくてはならない、よくある手法だがこれがまた受けるのだ、特に子供に。

「それじゃあジョーカー、君は誰が良いと思う?」

それを選ぶのは青年の相棒、青年の肩に乗ったジョーカーは、少し悩む身振りをしてからビシッと観客を指差した。
観客達の視線がその方向に集まる、ジョーカーが指した方向にいたのは元気の良い少年、天空ショウだった。

「おおっと、これは元気の良いお子さんだ!それじゃあ君、こっちの方に来てくれるかな!?」
56天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)22:31:23 ID:sBv
>>55

「すっげえ…」

 熱い歓声に応える様にジョーカーと大道芸人は次々と芸をこなし気付けば周りの人々も魅了され、彼もまたその一人となる。
少年の心は軽業をこなすホビー、ジョーカーに視線を奪われ目を離せずにただ単純に驚嘆の声をあげるだけとなった…。

「……ッ!
 はい!おれ!おれ!てつだいます!」

 この瞬間を待ってました!と言わんばかりの大声でアピールをし更にはその場で大きくジャンプをして見せたが、勿論背の低い彼では注目を浴びる事は無いだろう。
しかし声だけは人一倍あり、それを幸をなし見事選出されガッツポーズを見せる。

「おれ!天空ショウって言います!
よろしくおねがいします!!」
「で、こっちが相棒のプロトユニコーンです!!」

 
 勢いよく駆けつければズボンの裾で手を拭き握手を求めるだろう。
そしていつの間に肩に乗る灰色の四足歩行の幻獣を自慢するように見せる
57ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)22:55:34 ID:Lay
>>56
「はい、元気があっていいねえ!そちらのユニコーン君もよろしく!」

元気良く前に飛び出して来たショウを笑顔で迎え、握手を交わすと観客に向き直る。
片手をショウの肩に置き、もう一度観客に挨拶をした。

「じゃあショウ君、早速だけどお手伝いをお願い出来るかな?」
「そうだなあ……あそこの石畳が黒くなっているところに立っていてもらえるかい?」

そう言って青年がステッキで指し示すのは3m程離れた場所だ、周りには何もなく指示に従えば本当に立っているだけになるだろう。

「それでは皆様には、これからジョーカーが見せてくれるショーの内容をおしらせします!」
「此処にリンゴが一つありますね?」

ショウを移動させている間に青年は観客に説明を始める、何処からともなくリンゴを取り出して観客に見せると、肩に乗ったジョーカーはその手にナイフ型の武器を取り出した。
それは丁度『黒ひげ危機一発』なんかでよく見るようなカラフルな色に染まった物で、玩具のようにしか見えない。

「今からこのリンゴをあの少年の頭に乗せ、ジョーカーがナイフを投げて見事あのリンゴに当ててみせましょう!!」
「しかも!ただ投げるだけじゃありません!ジョーカーはロープにぶら下がったまま、ナイフを投げるというのです!!」

青年の説明を受けた観客はよくある内容ではあるが、実際に目の前で、しかもホビーがそれをやるというのだから期待が高まった。
「勿論、玩具じゃありませんよ」と、ジョーカーのナイフをリンゴに突き刺すとしっかりと突き刺さり、果汁が染み出した。

「……それじゃあ、君はここに立ったまま動かないでね、動くと逆に危険だから」
「大丈夫大丈夫、この芸は1000回以上やったけど怪我人は3人しか出てないから

などと笑えない冗談を吐かしながらショウの頭にリンゴを乗せようとする青年、ちなみにトリックでもなんでもなくしっかりとナイフはリンゴに突き刺さっている。
58天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)23:12:21 ID:FVZ
>>57

「おうッ!元気とホビーバトルだけなら誰にもまけないぜ!」

 悪ガキであり褒められる事が少ないショウにとってこんな些細な事でもへへっ!と照れくさそうに頬を掻き、観客に向かってVサインを送る。

そして「わかった」と二つ返事で暢気に黒い石畳の上に何故か誇らしげに仁王立ちで佇む。

「ん? お、おう?」
「って!けが人出てんのかよ!!」

 そして素直に間抜け面の上に真っ赤な林檎が置かれ、ようやく理解するこの危機的な状況に…喚こうが時既に遅しと言わんばかりに辺りは静寂に満ちている。
 肩に乗った機体の一本角が微かに揺らぐ、主人に危機を察知したのか、それとも偶然なのか何故か、機械的な眼は鋭くジョーカーを睨む様に見える。

「おれも男だ! 覚悟はで、できたぞ!」

ドン!と胸を張り「神様、仏様、かーちゃん」と呟く
59ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/05(火)23:32:09 ID:Lay
>>58
「さあ、それでは皆様ご注目……」

街の街灯に括り付けられたロープに逆さまにぶら下がり、その手にナイフを構えるジョーカー、観客はゴクリと唾を飲み込んで見守る。
シンとした静寂、精神を統一するような間、表情の一切変わらないジョーカーの目が、ショウの肩に乗るプロトユニコーンの方を見た。

その瞬間、ジョーカーは一瞬で3つのナイフを投擲、空気を斬り裂きながらナイフはリンゴを捉えるが、しかし様子がおかしい。
3つのナイフの内2つはリンゴに間違いなく突き刺さるだろう、しかし残りの1つが大きく方向をそれている。
それはショウに───否、ショウの肩に乗るプロトユニコーンに向かって突き進む、大道芸の一環とは言えこれもれっきとしたホビー用の武器、本来はバトルで攻撃に使われるもの。
すなわちプロトユニコーンに当たればタダでは済まない、しかもその方向のズレに青年は気付いている様子を見せていなかった。
60天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/05(火)23:53:22 ID:sBv
>>59

「やっぱこえぇーーッ!!」

 流石に年相応の反応を示し、動こうにも身体が公硬直した様に動けず生唾を飲み瞼を閉じ、刃の投擲が静寂の均衡を打ち破る。

ーーザクッ、ザクッ。………キン! ザクリ。
心地好い音色を奏で予想通りに、頭上の林檎に刺さる音を耳に伝わる。そして僅かの時間を経て遅れ3本目のナイフが垂直に林檎を刺す。

 襲い掛かる“魔手”による投擲に、高機動力を生かしプロトユニコーンは角を振ればナイフを器用に反らし、頭上の林檎にナイフを乗せる離れ業を見せる。

一瞬の出来事なので周りからしたら、ワープの類いだと思うだろう。

 勿論、このまま失敗かと思われた種も仕掛けも無い正真正銘のショーを成功に導いた張本人(?)は肩でジョーカーの事を見据えていた。
プロトタイプのAIには言語は積まれておらず喋る事は無いが何処か言いたげな表情だった。



「すげぇよ兄ちゃん! 俺もうダメかと…」

 林檎を掴むとするする腰が抜ける様に、座り込む。
61ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/06(水)00:04:17 ID:uAy
>>60
「───………」

音が違う、青年は一瞬の出来事の中で限られた違和感という情報から、何が起きたかを瞬間的に理解した。
観客に笑顔を見せたまま、横目でジョーカーとプロトユニコーンを見て、納得する。

少し遅れて拍手喝采、見事にリンゴにナイフを突き刺したジョーカーと、勇気ある少年に対して観客が歓声を浴びせる。
青年はショウの手を取って立つのを手伝い、そのまま観客に大きくお辞儀をした、これにて今日のショーは幕引き。


大道芸の披露が終わり、客が散り散りに帰って行く前で青年は後片付けをしながら退散の準備をする。
その途中、まだショウがその場を離れていなかったのなら、そこにいるショウに気が付いて笑顔を向けるだろう。

「いやあ助かったよ、君のお陰で最高のショーにする事が出来た」
「僕の名前はジョセフ・ドーソン、よろしくね」
62天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/06(水)00:17:51 ID:qSo
>>61

「やーどうも!どうも!俺は天空ショウ!
 この大会で優勝しますッ!」

 何故か拍手に応える様に勢いよく手を借り立ち上がれば大きく跳躍して宣伝活動を始め眩しい太陽の笑顔を見せるだろう。
先程まで怯えたのはどこ吹く風だろうか、コロコロと表情を変え、最後のお客が居なくなるまで宣伝活動を続けるだろう。

「いやいやぁ~そんな俺のお陰なんて~」
「おう、よろしくなジョセフの兄ちゃん! 俺、ショウ!天空ショウ!」

 疎らとなった客足を見納めて二度めの挨拶を済ます。
鈍感で謙遜にも気付かず先程の出来事はどうやらショウは気付いておらず尊敬の眼差しでジョセフに応える。
 
「ジョセフの兄ちゃんの機体スゲー精度だな! じょーかー?だっけ?」
「兄ちゃんも大会でんの?」

気付けば成り行きで片付けの準備を手伝う。
63アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)00:21:34 ID:aPu
>>50

「――あら、本当にいいんですか? わたしも、マスターも、手加減の難い性分ですが」

押し合うようなふたりのやり取りを、フヨウは目を丸くして見ていた。不承不承の返事であることも理解していた。
マスター、いかがいたしましょう。そう言いたげに、彼女は主人の顔を見つけるけれど。

「大丈夫、大丈夫。貴女たちとなら、きっと良い勝負ができるわ。……さ、始めましょう?」

そのような機微など知ったことではないとばかりに、彼女もまたウインクして、誰に宛てたわけでもない言葉。
「――マスターのご命令とあらば、仰せのままに。」そうフヨウも言葉を返して、またも主人の肩から跳び上がった。
続けてアリスは、その懐から無造作に何かを放る。眼で追うことができたのならば、それは戦姫の武装パーツ。
艶のない一緒の黒に、肩口だけは赤く塗られて、背中に天一文字を背負ったもの。黒い戦姫のムーンサルトが、下弦を描く。
――そのまま彼女は、宙に舞ったパーツを目掛けて手を伸ばす。脚で薙いで、落ちる中で背負いつつ、着地点は既に計算済み。
ほんの刹那のことだった。素体姿だった筈の黒い戦姫は、瞬く間に着身を完了させて、バトルフィールドに立っていた。


「とはいえ、アンフェアよね。此方の耐久値は、半分に設定しておきましょうか――」
「……それに、まだ組み直せてない武装もあるし……ま、いいか」


その片手間に筐体の入力系を弄りつつ、アリスはVR出力するステージを決めてゆく。
俗に「都市」と呼ばれる、荒れ果てた夜のビル街をモデルとしたフィールド。
コンクリートの所々が罅割れた大通りに、両者は向かい合って立つことになる。
「宜しくお願い致します」――ホログラムが、フィールドを包みゆく中。素知らぬ様子で、フヨウは一礼してみせた。


「先手は譲るわ。かかってきて頂戴?」


造作もない言葉だった。無形の位のままに、フヨウは立っている。黒い装甲に仮初めの月光が照って、微かな艶めきを宿していた。
64ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/06(水)00:35:21 ID:uAy
>>62
「うんうん、君と君の相棒ならきっと優勝出来るさ」
「僕も大会には参加するんだけどね、まあただの賑やかしだよ、勝ちには期待していないかな」

ショウが大会参加者だとわかると、自分もそうであることを明かした、しかし同じ大会参加者でもそのスタンスはまったく違う。
彼はバトルであっても楽しませる事を目的としている為勝敗に対しては執着は無かった。

「さて、と……それじゃあ、僕等はここで失礼するよ」

そうして片付け終えた荷物を纏めると、もう用はないこの場からジョセフ場を歩いて立ち去る。
65天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/06(水)00:46:33 ID:qSo
>>64

「んー、…人を楽しませるのはモチロンだけどよー
 自分も楽しまなきゃいみねーんじゃねーか」

 不満げに頬を膨らませ文句を垂れる大人の思考は未だに判らない、先ずは自分が楽しまなきゃお客を満足させる事は出来ないと思うのは少年の持論である。
賑やかしで参加と言う言葉に妙に取っ掛かりを覚え純粋な少年の心は疑問に包まれる。

「へへっ!じゃ次会ったらライバル同士だなッ!」
「またなー!」

 また何時か会えると直感が告げているのか別れを惜しむこと無く手を大きく笑顔で振る。

唯一、肩に乗る幻獣だけは《ジョーカー》を見失うまで直視し続けていた
66菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)00:47:07 ID:1vM
>>63
「いや、私は別にハンデなんかいらないんだけどねぇー」

「ちょ、アイちゃん、駄目だよ、まともに戦ったら勝負になんて……」

「……まぁ、いっか」

 何か思うところがありそうな表情のまま、まあ良いかと納得するアイゼルネスを尻目に菱華は後腰のポーチの中から一つ箱を取り出した。
 ……それを開く前に、アリスの戦姫の装着を見た。何とも華麗、言うなればまるで『変身』でも見ているかのような鮮やかさであった。
 流石にその技術には菱華も素直に感動しつつ――――「私だってあれくらい出来るもん!」と喚くアイゼルネスの前に、箱を置いた。
 内部は格納庫をイメージした戦姫のパーツ収納ケースとなっていた。その中にアイゼルネスが立ち入ると、伸びたロボットアームが自動でパーツを装着していく。


「よーっし、準備完了。コンディション良好、過不足一切無し!!」


 重装高機動である機体をモチーフとしたアイゼルネス・クロイツ――――黒と紺を貴重とし、僅かに入れられた赤色がよく映える。
 巨大なバックパックと各部に搭載された巨大な、そして更に細かく搭載された姿勢制御用ブースター達がその機体がどのようなコンセプトで作り出されたかを物語る。
 頭部……性格には目元付近を、蒼色の光を放つモノアイ型補助バイザーが覆った。その右手には長大なビーム・ライフル、左手には縦長の角ばったシールド。
 高級機ながら、それでいて量産機らしい質実剛健さが、其処からは垣間見えるだろうか。

「へぇ、優しいね……じゃあ、行くよ菱華!!」

「う、うん。分かった、頑張る……」

 お言葉に甘えてと、アイゼルネスは先手は貰うことにする。さてどう攻めるかと一瞬彼女は考えたが、元より相手機体のコンセプトは分かったものではない。
 ならばいつも通りにやるのみである……として。先ずはその場から、ビーム・ライフルによる射撃を敢行する。
 様子見とは言え、その射撃は正確無比にその右足を撃ち貫こうとしていた。先ずは機動性を奪い取る腹積もりだった。
67アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)01:07:45 ID:aPu
>>66


    「……いい機体、してるなァ」


戦場に降り立ったアイゼルネスの姿に、ひとり「女帝」は呟いた。精鋭無比の重武装を、強靭な推力で振り回すコンセプト。
それは単なる強引さのように見えて、確かな構築理論に裏打ちされねば成立しないもの。当の本人に、その自覚があるかは知れずとも――。
油断ならない邂逅の中、しかしアリスは思索に耽る。フヨウとは、別のコンセプトの機体も。そう、例えば重装甲型。フルスクラッチも楽しそうね、と。


(動いた。でも距離は詰めない。射撃戦か。)


そして、濃紺の機体が動く。装甲に包まれた片腕が持ち上がった。トリガーが引かれるより先に、アリスはそれを知覚していた。
粒子ライフルの閃光が夜を駆ける。黒い戦姫もまた、その動きを見切っていた。――射線を染める光条。
されどそれは、微かにフヨウの脚部を掠めるのみ。ひらりと突風に舞う木の葉のような動きで、彼女はその一撃を躱した。
――ゆらり揺らめいた黒い機体が、背部に搭載したイオンスラスターを閃かせる。


     「フヨウ。プランA、ドライスィヒ」
         「イエス、マスター」


淡々と、そう告げる。次の一刹那には、真横に聳り立つビル壁へと、彼女は「跳んで」いた。
スラスターを不規則に起動させ、回線数を不安定に上下させながら――三角飛びの要領で、或いは街頭、或いはベンチ、あらゆゆものを足蹴にしつつ。
時には遮蔽物に身を隠しながら、その撹乱的挙動を以って、フヨウは距離を詰めようとする。両腰に収められた2振りのロングブレードは、既に握られていた。
68菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)01:34:45 ID:1vM
>>67

「――――バック!」

「はいよっ!!」

 或いはまるで夜闇の如く……単純な高速起動ではない。オンとオフを繰り返すことによる上下動による撹乱機動。
 当然の話ではあるが簡単には、一筋縄には行かない相手だ。そして手に握るロングブレードを見るに、恐らくは近接格闘戦闘にも覚えがあるのだろう。
 なれば、態々相手の間合いに入って戦う必要はない……と。菱華は判断し、そしてその言葉とともにバック・ブースターを噴射しながらアイゼルネスが後退する。
 僅かに足を浮かして足裏のブースターを前方に向ければ、その出力が重厚な機体を後方へと持っていく……踵が擦れて、火花を散らしながら。

(……ただ、早いだけじゃない。不規則な機動で的確に車線をズラしてくる。しかもそれを高水準で。私がフリーでやってきた誰よりも……)

「兎に角距離を取りながら何時も通りの戦いをやって、アイちゃん! 但し回避機動は絶対に忘れないで!隙を見せたら絶対やられちゃう!」

「了解! そっちもいざという時には頼んだよ!!」

 そして後退と共にレーザー・ライフルを放つ。
 目標はロングブレードを握る内、その右肩。そしてそれと同時に、背部ミサイルランチャーを展開する。
 ロックオン対象は無論、『フヨウ』。ロックオンサイトがいくつも重なり、六発分、左右両方で十二発分のロックオンが完了したのであれば。


「生憎そっちの思う通りにはやるつもりはないもんねっ、吹き飛べ!!」


 そして、垂直に十二発の対艦ミサイルが発射される。
 上空より、僅かに間を開けながら動く彼女を僅かに追尾しつつ落下する形でミサイルは彼女に襲いくることだろう。
 そして、その着弾開始と同時に。今度は頭部へとめがけて、ビーム・ライフルの一撃を放つ。
69アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)02:08:44 ID:aPu
>>68

ブースターが大気を灼き、アイゼルネスの重き躯体を動かしてゆく。後退射撃の典型例。格闘戦への最もポピュラーな対応策。
今のフヨウは実の所、真っ当な攻撃手段をこのロングブレードしか有していない。先日のエキシビジョン・マッチにて、2人は射撃武装の大半を全損させていた。
現在彼女が用いられるのは両腕のブレードと、それぞれ掌に仕込んだ拡散縮退パルス砲のみ。距離を詰めねばならぬのは、必然であり――。
――フヨウの電脳に、鳴り響くロックオンアラート。またも構えられるビームライフル。展開されるミサイルポッド。

(ミサイル。高威力型を、あんなにも。躱しきれないな。)
(間違いなく数発は当たる。これはダメコン必至として……問題は、その追撃)

(機動力ではこちらが勝ってる。ブースターが無くったって、距離の詰められる相手――!!)


 「イヴェイド。レフト150mm、アイン」「ライト85mm、ツヴァイ」「パワーダイヴ、フェルマータ」
 「――プランJ、ツェーン!」     「イエス、マスター!」


矢継ぎ早にアリスはそう命じた。転瞬、フライトパックから青白い噴射炎。回転数を限界まで引き上げる。プロンプトから「武装解除」の実行を、3秒後。
先ず放たれたレーザーライフルを軽く横に躱して、続くミサイルの先ずは3発を直角機動でビル壁に打つける。
そのまま機体は急降下。ほとんど地面に腹部を掠めるようにして、残る3発のミサイルは地面へと。そのままの機動で、アイゼルネスへと真っ直ぐに突撃する。
――残る6発が、フヨウの背を撃ち抜こうとした瞬間。その背中から「分離」したフライトパックがインメルマン・ターン。
全てのミサイルを引き付けながら、やがて追い付かれ夜空に爆散する。――最後に放たれたライフルに、右肩部を撃ち抜かれながらも。


「――生憎、わたしからも。そう簡単に吹き飛ぶつもりは、御座いませんよ」


だンッ、とフヨウの装甲脚が地面を踏み抜く。耐久値を3分の1ほど削られながらも、ブレードの射程内まで踏み込んだ、その黒い神姫は。
紅い眼光を残像にして、紺碧の装甲に一太刀の逆袈裟を見舞おうとするだろう。――もし受けたのならば、それだけでは致命とは成らずとしても。
70菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)02:38:22 ID:1vM
>>69

「やったぁ!!」

 十二発のミサイルがフヨウを捉え、そしてそうなれば敵機は必然その対応に追われざるをえない。
 対艦ミサイル達が直接的にダメージを与えられたわけではない。それは正しく技巧、数多の機動を駆使してあらぬ場所へと叩きつけられた。
 そしてフライトパックを一息に犠牲にする思い切りの良さ。流石は、天才アーキテクトであるが。ビームライフルの一撃は、確りと肩部を撃ち抜いた。

「まだ戦いは終わってないってば!!!」

 然し。その喜びに対して致命的であったのは、ブレードの範囲内に彼女を入れてしまったことだろう。
 無論それを見逃すほどに彼女も優しくはないだろう。であれば必然、その刃はアイゼルネスの装甲を叩き切ってしまわんと振るわれる。
 咄嗟にアイゼルネスが左腕のシールドを構える――――一太刀の下に真っ二つにされたそれを直ぐ様自分から切り離した。
 確かにダメージは稼いだ……だが。その代償として、アイゼルネスは酷く追い詰められることになる。

「菱華ァ、何やってんの! インコム!!!」

「は、はい!! ごめんねアイちゃん!!」

 背部バックパックより、二つのディスク状の子機が射出される。有線によって接続されたそれらは、不規則な軌道を描きながら展開され。 
 正しく至近、ライフルでは対応しきれない距離にまでやってきたフヨウに対して、両側面からの射撃を以てして撃ち抜かんとするだろう。
 所謂、オールレンジ攻撃を行う機器の内の一つ……マスター側が制御する、特殊遠隔操作型兵器であった。


「だったら、懇切丁寧に吹き飛ばしてやればいいんでしょォ!!!」


 そして、更にバック・ブースターを加速させながらレーザー・ライフルを撃つ……次の狙いは胸部。 
 余り長引かせるのは得策ではない。遠距離から此処まで迫ることが出来る機動力と、実力が向こうにある。出来ることならば、一気に勝負を決めたいが――――
71アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)03:08:11 ID:aPu
>>70

ヴィヴロブレードの一閃が、確実にアイゼルネスの装甲を断ち切る。実体刃ゆえの確かな感触。然しそれでも、斬り得たのは防盾に過ぎない。
アイゼルネスの素体には、未だにダメージを与えられていない。そしてまたフヨウは飛行手段を失った。苛烈な機動戦による翻弄は、もはや望めず。
――決して良からぬ状況にあるのは、彼女たちも同じだった。ひとつ、アリスは歯噛みをする。


(ちィ――流石に、武装が少なすぎた。攻め手に欠けるわ、これじゃ)
(……全損覚悟ね。まったく、楽しませてくれるじゃないの)


それでもアリスは笑うのだ。不敵に唇を歪ませて、心の底から楽しげに。彼女自身、きっとそれは不可解であったろう。
幾らプラモの出来が良いとは言え、単なるアマチュアと戦っているに過ぎないのに。しかも、少なからぬハンデを自身に課しながら。
自身の実力が十全に発揮できない環境を、彼女はひどく嫌う筈なのに――不思議と頬を緩ませてしまう、この情動は何なのか。


(また何か射した。マスター操作の有線兵器か――でも、それが命取りだッ!)

「スロー、サイド!」「マージン保持!」「RNG26、全軸最大出力!」「プランG! ノイン!!」
   「ウィルコ、マスター!!」


射出された有線式オービットキャノンの「ケーブル」目掛けて、フヨウは携えた2刀を投げつけるだろう。
無線制御でないが故の欠点。無論、断線までにある程度の被弾は受けるとしても――そうして、首尾よく切断に成功したのならば。
アイゼルネスに接続されていた方のケーブルを、フヨウは徒手の諸手にて「掴もうとする」だろう。
駆動系となるコアレスモーターの出力を最大にまで引き上げ、ライフルの射撃姿勢と照準を崩そうとして。
そして同時にアイゼルネスを、己の「射程圏内」にまで引き摺り込む――有線制御であるが故の、奇策。
72菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)03:29:04 ID:1vM
>>71

「菱華ァ!!」

「――あ、ああ!!」

 有線式支援兵器は菱華の操作によるものである。であるが故に、マスター側の実力が露骨に反映される部位でもある。
 故にである。インコム、及びケーブルの操作に……一歩遅かった。投擲された二刀に対して対応し切ることが出来ず……結果、刃を以て切断される。
 反応が間に合わなかった。未熟が起因であり、そしてそれを菱華は恥じていた。自覚はせずとも、それは少なくとも対戦前での心内環境では有り得ないことであった。
 そしてアイゼルネスは、それを感じ取っていた。そして――それが故に。結果的に、この戦いを心の底から楽しめていた。

「アイちゃん!!」

「うァァァああああ!!!!」

 有線制御のためのケーブルが掴まれ、そしてそれによって引きずり込まれる。
 強制的な一方向の力が加えられる以上、射撃のための態勢は完璧に崩される。そうなれば、そんな状態で当てられる相手であるとは思えない。
 この状況において射撃武器は役に立たない。アイゼルネスの独断を以て、背部バックパック搭載のミサイルランチャー及びビーム・ライフルを放棄する。

(“アレ”をやれるか!?)

(ああ、そうだ、“アレ”を、やらなきゃ! ああ、早く、早く)

(無理だ、遅過ぎる! なら、このままイチかバチか!)


「――――――落ォちろォォォォ!!!!!」


 そして大腿部にマウントされたビーム・サーベルを引きずり出し、前方へとブースターを……相手の『射程圏内』へ、自ら躍り出る。
 ビーム・サーベルを発進する。黄金色に輝く粒子の塊が光熱を以て御敵を貫かんと牙を剥く。
 全力で、相手の懐に潜り込み、一秒でも早くその腹に刃を突き立てんと――疾駆、咆哮、突撃を。
73アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/06(水)03:50:38 ID:aPu
>>72



   「――負けてッ、」
         「たまるかあああァァァァァァ!!!!」


――その絶叫は、きっと。アリスがこの戦いにおいて初めて示した、明白な感情の発露だった。


     「『フィンガー』! 射撃、開始ッ!!」「ッッ、イエス、――マスター!!」


迫る剛躯。煌めく金刃。されどそも、何故フヨウは其の手に何を握るわけでもなく、蒼惶にアイゼルネスを引き寄せんとしたのか?
ブレードは手放されている。その堅牢なる青い装甲に、彼女の拳では掠り傷として与えられないであろう。ならば、なぜ?

その答えが、今のフヨウの両掌に示されていた。炯炯として輝く紫電が、その指先に弾けていた。
両掌両指に仕込まれた、拡散縮退パルス砲。射程も持続力も有りはしないその兵装を撃ち放つには、この至近でなければならなかった。

ビームサーベルが、フヨウの腹部装甲を深々と抉り抜いた。既に半ばを切った耐久値が急速に削れゆく。
だがそれは、フヨウとて同じ最後の好機。雷電溢れるその十指を、最も装甲の薄いであろうアイゼルネスの頭部に向けて。



「――全弾、持ってき、なさい……――ッ、!!!」



――その全ての指先から、撃ち放たれる白き閃光の弾雨。果たして、斯くして、勝敗は如何に?
74菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/06(水)04:12:00 ID:1vM
>>73
「――――アイちゃん!!」

「……ごめん菱華、負けちゃった」

 構築された街がデータとなって消えていく。
 頭部バイザーは粉々に粉砕されていた。耐久値は至近弾を以て吹き飛んで、制限時間である5分の間を保たせることなくゲームエンドへと導かれた。

「ううん、私がプロセッサを起動出来ていればよかったんだ……そうしたら、もしかしたら……」

 数値だけで見れば間違いなく良い試合運びをしていたはずなのに、最後の最後で詰めが甘かった。
 いや、逆算してみればミスは幾つも見つかる。そもインコムの操作からして隙だらけだったのだ。
 展開自体は間違っていなかった筈だ。いや、あの状況にまず持ち込ませなければ。もう少し切断に対して警戒していれば――――反省点は十二分にあるが。
 それでも菱華から見ればアイの戦闘行動は一つとして間違っていなかった。倒れる彼女をそっと抱き上げて、両眼を涙で潤ませながら何度も彼女に謝罪した。

「……あのう、その……た、対戦……ありがとうございました……」

 おずおずと菱華は顔を上げ、目の前の彼女を見据えた。
 果たして彼女は自分のことをどう思っているだろうか。もしかしたら……怒っているかもしれない、とすら思っていた。
 なにせ彼女の戦姫にはダメージを与えてしまった。バトルをした結果としては当然の話ではあるのだが、それでも不安に思ってしまうのがこういう人間の性である。

「やぁー、負けた負けた! でも楽しかった、次は負けないよっ!!」

 そしてまた、対戦前と変わらずアイゼルネスは菱華の手の中から彼女達、一人と一機へと向けて。
 頭部パーツは顔の半分を吹き飛ばされて内部構造が顕になっているほどだったが、それでも残った部位は笑顔を作って。
75赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/06(水)17:23:57 ID:tEV

「―――――ッァああ!!」

大会参加者用に用意されたホテルの一室にて、赤鉄シンヤは備え付けらたデスクを叩く。
眼前のコンピューターに映し出すのは、『ジャンク』が見た先日の戦闘記録。
王者を見る、女帝を見る、忍を見る。そして突破口を抉り出すのがプレイヤーの仕事である。
だが―――――見えない。蒼い閃光をどう叩き潰すか、女帝の弾幕をどう超えるか。少なくとも"現在の武装では"越える方法が見つからない。
今越えられないなら強くしてやればいい。その為の案もあるが、それは『ジャンク』に負担を強いる事になる。
頭をわしゃわしゃかき回しながらも、なんとか方法を考えるが―――――

『解析完了。既存武装ではルートが見つかりません。』

彼の膝に乗っていた『ジャンク』が無機質に告げる。
それもまた自身に搭載された戦闘用のAIで敵機の解析を行っていたが、結果は彼と同じである。

『勝率 20%を下回ります。 
 本機のアップグレードを推奨します。』

同じ調子で淡々と、残酷な宣告は告げられる。
はぁ、と一つ大きなため息をついて。彼はあきらめたように微笑んだ。

「……ったよ。やってやらぁ。
 結局、俺が上手く使ってやれば良い話だからなァ。」

ホテルの隅に置かれていたキャリーバッグをあける。中から工具箱とパーツボックス、そして使い古したノートを取り出して
朝までかかるか、なんて考えながらも。彼はどこか上機嫌な顔を浮かべていた。
76マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/06(水)23:53:57 ID:BCe
WHBTの会場付近には古今東西様々なパーツを取り扱うショップがいくつも並んでいる。
そんな中に並ぶ店舗の一つ、比較的メーカー系に近い店の中で、一人の青年が品物を物色していた。

「これで15店目……、やはり天下のWHBT会場と言えどもそう簡単には置いてないか……
 いーや、まだ諦める訳にはいかん! この白吉マキト、こんな場所で折れるような男じゃあない!」

一人で拳を握り気合いを入れながら、ケースに収められた商品を確認し、積まれた紙箱を一つ一つ手に取って調べる。
少し大きめのリュックを抱え、赤いキャップに胸に”工事中”の看板をあしらったTシャツを着た青年。周りから見れば不審者とも思われかねない。

「何処かに一つぐらいあってもいいと思うんだがなー……、どーしてここまで見つからないのか不思議で仕方ない。
 ま、まだ大会は長い。滞在中に一つでも見つかれば御の字、って心構えで行くしかないかー」

店の奥の奥、ラベルの一つ一つまで余すことなく視認していく。だが、それでもお目当てのモノは見つからないらしい。
彼の手に握られている一冊の雑誌、その表紙の端に載っているとある企業名、これこそが彼の探し求めている代物。

「流石に疲れた。ちょっと早いが今日はこの辺りで切り上げることにしようか……」

長きにわたる物色を終え、店の奥から外へ通じる扉へと戻ろうと、青年は足を進める。
77赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)00:03:52 ID:Rx8
>>76

「……なんだァ、アレ」

扉の外からではあったが、それはあまりに目立つ存在であった。
店内で妙に気合の入った動作でぷらキットを物色する男は、そのファッションセンスも相まって目を奪う。
持っている雑誌は妙に古いものであり、何かしらのマニアなのだろうとは考えたが
自分とは関係の無い話である、と。男から目を離して、足を踏み出したそのときこそ―――
―――男が物色を追え、店の外に出たのと同時であり。
当然発生する衝突。細身のシンヤは尻餅を突いて、腰のホルダーからひょっこりと顔を覗かせていた『ジャンク』が宙に舞う。
それを手にとる事ができたのならば、もしくは浮かぶその機体を凝視できたのならば。
統一感の無いパーツの中に、確かに求める企業のパーツが有る事が分かるだろう。
もっともそれは『鋼獣』部のパーツ、男が求めているものとは違うだろうが……
78マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/07(木)00:29:38 ID:YgI
>>77
流石に何軒もの店の棚を休みなくブッ続きで確認し続ければ疲労も溜まる。
少々ふらつく足取りで店を出た途端、疲れからか出くわした青年と正面衝突を起こしてしまう。
体格の差からか、マキト側は多少のけぞる程度で済んだが、相手側は尻もちを付いて転倒してしまう大事故に発展。

「あっと! ゴメンゴメン、ケガはない? まさか他人と衝突してしまうだなんて、一生の恥ッ!」

「んんッ!? 今のは……まさか!!」

衝突の際に彼から飛び出してしまった機体を拾い、青年に手を貸そうと腕を伸ばしたその時。マキトの目が鋭く光る。
持っていた雑誌を開き、とあるページと機体を何度も見比べる。そこには機体を構成するとあるパーツと瓜二つなパーツの姿が。
間違いない。このパーツこそ、マキトの追い求める”チタニア社”製パーツである。

「ついに見つけた!! 輝かしき純正パーツの一つ目がッ! 今まさにボクの手の中にッ!
 会場に到着して早数日、栄光への第一歩がついに踏み出されたのだーッ!!」

酷い程のテンションの上がりようである。先ほどまで顔に浮かんでいた疲労の文字も一気に吹き飛んで行った。
あまりの感動に青年の事もそっちのけで万歳三唱をする始末。嫌でも周囲からの視線を集めることだろう。

「キミぃ! このパーツはどこで手に入れたんだい!? ボクにも教えてもらえないだろうかねぇ!」

彼の機体を握りしめたまま詰め寄っていくマキト。肝心の機体にはソフトタッチなのでご安心を。
79アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/07(木)00:32:36 ID:2PH
>>74

勝敗は決した。バトルフィールドのホログラムは、戦場の熱気ごと乾いた空気に溶けていった。
ふう、とアリスは一つ、溜め息を吐く。傷だらけになった黒い戦姫を抱き上げて、お疲れ様、と一言。そうして、――蓮見に向けて、穏やかに微笑んだ。

「とても、楽しいバトルだった。ありがとう、蓮見さん――エキシビジョンの時より、楽しかったかも。うふふっ。」
「部屋に籠ってジメジメ構築理論を組み立ててるより、プロの癖にへぼいトレーナーの連中とスパーリングするより、ずっとずっと心躍ったわ」

微かに緩んだ頬には、しかし確かな喜びと興奮。アリス・リリエンリッターは、自身のよろこびに嘘を吐けるほど器用な少女ではない。
そしてまた彼女は、このバトルの中で殆どフヨウの装備が全損したことになど、露ほどにも機嫌を損ねてはいなかった。
この生業で口に糊するのならば、それは至って当然のこと。その覚悟なくして、プロではいられない。
――何より。この素晴らしいバトルの対価として見るならば、両手に余るお釣りが来るほどの体験だった。

「すごくいい動かし方だった。……行動量が、そのまま火力に直結していた。ほとんどのアクションが、何かしらの成果を残せていた」
「プロでも中々できないことよ、あんな立ち回りは。――わたしが保証するわ。貴女、いいバトラーになれる」

おずおずとする蓮見の手を取って、彼女はいっそ幼気であるくらいに、きらきらと紅い目を輝かせて、そう語る。
その手にぽんと握らせるのは、10枚ほど束ねられた1万円札。そして、電話番号と住所の書かれた、1枚の紙。

「これ。修理費よ。受け取っておきなさい? 返したいなんて許さないわよ。」
「足りなかったら、いつだってここに連絡を頂戴。勿論、バトルやセッティングに関するレクチャーなら、いつだって受け付けるわ」

――余程、彼女の心を動かした何かしらがあったのであろう。矢継ぎ早に語るアリスの言葉は、恐らく異論を許さない。
そんな主人の熱弁もよそに、フヨウといえばアイゼルネスの破損ぶりを見て――「――わ、すごい顔」。
自身もまた横腹に風穴を開けた姿で、そんな台詞を言ってのける。内装でないどこかが、どうも彼女には抜けていた。


「うふふっ。次の挑戦を、心待ちにしております。アイさん」
「次やる時は、ハンデなんて失礼なことはしないわ。全力で相手する。宜しく頼むわよ?」


――そうして、ひとまず戦いの幕は降りる。となれば、もはや2人と2人は、単なるモデラーとその相棒の関係である。
あるいは談笑に花を咲かせ、共に模型漁りに勤しんで、どこか喫茶店にでも寄るのかもしれない。和やかなる午後が、過ぎてゆく。
80赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)00:43:59 ID:Rx8
>>78

「……取り合えず返せや」

男の熱量に押されながらも、まず求めるのは愛機の返却だろう。
丹精篭めて組み上げた機体である。それが他人の手にあるという状況は気分がいいものでなく。

「しっかしテメェ、こんな『ジャンク』が欲しいのか?」

男の手にある機体は形状こそ左右非対称で統一感がないが、モデラーであれば完成度そのものは非常に高いものであるのが分かるだろう。
それをジャンクと言い切る、その意味はそのままである。

「廃品なんでな、ソイツ。
 どこぞのお坊ちゃまが捨てたパーツを拾ったってだけだ。
 売ってるのなんて、俺も見たこたねェ。」

告げる事実は残酷か、もしくはこれでも可能性の提示になりうるのか。

「ご立派に並んだショップさんも、売りてぇのは新商品だろうよ
 んなオタク向けの絶版品なんて諦めな。」
81初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/07(木)00:47:22 ID:tWr
港湾都市うみかぜに設けられた無数のWHBT予選会場の一つで、今この瞬間、どよめきが起きていた。
その爆心地は場内のひときわ目立つ位置で行われ、ストリーミング配信も行われるフィーチャーマッチのテーブルだった。

予選大会のマッチングは、少なくとも殆ど勝ち点が稼がれていない段階では完全なランダムだ。
そんな中で名の売れた選手同士が出会えば、当然注目を集める。

(――うわっ、なんか息止まりそう。学生選手権より人口密度は上かな……)

注がれる視線の中で、ステージの下手に立つ少女は内心のプレッシャーを噛み潰すように明るい笑みを浮かべ、歓声に手を振った。
そこにいるのは新進気鋭のアイドルグループ、『ぷりずまてぃっく』のメンバーにして、若手の強豪として急激に頭角を現したホビーファイター ――初風なずな。

「あはは、お忍びのつもりだったんだけどみんな鋭いなー。
 ファイターアイドル初風なずな――見つかっちゃったからには、頑張ります!」

私服でいようとアイドルはアイドルでなければならない。
ノースリーブのシャツに赤緑タータンチェックのスカートという簡素な装いが、彼女の素朴な愛らしさをよく引き立てている。
……まあ、それを「イモっぽい」とも言うのだけれど。

『そしてこのコナユキも、誠心誠意尽くさせていただきます』

合わせてペコリと頭を下げるのは、なずなが駆る戦姫コナユキ。
主君に忠誠を誓う勇士のようにひざまずき、サーファーがそうするが如く、トレードマークのボード型SFSを足元に突き立てるお決まりの姿勢を披露していた。

やがて二人は一度だけ目を合わせてうなずきあい、これから対戦相手が現れる方へと視線を向けた。
82赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)01:05:38 ID:Rx8
>>81
フィーチャーマッチのカードとして選ばれたのは、アイドルと嫌われ者。
方や背後の観客席に、お子様からご老人と幅広いファンが歓声を送り
方や背後から送られるその殆どがブーイングという酷い有様である。少なくともファンよりもその反対が多いのは間違いない。
然して"赤鉄シンヤ"は慣れているといったそぶりで罵声を受け流し、コントロールパネルの前に立つ。

「ははっ!!
 らしくねぇ服着てるがアイドルサマじゃあねェか!
 その綺麗な機体見るまでわかんなかったわ。」

額に手を当てて背を反らせ、まるで見せ付けるように大笑い。
初風なずなの視線の先に居る男は、通称を"壊し屋"という。敵機の破壊を楽しいと公言する大会荒らしであり、もしかすればなずなも知っているかもしれない。
であれば、この笑い声も決して良い意味のものではないのだろう。

「あー……良かった良かった。
 ずっと聞きてぇ事があったんだわ。」

セッティングゾーンに設置された機体は、下半身が『鋼獣』、その上半身が『戦姫』。構成するパーツはどれもが廃品であり、統一感の無いシルエットは正しく『ジャンク』
だが構える極大の両断剣――――"ジャンク・バスター"が彼の通称を表している。

「なぁ―――――
  
 ―――――お前、"おもちゃ弄ってて楽しいか"?」

開始のゴングがなる直前に放たれたその言葉は。

「歌って踊んなくていいのか?ステージはここで満足か?
 なぁ―――――教えてくれよ!!」

彼女に対する侮辱になるか。
83マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/07(木)01:08:32 ID:YgI
>>80
「ああスマン、つい熱くなってしまった。どうか許してくれ」

青年の一言で我を取り戻し、機体は正しい所有者の元へと収まる。
ついでに青年に手を貸して、その身体を起こそうと持ち上げる。落ち着きさえすれば、このくらい気は使えるのだ。

「確かにジャンクかもしれない。だが、ボクにとっては非常に貴重な財産に等しいんだよ。
 それにキミはその『ジャンク』で立派に戦っていたじゃないか。ねえ、赤鉄シンヤ君」

マキトの言う財産とはもちろんこの機体、に装着されている一パーツの事。

「コレは拾いモノだったのか……。どこかにもボクと同じような同類がいたって事だな。胸が躍る」

「まあ、ボクもいかにも年季の入ってそうな個人商店だっていくつも見て回った。
 この店はもう一つの目標である、会場の全店舗制覇の礎になるところだったのさ。そうでもしなきゃこのパーツは見つからない」

WHBTが開かれる期間は長いとはいえ、周辺に連なる関連店舗の数は山のようにある。
マキトをそのような苦行に走らせるほどの魅力が、この品にはあるのだろう。多くの人間には理解されないが。

「で、これを譲ってくれる気にはならないかな?
 ああ、心配しないで。この一個だけ譲ってもらえれば問題ないから」

リュックから財布を取り出し、勝手に買収を進めようとする始末。
84赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)01:25:24 ID:Rx8
>>83

「―――――お前、見てたのか」

額にしわを寄せて、にらみつける。元よりそんな顔ではあるが、浮かべる機嫌は更に悪そうだ。
旗から見れば立派に見えたかもしれない。だがあの戦いは、シンヤにとっては屈辱の記憶でしかなく。
『ファルシオン』に正面から敗れて、『ジャンク』に傷をつけた。
勝たなければ意味が無いのだ、彼の戦いは。

「……ケッ。
 同志なもんかよ。飽きて捨てたんだぜ?
 お前、そんな奴と一緒で良いのか?」

彼のパーツは廃品である。が、今このように機体のパーツとして十二分に使える状態で捨てられていたのだ。
ならば捨てる動機などひとつだろう。飽きて要らなくなったのだ。

「見てたんだろうが。譲れる訳ねェだろうがッ!!」

こんなジャンクといっておきながら、売ってくれと頼めばキレる。
面倒くさい奴である。
見れば、受け取った機体をホルダーに収める手順は非常に丁寧であり、そのホルダーも中々安いものではなさそうである。
85初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/07(木)01:38:27 ID:tWr
>>82

『壊し屋だか肥やし屋だか寡聞にして存じ上げませんが、随分と若々しいお方でございますね。
 何なら非紳士的行為でサスペンド、戦う前から負けて頂いても結構で――』

「――ややっ、コナユキもちょっと言い過ぎだって!」

マスターへの痛罵に対して、コナユキは平素の慇懃に無礼の二文字を加えて応じようとする。
だが当の主君に舌峰を収めるよう命じられると彼女は沈黙し、不承不承と言ったふうに頭を振った。

「楽しいですよ。だからあなたも楽しめばいいと思う。
 自分の生き方にやましいことがなくて、全力を出してぶつかり合えるなら、どんな舞台でも満足はあるんだから」

透き通るような笑顔は凍てついた仮面か、燃え盛る真意か。
何にせよなずなはこの手の〝ゲテモノ〟への非難はなれっこで、生半可なことでは馬脚を現しそうにない。

シンヤの返答に耳を傾けつつ、なずなは司会者に軽く目配せをする。こんな戦いは本意ではない。
アイドルにふさわしいステージは華々しいもの。カウントダウンが、4、3、2、1、降りていき――。

『……行きますよ、お姉さま』
「うんっ! ――でも、真顔でその呼び方はやめてくれないかなぁ!」

――0。開戦と同時、コナユキはボードで身長5つぶんほどの高さに舞い上がり、敵の反応へ向けてバスターレーザーの第一射を放った。
それは青白いマズルフラッシュを僅かな前兆として、大気を裂くように真っ直ぐ襲い来るだろう。
狙いは大雑把だが、本命というよりは品定め、および着弾時の爆風による炙り出しを狙った初手だ。
86マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/07(木)01:56:47 ID:YgI
>>84
「そりゃもちろん。ホテルのテレビで一部始終を見させてもらったよ。
 あの前年度覇者相手に三人掛かりとはいえ善戦、キミの機体は惜しくもダウンしてしまったが、何とか勝利を収めた……
 凄い話だ。あんな試合はそうそう見られたモンじゃない。少なくともボクの地元じゃまず起こりえない素晴らしい試合だった」

同じくバトルに身を置く者として、あのエキシビジョンマッチを見て興奮せざるを得ない試合だった、と語る。
彼がどう思おうとも、マキトの目にはあの時のシンヤは輝いて見えていた。

「飽きたとしても一度は手に取って、遊んでいたはず。見向きもされずに店先でぶら下げられるのに比べれば幸せな事だと思うけどね、ボクは。
 こんなマイナー企業を追い求める身としては、握ってもらえたことだけで満足だ。
 ハマってもらえればもっと嬉しいけど。不要になったのならそのままボクに譲ってもらえたならもっともっと嬉しいけど」

こう話すマキトの表情は歓喜に満ち溢れており、興奮を抑えきれないほどイキイキとしていた。
好きな事であればいくらでも言葉は出てくる。周りからどう思われようとも、心から湧き出る気持ちは変わりようがない。

「……わーかった。無理に貰おうと考えたボクが悪かったよ。
 キミの機体への熱意はよーく伝わった。そりゃ自分で組み立てた機体だもんな、譲れる訳ないよな。
 誰だってそうする、ボクもそうする」

青年の熱き想いは機体やそれを収めるホルダーを見てよく伝わった。彼はホビーを愛しているのだと。
自身の行いを恥じ、頭を下げて財布を再びリュックへとしまう。
87菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)01:58:53 ID:rwB
>>79

「ええ――――そんな、その、私なんて、いつも通りやっただけで!!
 アリスさんと……それにプロの方と比べたら……私なんてまだまだで……」

 危険を感じ取ったアイゼルネスが、ぴょんと掌から菱華の肩へと飛び乗ってからほんの一瞬……両手を振りながら彼女のそれを全力で否定した。
 胸中にあるのは、そう、嬉しいという気持ちである。彼女のような大物に、新人の自分が褒められるとは何と光栄な事だろうと思ってはいる。
 いるが……そこまで言われるほどだろうか、とは思いつつ。それでも、彼女の笑顔を見たのであればそんな謙遜も何処かに消えてしまいそうであったが。
 兎も角良かった。この戦いは本当に良い経験になれた。負けたのは悔しいが――――と、そこまで思って。

「……あれ、私……」

 戦闘の前に思っていたことは……もっと、これとは真逆のことだったような気がすると。負けてもいいとすら思っていた気がしていたと。
 そんなことが頭を掠めていったがどうでも良いことだった。今は、褒められて嬉しいという気持ちと、次は勝つという向上心があれば。

「……頑張ります。私、頑張って良いバトラーになります。
 アイちゃんの性能を全力で引き出せるくらいの。次は……その……アリスさんに勝てるくらいの……いやなんでも!!」

 最後の方に口に出した言葉は……言ってから思った、自分にしては余りにも大言壮語が過ぎると段々と声は小さくなっていったが。
 それでも一つ、それは菱華の心のなかに一つ声とは違って消え入らずとも目標が設定されたのだ。次こそは、ハンデ無しで、そして勝てるようにと。
 さぁ次は頑張ろうと、決めたところで手を取られる。アリスの瞳は無邪気にすら見えるくらいに輝いていて、そして握らされたものは――――

「う、うぇぇ!? そ、そんな、私プロでも無いのにお金なんて!!」

「やったじゃん菱華! 初のファイトマネーだね!! 貰えるっていうんだから貰っときなって! そして私を強くしろー!」

「うぅ……何から何まで、すみません。本当に有難うございます」

 数えて十万円……いや金額の問題ではないが、こんな大金受け取れないといいたいところだが、先回りしてそれは防がれてしまった。
 その上連絡先まで。彼女にバトルや設計を教えてもらえるのであれば値千金、十万円以上の勝ちがあるだろう。
 何とも大き過ぎる収穫だ。これはなんとしても強くならなければ――――と。なんとも大きいものを背負ってしまったと。
 アイゼルネスの破損ぶりに言及に対して、「お前がやったんだろ!」と至極真っ当な突っ込みを返すアイゼルネスを置いておいて。

「次にやるときには私が最強になってるからね、フヨウ!」
「はい……私も。必要ないくらい、強くなりますから。その時まで、こちらこそよろしくお願いします!」

 そうして……また、他愛もないが然し菱華にとっては貴重な時間を過ごすのだろう。
 得たものの多い戦いだった。或いは彼女のことを、『友達』……と言ってもいいだろうか、そんな風に菱華は思いながら。
88赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)02:06:02 ID:Rx8
>>85

「良いAI持ってんじゃねェか
 ―――――潰し甲斐があらァな!!」

バトル開始のゴングは鳴った。ならばこれより交わすは言葉でなく、鉄と火薬と粒子砲であろう。
決してシンヤの煽り耐性が低いわけではない。

展開されるステージは、幾何学模様の床と立方体が浮かぶ"サイバーステージ"。
障害物は疎らであるが、一切使えないわけではないし、背後に機を向けなければ足をすくわれることもあるだろう。

身長の5倍、それ程の高さから降るレーザーであれば、"前進"による回避が選択肢に上がる。
それは青いマズルフラッシュを視るまでは、巨体相応の速度で動いていた。

「……そのキレーな台詞も吐けなくしてやらァ!!」

砲音がなると同時に、廃部ウェポンホルダー"ジャンク・ボックス"のスラスターが青白い息吹を上げ、加速する。
速度加速度共に、軽量速度特化機に匹敵するそれは、放たれたレーザーを回避するに十分であり。
程なくボードの真下まで辿り着いた『ジャンク』のウェポンホルダー、その砲塔は真上を向き
左右対称二門の砲より放たれるはバズーカ。純粋に巨大な弾丸は、弾速と引き換えに高い破壊力を誇る。
軽量な『戦姫』であれば回避は難しくないだろうが、攻め手は止まない。
今一度前進のスラスターを噴かせ、飛び上がる機体。そして腰部の"ジャンク・チェーン"を手に取り鞭の如く振るう。
回避する方向へ向けられたそれは、その一節一節が爆弾で構成されたチェーンマイン。直撃はしなくとも、幾らか足を引っ張ることは出来るか?……
89赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)02:19:26 ID:Rx8
>>88
それは純粋な賞賛であろう。事実、シンヤにも語るマキトの顔に邪念は見えなかったし
きっと、素直に受け取り喜んでいいものであったのは確かだ。が

「素晴らしい試合とかじゃねェんだわ」

しかしてやはり、その男は敗北に意味は無いと。勝つ事にしか価値はないと。

「……どうだか。」

彼の口から出る言葉は、玩具に対する接し方としてはきっと模範的である。
一度でも遊んで貰えてならば、きっと。玩具も幸せだろうと。

「――― 一度遊んで貰ったんだ。もっと、遊びたかったろうよ。」

その声は、どこか、怒りよりも、もっと別の感情が見えるような。

さて、頭を下げて財布をしまう男を見て。別にここで終わりとして分かれてしまっても構わないのだが。

「………………」

なぜかシンヤは立ち去らない。初対面の男二人では少々辛い間が開いて、やっと口を開けば。

「………待ってろ。」

と。キャリーバッグを開き、中のパーツボックスを開いて手に取るのは『闘機』。
幾らかの傷、遊んだ後が見えるもののそれは実質完品に近いあの企業の作品であった。

「俺ァ多分使わん。じゃあな。」

半ば押し付けるようにそれを手渡して、シンヤは逃げるようにこの場を後にするだろう。
90武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/07(木)02:37:10 ID:28r()
WHBT予選、この大会で優勝するためには先ずは本戦に駒を進める必要があり、その為に全ての選手は例外なくこの予選にて凌ぎを削りあう。
それは例え前大会優勝者であっても例外ではなく……会場内に存在するアリーナの一つ、そのステージに武藤ツカサは立っていた。


「……やはり楽しいな。こうも強敵揃いでは、心も滾るというもの」


先日のエキシビジョンにて使用し、そして敗北した愛機はホテルの自室にて絶賛修理中である。
フルスクラッチのクリアパーツの予備を用意しなかった痛恨のミスだったが……そもそも予選で使用する機体を彼はスポンサーから定められていた。
それは『闘機』の最新キット、来月には発売される予定の商品なのだがそれを予選の間は広告の為に使わなくてはらないという――――大人の事情が存在した。
ゆえに渾身の新作は本戦までお預け、それでもこのステージに彼が立って、その戦績は連戦連勝であり未だ誰も彼もが嘗ての王者に土を着けられずにいた。

ブルーカラーで塗装されたその機体は未だ傷一つなく、観客は彼の更なる勝利を望むものと、彼を討ち果たす者の登場を望むもので二分されていた。
そして新たな歓声が湧き上がる。ステージに立つであろう相手に向けて、ツカサは不敵な笑みと隠しきれない戦意と共に、挨拶を送るだろう。


「――――さあ、正々堂々、全力のバトルを楽しもう!!!」


ツカサは模型バカであり、バトルバカだ。だからこそ、この大会の全てが楽しくて仕方がなかった。
そして彼の『闘機』は既にスタンドにセットされており――――その戦意は十分なまでに高まっていた。
91初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/07(木)02:40:10 ID:tWr
>>88

(サイバーステージかぁ。あの箱の動き、バージョンによって違うんだよね)

形成されたのは比較的プレーンに近い戦場だが、故にこそ障害物の影響力を低く見積もりがちになる。
どちらかがうっかり宙に浮かぶキューブと敵の間で挟まれる格好になれば、一瞬で勝負が決まるだろう。

『敵機回避。追いつかれます。直線速度では分が悪いかと』
「うん、わたしもそう思ってた。多分最高高度でも跳躍で追いつかれるね。……じゃ、一緒に踊るしかないかな」

見れば、先程ジャンクの方を向いて砲撃していたにも係らず、コナユキは――正確には彼女を載せたボードは即座に後退していた。
立ち乗りという形を取るがゆえのメリットの一つ、本体の旋回と移動方向の切り分け。

「まずひとつ」

バズーカの描く緩やかな放物線を潜るように機首を下げる。回避された弾は、フィールドの境界面に当たって弾けた。

「それで、次は――コナユキ、まだサクラプラン継続!」
『承知!』

何らかの符牒で意思疎通して、コナユキは降り掛かってくるジャンクへと向き直って見上げた。
回避運動のために高度を下げたおかげで、想定より数テンポの猶予は有ると判断。
一見してぼんやりした仕草から放たれるのは、迎撃のヘッドビームバルカンと右肩の18連マイクロミサイル。
バルカンでチェーン・マインを振り切る前に誘爆ないしは接合を分離させつつ、昇り龍の雲を引いて無防備な腹に誘導弾が噛み付く。

「さあまだ倒れてちゃダメだよー。アイドルの仕事、意外とハードなんだから」

成否は別として反撃を加えつつ爆導索の鞭をかわすが、それは間一髪。クロスレンジの戦いは続き、次の衝撃はすぐに来るだろう。
余裕などないのを分かっていて、なずなは自分を励ますように大口を叩いた。
92菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)02:58:56 ID:rwB

>>90
(おかしい、おかしい、おかしい、おかしい!!)

 かっち、こっちとガチガチに固まりながら、蓮見菱華はステージへと向かっていた。
 そうだ、この大歓声の中。前大会優勝者の前に。自分の戦姫を携えて。そう、その通り、今から蓮見菱華は、優勝候補と、バトルをしにいくのだ。

「ばっとる、ばとるっ、ばっとっるー!!」

 自分の肩の上で爛々と目を輝かせる修理済みの相棒、アイゼルネスは、そんな緊張など意に介さずに戦いを今か今かと待ち構える。
 この中に混じる内の、期待の歓声は……果たしてどこかの誰かが、『女帝』と共に居たことをパパラッチでもしたのだろうか。
 兎も角として、少女菱華は余りにも初戦にしては重荷が勝つ場に立たされていた。ステージを昇る足取りは、まるで絞首台でも昇るかのよう。

「……ほ、本当に居る……」

 ぼそっ、と呟いたのを聞かれていたのならそれは相当失礼に当たったことだろう。
 何かの手違いであって、実際は違う対戦相手であったのならばよかったのだが――――間違いない、相手は、王者たる武藤ツカサだ。
 彼の、そう、いうなれば熱血とでも言うかのような……そんな挨拶に、ビクリと身体を震わせて。

「よっろしくー! 菱華、肩の力抜いてー、それじゃあ勝てるものも勝てないって!!」

「だ、だってえ……」

 言いながら、手のひらに飛び乗ったアイゼルネスを、スタンドへと導いていく。
 自力で飛び乗った彼女は今か今かと浮かれ気味でバトル開始を待ち。


「……よ、よよよ、よろしくお願いします……!!」


 蓮見菱華は、ぎこちない動きで頭を下げた。
93マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/07(木)02:59:56 ID:YgI
>>89
「そうかい。キミがそう思うのならそうなんだろう。だがボクにとっては最高だった。いやホンットマジで」

楽しかった。それだけで十分だった。彼がどう思っていようが、単なる傍観者にはその真意は伝わらない。

「その受け皿にでもなれれば、ボクはそれで幸せだよ。
 だからこそボクは集めたいんだ。そしてこの機体がどこまで通用するかを見てみたい。
 ついでに企業が再起してもらえれば万々歳だ」

マキトには夢がある。その夢のためにわざわざここまでやってきたのだ。楽しくないはずがない。

「いいモノ見させてもらったよ。これからの予選にもパーツ探しにもやる気が出るってもんだ。
 じゃ、今度は試合会場になるかな? また会おう」

「……どしたの? まだなにかある?」

エキシビションマッチ出場者にも会えた。探し求めていたパーツの一つにも邂逅できた。これ以上のことはない。
次への期待に胸を膨らませながら、再びパーツ探しの放浪へ赴く……はずだった。
だが青年は動かない。何かを話そうにもいい言葉が出てこないまま、数十分にも感じられる長い時間が経過した。

「こッ、コレは…ッ! まさかのフルセットだとぉッ!!?
 今手にしようと思えばウン十万かかると言われているいわく付きの代物がココにぃ!!」

青年が手にしていたのは思いもしない宝物であった。
突然の出会いに足が震え、顔から冷汗が止まらない。それほどまでの一品なのだ。彼にとっては。
茫然としている中、半ば強引に押し付けられるように手に取り、青年は去って行った。

「…………か、家宝にすっぺー」

とある店の前で膝から崩れ落ちる謎の男が、何人もの来場者に目撃されたという。
94赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)03:01:26 ID:Rx8
>>91
バズーカは当たらず、チェーンマインへの反応も予想以上に早い。
アイドルを名乗るには余りに不要な技量に驚きながらも操作はとまらない。
『ジャンク』は上昇し、『コナユキ』は下降する。いまや高度は逆転し、下からミサイルとバルカンが襲う。
誘爆を起こし、このままの使用は不可能と判断したチェーンマインをミサイルの群れへ投げつける。
やっていることは投擲でしかないが、空中に居る機体からミサイルへ向けてというのは最早人間業でない。
シンヤの技量もさることながら、そこには『ジャンク』に搭載された戦闘AIの補助が噛んでいる。
無言で、一切表情を変えない彼女では有るが、全てをシンヤに任せているわけではない。彼女もまた闘っている。

「そりゃァハードだろうよ。わかってら。」

誘爆がまたミサイルの誘爆を起こし、黒煙が二機の視界を遮る。

「こんだけ仕込まれちまったんだもんなァ!!」

煙の向こうでスラスターが炎を吐き出す音と、『ジャンク』が目の前に迫るのはほぼ同時であった。
全身のブースター、背負うホルダー、そして握った大剣に並ぶスラスター。この全てを一斉に起動したことによる急加速。
レーザーを回避したとき以上の加速度を持って迫るそれは未だ殆ど傷がなく。ミサイルと同時に放たれたバルカンによる弾幕の、その間隙をこの速度で縫って来たらしい。
正面から衝突すれば、犇き蠢く連刃が乙女の顔面に叩きつけられるだろう。抵抗無くばそのまま粉々までありうる。
さあ、どう答えてくるか。
95日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/07(木)03:20:48 ID:qo6
>>52
 
「はあ……さいですか」
 
大会に挑みはするものの、ホビーにそこまで入れ込んでいる訳ではない為、青年へ返すのは生返事ばかり。
いかにも熱が入った様子の青年を、武士は「よく分からない」と言わんばかりの表情を向ける……。
 
「じゃあ、私はこれで……えっ?」
 
台車を押してその場を離れようとしたその時、青年に台車を掴まれる。
青年への視線が「なんだこいつ」と言わんばかりのものになる。
 
「ちょっ……離して下さい、別に見せるようなものないですって!やめっ……!」

箱へと伸びる青年の手を、台車と青年の間に割って入り必死に払おうとする。「宣伝の為に常に持ち歩け」といわれたから持ち歩いてはいるものの、見せびらかしたい代物ではない。
しかし、若さによる肉体の差か、それとも好奇心の強さのせいか、徐々に武士は押されていき……。
 
「ちょっと、もう、いい加減にっ……うわぁっ!?」
 
台車に足が引っ掛かり、盛大に台車ごと派手な音をたてて転んでしまう武士。
 
「いたたたた……あーっ!」
 
尻餅をつき呻く横には、箱の中身が梱包材と共にぶちまけられている。
それは何かのアニメのシリーズの主人公機体……っぽさがあるフォルムのどこかパチモノ臭い胴体と脚部のみのホビー、そしてそれに明らかに不釣り合いなビッグサイズの、やたら目立つメッキカラーの二本の腕。手に取れば、それが台車を使っていた理由であるのがわかるだろう。
そしてあちこちに、段ボールに描かれたロゴや「日向製作所」の文字が刻まれている━━━━━━スーパーヒナタ3号、ここに(不本意ながら)初御披露目。
96武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/07(木)03:30:25 ID:28r()
>>92

「……確かに、緊張するなという方が難しいかな」


少しばかり挨拶に熱が篭りすぎてしまったかと反省しつつ、対戦相手に視線を送る。
これから戦う相手となるのは一人の少女と、そして一人の『戦姫』。緊張の余りぎこちない彼女に対して、戦いに機体する『戦姫』の姿は実に対照的。
こういった、大舞台になれていないのは明白でーーーけれども、だからこそ『戦姫』が彼女に向けて言った言葉を彼は肯定する。


「だが『彼女』のいう通りだ。場の空気に飲まれてしまえば、勝てる試合も勝てず、楽しめるものに楽しめない」

「折角の戦いなんだーーーー頭を空っぽにして、没入してしまうのも悪くない」


折角のバトルなのだから、例えそれが難しいことだと解っていても、難しいことは考えずに没入してしまえばいいんだと。
大会のことなど、観客のことなど気にせずーーーー目の前の戦いを、ホビーバトルという競技を全力で楽しむ、それがこの競技の本質だろうから。
だからこそ手加減はしない。全力でこの戦いに挑み、そして勝ってみせると”蒼き閃光”の異名を有する男は不敵な笑みを浮かべたなら。

バトルシステムが起動する。セットされた『闘機』に命が吹き込まれ、グリーンのバイザーに光が灯る。
ユナイト・アサルト。それは来月発売される予定の新作キットであり、広報の為にとスポンサーから先んじて渡された機体。
然し、その作り込みに手を抜いた訳でもなく、その風貌も性能も前回チャンピオンの機体としては十分に相応しいものであり。


「では……武藤ツカサ、ユナイト・アサルトーーーー出撃する!!!!」


蒼き機体が飛翔する。そして同時にフィールドが形成されていく。
火蓋は切って落とされた。興奮に沸く観客の注目が、次は二人へと注がれる。
97初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/07(木)03:33:00 ID:tWr
>>94

実のところ、なずながパッと見「変な形の鞭」である武器が爆発物と看破出来たのは、友人との時間のおかげだった。
『ぷりずまてぃっく』メンバーにして、模型記事に連載を持つ筋金入りのモデラーである冬芽つばき。
彼女が「なずなサン絶対気に入るっすよ!」と強引にイッキ見させてきたアニメに、チェーンマインが出てきていたのだ。
確かにあれは良い作品だった――つばきの語るロボットの造形美より、物語の悲劇的な余韻が大きかったが。

「今更だけど、これ配信されてるんだよね? ……あーもぅ、つばきちゃんまた泣いて抱きついてくるなぁ」

同僚、友人、そしてファン。沢山の人が自分のことを支えてくれているとなずなは知っている。
ここがわたしのステージだと皆が認めてくれている。だから、引き下がれない。

刹那、黒煙の彼方から異形の騎兵が迫る。手にするは唸りを上げる怪物的回転刃。
位置エネルギーを載せて振り下ろされるそれを、主武装である太刀で受けきるのは土台無理な話だ。
バスターレーザーライフルは一手遅い。チャフは目くらましにしかならない。暗器ではクロスカウンターしても勝てない。弾幕の力不足は証明済み。
そして避け切るにしても、ボードによる動きは直線的に過ぎる。

『お姉さま』
「うん。……あとで、つばきちゃんに謝っておくね」


オーロラビジョンいっぱいに、火花が爆ぜる。最後っ屁として撒き散らされたチャフが視界を曇らせるが、ダメージにはならない。
ジャンクの手には――分厚い塊を引き裂く確かな手応えが走った。


……、……、……。――――――――――〝 分厚い 〟 ?


『――斬馬刀はこう使うっ!! ヤェーッ!!』


その瞬間。
ドスの利いた掛け声と共に、勢いの乗った鋭い白刃が、ジャンクの四脚を側面から薙ごうとするだろう。
いまジャンクの前に残されているのは、焦げ付き両断されたホバーボード。コナユキはこれの喪失を代価として、離脱からの反撃を図った。
98菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)03:55:18 ID:rwB
>>96
 確かに、アイゼルネスと、そして彼の言う通りだ――――肩肘張っていては勝てるものも勝てない。楽しめるものも楽しめない。
 勝てる戦いを、のがしてしまったら余りにも悔しい。勝てる可能性を全部試しきれなかったら、そんなのあまりにも悔しすぎる。

「この前のフヨウとの戦いを思い出して。あの時みたいに、そしてあの時以上に!」

「……はい、分かりました。……頑張ります。行こう、アイちゃん!!」

 ぎゅっ、と両手を握り締めて。それから、今度こそ。この戦いは、勝つつもりの戦いなのだから。
 場の空気に飲まれないように。頭を空っぽにして、戦場に没入する。全力で、自分の戦いを。そして、相棒が存分に戦えるように。
 その表情は幾許かかわったことだろう。緊張に固められた少女の姿から……少しくらいは、呪縛から離れられたように。

「よぉっし、行こう「!! アイゼルネス・カスタム――――出るよ!!」

 全身のスラスターを噴射して、形成されたバトルフィールドの中へアイゼルネスが踊り出る。
 相手の機体名――大体の予想はついていたが、彼の一言で確信した。あれは……そう、アイゼルネスにとっては『敵』と言って差し支えない機体だ。

「ユナイト・アサルト。ワンオフ機にすら匹敵するエース用高性能機。来月発売の新製品だ……それを今……」

「ふふん、私の対戦相手がアレなら――尚更負けたくないよね?」

「……うん!!」

 頭部の補助バイザーがアイゼルネスの頭部を覆い隠す。蒼色に光るモノアイが残影を残しながら、アイゼルネスはフィールドへと脚を下ろす。
 機体の特性に関しては……蓮見菱華は『ファン』だ。それに関しては熟知している。その点において、情報アドバンテージは少なくとも同等程度にはなっているだろう。
 そう考えながら推測しつつ。どう攻めるべきか――――思考を巡らせる。

(相手が強襲型ならば長射程武器は持っていないはず。ビーム・ライフルは持っているだろうけれど、射程ならこちらが上。
 ここは……やっぱり、何時も通りの射撃戦に持ち込もう)

「アイちゃん。状況を開始しよう」

「はいよ! 任せてぇ……ふっふーん」

 ビーム・ライフルをその場で構える。未だ彼我の距離は大きいが――――この距離ならば、アイゼルネスにとっては射程範囲内。
 先ずは挨拶、とばかりに引き金を引いた。無論狙いを甘くした訳ではない。ロックオンサイトが導く通りに、ちょうど機体中心を狙った精密射撃を。
99赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)04:02:36 ID:Rx8
>>97
連刃がプラスチックを刻む音。手応えを感覚として認識できないプレイヤーにとって、その音こそが手応えとなる。
―――――足りない。今切り刻んでいるのは確かだ。が、快楽が足りない。気持ちよくない。

「あァ……」

その理由を理解する。そうだ、"悲鳴"が足りない。愛機を壊された悔しさが足りない。
涙交じりの悲鳴が聞きたいのだ。壊されて"悔しい"と言う感情こそがシンヤの見たいものである。

「作って貰った機体じゃ悔しくねェってかァ!?」

―――否。そんな声を上げる必要が無いのだ。『戦姫』は未だ剣を握るが故に。
そう気づいたのはホバーボードを切り捨ててやっと。苦し紛れのチャフが索敵を妨害したか。
『鋼獣』の装甲は、あれだけの速度を出すためにかなりの軽量化を施されている。一見分厚く見える部位でもそこには空洞があり
つまりは『戦姫』の剣は『ジャンク』の足を薙ぐのは用意であり―――――

二度目の破壊音は、獣の四肢が捥がれる音。後ろ足にめり込む刃は、次は前脚に向かう。


「――――――やってくれたなァ」

赤鉄シンヤはその一撃をタダで受ける男ではなく。
剣を振るう『戦姫』に向ける手が握るは"散弾銃"。見失ったとき既に、ウェポンホルダーから取り出されていた。
心臓に突きつける散弾銃は、主砲でなくとも至近距離ならばゲージを奪いきるに足る武装である。
ここでその機能を刈り取るか。少なくとも、薙ぎきる前に振り払う事は可能のはずだ。
100武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/07(木)04:26:58 ID:28r()
>>98


“フヨウ“———その名前をツカサが忘れる筈もない。数日前のエキシビジョンマッチにて敗北を喫した相手の『戦姫』の名だ。
こんなところで縁が繋がるとは思ってもみなかったが、だからこそこの大会は面白い。幾つもの縁が絡み合い、大きな流れを生み出していく。

そして対戦相手である『戦姫』の名はアイゼルネス・カスタム……その原型となったのは言うまでもなくアイゼルネス・クロイツであり、作中の技術体系上における“ライバル”。
この巡り合わせは偶然だろうが、ファンであるならこのシチュエーションに燃え上がらない筈がない。だからこそ彼はこの一戦に全力を注いでみせる。
本来の設定であれば時代が異なる以上こユナイトの方が性能では劣るが、これは作中の話ではなくホビーバトル。ならば原作設定の性能の違いが、戦力の決定的差ではないのだから。


「負けたくないのは、私とて同じだーーーこの対戦、心が滾る!!!」


戦闘の舞台として選ばれたのは『宙域』。それも戦艦や闘機の残骸がデブリとなって幾つも漂う、遮蔽物の多い宇宙空間ステージ。
その中をユナイトは加速し、距離を詰めにかかるーーーーその瞬間、姿勢制御バーニアを吹かし、機体を僅かに展開。相手の先制射撃を躱したならば、ほぼ同時にビームライフルによる反撃を正確に向けて放つ。
その際もユナイトは加速を止めることはない。デブリ帯を掻い潜り、時に蹴ることで加速に利用し、彼我の距離を速攻で詰めに向かう。


「まずは小手調———さあ、どう反応する」


ミサイルの有効射程範囲内に到達と同時にロックオン、背面ミサイルポッドから多弾頭ミサイルが二発、アイゼルネスに向けて発射される。
デブリの隙間を縫うように進む二つの弾道、それはすぐに相手の元に到達し炸裂するだろうがーーー回避するも迎撃するも、手段は豊富にあるだろう。

しかし、ミサイルは着弾直前のタイミングにてーーーー炸裂する。後方からのビームライフルの狙撃によって、着弾するよりも先に起爆させられた。
回避か防御が間に合わなければ、その爆風に機体と叩かれることになるだろう。無論、直撃ではない以上それは大したダメージにはならないだろうが。
本命は、爆風を煙幕代わりに間合いを詰めての近接格闘。次の瞬間にはユナイトは距離をゼロにまで詰めると同時、その左手にビームサーベルを逆手に構え、すれ違いざまに斬撃を一閃放つ。
101菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)04:56:52 ID:rwB
>>100

「流石に正確――――前年優勝者は伊達じゃない」

「それに早い……デブリを利用した加速。正しくエースのやることだね、菱華」

 反撃のビーム・ライフルの一撃を。こちらもまた制御バーニアの僅かな噴射に寄って位置をズラすことによって回避する。
 流石の動きだ……作中のエースも同じことをやって機体を性能以上の速度に見せかけていた。それを自らの技術に昇華するなど、流石であるという他無い。
 そして鳴り響くロックオン警告。その正体はすぐに分かる――――単純なミサイル攻撃。それがアイゼルネスを狙っているのだ。
 それだけならば対処は簡単だ。ビーム・ライフルで撃ち落としてもいいし、インコムを利用してもいい。機動力でデブリに叩きつけてしまっても構わない。
 無言のコンタクト、アイゼルネスが自身のビーム・ライフルによって撃ち落とそうとし……想定よりも早く、ミサイルは爆発を起こした。

「疑似近接信管!?」

 菱華は驚愕する。あれは接触によって起爆するタイプであると思っていたが、まさか射撃によって近接信管を再現するとは全く想像の外にあった。
 起こる爆風、熱と破片は盾によって防御できる。だが視界は遮られる。
 恐らくはこの間に接近を行っているはずだ。なにせ相手は強襲型、射程距離は長くないはずなのだから。
 であれば……ここまで来たのであれば、一度は射程圏内へと導かれるのも仕方ない。ならば、それを利用する。

「アイちゃん! 回避を!!」

「応とも、後は任せたぁ!!」

 すれ違い様――――ビーム・サーベルの光に即座に反応し、左腕の盾を構える。それを以て、斬撃を防ぐだろう。
 そして、その瞬間。ユナイトの前方には、二基の有線支援子機が待ち構えている――――そして両機とも一発ずつ、ビームを放った後、即座にその場から離脱する。
 真っ二つにされたそれを放棄すると、更にアイゼルネスは機体を反転、ロックオンサイトにユナイト・アサルトを追いかけさせる。


「ただでやられてたまるかってのぉ!!」


 ミサイルポッドを展開する。ミサイル・ロックオンはユナイトを追いかけさせつつも、確定はさせないまま発射する。 
 ミサイルの数は片側三発、合計で六発。それらは、彼の機体のちょうど左右に落ちようとしていた。
 そして、その間に在る彼をビーム・ライフルが撃ち貫かんと放たれる。重装甲、高機動、そして高火力――――それこそがアイゼルネスの本領である。
102武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/07(木)05:28:34 ID:28r()
>>101

「見事な反応速度だーーーどうやら機体性能だけというわけでもなさそうだ!!」


斬撃は見事に防がれる。そして次の瞬間に目の前に表示されるのは有線式オールレンジ攻撃兵器。
その砲身が光を放つと同時にビームサーベルを横に一閃する。そうして正確な射撃を“斬り払って”防いだなら機体を回転させつつ更に加速し、相手に軸線を合わせる。


「追い込むかーーだがこちらとて、ただでやられる訳にもいくまい」


ミサイルは本命ではなく退路を封じる為のもの、よって回避が不可能ならば防御しつつ間合いを詰める。
次の瞬間、シールドによってビームライフルの直撃を凌ぐ。その一撃でシールドの対ビームコーテイングは剥がされ半分近くが焼き焦がされたが、既にその役目は果たされている。

即座にマニュアル・ロックオン。仕込みを終えたなら立て続けにミサイルを合計4発、全方向に向けて拡散するように放ち、同時に再びバーニアを吹かして加速。
ユナイト・アサルトは強襲戦闘を想定して開発された機体、その火力機動力共に爆発力は量産機とは一線を画す。そして距離が縮まると同時にハイパーバズーカによる砲撃を二発、放つ。
その威力は申し分ない、もし直撃したなら一気に耐久値が削られるだろうが、回避は決して不可能ではないーーーだが、この場合もし回避したならば。

その回避した座標に向けて、予め誘導していたミサイルが四方より降り注ぐ。
相手が砲撃を回避することを予測した上で、その退路にミサイルの直撃を叩き込むという読み、果たして二人はこの罠にかかるか、それともーーーーーー



「デブリ帯、地形情報取得完了———一気に畳み掛ける」


そしてミサイルが爆発すると同時に、ユナイトは再び加速を開始し、相手との距離を一気に詰めていく。
デブリ帯を踏み台とし、バーニアだけでは起動を織り交ぜつつ、それでいて最短距離で。
宙域に浮かぶ障害物を、迎撃射撃を阻む盾としてーーーーーそして接近に成功したなら、再びビームサーベルの閃光が放たれる。
103菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)05:58:33 ID:rwB
>>102
「それを、避けちゃうかぁ!!」

「……くぅ!」

 それなりに……アイゼルネス、菱華ともに自信があった、今のは『嵌った』と思った一撃を防がれた。
 流石に両者ともに驚きを隠せず――――然して、アイゼルネスのそれは、より好戦的な方向に注がれ。菱華は、落胆しつつも次の策へと必死に頭を巡らせる。
 敵機は反転しこちらへと迫る。向こうは機動力に優れながら、その技量によってスペック以上の高機動戦闘を得意としている。
 実力で言えば完全にこちらが下だ。それを理解した上で――――戦術は、練らなければならない。
 そして放たれるバズーカの砲撃。着弾したならばそれでゲーム・エンドの可能性すら考えられる。ならば回避しなければならないが、そう簡単には行かない。
 たった今発射されたミサイル……こちらへのロックオンアラートはなかった。であるが故に、今しがた自分達がやったように、回避地点を予測して撃ったものだろう。

「……しゃーない、多少の出血は免れないかな――――」

「ううん、行こう!! 私に任せて、アイちゃん」

「……! よし来たァ!!」

 多少のダメージを覚悟の上で、回避行動を取ろうとしたアイゼルネスを菱華が静止する。
 そう、普通に戦っていたら単純な技量不足で敗北してしまう。こちらがやらなければならないのは、イチかバチかのコイントス。
 一手一手に勝利と敗北の裏表を―――そして、その勝利をもぎ取らなければならない!


「シュトラハヴィッツ・ビーム・ライフル接続、ハイパー・ランチャー起動……ジェネレーター出力上昇、急速充填!!」


 胸部に手に持っていたビーム・ライフルのストック部分を接続。ジェネレーターと直結させれば、翼のように銃把が展開。それを両手で握り支える。
 迫るミサイル。バックパックのインコムが再度放たれ、それの迎撃に移る。然しそれでも。直撃とは行かずとも、爆風がアイゼルネスを焼き、揺らす。
 ほんの一瞬がまるで永遠のよう――――そして砲弾は正しく。アイゼルネスの目前にまで、到達し。


「――――落ちろォォォォ!!!!!」

 
 そして、黄金の光条が宇宙空間を切り裂いた。
 インコムはミサイルによって破壊され、砲弾は正しく目の前で爆発し右足部装甲やバイザーを粉砕し、アイゼルネスの耐久値を吹き飛ばしていった。
 然しそれでも、被害はマシなくらいには抑えられただろう。砲弾が直撃するよりも、ミサイルが直撃するよりも、遥かに――――そして、黄金の光条。
 ランチャーから放たれる超巨大なビームの奔流は、デブリ達を粉砕しながら接近戦と試みるユナイトをそのまま焼き尽くさんとすらしていた。
104武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/07(木)06:32:17 ID:28r()
>>103


「肉を切らせて骨を断つもりか……ああ、どこまでも滾らせてくれる……っ!!」


高熱源感知、大出力光学兵器予想。そんなものアラームを聞かずとも、目に見るだけで理解できる。
その過火力の前にデブリの盾など意味をなさない。直撃したならどのような防御手段を有していたとしても只では済まない火力を、増設装甲程度で受け止められる訳がない。

ミサイルポッドに残された弾頭を全弾射出。真正面に向けて放たれた弾頭は全て、圧倒的な熱量を誇る光芒に飲まれ消失する。同時にデッドウェイトと化したミサイルポットをパージ。
防ぐ手段がないのであれば、やるべきことは一つ。少しでも機体を軽くし、あの熱量の直撃を避けながら接近を続けることがユナイトに残された勝機に他ならない。
ならばと更にバズーカを投棄、そしてユナイト・アサルトは最大出力を以って加速を行う。掠めただけでも致命的な破損を齎す閃光を辿り、その先にいる戦姫の元へと向けて最短距離で。


「まだだッ!!まだ───私も、この機体も、終わりではないッッ!!」


膨大な熱量が機体装甲を焦がす。僅かにでも光に触れたならその時点で敗北が決するが───言うなればこの光は道標だ。
この光に添って進めば、最短距離で相手に辿り着く。だからこそ彼は、ユナイト・アサルトは直撃寸前の軌道にて更に機体を前に進める。
耐久値が確実に削られていく。高熱によって青き装甲の一部が炙られ、融解する箇所まで存在した。それでも───彼は、彼らは、止まりはしない!!



「…………───ここからは───私の距離と行かせてもらう!!」


そして蒼き閃光は再び辿り着く。機体は閃光との交錯によってダメージを受けてはいたが、その機能は未だ停止せずにいた。
そして、宣言通りの近接攻撃。ビームサーベルを両手に、二刀流に構える、奇しくもそれは原作漫画『鋼鉄の意志』にてユナイト・イグニスが最終決戦で用いたのと同じスタイル。
再び、間合いはゼロに至り、そして斬撃が十字に放たれる。その一撃は果たして戦姫のボディに届くか、それとも──────
105初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/07(木)10:40:16 ID:tWr
>>99

「ご冗談。二人分だよ?」

半笑いで誤魔化しながらも、うっすら怒気を帯びた声。
シンヤは事ここに及んで初めて、なずなが些かムキになって反論したのを感じ取るだろう。
彼女にとっては、自分より他人に及ぶバッシングのほうが堪えるらしい。

『母さまの作りし身体で、お姉さまと共に生きています。それの何が間違いだと――』
「ほら集中集中っ。タッチオペレーションいくよ!」
『……承知、です』

それでも、売り言葉に買い言葉で戦おうとする相棒を止める程度にアイドルは冷静だった。
前脚に当てようとしていた刃を素早く納刀し、ジャンクの躯体そのものを遮蔽物とするかのように、クイックブーストを絡めたサイドステップ。

『く、私としたことが』
「どんまいだよ。普通ならあのまま勝てるもん。やっぱり……凄い相手だね」

相手の背後から反対側に回り込みつつ、散弾による損傷を最小限に抑える。
――とは言っても、左肩の装甲がひしゃげて可動範囲を著しく損なわれ、誘爆を避けるため左脚のミサイルを投棄せざるを得なかったが。

「残った子たちもここが撃ちどき、かな!」

足回りを損壊した状態でも、敵にはまだ爆発的な推進力が残っている。
左肩と右脚に残った残り2基の18連マイクロミサイルポッドをすかさず解放し、全弾発射。
ブースターで加速し逃れようとすれば、『熱源』が却って集中的な追尾を受ける原因になる格好だ。
106初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/07(木)14:19:57 ID:tWr
/朝寝ぼけながら書いたので被弾箇所とミサイルの脱落箇所がずれてる…ごめんなさい
/左肩に散弾が当たると判断して当該箇所のミサイルを放棄、攻撃に使ったのは両脚のポッド、ということにしておいてください
107菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)14:56:33 ID:rwB
>>104

「そらそらそらそら!! デブリの小細工なんてもうさせるかっての!! 焼き尽くせぇ!!」

 超大出力のハイパー・ランチャーは、作中にて艦艇クラスの敵を纏めて薙ぎ払って尚有り余るレベルの攻撃能力を誇る。
 そしてその威力はこの場においても同様。木っ端な盾も、些細な抵抗も全てを呑み込む熱量の前では意味を成さない。
 作品を跨いで尚高性能機体として扱われるアイゼルネスにとっての最高攻撃力――――だが。
 
「――――迫るか! これに! これでもぉ!!」

 それでも尚、敵機にダメージを与えながらも。間違いなく敵装甲を誘拐させ、あと僅かに敵を呑み込んでしまえばよいという状況で尚、敵は接近を続けている。
 絶妙にその直撃を避けている。間違いなく相手の耐久値を削りながらも……そう。確かにこの光に沿えば、必ずアイゼルネスには辿り着くことが出来る。
 だが、それを本当にやる人間がいるなどと――――菱華は驚愕していた。そして同時に巡らせる。この相手の接近は、間違いなく止められない!

「ハイパー・ランチャーをパージ!! ミサイルも!」

「――――任せてよぉ!!」

 光芒が消滅し、アイゼルネスの胸部に接続されていたビーム・ライフル、そしてバックパックに接続されていた対艦ミサイルがパージされる。
 最早この距離まで接近されたのであればその二つは最早死んだも同然。ならば頼れるのは――――大腿部にマウントされたビーム・サーベルを。
 右手に握り締める。迫る敵機、二本の輝きの剣。そして、交錯は一瞬で終わり――――

「くそ!!」

 ――――アイゼルンスの胸部装甲が十字に赤熱し、耐久値が一気に削られる。
 ……だが。戦いの熱は今も此処に有る。此処に煌々と、眩いばかりに輝いている。アイゼルネスのものも、菱華のものも。まだ、諦めてなどいない。


「……だけど、よくやった、菱華!! 今回は間に合った!!」

「うん――――行こう!!」


 彼ならば気付いただろうか。アイゼルネスが、斬り刻まれる瞬間、バックブースターを噴かして後方へと僅かに移動したことを。
 それによってビーム・サーベルに機体を裂かれるのを避けたことを。そして何より……その動きが今までの何よりも機敏であったことを。
 彼の手によって粉砕されたことにより、バイザーによって覆われていたアイゼルネスの目が見えるようになった。そして、それは――――
 先程までの、爛々と輝ける蒼色とは違う。それは――――残光を残す、紅色の危険信号。


「奥の手は最後まで取っておくから奥の手なのさ。さぁて……その“距離”、ここからは私の物だ!!」


 ビーム・サーベルを展開。黄金色に輝ける刃が出現し、そしてそれと同時に機体が急加速する。
 元より大出力であるこのアイゼルネス・クロイツ。全ての武装を捨てて、出力を機動性能に全て変換し、その上で近接戦闘へと切り替えることによって。
 その近接攻撃能力は飛躍的に上昇する。凡そ、機動戦闘機体と比べて尚、遜色がない速度を以て接近。
 そして、黄金の刃がユナイトの装甲を――――狙いはコックピットにあたる部位。刺し貫かんと、振るわれる。
108マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/07(木)19:05:54 ID:YgI
>>95
「こんな面白そうなモノがあったら今すぐにでも見たくなるってもんでしょう!
 ちょっとだけ! ちょっとだけでいいから! 頼んますよッ!」

随分と迷惑な男である。ツマミ出されても文句の言えない芸当を仕出かしているのだから仕方ない。
熱意か、はたまた別の何かが勝ったのか、相手の男を台車上の箱ごと押し倒す形になり、二人+αは派手に転倒。
そしてマキトの目前に、待ち望んでいた箱の中身がお披露目されることになる。

「おお……どこかで見たことのあるような無いような、何とも言えないこの機体……。これがお兄さんの?」

「うーむ、これはもしかしてお手製で? だとしたらいい出来栄えだなあ。こんなコンセプトの機体は初めて見る。
 ボクも興味はあるんだけども、技術とお金の都合でなかなか手が出せてなくって……」

箱から飛び出した独特の機体を手に取り、上下左右様々な角度から確認。
既視感漂う胴体部、アンバランスで特徴的な巨大腕部、そしてどの角度から見ても必ず一か所は視界に収まる製作所の文字とロゴ。
衝撃的な出会いだった。こんな代物が存在するのかと。人々の発想はとことん無限大であると。

マキトの身体が感動と興奮で揺れ動く。新しい世界への扉が開かれた音がする。

「……いつかここの工房にお邪魔させてもらっても?」

思わずこんな言葉が出ていた。
109武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/07(木)20:19:37 ID:28r()
>>107

「───浅い。いや、これは……!!」


懐に飛び込み、確実な止めと成り得る斬撃だった。しかし刃は辛うじて及ばず、その際の回避反応はこれまでとは一線を画すもの。
ここにきて、未だそれだけの余力を温存していたのというのか───いや、違う。あの真紅の輝きは、あの機体が何であるのかを考えれば答えは一つしかありえない。

かのアイゼルネス・クロイツが改造元であるならば、その機能が搭載されているのは当然と言えるだろう。
それは機体やパイロットへの負荷を一切考慮することなく、その性能を最高の域にまで引き出すことを可能とする、あの機体の切り札と呼ぶに相応しい能力。
そしてあの戦姫もまた、同じ機能を有していた。紅い光を灯す瞳を見た瞬間、それが何であるかを理解するには十分であった。
彼女の宣言通り、正しく“奥の手”。ユナイト・カスタムにあった近接戦の優位はこの瞬間に崩れさったが、それでも──────


「それでも、心踊らずにはいられない!!!」


相手はその全てを出して、此方にぶつけようとしている。その熱が、彼に伝わらない筈がない。
未だ戦いの火は燃え盛っているのだから、最後の最後で、お互いに死力を尽くすことこそが至上!!

迫る黄金の刃に対して、此方のビームサーベルで斬り払うように迎え撃つ。コクピットを狙った刺突は軌道を逸らされ、ユナイトの右横腹に浅くないダメージを与える。
上空へと離脱、AMBACによる姿勢制御によって転身したなら再び敵の戦姫に向けて、全てのスラスターを使い加速を再開。再び斬り結ばんと、交錯するビームサーベルを構える。
蒼き輝きを放つ二つの刃、一つは逆手に構えながら、機体を軸回転させつつ最大加速、そして再び肉薄したなら二つの刃に依る連撃を放ち───もしそれが塞がれたのなら、そのまま鍔迫り合いへと移行する。

単純な出力であれば互角か、それともユナイトがやや劣るか。それでもユナイトは未だに拮抗してみせるだろう。
それは機体の完成度に依るものか、それとも卓越した技能に依るものか、それとも、彼等の闘志が成し遂げるものか。未だ誰一人、この戦場において諦めた者など存在しない。


「さあ───見せてみろ!!君達の力を!!!その情熱を!!!」


そして───更に加速。
鍔迫り合いから更に押し斬らんと、ユナイト・アサルトは限界を超えて蒼き双刃を繰り出す。
110クレア◆8GhLpYNLUs :2017/09/07(木)20:31:15 ID:d1p
「蒼き閃光…」
ホビー用のバトルスペースが設けられたカフェにて、私はテーブル席にて、相棒であるホビーと共にタブレットを眺めている。
見ているのは動画…エキシビションマッチの映像だ…
前回優勝者である武藤ツカサの事は知っている。
私はアイツに負けたからね。
そして気になるのが…

「ツカサの対戦相手…」
ツカサは三人相手に敗れた…
3対1とは言え、ツカサに勝ち抜いた三人…
“壊し屋”と“鏡中の女帝”は私も知ってる。
名の知れたホビー使いだ。

「オーガはどう思う?もう一人の…」
私はタブレットの画面を拡大させ、相棒であるホビーに声をかける。

『戦姫使い…ビギナーじゃ無いのか?センスを感じる。』
私も相棒であるフレイムオーガと同意見だ。
武藤ツカサの実力は確かだ。
3対1とは言え、ツカサに勝ったのは事実。
実力があると言う事だろう。
私も会ってみたいなと思い、ビギナーさんの映像を眺める。
111佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/07(木)20:59:22 ID:ZXG
>>110

「このままじゃ、だめだよね…」

カフェから丁度見える位置にあるホビーショップ。そこにはもちろん様々なプラモも売られていてカスタマイズ用の部品も多数ある。
そして丁度クレアから見える位置にてミナホは肩にシラヌイを乗せながら悩んでいた。

「やっぱり、武装の強化は大事だし…でもどんな風にしたらいいのか…」

『ならばあれはどうだ?大きくて強そうだぞ!』

そう言ってシラヌイが指を指すのは某ロボットシリーズに登場するデンド○ビウムというものだった。確かに大きくて強そうだがあれを装備させるというのは……
としかし値段を見ればその顔はすぐさま青ざめていく。

「こ、これは流石にね…?私の財布事情的にもね…?」

『そうか?中々良いと思ったのだがな…ならばこれならどうだ?』

そうして次に指差したのはネオジ○ング。

『あれの真ん中の赤い機体のところに私が乗れば…』

「だからなんでそんなのばっかりシラヌイは選ぶのっ!?」

思わず大声を出してしまい、青ざめた次は顔を真っ赤にして周りに謝るなど百面相ぶりを垣間見させる。
その声はクレアの居るカフェにまで届きそうなほどだったが……
112ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/07(木)21:18:34 ID:jzq
街の大通りに面したカフェテラス、少し見渡せばそこらじゅうに大会の幟が飾り付けられビルのオーロラビジョンには数分に一度大会の話題が流される。
明るい街を眺めながらテラスでエスプレッソを片手に、ジョセフ・ドーソンはテーブルの上に立つ自分の相棒に語り掛けた。

「ダメじゃないか、ジョーカー」
「いくらなんでも人の相棒に勝手に攻撃しちゃいけない、まだその時ではないよ」

ピエロの様な風貌をしたそのホビーはペイントされた表情を変える事なく、無言のまま、しかし大きく肩を竦める手振りでそれに答える。

「大丈夫、その内好きなだけさせてあげられるよ」
「……それにしても、彼の相棒…プロトユニコーンと言ったか」
「余りの速さに扱える者がおらず絶版となった幻のホビー…それをあんな子がどうして……」

ドロドロの焦げ茶色をした液体を口の中で転がすと、濃い苦味が口内を蹂躙する。
そうして冴え渡る頭で以前出会った少年とその相棒であるホビーの事を思い出しながら、ジョセフは呟いた。
これから大会が本格的に始まる、あの様な珍しい機体も多く見られるだろう。


……そう、選り取り見取りだ。
113クレア◆8GhLpYNLUs :2017/09/07(木)21:23:46 ID:fBT
>>111
「あのコは…!?」
声の聴こえた先…その方向を見てみると、見憶えのある女のコ…
あのコこそ、蒼き閃光に勝ったホビー使いだ。
パートナーのホビーも一緒だ。
私はコーヒー代を支払い、カフェを出てホビーショップへと駆け付ける。

「キミが、ミナホちゃんだね。見てたよ、蒼き閃光とのバトル。私はクレア・エイムズ。こっちが…」
私はミナホに声をかけ…

『フレイムオーガだ。元々は中世のモンスターがモデルだったんだが、クレアのセンスでこの様な姿をしている。』
私は相棒であるフレイムオーガと一緒に挨拶をする。
フレイムオーガは私がカスタマイズしてるからね。
唯一残ってる原型は肩に刻まれた“魔王軍シリーズ”のロゴだけだ。

「ホビーはパーツやカスタマイズだけじゃ無いよ。バトルするのはホビーだけじゃ無いんだ。」
パーツ選びをしている様だ。
だけど、あのコのホビーが選んでるのは高価な物ばかりだ。
パーツやカスタマイズも重要だけど、ホビーバトルはマスターのコンビネーションも重要だと私は考えている。

「ミナホちゃんは、どう考える?ホビーバトルを勝ち抜くポイント。」
ビギナーながら、蒼き閃光に勝ったコだ。
このコの意見を聞いて見たい。
114藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/07(木)21:42:35 ID:2PH
>>112

「悪いね。ここ貰うわ」

不意に、気怠げな声がした。あまり透き通ってはいなさそうな、そんな女の声だった。答えを聞くより先に、ジョセフの向かいに女が座った。
白衣の女だった。香水の匂いはしなかった。鬱陶しそうに首を振って、彼女は長い黒髪を払った。安いシャンプーの匂いがした。
銀縁の眼鏡をかけていた。その奥には、アジア系らしい茶色の瞳が宿っていた。不機嫌そうに薄い唇を曲げていたが、それはきっと彼女の生来の表情だった。

「盛り上がんのはいいんだけどさ。人多すぎて困っちゃうよね、ほんと」

見るからに砂糖とミルクを山と入れたアイスコーヒーを、彼女は啜った。そうして、疎ましげに街を眺めた。
老いも若きも、男も女も。その殆どが皆一様に、ホビーショップのロゴが入った紙袋を抱えている。
ひとつ吐かれた溜め息は、人混みの密度よりも希薄だった。煙草でも吸い始めそうな横顔をしていた。


「あなた、出るの? 大会」


人混みを眺めながら、独り言でも口にするように、彼女はそう呟いた。ジョセフを見てもいなかった。
だが彼女の瞳は、ジョセフが誰と共にいるかを既に映していた。その意味を知っていた。彼女もまた、トートバッグを抱えている。
115佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/07(木)21:43:08 ID:ZXG
>>113

「へっ、あっ、そ、そのっ…!?」

いきなり話し掛けられ、しどろもどろになりながらパニック状態に
人見知りで他人との会話に慣れていないのに、こうして突然見知らぬ人から話し掛けられればこうなることは必至だろう。
ただミナホの左肩に乗っているシラヌイは慣れているようでやれやれと首を振る。

『すまぬな、我がマスターは人見知りなのだ。いつもこの調子で参るのなんのだ』
『おいマスター、落ち着けー』

そう言うとペチペチと頬を叩いて正気を取り戻させようとする。
そうするとミナホはすぐに気付いたようで恥ずかしそうに俯くとクレアの方を見る。

「え、えとっ…私のこと、ご存知、なんですね…お恥ずかしい、です…」

『私はシラヌイ、見ての通り"戦姫"シリーズの者だ。それにしても中々いい格好ではないか、炎鬼殿?』

フレイムオーガのその姿を見て感嘆の声を上げる。炎鬼とはフレイムオーガのことを言っているらしい。
シラヌイは他の人のホビーを漢字二文字でいつも言い表している。それは今回も例外ではないらしい。

『それにしても敵に塩を送るとは中々に余裕ではないかクレアとやら。だがまぁ助かる、こちらのマスターはホビーバトルに関してはてんで素人なのだからな』

「も、もうシラヌイはっ……」
「えと…勝ち抜くポイント…?そ、そういうのは、あまり考えたこと、無くて…すいません……」
116ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/07(木)21:55:13 ID:jzq
>>114
「えぇ、どうぞお嬢さん」

男女の相席にしては随分と風情のない声掛けに、ジョセフは当然の事の様に答えた。ここはいい席だ、自分と相棒だけで使っていいものじゃない。
女性の身なりを見て、その不機嫌な表情を見て、ジョセフはニコニコとした笑顔を浮かべたまま両肘をテーブルに立てる。

「えぇ、まあ、一応大会の参加者ですが……賑やかしですけどね」

大会の参加者か、と聞かれれば素直にそうだとジョセフは答える。閉じた両手を再び開くとその中から角砂糖が2つテーブルに転がり落ちた。

「そういう貴女は?」

気怠げに話す女性にジョセフは疑問を返す、こんなに街が賑わっているのにどうしてこんなに暗い表情なのだろう。
そう思いながら角砂糖をエスプレッソに入れて指でくるくる混ぜると、入れてもいないのにクリームの色味が増して来て、綺麗なクリーム色が出された茶色となった。

「人が多いというのは僕は嫌いじゃありませんけどね、もちろん相棒も、オーディエンスは多い方がやりごたえがある」
117菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)22:04:03 ID:rwB
>>109
 迫る双刃、凄まじき速度。最大加速を以てしての連撃――――まともに受けたならば正しく真っ二つになっていたことだろう。
 だが、この現状においては最早恐るに足らず、といえば少々過剰な表現では有るだろうが、然し菱華も、アイゼルネスも、その心持ちはその通りだった。
 右手に握り締めるビーム・サーベルの刃を以てその連撃を迎え撃つ。ビーム同士の衝突によって、凄まじい熱と音がはじけ飛んだ。
 そして――――叩きつける。然しそれは彼の刃によって阻まれるだろう。その姿は正しく鍔迫り合い――――お互いの刃の向こう側から、アイゼルネスが睨みつける。

「応とも見せてやる! 私達は強いってことを! 私は強いってことを! 菱華は強いってことを!
 お前に見せてやる! ここにいる観客全員に見せつけてやる! そして何よりぃ――――菱華に見せてやるんだぁ!!!」

 機体出力で負ける自信はない。機体の完成度は、技能は確かに劣るかもしれないが――――それでも尚、負けるつもりなんて毛頭ない。
 ここまで食らいついたのだ。勝利も敗北も最早紙一重。それも未だに。ならば、ならばならばならば――――尚、尚、勝ちにいかなければ嘘だろう。
 何より、そう。アイゼルネスは相棒に強いということを教えてやらなければならない。彼女は先に心は前向きになったが、未だに勝利を知らない未熟者。
 だから彼女に。勝てるのだと。勝てるだけの実力が私たちにはあるのだと、教えなければならない。故にそう。見せてやる!!

「――――全力を。私の全力、をぉ!!!!」

 ――――背より、インコムが伸びる。
 然し先端の子機は先のミサイルの対応において爆風において射撃機能は奪われている。攻撃能力は存在しない。それでも尚、菱華はそれを動かした。
 とは言え、インコム程度の推進力で鞭のような攻撃能力を発揮できるわけでもない。……そう、攻撃手段としては下の下だ。“攻撃手段”としては。
 狙いは彼の頭部メインカメラ。視界を遮るべく、インコムが彼の頭部へと巻き付こうとすることだろう。


「これ、で!!」


 そして、その瞬間に。アイゼルネスの右脚が動く。それはそのまま、実に原始的な……蹴撃として、ユナイトに叩きつけられんとするだろう。
 致命傷は期待していない。求めるのは不意を突く事。カメラを遮られたとて、まともに斬りかかれば斬撃軌道を読まれて迎撃される可能性すら考えられる。
 ならば――――この一撃を以て、敵の態勢を突き崩し。

「行ってぇ、アイちゃん!!」


「終われぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!!」


 前方に加速。そして――――振り下ろすは、黄金の刃。
118藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/07(木)22:10:57 ID:2PH
>>116


「ふうん。そうなんだ」

にこやかに笑う、ジョセフの言葉。その返答を、彼女は至って平坦な一言で済ませた。
決して彼女は機嫌が悪いのではなかった。それ以上に清らかで、有りがちで、反吐が出て、鬱屈した感情を抱えているというだけ。
そもこの女は、人と話すのが得意ではないのだ。言葉を紡ぐのに躊躇うことはないが、その距離感に度々致命的な誤差がある。

「勿論、出るわ。そうでなきゃ、面白くない」

また一口、彼女はアイスコーヒーを啜った。その水面は、あまり綺麗な色をしていなかった。

「あたしだって。人が多いのは、そんなに苦手ってわけでもないけどさ。注目されるの、嫌いじゃないし」
「――正直、バトルは好きじゃないのよね。だって面倒じゃない、壊れた機体直すのって」

「こんだけ人が多いと、沢山戦わなくちゃなんないだろうし。それが、かったるいなってだけ」

――ちら、と彼女の視線が動く。ジョセフの機体を、刹那に見つめる。道化師に似た、そのボディを。

「貴方。勝つのが好き? 楽しませるのが好き?」
119クレア◆8GhLpYNLUs :2017/09/07(木)22:12:03 ID:fBT
>>115
「蒼き閃光とは、私とオーガも戦った事があってね私達は負けたけど、次は負けない…!
それから、ホビーはマスターと息を合わせてこそ、力が発揮されるんだ。大舞台でも、堂々としてないとね。」
人見知りなのか、慌てているようだ。
だけど、大会では多くの観客に囲まれてのホビーバトルとなる。
この程度で緊張していては…

『炎鬼か…悪く無い名前だな。』
シラヌイと呼ばれるホビーは私の相棒を炎鬼と呼んできた。
日本語に直訳したのか。

『シラヌイと言ったな。クレアも、私も、お前達を既にライバル視している。蒼き閃光に勝ったのだからな。それに、私達と戦う事もあるだろう。
アンフェアが嫌いでな。互いに最高のコンディションを持って戦いたい。』
敵に塩を送るって言葉に対してオーガは言葉を返している。私も同意見だ。
最高のコンディションで、互いに全力を出し切って戦い…!
シラヌイも優秀な性能を持っている様に見える。
それを引き出すのは、ミナホだ。
此処で緊張していては…
120佐々木部 ミナホ◆P8zupxgDdA :2017/09/07(木)22:36:35 ID:ZXG
>>119

「ど、堂々、と…」

実を言えばこの大会に参加した理由は自分を変えたい、という理由もある。
ならばその通り、大会中では堂々としていなければならないのだとは分かっているのだが……
やはりそう簡単にはいかないようでいつもこの通りだ。

「ラ、ライバルっ!?」

『はっはっはっ!これまた高く見られているな、まぁそれだけ評価されているということだろうよ』

「わ、わたしっ…そんな、ライバルだなんて…」

恐縮というように両手をバタバタとさせ否定する。
そんな中シラヌイは高笑いなんかをしてこの状況を楽しんでいるようだ。

「あっ……か、勝ち抜くポイントってわけじゃないんですけど…私は、その…"精一杯楽しみたいな"って思ってます…」
「あっ、こ、こんなことなんの参考にもなりませんよねっ…!」

『……ふっ…こういう奴なのだよ、私のマスターというのは』

楽しむ。
それはある意味ホビーたちの存在意義であり、戦うことも楽しさを前提としたものだ。だからこそ、それを無意識に分かっているミナホだからこそあの戦いでも勝つことができたのかもしれない。
121武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/07(木)22:58:34 ID:28r()
>>107

ユナイトに残さていた、ビームサーベルを除いた最後の武装。頭部バルカン砲が火を噴く。その威力は決して高くはないものの、視界を遮るものを迎撃するには充分な役目を果たす。
視界は確保された。然し蹴撃まで対応は不可能。機体のバランス制御によって姿勢が崩れることを最小限に留めつつも、その一瞬は相手にとって絶好の機会となる。
ならば、とビームサーベルを機体の回転と共に放つ。振り下ろされる黄金の刃に対して蒼の刃が衝突し───そして拮抗の末にユナイトの掌から刀身が弾かれる。

黄金の斬撃はユナイトの正面装甲を裂いた。だがまだ致死には至らない。命中の直前にユナイトが行った動作は、先ほどアイゼルネスが行って見せたものと全く同じ。
ブースターを噴かして強引に後方へと機体を逸らし、その斬撃が機体を両断することを回避してみせた。そして残されたビームサーベルを、今度は両手にて構え直す。


「ならば、私の全力を以って答えよう。名残惜しいが、この一閃で幕引きとしようじゃないか」


これが最後の衝突になるだろうと直感する。次の一撃を以って勝敗は決する。
共に限界が近づいていた。或いは、限界などとうの昔に超えて戦い続けてきた。
残された耐久値はあと僅か、残された武装は此の手に握られた刃のみ、ならば成すべきことはたった一つ───ただ、相手よりも先にこの刃を届けるのみ。


「さあ──────勝負だ、アイゼルネス!!!蓮見 菱華!!!」


残された全てのエネルギーを推進力に充て、ユナイト・アサルトは最後の加速を開始する。
未だ、その機体のどこにそれだけの余力が残されていたのだという程の超高速を以って、“蒼き閃光”は戦姫の元へと疾駆する。
全てのバーニアが臨界を超えた出力を発揮し、機体全てがオーバーロード寸前の悲鳴をあげて、それでもユナイトは未だ止まらない──────当たり前だ、この機体を作り上げたのが誰だと思っている。


最速を以って、最短距離を以って、ただ真っ直ぐに翔ぶ。真正面からその手に構えられた刃を貫き通す為に。
ここまできて、今更小細工など通じはしない。だからこそこの決戦は、純粋に相手を真正面から打ち破った方が勝利を掴み取るのだから。
そして──────────研ぎ澄まされた斬撃が、蒼き閃光となって貫き放たれる。戦いの結末は、果たして。
122菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/07(木)23:30:39 ID:rwB
>>121

 背部バックパックのバーニアが赤熱する。脚部バーニアが限界を超えて炸裂する。紫電が割れた装甲の隙間から迸る。だが、まだだ。まだ終わらない。
 機体は限界を迎えかけている、いや今更それが何だというのか。その程度迎えないで勝てる相手であるはずがない。
 菱華の躊躇をアイゼルネスの気迫が掻き消して、それで良いのだと肯定する。故にこそ菱華は止めないし、アイゼルネスは止められない。
 来る。交錯する。蒼い閃光が抜き放たれる。黄金色の刃を振るい放つ。決着は――――正しく、瞬きの間も無く――――


「駄目、か」


 アイゼルネスの丁度腰部付近――――そこに、一筋赤熱の輝きが見えるだろう。
 嗚呼、それこそが正しく。それこそが抗いようもない敗北の証だ。耐久値を見るよりも明らかだ。流石に、この状態では――――戦えないか。
 アイゼルネスの両眼の紅い光が消え失せる。いや、然し、それでも、まだ――――ビーム・サーベルを、構えて――――

「――――いや、まだ――――」

 両断された下半身が爆発を起こし、そうして試合は決着となった。
 バトルフィールドに再現された宇宙空間が崩壊し、アイゼルネスと菱華は現実の熱狂へと連れ戻される。
 最後に決着を付けたのは、やはり技量の差であったか。先に機体に到達したのは、ユナイト・アサルトが振るう蒼き閃刃であった。
 ああ、負けてしまったとアイゼルネスは熱狂の中に思う。戦いは楽しかったが――――果たして、菱華は楽しかっただろうかと思った。
 そんな思いは――――然し。上半身だけになった愛機を拾い上げる、菱華の表情を見れば吹き飛んでいた。

「……ごめん、負けた」

「ううん、頑張ったね、アイちゃん」

 この戦いは、そう。菱華にとっても前の戦いに勝るとも劣らないくらいに楽しかった。良い試合だったかは主観で判断できないが本当に楽しいと思っていた。 
 それもこれも彼女の頑張りがあったからで、彼女だからこそここまでチャンピオンに対して追い縋ることが出来たのだ。だから、彼女が謝ることなど無いのだから。
 そして――――対戦相手の、チャンピオンへ。


「……バトル、有難うございました!!」


 ――――そう言った瞬間。菱華の耳に、ようやく会場の熱気が入ってきた。
 ……緊張が帰ってくる。戦場にのめり込んでいたことで誤魔化しも聞いていたが――――やはり、人前というのは苦手だった。
123赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/07(木)23:46:28 ID:Rx8
>>105
それは決め付けでしかなかった。にわかアイドルに機体を組めるわけなんて無い、と。
どうせ他人の機体だろうと。そう喚き散らしただけで対面したときの様な、突き刺すという意思はなく。
シンヤの言葉が漸く少女を煽る。届く。ならば切る札は追撃以外に無いはずだ。
だがしかし

「……わりぃ」

その言葉は、今までの男には余りにも似合わない。

「一発も喰らわねぇつもりだったんだがなァ
 でも―――――もうすぐ終わらせっからよォ!!」

当然とも言うべきか。その言葉は傷ついた自身の機体に向けて。
突拍子の無い台詞こそ、きっと本心からでたという証明か。

ホバーボードを捨て置いてもその機動力は衰えない。寧ろ小回りは効く様になったとも見える。
どれだけ貰ってここまで練習したのだろうかと嘲笑う。が、しかし。こっちは"本気"だ。
背後をすり抜け逆側に回りこむ『コナユキ』より放たれる36のマイクロミサイル。それは最早面攻撃となって襲い来る。
ブースターを吹かせば熱源として認識されて、追跡は更に苛烈となる。

―――――"ブースターを吹かせば"

背部装備のウェポンホルダーが『ジャンク』より分離し、推進器を兼任するそれが"青白い炎を吐き出す"
上昇、上昇、現在最も色濃い熱がそう動くのであれば当然、"ミサイルもそれを追う"。
これでも接近のためにスラスターを起動すればミサイルは帰ってくるだろう。出来た隙は一瞬。

―――――"その一瞬で十分過ぎる"

ウェポンホルダーの推進力はその重量を打ち消すためのものであり、故に分離しようと『ジャンク』の速度は落ちない。
失った二本の脚の分は落ちれど、回り込みすり抜けた程度の距離であるならば。接近は刹那で仕舞う。

「お前とは―――」

ジャンク・バスターの引き金を引く。並ぶスラスターが一斉に火を噴く。
ホビーアイドルなんて、結局仕事でやっているだけなのだろう。きっと、"愛してなど無いのだろう"と。
それはそう決め付けているだけ。知らないけれど、決め付けている。本当にそれだけでしかないけれど。

「―――――ちげぇんだよォラァ!!!」

超速にて迫り、剣を振りぬく。結果はどうあれ最後の一撃となるだろう。この後にはミサイルの群れがやってくる。
言ってしまえばくだらないが、それでも譲れない物は譲れないらしい。
124武藤 ツカサ◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/08(金)00:11:22 ID:7Gn()
>>122


バトルフィールドが解除され、仮想の宇宙から現実へと引き戻されていく。
それはまるで夢から覚めるような、名残惜しさを伴う感覚。そうして戻ってきたユナイト・アサルトの状態は正に満身創痍と表現するに相応しいもの。
その戦いが彼にとって楽しいものであったかどうかなんて、わざわざ言うまでもないことだった。


「──ああ、よく私に応えてくれた」


ユナイトを手にとって回収したなら、労わるようにそう呟く。例えAIを搭載ぜずとも、その機体は間違いなく彼にとってのパートナーなのだから。
この戦いは、間違いなく接戦だった。最後の攻防は何方が制していてもおかしくはなかった。
今回は地力で勝るツカサが勝利を手にしたが、もし次があるならば果たしてどうだろうか。
予想はつかない、だが然し、もしかすると────だからこそツカサは、彼女をこの大会における”ライバル”の一人として見定める。


「こちらこそ───心が躍る戦いだった。対戦有難う」

「…………良いコンビだ。二人を結ぶその絆、戦っている最中であっても充分に伝わってきた」


戦姫の強さの要の一つとして数えられるのが、マスターとの信頼関係、絆。彼女達のそれは既に驚嘆に値するものだった。
だからこそ、ここまで白熱した戦闘が行えたのだろう。この大会の面白い点は、この大会中に皆が成長を重ねより強くなっていくことにある。
無論、それは彼女達とて例外ではなく────そしてツカサもまた、同じように。

歓声が鳴り響く。それは勝者を称えるものではなく、両者の健闘を称えるものだった。
それだけ観るものを興奮させる内容だったということだ。ツカサもまた喧騒を得意とする部類ではなったが────それでも今はこの熱を忘れないでいたい。
そして彼女の元に歩み寄ったなら、握手の為に手を差し出すだろう。それは健闘を讃え合う為のものであり、そして。


「───また、戦おう。そして次もまた、心が躍るような戦いを!!」


ライバルに対して、再選を誓う為の握手でもあった。
125菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/08(金)00:33:00 ID:UeJ
>>124

「いえ……私なんて……その、武藤チャンピオンも、凄かったです。ユナイト・アサルト……来月、買います!」

「そうだよ。私と菱華は最高なんだ! 今回は負けたけど、何れ私たちは最強になるんだから!!」

 チャンピオンの機体は凄まじい完成度だった。今思っても、あの機体と戦えたのはウソのように思えてしまう。
 それも全て、相棒たる愛機のお陰であり。そしてまた、愛機もここまで戦えたのは相棒のお陰だと。
 差し出された右手を、おずおずと握り返す。……今は、あれだけ不安の象徴に見えていた熱狂が少しだけ心地よいものにすら聞こえている。


「……はい、本当に楽しかったです。また、戦えたらそのときは――――」


「――――負けないよ!! 」


 強くならねば。もっともっと強く、そしてもっと楽しく戦いたい。
 熱はいずれ冷めてしまうものである。役目を終えたのであれば、早急にステージからは降りるべきである。……去る前に、一度だけそこを振り向いてから。
 よく戦ってくれた愛機を胸にいだきながら、その場を後にした。
126初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/08(金)00:39:48 ID:O0y
>>123

ウェポンホルダーが宙に打ち上げられた瞬間、なずなは「あぁ」と、感嘆のように呻きのように零した。
想定して然るべきだった。推進装置と機体の分離によるリスク分散というのは、まさにコナユキの専売特許だというのに。

ずっと、どこか遠巻きに戦いを見据えていた理性に罅が入り、動揺が走る。

落ち着いて、なずな。あの曲芸が生んだ時間は一呼吸ぶんに過ぎない。避けさえすればどうとでも料理できるだろう。
立体機動能力に優れたコナユキなら、『線』の攻撃なんて何も怖くはない。
機体操作マニュアルモード。アイドルならではの動きを見せてやろう。
ムーンサルトの要領で身を捻りながら後ろに飛び退き、機体の全損判定に関わる上半身を攻撃の軸からずらす。
あとはただ、ほんのそれだけで――――、――。


――めぎぃっ、と生々しい嫌な音がして、不意にコナユキは墜落した。
彼女の姿を映す中継映像は、その頭部が接近してきていた空中の「キューブ」に衝突するという、あり得ないケアレスミスをまざまざと切り取っていた。

あとはただ、両断。振り下ろされた鏖殺の刃が、戦姫の柔肌に捻れた断面を切り開くだけだった。
127ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/08(金)00:59:16 ID:W48
>>118
「成る程、それは確かに言えますね」
「大手のスポンサーが付いている方なら専用のスタッフがいるでしょうが、何分僕のような三流芸人ではそうもいかない」

女性の発言にジョセフは「ううん」と頷いた、確かに彼女の言う通り、戦闘によるダメージのケアは大変な仕事である。
一つでもサボれば致命的、しかし戦う度に傷は増えて重なり手間と負担は増えて行く、それを面倒だと言うのは尤もな事実である。
きっと彼女の言わんとしている事はそうではないのかもしれないが、ジョセフは敢えて言葉通りに受け取って返した。

「僕は───おっと、ご挨拶が遅れました、僕はジョセフ・ドーソンと言う者です」
「そして彼は僕の優秀な相棒、マジカルジョーカー」

続く女性の質問に応えようとして、その視線の先に自分の相棒───ジョーカーが立っていることに気がついたジョセフは、ジョーカーの紹介も兼ねて名前を名乗った。
ジョセフの紹介に応じて恭しい礼をテーブルの上から女性にするジョーカー、動きは全く滑らかである。

「───さて、質問に答えましょう」
「どちらかと言えば僕は勝つよりも楽しませる方が好みです、ええそりゃあもう」

勝つか、楽しませるか───そのどちらか、と聞かれると勿論ジョセフは後者を選ぶ。
勝負に勝つ事が嫌いなわけじゃ無い、しかしホビーバトルとは本来楽しくあるものだろう?
例えそれが人に嗤われる結果になろうともジョセフは人を楽しませる事を選ぶ、勝負の場が世界的な大会であってもそれが変わる事は無い。
128赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/08(金)01:12:37 ID:ScM
>>126
巨大な人馬たる『ジャンク』が握り構えて尚、その剣は存在感を放つ。
身長を超えるほどのサイズの刀身に犇く連刃は、柔肌を切り刻むには過ぎた物ですらあるかもしれない。
糸鋸の様に動き切断を繰り返すそれは、乙女の肌をぐちゃぐちゃに喰らい潰す。
『戦姫』に痛みが有るのであらば―――――なんて、考えるのも憚られるような。
袈裟に振り下ろされた剣は乙女を両断し、仮想現実が形作るステージは消滅する。
無地のバトルステージに残るのは、操作する手が離れて倒れる人馬姫と、両断された『戦姫』

それは、今までの動きからは考えられない、あっけない最期であった。
態々ホバーボードという扱いの難しいパーツを使いながら、しかし確かに使いこなしていた筈の少女とは思えぬほどに。
ああ、結局、この程度かと。また"勝手に"見切りをつけて。

「―――――気分はどうだ?」

悲鳴は聞こえない。何も聞こえない。恐らくは放心か、悪い反応ではない。
男は酷く上機嫌な表情を浮かべて、少女の前に現れるだろう。
本来であれば、互いの健闘を称え合う戦後の時間であるが―――――

「こっぴどく壊しちゃってまぁまぁ……
 本気でやんねーんなら、やめた方が良いんじゃねェ?」

なんて言葉を、突きつける。
129初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/08(金)01:37:06 ID:O0y
>>128

解き明かされた答えを前に、なずなは張り詰めた鼓動の糸が千切れんばかりに震えるのを感じた。
握りこぶしの中に、薄手のシャツの下にじんわりと汗が滲む。首筋から蟻が這い出るような落ち着かない感覚が襲う。
今まで勝っても負けても言えたはずの「ありがとうございました」が、声にならない。

ファイターとして名が売れる以前、初風なずなには芸能人として致命的な弱点があった。
底力を試される局面ほど熱意が空回りし、視野狭窄に陥る。端的に言えばあがり症だ。
尤もそれは競技者としての知名度が高まってからは鳴りを潜め、アイドルとしての活動でも顔を出さない――はずだった。

「わ、わたしは、いつでも……ほん、気、で……」

少女は愛機のまだ熱が篭った残骸を抱きとめる。剥がれそうに震える笑顔の下からは、泪に濡れた声。
制御を外れたヴィヴラートが、彼女の完膚なきまでの無様な敗北を奏でる。
バックコーラスは観客席で飛び交う混沌としたヤジ。
洒落臭いアイドルの失墜に快哉が聞こえたかと思えば、分かりやすい悪党に対するブーイングやホビーバトル協会の姿勢に対する疑問を訴える者もいた。
130初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/08(金)01:37:57 ID:O0y
/ホビーバトル協会 は ユニバース社 のことだと思ってください……
131赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/08(金)02:03:42 ID:ScM
>>129

「じゃあま、またそれを見せてくれよ」

ぽん、と。嫌みったらしく、あおるように方に手を置いて。
飛び交う野次も慣れっこだと言わんばかりに気にすることなく。
ただまぁ相手がアイドルだったのは不味ったかと思わなくもない。

これで予選のバトルの一つが終わる。少女に一つ、爪あとを残して。
倒れて折れた少女の体が起き上がる時、瞳は何色を映すのか。
132初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/08(金)02:48:23 ID:O0y
>>131

最後の抵抗というやつか、なずなは肩に触れようとした手を乱暴に払い除けた。
それはアイドルの生存本能による反射的な行動だが、小動物系アイドルの荒っぽい挙措は却ってどよめきを呼んだ。

対戦ありがとうございました。ようやく形になった言葉の発音は、音声読み上げソフトのそれに似ていた。
悔しいとも憎いとも言えない、虚ろな感情から紡がれた言葉を残して、なずなは舞台袖へと消えていく。

 (白か黒、勝ちと負けしか無い世界。そこが求められる舞台。『ぷりず』のみんなと並べるかもしれない才能のありか)

 (でも、ほんとうに夢見ていたものは――きっと、虹色。パレットに散りばめられた鮮やかなパステルカラー。
  誰もが自分の夢を叶えられて、誰もがそこにいていい。勝者と敗者しか居ない場所とは真逆)

 (……どっちも捨てたくなくて……わたしには……どっちも選べなかった……、……)

突きつけられた綻びを見つめるほどに、惨めさがいや増す。
仲間にも相棒にも愚痴るつもりになれなくて、彼女は足早に宿に逃げ帰ると、一昼夜をひとり泣き明かすのだった。
133クレア◆8GhLpYNLUs :2017/09/08(金)20:07:28 ID:n4B
>>120
「楽しみたい…ね。」
ミナホは参考にならないと言っているけど、
ホビーバトラーとしての考えは間違っていない。
ホビーは組み立て方、カスタマイズ、操り方で、持ち主の趣味や性格が現れる事が多い。
オーガも、私の趣味が出ているのだろう。
その趣味を活かしたホビーこそ、力を発揮出来るのかもしれない。
その方が、テンションが上がるからね。

『良いマスターじゃ無いか。ホビーに対して愛着を持ってこそ、出て来る言葉だ。』
オーガもミナホの言葉を称賛している。
私も同意見だ。ホビーバトルは勝つだけの為の戦ってる人達も居る。
ビギナーらしい言葉だけど、こう言う考えを心から言えるんだ。
やっぱり、センスを感じる。

「素晴らしい言葉をありがとう。私達もそろそろ行くね。」
『次はバトルスペースで会うかもな。』
私とオーガはミナホとシラヌイに挨拶をし、
その場を立ち去る。
蒼き閃光との再戦、そしてミナホとシラヌイとのホビーバトル…その誓いを胸に秘めて…

//これにて〆とさせていただきます。
//ありがとうございました。
134深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/08(金)21:47:05 ID:97z
WHBT会場付近には無数のホビーショップが存在している。
そしてそういったショップの店頭では、しばしば現在行われているバトルをリアルタイムで観戦することができる。

彼、深山エンジが食い入るように見つめるスクリーン内でも、ちょうど熱き戦いが幕を下ろそうとしていた。
虎を思わせるような大型四足歩行の鋼獣と、スタンダードな銃火器タイプの闘機。
戦いは闘機側がペースを握っていた。ミサイルやレーザーをうまく使い、鋼獣を懐に近づけさせない。
これに対し、鋼獣側は痺れを切らしてダメージ覚悟で突撃。しかしその爪は空を切り、闘機の放った弾丸が虎の頭部を貫く。
歓声が沸くとともに、ゲームセットだ。

エンジと同じく戦いを見守っていた数人の観客がそれを見届けて散り散りに去っていく中、彼はその場を動かず難しい表情のままだ。
過去何度も大会参加者を輩出した名門クラブチーム所属であることを示す青と黄色のジャージ姿、黒髪に一房の赤メッシュ。
そんな出で立ちのエンジは、チームの存在を知っていてもそうでなくとも、一定以上の目を引く存在であることは確かだろう。

「……なあ、今の試合どう思った?」

そして、観戦していたかどうかなど聞かず、近くにいた少年に問いかける。
見ず知らずの年下に話しかける態度としては少々ぶっきらぼうな感もあるが……はたして。
135天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/08(金)22:08:38 ID:nnx
>>134

 これが、祭りの高揚感と云うもなのか特に用も無いのに無数のホビーショップ放浪し駆け回る少年。―――天空ショウ。

店内を物色中に、丁度「鋼獣」と「闘機」が凌ぎを削り合う戦いを見て興奮しない男児は居ないだろう。
開いた口が閉じる事を忘れ、食い入る様に観戦する。

 弾丸が頭を点いた事で結末は呆気なく終え、周りに人を居るのを忘れ、一人驚嘆の声を漏らすと、不意に隣から声が聞こえるのを感じ――横の男を見上げ。…あのジャージは確か強豪のクラブチームの「多嘉山スタードリマーズ」の羽織り!

「どうって……あの「鋼獣」の操縦者がダメダメだと思う!」

「俺のプロトユニコーンの速さなら一瞬で一突きだよ!…です。」

妙に慣れない敬語で応える
136藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/08(金)22:20:38 ID:060
>>127

「へえ、大道芸人? やるじゃないの、このご時世に」

興味深げに彼女はそう言った。気怠げだった目尻が、微かに動いた。初めて彼の瞳を見た。
そうして続いて現れた「闘機」の動きに、彼女は目を丸くした。その奇矯な外見にではない。
――およそ機械的なモーターによる挙動を感じさせない、滑らかな動き。これなら、闘機の客寄せパンダどころではない。
それこそ闘機を用いたショーまで出来るだろう。今の自分に果たして、それほどのことができるだろうか?


「ジョセフ。ジョーカー。……覚えたわ、ありがとう」
「あたしは篠見。藤原篠見。それで、こっちが――。」

――そう言いかけて、彼女は懐のトートバッグから「なにか」を取り出そうとした。だが同時に、スマートフォンからの着信音。
苛立たしげにそれを取り出して適当な相槌を打つ、彼女の顔に焦りが生じた。

「――やば、ごめん。午後から予選のバトル入れてんの、すっかり忘れてた」
「またどこかで会いましょう。――さようなら」

やや申し訳なさそうに彼女は席を立つ。アイスコーヒーのカップをひったくって、慌ただしく席を立つことだろう。
――去り際のその顔は、微笑みに似ていて、きっとそうではなかった。
137深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/08(金)22:28:14 ID:97z
>>135

「クククッ、だよな。幾ら近づかせてもらえないからってあれじゃあ自殺行為だ」

先ほどまでの難しい表情から打って変わって、愉快そうに喉を鳴らして笑う。
理由はふたつ。
ひとつは、エンジもまた先の試合の興奮が残っているから。
そしてもうひとつは、少年が鋼獣サイドの意見を口にしたからだ。
つまり、この少年もまた……

「……やっぱりお前"も"鋼獣使いみたいだな?」

も、という言葉をひと際強調した語り口。言いたいことは明らかだろう。

「お前さんも大会参加者だろう?ちょっとお互いの機体を見せ合わないか?
 同じ鋼獣使いとして、親睦でも深め合おうぜ」

言いながら、ショップからほど近い休憩所を指で指し示す。
店内に設けられた工作スペースに他目的で陣取るのはマナー違反。そう考えてのことだ。
138天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/08(金)22:39:48 ID:nnx
>>137

「そーそー!」

 便乗する様に同意に意向を示す。
意外にも話し掛けてきた青年は同じ意見だったのか好意的に会話を続けた。少しぶっきらぼうな態度はどこ行く風と言った様子だ。

「“も”と言う事は、…へへっ!」

 どうやら青年の愛機は鋼獣の機体の持ち主らしく、同じ同士の人間に何故か通じ会う一種のシンパシーを感じた。

「おぉ!すっげぇ!ぜひよろしく!」
「あ、俺!天空ショウって言います!」

こんな風に語り合う友達はいるが、歳が上だと話は変わってくる。
年上の友達が出来て少し嬉しそうにはにかみ強く頷く
139深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/08(金)23:02:13 ID:97z
>>138

「鋼獣使いは結構珍しいからな。こういう場所で会えるのはうれしいぜ」

単純に闘機:鋼獣:戦姫=1:1:1としても人型が2/3。少なく感じるのはそういった点もあるのだろう。
人型でないことによる直感的操作のし難さ……とか。そういう事情もありそうだと彼は言う。

「ああ。俺も鋼獣使い。
 『多嘉山スタードリーマーズ』、知ってるか?そこでエースをやってる、深山エンジだ
 よろしくな、ショウ。」

少しも着飾った様子もなくエースを自称するのは自信の表れだろう。
あるいは年下のショウを前に、すこし大人びて見せたりしているのかもしれないが。

そんなことを話しながら休憩所にたどり着き腰を下ろすと。
肩から下げていたエナメルバッグのジッパーを開く。当然中から顔を出すのは、

「こいつが俺の愛機。『タイラントレックス』だ」

それは、鋼獣のなかでもさらに異質を放つティラノサウルス型。
黒と紫のカラーリングと背後の可動アームが特徴的な、大型のマシンだ。
現在は非戦闘モードということでアームの先には何もつけていないが、それでも存在感は十分だ。
なぜ真っ先に取り出したかといえば、やはり同じ鋼獣つかいへの親近感と……たった今できた年下の友人に愛機を自慢したかった、というところか。
140天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/08(金)23:25:17 ID:nnx
>>139

「やっぱり“あの”多嘉山スタードリマーズの…っ!」
「エ、エース!? よろしくおねがいします! エンジさんっ!」

 深々と頭を垂れる様子はまるで子犬の様に興奮していた、あの有名のクラブチームのエースと謳う人間がこの場所に居るなんて…。
同じ「鋼獣」を扱う操縦者として是非とも話は聞きたい。

 興奮と動揺を抑えながら腰を下ろすと小さな身長は緊張して縮こまってるのか更に小さく見えるだろう。

「タイラント…レックスッ!!」

 言葉と共に、ただただ圧倒されれ遅れながら男児特有の短絡な格好いいという感情が芽生える。

なんとも言えぬ表情でただ機体を見つめて恍惚の表情を浮かべるばかりだ。数秒が経てば「武装とか、どうなってんのですか!」「速さは!どのくらい!」と質問コーナーとなるだろう。


「あ、俺のも!俺のも!」

 そう云うと、“プロトユニコーン”と小さく呼べば四足歩行の灰色の一角獣が掌で収まるだろう。
鋼獣の人気製品の幻獣シリーズのユニコーンのプロトタイプと分かるだろう。現在はプロトユニコーンは絶版され知る人ぞ知る機体となってしまったのだが
141深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/08(金)23:50:10 ID:97z
>>140

「そんなに畏まらなくていいぜ。俺自身は"まだ"無冠のプレイヤーだ」

興奮と緊張の狭間で委縮してしまっているショウに苦笑して手を挙げる。フランクなほうがやりやすいと。
チームの名は誇りだ。しかしそれをひけらかしていてはいけない。そう自分自身を戒める。
それと同時に"まだ"というのは、まぎれもなくこの大会で勝ち上がるという決意の表明。

「カッコイイだろ?」と愛機の頭部を指先で撫でながら語るエンジは実際ショウと変わらないひとりのホビーバトルを愛する少年だ。

「武装は……そうだな。メインは盾だ。背中のアームに、でっかいのを背負わせてな。
 あとは口にビームが付いてる。こいつが特に強いぜ?
 スピードは出ないが、その分滅茶苦茶頑丈に仕上げてある。ちょっとやそっとじゃビクともしないぜ」

ショウの質問ひとつひとつにゆっくり答えていく。
これが相手が相手なら手の内をさらすものかと考えていただろうが、眼前の少年相手にそれは無粋だろう。
こうも明らかに好意、敬意を示してくれているのだから。それには答えてこそだと思う。



「へえ……お前のもカッコイイじゃんか。なるほど、ユニコーンの……プロトタイプか?」
 いいねえ、試作機ってのはやっぱりロマンだよな」

この大会に臨む前準備として、おおよその人気シリーズとその派生にはカタログで目を通してある。
それでも実際にその目で見るのは初めてで、興奮をその表情にのぞかせた。

「高機動タイプか?俺のタイラントレックスとは正反対ってわけだな
 でも、こんなレアものどうやって?」

無粋かと考えもしたが聞かずにはいられなかった。マニアの性だ。
142天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/09(土)00:33:45 ID:SKM
>>141

「おぉ…っ!」

 まさか1つ1つ丁寧に機体の内部を教えて貰えるとは思えず、心が踊るかの様にまさに気分は有頂天。
成る程、メインウェポンは盾か…口から砲撃!? …等の様々な驚くべき情報が流れる度に一々リアクションをとる。


「い、いやぁ…そうかなぁ…?」
 
「格好いい」と一言言われるだけで、照るがそれは寧ろ、愛機に自信の顕れ故に褒められると自身はまで嬉しくなってまてしまう。

「へへっ! 俺のプロトユニコーンは“速いぜ”! 勿論、誰よりも!」
「…へ? あ、まぁ…うーん、それは内緒!」

何処で、という言葉に何故か茶を濁し慌てて「あ、ごめん!ちょっと用事が思い出した!」徐に立ち上がれば店内を後にするだろう。

しかしいずれかはまた…会えると直感が告げている。 
《深山シンジ》…青年の名前は強く脳裏に焼き付けられた。
143深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/09(土)00:58:05 ID:WIT
>>142

「クククッ、愛機を誇りに思うのはいいことだ。」

照れたようでいて己の機体の速さに関してはしっかりと自信を見せるショウ。
そういったものは大事だ。ひとつ自信があるものがあれば、それが励みになるし支えにもなる。

「あん?そうかい。」

彼なりの事情があったのかもしれない、踏み込みすぎたか、と若干の後悔。

「引き留めて悪かったな。また会おうぜ、ショウ。」

軽く手を挙げて見送ると、手元の愛機に視線を落とす。

「プロトユニコーンか……手合わせしてみたいもんだなあ、タイラント?」

低く唸るAI。それを聞いて満足げに、彼も休憩所を後にするのだった。
144藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)01:36:46 ID:bEk
(想定してたよりも早く帰ってこられたのはいいが時間を持て余してる顔)
145藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)01:37:07 ID:bEk
//あっスレ間違えました…ごめんなさいごめんなさい
146初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)02:30:11 ID:TrV
『うみかぜ』にも、中心部の喧騒から離れた空間はある。海辺の小さな公園なんかはまさにそうだ。
それも夜ともなれば、瞑想じみた落ち着きを欲する者か――もしくは、人に合わせる顔のない者ぐらいしか訪れない。

いまベンチに腰掛けている少女は、後者だった。
緑のニットセーターの下に青いプリーツスカートを合わせ、足元は白いソックスにパンプスと装いこそ小奇麗だが、表情はどん底と言っていい。
ふんわりとカールした栗色の長髪が晩夏の潮風に揺れる姿は、まるで映画のワンシーンのようだけれど。
墨染の海を見つめる虚ろな瞳と、年季の入った野暮ったいほぼ真円の眼鏡が、何もかもを台無しにしている。

『……お姉さま。確かに外に出ましょうとは言いましたが、それは気晴らしのためでして』

囁くような声音の主は、少女ではなく――その傍らの『戦姫』のものだった。
忠臣が不機嫌な殿様を諌めるような語調。対する答えは、ない。少女はただただ黙って、薄闇の中で燻っていた。

なおこの公園、例によって屋根つきの空間に2基だけホビーバトルの筐体が置かれている。
きっと地元の子供向けに用意されたものだろう。
147アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)02:53:52 ID:bEk
>>146


「――なーにが10連勝よ。バカみたいに騒ぎ立てて。初心者ばっかの予選マッチで、プロが負けたら世も末よ」
『だからと言ってマスター、何も記者の方を殴らなくっても――しかも、タブレットで』
「うっさいわねえ、仕方ないでしょうが! だって下着の色聞いてきたのよ、あのクソ三流ゴシップ誌!!」


――静まり返った深夜の公園に、遠くから少しずつ五月蝿い遣り取りがやって来る。歳若い少女、ふたりの声。
だが、公園へと立ち入る人はひとつ。恐らくはたちにも満たないような、ごく背丈のちいさい人影。
ごく不機嫌な声と、それを諌めるような声。酒乱の乱痴気騒ぎに似た調子であった。放っておけば、どんどん喧しくなる類のもの。


「――……なによ、あの子」『あっ、ちょっ、マスター』


不意に少女の影は足を止めて、剣呑にベンチの影を凝視する。恐らくは、少女とさして変わらない歳頃の。
小綺麗で様になる格好をして、どうにも憂いを帯びた様子で、海を見つめて動かない。生暖かい初秋の潮風を浴びながら。
不気味でさえあった。見る目が違えば幽霊と怯えられたかもしれない。こんな深夜だというのに、なぜこんな場所でうらぶれているのか。
――だが。この少女は例え、彼女が幽霊であったとしても、同じことをするだろう。肩口からの掣肘を待たずに。少女はずけずけと公園の自販機へと歩み寄っていく。


そうして、数十秒後。――ベンチに座る少女の頬に、不意に冷えたものが押し当てられる。


   「――――――。」


見ればそれはコーヒーの缶だった。黄色と黒を基調とした缶は、特段に甘ったるいブランドのもの。
それを押し付けている、白く小さく細い片手。磨かれた爪先は、真珠のように柔らかい色合いを湛えている。その主を見上げたのならば、彼女は幽霊でも怨霊でもない。
夜に溶けるようなゴシックロリータ。微かに香る、品のいいシャンプーと香水の薫り。腰にまで伸びて月光に煌めく長い銀髪。仏蘭西人形のように端正な、白皙の顔立ち。だが。
その眉間に深く寄せられた皺と、剣呑極まりなく眇められた赤い眼光と、微かに軋みながら剥き出しになった白磁の歯が、全てを台無しにしていた。

――今の「女帝」にとって、許せなかったのだ。理由の如何に関わらず、自分の前で鬱屈した雰囲気を醸し出している、何もかもが。
肩口のフリルに腰かけた、恐らくは従者と思しき「戦姫」は、如何ともし難いとばかりに肩を竦めた。
148初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)03:16:31 ID:TrV
>>147

「ひゃうあっ!?」

曖昧に揺蕩っていた意識を刺す金属質の冷たさが、少女に素っ頓狂な声を上げさせる。
食べ物が喉を通らず脱力しきっていた体は、そのままベンチの対岸へと仰向けに倒れ込む形。
――ここまで派手な反応を想定していなかったなら、銀の少女も勢いのまま一緒に前のめりに倒れてしまうかもしれない。

「あわわわわー! おばけ、おばけだよぉ?! 助けてコナユキ――」

何にせよ彼女はきゅっと目を閉じて、ひとしきり恐慌に叫ぶ。

「――、……ん。あ、れ?」

彼女が瞼を開き、自分が置かれた状況と突如として現れた怪人物の正体に気付くのは少しあとのこと。
恥じらいを誤魔化し、記憶を整理する。どこかで見覚えがあるような――。

なお、傍らにあった戦姫は主人に潰されそうになるのをひょいと避けつつ、椅子の背もたれに登って足場としている。
無言のままでいる彼女の表情は、当惑と警戒のそれだった。
149アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)03:39:25 ID:bEk
>>148


「――な、」

――押し当てる、と言うよりは、丁度それは焼印を入れるような手つきだった。手心とか、優しさとか、その手のものは度外視された。
いままで力を込めていたものが急に支えを失えば、それに咄嗟に対応できるはずもない。銀髪の少女もまた、驚いたような声を上げた。
そのまま飛び上がった少女へと伸し掛かる格好で、わわっ、と前方へと詰んのめる。――華奢な身体が、ベンチを滑り降りる。あだ、ソックス裂けた……? なんて、呟くも。

――気付けば、少女を抱き締める格好になっている己の姿を自覚して、少しずつ頬を赤らめて。

「――何してんのよもう!! セクハラよ、ったくもう、ああもう、っっ!!!」

直ぐに彼女は飛び退いて、好き放題に八つ当たりの言葉を吐くのである。唯我独尊である。
因みにその肩口に座っていた人形は、足を滑らせた主人の身体を器用に乗りこなしつつ、ランディングの衝撃が来る前に跳躍。
そのまま眼鏡をかけた少女の戦姫へと着地して、恭しくも苦笑いしつつ、優雅に一礼したのだった。

「――まあ、なんにせよ。Gespenstとは人聞きが悪いわね。傍目から見たら貴女の方が余程ユウレイよ。シケた顔して、何してんの?」

改めて襟を正した上で、銀の少女はしゃがみ込む。眼鏡の少女――なずなの、その傍へと。求められれば、手も貸すだろう。
トボけた相手のおでこに、ぺちっと軽く手刀を決めながら、不機嫌そうな三白眼はそう尋ねていた。
――何処かで見たことがあるなと、ああ成る程そういうことかと彼女が納得するのは、なずなの理解より一拍遅れてのこと。
150アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)03:41:31 ID:bEk
>>149
//×眼鏡をかけた少女の戦姫~ ◯眼鏡をかけた少女の戦姫、その目の前~ ですね…。
151初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)04:36:55 ID:TrV
>>149

何故女の子が自分を押し倒しているのだろう。どうしてその子はアリス・リリエンリッターなんだろう。
コナユキはなんで黙っているんだろう。身体を包み込むぬくもりと甘い薫りは何だというのだろう。

眼鏡の少女――初風なずなは、今起きていることを可能な限り理解しようと努めた。

「あ、聞いたことあるかも。明晰夢ってやつ」

そして三秒ほどで諦めた。何か理不尽な暴言を吐かれている気がするが、夢なら仕方ない。
今ふて寝したら二重に夢を見るんだろうか。どうせ起きてても気分は晴れないし、ひとつ試してみようか――

「――いたっ!」

これが現実だと少女がようやく観念した決め手は、手刀の鈍い痛みだった。
しぶしぶと言った様子の遅々さで身を起こし、彼女は辛うじて作ったよそ行きの笑みをアリスに向けた。

「あー、……精神統一です。ここで潮風に当たってると、なんだか落ち着くな~って。えへっ」

今日一日、彼女は同じような綻びかけた笑みを引っ提げて残った仕事を済ませてきている。
傍目に見ていて痛々しいなんてことは分かっているが、今更降りられる道でもない。


『ずっと話しかけていたのに……どうしてお姉さまはあの女と……あ、ご同伴ですか。こんばんは』
『それにしてもあまつさえいきなり押し倒すなんて……くうう……もうこの際ロボット刑務所で斬首刑でもいいですから仕留めましょうか……』

ところで彼女の戦姫の方だが、一礼には軽く会釈を返すだけで、ひたすらに拗ねていた。
152アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)04:57:56 ID:bEk
>>151

「はっ。傷心のヒロイン演じてるんなら、大した役者よ貴女。――もう少し、誤魔化し上手になりなさい」

なずなが不承不承のうちに返したメディア向けの挨拶をアリスは斬って捨てた。唾棄でさえあった。忌々しい、と言わんばかりの語調だった。
よく澄んだ赤い眼光が、真っ直ぐになずなの瞳を見つめていた。――然しそれも直ぐに終わって、溜め息をつきつつ彼女もまたベンチに座る。


「蜚蠊か蠅みたいにタカってくるブンヤどもを軽く引っ叩いたら大騒ぎされてね。ホンットあいつら、節操ってもんがないわ。
 朝になったらゴシップ誌のネット記事でも見てみなさい。わたしがあのクソッタレに一発かましてる決定的瞬間がすぐ出てくるでしょうよ」

苛立ちを隠そうともせずに、聞かぬかも御構い無しに、独白のようにアリスはまくし立ててゆく。
ぷしゅ、と炭酸飲料の缶を開けて、ぐい、と一口呷る。ドクターペッパー。彼女の味覚センスは、あまり宜しくない。

「今夜はホテルに戻れなさそうだし、ここでホームレスごっこに興じるつもりよ。――それで、貴女は」

酒乱の乱痴気騒ぎに似た語調だった。放っておけば、いつまでも語り続ける類のもの。されど彼女は素面であった。
ふたたび、赤い瞳がなずなを見つめた。例え何を言われようとも逸らしはしないと、暗に語るように睨んでいた。

「貴女は『いつまで』、その引き攣った笑いを続けるつもりかしら?
 今すぐリターンマッチを挑めば、顔を見せただけで不戦勝くらいは決められるわよ」

「――貴女の負けた、赤鉄シンヤに」


そう言い終えて、またも彼女は一口を飲む。『――大変申し訳御座いません、マスターのお言葉は時折辛辣でして』
慇懃に謝って深く頭を下げる少女の従者は、しかし少女を止めようとしない。それが、彼女の在り方である。
153初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)05:30:50 ID:TrV
>>152

『はあ、人のお姉さまを手篭めにしようとした挙句、ぺらぺらと知ったようなことを。
 有名人なら何をしてもいいとお思いですか。いや、お姉さまの方がこの国では有名ですけど。
 これ以上やるなら警邏を呼びますが。それとも救急車の方がお似合いですか?』

アリスの歯に衣着せぬ物言いに、なずなの戦姫が噛み付く。右手は腰に佩いた太刀の柄に触れていた。
先日の戦いで粉砕されていたはずの機体は完全に元通りになっており、その気になればいつでも戦える状態だ。
尤も、修理を行ったのは敬愛する「お姉さま」ではないのだが。

「ああもう、落ち着いてコナユキ。わたしが本気でやって負けたのは事実だもん」

コナユキに手でストップをかけながら、なずなは卑屈に口の端を歪めた。自分を道化へと貶めるために。

「……努力すれば、諦めなければ、夢は叶う。でもその夢が正しいかなんて考えたことはなかったなあ。
 正直すごいお目出度さだよね。ほんっと、吹き出しちゃう」

「いつまでなんて決める権利はわたしには無いよ。アイドルになっちゃった以上は、笑えないと」

全てを手に入れられると信じて、二つに一つすら選べなかった愚かな少女。
届かない高みを目指して、好きでもない才能の下駄を履いた裏切り者。
その心の軋みは、震える声になって響いた。
154アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)06:00:30 ID:bEk
>>153


「"本気"ですって?」


     「――それと"勝ち負け"に、何の関係があるのかしら」


  噴き出すように、アリスは嗤った。それは嘲笑に似ていた。月を背中に立つ彼女の顔は、夜のヴェールに愛されていた。
  身構えるコナユキを、黒い戦姫が制止する。穏やかな表情に湛えられているのは、決して歪まぬ忠誠。主人の背中を知っているからこその意志。


「その点を蒸し返すなら、彼もとんでもなく青かったわ。"本気でやれ"ですって? お揃いで笑わせてくれるわ。」
「気合や根性、熱意や信念で勝てたら苦労はないのよ。『貴女が身を置いてきた世界も、そうだったでしょう』」


少なくとも、アリスが身を置いてきた世界はそうだった。勝てないバトラー、勝てないファイターに存在意義はない。
面白い試合もできない役立たずを飼っておく金はない。早く新しい居場所を探すがいい。
そんな言葉を浴びせられてこの業界から去っていったプロフェッショナルを、幼くも研ぎ澄まされた赤眼は幾人も見てきた。

であればこそ。その幼気な声色から紡がれる言葉には、幾多もの死線を越えてきた重みがあるだろうか。


「どんな心構えだろうと」「どんな過程を辿ろうと」「どんな罵声を浴びようと」

「"プロならば"、"勝つ"ことが全て。――であればこそ貴女は、ホビーバトルという手段を用いて、アイドルとして"成り上がれた"わけでしょう。違くて?」
「何を卑屈に思うことがあるのかしら。本気に見えなくったって、いっそ本気でなくったって良いじゃない。『それで勝てるのであれば』」

「わたしや貴女が携わっているのは、他人を蹴落としてメシを食う仕事よ。それが『正しいこと』。
 ――誰からもナメられるようなそのヘラついた笑いに、誰が投げ銭を遣ると思っているの?」


つまりお前は、「勝とうとしていない」と。そう、アリスは告げていた。臆面もなく、躊躇いもなく。道化の仮面を刺し貫かんとする、真っ直ぐな視線と言葉で。
つまりお前は、「勝てば変わるのだ」と。そう、アリスは告げていた。勝利を掴めずに散っていった、数知れぬ亡者たちの叫びを聞きながら。

――つまりお前は、「勝たなければならない」と。そう、アリスは告げていた。そこに慚愧の念など覚えなくていいと、告げていた。
155初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)06:55:16 ID:TrV
>>154

「……アリスちゃんって、なんかかえでちゃんに似てるね。あ、友達なんだけど。
 あの子も同じようなことを言ってた。でも、わたしは認めたくなくて」

その結果がこれだと言いたげに、なずなの笑みは自嘲の色を深める。

「わたし、お客さんに希望をあげられるアイドルを目指してたんだ。どんな夢でも頑張れば叶うって、お腹の底から叫べるような。
 けれど結局、ここまで来れた理由は敗者を作るためのワケわかんない才能なんだよね。
 こっちの世界で初めてこっ酷く負けてみて、ようやく気付くなんて……わたし、ほんとバカだ」

背もたれに深く体重を預け、ぷらんと脚を投げ出す。
気がつけば頬を涙が伝っていたけれど、なずなはそれを拭こうとはしなかった。

「アイドルをキラキラした夢のまま、胸のうちに仕舞って生きていくこともできた。
 もしくは仕事は仕事だって割り切ることができれば、こんなことにならなかった。

 ――わかってるよ、何もかも。
 でも今すぐ割り切っていける? ずっと、信じてきたことを……」
156アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)07:47:21 ID:bEk
>>155

「――泣く必要なんて、どこにもないでしょう」


滂沱に煌めくその雫を、そっとアリスのひと撫でが拭った。
やわらかな白い指先が、微かに頬に温もりを残して、その清らな肌を潤わせていった。


「誰かに希望を与えたいのなら、あなたの夢は叶うと伝えたいのなら、言葉は要らない。戦うその背中で語ればいい」
「模型を愛しているのなら、愛し続ければいい。それは勝ち負けには関わらない感情だけれど、『だからこそ』切り捨てる必要もないわ」
「過酷な現実を、今すぐ受け入れる必要もない。誰にも劣らぬ試行回数と経験で、プロは己の腕を磨いてゆぬものですから」


夢破れたる少女のとなり、アリスはそっと座り込む。ひとつ跳ね飛ぶ黒い戦姫は、付き随うように其の膝に乗った。
涙に潤った指先と、その柔らかで小さな手が、静かにその従者を包み込んだ。その掌の中で、彼女は擽ったそうに微笑んだ。


「昔のわたしにとって、ホビーバトルは口に糊するためだけの方策でしかなかった。所詮、玩具は玩具だって思ってたわ。
 ――でも。気付いたら随分と、この子に育てられていたの。勝ち上がるためだけの道具だった筈のフヨウが、大切で大切で堪らなくなっていた」


「結局、わたしの話でしかないけれど。――もしかすれば貴女も、そうやって新しい輝きを、望外だったモノに見いだせるんじゃないかしら?」
「気休めに聞こえたら、ごめんなさい。けれど、これがわたしの本心よ」


みたびアリスは、なずなの顔を覗き込む。その表情に、冷酷さは宿らない。澄み渡った赤い瞳が、真っ直ぐに少女を見つめた。
157初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)14:19:50 ID:TrV
>>156

アリスの雰囲気や言い分が大切な友人と似ているからだろうか。
それとも、今は慰めてくれる相手なら誰でも良いと思ってしまっているからだろうか。
どちらにせよ、なずなは頬を撫ぜる指と、アリスの意外な告白を受け入れていた。

「すごいなあ。全部お見通しみたい。
 正直アリスちゃんがわたしと一緒だったっていうのは、ちょっと驚きだけど」

ああ、泣いたから何も見えなくなってしまった。
なずなは懐からスカイブルーのマグロが描かれたメガネ拭き――なんだこれ?――を取りだし、濡れたレンズを拭き始めると同時に深く息を吐く。
露わになった彼女の面立ちは、アイドルの姿として広く知られている可憐なもので。

「わたしも実は興味なんて無いんだ。ホビーバトルに。
 只どういうわけか勝てて、しかも皆が求めてくれるからやる。アイドル活動の踏み台になればそれでいいの。
 ――あ、これオフレコだよ。常識的に考えて言えるわけないでしょ?」

けれど吐露された本心は、ファンの幻想(きたい)を裏切るものだった。

「アイドルが未経験分野でぐんぐん活躍したら、見てる人も何かやってみようって思ってくれるかもしれないよね。
 気持ちが嘘でも誰かが元気になれるなら、それでとっても幸せだった」

「でもわたしは何も変わってない。本番でテンパるのも、泣き虫も、何も治ってない。
 才能も中途半端だし……というか、そもそもバトルが何故かできるだけで模型は全部つばきちゃん任せだし。
 挙句の果てに、関心がないから上手くやれてた勝負で負けて悔しくて泣いちゃうなんて、ほんとどうかしてるよ」

嘘を突き通すことも、望みのまま生きるために地を這うことも出来なかった少女は、ただ己を嘲る。
けれど――自分自身を語る中身を吐き出して、ゼロに近づいていくほどに、その瞳は少しずつ澄んでいって。

「ねえアリスちゃん。――今夜は、帰らないんだよね」

……で、こいつ、真剣なトーンで何言ってるんだ?
158アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)15:57:14 ID:bEk
>>157

堰を切ったように溢れ出るなずなの独白と自嘲を、静かにアリスは聞いていた。銀のかぶりを振ることもなく、頷くこともなく。
眼鏡を自ずから外した、涙に濡れる可憐な横顔。その双眸に静かな光が、少しずつ射し行く姿を見ていたから。

「変わらない、ねえ」

ただ、その言葉だけ。繰り返すように呟く。そうして最後の告解には、どこか当を得ない返事で応じて。

「まあ、この固いベンチで朝まで過ごすよりは、よほどマシでしょうから」

「お言葉に甘えさせていただきましょうか。――けれど、その前に」


「フヨウ。刀を、この指に」『――。はい、マスター』


――ベンチに座る、黒い戦姫。その目前に、アリスは己が白い人差し指を差し出す。一拍の沈黙を置いて、フヨウは腰に携えた刃を抜き放つ。
横薙ぎの一太刀が、生暖かい夜を裂いた。鬱陶しい潮風への訣別のようだった。そうしてその鋒は、アリスの指先を微かに掠めた。

直ぐに、指先から赤い血が滲んでゆく。白い指の腹に、紅色の一条が描かれる。溢れる血潮の雫が産まれる。
穏やかな微笑みを湛えながら、アリスは態とらしくそっぽを向いた。無意味で有意義な、くだらない独白を綴るため。


「あら、大変。不躾な従者が、わたしの指先を切ってしまったわ。――ほら。こんなにも、血が出ている。
 このまま放っておいたら、黴菌が入って膿んでしまうかもしれない。模型作りは、指遣いが命なのに。困ったわ」

「けれども斯様な粗相をした従者に、傷の手当てなど任せられはしないわ。またも何かを間違えて、傷咎めになるかもしれない」


どこまでも仰々しい言葉の羅列。しょせん全ては三文芝居。されど大根と呼ばわるには、余りにその膚は白すぎる。
――くるり、と機嫌よく身を翻して、アリスは振り向いた。夜闇を背にしてたなびくは、黒のフリルと銀の長髪。甘い香りと、血の香り。
混ざり合うのは、どこか退廃的なにおい。幼気な笑顔の中、しかし耽美に眇めたその赤眼で、じッと瞳の奥を覗き込む。


「そうだ、『なずなさん』」

「爪垢を煎じて飲む、とも言うでしょう。なればより尊貴なる血を、煮出しなどせず其の儘に飲めば――きっと、よい薬になるわ」

「――その口先で。この傷、清めてくださるかしら?」


指先の傷から溢れる血潮の雫は、既に弾けてしまっていた。鼓動に蠢く赤い肉は、見るものすべてを誘うように。
溢れた血は、既に人差し指の半ばほどまでを伝う。やがてそれは掌を這い、手首を色付け、ゴシックロリィタに吸われゆくだろう。
なればきっと、その前に。溶けて止めどないエリクシルは、かの塩辛く甘い劇毒は、きっと少女を"変えてしまう"から。
159初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)17:12:36 ID:TrV
>>158

「初対面でこんなダメな子のわがままに付き合ってくれて、ありがと。
 でもちょっと武器出すのは待ってて。バトルの筐体なら確かあっちに、――!!?」

アリスの余りにも突拍子のない行動に、なずなは絶句した。
痛くないのかとか、人間への傷害セーフティはどうなってるんだとか、高そうな服着てるのに大丈夫かとか。
ありとあらゆる疑問が衝撃とともに脳髄を駆け抜けていって――でもすぐに、それどころですらなくなる。

「く、口でって……綺麗なハンカチ、メガネ拭きの他にあるけど……。
 って、そんなんじゃなくて。なんでこんなことするのかな――痛く、ないの?」

『はぁ~~っ!!とうとう正体を見せましたね【検閲】女! ですが生憎、お姉さまは【検閲】ではありませんから!
 あなたの如き【検閲】の汚らしい割れ目に溺れる【検閲】はせいぜい破傷風菌ぐらいでしょう!』

(それとつばきちゃん、この子の言語データベースどーなってるの!?)

純粋に意図を測りかねつつも心配するなずな。上っ面の慇懃さすら捨てて激昂し、口汚く罵るコナユキ。
反応は対照的だが、どちらもひどく混乱しているのは同じだ。天才アーキテクトの呪術的思考についていけていない。

「あーっと。こういう時、確か取り敢えず手を心臓より高いところに……」

とはいえアイドルとして綺麗な衣装が汚れるのを見たくはないし、辛気臭い話をした負い目もある。
眼鏡をかけなおすと、なずなはアリスの手を取って掲げさせながら、垂れ落ちる血を自分の手で受け止めようとするだろう。
160アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)18:42:27 ID:bEk
>>159


「――ああ、そう……」


……暫し気取ったポーズのまま止まっていたアリスは、全くもって当惑するなずなの様子を見て、気の抜けたシニカルな笑いを浮かべる。
フヨウが彼女のからだを傷つけられたのも当然のこと。パーソナルAIデータをそのままに、制御系はセーフティ含めゼロから組み直されていた。
それは単に、限界まで無駄を削ぎ落とした高精度なセットアップのための行いではあったのだが――。


『大変申し訳ございません、マスターの行動はしばしば突拍子もなくて――困ったものです』


半狂乱の激怒を示すコナユキに、全くしおらしく頭を下げるフヨウ。命令に従った彼女でさえ、「それ」は理解し難いものであったらしい。
だが誰よりも居た堪れぬ心持ちなのはアリスである。精一杯の妖しい痴態を以って誘った彼女から、返って来たのは単なる戸惑い。
どれほどに甘い劇毒であれど、その味が分からぬのなら滑稽なだけ。まして、渾身に気取って差し出したひとくちであるのなら。


「……いいわよ、もう! っと、ホント貴女って、鈍臭いというか、にぶちんって言うか――」
「興が冷めたわ。帰る。適当にその辺のネカフェにでも泊まるわ」


――先ほどまでの落ち着き払った様子はどこへやら。出会った時と変わらないきゃんきゃん声で、好き放題になずなを罵りながら。
血雫を受け止めようとしたその掌を押しのけて、やけっぱち気味に自分の人差し指を咥え、アリスは思い切りにむくれるのだった。


「深夜も深夜なんですから、とっとと貴女も帰んなさい。拗らせたファンに攫われたって、わたし知らないから」


くるりと踵を返した彼女は、恐らく呼び止めても止まるまい。
やっと肩口に捕まったフヨウは、こんな別れであっても丁寧に礼をして、「さようなら、なずなさん、コナユキさん――」。
無愛想で身勝手な女王の代わりに、別れの挨拶を投げかけるのだった。東の水平線が白み始めて、長い夜の暁を告げていた。
161初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)19:33:43 ID:TrV
>>160

悲しいかな、初風なずなは「派」ではない清純派アイドルである。伝説の超ボクネン人とも目される。
無思慮に放った言葉がアリスのどこにどう響いたのかなど、全く理解らなかった。

「ま、待ってよ! 時間があるなら勝負して欲しいの!
 つばきちゃんと見たアニメだと、話したあと大体そういう流れになってたんだよ!?」

現れたときと同じくらい唐突に立ち去ろうとするアリスに追いすがるも、食事も睡眠も不足している身体は重い。
立ちくらみで動きが止まった数秒間に、二人の距離は大きく離れてしまった。

「アリスちゃんのおかげで、ようやく気持ちの整理の仕方がわかってきたの!
 〝みんなのアイドル〟であるために、『誰か』の夢を断ち切ってる自分がわかり始めたから。
 でもまだ完璧じゃない。だから確かめさせてほしいって。……ねーえぇー!!」

整備されたルールと個々人のスポーツマンシップ、そして何より自分自身の無関心が、なずなの快進撃を今まで支えていた。
だが狂戦士によって剥き出しの野望と敵意を叩きつけられ、女帝の鏡に己を映し出した今、全ては変わろうとしている。
届かなくても良い。ただ初風なずなという人間の核心を定義するため、彼女は叫んだ。
162アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)21:00:44 ID:bEk
>>161


「――――…………。」


叫ぶ声に、立ち去りゆく足が止まった。その懐に潜り込んだフヨウは、それ以上の言葉を発そうとしなかった。
ひとつ、彼女の肩口が上下した。それはきっと溜め息だった。少しだけ、甘い香りがした。

「ま、そうね」

――三たび、彼女は踵を返す。その表情には、激昂も媚態もない。冷然とした顔貌の中に、確かな闘志を宿すのみ。
不敵に笑う口元は王者のそれだった。戦うのであれば負けるつもりはないと、何も言わずに語っていた。

「焚きつけたわたしにも、責任があるわ。どうせ、まだ夜はあるもの」

「付き合ってあげましょう。――いいわよね、フヨウ?」『――ええ!』

その袖裡から飛び立つのは、完全武装したATD-X「フヨウ」。エアロパーツと装甲を纏い、アリスの肩に悠然と降り立つ。
くいっ、と挑発に指を曲げて、銀髪の女帝はバトルスペースへと歩いてゆくだろう。踏み締める足取りに、やはり躊躇いはないのだ。


「フィールドは貴女に任せるわ。挑みたいと思う環境で、挑んできなさい」
163初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)22:21:06 ID:TrV
>>162

「……やった! ありがとう、アリスちゃん!」
『はあ。かなり肝の冷える紆余曲折ありましたが気晴らしは成功ですか。――良いでしょう』

挑戦の受諾はなずなにとって想定外の収穫だった。完全に捨て台詞のつもりで叫んでいたからだ。
正直、実際に戦うとなると良いコンディションとは言えない。頭には眠気がまとわりつき、空腹も重く響く。
けれどこの好機を無駄にするわけにはいかない――必ず、掴んでみせる。

「じゃあ、わたしは筐体(このこ)に任せるよ。
 立った所がすなわちステージになる、それこそが理想のアイドルだもん」

なずなはアリスの対岸に立ち、スタート地点にコナユキをセットする。
格納庫《ドレスルーム》の役割を果たすアタッシュケースから取り出すのは、彼女たちの代名詞とでも言うべきエアリアルボード。
フライングユニット・実体盾・ウェポンプラットフォームを兼備し、機体の死角を大きく減らすそれは、しかし。
理論上の万能さと裏腹に、特異な空間把握能力に弛まぬ努力を掛け合わせねば乗りこなせない、まさに夢幻の如き武装。
――――なずなは、それをマニュアルモードで乗りこなすという離れ業を見せて今日まで来ている。

「えーっと、呪いのカラカラ砂漠。四方に設けられた各機のスタート地点を除く約8割が足を取られる砂漠です。
 ランダムに砂嵐が発生し、視界と操作性が悪化します。点在する大小のピラミッドに隠れながら進もう」

「――だって。うわー。まるで一面銀世界だね……いや、茶色いけど」
『お姉さま、準備はよろしいですか?』
「うん。それじゃ行こっか……アリスちゃん、フヨウちゃん、よろしく!」

アリスが了承すれば――勝負が始まり、両機は砂塵吹き荒れるミニチュアの砂漠へと舞い降りるだろう。
初期配置は四角形の平面マップに直すと、東北端と北西端のどちらかということになる。
164アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)22:46:04 ID:bEk
>>163

「――ま、当然のことよ。挑戦を受けて逃げ出すようじゃ、チャンプは務まりませんから」

ふン、と腕を組んで、威風堂々たる言葉。再び飛び立った黒い戦姫は、最低限のスラスター動作でスタンバイポジションに着地する。
VRフィールドが展開され、バトルスペースは砂塵吹き荒れる灼熱の荒野と化す。黄塵の中にあって尚、フヨウの機影は黒艶に輝いていた。

「ふうん。ランダムステージね――ま、一番実戦的ではあるわね。いい意気してるわ」

自分から「勝ち」をもぎ取りに行くなら、与えられたハンデは好きに使えと言おうとしたが。然しこれは「プロ」の戦いではないのも事実だった。
されどこれだけの視界の悪さでは、一度動き始めた高機動機を捉えるのは困難に違いなかった。その姿を見せぬまま、フヨウの挨拶が投げかけられる。

『度々の無礼、改めてお詫び申し上げます。――せめての謝意として、一切の手加減は致しません。どうか、ご容赦ください』


悠然とした言葉の中に込められた、確かな矜持と誇り。――だが。アリスの心境は決して、穏やかならぬものだった。


(――……あの"ボード"、「ディセンション」のヤツよね。この間見た時の彼女、オートマじゃあり得ないようなマニューバを何回も決めてた)
(改めてだけどまさかあの子、自動操縦切って全部マニュアルで操作してんの――? 何よそれ、人間物理エンジンじゃない……!)


「――だとしたって! やることは、何時もと変わんないのよッ!!」

「――フヨウ! プランK、ツェーン!」『イエス、マスター!』


そして、試合が始まる。マッチ内容は5分間のデュエルマッチ。ターゲットの撃破・または5分間経過時に残耐久値の多かったサイドが勝利となる。
――吹き荒れる砂嵐の向こう側から、数発の光条が飛来する。ATD-Xのベーシックな射撃兵装となる、小口径粒子レールガン。
喰らえば決して重い一撃でこそないものの、豆鉄砲のように無視できる弾幕でもない。先ずは、小手調べ。
165初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/09(土)23:14:23 ID:TrV
>>164

戦闘が始まると同時、粗い砂粒を巻き上げながら蒼の旋風が飛翔する。
実用性に乏しい分離機能をオミットし、積載量と装甲を強化しているとはいえ、エアリアルボードの根幹は原型機から変わっていない。
原作再現と対戦ツール的側面のバランスが著しく悪いと評された、悪名高いキット『遮那王エミリ』のそれから。

(5分の勝負だと、フヨウちゃんのエネルギー武器偏重ってデメリットはほぼ顕在化しない。
単純に向こうのほうが武器の取り回しが良いってわけだよね。……でも!)

砂のカーテンを突き破って飛来する電光の群れを確認すると、なずなは筐体側のマニュアルレバーに添えた手を動かした。
一発目、二発目の射線を左、右と舵を切って回り込むようにして避け、三発目は高度を上げて乗り越える。
だが相手はその動きを先読みしていたらしい。四発目の直撃軌道に、コナユキは吸い込まれ――。

「コナユキ、手元は任せたよ!」
『ええ、お姉さまのために!』

咄嗟にコナユキが腰を低く沈めた姿勢を取って体重を傾けると、ボードは呼応するように偏向ノズルを進行方向と垂直に吹かす。
――――ぐるり。ボードは鮮やかなバレルロールを決め、その『底面』の上を弾はすり抜けていった。

そしてこの奇抜な回避動作と同時、コナユキはバスターレーザーライフルの狙いをつける。
レーダーの反応にレールガンの発射方向を合わせて算出した敵の推定現在位置めがけ、逆さまの姿勢から――発砲。
着弾点を爆心地に水蒸気爆発を巻き起こす高出力の熱線が、アリスを穿たんと襲うだろう。
166アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/09(土)23:36:51 ID:bEk
>>165


「――――っ!?」


レールガンの連続射撃を、易々とコナユキは躱してみせた。いや、それ自体は決して珍しいことではない。
事実アリスもまたこの兵装は、所詮中距離戦におけるジャブのようなものと位置付けている。――だが、その「回避」が異常だった。
丁寧かつ大体な位置取り。4発目にフェイントまで入れたのに、それさえもサーファー顔負けのジャンピングですり抜けてゆく。
――久しぶりに、アリスは「ぞっとした」。この大会、初心者に紛れたダーク・ホースが、余りにも多く出場している。


(何よ何よ今のマニューバは――! アマチュアファイターが一朝一夕で出来る挙動じゃないわ、もっと常識的な避け方しなさいよ――!!)
(……予想外、てか、予想以上……!! 普通にプロで食ってけるじゃない、この子――ええ、こうじゃなきゃ面白くない!!)

「プランN-J! ツヴァイ! ドライスィヒ!!」『っっ、イエス、マスター!!』

然し。責め込まれたのなら逆上し、追い込まれたのなら叛逆し、強いられたのなら反骨するアリスの精神性に――却って、それが火をつけた。
お返しとばかりに放たれたバスターライフル。FCSによる偏差修正射撃をギリギリまで引き付けて、撃発と同時に切り返して回避する。
だが、反応が一瞬だけ遅れた。じり、と焦げ付くような音を立てて、黒い装甲を巨光が掠める。

(――やっぱこの粒子レールガン、パンチ力に欠けるわよね……完全なアウトレンジを避けるために、とりあえず載せてはいるけれど)
(そもそも上手い相手には当てさせてもらえないし、当てたところでリターンは少ない……わたしも積もッかなァ、バスターライフル)

(となると――。やっば撹乱からの格闘戦が、フヨウの本懐か……!!)

――握ったレールガンを放棄したフヨウは、その両腰から2刀の振動剣を取り出した。その耐久値、現在9割ほど。
転瞬。バックパックのフライトユニットから一斉に、12基ものオービット・キャノンが射出される。
自律攻撃兵器と呼ばれるそれらは無人ゆえの機敏な挙動にてコナユキを取り囲み、低出力電磁弾の一斉射撃を始める――だがそれは、決して「本命」ではない。
167初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/10(日)00:14:28 ID:wPh
>>166

さっきまでフヨウが立っていた場所は、今や大きく抉れて隕石のクレーターのようになっていた。
立ち上る濃い砂煙を見ると、思わず「やったかな!?」と叫びたくなる気がするけど、ぐっと飲み込んだ。
コンソールに表示されたフヨウの耐久値は、まだ殆ど削れていない。――健在も健在だ。

「揺り戻しが早い。忍者、の異名は伊達じゃないね。ヴァイオラちゃんに見せてあげたいな……っと!!」

フヨウの通り名に違わぬ運動性に舌を巻いていると、すぐに押し寄せる第二陣――12を数える浮遊砲台の反応を確認する。
僅かとは言え耐久値が削られた状態で〝ガン逃げ〟に敗けるのを避けつつ、布石を打とうという魂胆か。
砂塵に紛れながら、オービットキャノンはすでにコナユキの周囲をくまなく包囲していた。

(凄い。先を読んだつもりでいたら、更にその向こうに行かれている。わたし、今どこまで自分の考えで動けてるんだろう……)

世界に名を轟かせるプロの実力の一端を覗かせるような手際が、なずなに不安感を覚えさせる。
だが今できることは、仮令届かなくても食らいつくことだけ。これは、自分から挑んだ戦いなのだから。

「ツツジプラン、実行。踊ろうコナユキ!」
『――承知! その面妖な球、残さず撃ち落とします!』

そこからは、まるで流れるような空中演舞が始まった。
まずボードの進行方向で迎え撃とうとする3基のビットを、レーザーバルカンの弾幕で撃墜する。
ほぼ同時に両手で1枚ずつバズソーチャクラムを投擲。電気推進システムで軌道を曲げ、左右から迫る2×2基をブーメランさながらに迎撃。
同時、上方からの撃ち込んでくる3基を左肩のミサイルポッドで捕捉――破壊。
そして最後に、背後から痛打を加えようとする2基をインメルマンターンで翻弄し、上を取って右肩のミサイルポッドで討滅。
全てのオービットキャノンを撃墜したあと、先程後方に投擲して宙に浮かせたままのバズソーチャクラムを回収した。

「ありゃ。八割八分……やっぱり、積極的に切り込まないとだね」
『お姉さまはもとよりそのつもりかと思っていましたが』
「ふふ、バレちゃってたかー」

そして再び、フヨウの反応と自機の状況を注視。
いきつく暇もない超高速戦闘に臨む、少女と『妹』の姿は、心なしかいつもより楽しげに見えた。
168アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/10(日)00:39:23 ID:dtg
>>167

漆黒の翼から解き放たれた、無数の自律兵器。然しそれは流れるようなコナユキの所作により、瞬く間に撃墜されてゆく。
連射性能に優れている筈のオービットキャノンの殆どが、一射も撃てずに砕かれていく。あまりに異常な手腕だった。
――「攻めあぐねている」。若しもなずながその機微に気付いたのなら、アリスが少しだけ「焦っている」ように見えるだろうか。

(――うわ、えげつなっ。あの数のビット、エネルギー切れるまで無視すんのが普通なのに……)
(ものの数秒で全弾撃墜は、流石に予想外ね……。でも、距離は詰められたッ!!)

(こっからが難物……! この高機動型に、どうやって一撃を捻じ込んで行くかが問題!)
(――しょーがない、アレやるか!!)

フヨウは更に突貫する。フライトユニットの単発式イオンエンジンが甲高い唸りを上げて、うねるような神速の軌道を取りつつ。
オービットキャノンの全てが撃ち落とされたとはいえ、それは完膚なきまでの浪費ではなかった。少なくともコナユキに、なずなに、その処理のための時間を取らせることができた。
その隙にフヨウは距離を詰めていた。単純な機動性であれば、互角かやや勝っているかという状況。決して難しいアクションではない。――だが。


「フヨウ!」「マージン圧縮!」「『ムラサメ』、レディ!」「『フィンガー』、レディ!」

「――Wilco, マスター!!」



――――刹那。その一瞬に、フヨウとコナユキの距離が「消える」。
その目前に現れるのは、両手の直刀をそれぞれ袈裟に振りかぶった黒い神姫。繰り出される、乱れなき二つの太刀筋。
全身の姿勢制御ブースターを意図的に偏向させ、爆発的かつ瞬間的な推力向上として用いる。いわゆる「クイックブースト」という技術。

されど、太刀だけで彼女は終わらない。躱されようと躱されまいと、その掌は紫電に光り輝いていて――。
単なる格闘攻撃と見せかけた、内蔵パルス砲による二段攻撃。――五指すべてから放たれる閃光が、コナユキの全身を包もうとする。
169菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/10(日)01:19:51 ID:yvt

「うーん……うーーーーーーん」

「だからさー、フヨウのところに行って聞いてくれば良いじゃーん、菱華ぁー」

 大会参加者のために貸し出される、選手専用のホテルにて蓮見菱華は唸っていた。
 何故かというと話は簡単だ。先日のバトルにおいて、愛機である戦姫『アイゼルネス・カスタム』がほぼ全損と言えるレベルの損傷を負ってしまったのだ。
 具体的に言うと、下半身が切断され爆散。インコム二基は切断は愚か本体まで破壊され、バイザー。シールドも勿論、ライフルも破損しているという状況だ。
 取り敢えずアイゼルネス本体は潤沢にある予備パーツによって修復し、今は枕に寝そべってごろごろと寝転がりながら菱華へと時折茶々を入れている。

「だ、駄目だよ……フヨウちゃんもアリスさんも、多分私なんかよりよっぽど忙しい人なんだから、あんまり気軽に話しかけるなんて……」

「良いじゃーん、向こうが話聞いてくれるって言ったんだからさぁ」

 今、菱華が悩んでいるのは『アイゼルネス・カスタム』の強化案だった。
 機体の予備パーツは幾つも用意している。オリジナルのライフルやインコム等のパーツはシリコン型を取っているためレジンで簡単に複製できる。
 修理自体は問題ないが、どう強化するのが問題なのだ―――彼女が柔軟な発想を出来る人間ならばこれほど難航することもなかったのだろうが。
 問題は彼女の性格である。彼女は作品世界にのめり込み、設定を尊重し出来る限りその内側で創作活動を行う人間なのである。

「でも……その、は、恥ず、恥ずかしいし……」

「それが駄目なんだってばー!! もー、なんでバトルのときはあんなに元気いいのに、いつもはそんななの!?」

 その上、引っ込み思案で人見知りなのが足を引っ張っていた。
 菱華には考えもつかないくらいに強力なアークテクト、天才である『女帝』と知り合え、連絡先まで貰えたというのに。
 恥ずかしがって、或いは自分を誰かに晒すということに抵抗が、そして何よりそれによって『嫌われる』ことによる交友関係の断絶。
 そういうものが要因となり、結果として机の上には無数の、『アイゼルネス』と作中において同年代と少し先の機体群のデータがまとまりなく散らばることになる。

「うーん……地球圏での使用機体、っていうのも案の内ではあるんだけど……やっぱり月や木星辺りで改造を加えられたって設定も……。
 いっそ敵に鹵獲されたって設定にしても……」

「えーそれはやーだー!」

 癖毛の頭を抱えながら考える。
 今までは――――強大が過ぎる、余りにも初心者の身には相応しくない相手とばかり戦ってきた。
 『女帝』に、『蒼い閃光』。敗北も当然だ。仕方ない。だが、大会で戦っていくには、大会で勝ち抜くには、そういう訳にも行かない。
 技量の差は歴然だ。だがそれでも次は勝利しなければならない。ならば、今出来ることを。技量は一朝一夕では上がらない。
 ならば、少しでも機体のブラッシュアップを。徹底的に機体の完成度を――――テキストエディタに纏めた資料が、作られては消えていく。
170初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/10(日)01:23:54 ID:wPh
>>168

「っ、先に切り込んできたね!」

離陸し猛然と迫りくるフヨウ。閃光走る一瞬に、なずなは判断を下していく。
まず残されたマイクロミサイルポッド合計48発を一拍ずつテンポ差をつけて解放すると共に、発射後投棄。
飛行機雲が五線譜のように黄塵の舞う空を貫いて、噴射炎が踊る。
とは言えこれは所詮牽制の一手。ただ――爆煙と回避運動の強要が、相手の注意を少しだけ散漫にしてくれればいい。

『決着を望むなら、差し上げるまでです』

全てのポッドをパージすると、コナユキは腰に佩いた刀に手をかけ激突の瞬間を待つ。
ボードの上で90度近く身を捻り、空中を横滑りしつつ居合を繰り出せる姿勢。
旋回半径の短さとY軸移動の迅速さで、エッジの利いた航跡を描いて飛ぶコナユキと、見えない糸で引かれるように瞬発するフヨウ。
やがて対照的な軌跡をたどる二機のシルエットが交錯し――上空に、弾けるような金切り音が轟いた。

『せあぁぁぁ、……、ヤェェェーーーーッ!!』

奇っ怪な咆哮を上げてコナユキが振るった太刀は、ボードごと身体を回転させた勢いを載せて横薙ぎに振るわれる。
それはヴィブロブレードのうち一本の刃を根本近くで折り、二本目と鍔迫り合うことで旋転の勢いをようやく殺した。
だがこれも前振りに過ぎない。フヨウは自ら刀同士の噛み合いを打ち切り、必殺の一手を放つだろう。

「――来る! 機首限界まで仰角!」

WA-03M 《Finger》――――フヨウの切り札が、ついに姿を見せた。
凄まじい熱量の増大をディスプレイが示した刹那、なずなはボードを盾として利用するためその角度を90度近くまで跳ね上げる。
結局のところ、この行為は最終的に〝盾を投棄する〟ことにほかならない。
ものの数秒で強化プラスチックの空飛ぶ板は溶解し、紫電の奔流で喰らい尽くされる前にコナユキは空中に身を投げ出さねばならない。
純粋な飛行戦姫相手に、その選択は迂遠な降伏を意味する。が――、

『……、そのカラスの翼、貰い受けます!!』

必殺の一撃を打ち込むフヨウの背後に、不意にモーター音が迫る。
それは――ミサイルによる牽制を行っている間に、コナユキが予め〝仕掛けておいた〟二枚のバズソーチャクラムだった。
自動操縦によって持ち主の「手元」に戻ろうとするそれは、首尾よく行けば背後からフヨウを切り刻むだろう。
フライトユニットを、骨格を、そしてあわよくば、――動力部を!!
171アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/10(日)02:06:12 ID:dtg
>>170

初段として放たれたミサイル群は問題なく回避した。正面角度からの誘導弾は、一度軸を逸らしてしまえばもう当たらない。
――その白煙を縫うように放たれる円月鋸をも、アリスは確かに見切っていた。だが弾幕の中に躱したものと、フヨウは突貫を止めなかった。

打ち合わせられる鋼の刃。暫しの鍔迫り合いが、度の過ぎた火花を散らす。――それでも単純な強度では、一振りの太刀に押し勝てる筈もない。
剛性を超えた刃が根本から破断する。右腕部ブレード、全損。それを好機として、フヨウは秘めたる本命を放たんとする。
自らその柄を手放せば、込められたままの力は多少の平衡感覚を狂わせるに違いなかった。これが、「第一の誤算」。

『――――おおおおおォォォォツッッ!!!』

なずなの卓越した操縦センスは、突如として失せた鎬の行く先さえ問題としなかった。引き上げられたフライングボードの船底が、縮退パルス速射砲の苛烈な乱撃を耐える。
それでもその表面は決して長くない攻勢のうちに融解を見せ始め、これを破り切れば無防備なコナユキの素体だけが残るのみ。
――アリスは、己の勝利を確信した。これが、「第二の誤算」。


「――しま、っ」


コナユキの放った円月鋸は、その掌に帰り来るもの。それをアリスは理解できていなかった。
装甲化さえ施されていないジュラルミン翼が引き裂かれ、タービンユニットが刹那の内に削り割られる。急激に減少してゆく、フヨウの耐久値。

(――でも、それは……相手だって、同じこと、…………!!)


――――――これが、「第三の誤算」。


フライトユニットの自爆プログラムを10秒後に設定。円月鋸がその背部ハードポイントを破壊すると同時に、アリスはそれを起爆させようとした。
耐久値の勝負では、円月鋸の一撃に大きく遅れを取った。だとしてもこのまま「Finger」を撃ち込み続けていれば、程なく相手に耐久値の優位を取れるはず。
――それが、誤解であった。「継続的火力」において、恐らくバズソーにFingerは優っていただろう。
だが「瞬間火力」によって先行したダメージレースにおいて彼女の選んだ兵装は明白に負けていた。故に。




     電脳空間に響き渡る、「タイムアップ」のコール。
       「コナユキ」の残耐久値、5964。「フヨウ」の残耐久値、――5899。
172初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/10(日)02:32:13 ID:wPh
>>171

瞬間を数えるごとに繰り出される一手、また一手。その全てが踏み外せない致死のステップ。
刃金と刃金がせめぎあい、破壊の稲妻と解体の火花が爆ぜる。
息詰まるダンスを少しでも長く踊り、少しでも優位に立とうとしながら、二人と二機は互いの全てを尽くす。

(興味が無いと思ってたのに、わたしは他の何かである前にアイドルだと思っていたのに)

(やっぱり、あの悔しさは嘘じゃない。確実に〝入れ込んでる〟んだ。じゃなきゃ、本番で頭は真っ白にならない)

(それに――ああ、なんてことだろう。仕事のため、って気負いから解き放たれて、本当にやましいことなく自分の全てをぶつけるのが)


「――――――すっごく、楽しい!」


――不意に砂漠は溶けて消え去り、砂嵐吹き荒ぶ炎天は剥がれて静かな初秋の夜空が顔を出す。
バズソーと紫電掌が稼働停止し、二機はもつれ合いながら遊技台の上に転がる。

『お姉さま、やりました!』
「……ん?」
『ルールに助けられる形ではあります。本当に僅差に過ぎません。ですが――私たちは、勝ちました』
「えっ、あっ。……えぇぇえぇぇ~~っ!!?」

筐体のリザルト画面には、お互いに完全解体をなし得ないまま決着したタイトな削り合いの決着が示されていた。
陶酔と充足、そしてどっとこみ上げてきた疲労感と眠気に包まれていたなずなは、それにコナユキの指摘を受けてから気付いたらしい。
つんのめるように液晶を覗き込む。――オーバーフローした感情を、叫ぶ以外の方法で処理できそうもなかった。
173日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/10(日)02:56:56 ID:a5w
>>108
 
「え、えぇ、まあ……フルスクラッチ、ではありますね」
 
青年が今手に取っている機体は、パーツの一つに至るまで全て「日向製作所」により作られたものではあるが、その製作過程に武士は関わっていない。もし関われたならばこんなぶっ飛んだ代物にはなっていないだろう。故に出来映えやコンセプトを誉められても別に嬉しくないのだ。
目を輝かせた青年へ、奇異の目を向けつつ箱へ梱包材を戻しながら返すのは濁した返事。
 
「……あっ、じゃあ、これどうぞ。来るときはご連絡下さい。
 ただ、普段作ってるのは重機なんかの部品ですから、期待に添えるかは微妙なところですが」

お邪魔したいという言葉に、営業マンの習性か、慣れた手つきで名刺を取り出し差し出す。
メールや携帯の連絡先と共に「日向製作所 営業係 日向 武士」と記されているだろう。
 
174マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/10(日)14:54:29 ID:JnU
>>173
「いや、凄いと思うんですよコレ。いやー、めっちゃ手ぇ込んでるんだろうなー。ボクも自作してみたいなー」

こう語るマキトも大手企業の販売するパーツを使用している身、自家製品に関しては全くの素人同然。
語れる部分がコンセプトや外観程度しか存在しなかったからこその言葉だろう。すれ違いは否めない。

「おおう……、人生初の名刺……。なんか一気に大人の階段駆け上がった気分だ」

予想外の名刺に、思わず身体を萎縮、へこへことした態度で名刺をがっしりキャッチ。
一般学生にとっては初の経験。思わず受け取った名刺に視線が下がる。しばらく舐めるように凝視。

「ご心配なく。ボクは工場見学と名の付くものは大好物なんで。
 今度大型連休入った時にぜひとも立ち寄らせてもらいますよ」

フットワークの軽さは学生の利点。後日電話連絡をするや否や、すぐにでも製作所にまでやってくることになるだろう。
大きめのリュックを背負い、泊まり込みでもする気で意気揚々と製作所のドアを叩く青年が。

「おっと、もうこんな時間! そろそろ戻らなきゃ遅れてしまう!
 じゃ、お兄さんも頑張って! お互いにいいバトルしましょーねー!」

話題も弾む中、ふと腕時計を確認すれば、慌てたように踵を返してその場を後にする。
リュックを抱えてドタバタと走り去っていく背中が、人ごみの中へと消えていった。
175アリス・リリエンリッター◆.9ydpnpPps :2017/09/10(日)17:44:29 ID:dtg
>>172

「う、そ」


張り詰めた唇から溢れた言葉は、きっとアリスの意したものではなかった。
乱れ咲く閃光の嵐は、ようやく決着を見た。VRフィールドが夜闇に消える。
飛翔機能を失ったフヨウは、辛うじてフィールドの素地に着地して――片膝を、ついた。

タイムアップによるTKOというのを、彼女はほとんど経験したことがなかった。徹底的な攻勢特化の戦闘スタイルが齎してきたのは、先行撃破・先行撃墜のどちらかの決着のみ。
5分「も」あるのならば、試合時間をそもそも気にする必要がなかったのだ。膠着性の高機動戦は、彼女にとって不利に働いた――それが、アリスの誤算のすべて。

震える手で己の戦姫を包み込み、静かにその懐へと仕舞う。そして彼女は空を仰ぎ、両目に掌を押し当てて、ひとつ息を吸って――。

「――……負けだわ」「……ああだこうだと言い訳をするつもりはない。わたしとフヨウの、負け」

――ふっ、と、息を吐いて。もう一度なずなへと見せる表情は、諦観にも似て、しかし清々しい疲労の笑顔。
負けてはならない筈の相手に、確かな敗北を喫したこと。心中の整理ができているはずもなかった。昂ぶる思いも、確かに彼女にはあるはずだった。なのに。

「完全に、想定外だった。……色々とね。貴女がここまでやれるだなんて、思ってなかった。ごめんなさい」

「でも不思議と清々しいの。泣きたいくらい悔しいけれど、なんでかな、――。」
「貴女たちと今一度、戦いたいって気持ちばかり、逸っているの。初めてよ、こんなの」

「ファイターとして、わたしが何をしていくべきなのか。少しだけ、解ってきたのかもしれない」

    真っ直ぐな瞳でなずなを見つめ、差し出されたちいさな掌は、握り返されることを望んだもの。
    「ありがとう」と言葉を返す。チャンプでもない、女帝でもない。ひとりの少女として、屈託ない笑みを浮かべていた。


「本選で待ってるわ。敗退なんて許さないから。
 ちゃんと勝ち上がってきなさい。絶対、絶対、約束よ」

「――さよなら、なずな。また、会いましょう?」

 そして再び、彼女はその場を去ろうとする。夜が明け初めて、活気付き始めた街中へ、人混みに紛れゆくように。
 傷だらけになりながらも肩口に立ったフヨウが、主人と同じ穏やかな微笑みと共に、別れに頭を深く下げた。
176Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/10(日)21:12:47 ID:DVk()
WHBT会場には大会競技場以外にも来場者に向けた様々な施設が存在するが、その中の一つにホビーバトル体験バトルフィールドというのがある。
これは初心向けに気軽にホビーバトルを楽しんで貰うことを目的としたフリーバトル設備であり、乱戦ルールが適応された大型フィールド内では沢山の機体が縦横無尽に入り乱れる。
バトルに使用する模型に関しても試供品という形で幾つもの機体が用意されており、今まで全く模型に触ったことがない者でも問題なくバトルに参加が可能となっている人気ブースであるが。

 
ーーーその異変は数分前、唐突に生じた。
その元凶となったのは二機のホビー。試供品としてあらかじめ用意され、この瞬間まで初心者の子供達に使われていた『闘機』と『鋼獣』。
その二機の“暴走”によって、今まで平和であったバトルスペースは突如として混乱の渦に落とし込められた。


『な、なんだなんだ!?フィールドからログアウトできない!!』

『機体が勝手に動いてるの!?なんで、なんで、言うこと聞いて!?』


暴れる一機はサメ型の鋼獣、もう一機は侍風の闘機、どちらも市販キットそのままの機体であり完成度も並、決して特殊な武装も機能も積んでいない筈。
にも関わらず二機は市街地を模したフィールド内にて他の機体を圧倒し、それでいて操縦者の制御を離れて暴走を繰り広げていた。

機体が勝手に暴れるなんて話、今まで聞いたこともないだろう。ましてや暴走を引き起こすような機能を搭載した機体でないにも関わらず。
そして何故かバトルフィールド内に生じたもう一つの異常、ログアウト機能の停止によってフィールド内に残された機体は檻の中に閉じ込められたも同然の状況だった。
初心者がメイン層であるこの施設において、暴れる二機に対抗できるだけの機体と技術を有する者がいる筈もない。故に暴走する機体から逃げ続け、壊される瞬間を待つしかない。
けれどもそれは耐え難い恐怖だろう。この施設には自分で作った機体を持ち込んでいる子供だって何人もいた。その機体がこんな状況で一方的に破壊されるなんて、それはきっと苦痛に他ならないから。


『誰か………誰か、これを止めて!!』


スタッフも努力はしているが、バトルシステムそのものを停止させることはまだ困難なようだった。その理由もまた、この異常に起因するものかどうかは不明だったが。
けれども、この混乱をすぐにでも止める方法なら存在する。幸いにもバトルシステムは退室は不可能となっても、入室は未だ可能だったのだから。


さあ、もしこの混乱から皆の機体を助けたいのなら、
この戦場に飛び込み、そして暴走する二機を叩き潰せ。
177天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/10(日)21:32:40 ID:HYm
>>176

 周囲に蒔き起こる“どよめき”。
その混乱とした状況に偶然と居合わせたショウは、混沌とした渦に先に意識を送るだろう。
そして、“暴走”した二機の機体の様子に気付けばその場を駆け出し、有無を言わさずに“乱入”してしまうのであった…。

「駆けろ!プロトユニコーンッ!」

 雄々しい一本角を携え、辺りを圧倒する程の神々しい威圧感の四足歩行の灰馬の一角獣が重々しく佇み、一本角からは<鋭く迸る電流>が戦闘準備完了と言わんばかりに角に集中するだろう。

「くっ、そぉ… どうすりゃ…ッ!」

 この二機を止めるなら勿論、動けなくする他無いだろうが無論“壊す”事も考慮しなきゃならない、そうしないと被害は増えるだろうけど
機体の主は悲痛な声で「止めて」と伝えるのが聞こえる。

しかし、先に手を打たなきゃこちらがやられる。そんな思いを胸に秘め戦いに赴く。
178深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/10(日)21:38:46 ID:z0m
>>176

一般客解放型のフリーバトルスポットを取り囲み朗らかな声を上げる人々のなか、少年は鋭い目つきでそれを見守っていた。
強豪チームのジャージに袖を通し、その上着ポケットに両手を突っ込んで立つ。

(勝ち上がるヒントになるかと思ったが……まあ、大会のほうを見てたほうが有意義だな)

息抜きにはなったが、と思いながら傍らのエナメルバッグを肩にかけその場を立ち去ろうとしたとき。
なにやら困惑の色の混じったざわめきに、何事かとバトルフィールドに目を向ければ。
そこには、先ほどまでとは打って変わっての状況が広がっていて。

「なんだこれは、どうなってる……?」

困惑しながらも体は考えるよりも先に動いていた。
人ごみをかき分け筐体に駆け寄り、バッグから己の愛機を取り出す。

「乱入システムは……生きてるな、よし、いける」

呟きながら機体を筐体にセット、続く動きでモノクル型ゴーグルを取り出し左目に装着。
大型恐竜、ティラノサウルス型鋼獣。彼の愛機、タイラントレックスがフィールド内に飛び込んだ。

「――――大丈夫。」

静かに。しかし周囲の恐怖も己の戸惑いも鎮めるように、力強い声を張る。
まずはこの場に居合わせた子供たちへ向けて。

「大丈夫だ。動かせる機体はフィールドの端のほうへ動かしてくれ。
 それが難しければ周りの手を借りて。
 アクシデントにあったそこのふたりはちょっと我慢していてくれよ。すぐに終わらせる。
 大丈夫。あの二機は―――この俺のタイラントが引き受けた。」

言い終わるころには戸惑いも消えて、自信を漲らせた強気な台詞が飛び出す。
その言葉を裏付けるように、タイラントレックスも低く唸り声をあげた。
巨大な体格は背部アームに装着されたシールドユニットによって威圧感を増し大きな岩のよう。
普通の敵ならば威圧という初撃ともなろうが、果たしてこの敵には通用するものか…?
179菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/10(日)21:46:29 ID:Z71
>>176
 初心者ブース、なんとも初心者の自分には打ってつけの場所であると喜び勇んで入っていったのがついさっきの話である。
 いざ向かってみれば大勢の初心者達が試供品の機体や、作りたての素組模型を使用して交流しているのが見えた。
 さて、その輪の中に入ってみよう――――と思っていたのであるが、どうにも自分と他の初心者たちの間に大きな壁があるように感じていた。
 具体的には、自分の機体は全塗装から機体の汚しにチッピング、筋彫りに大量のマーキングデカール、オリジナルパーソナルマークに一部スクラッチ。
 見事なまでに改造の塊である。最もこれは引きこもり時代に一人でちまちまと作っていたもので、バトル自体は本当に初心者であるのだが。
 どうにも自分が歪に感じて輪に入りにくく、結局愛機を肩に座らせて、休憩所のベンチでいちごオレを飲んでいるだけに留まっていた。

 バトルバトルと自分を急かす愛機、アイゼルネスに何度も謝罪をしている最中のことである。
 何なのかを即座に掴むことはできなかった。大多数の野次馬と、菱華は全く同じであった。
 阿鼻叫喚の中、何となく掴んだ情報を頭のなかで整理すればその輪郭は浮かび上がってくる。
 どうやら、暴走した機体が此処にいる初心者達の機体を壊し回っているらしい。ログアウトも出来ず、対抗手段が無く、ただ為す術無く壊されていくホビー達。


「――――こんなのはバトルじゃない!!!!」


 叫んだのは、アイゼルネスの方であった。
 何よりバトルを愛している彼女にとって、一方的な蹂躙など耐え難いものであった。
 バトルとは、あくまで対等に、全力を尽くして戦ってこそ、面白い。だからこそ、悔しいという感情すら糧になるのであり。

「行こう、菱華! あれを止めよう、私達なら出来る!!!」

「……うん、分かったアイちゃん。あれくらい、止められないと……」

 バトルフィールドへと駆け出す。乱入システムを起動させて、アイゼルネスは戦闘状態へと移行する。
 ビーム・ライフルを握り締める。バイザーが目元を覆い、モノアイが蒼い光を灯し、残光を散らしながらブースターを噴かしていく。


「アイゼルネス・カスタム、出る!! 敵はぁ! 何処だぁ!!」
180Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/10(日)22:07:08 ID:DVk()
自らの機体が壊されるのをただ待つしかなかった子供たちの瞳に、その登場は果たしてどのように映ったのだろうか。
雄々しき灰馬、唸る恐獣、飛翔する戦姫、三者は三様にして、暴走する二機に対峙する。


『……………ーーーーー?』

逃げ惑うのではなく、立ち塞がる敵の出現に、暴走機達はその眼を貴方達に向ける。
その瞳に感情は宿らない。AIであるならば、感情はなくても当然なのかもしれないがーーー其れでも尚、その瞳は背筋を凍らせるほどの冷たさを湛え。
そして、鮫型の鋼獣が咆哮を上げる。侍型の闘機は両手に日本刀を構え、ゆらりと戦闘体制へと移行する。

ーーーーーホビーの性能はその完成度に依存する。
そしてこのブースで貸し出されていた機体である二機の完成度は、お世辞にも良いものとは言えないものだった。
模型作成が得意という訳でもないスタッフが組んだ、塗装もゲート処理もロクに終えてない機体、そんなものが脅威になるなんて通常はあり得ない。

あり得ないーーーーにも関わらず、貴方達はその二機は危険であると直感する。
それはここまでに破壊された一般参加者の機体の惨状を見れば、一目瞭然のことではあるが。


『G——GAAAAAAAAAAAaaaaaaaa!!!!!』


鮫型鋼獣“ディープシャーク”、強靭な顎と各種弾頭を搭載するVLSを主兵装とする海戦型鋼獣。
侍型闘機“烈華・甲型”、装甲と遠距離兵装を犠牲に圧倒的な機動力と格闘性能を手にした陸戦型闘機。

その二機は今や貴方達を最優先で撃破すべき敵と見定めーーー次の瞬間“ディープシャーク”の背面VLSからミサイルが一斉に発射される。
それはまるで雨のように貴方達へと振り注ぎ、この戦闘の開幕を告げる合図となるだろう。
181天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/10(日)22:19:20 ID:A4M

>>180
「……この“機体”! エンジさん! こ、これ一体どういう事なんですか!?」

 新たに二機の乱入に戸惑いを隠せず勢い良く隣を振り向けば“見知った顔”を見付けるや、否や。誰もが知りたがってる疑問を口にするだろう。
此度の暴走の件の解を知りうる者はこの場にいないのでは無いか。…そんな疑問を考える暇は無い程に動揺していた。


「……っぅ! お、俺の雷撃で暴走した機体のCPUに電気信号を送り強制的に動きをシャットダウンさせます!」

 周りに呼び掛ける様に戦略を伝えるがそんな事は、可能なのか…―――しかしそんな事を考えてる暇は無いッ!
迸る電気が角に一点集中し、僅か数秒後に一本角が眩く輝く程には閃光するだろう。

  エレキトリック チャージ
「電撃を喰らう一本角!」

 ーー戦いの狼煙は切って落とされた。

 灰馬が駆けると同時に、四脚に仕掛けられたバーニアが噴射し更に加速度を挙げ、ミサイルの弾道を予測すれば器用に避ける。

 ミサイル着弾し黒き煙幕が広がる中で“空に”飛翔する機体が目に写るだろう。
“ユニバーニア”と呼ばれるユニコーン専用のパーツには、バーニアによる宙を駆ける想定もされておるが長くは持たないだろう。


ーーー光輝き美しく、空を駆ける姿は正にユニコーンと呼ぶに相応しい。

      エレキブラスター!
「放てッ! 電撃砲ッ!」

 ユニコーンが頭を振れば一本角から放たれた直線的な蒼白い電撃が“ディープシャーク”に向かって襲い掛かるだほう
182深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/10(日)22:27:10 ID:z0m
>>180

さて。意気込んで突入したはいいが、周囲を確認してみれば。

「市街地フィールドか……」

市街地フィールドは障害物が多く、また大型マシンでは通り抜けるのも困難な裏路地などもある。
勿論空戦機から身を隠すのに便利、という利点もあるのだが、あの2機が相手では……

(鮫のほうはまだいいが、侍のほうと対峙するとなるとちょいと不利かもな。まあそうも言ってはいられないか)

邪魔となればビルなどなぎ倒してしまえばいい。そんな物騒なことを思いながら、エンジは敵の動きを待つ。

「なんだ……?」

戸惑いとは別に胸がざわつく感覚。
ホビーの性能はその完成度に依存する。そんなものはこの世界の常識だ。
いかに卓越した機体操縦スキルを備えていても、いかに高度な知能を持つAIを搭載していても。
あんなゲート跡すら残っていそうな機体が、この深山エンジの脅威たるなどと。

「――――あり得ねぇ!」

叫ぶ。同時に、シールドユニットを展開。降り注ぐミサイルの雨を、2枚の盾を構えることでやり過ごす。
回避を捨て、盾で全てを受け止める。それこそが『タイラント・レックス』の機体コンセプトだ。

爆発と灰の煙が上がる中から、仕返しとばかりにミサイルが放たれた。
ミサイルは敵の鋼獣と闘機を分断させるべく、それらの中心位置をめがけて飛来する。
敵が2体、味方は3体。ならば分断し、2vs1の状況を作り上げる。片側を手早く仕留めるのが定石だ。
183深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/10(日)22:31:14 ID:z0m
>>181

「知らねえよ!勝って運営に問いただせ!」

実際、スタッフも対応に追われていたのを見ると現状は完全にアクシデントだろう。
運営に聞いても調査中だとかお茶を濁されるのがオチだろう、とは思うが。

「一応分断目的にミサイルばら撒いた、頼むぞ…!」

とりあえず今は互いにできることをしよう、と声をかけるのだった。
184ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/10(日)22:37:45 ID:r4x
【───……ホビー暴走事件の前日】

「うーん、盛り上がってるねえ」

開催された大会予選、予選用のアリーナでは連日ホビーバトルが繰り広げられていた。
ここはその中でもシンプルな1vs1用のルールでのバトルフィールド、それだけにバトルに興じる人数も多く様々なホビーを見ることが出来る。

さて、アリーナに来たはいいがやはり人でごった返している、この中では対戦相手を見つけるのには事欠かないだろう。
ジョセフはそこら中で繰り広げられるバトルを眺めながら、肩に相棒のホビーを乗せて歩いていた。

「え?『相手を探さないのか』って?」
「そうは言っても、皆面白いバトルをするからさ、ついつい見る方に気がいっちゃって……うんうん、分かってるよ、ちゃんと相手を見付けなきゃね」

肩のホビーは何かを発言したりはしない、まるで一人芝居か演劇のように会話を交わしながら彼はやはり対戦相手を探す風でもなく歩き回る。
185菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/10(日)22:47:19 ID:Z71
>>180>>181>>182
 ぞっとする。射抜くような、或いは殺意かと見紛うかのようなその双眸。アレらは正しく、最早まともな機体ではない。
 あれだけの……言い方は悪いが、あの程度の出来でこれほどの戦闘が何故できる。同じく初心者の機体達を、こうも一方的に蹂躙できる?
 本当に……ただ暴走しただけなのか? 湧き上がる疑念を、取り敢えずの戦場の熱狂で押さえ込みながら。

「菱華、やれる?」

「うん……大丈夫!」

 背部バックパックに搭載された二基の有線誘導式援護装備を展開。
 降りしきるミサイルに対して、既に周囲の他機体が対応できているのは確認している。ならば此方は此方で対応させてもらうのみ。
 相手をするのは自機に影響がある分だけでいい……インコムを用いて、一つ一つを撃ち貫き、自機へと着弾する前に爆発させる。

「……はぁ、はぁ」

「ありがとう、おつかれ菱華――――私もぉ!!」

 流石に、それだけのことをすれば相応の緊張と疲労は必然であり。既にそれなりの疲労を負いながらも、菱華は常に変わりゆく戦場を思考する。
 恐竜型の鋼獣が敵機二機の間に向けてミサイルを放った。なればそれに倣ってと、アイゼルネスもそのミサイルと同様に対艦ミサイルを計四発連射する。
 片方は近距離と遠距離両方に対応した万能型に近い性能をしている、一方は近接戦闘に特化した攻撃的な機体。
 メタを張れるのは烈華の方だ。ただ、ディープシャークの相手も不可能ではない。アイゼルネスも万能型に近い機体だ。であれば……。


「片方は私達に任せて下さい! お二人は、連携して先に片方を!!」

「お知り合い同士なら、其の方が都合がいいじゃん? 早く、敵を、選んで!!」
186リア◆VguNaE5hPI :2017/09/10(日)22:54:42 ID:TIk
>>184

WHBT会場、まだ本戦でなく予選であっても規模が規模だけに多くのファイターがアリーナにごった返していた。
つまりは激しく人混みが出来ているという事で、不慣れな人間では試合の緊張も相まって大きな不安を感じるだろう。

「あの……あっ、すみません!
わわ、ごめんなさい~っ!」

ましてや金髪碧眼といかにも外国人といった子供が、着物で重箱を抱えて時折人とぶつかっては大袈裟に頭を下げていれば尚更衆目を浴び
それは当人にとってより大きな戸惑いを与えていた。

「うぅ……私はちゃんと決闘できるんでしょうか……
お父様についてきてもらえば……いや、駄目です!
やっぱり私1人の力で乗り切らなくては……!」

1人で落ち込んだり奮起したりと感情の波が忙しく上下する少女は、
筐体の周りに狙いを定め標的を探し求める。
すると、目につくのは肩にホビーを乗せた大人の男性。
地元ではあまり見かけなかったが、都会ではああいったスタイルが主なのだろうか。
理由はともかく、一度目についたのは事実。
悪い人でもなさそうとあればこれも因果の巡り合わせ、ロックオンしたかのように男性の元へと駆け寄り

「あの、そこの殿方!
私と……その……決闘してください!」

まるで恋文を渡す学生のように照れを見え隠れさせながらも深々と頭を下げ、決闘を申し込んだ。
もはやなりふり構わぬカミカゼ・アタックの様相、勇敢と無謀を履き違えたとはこの事、と後に彼女は語った。
187初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/10(日)22:56:21 ID:wPh
>>180

空を埋め尽くさんばかりに斉射された垂直発射ミサイル。
その一塊の群れが、花に誘われた蜂のように本来の射線を離れ――ややあって、高空で一斉に誘爆した。

もしミサイルが健在であれば進んでいたであろう延長線上には、きらきらと光る白い航跡が刻まれていた。
それはホビー用のチャフとフレア――機体の反応を欺瞞し、誘導弾を誘惑するための装備がばら撒かれた痕跡に他ならない。
伸びやかで眩い線を更になぞっていけば、青白い噴射炎が煌々と燃えて。
ブースターと装甲の塊のような〝エアリアルボード〟と、それを乗りこなす蒼い戦姫の姿が仮想の陽光に映える。

「閉じ込めらてる子多いなぁ!? 機材復旧まで時間稼ぎって話だったのに、ちょっとやばいんじゃない?」
『後でインセンティブの交渉をしましょう。お姉さまは過小評価されています』
「……や、お給料はこの際どうでもいいよ!」

一方通行の戦場に降り立った四機目のマスターは、現場判断で駆り出された〝コンパニオンガール〟らしかった。
よりによって何故そんな人選を、と思って振り向いたなら、きっと理由が分かるだろう。

彼女はピンクのオーバーオールに白い作業着、そしてポニーテールがひょっこり顔を出すキャップという装い。
愛らしい顔立ちと栗色の髪が醸し出す、小動物的な雰囲気。
つまるところ、朝のTV番組に登場する『バトルおねえさん』初風なずな――その人だった。
188深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/10(日)23:01:33 ID:z0m
>>185

菱華とその愛機からの声を受け、ここで味方の機体を確認する。

ショウの機体は先日見せてもらったユニコーンのプロトタイプで見るからに高機動型。
そしてもう一方は……カスタマイズによってバックパックなどに変更が見られるが、素体は『アイゼルネス・クロイツ』とみて間違いないだろう。
となれば―――

「なら烈華のほうを頼む!そっちのほうが相性いいだろ?
 こっちもどちらかというと鮫のほうが得意だし……」

と、ここでさらなる乱入者(>>187)を認識。

「数的にも収まりがいいしな!ひとまずその作戦でいこうぜ」
189Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/10(日)23:11:57 ID:DVk()
『————GGAAAAaaa!!!!』


一角獣の突進を鋼の鮫は真っ向から受け止める。放たれたのはディープシャークの兵装の一つである刃と化したヒレ。
横薙ぎに放たれた刃が角と衝突し、火花と閃光が迸りーーーーー次の瞬間には大きく身を翻した鮫の尾ビレが一角獣に向けて放たれる。

もし直撃したなら、或いは防御に成功しようとも、その機体は一気に地上へと向けて吹き飛ばされることになるだろう。
そして偶然か、それとも意図的か、吹き飛ばされた先はタイラント・レックスが構える場所でありーーーこのままでは二機が衝突することになる。


『…………———————!!』


同時に鋼の侍が地を蹴る。スラスターを噴かし跳躍すれば両手に構えたその日本刀が煌めく。
そしてーーーー剣閃が幾重にも瞬いた。二機の分断を目的に放たれたミサイル群をその刃は、尽く斬り堕としてみせた。

烈華・甲型。近接格闘性能を極限にまで突きつけた本機であるからこそ可能な芸当。
武装が刀のみであるかた、迎撃も刀によって行う。その基本性能は確かに恐ろしいものがあったが。
それでもーーーー基本性能だけで、あの完成度で。ここまでの絶技を揚々と熟すことなんて、果たして本当に可能なのだろうか。

そして烈華は再び地面に着陸すると同時に、跳ねるように地を蹴って加速を開始。
一拍にてアイゼルネスへと肉薄したなら、そのボディに向けて無慈悲な斬撃を浴びせようと刀を横一閃に薙ぎ払う。
190天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/10(日)23:22:39 ID:ifi
>>189

「まだやれるよな…プロトユニコーン!」

 角の光が弱まり、蛍の輝きの如く再度角に集まっていくがその間の無防備を晒す訳にもいかず、暫し滞在していると予期せぬ襲撃がプロトユニコーンを襲い掛かり
天駆ける灰馬は空を降る様に地に堕ちるだろうが、ーーーまだ闘(や)れる

「り、了解」

 “それ”の答えは、エンジの指示を聞くまでも無く答えは解りきってる事だ。「答えは解らない」が答えだ。
すると、隣から菱華から提案された案をエンジが応えたのを頷く事で同意する。

「…! 闘機の方は任せたぜ! 戦姫のねーちゃん!」

「ん…!ってあーーっ!/// なずなちゃんだ!! サインしてく、いや、そんな場合じゃない!!!」
 
 思いがけぬ助っ人に仰天し呑気にもサインを貰いに行こうとするが『そんな場合じゃない!』

 ホビーが大好きなショウにとって、なずなは神アイドルに等しい程に崇拝しており熱狂的なファンなのだが流石に自重は出来る。物凄い残念そうに唸る。

 そして偶然なのか必然なのか、タイラントレックスの側に下落すると、改めてエンジの指示に従い図体のデカい“鮫”を狙いを定める地をよろめきながらも駆けずり回る。

「へへっ!面白ぇ! エンジさん行きましょう!
 “早く、速く、疾く”!」

 動き出したら止まらないのが”プロトユニコーン“の欠点であり唯一の長所でもある。
剃刀の様に直角に曲がり撹乱させ相手の機体に接近を試みる、その速さはーーー“疾風迅雷の如く”。

     ライトニングスピア!
「穿て! 蒼き雷の槍!」

 接近を許したのなら、容赦なく一本角から体へ、そして尻尾の槍へと電流が伝わり青白く迸る槍が顔を出しディープシャークの横っ腹を狙い突き刺さすだろう。
191ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/10(日)23:25:41 ID:r4x
>>186
実際の所予選でそれ程成績を残さなくとも本戦に上がれる事は分かっている、だとすれば余り予選で戦わずにタネを見せないというのも一つの戦法か。
相棒はそうではないようだが、余りバトルにかまけて本来の目的を忘れてはいけないし、もう少しだけ見学してから移動しよう、などと考えていた時、自分に向けて声をかけられる。

声がした方向に目を向けると、そこには着物を着た金髪の少女が頭を下げていた、見た目だけのインパクトなら中々のものである。
それで、どうやら彼女はホビーバトルを自分としたいらしいと、こんな可憐な少女がよくこんな血気盛んな場所に一人で来るものだ。
だが来るものは拒まない、ジョセフは頭のシルクハットを指に摘んで取ると、微笑みを浮かべて恭しく礼を返した。

「初めましてお嬢さん、私を選んでくれて光栄です」
「ええ、そのお誘いは喜んでお受け致しましょう」

「申し遅れました、私の名はジョセフ・ドーソン、そしてこちらは私の優秀な相棒、マジカルジョーカーで御座います」

「……さて、それではこちらへ、楽しいショーに御招待しましょう」

慣れた様子で名前を名乗ると、肩に乗ったホビーも滑らかな動きで礼をする。
リアを空いているバトルフィールドにエスコートするのも慣れた手付きだ、爽やかな笑顔を浮かべている様は逆に胡散臭さすら感じてしまいそうな程。
192リア◆VguNaE5hPI :2017/09/10(日)23:37:36 ID:TIk
>>191

目の前の男性はどうやら立ち振る舞いから分かる通りに紳士的らしく、こんな無茶な申し込みにも快く答えてくれただけでなく
フィールドまでエスコートしてもらってしまった。
まずは第一関門突破、と胸を撫で下ろすもまだスタート地点に立ったに過ぎない事を再認識し、

「わぁ……!
ありがとうございます、この度はよろしくお願いします!」

元気よくハキハキと返事を返すとともに手にしていた重箱を地面に置き、紐による梱包を手際良く解いていく。
そうすればいくつかの段に別れた箱のうち、一番下の大きな段から自らの乗機となるホビー、
まるで人型の昆虫のような、それでいて武士然とした武装を纏った闘機を取り出す。

「申し遅れました、私の名前はリア・ウェルズ。
”カキツバタ”を絡繰決闘にて使わせて頂いております」

多少マイナーながらに原作のある機体故自分だけのものではないという物言いながらも、大きな信頼を置いている乗機を紹介するとともに筐体へとセット。


「まだまだ若輩者ではありますが、精一杯努めさせていただきます──!」

機体の視界を再現するためのバイザーをかけると共に筐体へと差し込み、戦闘態勢に入った。
193深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/10(日)23:39:59 ID:z0m
>>187

「って……おいおい噂のアイドルちゃんじゃねえか」

おそらく(理由はともかく)世間的に有名な参加者のひとりであろう彼女の登場に呟きが漏れる。
彼女のプレイスタイルは何度か見たことがあり、その実力は彼自身認めるところではあるのだが。
ゆえにこそ、先日のフィーチャーマッチでの敗戦の印象が色濃く残る。

(まあ、敗戦引きずるようならそこまで。本物なら上がってくるだろうよ)

>>189

「ッ―――ハァ!?」

なんだその動きは、という驚きがそのまま言葉として飛び出る。
ミサイルや弾丸を刃で迎撃するなど、大会などではしばしば取り上げられ、観客を沸かせるのを見るが……
それはスーパープレイだからこそ取り上げられるのだ。おおよそ暴走しているマシンができる芸当ではない。

「佐々木小次郎じゃねえんだぞ…!」

悪態をつきながらも、バーニアを噴出。軽い位置調整にもこれを必要とするのが重量級マシンの短所だ。
とにかく、こちらへ飛んでくるユニコーンを横へ迎え入れると。

「よっしゃあ、お前の推しのアイドルにいい所見せてやろうじゃねえの!」

その年代でアイドル崇拝するのは苦労するんじゃねえかな、とか頭の隅で思いながらも。
再度突撃するユニコーンに続くよう、口腔からエネルギー弾を低出力モードで放ちながら距離を詰めていく。

「ショウ、あんまり近づきすぎるなよ!」

この大会に臨む前準備として、おおよその人気シリーズとその派生にはカタログで目を通してある。
ディープシャークの装備でもっとも危険なのは、イメージ通りその牙。
重装甲のタイラントはともかくプロトユニコーンがあれに捉えられるのは大変危険だ。
まして相手の技能は底が知れない。もはや油断などしてはいられないのだから。
194初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/10(日)23:41:17 ID:wPh
>>189

上空から俯瞰することで、なずなは後発組ながらつぶさに戦況を把握する。
獣脚類型を駆る少年と一角獣型使いの男の子は、鮫型を抑えに回っているようだ。
タンク型とストライカー型の機体という組み合わせも、即席ながらよく整っている。
となれば、孤立している少女の機体を守りに行かない道理はない――コナユキはくるりと弧を描き、烈華を追って高度を下げ始めた。

「あーもう、これじゃバスターライフルもミサイルも邪魔だなぁ……。 取り敢えず引き剥がしに行くよ!」
『承知ですお姉さま!』

予選でチーム戦に積極参加するプランが無かったせいで、コナユキの射撃武装はよく爆ぜる。
いまバスターレーザーやミサイルを撃ち込んでしまえば、味方の被害が大きくなる可能性すら否めない。
ここは高機動型同士の差し合いを引き受けて、器用な機体――確かアイゼルネスに細やかな横槍を入れてもらうべきだ。
ああ、そういえばつばきちゃんが「シミュレーションRPGで武器をオミットされる機体なんておかしいっすよ!」と叫んでたっけ。

「さあ、こっちこっち! ――アイドルは目立ってなんぼだからね!」

アイゼルネスを斬り伏せようとする烈華の背後を取ると、コナユキは電鋸型投擲武器――バズソーチャクラム二枚を投げ放つ。
僅かな時間差と肩と膝程度の高低差をつけ、ブーメランめいた回帰軌道で放たれるそれは、クリーンヒットすれば烈華の二刀流と足捌きを封じるだろう。
だが現実には、注意をひきつけた上で1枚でも帰ってきてくれれば重畳か。
――アーキテクトとしての能力は皆無であるなずなの目にも、暴走機体の動きの『巧さ』は異常に映っている。
195菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/10(日)23:45:15 ID:Z71
>>187
>>188
>>189
「――――わぁ、バトルのお姉さんだ!!!! アイちゃん、凄いよ、凄い味方だよ!!」

 更なる乱入機、敵かと疑うアイゼルネスに対して、振り向いた菱華はそう……両手を組んで、剰え軽く身体を跳ねさせながらそう言った。
 バトルのお姉さん……というのには、菱華にも馴染みがある。
 引きこもり時代の話であるが――――朝の子供向けホビー番組を、朝アニメと一緒に見るのが習慣だった。それを見終わったら、床に入って夜まで寝るのが。
 それ故に、彼女のことは……つまるところ、朝のその番組を見ている子供達と何ら変わりない感情を向けているわけだが。

「了解、私が烈華をやる、そっちのフカヒレは頼んだよ! あと、今は喜んでる場合じゃないよ菱華!!」

「どのくらい持つかな……相手の力は未知数……どれくらいで向こうが撃破できるかも……」

「やれるやれないじゃない、ぶち落とすくらいの気概で行くんだよ、菱華ぁ!!」

 烈華を任されたアイゼルネスが、喜んでブースターを噴かし烈華へと向かう。

 ――――あのミサイル群を斬り落とすほどの絶技。あれ程の妙技を、果たしてただ暴走しているだけの機体が扱えるか?

 たった今、マスター側のマニュアル操作によるミサイル撃墜すらもここまで集中力と複雑な操作を必要としている。
 それをやらせるならば、半端な機体設計では、生半なAIでは不可能だ……ましてやただ暴走しているだけの機体にそんなことが出来るとは到底思えない。
 ……裏側で誰かが操っている、というのが頭を過る。であればこれは仕組まれたことであり。


「――――早い!!」


 横一閃、烈華の刃が煌めいた。
 だが、アイゼルネスは近接戦闘に対しては中々に明るい。なにせそれを得意とする特急のホビーと二度も死闘を繰り広げたのだ。
 ……然し、それでも今の一撃はアイゼルネスを、そして菱華にとって『早い』と思わせた。 
 咄嗟のシールド防御によって一撃を塞ぐ。然し盾は両断され、早々にその腕からパージされる。


「……だけど、これだけ近ければ!」


 菱華がそう叫ぶと同時……握り締める大口径ビーム・ライフルの銃口は、烈華の腹に突き付けられていた。
 そのまま、引き金に力を入れれば黄金の光条が機体を貫くだろう。弾速は早く、威力は絶大――――そしてこの距離ならば、『まともな相手ならば』決まり手にすら。
196初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/10(日)23:52:18 ID:wPh
>>190 >>195

無垢な声がなずなの背中を押す。
つい先日醜態を晒したばかりだというのに、まだ信じてくれるファンがいるのだ。
しかも、アイドルとしてではなくホビーファイターとしての初風なずなを。
気持ちの昂りと、迷いながらしていた仕事を褒めてもらう一抹の罪悪感で、胸がじんわり熱くなる。

「ごめんね、今は皆を守るのがアイドルのお仕事なんだ。
 サインはあとであげるね。でも、無茶なことしたらナシだよ!」 

なずなは想う。今までであれば、「危なくなれば一人だけでも逃げてね」と返答していただろう。
でも今は自然な流れで、ホビーとファイター両方の安全を慮ることができた。
仕事着によるマインドセットがあるとはいえ、台本抜きでここまで〝バトルおねえさん〟に徹する事ができるなんて。
ちょっと前の自分だったら、想像も出来なかったことだ。
197Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/11(月)00:12:44 ID:zHQ()
空中を泳ぐように滑りながら、ディープ・シャークは接近する二機に対して突進を開始する。
時折身を翻してエネルギー弾を回避しつつ、それでも命中した分のダメージには意にも介さず加速を続け。

そしてユニコーンと接触する刹那——————鋼の鮫は上半身を下に向けて滑り込ませる。
その顎は開かれたまま、舗装された地面を掬い上げるように圧倒的な力で抉り出しーーーー土砂とコンクリート片が二機の鋼獣に向けてぶちまけられる。
当然ながらユニコーンの刺突は阻まれ、同時にレックスの視界も遮られ。その次の瞬間には。


『—————GAAAAaaa!!!!!』


ユニコーンの喉元へと食らいつかんと、暴鮫の牙が開かれ、そして閉じられる。
もし、避けられなかったならばーーーーユニコーンは首を噛み砕かれ、再起不能なダメージを負うことになる。




烈華の次の剣戟はアイゼルネスに対する迫撃ではなく、チャクラムの迎撃に対して放たれた。
後方を視認するまでもなく振るわれた刃が二つのチャクラムに斬撃を加え、あらぬ方向へと弾いていく、それが相手の手元に戻るかまでは分からなかったが。

その隙を縫うようにして向けたれた銃口は、確かに決め手に相応しい一手だった。
烈華・甲型は機動力と引き換えに装甲を犠牲にした特化型、この距離で大経口のライフルを浴びればタダでは済まない。

だがーーーーー暴走する機体の眼光に灯る輝きが、不穏な揺らめきを見せる。


『……………———!!』


引き金が弾かれる直前、その銃口に何かが突きつけられた。
それは烈華が蹴り放った短刀だった。その刃は丁度銃口を塞ぎ、その状態でビームを放つのを止められなかったなら。
その銃身は出口を失ったエネルギーによって内側から炸裂し、アイゼルネスはその爆熱と破片をもろに浴びることになるが、果たして。
198ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/11(月)00:14:33 ID:hWq
>>192
障害物の無いシンプルなバトルフィールドが展開され、先にリアとカキツバタがフィールドに降り立った。
相手となるジョセフとジョーカーの姿は…その時点でジョーカーの姿はフィールド内にはいない。
ホビーの状態を表す端末を手にしたジョセフは、カキツバタがフィールドに登壇したのを見ると、指をパチンと大きく鳴らした。

「レディースアンドジェントルメン!!それではこれより、私の相棒マジカルジョーカーの初陣です!」
「さあさあどうぞ!お暇な方はご覧になっていってください!絶対に後悔はさせません!!」
「さあジョーカー!出番だ!」

一体いつの間に用意したのか、スポットライトが輝いてフィールドの一部分を照らし、真っ白なスモークが立ち上る。
声を張り上げてジョセフが注目を集め、スモークが晴れるとその中からジョーカーが……出てこなかった。

「───ん?あ、あれ?」

盛大な演出があったかと思えばそこには何もいないもぬけの殻、観客が困惑しジョセフが首を傾げていると、少し遅れてジョーカーがフィールドに表れた。
……残っているスモークに噎せるジェスチャーをしながら、普通に歩いて。

「お、おいおいジョーカー!そりゃないよ!ちゃんと派手に登場しようって言ったじゃないか!!」

全く予想と違う登場をした相棒にジョセフは意義を申し立てるが、ジョーカーはそれに振り返って肩を竦めて答える。
その滑稽な様子に観客達は失笑に、俄かに笑いに包まれた。

無様な失敗かと思えるが、この登場も彼等の台本通りである。
敢えて愚者を気取ることで笑いを取る、掴みとしては及第点だ。

「───さ、さて、それじゃあ気を取り直して……」
「バトル開始と行きましょう!!」

カキツバタに向き直ったジョーカーの手には、先端に宝石の嵌ったステッキ型の片手武器が握られている。
目に見える武器はたったそれだけ、しかし見えているよりも見えない物の方が厄介な事は多いのである。
199リア◆VguNaE5hPI :2017/09/11(月)00:29:26 ID:X9p
>>198

フィールドに降り立ち、両の足で大地を踏みしめたならば、
徒手から何時でも抜刀出来るように構えながらも、鷹の如き眼力を以って辺りを警戒し──

「相手は……其処ですかッ!」


高々と響き渡る口上に焚かれるスモーク、スポットライトに照らされる一角。
おそらくは彼処から登場し、何らかの見栄を切るのだろう。
カキツバタは格闘に特化した機体、であれば接近せなば話にもならない。
故に、いくつものスポットライトが重なる場所へと真っ直ぐに飛んだ。
跳躍は鋭く、勢い付きながらも高度が落ち始めたところで前翅を開き天翼を展開、
青い蝶の羽が背に生えると軌道は山なりから直線へと変わり、

「何を企んでおられるかは知りませんが、斬り捨てます──!」

右の手にて抜刀したままの勢いで回転、その動きのうちに刀へと雷を纏わせ、
晴れ行くスモークの中にいる敵を叩き斬……れなかった。
当然である、未だそこに敵……ジョーカーは存在していなかったのだから。

「……って噎せてるんですかーっ!?」

術中に嵌った、というよりもはや自爆とすら言える醜態であるが
ジョーカーとジョゼフの掛け合いに気が緩んでしまったのもあり勢いをそのまま地面へとダイブ、派手にコケる形となってしまった。

「うぅ……情けないです……」
「全くである、それに相手がまだ見栄を切る段階で攻撃を仕掛ける事もどうかとは私は思うぞ」
「ゔっ……すみません……」

滅多に喋らないカキツバタからも叱責を受けながらもコケた勢いを活かし転がるようにしてなんとか復帰、
起き上がるついでに牽制というかオマケ程度に左腕のフォトンバレットを榴弾形態にて発射した。
200天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/11(月)00:35:51 ID:2hM
>>197
「はい、エンジさん!援護はお願いしますッ!!! ……ッ!」

 良い所を魅せる→モテる→結婚。そんな短絡的な思考が過るのも束の間。

《土砂により世界が暗転する》

ーーあんまり、近づきすぎるなよ!

その声を聞くや大きく踵を返す様にバーニアが大きく火を噴き旋回し始め、魔の手からは紙一重で致命的な攻撃は回避する事に成功する、…ハズだった。

 ふ、と。機体が大きく揺れ傾けば、地に平伏く事を赦してしまうだろう。右肩の部分の装甲が砕け散り大破しバランスを崩した様だ。

それに件の旋回により無理な動きが負担は掛け、扱い煩い“プロトユニコーン”のピーキーな性能にショウは“まだ”慣れては居なかった。

 “本来の持ち主”ならば、この機体も十二分に性能を発揮できるのではないか。

“兄ちゃん…”。

そんな靄が常に脳裏に離れようとせず呪いの様にショウは劣等感を抱き続ける。


ーーーまだ、戦える。

 その思考を遮る様に、聞こえるハズも無いプロトユニコーンの声を幻聴の様に脳裏を通り抜ければ、不屈の闘志が迸る一角獣は立ち上がるだろう。
その様子を呆気に取られ、頬を思いっきり叩くとショウからも瞳にも再度不屈の闘志が宿るだろう。

<ーーーPモード、移行シマス。>

 無機質な女音声と共に、黒い雷轟がプロトユニコーンの角を覆い隠す、否。機体を一瞬にして包み込む程の雷流を衣を纏う。

 ーーーその漆黒の雷は、神の裁き。

  「とどけえぇぇぇぇぇ!!!」

 一角獣の怒りとも云える黒き雷豪は角の先端に集まるや直ぐ様に鮫の機体『ディープシャーク』に向かって角から無慈悲に雷撃が機体を狙い弾丸の様に放たれるだろう。

 速度は遅くは無いが、正確な攻撃をとはお世辞には言えず遠距離の場合は外す事になるが、幸いな事に旋回しこの地点ならば射程圏内だろう。
201ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/11(月)00:43:22 ID:hWq
>>199
───笑い、嗤い、嘲笑い……それは秋の風に吹かれる枯木の音にも似て、曇った天気の波打ち際にも似て、何とも喧しく、そして心地良い。
この笑いを火種にして感嘆に変え、感心という火を付け、喝采という炎上を起こす、それこそがエンターテイメント。
今は無様にしか映らない、底の底まで落ちているからこそ後は上がるだけでいい。

「ジョーカー、君の凄さを少しだけ見せてやろうじゃないか!」

カキツバタが光の榴弾を発射する、ジョーカーはそれを見逃さずに跳躍してそれを回避する───が。
高い。異様に高い、ジェットや爆発などの補助を使っていないのに、軽い一飛びでカキツバタを優に跳び越してしまう程のジャンプ。
それは放物線を描きながらカキツバタの背後に回り込む様に落下しつつ、ジョーカーの手には三つのナイフが握られていた。
緑、青、赤、まるでオモチャのように見えるがれっきとした武器であるそのナイフを、ジョーカーはカキツバタに投げ付けつつ着地して背後を取ろうとしている。
202初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/11(月)00:49:24 ID:Nid
>>197

斬撃を放ちかけた姿勢から向き直り、烈華はバズソーチャクラムを尽く叩き落とした。
AIの動きじゃないし、マニュアルにしたって度が過ぎる。
――まるで、その筋の達人が自分自身の身体を動かしているかのよう。

「防ごうとしたなら、当たれば痛いってこと!」

ねじれた円弧を描きながらバズソーチャクラムが手元に戻るや否や、コナユキは再度投擲する。
今度はX字に交差して、肩口から腰にかけてをX字に切り刻まんとする軌道。
異形の回転刃はいなすことは出来ても、インパクトの度に無視できない損傷を刀に与えていくだろう。

そして空を裂くバズソーの後ろを追うボードの上で、コナユキは腰の太刀に手を添えていた。
手をバズソーに割かせた上で、すれ違い様の居合斬り狙いか。加速するボードがブースターを猛らせて、流星の如く尾を引き――。

――兇悪極まる双鋸と、流線型の質量兵器と化した〝無人の〟ボードが、ほぼ同時に烈華を襲うだろう。

「言ったよね。今日は――――守るのがアイドルのお仕事だって!!」

衝突の直前、コナユキはボードから側転にて離脱。瞬く間にアイと烈華の僅かな隙間に割って入る。
そして重砲に刺さった小刀を左手で抜き取ると、旋転。奪った刀を自らの武器とし、アイを護衛するように傍らで前のめりに構えるだろう。

「撃って! あ、ボードは気にしないで!!」

――あの空飛ぶかまぼこ板は、不憫な役割を背負う避けられない運命の下らしい。
203深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/11(月)00:51:02 ID:0JR
>>197

味方に頼まれた。ならば頑張らねば男が廃るというもの。
アイドルに声をかけられたショウのほうもおそらく気合十分。
だが、ショウのほうは強いて言うなら先走りすぎていないか、という点だけが心配だ。
などと考えていたら、視界を遮るその一撃が来た。

「くッッ――――避けろショウ!」

土砂やコンクリは視界を邪魔する程度でこちらには問題にならない。問題は次だ。
次に来るのは、間違いない。牙による一撃だ。それが避けられなかったなら、プロトユニコーンは恐らく……
だがここで前に出て攻撃を防ぐことはできない。
タイラントの鈍重な巨体ではバーニアを噴かしてもユニコーンの背後についていくので精一杯。
最大出力をもってしても今から2機の間に割り込むことはできない!

「なら、こっちだッ……!」

防ぐことができないなら、カウンターの一撃を放つのみ。
プロトユニコーンが、ショウが敵の顎を逃れることを信じ、それを守ることは放棄し。
その分、「背後にいるからこそ可能な」攻撃行動に入るのみ。

「虎の子の一撃、見せてやるぜ!」

背部アームの先端、シールドユニットを高く掲げると、その内部から幅広の実体剣が展開される。
カスタムブレード『エルドリッチ』。不意打ち気味に現れたその刃を、勢いづけて前面に突き出した。
狙いは眼前で勢いよく閉じられたばかりその牙―――ではない。牙は体内にストックを蓄えている。ならば狙いは……


 さきほどの烈華の凄まじい武芸を見て考えついたことだ。
 仮にもし現在のこの暴走状態が何者かによって引き起こされたものだったとして、今もこのディープシャークを何者かが操っていたとしたら。
 機体のAIによるものでなく、己のように、人間が操縦していたとしたら。
 瞳のパーツは、弱点足りうるのではないか?

確定したわけではない。だが試してみる価値はある。そして今が絶好の機会なのだ。
ゆえに狙うのは牙ではない。その上部分。クリアパーツの青い瞳だ。
204リア◆VguNaE5hPI :2017/09/11(月)01:03:12 ID:X9p
>>201

フォトンバレットを撃ったのはあくまでも牽制、何らかの対処を相手に強いることで体制を立て直すつもりだった。
だが、ジョーカーの動きはなんだ。
高く高く悠々と「榴弾などあってもなくても変わらない」とでも言いたげに跳んでみせるではないか。
事実、時間稼ぎとしての目的は果たせず膝をついたままの状態から逆にこちらが対処を強いられる事になる。

「面妖な、見た目通りの奇術を用いますか……!」

投げつけられたナイフ3本に対し、身を捻りながら立ち上がる事で勢いを乗せた刀を右から左へと振るい、ナイフを3本纏めて刀に乗せるようにして逸らす。
刀を思い切り振るった姿勢、このまま振り向くのでは背後に着地したジョーカーに間違いなく先手を取られる。


「であれば、いっその事一か八か……」

刀を手先の動きにより逆手に持ち直し、両の手でそれを握れば
腕を伸ばした状態のそれは必然的に切腹のような構えとなり、

「主殿、捨て鉢ではないだろうな」
「無論です──ッ!」

そのまま勢い良く腹を貫くようにして腕を引き戻した。
──実際には細身な腰の横をすり抜けるように、背後への突きを放った。
205菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/11(月)01:05:16 ID:1LZ
>>197
>>202
 ――――不味い。

 銃口に突き立つ短刀。やはりこれは、暴走したAIがやっていいだけの挙動ではない。
 この一瞬で、別方向から放たれたチャクラムを叩き落とした上で、短刀を蹴り放って砲身に直接突き立てて自爆を誘発させるなどと。
 アイゼルネスのライフルをそのまま爆発させれば、最低でも腕部は吹き飛ぶ。下手をすればそのまま上半身を吹っ飛ばしてゲームエンドに持ち込まれることだって。
 ライフルは、破棄するしかない。わざわざ手を止めて短刀を引き抜いてから撃つ時間……その間至近で態々待ってくれるわけでもないだろうが。


「――――お姉さん!!!」


 ぱぁ、と菱華が顔を輝かせる。
 割り込むは、彼女が、初風なずなの戦姫がたった今まで乗りこなしていたサブ・フライト・システム。
 そして、その間に銃口に刺さっていた短刀は消えている。
 とは言え、銃口に叩き込まれるというのは大きい。銃身自体、当たり前のことながら万全の状態を前提に設計されている。
 であるが故に、この状態ならば強力な決め手になりうるハイパー・ランチャーは使えない。ビーム・ライフル自体も、撃てて後一回か二回か。


「――――お前なんて! 一発あれば十分だぁ!!」


 ―――ならば十二分。

 無人のボードの向こう側の敵を睨みつける。
 銃口を赤熱させつつも、ボードに超高熱のままに溶解による穴を開けながら、そのまま向こう側の烈華を黄金の光が射貫かんとするだろう。

 空いた弾痕の向こう側――――果たして、敵機は顕在か否か。
206藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/11(月)01:24:11 ID:7sz


「……どーすっかなァ」


昼下がり。「うみかぜ」郊外の繁華街、大通りから外れて奥まった路地裏、ガードレール下に小汚い看板を掲げる中華料理店。その名を「瞬王」。
ひとりの女が、その扉を開いた。艶のない黒髪をたなびかせ、場違いな白衣を纏った、長身の女。

(予選はまあ、今の機体で勝率7割5分……って、ところだけれど)
(……なんだかなぁ。とりあえず本戦に出て、参加賞あたり貰って、やるだけやって途中敗退……なのかなぁ、あたし)

道案内のスマートフォンをポケットに仕舞い、人の良い笑いを浮かべる店主に導かれるまま、彼女はカウンター席に座る。
ぼんやりとした瞳で染みの付いたメニューを眺め、暫く考える素振りをした後、差し出されたお冷やを飲んで一息をついた。


(――そもそも、何やってんだろうなぁ……バトルなんて、好きでもないくせに。
なんであたしは、手塩にかけて作ったハチロク戦わせてんのよ。観賞用でしょ、これは)


「あんかけ皿うどん。麻婆丼。小籠包。――あと、春巻。焼き餃子。紹興酒」


ダウナーな声はしかし油っこい店内の空気によく響いた。「ウードンミェンイーガー、シャオロンパオイーガー――」
存外に彼女はよくメシを食う人種であるらしい。店主の復唱と共に、俄かに厨房が騒ぎ立つ――。
207Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/11(月)01:27:39 ID:zHQ()
電光と鉄刃が、鋼の鮫に炸裂した。電撃はディープシャークの半身を焦がし、斬撃は鮫の右眼を根元から貫き破壊した。
致命的なダメージであることは明白だった。並以下の完成度である模型の耐久値を削り切るには十分な威力があっただろう。
にも関わらずーーーー鋼の鮫は未だ停止に至らない。ここにきて貴方達は一つの確信を得ることができるだろう。

この機体はーーーーなんらかの機能によって性能が正常な値から格段に底上げされている。
それもきっと“不正”と呼ぶに相応しい、ホビーバトルの大前提である性能=完成度の原則を踏み躪るような。


『—————————GGGGAAAAAAAAaaaaaaa!!!!!!』


咆哮と同時、VLSからミサイルが一斉に上空へと向けて撃ち上げられる。そしてそれらはすぐにこの一帯に向けて、雨霰の如く降り注いでいく。
一つでも命中したならば大ダメージは免れないだろう。ならば防御か回避の必要があるだろうがーーーーー同時に鮫は強引に身を捩り、全身を勢い任せに回転させる。
その動作に巻き込まれたなら、鮫の巨躯による打撃を浴びることになりーーーーーそれを喰らうが、回避しようが、次の瞬間にはミサイルの第一軍が地上に到達し、鮫をも巻き込んで爆撃を開始する。




放たれた閃光はーーーーー烈華に届かなかった。
紙一重、通常ならば回避など不可能な筈の距離、そしてタイミングであるにも関わらず、暴走する侍は決死の砲撃を掠めるだけに留めていた。

………その烈華甲型の姿を見た瞬間、菱華はなぜこの機体があり得ない筈の回避に成功したのか、その理由を直感的に理解するだろう。
しかし同時に“そんな訳がない”とも理解する。当然だった、何故ならその理由は、その能力は。
本来ならばーーーーーー烈華甲型には決して備わっていない筈の力なのだから。


『—————“ユーティライネン・プロセッサ”スタンバイ』


烈華の瞳が赤い輝きを灯す。それは本来ならばアイゼルネス・カスタムという作品違いの機体が搭載する機能であり、未改造である烈華が搭載している筈のない機能。
然し無機質な少女の合成音がその発動を告げたなら、次の瞬間には鋼の侍は限界を超えた機動を開始しーーーーー一瞬にて二機の戦姫の後ろ側に辿り着き。
長大な対艦刀による斬撃が、二人に向けて放たれる。もし回避が間に合わなければ、ボディの両断は免れない。
208マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/11(月)01:56:29 ID:6T4
>>206
容赦なく日光が照りつける昼下がり。路地裏の奥に佇む一件のちょっと小汚い料理屋。俗に言う汚美味い店というヤツ。
そんな店の窓から漂う香辛料の匂いに誘われて、またここに新たな客が扉を開く。

「あーあっつい! こんな中で歩き回らなきゃならんのが辛いところ!
 おっちゃんおっちゃん! ちゃんぽん一つ頂戴! 量は普通でダイジョーブだからさ!」

「……へ? ココ中華料理屋? マジで?
 えー、そんならどうすっかなー……。あー! そうだそうだ思い出した! 回鍋肉だよ! コレちょーだい!」

カウンターの向こう側からのツッコミに迎えられてやって来た一人の青年。
それなりに荷物の詰まってそうなリュック、頭を覆う赤いキャップ、胸の緑地Tシャツに堂々と輝く”ハイウェイラジオ 1620khz ここから”の白文字。
見た目はそれなりに若い。恐らく学生であるのだろう。何を求めにやって来たかは一目瞭然。そしてここが何なのかわかっていないことも。

「隣失礼。田舎から来たもんで、騒がしくしちゃってスイマセンねえ」

この店は辺鄙な場所にあるが、知る人ぞ知る的な穴場スポットなのだろう。店内はそれなりに込み合っているらしい。
残っていた一人用スペースは、白衣の女性の隣ぐらいしかなく。青年は軽く女性に会釈をして席に座る。
差し出されたコップ一杯の水を一息に飲み干せば、プハァと息を吐く声が厨房内にも軽く響く。

青年はメニューと自分のモノであろう財布の中身を交互に見返している。時々メニュー下の値段を見てため息を付きつつ。
中華鍋とコンロの金属音と、具材が熱せられていく音が絶えず流れる店内で、少し騒がしいが落ち着いた時間が流れていく。
209初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/11(月)01:59:15 ID:Nid
>>207

バズソーが虚空を切り刻む。ボードを喪失する。それでいい、相手の処理能力を飽和させられるなら。
一発でも痛打を加えることができれば、あの機体にとっては致命傷足り得る。
油断なく注げるリソースをベットしてこそもぎ取れる勝利。慢心などありえない。

『ふ、ふざけてます! 私が翼を捨ててまでもぎ取った一瞬を!』

だからこそ致命的だった。例えるなら、賭けのテーブルを爆弾で吹き飛ばされたようなものだ。
なずなは奥歯を噛み、胃の底から苦味がこみ上げてくるのを必死に抑える。これは、経験したことがないタイプの〝本番〟だ。
一つだけ救いと言えるのは、シンヤに負けたときと違って自分の置かれた状況を冷静に把握していること。
尤も、その内実は絶望の一語に尽きるが。

「――何の光!?」

炯々たる灼眼の輝き。異常な駆動制御。コンパニオンとして見ていた限り、あんな機能は素組みではあり得ない。
緋色の眼光に残像を牽いて舞う烈華の異様さになずなが叫ぶが早いか、それは既にコナユキの背後にいて。

『お姉さま、心を乱さずに。ヴァイオラさんに正座させられますよ!』
「うっ、それはやだなぁ!」

二機を巻き込むように振るわれる斬艦刀を、コナユキは鮮やかな後ろ宙返りで間一髪かわす。その後、バック転を産連発。
身体が上向きになったところで着地に先んじて両肩のミサイルを発射。36発の弾幕が、烈華に殺到する。
そしてコナユキの最終的な着地点には、特攻直前にボードから投棄したバスターレーザーライフルがあった。

「ごめん。前言撤回悪いけど、ちょっと誤射に気をつけてられないや。
 その代わり、あなたも我慢しなくていいから――!」

着弾点に爆風を巻き起こす破壊の閃光。躊躇なく射られたそれは、烈華――或いは、その背後に林立するビル群に突き刺さる。
この状況では高度を利用する意味はなく、むしろ相手の利用できる遮蔽物を潰し射線の透明さを優先すべき、という判断だ。
210天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/11(月)02:05:32 ID:2hM
>>207

「か、硬すぎだろっ!」

 エンジとショウの双方が連携の様な攻撃を嘲笑うかの様に、立つ姿に無論咎める事は出来ず文句を垂らす。

 ーーーやがて1つの結論を導きだすだろう。
 市販されている『ディープシャーク』とは程遠い程の攻撃性や防御性能を持っている事に。

「 まさか…!
違法のチップによる……暴走…?」

 まだ懸念材料は在るが、こんな“チート”の様なものが大量に出回ったら…。
言い過ぎでは在るが、国家の転覆にも成りかねない俺たちが此処で食い止めなくては!

「……!
 避けてくれッ!! プロトユニコーンッ!!」

 壊れた右肩から、電流が漏れだし右の駆動部分が巧く動かずに硬直した機体に呼び掛けるも返る返事は無し。

  ーーーグシャッ!

 巨体の体躯に巻き込まれた灰馬から重い音を聴けば、半身がほぼ削れた三脚となった“プロトユニコーン”が地面に叩き付けられるだろう。
そんな絶望的な状態で誰しもが戦闘不能と言い匙を投げるだろう。

  『一人と一機を除いて。』

     ペガシス
  《ーーーPモード。》

 移行は完了し、此処から“未知の領域“に入る。
 違法のチップでは無いが、プロトユニコーンに備わる“唯一の武器”。
機体が半壊した状態のみ使える諸刃の剣とも言える、<モード>

 機動力と攻撃性が一段と上がり、最強の矛となるだろう。


「(……最後だ。)
 天、駆けろッ! プロトユニコーン!ッ!」

 そんな悲痛な、思いを胸に仕舞えば壊れたバーニアから煙を立てても、バランスを崩しても三脚で駆け巡り、地を思いっきり踏めば、バーニアが黒煙を出しながらも噴射し
  ーーー天空を翔る。


「いけ…天馬。」


 機体に黒き電気の衣を纏いし漆黒の天馬が、流星の如く急降下すれば自慢の一本角で頭部を狙って突刺するだろう。
211藤堂 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/11(月)02:15:41 ID:7sz
>>208


「ん、どうも」


ひとり机上でスマートフォンを弄っていた女は、ちらと青年を一瞥した。銀縁眼鏡の奥に宿った気怠げな眼光は、すぐに液晶へと戻っていった。
特段興味もないといった素ぶりだった。なにせ彼女は昼食のためにここへ来ていた。その風貌に反することなく、彼女は内向的な性格だった。
――時折通る市内鉄道が、少しぼやけた音を立てて、ガードレールの上を走る。恐らくは常連と思しき中年の男たちが、昼間から酒盛りに興じている。
とはいえそれは彼女も同じことだった。人の良さそうな顔をした、恐らくは店主の妻であろう女性が、彼女の隣に盆を運んで来た。
春巻と、餃子と、紹興酒。「ども。――いただきます」醤油と辛子をたっぷりと小皿に、先ずは餃子をあてにして、彼女はちびりと一口を飲もうとした――その、時に。


「――わ、やばっ」


女が膝に乗せていたトートバッグが、そこから滑った。焦り拾おうとする彼女だったが、生憎とその手は箸と酒に塞がっている。
どうしようもなくバッグは彼女の膝を転げ落ち、少しばかり油に湿った床面に落ちた。あちゃあと言わんばかりの痛恨の表情を、女は浮かべていた。
――そしてバッグの口からは、何かのケースがはみ出ていた。よく見ればそれは、ホビーファイターによく用いられる素体のケースであることに、気付くだろうか?
212深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/11(月)02:21:21 ID:0JR
>>200,210

(暴走……!?)

さきほどまでとは明らかに異なる様相のプロトユニコーンを見て息をのむ。
「Pモード!?なんだそりゃ……ユニコーンにはない機能だろう!」
となればプロトタイプ特有の機能だろう。とにかく、だ。

>>207

「まだ倒れねえのかよ……!」

プロトユニコーンの攻撃は明らかに耐久値を削ぐのに十分だったはずだ。
そこにタイラントの追撃とあれば、敵の機体はすでに破壊されていて然るべきだ。
しかし今、眼前にはまだ攻撃行動をとろうとしている鮫の姿があって。

「チィィッ!!」

唖然としていたせいで対応が遅れる。
慌てた動きで刃を収納。対のアームを動かし、2枚の盾を合体させる。

「『アメシス・ネメシス』連結―――シールド、起動だ!」

2枚の盾は1枚の楕円形となる。続いて、盾の中心部からエネルギーシールドが展開される。
これぞタイラントレックスの真骨頂。強力な光学兵器さえ受けきる、高出力の光の盾だ。

―――しかし、盾を構えるのが遅かった。
原因はふたつ。ひとつは、盾から展開される『エルドリッチ』を収納する処理を挟んだこと。
そしてもうひとつは、敵機体の犯則的なまでの―――否、文字通り犯則によってもたらされた耐久性に目を奪われたこと。

これらを原因として、前面に構えることができなかった。結果として上空から飛来するミサイル群は、上に構えたシールドで受ける。
しかし前面からの攻撃、すなわち鮫の回転による強引な物理攻撃は防ぐことができず。

「…………くッ!!」

いかに大型恐竜の鋼獣、いかに装甲ガン積みのタンク機といえど、真正面から暴れる巨体を受け止めることはできず。
装甲がガリガリと嫌な音を立てて削れていく。回転を止めようと突き出した前肢のメタルクローが火花を散らす。
さらに上空からの爆撃も、ビーム兵器で防いではいても衝撃は伝わってくる。
膝が曲がり、地面に崩れ落ちそうになる。それでも。
それでも立ち続けることが己の、そしてクラブチームを背負って立つものとしての矜持だといわんばかりに。
愛機に言い聞かせるように叫ぶ。

「立ち続けたモンが勝ちなんだよ!だったら絶ッッッ対倒れんな!」

鮫は自身をも対象とした全体攻撃を仕掛けてきている。我慢比べだ。そう、これがタイマンであったならば。
だが、今はそうではない。ならば俺が盾としてアイツが槍だ、ゆえに。

「お前が決めろ、ショウッ!」
213菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/11(月)02:34:32 ID:1LZ
>>207
>>209

「――――――――っ」

「……いやいや、ありえないでしょ……!!」

 ――――ああ、分かる。その挙動は幾らでも「見たことがある」。
 誰よりも間近で、誰よりも何度でも反復した。それは、それは正しく――そうだ、それならば無理もない。それならば、回避出来るだろう。
 そしてだからこそ、それがどれだけ恐ろしいものであるか理解している。そしてそれが、どれだけイレギュラーか理解できる。
 未改造機に、そんなものを搭載されているなど有り得ない。機体の強度を無視して、あの出来であれを起動すれば、どうなるかなど容易に想像できる。


「なんで――――お前が――――」


「――――プロセッサを使えるのさ!!!」


 未改造機体が、何故それを扱える。ただの、デフォルトのAIに、あれを載せたところで、まともに扱えるわけがない。
 だと言うのに――――消えた、いや違う。背部バックパックのミサイルポッドをパージ、ライフルを放棄し、更に上方へとブースターを噴射。
 瞬間、空を斬る音がする。ミサイルポッドが真っ二つに叩き斬られる。間違いない、この動きは、“ユーティライネン・プロセッサ”のものだ。
 そのままバックブースターを噴かす。そしてアイゼルネスが映し出すのは、無数のミサイルと、極大の閃光がビル群を突き貫いた。
 完全回避はまともならば難しい。ああ、そうとも、まともなら。だが、それが『まともでないのは一番彼女達が理解している』。

 戦局は絶望的。ただでさえずば抜けた性能を見せる暴走機体に、更に暴走を重ねるような“プロセッサ”。
 このまままともに戦ったら、嗚呼そうだ、全滅だ。この機体に壊された他の残骸達の仲間に入れられるだけだ。
 ……勝てる手段があるとしたら、ただひとつ。そう、“奥の手は最後までとっておくもの”なのだ。


「……分かりました、バトルのお姉さん。 ……アイちゃん」

「あー、そっか。じゃあ、やろう。見せてやろう。見せつけてやる」


 モノアイ型バイザーが迫り上がる。碧い瞳のアイゼルネスが、烈華を睨みつけた。
 そして……高度は維持せず、そのまま降下。機体重量のままにアスファルトを踏み砕き、砂塵が舞い上がってアイゼルネスを一瞬だけ……微かに覆い尽くした。
 アイゼルネスの視界と、菱華の共有する画面に無数に響き渡るアラートと警告表示。最終警告に、菱華が指を弾いて許可を出す。
214菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/11(月)02:34:39 ID:1LZ

 ――――紅く、輝ける。


「――――これの、上手な使い方っていうのをね」




                       『JUUTILAINEN PROCESSOR STANDBY!」



 全身の排熱ダクトから水蒸気が噴射する。
 右大腿部の装甲内から、ビーム・サーベルを取り出し、起動。黄金色の閃光を以て、形成されるは黄金の刃。


「――――来い、戦い方を教えてやる」
215マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/11(月)02:43:04 ID:6T4
>>211
注文の品を待つ間にも青年の食欲は絶えず刺激されていく。飯屋の匂いはヒトを惑わせるのだ。
青年の目線がメニューの端から端を幾度となく通過する。金が無くては生きていけないが腹が減っても戦は出来ない。
そうこうしているうちに隣の女性の元へ注文していたらしき品物が届く。動き回って腹の減っている青年にはあまりにも魅力的な料理の数々。本人はチラ見程度のはずでも、実際にはかなり小刻みに視線が寄っているはず。

「――も、もう我慢ならん! おっちゃん! ボクにも餃子一皿つい……」

ついに耐え切れなくなったのか、追加注文という誘惑へと手を伸ばそうとしたその時であった。
隣から聞こえるバックの落ちる音。そして見た目には合わない異質なすり合わせ音。

「あっ……オタクもその口……で?」

ケースから顔を覗かせるモノ。それは青年にも割と親しみのあるモノだった。
ホビーファイトを志す者であれば大抵の人物が一度は目にしているであろう物体、あの素体。厳密にはそのケースだがそれは置いといて。

「なーるほどそうか……やっぱりキミもか……。うんうん、ボクもその口なんだよねえ」

床に無造作に置かれていたリュックの口を開け、中から一つのケースが姿を現す。
これこそこの青年も同好の士である証。彼の愛機が大切に保管されている大事な大事な代物。
この時の青年の表情と言ったらもう、同士を見つけて安心したと言わんばかりの感動と興奮が入り混じった複雑だが単純な表情だったという。
216Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/11(月)03:02:47 ID:zHQ()
そしてーーーーー雷光が暴鮫を貫いた。
今度こそ、その耐久値はゼロにまで削られ、怪物は断末魔の呻き声を残して地面に倒れた。
終わった。これで。観戦していた誰もが、そう思ったがーーーーー…………


『…………——————G』


…………いや。


『————————GAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!!!!!!』


それは、最後の断末魔と共に。

VLSに残されていたミサイルが全て、一斉に放たれる。それらが目指すのは一角でもなく、恐獣でもなく。
奥に退避し、祈るようにこの戦場を見つめていた子供達の機体を目がけて、圧倒的なまでの火力を誇る弾頭が幾つも飛翔していく。
ここからでは間に合わない。けれども、アレを撃ち落とさなければ皆の機体が破壊されてしまうことになる。

それがどれだけの苦痛であるか、模型を作り上げ、共に戦う貴方達であるからこそ理解できる。
だからこそーーーー止めなくてはならない。間に合わせるには一撃にてその弾頭の全てを撃ち落とさなければ、子供達が作り上げた機体を守ることはできない。
そしてこの場において、それを可能とする瞬間最大火力を有するのはーーーーータイラントレックス、ただ一機。




36ものミサイルは、然し全て叩き斬られる。爆風が炸裂するが、その中において烈華は未だに“無傷”。
バスターライフルの閃光が駆け抜け、市街地の一角を更地に変える。しかしその威力を目の当たりにしても、鋼の侍は微動だにしない。

真紅に染まる瞳が、眼前の敵を捉える。赤く輝ける眼と眼が交錯する。
奇しくも同じシステムを内包する二機が相対する。黄金の刃に対して、侍は鋼の対艦刀の鋒を突きつける。
そしてーーーーーー次の瞬間、地を駆ける。同時に対艦刀はアイゼルネスではなくコナユキに向けて、砲弾の如き勢いで投擲された。
ブラフーーー同時に烈華が両手に構えるは日本刀、刃を交錯させたまま一瞬にて加速すればーーーーーーアイゼルネスと切り結ぶだろう。


『………——————————!!!!』


そのシステムを、烈華は確かに使い熟していた。
ただでさえ格闘性能に突出した機体がそれを使えば、どうなるかなど想像に難くない。
それでも、それに打ち勝てる要因があるとすればーーーーー烈華はたった一機で戦っていた。


烈華は何も発しない。そもそも、そこに何者かの意思が介在するかどうかも解らず。
然し明確な殺意を灯すその刃はーーーーー押し斬らんと、振るわれる。交錯の結果は、果たして。
217藤堂 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/11(月)03:13:28 ID:7sz
>>215

やばい。緩衝素材の詰まったケースだけれど、落としてしまえば気になるものだ。万が一にも、壊れているかもしれない。「中身」が五体満足な保証など、どこにもない。
焦ってケースを開いて、軽くその内実を確かめる。――よかった。特に問題はなさそう。ひとつ安堵の溜息をついた、ところで。


「――――やば……。」


――己の隣席から飛ばされる、輝かしい目線と喜ばしい声色。
今度は「ヤバいのに絡まれてしまった」という声色で、小さく呟く独り言は、恐らく青年には聞こえない。
女の経験がそう告げていた。なりふり構わない系オタク、いきなり絡んでくる系オタク、8割はヤバい奴説。
例えるならば、市街地におけるゲリラ戦。例えるならば、明らかに射角を誤った火力支援。例えるならば、フォロー外からのクソリプ。
孤独なグルメの昼下がりを気持ちよく酔って過ごそうとしたのに、此奴の限界トークに付き合わされてはたまったものではない――。


「……まあね、一応。バトルはそこまで専門じゃないけど、持ち歩いてはいるわ」

後生大事にケースを拾い上げ、いそいそとバッグにしまい直し、また膝の上に置く。動揺を誤魔化すように、また餃子を一口。
口の中に広がる肉汁の味わいを、おそらく彼女はあまり実感できなかった。仕方ないので、紹興酒で流し込む。


「…………貴方も、好きなの? 模型」
「というか、出るの? 大会」


――だが。斯様なる残酷な偏見にて、この熱心な好事家をあしらってしまうのは余りにむごいと、彼女の良心は告げていた。
そも、同じオタクなのである。おのれのダウナー系なコミュ障加減を彼に押し付けるのは、単なる責任転嫁に過ぎないという自己批判が胸を刺す。
何よりも彼の熱意は純粋である。ありがちなオタクとは、どこかが違う。そんな想いを紹興酒で流し込んで己に理解させ、ついでに痛む心を誤魔化して、ひとつそう尋ねるのだ。
218天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/11(月)03:20:14 ID:2hM
>>216

「く、そおおぉぉぉっ!」

 断末魔に同じくらい大きな声で吼える。
こんな事が、あって堪るか…! 関係ない人間を巻き込むのは違うだろ!
ホビーはエンターテイメントだ、自分を魅了する程楽しい。その自由を奪っちゃ駄目だろ…ッ!!

「 …プロトユニコーンッ!」

 その言葉に応える様に“戦士”は立ち上がり大きく吼える。それは牙を研ぎ澄ました獅子の如く。
 邪魔なのは、承知の上だ!しかしやらなくちゃ…駄目なんだ!

 もはや使い物にならないバーニアを足蹴りにし、足台とすれば大きく気高く飛翔しミサイル2発を身体ごと被弾する。


「エンジさん…! 後は、…お願いします!」

何も出来ぬもどかしさを血が滲む程に噛み締め、子供たちを避難させるように誘導する。
219深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/11(月)03:32:03 ID:0JR
>>216

「終わ……」

らない!
あろうことか、こいつは最後の最後に――――最も卑劣な手を打った!

「ふざけてんじゃ……」

最早悪態をつく暇すら惜しい。
間に合うか?いや、ここからでは弾頭には追いつけない。
だがやるしかない。どうやって?先ほどのミサイルを迎撃するシールドにエネルギーはずいぶん使ってしまった。
エネルギー砲で撃ち落とすにも、もはや一発くらいしか―――。

「一発……一発だ。」

手段がクリアになることで、乱れる気持ちを鎮めていく。
一発。一発であのミサイル群を。そのために―――!

タイラントを見れば、すでに口腔内に白い光を蓄えている。
普段は補助的な動きのみに留まっている愛機のAIが、己の判断でチャージを開始させていた。

「クククッ……最高だぜ、相棒」

この危機的状況で、こともあろうに笑みを湛え。
射撃モードへ移行。射角調整。機体固定。チャージ最大。祈るような天を仰ぐ恰好で。

「『オーヴァーロード』だッッッ!いっけェェェェ―――――――!!」

叫びと同時に、タイラントレックスの口腔から光の束、白い槍、輝く柱が放たれた。
最早これの後には何も残らなくていい。そんな覚悟で、すべての凶弾を撃ち払わんと天へ伸びていく―――
220初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/11(月)03:51:46 ID:Nid
>>216

(残ってる武器じゃ、どうやっても速度か威力のどっちかが足りない)
(別に次のチャンスなんて無くっていい。ただ一度だけ、面食らうような攻撃を繰り出せれば――あっ!)

「コナユキ、銃のコントロール一旦もらうね!」
『? お姉さま、あの機体にはライフルは当たりませんし、対艦刀にだってABC装甲が……』
「そう、確かに〝ビームは〟通らない――けど!」

なずなに委ねられたコナユキの身体は、大雑把な武器で極めて微細な照準調整を行い始める。
狙いは飛来してくる対艦刀――ではなく、その影。

「こっちの攻撃判定は、それだけじゃないっ!」

泡が弾けるような発砲音とほぼ同時。対艦刀の直下で、球状の爆風が炸裂した。
物理的な衝撃によって巨人の業物は大きく跳ね飛ばされ、錐揉みしながら空へと昇っていく。
呼応するように、コナユキも全推力を集中して飛翔。蒼い閃光は、対艦刀が描く放物線の頂点に過たず重なり――――天を、掴む!!

『ああ、なるほど。これは――愉快ですね』

両手の指を柄に食い込ませるようにしながら、コナユキは斬艦刀を手にした。
人工頭脳にスパークが走り、〝フジツボ〟と揶揄される全身のクイックブースターが唸りを上げる。
一周、二周、三周四周、五周六周七周――――瞬発的推進と斬艦刀が齎す遠心力の掛け合わせにより、コナユキは凄まじい速度で『回転』――。

「――――――最後まで、わたしと踊ってもらうよっ!!」

全方位に斬撃の小宇宙を纏った殺人独楽と化したコナユキは、超絶技巧と言って叱るべき姿勢制御によってジグザグに荒れ狂いながら、烈華を切り裂かんと飛来する。
弾き飛ばしきれない質量と、予測しがたい軌道と、速度の鼎立。されど一度限りの捨て身の攻撃は、果たして届くか?
221マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/11(月)03:57:34 ID:6T4
>>217
生憎女性の所持している機体の詳細まで把握できる程の観察眼も能力も知識も持ち得てなかったが、あのケースこそが何よりの証拠。
随分と面倒で厄介な人種に目を付けられてしまったものだ。こういうタイプは一度始まると抑えが効かないのが厄介たる所以なのだから。

「そうかそうか。やっぱりキミもかー。いやー、ほんと良かった。やはり大会の規模がここまでなるとこんな場所に来ても会えるモンなんだなー」

「そうだよ、ボクも大会に出るためにわざわざ遠くからここまで自腹で来たんだよ。夜行バスは腰と首に来るから乗る時は気を付けたほうがいいよー。
 ボクもね、一応目的があって大会に来てるんだけど……、まあこの話は別にしなくてもいいか。わかってるだろうし」

話を振られた途端、洪水のように彼の口から言葉が次々にあふれ出ていく。まさに暴力。まさに圧力。
直接彼女とは関係のない身内話まで語りだすモンだからもう歯止めが効かない。一息かつ早口で紡がれるソレらは間違いなく彼女とは異なるタイプのオタクなのであった。

「そりゃ好きだから来てるに決まってるじゃないか。もっぱらここ最近はずっとショップ巡りに勤しんでいるんだけどね。
 しかし、ここ最近大変なことに気づいてしまったんだよ。ちょっとばかり聞いて頂戴な。
 確かにボクはずっとショップ漁りをしたり、試合中継を見てたりしてたよ。でも気づいてしまったんだ。それはね……」

「もう大会始まってるのに一戦もバトルやってなかったって話だよ! いやー、ホント冗談みたいな話でしょマジで!」

大したオチのない平坦な身の上話も進んでいく。相手の反応なんぞまったく気にも留めていない様子で進めていく独壇場。これではただのトークショー。漫談にすらなりゃしない。
だが、そんな彼の講演会を強制終了させたのが、この店の店主であった。
急に青年の目の前に現れる茶色に染まった皿、ついでに白飯。先ほど頼んでいた回鍋肉である。適度に火の通った味噌が食欲をそそる。
ふと周りを見渡せば、店内の視線は彼に集まっていた。そりゃそう広くもない店内で早口で話し始めれば、嫌でも目を引くのは当然であろう。

「……あ、あはは……お騒がせしました……」

自身が置かれた状況をかなり遅れて飲み込めば、先ほどまでの勢いは何だったのやら、急に縮こまって回鍋肉に手を付けだす。
確かに彼はなりふり構わず突っ込んで来る系の面倒な人種であるのだが、所詮根っこはオタク。多数の人目に置かれる状況は全くと言っていいほど慣れていなかったのだ。
我を忘れるバーサーカーでは無くなった青年は、恥ずかしそうに食事を啄む小鳥になってしまった。
222菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/11(月)04:25:20 ID:1LZ
>>216
>>220
「負けるかぁぁぁあああああ!!!!!!」

 瞬間――――烈華が駆けると同時。全推力を前方へと注いで、刃を構えて日本の刀とともに突撃するそれと正面から打ち合った。
 火花を散らしながらの刃の衝突は、然して烈華が有利だ。恐らくは、不正にデータを弄ってあるであろう相手とまともに正面から戦えば勝ち目はない。
 おまけに中身はそれなりに出来ると来ている――――であれば。真正面から戦うなど厳禁なのは当然の話しであり。

「――――強い。強い。だけど、その強さは不正な力。正統じゃない力。弱いものイジメをするための力。
 ……それで、幾つの機体を壊したの。それに、何も思わないの――――なんて。そんなこと聞いたって、無駄なんだって分かるけど。それでも」

「ああ、そうだよ、菱華。それでも――――」

 装甲が火花を散らす。本来データ上では押し負けているというのに、それでも其処に立ち塞がることが出来るのは。
 刃の向こう側から、紅い瞳で睨みつけることが出来るのは、一重に、そう。“想い”の力だ。アイゼルネスの……気合であり、やる気であり、根性だ。そして。
 背部バックパックから二基のインコムが起動する。この状況でならば――――欠片でも隙を見せれば、アイゼルネスは獰猛にその首元に喰らいつくだろう。


「……どれだけ暴走していても、装甲が薄いのは変わらない筈! 当たって!!」


 複雑な直角軌道を描きながら、それは烈華を挟み込むように展開される。
 その二基が狙うのは、烈華の両脚―――それさえ奪うことができれば。
 まさか、ブースターだけで高速機動が出来る程に巨大なジェネレーターを積んではいまい。その上、その機体は装甲を捨てて機動を得たものであり。
 ならば、低威力の、インコムによるビームでも装甲は、抜けるはずだ。


「お前は! その機体を作った……バトルを楽しんで貰う為っていう気持ちを踏み躙った!それだけじゃない!
 一生懸命に作ったホビーを! 今の今までバトルを楽しんでいた人達を!! 作ってくれたマスターと一緒に戦えるホビーの喜びを! 踏み躙ったんだ!!!
 お前は私達を馬鹿にしてるんだ! そんな奴が此処に居ちゃいけない! お前は居るべきじゃないんだ!!」


「―――― 此処から、居なくなれぇ! !!!」


 更に。ブースターを噴射する。赤熱する加速装置、スパークする手足、罅割れる装甲――――プロセッサは、限界を超えて機体を強化する。
 そして、それでも尚アイゼルネスは止まらない。菱華もまた、彼女を止めることはしない。その激情は、刃を伴って止まることを知らない。

 インコムのレーザーが迫る。黄金の刃を以て、紅色の瞳が迫る。斬撃を纏うコナユキが迫る。

 断ち切るのは、彼か、彼女等か。
223Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/11(月)04:42:06 ID:zHQ()

恐獣の咆哮が、天を衝く光芒が解き放たれる。天馬がチャンスを繋ぎ、古代の龍がその怒りを叩き込む。
その奔流はミサイルの尽くを呑み込み、破壊していく。天空にて爆裂する幾つもの弾頭が、大気を震わせる。
そしてーーーその全てが撃ち落とされる。ただ一つとして目標に到達することなく破砕され、結果として鋼鮫の悪足掻きは全てが阻止された。
すでにディープシャークに力は残されておらずーーーーー弱々しい鳴き声を微かに残してその機体は完全に沈黙する。



閃光が脚部を射抜く。そして片足をつく暇さえ与えられることなく、黄金の刃が侍の鎧を貫いた。
それでも、烈華は紅い光の宿る眼をアイゼルネスに向ける。彼女のソレとは対照的に、烈華のソレには熱量など欠片も宿らない。
だからこそ、負けて当然だった。彼女達が勝てない道理など元より存在せずーーーー次の瞬間にはコナユキの大車輪の如き斬撃が烈華をバラバラに八つ裂いた。




バトルフィールドが静寂に包まれる。全ての戦闘が終結し、同時にシステムを襲っていた不調が復旧を迎える。
即ちそれはフィールドからのログアウトが可能となったということでありーーーーーー一瞬の沈黙の後、大きな歓声が施設内に響き渡った。


…………かくして混乱は収束する。確かに被害はあったものの、それ以上の活躍が子供達の心を躍らせたのは、不幸中の幸いというべきか。
無論、子供達だけでない。この騒動を静観するしかなかった大人達やスタッフ、そしてこの場に訪れていた一般客や大会参加者など、多くの人々の注目の的になることだろう。
暴走する機体を見事に討ち果たし、子供たちの機体を守り通したヒーローとして、貴方たちはその活躍に相応しいだけの感謝と喝采を受けることになる。




—————————————
—————————
————


………そして、その喧騒から僅かに離れた場所から、その始終を見届けた人が一人。
誰の目にも止まらぬ位置から、隠れるように観察を続けていたその人物は、顛末を見届けると同時に笑みを溢すのだった。


「…………———————実験は成功」

そう呟いた“彼女”は、すぐに何処かに姿を眩まして。
224Presage◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/11(月)04:45:30 ID:zHQ()


—————————————
—————————
————




「…………システムの強制終了よりも先にやってくれた訳だ。一先ずありがとう」


熱狂も収まり、全てが一段落した頃、貴方達に感謝の言葉を告げる一人の女性が現れるだろう。
白衣を身に纏い、戦姫を肩に乗せた彼女はユニバース社のエンジニアであり、先ほどまではバトルシステムの制御面からこの混乱を収束させようと努力していたとのこと。
結果として彼女の試みは間に合わず、貴方達の活躍によってこの混乱は収束したこともあって、それが理由で貴方達にはとても感謝しているようだったが。


「色々聞きたいことはあるだろうけど、今は事後処理でそれどころじゃないからさ」
「また、後日連絡を寄越してくれたら、幾らでも説明はするから。ああ、けれどもこれだけは言っておこう」


そう呟いたなら、彼女は懐から何かを取り出す。透明なケース内に収められたソレの正体はーーーーー小さなチップだった。
それが一体どのようなものであるか、想像に難くないだろう。あの二機の暴走は明らかに不正な機能によるものであり、それを引き起こしたのが”コレ”であるということだった。


「これがあの二機に搭載されていた。悪戯にしちゃ、悪巫山戯が過ぎるだろうけど」
「こうして物的証拠が出たんだ。犯人が見つかるのも時間の問題だろうからーーーまあ、何にせよ大会参加者にこれ以上不安な思いはさせないと約束しよう」


彼女は貴方達に連作先の記された名刺を手渡したなら、笑顔を浮かべつつも駆け足で事後処理作業に戻っていくだろう。
そして後日、大会運営は今回の騒動の収束に協力してくれた大会参加者たちへの感謝を表明すると同時に、違法パーツ取り締まりの強化宣言、及び大会の更なる健全化を呼びかけるのだった。
また、渡された名刺にはこう書かれていた。“ユニバース社バトルシステム開発部門”“研究主任”————六徳 セツナ。もし今後何か困ったことがあれば、彼女を頼っても良いかもしれない。
225初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/11(月)05:37:41 ID:Nid
>>223

「……ふぅ、なんとかなった」
『私は腕がなんとかなりました』
「ごめんねコナユキ。今はゆっくり休んでて」

規格外の大剣を全力で操った代償として腕部の接着が崩壊し、着地時に脚部も粉砕したコナユキ。
ナメクジめいてのたうち回っているところを、事後処理に訪れたスタッフによって回収された。
こうしてボロボロになるたび快く修理してくれるつばきには、姉妹ともども足を向けて寝られない。

「みんな凄かったね。なずなおねーさんビックリしちゃった。
 け・れ・ど! あんまり危ない橋は渡らないこと。守れないとサインおでこに書くよ?」

ついでにスタッフから「今後子供たちが危険物に近づかないよう注意喚起を」とも言われたので、〝バトルおねえさん〟として一言。
17歳の自分がこんな説教をするのもどうかと思うけど、確かに小さな頃って大人の話が嫌だった。
ちょっと目線が近いお兄ちゃんお姉ちゃんのほうが信用されやすいものだ――この話を聞き入れてくれるかは別として。

そして案の定、おでこにこそ書いてくれと言う子がいた。親御さんにどう言えっていうのさ。

>>222

大集合してきた子供たちやファンに囲まれながら、なずなはふと取り囲む輪の外に視線を向ける。
そこにいるのは勿論、先程の戦いで共闘したアイゼルネス使いの少女だ。

(……作ってくれたマスターと一緒に、かあ)

決着の瞬間、あの子はホビーへの激しく熱い思いの丈を口にしていた。
もともとの世界観を壊さないような凝った造りからして、正しく模型畑の生まれなんだろう。
自ら作り、ともに戦う。――なずなにとっては耳の痛い話だった。
コナユキがつばき作であることは公表している。しかし憧れのアイドルが、一人ではコロニー国家の簡素な量産機の素組みすら出来ないとは夢にも思うまい。

(あの子、わたしのファンみたいだけど――いちど吐いた嘘って重いなぁ)
(バトルが気に入った今だと、正直なおさらキツいよ)

下手に組まれる子がかわいそうだから。戦闘訓練に時間を使いたいから。つばきが喜んで引き受けてくれたから。
理由が何であれ、なずながホビーの組み立てに背を向けてきたことに変わりはない。
たとえ今から経験しても、嘘は消えない。遅効性の毒に心が疼く。

「おーい、今日の主役さん! こっちに来ようよ!」

ただ、それでも――初風なずなは、求められる存在であることを求めていた。
226天空ショウ◆wh/mLiUm0A :2017/09/11(月)07:18:49 ID:a0k
>>223>>224

「やったぜ!」

 拍手喝采の中一人鼓舞する少年。
今回の手柄は勿論、自分だけとは傲る事無く、自分を除く3人にも惜しげ鳴く喝采が与えられるだろう。

 色々と問題点は残るがとりあえずは、子供たちの夢を護れた事で良しとしよう。

すると彼女。“六徳セツナ”が現れ一通りの説明を果たす。

「…いほう、チップか。」

名刺を受け取り嵐のように、去っていく彼女を尻目に小さく呟くだろう。
本当に色々聞きたいことは山が積もる程にはあるが、兎も角にもこれで事件は解決と…。

「ん?あれ…プロトユニコーン…?」

未だに戻らぬ天馬を心配した様子で覗き混むと、天馬は一歩、また一歩と枷を抱えた囚人の様な足取りで主の元へ戻らんと…。

自慢と謳う一本角は半壊しもう凛々しい姿は拝む事は出来ず、三脚となった脚部からは酷く漏電し装甲は殆ど破壊されていた。その痛ましい姿から悲惨さを物語ってる。

「プロ、ト…ユニコーン……?」

 何かを伝える様に、脚部を前に出しーーー機体が大破する。
装甲が薄いプロトユニコーンは攻撃を凌ぎ耐え、そして限界値を迎えて尚、闘い続け果てたのである。

 遺残がショウの足元に広がりプロトユニコーンの残骸を震える手で必死に拾い上げ、嗚咽し漏らし肩が微かに揺れる。

「へへっ、 …壊れちゃったかな? 修理っと!」
「あ、…っと、 なずなちゃんサインはまた今度ね! …なーんちゃって、あれ……、なんで…?」

 必死に取り繕うと、明るく振る舞うが大玉の水が瞳から頬を伝い小柄なその身体を濡らす。

本当はもうわかっている。ここまで崩壊すれば絶版されたプロトユニコーンはもう修復不能なのは。
それでも気丈に振る舞わなければ情けを掛けられる、自身の情けなさで死にたくなってくる。


「エンジさん…。」
「戦姫のねーちゃん…。」
「なずなちゃん…。」


ーーーごめん、先行く。


帽子を深く被り一言謝罪すれば、この場を駆け出し後にするだろう。
その場を去った少年を誰が咎められるだろうか…。
227ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/11(月)07:43:29 ID:9qU
>>204
牽制のナイフは弾かれたが、相手に僅かな隙を生み出してこちらの着地の隙を誤魔化せた、狙い通りの背後を取る。
ステッキを振り上げたジョーカーは、それを横に振るってカキツバタを殴りつけようとした、威力は低いが背後であるが故に対応を遅らせる。
だがカキツバタとリアのコンビはそれより上手、カキツバタの脇から突き出された刀がステッキを打ち、機体に攻撃は届かない。

ジョーカーは刀とステッキがかち合った衝撃で後ろに跳び退いた、一回、二回と軽やかにバック転を交えつつ、カキツバタの追撃を抑える為に足元に向けてナイフを投擲する。
その動作一つ一つが非常に滑らかで、流れるように繰り出される軽業の数々はそれが人工物で出来たホビーである事を忘れさせそうだ。
実際、最初の登場と余りにギャップのある動作に呆気にとられた観客もいた。

「おっとと、流石にそう簡単にはいかないか…」
「でもまだバトルは始まったばかり、ここからが本番さ」

カキツバタと距離を取ることに成功したジョーカーは、体操選手のような着地を交えてお辞儀をした。
ジョーカーに派手な武器など無い、一撃で相手を葬り去る爆砲も無ければ、光り輝く剣もない。
翼も無いし、ジェット噴射も無いし、勿論変形も合体も出来ない。
しかし唯一にして最大の武器、人々を驚かせ魅了する為のアクションを彼等は持っていた。
228初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/11(月)15:20:04 ID:Nid
>>175

思えば、初風なずなにとってホビーバトルはどこまでも仕事の延長線上にあった。
綺羅星の如き才能を誇るグループの同僚たちと並び立つアイドルであるための、必要経費でしかなかった。
――ただ、戦うために戦うなんてのは、はじめての経験だったのだ。

「わたしも想像してなかったよ。勝てたこともだけど……何より、あなたが笑っていることが。
 今までずっと、戦うことは勝者の総取りだと思ってた。けれど――違うこともあるんだなって」

 もちろんフリーの試合と競技は違う。ここが世界大会の決勝卓なら、敗北の痛みは比にならないだろう。
 けれど。誰よりも勝利を求められて生きてきたアリスちゃんが、こうしてわたしに手を差し出してくれている。
 1か0かの結果を乗り越えて、分かち合えるものが確かにあるんだ。

「わたしひどいヘマしちゃったし、バトル始めたのも最近だし、あれこれ言ってくる人もいるんだ。
 それに――このまま進んでいくほど、譲れない気持ちを持ってる人たちを相手に、勝利を奪わないといけなくなると思う」

そんな、重みを帯びた言葉を区切ると――少女は、あどけない笑みに頬を綻ばせて。

「けれど、どんなことがあっても、今日の気持ちは忘れないよ。……ありがとう。うん、約束だね」

差し出された手に自分のそれを重ね、ぎゅっと握りしめた。
数秒間の長い握手に、お互いの熱を感じて――やがて、昇る朝日がしばしの別れを告げる。
アリスが踵を返せば、なずなはさっきまで繋いでいた手をひらひらと振って。

「それじゃ、またね。――アリスちゃんがわたしの、初めての相手で良かった」

――――また天然で誤解を招く発言を繰り出しつつ、新たな友人の背を見送るのだった。
229菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/11(月)19:29:55 ID:1LZ
>>223
>>225

「……終わった」

「うん、頑張ったね、菱華ぁー」

 瞳を閉じる。……そして開く。
 紅色を閉ざして、バトルフィールドからのログアウトとともに倒れようとするアイゼルネスを、慌てて菱華が受け止めた。
 手の中のアイゼルネスは、満身創痍なれど――何時も通りの笑顔を覗き込む菱華へと返し、その胸をほっと撫で下ろさせた。
 喝采が聞こえる。それが自分達へと向けられたものだと理解した時――――菱華は、帽子の鍔で顔を隠しながら。

「なんで逃げる必要があるのさ。菱華はヒーローだよ、別に何にも恥ずかしいことなんて無いのに」

「だ、だって……恥ずかしいじゃない……!」

 バトルに於ける本人とは同一人物なのか……自分でも疑うほどの有様だった。
 一緒に戦った彼等へと挨拶をすることもなく、その場からそそくさと立ち去ろうとしていた。
 バトルのお姉さんとお話をしてみたいと思ったが、その周りは既に小さな子供達が取り囲んでいるし……その中を掻き分けるのも気が引ける。

「本当にぃ? 後悔しない?」

「い、いいよ……まあ、少しは、残念だけど……」

 強がりとともに、肩を竦めて歩き出す。アイゼルネスの修理もしなければならない、強化案もまだ途中だ……だから、また今度。
 その今度が何時になるかは分かったものではないが。然し、仕方ないのだと自分に言い聞かせつつ――――
 
「――――ほら、呼ばれてるよ、菱華」

「……え、え、うえー!?」

 此方へと声をかけるバトルのお姉さん、一斉に集まる視線、かくして少女は彼女の下へとおずおずと向かっていくことだろう。
 帽子を目深に被りつつ、その下の顔は集まる注目による羞恥心で真っ赤にしつつも――――それでも、間近で彼女に間近で会うことが出来たのは。
 やはり嬉しかった。言葉を詰まらせながら、妙な動きをしながらも、後は――――彼女に握手を求めたり、帽子にサインを貰おうとしたり。
230藤堂 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/11(月)22:13:11 ID:7sz
>>221

――やはり、話しかけるべきではなかったかもしれない。やや引き攣った笑いを浮かべながら、相槌となる彼女の首肯はワンテンポずれている。
元より女はこの手の距離感を好まない気質であった。人間関係とはもっと孤独であり、渇きと疑いを幾分か含んでいて、故に予め規定した自分の領域を侵されたくはない。
まして出会ったばかりの他人に向けるような薄っぺらい笑いに、どんな意味があるだろうか。コミュニケーションに、斯様なる馴れ合いは不要だと、彼女は信じていた。


「……ああ、そう……。」


――それに、周囲の人々からの視線も、やや痛い。あまり同類とは思われたくない。不承不承のうち、返す言葉。
焼餃子と春巻のいずれとも、肉汁と油の味わいが豊潤で甘美であった。この店にはまた来ようと思っている。
余り、店主の心象を悪くしたくはない――と言っても、彼の笑顔は変わらない。さらに言うならば、懐かしいものを見ているような憧憬が、その瞳には宿っていた。
不思議に思った白衣の女は然し次の瞬間、小汚いカウンターの上で奇矯なる光景を目撃する。


「わ、すごい。よくやるわね、彼ら」


彼女の注文した皿うどんが、カウンターの上を駆けてきた。――その下部を支えて走っているのは、恐らく『闘機』と思しき人型ホビーの3人組。
いそいそと女の前にやってきた彼らは、恐らくは手製と思しきチャイナ服風の外装をはあめかせながら、恭しく皿うどんを差し出した。
彼らだけではない。よく見れば厨房の奥、力を合わせて鉄鍋を振るうのは、虎を模した「鋼獣」である。
『人件費浮くのヨ。きちんと教えて整備してやれば、人よりもよく働く。耐熱耐水加工ヨ、油鍋に落っこちてもピンピンしとるネ』――誇らしげに語る店主は、どうやら嘗てはホビーファイターであったらしい。

  皿うどんにソースをかけて、一口を頬張る。やや女は上機嫌になった。或いは紹興酒の酔いが、彼女の箍を少し外したのやもしれない。
   ふたたび彼女は青年に話しかける。今度は、その顔を見ながら。やや、真摯な口調だった。



  「ねえ、貴方」

     「『ホビーの可能性』について、考えたことはある?」
231深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/11(月)23:08:11 ID:PzL
>>223

タイラントレックスの開口部から放たれた光の束がすべての目標を呑み込み、次第に弱まってか細い線になり。
最後に、途切れるように消えてなくなる。それとほぼ同時に、巨獣のからだもエネルギーを失い崩れ落ち、そのままログアウト。

「―――――――」

終わった。今度こそ勝利を掴んだのだ。そう頭ではわかっていても体がそれに追いつかない。
今になって手が震える。あの状況で笑うなどと、自分で自分が信じられない。
それでも、湧き上がる歓声に身を包まれれば。勝者の証を示すように拳を天に衝き上げた。

----

渡された名刺をジャージのポケットにしまう。
六徳セツナと名乗る人物には特に何かを問いただすことなく、軽く会釈だけをして済ませた。
大会以外の面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁だ。
とはいえ、ホビーバトルを愛する人々が巻き込まれるようならその限りではない。とにかく迅速な対応を願いたいものだ。


厄介ごとへの思案を打ち止めて周囲に目を向ければ、まず目につくのは子供たちに囲われるアイドルと恥じらいながらもそこに混ざっていく少女。
……子供たちへの注意喚起などは、あれらに任せればいいだろう。少なくともアイドルのほうはそういった仕事に慣れているだろうし。
もう一方の少女も、注視していたわけではないがバトル中はあそこまでではなかったはずだが……たしか分断を言い出したのも彼女だったはずだ。
頭に疑問符を浮かべながらも視線を外す。他所から女子をずっと見ていていいことなんて何もない。

そして―――ショウは此方から声をかける前に顔を隠すようにこの場を立ち去ってしまった。
愛機が大破してしまえば無理もないか。ましてやプロトタイプ機、修理の見込み先があればいいのだが……。
そんな心配は、しかし敢えて表情にはださず。


さて自分はそろそろ立ち去るか、と思ったところで、どうやら小学生中~高学年の男子たちがアイドルのほうへ寄っていかず固まっているのを発見する。
女子にうつつを抜かすのがかっこ悪いとされる年代なのだろう。ならば彼らには自分から話をしようと、その輪に入っていくのだった。
今回の事件が原因でホビーバトルを怖がってしまう人がいないように。それもきっとヒーローの務めだから。
232マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/11(月)23:26:07 ID:C4A
>>230
しばらくは青年も大人しく黙って食事を進めていた。そりゃあれだけ悪目立ちしてしまった後だ、何を言い出せばいいものかわからなくものだ。
あの空気になった後に口にする飯はいつものように喉を通ってくれる訳がない。普段ならば美味に感じるはずのモノも、どうしようもなくムダなモノと化している。
途方もなく永く感じる時間の中、突如青年の頭頂部を何かの影は覆い隠した。

「ん……、これって、さっき頼み損ねたヤツ?
 てかちょっと待って! コレ……闘機!? よく見りゃアレも鋼獣じゃないか! どうなってんのこりゃ!?」

皿うどんの次に運んできたのであろう餃子が青年の前へとやって来る。もちろん運んできたのは先ほどの闘機三人組。注がれた酢醤油の一滴も零さない完ぺきなチームワーク。
恐る恐る餃子の皿を受け取り、自身のテーブルの前へと置く。特にヘンな要素もない、至って一般的な餃子だ。
一時的とはいえ先ほどのように御大層な高説を垂れていた時と同じような大声が出てきた。またすぐに口を噤んで戻ったのだが。

細々と食事を進めていた時、先ほどまでの話相手だったあの女性から不意に言葉が投げかけられる。

「はい? 可能……性……?」

思いもよらない言葉だった。あれだけ一方的に話していたはずだ。もう相手にもされずこのまま隣で気まずい思いをするだけだと思っていたところに、まさか向こうから話しかけられることになるとは。
とっさに彼女の言葉を頭の中で何度も反芻する。"可能性"。今までそんなこと一度も考えたことも無いことだった。
そりゃ今まで長くはないとはいえ、機体とはバトルで付き合ってきた。だが可能性。自分の機体が更なる高みへと登るとでも言う気なのか。

「急に可能性がどうとか言われても、何の事だがさっぱりわからないんだが……。
 戦う事は好き、といえば好き、かな。でもそれ以上のことは……」

彼女の口調から察するにかなり真面目な話をしようとしているのだろう。だが、一ユーザーとして楽しんでいるだけの人間に何を求めようと言うのか。
言葉に詰まったのか、それ以上の言葉を発しようとはしなかった。それに、同じ趣味を持つ者とはいえ異性から急に言葉を振られる、という経験への耐性が無かったというのもあってか。
233藤堂 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/12(火)00:06:29 ID:iZD
>>232

『私が作った奴ヨ。GREIのAC・《殲撃20型》と、ZGシリーズの《李徴》ネ』――驚く青年へと語る店主は、誇らしげに髭を撫ぜた。
皿うどんの半ばほどまでを平らげながら、またも女は黒い酒を吞み下した。一升瓶は、まだまだ中身を残している。
更にまた、麻婆丼がカウンターを駆けてきた。先ほどと変わらない所作で彼らは丼を運び、女の目前に置いて、一礼して去っていく。


「別に、そこまで難しい話ではないわ。――例えば今こうして、人間のために働いている彼ら」


そうしている間に、既に彼女は皿うどんを食べ終えていた。チェイサーに水道水を飲み干す。
真っ赤な彩りにうずもれた豆腐と、その下の白米を頬張りつつ、彼女は話を続けた。


「技術の進歩は時代を変えたわ。小型高出力なアクチュエータの発達、対話型インタフェースの成長による『強いAI』の出現」
「そして、ユニバース社の台頭によるホビーバトル・システムの登場。これにより、模型作りは立派なスポーツとして発達した」

「けれどホビー関連の技術には、まだまだ色んな使途がある。
 従業員の代わりにホビーを使って、美味しい料理を提供しているこの店みたいに」


小籠包が届けられる。麻婆丼も食べ終えぬ内に、彼女はそれに手をつける。まだまだ食べ足りないらしい。
――食事の合間、滔々と紡がれてゆくその言葉。その妖しげな知性は、これほどまで豊かに摂取した栄養から産み出されているのか。


「――恐らくあたしたちは今、一昔前で言うところの『技術的特異点』に」
「科学技術の長い歴史における、ひとつのターニングポイントに立たされている」

「けれど、ホビー分野の技術はまだまだ未開拓な点も多い。だからこそ、もっと色々な可能性――
 平たく言えば、『できること』が秘められている。そうは思わないかしら」


――彼女もまた、青年とは違ったベクトルに、ひどい凝り性らしい。口許の赤みをチリ紙に拭いながら、彼女は青年をじっと見つめて、静かな声でそう問いかけた。
語り終える間に、彼女は深丼を空にしてしまっていた。「炒飯とチャーシューメン」――視線は逸らさず、そう一言。まだ食べるつもりらしい。であれば、まだ彼女の言葉も続く。
234マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/12(火)00:51:56 ID:5Qu
>>233
よく食べる人だな、と横目で運ばれるたびに無くなっていく彼女のテーブルに並ぶ皿を眺める。
青年にも食欲がないという訳ではないのだが、財政事情もあり、彼女のような食べっぷりを披露することは、この店では行えなかった。

「"できること"ねえ……」

今までやって来たことと言えば自身が追い求めてきた今は亡き企業の製造品を追い求め、それを使って戦うことぐらいか。
この機体のバトルや鑑賞以外の使い道があるなんて、どこにあるだろうか。

「そりゃ、確かにボクのがバトル以外にでも気軽に動かせる機会があるのなら、それに越したことはないが……。
 わかる気はするが、今のボクにはイマイチ想像つかないな……」

「コレが世界をもっと豊かにしてくれるというのなら、ボクは賛成する。いい事だと思うからね」

先ほどのリュックからケースを取り出し、中から自身の愛機を少しだけ封切りする。一兵士の装備品をモチーフにした外部装甲、周囲に収められている重厚感溢れる銃火器の数々。
戦うことしか知らず、指示に対する適当な応答が出来るだけのこの機体が、先ほどの厨房で働く彼らと同じようなことが出来るとでも言うのか。

「なあ、オマエはどうなんだ? 今の生活で満足なのか? これが本当にやりたいことなのか?」

「――まあ、コイツに聞いてもどうしようもないことぐらいはわかってるよ。うん。わかってるんだ」

機体は答えない。今は電源を切っているのだから当然ではあるが、別に返事が必要だったわけではない。
このままAIの答えを聞いたとしても、この言葉を否定することはあり得ないことは分かっているのだから。答えのわかり切っている問題なんぞ面白くない。
それでも聞きたかったのはなぜなんだろうか。彼女の言葉に惹かれるものがあったからか、それとも自身が招いたこの店を覆う空気に押され、精神が参っていたのか。
答えは誰にもわからない。たぶん青年自身にも。

彼女からの視線に気づけず、自身の機体を目を合わせたまま、彼女の言葉に耳を傾ける。決して聞いていない訳ではない。信じられないかもしれないが。
235藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/12(火)01:57:35 ID:iZD
>>234

「――まあ、偉そうなこと言っておいてナンだけど」「あたしにも、全然想像付かないのよね。彼ら彼女らに何が出来るか、なんて」

いよいよ女は酒瓶にそのまま口をつけて喇叭飲みを始める。届けられた炒飯をかき込んで、またひとつ溜め息。
最後に現れたチャーシューメンを、彼女は何のためらいもなく啜り、貪り、スープの一滴まで飲み干さんという勢い。だがやはり、独白を止めることはない。


「災害救助、遠隔手術、宇宙開発、その他人間のこなせない各種作業――」
「AI搭載機が自己学習を重ねれば、芸術分野にも能力を示すかもしれない」
「色々できるだろう、とは思うわ。世界を豊かにする力を、この子たちは持っている」


――そうして、彼女は己が注文した全品を食べ終えた。されど晴れない顔のまま、感傷的にあくびを零す。
青年に倣ったとでもいうのか、彼女もまた机上にモデルのケースを取り出して、確かめるように開いた。
青と白に彩られた、ひとりの闘機。ひたすらに重武装とヒロイックさを追求した、彼女の誇る自身の最高傑作。
それを掌にそっと包んで、彼女は言葉を紡いでいく。誰に語るわけでもなく。


「けれどあたしが、それを引き出してやることはできない。イノベーションを起こすだけの才能がないの」
「技術も人手も知識も資産も気力も、なにもない。自分の能力への自信も、先行投資に賭ける度胸さえない」
「何より技術者として、世の中のニーズに応えていける気がしない。……向いてないのよねえ、根本的に」

「バトルするにしたって、そこまで強いわけじゃないし。モデラーとしての能力にも、限界を感じてる」
「我ながら、情けないわ。コロンブスの卵も僻めないような有様。この大会に出れば、何か変わるかと思ったけど――そんな訳もない」
「だからこうやって、ついついヤケ食いしちゃうのよね。ほんと、あたしって馬鹿」


また彼女は溜め息を吐いた。丁寧に掌の愛機を緩衝材の上に戻して、ケースを閉じて、ロックをかけ直した。
そうして、苦笑するように青年の方を向いた。寡言を好む筈の己がここまで饒舌になったのは、彼の飾らない気さくな人柄もあるのかもしれない――と。


「……ついつい湿っぽい話にしちゃうしね。ごめんなさいね、……ありがとう。」
「これ、お礼よ。お金、困ってるんでしょ? ――せめてもの足しにして頂戴」


立ち上がり際に彼女は1000円札を1枚、彼の目前に置くだろう。返すと言っても聞きはしない。それは、青年もよく分かっているのではないだろうか。
そのまま彼女はレジに向かい、軽く会計を済ませる。決して優しくはない濃度の酒をあれだけ飲んで、顔ひとつ赤くしていなかった。
「ごちそうさま」――そう言い残して、彼女は店を出る。トートバッグを肩にかけて、曇る気だるい昼下がりへと。
236マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/12(火)02:38:11 ID:5Qu
>>235
「コイツらが、世界を豊かに……」

毎年この臨海都市『うみかぜ』で行われている大会が多くの経済効果を上げていることは事実。この店への集客効果も確か。大会が無ければ青年がこの店に訪れることもなかっただろう。
だが、この現状では玩具に過ぎないソレがもたらすものはその程度に収まらず、もっともっと大きなモノへと変貌を遂げていくことだろう。これからも、間違いなく。
そうなった時、自分はどうなるだろうか。今手にしている機体と共に居るのだろうか。
決して遊び呆けていた訳ではないが、自身の将来を明確に考えていなかった大学生には、少々ハードな内容だったかもしれない。

「あー、これはあくまでボク個人の意見なんだけどさ」

「とりあえず今はやりたいことやれればいいんじゃない? 人間したいことするのが一番だ、と思うし。
 キミが何なのかは知らないけど、せっかくこの場にいるんだからさ、今は大会を楽しむことが先決じゃないか、って
 自分のことをバカだとか卑屈になるのはどうかと思うのよ。そりゃまあ、ボクも否定したい箇所はいくらでも挙げられるけど」

「ボクだってバトルはそこまで強くないけど、やってて楽しいし、もっとやりたいからココまで来たし。
 後の事は終わってから考えればいいでしょ。正直ボクも、帰ったらどうやって生活しようとか考えとかなきゃならないんだけど」

「だからこう、なんてえのかな。また今度会った時はこう、いい感じに戦おう。もっと話したいこともある」

初めてあの高説以来に顔を上げ、女性の顔を見ながら話した。素の状態で相手の目を見て話すのはかなり恥ずかしいけど、それでも言いたい気持ち気分だった。
カウンターの下で足が小刻みにカタカタ鳴っているのを聞けば、彼の緊張具合も手に取るようにわかるはず。

「いやいや、ボクもいい話聞けたんで満足で……、
 って何してんの!? そんなお金なんて貰えないっていうか、その、あの……!」

突然置かれた1000円札への反応に戸惑い、言葉を決めかねている内に彼女は店の暖簾をくぐり向こう側へ。
返す為に追いかけようともしたが、抱えた荷物の整理に手間取っている内に、彼女の姿はすでに無くなっていた。

「――おっちゃん、麻婆丼と野菜炒め、ついでに餃子もう一皿追加でお願い」

今度会った時にちゃんと返そう。そう心に決めつつ、カウンター越しに呼びかける。
店内に油の揚がる音と闘機たちが皿を運ぶ足音が響く。今日は久々に腹一杯になるまで食べられそうだ。
237リア◆VguNaE5hPI :2017/09/12(火)15:14:03 ID:88F
>>227

背後への突きがステッキと打ち合ったのを手応えによって感じ取れば、
その衝撃を利用し右脚を軸に反転すると共に右手を離し、逆手に持った刀にて振り向きざまの斬撃を放つ。
しかし、相手もまた衝撃を利用し後ろへと飛び退いており空を切る。
追おうと足を踏み込めば、その爪先を掠めるように地面へナイフが刺さり。

──呑まれている。
完全に相手のペースで試合が進行しているのが嫌という程分かる。

ジョーカーを正面に捉え、正眼に構え直しながら思案する。
機体のほうは初陣と言っていたが操者のほうはとてもそうだとは思えない。
場慣れしている、恐らくはパフォーマーとしての経験だろう。
さしづめ此方がアシスタント、そういった様相で場を支配している。
辺りに目を配れば、疎らではあるものの観客はジョーカーとジョゼフの”パフォーマンス”に目を、あるいは心を奪われている者が大半……少なくともそう見える状態だ。


「この状況、打破するには……」

あの流麗な身のこなし、特に間合いを取るのに跳躍されるのが厄介となっている。
であればそれを狩る手段は一つ思い当たる、しかし消耗が激しいという事実が躊躇いを生む。

「主殿、出し惜しみをしてはおらぬか?」
「……え?」
「相手は一流の公演者、その一流が技を尽くしているのだ。
であれば相対する我々も切り札を切らねば対抗は出来まいよ」
「そう、ですね……!」

どの道、このままイタチごっこを続けていたとて何も状況は好転しなかっただろう。
一か八か賭けに出るのもまた一興、そう思い直すと共に地を踏みしめ距離を詰めんと跳躍する。

青い翅を煌めかせながらも楕円、あるいは記号のℓを描くような軌道で飛翔。
同時に抜き身の刀を横に払うとその刀身は紫電に覆われ、それは火花を散らし次第にその勢いを増して行く。
先程よりも大規模な雷は正しく切り札と言うべき激しさを湛え、その威力のほどを伺わせる。

「雷神剣────!」

必殺剣の名を叫びながら接敵、右手の大上段から振り下ろすと共にその雷霆を──”解き放たなかった”
無論この状態でも唯の刀の一撃よりは強力である。
しかし未だ紫電を纏ったままの一撃は誰がどう見ても”布石”だろう。
それに対しジョーカーは、ジョゼフはどう出るか。
闘志の篭った爛々と輝かせながら敵機の動きを注視する。
238ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/12(火)16:35:59 ID:u2j
>>237
(───さて、どうする?)

ジョーカーが観客に挨拶をして、ジョセフがそれを盛り上げて、登場の時点から集めておいた注目は感心に変わりつつある。
観客の心を掴むにはまだ足りない、ましてやここは大道芸の舞台ではなくホビーバトルの戦場、彼等が求めるのは舞踏ではなく武闘なのだ。
逆にだからこそジョーカーの行動は物珍しく気を引く事が出来た、メインに添えられた異色の味が引き立つように。
だが、副菜が主菜を上回るような事があってはならない、メインディッシュであるバトルで観客を沸き立たせなくてはショーとしては三流である。
その為に必要不可欠なもの───それは自分達だけに限らない。

パチン、とジョセフは指を鳴らした、大きく響く破裂音は視線と意識をそこに集める効果がある。

「素晴らしい!私達のような芸人に本気を見せてくれるとは正に感激の極みでございます!」

相手がいなくてはバトルはバトルとして成り立たない、ここでリアとカキツバタが戦意喪失などしようものなら最低の演劇だ。
故にカキツバタの判断にジョセフは助けられ、その事に心からの感謝を込めた前フリを返す、彼女らの挑戦が成功するカタルシスがバトルを盛り上げるのだから。
そして、彼女らが挑戦をするなら、こちらは課題を与えなくてはならない。
是非とも越えてもらいたいと願う壁を、その先に栄光を隠した厚い壁を作り出す。

「しかし!私達も負ける訳にはいきませんよ!本戦がかかっているので!!」
「───ジョーカー!」

彗星の如き速さと花咲く紫電の火花、カキツバタの大技───の布石と見抜いたジョセフは、ジョーカーにそれを防ぐよう指令を送る。
普通であるならセオリーを捨てて攻撃を受け、反撃するというのがシナリオである、しかしそんな結末の分かりきった筋書きは在り来たりだろう?
故にジョーカーは自らの勝ち筋を捨ててまで相手に対抗しようとはしない、自分の得意分野であるアウトレンジ戦法を取り続ける。

紫電を纏う一太刀をステッキで受け止めるジョーカー、そしてその瞬間にジョーカーの〝隠し球〟が炸裂する。

閃光。

それはカキツバタの一刀によるものではなく。一瞬フィールドを白く染める程の閃光が爆発した。
カキツバタによるものでないとしたら、必然的に犯人は決まってくる、その閃光を発したのはジョーカーのステッキである。
ジョーカーの持つ武器であるステッキは、そのままであれば単なる打撃武器に他ならない、しかしそこは見た目通りトリッキーな戦法を得意にする機体、しっかりと搦め手も付いてくる。
ステッキから放たれる閃光は相手の視覚カメラを攻撃し、凄まじい光量によって一瞬の高負荷を与えて麻痺させる、直接ダメージは与えられないが、視覚に頼らない相手には効かないが、しかし条件が整えば効果は絶大だ。

カキツバタが一瞬でも動きを止めればジョーカーは素早く背後に跳びながら、手足の間接をそれぞれ狙ってナイフを投擲する、大技を受ける力が無いのなら打たせないという戦法だ。
だがしかし、閃光はホビーの視覚カメラを麻痺させるだけであり、人体に影響がある程強い光でもない。
おまけにジョーカーの動きは単純に背後に退がるというだけの直線的な動作である。
───彼等は、相手の勝機を完全に奪い去る事は出来ない。
239リア◆VguNaE5hPI :2017/09/12(火)21:53:40 ID:88F
>>238

フィールドを覆い尽くす閃光、発せられる瞬間までジョーカーをよくよく睨み付けていたリアとカキツバタにとってそれは防ぎようのあるものではない。
大きく怯みこそしないが高負荷によってほんの一瞬とはいえ動きに隙が生まれ、視覚も失われてしまった。

視覚以外の五感によりジョーカーが跳躍した音とそれによって袈裟斬りを外した事を理解する。
──外した事自体は想定内。
本来であれば、その跳躍に対して”追撃”を行い確実に狩るつもりであった。
しかし、光のない世界において理解出来たのは「跳躍した」という事実のみ。
その音の強弱で高さや遠さを測れるほどの手練でもなく、その方向でどこに跳んだかを察するほどの勘もない。
飛び退いたか、あるいは隙を狙い背後を取るか、はたまた全く関係ないほうへと跳んだか、それを理解するに足る材料がないのだ。

だが、構ってはいられない。
敵にとって今の自分は隙を晒したも同然。
何もしなければ追撃が飛んでくるのが道理である。

「めくら撃ちになるな、どうする?」
「決まっています」

カキツバタの問いに、動作を以って答える。
袈裟斬りを外し、普通ならば地を足で踏みしめ勢いを殺すところを逆に地を蹴り、さらなる勢いをつければ
刀に纏った紫電を最大限にまで加速させ、身の丈を優に超える巨大な刀身のようにして形作り──

「斬り、拓くのみ────!」

勢い良く回る身体に合わせて振るい、薙ぎ払った。
紫電がカキツバタの周囲を嘗めるようにして走り裂く。

何処に逃げたのかわからないならば全て斬り裂くのみ、単純かつ明快な結論である。
フィールド全域を覆うほどの範囲はないが、少なくとも刀の一撃としては常軌を逸した射程によってそれを為したのだ。

無論それだけの回転斬りを放てば隙は大きく、魔力の損耗も激しい。
残心にも似た状態で放たれた雷を見ていた刹那。

「ぐ、うっ……!?」

回転斬りを放つ間にジョーカーが投擲したのであろう、ナイフが右の手首と左の膝に突き刺さる。
それのみで機能停止に追い込まれるほどの派手なダメージはない、しかしカキツバタは格闘戦に特化した闘機。
その格闘戦において関節の機能を損なう事は即ち能力の著しい低下に他ならない。
相手にこちら以上の損耗が無ければ、この先の戦闘は一方的なものになる──
そんな不安を抱きながら、回復しつつある視覚は砂煙の向こうにジョーカーを探していた。
240ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/12(火)22:48:20 ID:NnC
>>239
攻撃力は低いが運動性が高く、敵の攻撃範囲外からの攻撃を得意とする機体。
方や近接戦闘を主戦場とし、出力が高い代わりに燃費の悪い機体。
これは前者が〝徹底〟していれば負けようもない勝負である、何の面白みも遊びもなく勝つ事だけを考えればこれ程やりやすい物はない。
当然ながらジョーカーの行動もそれに則った物だった、相手の間合いから出る事を最優先に考え、近付かれれば搦め手で隙を作ってでも得意距離を取らせまいとする。
結果は火を見るより明らかであった筈だ。

「───………」

───だが、もしもそんな〝明らか〟を無理矢理突き破って勝利を&#25445
241ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/12(火)22:55:45 ID:NnC
>>239
攻撃力は低いが運動性が高く、敵の攻撃範囲外からの攻撃を得意とする機体。
方や近接戦闘を主戦場とし、出力が高い代わりに燃費の悪い機体。
これは前者が〝徹底〟していれば負けようもない勝負である、何の面白みも遊びもなく勝つ事だけを考えればこれ程やりやすい物はない。
当然ながらジョーカーの行動もそれに則った物だった、相手の間合いから出る事を最優先に考え、近付かれれば搦め手で隙を作ってでも得意距離を取らせまいとする。
結果は火を見るより明らかであった筈だ。

「───………」

───だが、もしもそんな〝明らか〟を無理矢理突き破って勝利をもぎ取る者がいたとしたら。

紫電が弾け、巨大な光剣が唸りを上げる。リアとカキツバタの決意を乗せた一撃が、彼女達の意志がその一撃に重みを乗せて。
振るわれた一閃、静まる観客、ほんの一瞬であるがその静寂は深く、しかし嵐の前の静けさを感じさせた。

「……お見事」

ジョセフの感嘆の言葉と観客の歓声が、カキツバタの視界が回復する前から結果を明らかな物とするだろう。
視界が回復した時、目の前にいるのは立っているジョーカーの姿だ。
ステッキを握る右腕は機能停止に陥っており、両脚は焦げ付きと斬撃の破壊ダメージが大きい、かろうじて左腕が使えると言った程度だ。
彼女達の勇気ある一歩が、遂に幻惑の中から道化師を引きずりだした、その一歩の踏み出しの報酬がこの状況である。
歓声はカキツバタの見事な一撃を褒め称え、ジョーカーは満身創痍で以前のような動きは出来ない、形勢は一気に傾いた。
242リア◆VguNaE5hPI :2017/09/12(火)23:07:14 ID:88F
>>241

「やった……!」

関節に刺さったナイフを引き抜きながらも状況を遅れて理解したリアが歓喜の声を上げる。
まだ勝敗がついたわけではない、だが大勢は決した。
一か八かの賭けは成功したのだ。

ジョーカーはもう先ほどまでの機敏かつ流麗、魅せる動きなどは出来ないだろう。
ならば最後は決着をつけるのみ。

だが、繰り返すようにまだ終わったわけではないのだ。
勝って兜の緒を締めよ、ではないが慢心していれば寝首を掻かれる。
カキツバタが言わずともリアは自らを律し、一撃を決めにかかる。

刀を痛む右手から左手に持ち替えると、鞘に当てるようにして居合に似た構えを作る。
次はその首を落とす、というある種の予告とも取れる体制。
その予告通り、真っ直ぐに飛翔し接敵と共に一閃する。
左脚の損傷もあり、跳躍の速度は先ほどまでと同様とは行かず動きの鋭さも損なわれているため見切る事自体は容易いだろう。
あとは最後の一手が存在するか、それが最後に勝敗を分かつ鍵となる。
243ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/12(火)23:34:58 ID:NnC
>>242
「ジョーカー!まだ行けるな!?」

ジョセフの呼び声に応えるように、ジョーカーは残った左手にナイフを持ち、指の間に挟んで鉤爪のようにもつ。
まだ戦える、そう言っているようにも見える闘争心が、仮面のようなフェイスパーツに表情を思わせた。
そしてジョセフはまた指を鳴らす、するといつの間に用意されたのか、スポットライトがフィールドのジョーカーとカキツバタをそれぞれ照らし出した。

「お互い最後に残るエネルギーはごく僅か!満身創痍で決着の一撃と行きましょう!」
「私の相棒が速いか、あなたの相棒が速いか!正真正銘これが最後の一撃です!」
「勝っても負けても恨みっこ無し!あゝ勝負とは無情なもの!!」

最後のの一撃、刹那の瞬間を見切るそのタイミングを煽り立てるのはジョセフ、この勝負を最後まで盛り上げんと声を張る。
カキツバタの居合の構えに対してジョーカーはシンプルにナイフを挟んだ拳を引く構え、これ以上の軽業は脚を破壊してしまうので無理そうだ。
故に向かい打つ、相手の一撃の隙にこちらが先に攻撃を捩じ込む、そうすれば勝てるのだ。

「それでは皆さん、ここから先はお静かに…」

しぃ、と人差し指をジョセフが立てた瞬間、戦況は動いた。
刹那、目で追う事も出来ないくらいに速く、気付いた時には二機が既にすれ違っていた。
背中合わせで静止するカキツバタとジョーカー、先に動いたのはジョーカーの方だ。



それは、その場に機能停止して倒れこむという形だった
244リア◆VguNaE5hPI :2017/09/12(火)23:58:18 ID:88F
>>243

最後を決めに疾駆するカキツバタ、最後まで闘志を燃やし迎撃するジョーカー。
線と点が交差し、一瞬とも永劫ともつかぬ静寂がフィールドを支配した。

すれ違いざまに食らったナイフを挟んだ拳による一撃は右の脇を抉り取り、右腕と副推進器を機能停止に追い込むに至った。
全身に張っていた魔力が損傷部から漏れる事で、身体がぐらつく。
だが、まだ戦える。
最後の一瞬まで命を燃やし尽くした武士であると、模造し造られた絡繰とはいえそう刻まれた精神が、そしてその生き様を支えんとする操者がそう言っているのだ。

ジョーカーが崩れ落ちた音を背に受け、勝利を確信すると安堵と高揚、そして歓喜が湧き上がり──

「──やりました……っ!」

刀を持つ左腕を高く挙げ、勝鬨の声を高らかに響かせた。



自分の勝利により決闘が終わった事を告げるシステム音声に従いバイザーを外し、カキツバタを重箱に収納すると
筐体の反対側にいるジョゼフの元へと駆け寄る。

「あ、あの……っ!
この度の決闘はありがとうございました!
私、ジョーカーさんの動きもジョゼフさんの試合運びも凄くて、あの、参考になったと言いますか……ええと……」

未だ興奮冷めやらぬといった雰囲気で、気持ちが先走るのか言いたい事も支離滅裂で纏まっていない。
決闘中の戦士のような雰囲気とは打って変わって年頃の、その中でも普通より緊張しいの女の子といった様子でまくしたてる。
245ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/13(水)00:13:41 ID:qGl
>>244
沸き立つ歓声、気付けば沢山の観客が集まっていた。
突発のショーとしてみればまずまず成功といった所ではないだろうか、不満は一切ない。

「ありがとう、お疲れ様、ジョーカー」

倒れたジョーカーを拾い上げ、シルクハットの中に手品の要領で収納すると、こちらに駆け寄ってくる可愛らしい影が見えた。
言いたい事が色々あるのだろう、色々と言いたいけど何から言えばいいかわからない、そんな感じのリアを見て、ジョセフは笑顔を浮かべる。

「いいえ、こちらこそ」
「楽しいバトルだったよ、負けちゃったのは残念だけど、でも」

ニッコリと笑って礼を返し、ジョセフはリアに観客のいる方を指し示した。
今の戦いを見て楽しんだ人々が沢山いる、笑顔を浮かべる人間が何人もいる、ジョセフの望んだこの光景は決して彼一人では作れなかった物だ。

「皆様!これにて今回のショーは閉幕とさせていただきます!」
「もし気に入って下さったのなら、是非とも応援をお願い致します!」
「それでは!勝者であるリア・ウェルズ嬢を讃えて、今一度拍手を!!」

声を張り上げ観客を煽り、勝者のリアに惜しみない拍手が送られる。
ジョセフはホビーバトルに勝利を求めず、人々の笑顔と楽しみを求める、その為に今回は彼女を利用した。
だから彼女には栄誉を送る、自分には必要のない物を。
246初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/13(水)00:22:44 ID:hcH
夕刻に開かれた予選会でのこと。初風なずなは、オンラインペアリングを見て思わず呻いた。
ファンと勝ち星を争うのについては学生選手権の時から覚悟していたが、ここまでの直球が来るとは。
アイドル冥利に尽きると共に、神様のSっ気に文句をつけたくもなる。

「やーもう、……なんというか、自分に負けられないよね」
『あの事件から僅かにひぃ、ふぅ、みぃ。縁が結ばれた、とでも言うのですかね。尤もお姉さまと結ばれるのは――』
「コナユキ、ここ予選会場だから」

こんな時もコナユキは平常運転だ。重すぎる愛を、爪を短く切りそろえた指先が頭つんつんで窘める。
生みの親が濃ければ娘もキャラが濃い。冬芽つばきは何を思って、こんな風にこの子を育てたのだろう。
聞いてみると「趣味っす」しか言わないので、なずなも腹をくくってアイドルらしく気持ちを受け止め、適度に受け流している。

惚けた話をしているうちに、なずなは対戦台の前に着いていた。目のあったジャッジに会釈をして、コナユキを筐体に据える。
今日の相手は難物だ。互いに奥の手まで知っているという点でも、親交があるという点でも。
戦わなければならないというなら――せめて、この邂逅が喜ばしい思い出となることを。なずなを少しだけ変えた、あの夜のように。

「おまたせ、アイちゃん菱華ちゃん。―――今日は出張バトルおねえさんだよ」

勇気を振り絞って群衆に飛び込み、サインを求めてくれた少女とその相棒の名を、なずなは噛みしめるように呼んだ。
247リア◆VguNaE5hPI :2017/09/13(水)00:28:13 ID:DYP
>>245

ジョゼフに指し示され、今一度辺りを見渡す。
すると、そこには母との特訓や近所のホビー店など普段バトルする環境では無かった観客が、歓声が上がっており。
一瞬遅れて、それらが自分達に向けられている事に気がつくと歓喜や羞恥、勝利の達成感やジョゼフへの尊敬の意など様々な感情が呼び起こされる。
だが、その中でも一番に表すべきは分かっているつもりだ。

「観劇してくださった皆様方、ありがとうございました!」

観客席に向かい深々と礼をする。
予選での一勝とはいえ自分を褒め称えてくれる声が耳に入ると少し恥ずかしいが、
試合後の高揚によって誤魔化すことにする。
今の自分は勝者なのだ、勝者に相応しい立ち振る舞いをしなければ全力で戦ってくれたジョゼフにとって申し訳が立たないというものだろう。

「あの、本当にありがとうございました。
ジョゼフさんとジョーカーさんの連携や勝敗のみに拘らないその振る舞い、私にとっては凄く新鮮なもので感激致しました。
本戦で会うことがあればその時はまたよろしくお願いします!」

一呼吸置いて精神を落ち着かせてから伝えるべきことを伝えると、そのまま重箱を持って出口へと駆け出す。
報告に修理、作戦会議とまだやる事は沢山ある。
勝って兜の緒を締めよ、帰って眠りにつくまでが遠足なのだ……と母が語るのを思い出しながら駆けて行った。
248菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/13(水)00:54:45 ID:0Dr
>>246
 或いはそれは帽子の裏のメモリーだった。
 邂逅から、僅かに数日しか経っていない。菱華にとっては先程にも遥か遠くにも感じる夢のような時間だった。そして、その夢は未だに続いているらしい。
 ゆらりゆらいと踊る確率が、菱華の『カード』を引き当てるのに、これは果たしていくつほどのものだろうか。恐らくは爪の先にも満たない範囲だろう。
 それはやはり夢なのかと瞬きしたところで、書かれた名前は変わらず其処に踊る。

「……よし!」

 控え室にて、ぺちっと自分の頬を叩いた。気合を入れるスイッチにはどうにも情けない色音だったが、菱華自身は満足気だった。
 威風堂々と……自分では歩いている気持ちで、対戦台へと向かう。その事実以外の要因、舞台の喧騒が菱華を揺さぶって、やはりそこで肩を落としたが。
 ともあれ、やるのだ、やらねばならぬのだ。予選会はまだ二回戦、その上一度も勝利はない。そういう点においても、勝たなければならない。

「ふっふーん……また会ったねぇ、コナユキ」

 筐体に据えられたアイゼルネスが、仁王立ちで腕を組んで、やる気満々と言った様子でそう言った。
 先の共闘では良い戦いをしていたこと、たしかにアイゼルネスは覚えている。そういう、“見込みのある”のを、彼女が忘れるはずもなかった。
 であるが故に、この戦いは彼女にとっても良いものになるという確信があった。そして、マスターである、彼女にとっても。

「――――はい、よろしくお願いします、出張バトルお姉さん!!」

 引きこもっていた自分の、毎朝の楽しみであった彼女。今にして思えば、心の支えの一つでもあった番組の彼女と今戦える。
 其処に苦いものはなかった。それどころか高揚しているほどだった。今はまだ対戦開始前だと言うのに、こんなにはっきりと声を出せたのだから。
 帽子の鍔を指先で摘んで、位置を整える。それから、深呼吸をして――――戦場への準備を、整える。


「蓮見菱華、アイゼルネス・カスタム――――行きます!!」
249初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/13(水)01:24:39 ID:hcH
>>248

先日、人混みの中で所在なさげに見えた少女が、声を張り上げて挨拶を返してくれる。
眩しいばかりのあこがれ。その熱量は、かつてなずな自身が抱いたアイドルへの感情とほぼ等しいものだろう。
想い、焦がれ、かく在りたいと思ったからこそ。少女はいま、夢の途上にいる。

いつものあがり症で早鐘を打つのとはまた違ったテンポで、心臓が高鳴った。
今日は私服で、大会に参加しているのは初風なずなだけど――あの子の中のバトルおねえさんに勝ってみせよう。

カウント:10、9、8、7、

『アイさんでしたね。あなたはわたしの母様が好きな機体なので、忍びないですが。
 ここで逢ったからには仕方ありません。全力全壊で、お相手をさせていただきます」

6、5、4、3、

「うん、よろしく。でもくじ運を恨まないでね。
 ――わたし、ディレクターさんに怒られるぐらい強いから!」

ギリギリなジョークを最後に、なずなは真剣な表情になって戦場を見据える。2、1、――0!!

仮想空間に展開された戦場の景色は、スペースコロニー内の都市だ。
建物はミニチュアサイズで、さながらホビーが巨大ロボそのものであるかのような感覚を味わうことができると共に、遮蔽物としても機能する。
SFロボットアニメでは定番と言える(惨劇の)舞台は、流れ弾で隔壁の耐久値が低下し、やがて穴が開くというギミックが用意されている。
居住区は外壁の内側に張り付くように作られているため、穴から落ちれば宇宙空間に吸い込まれる寸法だ。
コロニー外部には宇宙ステージが広がっており、推進機能が優秀な機体ならそちらをメインに据えて戦う事もできるだろう。
また重力が弱く、コロニーの空=中心に近づくほど更に低減されるため、陸戦機体でも中長期的な飛行が可能になる。

そして今回のルールは、お互いの耐久値をゼロにすることが絶対の勝利条件となるデスマッチ。
初期配置はミドルレンジで、彼我の速度差や技量差でロングレンジにもクロスレンジにも分岐し得る立ち位置となる。
比較的複雑な戦場を、二機はどのように活かしていくのか――。
250菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/13(水)01:46:20 ID:0Dr
>>249

「コロニー、か……毒ガスでも持ってくるべきだったかもねぇ」

「悪い冗談は止めてよアイちゃん……」

 展開されるフィールドに、ブラックなジョークを早速差し込んできたアイゼルネスに対して困り気味にそう言った。
 実際に彼女がやったわけではないのだが、元々を辿っていくと中々に笑えない。やはりご多分に漏れず。
 彼女の出身作も、レーザーに改造されたり、毒ガスにより虐殺だったり、地球に落とされたりと散々なのだから――――兎も角。
 遮蔽物が多いというのは好都合だ。コナユキがサブ・フライト・システムを操ることは既に知っている。ならば機動力で劣るのは此方側だろう。

「――――アイちゃん!!」

「はーい、了解!!」

 現在はコロニーへのダメージ値も低い。であればまだ外に放り出されることはない――――ブースターを噴射してアイゼルネスはビル群に潜り込む。
 そして、幸運なことが一つ――――この遮蔽物の多さを、有効に活用できる武装が、アイゼルネスには搭載されているのだから。

「インコム……!!」

 そして背部バックパックより、有線誘導式の支援兵器を展開――――なずな達は知っているだろう。
 これこそが、この機体の最たる特徴。マスター側の操作によって、戦姫側の負担を軽くしつつオールレンジ攻撃を可能とする特殊兵器。
 全力の集中。手動制御である以上、その負担は全てマスターへと伸し掛かる。脳味噌をフル回転させて、最短のルートを捜し、高速の操作を、そして。


「大丈夫です――――私も、負けるつもりはありません!!!」


 ビルとビルの合間を縫って、それはコナユキを挟み込むように現れるだろう。
 機体自体を動かすことはなく、またビル群を死角として、インコムの動作を中心とした姿を見せないままの遠距離攻撃。
 ――――そして、その先端には小型粒子砲。黄金の閃光が、彼女を撃ち貫かんと放たれるだろう。
251藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/13(水)01:51:37 ID:BP2

「……くじ運悪いなぁ、あたし」

「うみかぜ」の中心部付近、屋外バトルステージ。ドーム状のコロシアムに集った観客たちの熱気と震動をを耳に感じながら、藤原篠見は溜め息をついた。
控え室で機体の最終調整を済ませながら、気怠げに目を擦る。彼女が自身の次なる対戦者を知ったのは、ほんの数時間前のことだった。
なんのことはない。大会参加者に配布されるサポートアプリが余りにうるさいから、通知を切っていたら気付かなかった。それだけの話である。
いつの間にか決まっていたバトルの日取りに、彼女が焦ったのは言うまでもないが――そこに挙げられた己の対戦者名を見て、もう一度彼女は驚愕した。


(誰かと思ったらシンヤ君かぁ。晒しツイよく回ってくるし、いい噂も聞かないし、フォロワーからちょくちょく愚痴られるし)
(あーーー面倒だなぁーーー、壊される分には別にいいけどさ、あんまり壊されると次の試合に間に合わないかもなぁ……。)


ビームマグナムの槓杆を引く。陽電子砲システムのリフレクター・ブレードとポジトロン・エミッターの挙動を確認する。――可動域、駆動抵抗、共に問題なし。
またも彼女は、溜め息まじりに立ち上がった。自身の愛機とメカニック・キットを携えて、入場口へと歩き行く。


(……まァ、勝ち目なさそうなら途中棄権するかなぁ。でもそれはそれで、あたしのプライドってもん、あるしなぁ……)


――――扉を開けば、壁越しに響き渡っていた歓声と熱気が、直に藤原の肌を震わせた。されど何事もないかのように、彼女はスタンバイ・ポジションまで悠然と歩いてゆく。
白衣を着た女だった。無造作に伸ばされたセミロングの黒髪が、肩口ほどで呆れていた。フレームレスの眼鏡の奥には、垂れ気味の両眼が微かな光のみを宿していた。
所在なさげに両手をポケットに入れて、藤原は自身の対戦相手を待つ。そこに彼女が忍ばせているのは、己が愛機に他ならなかった。
252赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/13(水)02:19:14 ID:SZw
湧き上がる歓声と熱気、時たま混じる罵声にも動じずに。額に手を当てて日光をさえぎりながら、陰に隠れた表情に分かりやすい感情は見えず。
バトルステージを挟んだ二人はの表情はきっと似通っていただろう。が、ポケットより覗く砲塔を見て。
その口角を引き上げる。露になる八重歯が、酷く攻撃的に見えるだろうか。

「なんだなんだなんだァてめェ
 結局こっちに来たんじゃあねェか!」

端的に言えば、それは滾っていた。自身の対戦相手の名を、その愛機を認識して、故に。

「壊されるのは怖いんじゃねーのォ?
 なぁ、何が変わっちまったんだよ。教えてくれよ!!」

シンヤ自身、その昂ぶりを隠すつもりはないらしく。
それは楽しげに、それともまた別の感情を映しているようにみえるだろうか。
SNSに流れるようなシンヤの姿はきっと、荒くれ者なんて呼び名が似合うはず。
キレ症の、めんどくさいやつ。愚痴られる彼の扱いはきっとそんな感じ。
だからこそ、この昂ぶりの意味は幾らかぼやけて見える。

「なぁ早く、早く教えてくれよォ。
 相変わらず"そんな機体"持ってきてよォ、なぁ!!!」

腰のベルト、そのホルダーの蓋を上げて。露になるのは人馬の姿を持つ『ジャンク』。
整形色の左右非対称。廃品で組み上げられたその機体は、しかし完成度そのものは高いと彼女なら分かるはず。
セッティングベースに機体をセット、彼女もまた準備を終えたのであれば。
VRによるステージが展開し、開戦の鐘はなるであろう。
253初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/13(水)02:19:25 ID:hcH
>>250

コナユキがボードを横滑りさせて様子を見つつ、なずなは状況把握に努める。
対戦競技でお互いの認識が噛み合わないことはよくあるものだが、彼女も「相手をコロニー外に出したくはない」と感じていた。
無重力空間では、相対的にボードの足を止めず戦える利点が薄まってしまうからだ。

(ただ、あのピカッて目が光るやつを使われるリスクは狭い空間の方が高い――逃げられる芽は作っておくべきかな)

とは言え、数日前に猛威を振るった〝あの機能〟を使われると、閉鎖空間ではひどく分の悪い鬼ごっこになる。
程よく傷つけて、必要な場面になったら壊す。まさに腕の見せ所という状況だった。
尤もその前に、より直接的で短いスパンの脅威とも対峙せねばならない。

「いい返事だね。おねえさん楽しくなっちゃうな!」

コナユキを挟撃せんと展開された有線式粒子砲。自信に見合う熟れた扱い方に、なずなは喜色ばむ。
彼女の表情と口ぶりは、心なしか液晶の向こう側に見ていた頃よりも愉快そうに映るかもしれない。
編集された番組よりも『完璧』な実物は、きっと憧れを更に掻き立てる。
―――実際のところ、最近ようやく本心からホビーバトルを楽しみつつあるだけなのだが。

『巧いものですね。さすがはお姉さまのファンです。よく学んでいます』

インコムによる射撃はボードによる防御を巧みにすり抜け、コナユキに負傷を刻む。
案の定と言うべきか本体の耐久値は低いらしく、本体と直結したインコムの火力もあって数発の被弾で約15%が削り取られた。
だが、物理的につながっていることはメリットばかりではない。

『その褒美として――命運の糸、断ち切って差し上げましょう!』

腰部スカートアーマーに隠し持つ投擲暗器、二枚のバズソーチャクラム。それを瞬時に抜き取ると、コナユキは両手で投擲した。
内蔵した電気推進システムで軌道を捻れさせながら飛ぶそれは、インコムのワイヤーを断ち切るように飛来するだろう。
それと同時、ビルを左側から回り込むかのように、コナユキが距離を詰めてくる。
斜めに45度ほど傾いだ姿勢は、投影面積を少なくするとともに、突入読みの攻撃をボードの底面で受け止める狙いがあった。
254藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/13(水)02:49:23 ID:BP2
>>252

おッ、と彼女は声を出す。態とらしい笑いと挑発を交えて、赤鉄シンヤが現れる。湧き上がる歓声の中、少しばかりの罵声。――うるさいな、と彼女は思った。
彼の言葉を笑いながら受け、皮肉を以って刺し返せる程度には、彼女は成熟した人間だった。であるのに何故、こんなギャラリーの、しかも彼に向けられた罵詈雑言などに。


「んなの、てめェで分かってたら苦労しないわよ」


とはいえ、手始めにそう一言。彼女もまた態とらしく苦笑して、呆れたように肩を竦める。されど果たしてそれは、シンヤに向けられたものだったのか。
分からないものは、分からないのだ。なぜメイキング専門だった自分が、ホビーバトルに手を出しているのか。
友人の勧めは切っ掛けではあったろう。だがそこから更に踏み入った場所に、藤原は立っていた。
勝ち負けを競うだなんて馬鹿らしいと思っていたのに。わざわざ愛機を壊しに行くなんて、仕方のないことだと思っていたのに。


「強いて言うなら、そうね――あんたみたいな"面白い"人に、会えるから。なのかしら?」


茶目っ気混じりにウインクをする。ぴん、と人差し指を立てて、くつくつと笑う。
その言葉は、彼というヒールとの舌戦の一環であった。だが確かにそれは、皮肉のない賞賛の言葉でもあったのだ。
――廃棄キットから作り上げられた、ハイバランスのミキシング・モデル。嗚呼此れこそ正しくに、己が求める「可能性」ではないのか?


「――とはいえ、あんたのスタイルは気に食わない。気に食わないのよ」
「手のひとつやふたつ抜こうかと思ってたけど、その言葉で火が付いた」


――いつの間にか、燃えている自分がいることに、彼女は気が付いていた。彼の被ったヒールの仮面にではない。
もっと、なにか、別のもの。長らく忘れていたような、胸の高ぶり。プラモデルでも、ホビーバトルでも、ずっと味わっていなかった――この、甘美なる痛烈さ。

手汗の滲む指先で、彼女は愛機をベースポジションに置いた。86式空挺戦鎧――「武鷲」。
青と白に塗装された、流線の描くスマートなボディ。それでいて堂々たる足回り。相対するものを青く睥睨する、複眼型のツインアイ。
翼に似た両肩のブースター。その間に収められた、巨大なエネルギー・タービン。携える大楯と、強装粒子砲。

――システム側のカウントダウンが始まる。展開されてゆくバーチャル・フィールド。選択ステージは、「ナイト・ジャンクション」。
その名の通り、封鎖された夜のジャンクションを舞台にしたマップ。対戦する2機はその最上部、月明かりの照る路上にて相対する。


「徹底的にやりましょう。大破全損恨みっこ無し、補償費用はてめェ持ち――よ、ッ!!」


――――カウントダウン、ゼロ。READY:GO。レフェリーの声。始まるは、真夜中のハイ・ヌーン。
255菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/13(水)02:50:51 ID:0Dr
>>253
「また切れた!?」

「いつものことじゃん!」

 インコムそれ自体は機体の耐久力には直結しない――――が、対戦の度にこのインコムはどうにも酷い目に遭っている気がする。
 有線の弱点であり、仕方のない面では有る。そこは完全に、菱華自身の技量が問題であるわけだが……兎も角、それに気を取られてばかりはいられない。
 なにせ、『お姉さん』はあんなに楽しそうなのだ。テレビでも見る姿も勿論そうだったが、今、此処で、自分との戦いで、彼女はあんなに笑ってくれる。
 だから――――此方も、こんなところで挫けてはいられない。
 ああ、やっぱりバトルは楽しい。今までの誰とやっても楽しかった。もっともっと、彼女を、笑顔にしなければ。


「私も、楽しいです。だから、もっと、もっと――――」

「でしょー、私の菱華は最高なんだ!! お姉さんとやらにだって負けないくらいに!!」

 まだまだ、インコムが途切れた程度でやることが終わるわけがない。それなりに耐久値は削れたが、致命的とは言い切れない。
 インコムが切断されたせいで戦い方も考える必要がある。遮蔽物を利用した絶対的な優位が削れたのは痛い――――SFSの機動力で翻弄されれば面倒だ。
 そう考えている間にも、コナユキは迫ってくる――――近づけば翻弄される。
 アイゼルネスがプロセッサを起動すれば追いつくことも不可能ではないが、延々と回避行動を繰り返されると面倒だ。
 最悪の場合、タイムアップ……なんてことも考えられる。故に、距離を取って、常に視界に納めながら対応し、あれを落とすのが先決か。

「アイちゃん!」

「あいさー、任された!!」

 ――――恐らくは迎撃を読まれるだろう。防御態勢を取るだろうか。であれば、その防御態勢をすら意味のないほどの火力を吐いてしまえばいい。
 ビーム・ライフルのストックを胸部に接続。ジェネレーターと直結し、ライフルへとエネルギーを供給する。
 完全にはチャージしきれない。恐らくは30%が限度だろうが……余りコロニーを破壊すれば宇宙に放り出される。迎撃には、それで十二分。


「断ち切るなんて甘ったるい――――吹き飛べ!!」


 そして、放たれる大火力粒子砲。流石に最大出力で放った時よりかは、遥かに威力は低下するがそれでも。
 通常のビームライフルが放つそれよりも遥かに巨大で、多量の熱量を放出するだろう――――生半な防御能力であれば、それごと焼き尽くすほどの。
256赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/13(水)03:21:03 ID:SZw
>>254
返される皮肉。ぶつけられる熱。それを気に入ったといわんばかりに、口角を吊り上げる。

「手ェ抜かれちゃあ困るんだわ。
 ここは"そういう奴のステージじゃねぇ"。」

ここに立つからには、その機体に譲れない何かを込めている者しかいない。
手を抜いて、妥協できるような奴等どこにも居やしない。彼女がその何かを自覚できていないとしても、同じだろう。

「だっからま―――――"上等"。
 "本気"で来てくれねーとなァ、煽り甲斐もねェからよォ!!!」

機体を破壊された悔しさも、敗北の痛みも、それは本気で望む故に成る。
赤鉄シンヤが見たいのはそれなのだ。それを聞きたいのだ。

展開されるステージは夜、封鎖された夜のジャンクション。
人の熱は取り上げられて、冷め切ったこのステージ。熱いのは二人のHobby Battle……
月明かりは赤く、赤く、その色は交錯する視線の熱に燃やされていて。

人馬の背部、ウェポンホルダーが展開。ジャイアント・バズーカがその片手に握られる。
全身のブースターが青い炎を噴き出し、前進を開始。巨体でありながら軽量級並みの速度は、脅威と同時に装甲の薄さを示す。

「まずはその―――――高っけぇパーツからいただくかなァ!!!」

バズーカの弾丸は背部、エネルギータービンへ。背部ウェポンホルダーよりもう一発。
257初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/13(水)03:25:21 ID:hcH
>>255

『……ふ。実際、愛に優る武器はないでしょうね』

それは真っ直ぐな賞賛であると共に、だからこそ最後に勝つのは自分だ、という不遜さも滲んでいた。
アイの中では、前回の僅かな接触で抱いた印象が確信に変わっていた。自分とアイは、魂の色が似ていると。

 であるならば、なおのこと全力を尽くして打倒せねばなるまい。
 あの子の気持ちはそれこそ、その主人がお姉さまに向ける憧れに近いだろう。けれど、私の感情は――。

「わたしも毎回ボード壊してるから、気持ちわかるよ。
 ただ今日は大事に使わせてもらおうかな!」

 ――嗚呼。今はただ、応えよう。

『チャフ・フレア・ディスペンサー、粒子撹乱モードで展開』

既に見えている武装から想定される相手の理想的ムーブは、ビームを直撃させボードを潰すこと。
次善といえるのは、無理のある回避で生まれた動きの乱れに垂直ミサイルでカチ上げる動きだろう。
――ならば直撃させず、避けようともしなければ良いまで。

ミサイルの誘導欺瞞とビームの減衰膜を兼ねた複合デコイが、ボードの後部から散布される。名の通り、粉雪のように粒子が舞った。
そして大幅に威力を減衰させた破壊の奔流を、予定通りの部位で受ける。熱で若干形状が歪むがまだ飛行に問題はない。
積載量の都合で試合中一度しか使えない装備の仕事としては、十分を果たしてくれた。

『出し惜しみはしません!』

自ら生成した撹乱膜を抜け出すと、コナユキは相手の砲撃の後隙を突き刺すように武装を展開する。
ボードに懸架されたバスターレーザーライフルを把持し、両肩の18連ミサイルポッド×2を解放――相手の左斜め上から、一気に浴びせかける。
着弾点を中心に爆発を起こす重光線砲と、一つ一つの威力は微小だが大量で流れ弾も〝期待できる〟誘導弾。
インコムを断ち切れたこの時点で、コロニーの外壁に対する損切りは始まっている。
258初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/13(水)03:28:32 ID:hcH
/「相手の左斜め上」について説明がちょっと足りてませんが、ビルの左側=アイちゃん右手側から回り込んで、ビーム受けながら更に進んだ結果左手側、と思ってください
259菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/13(水)04:04:34 ID:0Dr
>>257

「――――嘘っ!?」

「マジで!?」

 揃って驚いた。あれは、まだ“見たことがない”。誘導欺瞞にビーム撹乱の役目を果たす粒子。
 あんなものを搭載しているとは思いもしなかったのは一人と一機の想定が甘すぎたという以外に言いようがない。
 だが、何時迄も驚いている暇はない。ハイパー・ランチャーは敵のボードを破壊するまでには至らなかった。であるならば、攻撃はまだ続く。
 ビーム・ライフルの接続を解除し、右手に持ち替える。ならば、ならば――――逃げられる場所は。完全な回避とは言わない、だが少しでも……。

「……成程、なら望みどおりにしてあげちゃうからね!!」

 放たれる大量のミサイルに、重火力のレーザー・ライフル。あれが全て直撃すれば、流石の重機体であるアイゼルネスも堪ったものではない。
 ならば――――盾を構える。そして右手のビーム・ライフルの狙いを定める。大量に降り落ちてくるミサイル達、その一つ一つを撃ち抜いていく。
 無論この程度では回避しきれない。十八もの群体、撃ち落とし切るには時間が足りなさ過ぎる――――そして、ビーム・ライフルが輝いた。


「耐えろ、頑張れ私、頑張れ菱華、頑張れ!!! ――――私のアイを見せてやれ!!」


 真正面、盾を構えてそれを受け止めた。いくらバトル好きとは言え――――流石に、真正面からあの出力のライフルを受けるなど。
 気が引けたが、然し期待されたからには応えなければならない。菱華は何時だってアイゼルネスに応えてくれた。ならば、それには、そうしなければ。
 瞬間、起きるアイゼルネスを中心点とした爆発――――更に降り落ちるミサイル達。
 齎される破壊は、アイゼルネスの耐久値を確かに削りつつ……然し、そちら側に見える『ゲージ』は、半分程度まで残されているだろう。

「今!!」「勿論!!」

 コロニーの壁には大穴が空いていた。そこからビル群の破片達が外へと排出されていく。
 バスターレーザーライフルと、ミサイル群と、そして――――彼女、アイゼルネス自身のビーム・ライフルの一撃によって。
 着弾と同時に、コロニー自体に穴を開けることによってアイゼルネスは排出される。それによって、ミサイルとレーザー・ライフルの直撃を回避。
 そして、その最中。宇宙へと排出されている最中に、アイゼルネスは、ビーム・ライフルを構え、コナユキに狙いを定めていた。


「――――狙い撃つ!」


 そして、ビーム・ライフルによる狙撃を。今度はSFS狙いではない。確かに、その……“撃破確認までに生じる一瞬”に、コナユキ自身を狙い撃つ。
260初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/13(水)04:44:44 ID:hcH
>>259

「正面から受けるんだ。うんうん、シビれる胆力だね」

一条の光と無数の爆発がアイを飲む直前、なずなはその挙動を注視していた。
可能性としては例のシステムを使った緊急回避を考慮していたが、相手の動きはそれと真逆のもの。
敢えて受け、肉を切らせて骨を断つことに活路を見出す。それはさっきなずな自身がしてのけたのと同じだ。

だが菱華は市販品ではないコナユキのバスターレーザーライフルを、過去に一度見ただけで〝耐えられる〟と踏んで動いている。
そして副次的に齎す破壊の質を知った上で、そこから逆転の一手を弾き出せると考えている。
――甚だしく、豪胆だ。外での物怖じした仕草が信じられないほどに。

光線は盾に着弾し、爆発。追ってミサイルも黒煙と瓦礫の中に飛び込む。
適切な防御姿勢が取れなければ、それだけで敗北が決しかねない一斉射撃。コロニーの外壁に与える被害も甚大だ。
偽りの大地に穴が穿たれ、ごぅ、と風が鳴る。漆黒の宇宙(そら)と蒼い空が繋がり、煤と残骸が急速に排出されていく。
コナユキはご満悦の表情だ。これだけの威力を身体で受ければ、ひとたまりもあるまい!

『やりましたk「やってない!」

――お約束の死亡フラグはしかし、なずなの素早いマニュアル操作によって阻まれた。

咄嗟に身体を反らし、虚空からの一射が動力部を貫くのを防ぐ。代わりに左腕が肩から吹き飛んだが、仕方のないことだ。
ボードに懸架していれば火力源のライフルは撃てる。ミサイルも脚のがまだある。太刀は右手だけでも抜ける。
下手に足回りを捨てて、リミッター解除への備えを失うよりよほど好ましい。

向こうの待ち伏せを許すより先に、穴の向こうへ出てしまうべし。豪勢な露払いとしてバスターレーザーライフルの第二射を放ちつつ吶喊。
首尾よく宇宙空間に飛び出せたならば、コナユキはアイから離れる方向にボードを泳がせつつ、身体はそちらを向いて様子をうかがうだろう。

「ふぅー危ない危ない……素敵なファンにわたしが釣り合うか、ちょっと不安になってきちゃったよ」

バトルおねえさんとしての軽口と、今まで秘めてきた本心の境界が溶けていく。今の彼女は少しだけ弱気で、でも力強くて。
261ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/13(水)13:09:26 ID:Cme
>>247
リアの礼に対して拍手の返礼が行われ、祝福の空気がその場を包み込む。
その様子を眺めるジョセフの表情は緩み、とても満足気だった。

「うん、こちらこそありがとう、とても参考になったよ」
「君も頑張ってね、出来たら本戦でまた会おうよ」

リアの言葉に優し気な声でそう返すと、退場していく彼女を見送ってから自分もその場から退いて行く。
暫くは方々から声を掛けられていたがそれらに笑顔で答えて回り、結局アリーナから出るのに十数分を要した。




「───……本戦でまた会おう、か…」

アリーナへと続く連絡通路、沢山の選手とすれ違いながら、ジョセフは小さな声で呟いた。
その表情に笑顔は無く、そして彼の事を気に留める者もいない、まるでそれは影のように日陰に溶けていた。

「……大会が無事に進むと良いけどね」

───これは、凄惨なホビー暴走事件の前日の話である。
262菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/13(水)15:19:08 ID:0Dr
>>260
「流石に二度も当たってたまるかっての!!」

 放たれるバスター・ライフルを上方への急速機動を以て回避する。
 一度は作戦のために、シールドを用いた上で受け止めたが、二度も同じことをするのは勘弁だ――――表面を溶解させた盾を放棄し、身軽になる。
 然しそれでも、宇宙へ出たとしても厄介なのは相手方の機動力と火力だ。腕を吹き飛ばしせたのは僥倖であるが、実際のところ大きな火力低下には至らない。
 そろそろ出し惜しみも出来なくなってきた頃だ――――何せ手の内は全て見せ終えている。ならば現状の札を、より最適な状況で、切らなければ。

「逃がすかっての!! 菱華ぁ!!」

「うん、行こうアイちゃん――――決めに行こう」

 離れる形でのSFSの機動……それに向かって、逃すまいとアイゼルネスが接近を開始する。
 上下左右、宇宙空間故の回避機動を織り交ぜつつ、高速で機体を加速させながらの接近であり――――更に。
 背部バックパックのミサイル・ランチャーを展開。六連装のミサイルが、機動も合わさってまるで竜巻の如く、コナユキに向けて放たれることだろう。
 更に、間を置かずそれを二回。合計三十六発、大量の対艦ミサイルの雨霰を彼女達に向けて叩き込まんとし、そして空のミサイル・ランチャーをパージする。

「――――次!!」

 そして右手に握り締めるビーム・ライフルを構える。コナユキの軌道上に置いていく形での偏差射撃。
 これと同時に、アイゼルネスの速度が最高速に到達する。追いつくか、追いつかないか――――或いは機動を読まれての一撃もありうるだろう。
 ばら撒いた射撃武器たちも果たして幾許のダメージになるか……実際のところ、それらは本懐ではない。それは、“ここ”からだ。


「ラストぉ!!」


                       『JUUTILAINEN PROCESSOR STANDBY!』


 そして、その最高速からアイゼルネスは更に“加速”する。
 機体限界を一切考慮しない、生半なフレームの機体では即座に空中分解を起こすレベルのリミッター解除装置の機動。
 頭部バイザーが迫り上がり、アイゼルネスの瞳が紅色に煌めいた。大腿部装甲からビーム・サーベルを引き抜いて、黄金の刃を形成し。


「……大丈夫です。今のお姉さんは、私なんか釣り合わないくらいに、ずっと、ずっと!!」


 これを以て、その限界駆動を以て――――コナユキへと、喰らいつくことが出来たのであれば。
 黄金の刃を振り下ろすだろう。ボードだけだの、本体狙いだの、そんな細々とした狙いは付けない。
 大出力の、ビーム・サーベルによって、纏めて叩き切ってやろうと。


「――――素敵な、アイドルですから!!」
263藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/13(水)19:49:29 ID:BP2
>>256


「――なめてんなよ」
「パチ組みしたって半日はかかるんだ。のっけからブッ壊させるつもりはないね」


――青と白に彩られた、細身の躯体がひとつ揺らめく。バックブースターの出力を引き上げて、彼女は機体重心を大きく偏らせた。
大型バズーカの弾頭のまず1発を横に動いて躱し、続く1発を道路上から空中に飛んで躱す。――微かに掠めた弾頭が、左脚部装甲を焦がした。
初手を最小限の動きで回避できたことに、彼女の胸裡が更に燃え上がる。少しずつ、少しずつ、髄液と脳漿が煮立ってくるような、この感覚。
然しその中核に坐す己が思考そのものは、液体窒素にブチ込んだオーバークロッカーのようにクレバーだった。
藤原は決して実戦を多くこなしてきたわけではない。シンヤの煽り立てた通り、気質としてはモデラー側の人間である。
――だが。その緻密な知性と高度な推算、そして天性の直感から導き出される戦闘論理こそが、彼女に勝利を与えてきた。


(あたしも、あいつも、機動性重視。一撃を先に喰らわせた方が、バトルの主導権を握れる。なら――!)


飛翔した「武鷲」はそのまま機体を下方へと傾け、バックブースターの推力を-75°に偏向。トップアタックのポジションを取る。
FCSから強装粒子砲の安全装置を解除。加えて左腕部装着の2連装シールド・ガトリングを「ジャンク」に向け、彼我距離を演算システムへと自動入力、偏差射撃準備。


「来なよ、本気で。いッつまで、そのよく回る口――――叩いてられっかなァ!!」


――――その背中から噴いた蒼炎は、宛ら翼のようでもあった。急降下する、「武鷲」の細躯。赤い月光が白い装甲を照らし、光る複眼が残像を描く。
ガトリングガンの容赦ない乱撃が、高速道路上に立つ「ジャンク」を襲うだろう。急速に両者の距離を詰めつつ、重ねて彼女が撃ち放つは、右腕に構えたビーム・マグナム。
耳に残る射撃音と共に、射線に刻まれる蒼い光条。冷えた大気を灼き沸かす高熱。強装化された重粒子弾が、1発、2発、3発。
生半可な躱し方では巻き込まれる。その弾道に残る紫電さえ、喰らったならば少なからぬ一打。直撃など以ての外。であれば――。
264初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/14(木)00:01:21 ID:OWm
>>262

ボードの銃架を展開してライフルを据えつつ、コナユキは宙域を埋め尽くす対艦ミサイルの波濤に対峙した。

第一波、三発目のバスターレーザーライフルにて迎撃。ミサイルが散開しきる前に、誘爆に次ぐ誘爆、数えて12。
暗黒の星空を奔る光軸を中心に、桜色の爆風がいくつも花開く、お馴染みの光景が繰り広げられる。

第二波の到達に先んじて、第三波に対して両脚のマイクロミサイルポッド36発を大盤振る舞い。
インコム攻撃の意趣返しか、左右に広がってから挟み込むように追尾する極小のミサイルが次々と巨人殺しを果たし、コナユキには届かない。

『後ろにも目をつけるというのは、こういうことです!』

そして迫りくる後回しの第二波。十分に引きつけて弾頭の軌道を束のように纏めた上で、コナユキのアンテナ両側部が光を焚いた。――頭部ビームバルカンの乱射!
ボードを利用して後退を続けながら、身体は正面を向いて迎撃に努める。なずなの戦術の基本にして、真骨頂だ。
先頭を走る一発が炸裂すれば、残りも後に続いていく。
最初の爆片がコナユキの右脇腹に浅く突き刺さるが、ミサイルが彼女にそれ以上のダメージを与えることはなかった。

一息つく間もなく襲いかかるのは、揺さぶるようなテンポのビームライフル。
狂気じみたローリングや横スピンのコンボトリックで光弾を躱し、避けきれないものはボードを傾げて受けた。その間にも、両機の距離は急速に縮まる。

「……そっか。こんなわたしでも、葵華ちゃんにばっちり夢をあげられてたんだね。
 ううん。むしろ葵華ちゃんたちに、わたしの夢を育ててもらったのかな」

「なんだか切なくなってきちゃった。こういう時、なんて言えばいいんだろう」

〝たのしい〟と感じるほどの激しい応酬の中で、なずなの仮面は剥がれ落ちていく。
菱華が憧れた華々しいアイドルではなく、想い悩みながら歩き続ける一人の少女として、彼女は切々と語る。

(ようやく、ようやく気付いた。割り切るとか割り切らないじゃなくて、矛盾してなかったんだ)

アイの奥の手。追い詰められつつあるのに、胸が高鳴る。ドキドキする。一瞬が永遠にも感じられるような時間の感覚が、脳裏を駆け抜けて。

(憧れること、愛することと――真正面から戦って競い合うことが!)


「――――――こうすれば、分かるかなぁ!!」


――刹那、反転。逃げ続けていたボードがくるりと小さな弧を描き、最小限の速度ロスでアイゼルネスに向き直る。
そして背を向け腰を低く屈めていた姿勢から、全身の人工筋肉の撥条(ばね)とスラスターの推力を掛け合わせ、振り向きざまの抜刀を仕掛けていく。
超速度とダイナミックな体捌きによる、防御を考慮しない神速の居合。太刀を動力部にねじ込み、相手より一秒長く生きていればそれでいい。
光と鋼鉄が交差し、宇宙に静寂の声が木霊する。アイドルとファンの激突は、いかなる結末を迎えるのか――――。
265赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/14(木)00:02:31 ID:qUa
>>263

「尚更だろ?
 簡単に作れるモン壊して楽しいかァ!?」

赤鉄シンヤは凡人である。特別頭が良いかと言えばそうでもない。計算高い戦いなどははっきり苦手といえる。
天才的な勘もない。第六感などありはしない。であれば

ガトリングガンよりばら撒かれる弾丸は、正しく弾幕と呼べるもの。重量機並みの体躯を持つ『ジャンク』には隙間など無いに等しく。
片手のバズーカの引き金を引き、それを放り投げた。弾丸は、二門の連装銃の砲門へと。当然それは届かないが、しかし"弾幕に隙間を作る程度"なら可能である。
人馬の巨体は『武鷲』に向け上昇、微かに弾丸を掠めながらも弾幕を掻い潜る。人型と獣型の重なる機体の関節を極限まで稼動させ、針穴よりもか細い道を潜って見せた。
だが所詮牽制の一撃である。本命は無数を超えたその先の三発。耳から離れないあの発射音を感知すると同時、それは取り返しのつかない位置に、既に。
回避は不能。掠めれば『ジャンク』の装甲では致命傷である。防御も不能。ブレードで受ければ主武装を失う。
ならば、と。『ジャンク』はブレードの引き金を引いた。蒼炎を吹き出す剣は、その一振りは神速。切り札たるそれを、此度ばかりは防御に切る。
三発の重粒子が剣閃に重なるその刹那にて、剣は粒子を"掠めて"行く。
光弾たる重粒子は接触により、高濃度の粒子エネルギーを爆発と共に霧散させた。

赤鉄シンヤは凡人である。であれば武器となるのは十数年の経験値を積んだ自身と、『ジャンク』の戦闘AI。
機体は最早自身の体以上になじむと感じるほどで、それは確かに体の一部に違いなく。
一連の動きに思考は介在せず。ただ経験と、愛機の補助だけが最適解へと導いて。

「足んねェ足んねェそれじゃあさァ!!
 撃ってくれよ!!ほらァ!!口も利けなくなるなるのをさァ!!」

回避は攻撃へとそのままつながる。両肩のウェポンホルダー内部よりショットガンが二門同時に放たれ、ガトリングと同じく面として迫る。
それに威力は期待していない。ブレードの引き金を今一度、全身のブースターを起動し、その速度は弾丸と共に迫るほど。接触が許されたのであれば、そのまま剣を振り切る。
距離を離せば蜂の巣どころか跡形も残らないのは、剣の先端が欠けていることから理解させられる。
掠めただけでこの威力である。口ぶりとは裏腹に、赤鉄シンヤに余裕は無い。
266藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/14(木)00:43:38 ID:oRO
>>265

 反撃として放たれた大口径砲の連撃が、ガトリングガンの弾幕に呑み込まれる。直ぐにそれは空中で弾道を重ね、藤原の機体へ届く前に爆散した。
 ――されどその衝撃が、弾雨に間隙を与えた。そして彼の人馬なる機体はその巨躯を揺るがし、弾幕に生じた僅かな勝ち筋をすり抜けてみせた。
 そこに重ねて叩き込んだビームマグナムの連撃さえ、人馬の携えた巨剣は薙ぎ払い、消し去ってみせた。ブースターの噴射炎が夜闇を燃やす。
 やるな。藤原は思った。優れた戦闘センスに、見抜いた勝ち筋を確実に実行するスキル。少なくとも、自分と互角――あるいは、それ以上。
 強者との邂逅。全身の血が沸騰するような、この興奮。生の実感とさえ呼べるだろう。戦い続ける歓び。――故に、言葉も溢れる。


「――はッ! そういうこと、よく分かったよ!
 所詮は『出来合い』の機体だから、アンタはやられても平気ってわけかなァ!?」


 ――然しそれは、藤原の本心ではなかった。モデラーとして素人でも三流でもない彼女には、彼の機体が如何程の労力をかけて作り上げられているか、よく分かっていた。
 不安定な荷重バランスの上に成り立った絶妙な機体デザイン。ましてそれを、廃棄品と思しき模型の端材を用いて組み上げているのだ。
 努力と経験なくして作り上げられるものではなかった。――ただ、それを隠してヒールを気取る彼の本心である。昂奮の中でそれだけが唯ひとつ、癪に触ったのだ。
 

「なら、お望み通りくれてやるさ! ――飛びっきり痛烈なヤツを、なッ!!」


 
 主推進機を最大出力にセット。即座にレッドゾーンまで噴き上がる青白いバックファイア。「武鷲」もまた自ずから、立ち向かう人馬へと突貫した。
 赤い月を背景に、ふたつの機影が交錯する。夜の闇が灼けてゆく。決して射撃戦になど持ち込めない超至近距離。この状況で試されるのは反射と直感、何より格闘。
 ――放たれた散弾を、彼女の機体はシールドで受け止めた。SSTOの船底を流用した歪な大楯に、刻まれるのは無数の弾痕。
 

「――――――散弾じゃあねェ!!!」


 もっと満せと嘶くのは魂。赤鉄のように焼けて燃え盛る激情。推進と共に迫り来るブレードさえも、彼女はその盾で受け止めようとする。
 無論のこと、彼れ程の大剣を此の薄い盾で受け止められる筈もない。ぎいんっ、と響く金属音。剣と盾との迫り合いに、全推力が悲鳴を上げる。
 ぱきり、と何かが折れる音がした。恐らくは、左腕関節のどこか。程なくその分厚い刃が、「武鷲」の盾に食い込んだ時――――突如としてそれは、「炸裂」した。
 「爆発反応装甲」。2枚の装甲に爆薬を挟み、被弾と同時に爆破することで、被弾による被害を最小限に抑える構造のシールド。「武鷲」の盾は、それだった。
 彼女の狙いは単なる攻撃の無力化ではなかった。これほどの至近にて起爆したのなら、指向性を持ったその破砕片は、確かな破壊力を以って敵機の全身へと向かい行く――。
267菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/14(木)00:52:20 ID:Qvh
>>264

 超高速を以て振るわれるビーム・サーベル。やれることは全力でやった。
 吹き荒ぶミサイルの嵐も、ビーム・ライフルの乱射も、全ては唯の露払い。最後に賭けられるのはやはり、またしてもこの一撃に他ならない。
 爆ぜる閃光も納まった。宇宙には一瞬の静寂があった。ただ静かに、スラスターの加速音だけが響いて――――そして、それは一太刀の後に。
 尚勢いを留まることを知らず、それでも尚加速を続けている。

「……お姉さんの悩みは、私には分からない、けど」

 アイゼルネスの腕部ブースターが爆発を起こし、左腕が爆ぜ飛ぶ。右脚の関節部がスパークし、微かな罅割れの後一気に崩壊、切断された脚を置き去りにする。
 コナユキの太刀は確かに動力部を抉り斬っていった。制御は最早失われ、後はその速度のまま砲弾の如くアイゼルネスは飛んで行く。
 後方で大爆発を起こす脚部。それに呼応するかのように、残された左足のブースターが爆発を起こし、下腿部が吹き飛んだ。
 それでも火を吹き続ける背部バックパックのブースターが赤熱、融解しこれもまた爆ぜる――――大きくアイゼルネスが傾いた。

 紅色の光は最早消えかけている――――そして、それはゆっくりと後ろを振り向いて。


「――――悪あがきさ、受け取れってね」


 然し、それでも笑いながら。
 残された機体に握り締めていた唯一の武装、ビーム・サーベル。それの刃を展開したまま、遥か後方のコナユキへと向けて全力を以て投擲した。
 所詮は悪足掻きである、然しそれでも、それは戦う意志だった。決して諦めないアイゼルネスの刃だった。そして、だからこそ、未だ菱華は行く末を。
 決定してはいなかった。もしかしたら万に一つがあるかもしれない。もしかしたら、もしかしたらと――――ほんの、一欠片ほどの可能性だったが。

「私は、はい、お姉さんに夢をもらいましたから。私が……その、こんなこと、言うのは……烏滸がましい、けど」

 灯る光が消える。最早自身の速度にすら耐えきることが出来ず、アイゼルネスは――――残る関節から、火を吹きながら機能を停止した。
 耐久値が零になっていたのはいつからだろうか……宇宙空間が解けていく。ボロボロになったアイゼルネスを抱き上げる。
 疲れきった、然し満足気な彼女を労って指先で頭を撫でると、それに対して何時も通りニコリと笑顔を返し。


「私と、アイちゃんとの戦い――――楽しんでくれたなら、嬉しい、です」
268赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/14(木)01:28:10 ID:qUa
>>266
始めに浮かべた笑みは。それは余りに攻撃的ではあったけれど、"壊し屋"にしては珍しい、他意の無い物だった。
純粋な興奮、滾り。ただ、これより始まる戦いが楽しみで仕方なかった。だって相手は飛び切りの"馬鹿"だ。
機体を見れば分かるとは言うつもりは無い。熱のある頃にどれだけすごいものを作ろうと、冷めてしまえば終わりなのだから。
それでも、彼女の機体は馬鹿にしか作れないものだろう。いっそ玩具に呪われているとすら呼べるような大馬鹿にしか。

―――――歯軋り。故にそれは、彼が最も望まぬ台詞で。
互いの機体を通してしか伝わない言葉の、その真意を受け取るには。二人が挟むバトルステージは余りに広い。

「……あァ、痛くも何とも。
 所詮"お前ら"が捨ててきたモンの寄せ集めだからなァ」

その声は、寧ろ不気味に落ち着いていたが。ステージを挟んだ向こう側、その表情を確認できたのであれば。
それは間違いなく"怒りに打ち震えた"表情である。
きっと、侮辱されたその事よりも。憧れすら抱きかけた相手が、そんな台詞を吐いた事そのものへの怒りで。
面倒な話ではある。自分では同じような事を言うくせに、それが自分以外から発される事を許せない。
ヒールを気取る意味も、きっとここにある。

「―――――だから」

至近にて起爆されたプラスチック片は確かに脅威になりうる。『ジャンク』程度の装甲であれば、それは傷つく程度じゃ済みやしない。
当たり所が悪ければ致命傷である。

「―――――お前のそれは」

だがしかし。今自身が突きつけているのは、確実にその機能を刈り取るに足る両断剣である。
故に


「『出来合い』にぶっ潰されるって訳だよなァァァァああアアアあ!!」


引く必要など一切無く。
全身のブースターの出力を全開に―――否、それ以上へと。
オーバーヒートを起こしたブースターはこれよりまともに動くかもわからないが、それでも止めを刺すには十分だと。
破砕した盾が『ジャンク』の全身を削り取る。破片が内部ジェネレーターを打ち抜かないのはただ幸運でしかなかった。
彼が取った選択は、彼女が見込んだにしては冷静さがそぎ堕ちている。
269初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/14(木)01:41:20 ID:OWm
>>267

「いくよ、コナユキ!」
『……勿論です。一刀散華。この想い、染む紫の雲の上まで!』

コナユキが繰り出す回転斬りは、「飛翔」しながらも〝地に足が着いたまま〟であることを最大限に活かしている。
身を捻り、踏み込む。身体に巡る力と足場の反発を最大限に注ぎ、断ち切る――というふうに。
隻腕という欠落を負ってもなお、それは変わらない。
片手で足りぬと言うなら――――――全身で刀を振るうまで。


『――――ヤェェェェェェーーーーーッ!!!!』


刳り込むが如き荒々しい斬撃が、アイのメインフレームを食いちぎる。間違いなく心臓部を〝獲った〟手応えがコナユキにはあった。
だが極大出力のビームサーベルに身体から突っ込んだ当然の結果として、彼女もまた半身を喪失。
ボードから投げ出され、もはや使用できる武装は頭部のバルカンだけ。そんな状態で漂う満身創痍の機体を、完璧なコースでビームサーベルが追いかけていき――。

――貫く。

「……ごめんねつばきちゃん。やっぱりダメだったよ」

なずなのマニュアル操作で割って入った、半ば焼けただれたエアリアルボードを。

だがそれも動力部を貫かれて爆発し、余波に巻き込まれたコナユキがいよいよ砕け散ろうという瞬間に――ホログラムは溶けた。


コンマ1秒を争う壮絶な戦闘を辛うじて勝利で終え、なずなは改めて菱華に向き合う。
その姿は、なずな自身が青森の片田舎で漠然とアイドルに憧れていた頃より、ずっと確かで強い想いで輝いているように見えた。

「うん。楽しかった――こんなに全部を出し尽くせることって、しょっちゅうあるわけじゃないもん。
 無責任だけどわたし……もっと、菱華ちゃんのかっこいいところ見たいな」
270藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/14(木)01:57:52 ID:oRO
>>268


「――――あッははッ、なんだ。」   「その割には、随分と悔しそうじゃないか。ええ?」


彼の眼光を睨み返して、藤原は唇を歪めて嗤った。――乾いた笑い声だった。であればこそ其処に滲んだ怒りは、殊更に浮かび上がった。
分かり合えないが故に、人は激情を露わにする。分かり合えないが故に、人は誰かを罵る。分かり合えないが故に、人は分かり合おうとする。
退かない巨体。彼女もまた退かない。それは即ち敗北であった。ここで逃げてしまうのは、真に彼への侮蔑であろう。


「"くれてやる"よ。アンタの怒りが、それで収まるなら」

――メインブースターの出力ノズルが、僅かに傾く。ふたたび迫り来る巨刃。ここまでのクロスレンジにおいて、最早それを躱すことは不可能だった。
だが微かに揺らめいた機体が、その刹那に動きうる最大限の機動にて、「致命打」を逸らす。――――斬り飛ばされるのは、「武鷲」の左腕だった。
シールドごと両断された関節部が、紫電を散らすアクチュエータを晒す。然しそれの機能は既に、盾を交えた先程の攻防にて失われていた。

「でもどうせ、"そうじゃない"んだろ。」

             「――――なら。」


コンデンサマガジンを使い果たしたビーム・マグナムを放り捨てる。もはや隻腕ではリロードも叶わない。であれば。
――腰部に吊下したバスタード・ソードが、まだ動く右腕に握られる。銀色の振動刃は抜剣と共に唸り、ブレードを振り抜いた「ジャンク」の両腕を、一太刀に切り落とそうと。


「――――とっとと、"本気"になれよ。」
     「無理してキレてるそのツラ構え、見てて最ッ高に腹立つんだ」


そして刃を翻す刹那、その先端は「開かれる」。――一振りの剣は、二叉の槍へと姿を変えた。
そして展開部から放たれる荷電粒子は、そのままに蒼い刃を「作り上げる」。――二叉の槍は、一振りの巨剣へと姿を変えた。
そして返しの一太刀は、立ち向かう人馬を名に違わぬ残骸へと「変えようとする」。――一振りの巨剣は、彼の躯体を両断し得るか。
271菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/14(木)02:13:41 ID:Qvh
>>269
「――――楽しかったなら、良かったです」

 今回は負けた。今回も負けた。けれど、彼女が楽しかったと言ったのであれば。楽しかった試合なのだ獲れば、それは素晴らしいことなのだろう。 
 勝ち負けではない、満足できる試合ができたかどうかが大事。そして今回は、確かに満足な戦いだった。
 だから彼女の言葉に、そう言ってはにかんで――戦場の熱狂はそうして溶けていく。そうなれば、途端に少女の脳髄は『平静』へと戻っていく。

「か、かっこいい、ってそんな……そんなこと無いです……!! 私なんてそんな……た、ただの、大したことない初心者ですから!!」

 冷静に戻った頭で先程まで何を言っていたのかを思い出して、それとたった今彼女に……憧れどころか、天上の人であった彼女へとそう言われたならば。
 いや、もしかしたら彼女はアイドルなのだから営業トークなのかもしれないが、それでもそう言われれば嬉しいものであり。
 だが、元より持ち得る小心さが彼女の頬を赤く染めつつ、ぶんぶんと頭を振りつつ否定させつつも。
 今まで数多のファンを見てきた彼女ならば分かるだろうか……困り顔は、とてもうれしそうなものだった。

「菱華は最強だから、かっこいいのも当然じゃん!!」

「あ、アイちゃんやめてよ~……」

 左腕と胴体の状態でもバタバタと騒ぐアイゼルネスの追撃に、そう言いつつも彼女のことを強く諌めることもない。 指先で頬を撫でるのみで。
 アイゼルネスは、これだけ負けてもそれでも尚菱華のことを最強であると信じ切っているし、それを決して撤回はしない。
 敗北の理由は、マスターである菱華の未熟であるというのに……それでも尚、だ。彼女には感謝してもしきれない。

「でも。その、予選を突破できるか……自信は、無いんですけど」
「また、お姉さんに会いたいなって、思います、から」

「また、会えたら、その時は――――その、“かっこいいところ”、見せられるように頑張りますから……!!」

 兎に角万感の思いと、蘇ってきた緊張が、彼女に対して何を言えば良いのか、菱華の頭の中を掻き乱していった。
 でも……たしかに。もっと、憧れていた彼女にかっこいいところを見てもらいたい、褒められたいから。


「……その時は、またよろしくお願いします……!!」


 再戦の約束――――と言うと、少々情けないものであったが。
 自信のない菱華にとっては、それでも精一杯振り絞って。頭を下げながら、彼女にそう言った。
272初風なずな◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/14(木)02:44:16 ID:OWm
>>271

『はぁ。憧れの人を、大したことない初心者如きにギリギリ負けかけたことにするのですか?
 菱華さん。卑下が貶めるのは己だけではないと知ってください。――その、つまり』

コナユキはコナユキで達磨状態になっても饒舌かつ辛辣だ。
けれど、最後に何かを言いかけて口ごもる。彼女には珍しいそわそわした言葉運びを見咎めると、なずなは破顔した。

「あははっ、つまり自信を持っていいんだよってこと!
 ……コナユキー、ねぇ、どーしてあなたは何かと女の子に当たりがキツいの?」

『それはお姉さまが――もごおごごごっ』

目にも留まらぬ早さでコナユキのトルソーを掴み、口を塞ぐ。決断的な所作だ。
自分から聞いておいてこうする辺り、初風なずなという人物は意外と意地が悪い。

「菱華ちゃんの成長は、きっと自分で思っているよりずっと早いよ。
 後なんというか……緊張慣れしてる、のかな。それ、実はとっても凄く難しいんだよ」

「自分の気持ちとか想いの強さって、案外近くにいる人にもわからない、もしくは見せてないものなんだ。
 わたしが菱華ちゃんにとって、そういうことに気づく助けになれたなら、最高に嬉しいなって」

胸のうちに響くのは自嘲めいた声音。けれど今までよりは、自分の在り方を素直に受け止められる。
好きだからこそ、転んで足掻くものだと分かったから。そして――支えてくれる人の熱さに、肌で触れたから。

「もちろん。――輝く舞台で、また一緒に踊ろうね!」

次の瞬間には、少女としての弱さをアイドルという色で塗りつぶして。
愛らしい顔立ちにきらめく笑みを讃えた「バトルおねえさん」は、菱華の誓いに手を差し出した仕草で応える。
その後、引き止められることがなければ、踵を返して壇上を去っていくだろう。
273赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/14(木)02:52:00 ID:qUa
>>270
それで終わらせつもりだった。終わらない筈が無いと思っていた。
激情が思考と、彼を動かす経験さえも鈍らせていたのかもしれない。それは余りにも浅はかであり。
相手は必要最小限の動きで。それはバズーカを避けるようにあっさりと致命をそらす。
彼の頭が停止する。ありえない、と。

「……うるっせェェえええエエええ!!」

ありえない。何かの間違いだから。だから今一度、もう一度――――

『―――粒子収束を確認』

思考を取り戻したのは、脳裏に響く戦闘AIの声。愛機の声。
いつもとなんら変わりない、システムボイスでしかない音声だが―――――どこか、自分をとがめているように聞こえて。
真っ白に染まっていた視界に色が戻る。敵機が腰に手を伸ばしていることを確認して

ブレードを引き戻し、巨大な粒子剣と拮抗する。
押し潰す巨大な断剣に対し、切断する粒子剣。盾としてしまえばあまりに分が悪い。
―――が
    
                                    
「……言われなくても本気なんだよなァ     『System"J.U.N.K" 起動』
 お前よりも、ずっと、前から。」


粒子剣のその刃が、ブレードを切断する様子はない。高エネルギーのそれは、打ち合えばいずれは断ち切るはずなのに。
                      
                     
「お前が何にキレてるかなんざ知らん」  『"Over" 承認』


その声は幾らか落ち着きを取り戻しているようだった。


「だが―――――とっておきなら有るぜ。とびっきりの爆弾がなァ!!」
274赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/14(木)02:52:34 ID:qUa
>>273
//CM挟んでここからCM明けです


「だが―――――とっておきなら有るぜ。とびっきりの爆弾がなァ!!」


憎悪に満ちた表情は剥がれ落ちて。かといえばヒールの仮面を被りなおしたわけでもない。
浮かべた表情は、その顔には。"赤鉄シンヤ"の本体が帰ってきていた。

剣とブレードの接点から、その粒子が何かに取り込まれていく。
向かう先は『ジャンク』のツインテール。その内部に隠されたアンテナパーツに粒子が向かう。
そしてブースターの出力は限界を超えて尚、加速していく。

接触した対象からエネルギーを奪い取るシステム。その"オーバーロード"。
ブースターに過剰なエネルギーを供給し、更にそれを補うためのシステムを限界を超えて作動させる。
諸刃の剣とも呼べないような不完全なシステム。発動した瞬間に、機体のゲージを使い切りかねない。が


「ビビルもんじゃねェよなァ、ジャンク。
 勝ちてェ、負けたくねェ。それだけ考えりゃいいんだ
 ―――――だから、ちっと、耐えてくれやァよォ!!!」

限界を超えた、更にその向こう側。持って数秒のそれは、最早切り札とも呼べない爆弾でしかなく。
数秒の間隙にて勝負は決する。ブレードは届きうるか。
275菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/14(木)03:07:31 ID:Qvh
>>272

「そう、ですか。そうでしょうか。そうなんでしょうか……。

 ……お姉さんが言うなら、そうなのかも」

 相手の戦姫にお説教されるというのもなかなか無い経験だろう、それはともかくとして、自信……難しい話であった。
 元より否定に否定を重ねられて来た以上、自分を肯定するという意味の自信を持つというのはそう容易いことではない。
 ……『アリス』にも、同様のことを言われた記憶がある。尊敬する人間の内、二人にそう言われた以上、それは確かにその通りなのだろうが。
 自分の成長を気付くというのは非常に難しい。誰かに言われたところですんなりと実感できるものではない。それでも、彼女がそう言うのであれば。

「……まだ、私は全然自信がもてません。ここまで戦えてるのも、アイちゃんのお陰だと思っています。
 緊張慣れというか……ただ単に、私はバトルにのめり込んじゃうだけで……それ以外を考えてる暇がない、っていうか」

「――――でも、お姉さんがそう言ってくれて。少しくらいは……自分のこと。考えてみようかな、って、思いました」

 だからガラリとその在り方を変えることは出来ないけれど。少しくらいは、自分のことを考えて、多少は誇れるところを、自信が持てるところを探そうかと。
 そう考えながら……差し出された手に、おずおずと手を伸ばす。また彼女と握手が出来るとは思わなかったし……こうして、“対等に交わせる”とは、正しく夢とも。


「はい! ――――対戦、ありがとうございました!」


 それから、去っていく彼女の背へとそう言って、頭を下げてそう言った。
 またいつもの名残惜しさを足元に感じながら、菱華もまた壇上から去っていく――――次に会うときにも、また良い戦いが出来たらと。
276藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/14(木)03:36:01 ID:oRO
>>273>>274

 ――初めて藤原は、「いい顔をしている」と思った。怒声と共に面を上げた、赤鉄シンヤが笑っていたから。
 いま見た彼はどんな顔をしていただろう。然しそんなことはどうだってよかった。つい一瞬前まで抱いていた怒りが、バトルの昂奮に呑み込まれていくように。
 そうだ。これと同じ。彼の表情に、あたしは喜んだ。それでいい。それだけでいい。今こうして死力を尽くすこの瞬間が、ただただ熱くて楽しいように。

 だが彼女は気付いた。過熱した思考の中、愛機の放った斬撃が、かの人馬へと届いていないことに。
 そうして直ぐに、モデラーとしての彼女の慧眼は、その理由さえも悟り得た。あそこだ。あの、アンテナユニット。


(――――「吸われてる」か!! このままじゃ、押し負けるな……!!)
(……しょうがない! 「アレ」やるか!! 回路は総取っ替えだけど、負けるよりずっといい!!)


「陽電子砲システム起動!」「レクテナブレード、展開開始!」「未承認ユニット、アームとの接続を確認!」「フィールドシステム2層、インタラプト完了!!」

 であれば、取れる手段はひとつだけ。――彼女の叫びに応じて、「武鷲」の青いツインアイが、今一度炯炯たる光を取り戻した。
 ――「武鷲」の背中。シンヤが初手に破壊しようとしたエネルギー・タービンが、甲高い音を立てて急速に稼働を始める。
 同時に背後から現れるのは、鏡面輝かせる4枚のリフレクター・ブレード。花開くように展開され、X字の交差を作り上げるそれと共に、青白い躯体の周囲が「歪んだ」。
 夜闇に走るホワイトノイズ。塑み始めるバーチャル・フィールド。その奥には、最高潮の熱狂に包まれる観客席が見えた。

「マイクロウェーブ、正常に受信中!」「ポジトロンエミッター、回転数11000――」「カーネルへ干渉、コマンドプロンプトAE86!」「エネルギーライン、全段直結!」
「ジェネレーター、出力増大!」「――ッッ……回路が焼けてるか!」「なら腕部モーター、イオンナーヴ経由でメインストリームに接続――」

 赤熱する装甲。切断された左腕部から迸る短絡。定格を遥かに超えた過剰電圧に嘶き、白煙を漏らす関節部。
 ――恐らく彼女の機体にも、時間は長く残されていない。赤き月下の決着は、散らす火花のその先に。

        「――よし、これでいい!」「撃鉄、起こせッ!!」


      ――――急激に、その強さを増す粒子剣。先程のビーム・マグナムよりも、遥かに高い出力にて放たれる荷電粒子。
      巨剣の刃は止まらない。その大きさを増してゆく。もはや吸収さえも意に介すことなく。
      アンテナユニットさえも過ぎ去って、もはや剣とも呼べぬ暴力は、背景の夜空さえ断ち切る刃渡りへと、そして。


       「い、っ、けえええええええええええええッッッッ!!!!!」


 ――斬り放たれるは、最後の一太刀。鍔迫り合いを演じていたかの巨剣を斬り裂いて、それは「ジャンク」を両断せんとするだろう。
277赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/14(木)04:15:15 ID:qUa
>>276

「行け行け行け行け行け行けェぇェエエええええええ!!」

展開された十字、歪む空間はそのエネルギー量を酷くわかりやすく示してくれる。
それでも未だ折れぬ剣はそれを受け止めて。粒子をアンテナユニットに吸収し、更に加速を強めていく

バトルステージを挟んだ二人の距離は決して近くない。
表情を認識するのも難しいような。今剣をぶつけ合っているのだから、はっきりと見ることなんて出来やしない。
だから、その彼女の顔は。ほんの少し、視界に入った程度の物であった。それでも。

「―――――お前、性格悪ィわ」


『"Over" End ゲージ残量0』


限界を迎えた『ジャンク』に、一太刀を受け止める力は無く。正しく熱がプラスチックを溶断するように容易く。


「―――わりぃ、負けたわ。」

『お疲れ様です 貴方の健闘を称えます』


随分久しぶりに思い出した感情。負けてただ、悔しいと思う。そこに憎悪も何も無く。
純粋な悔しさと、挑戦する興奮。分かりやすい言い方をしてしまえば、ワクワクしたって事。
両断された『ジャンク』を手にとるシンヤの顔は、どこか楽しそうでもあった。

歓声だけがドームを埋める。そこにシンヤに纏わりつく罵声は無い。純粋な賞賛だけがそこにあった。

「……次は無ェぞ。」

けれど、そこに長居するつもりはなかった。
一時はそれを思い出してしまったとしても、それでも。結局はまだ、譲りたくないものは握ったままで。

「"楽しかった"。じゃあな」

背を向けて、小さく。
278赤鉄シンヤ◆.FuZ8eXCfs :2017/09/14(木)04:18:26 ID:qUa
>>277
//こちらの文章を保管しておいて下さるとありがたいです……

「―――――お前、性格悪ィわ」

やっとわかった。今まで自分がどんな顔をしていたか、彼女が浮かべた顔を見て。
ああ、もっとも。性格が悪いなんて人のことは言えないが
279藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/14(木)04:46:46 ID:oRO
>>277>>278


 そうか。これが、バトルの楽しさなんだ。勝ち負けを競うだけじゃない。言葉じゃ解らないことがある。だから手塩にかけた機体を戦わせて、干戈と共にそれを交わし合う。
 お互いの強さ。お互いの想い。お互いの誇り。その全てを賭けて戦うからこそ、こんなにも楽しくて、悔しくて、言い知れない歓びがそこにはある。
 ――――これが、ホビーの可能性なのかもしれない。作り合い、競い合い、讃え合い、解り合う。この輝きを追い求めた先には、この身を賭けるに値う何かがある。

 光り輝く巨刃が、シンヤの愛機を両断する。バトルシステムがゲームエンドを告げる。ひとときの月夜は、空に溶けて。
 ――最高潮は更に極みなく、会場は熱狂に沸き立った。システムの展開を終えれば、白煙を上げて崩れ落ちるのは、篠見の愛機。
 左腕さえ失ったその美しい機体は傷だらけになって、外装のプラスチックさえも微かに溶けていた。然し篠見は静かに微笑んで、「お疲れ様」と、ひとことを。
 

「ありがとう、シンヤ君」

「――『いい機体』ね。……だから、『いい試合』だったわ。とても。」


 そしてまた彼女は顔を上げて、穏やかな口調で語りかけた。その本心から溢れ出た賞賛を、今度は隠さずに彼へと投げかけた。
 清々しい笑顔だった。銀縁眼鏡の奥、微かに垂れた切れ長の両眼は、深く澄んで輝きを宿していた。


     「でも、次も負けないよ?」
       「――なんせあたし、性格悪いから」


 されど去りゆくその背中には、けらけらと冗談めかした笑い。
 ――修繕費、幾らかかるかなァ。悩ましげにひとつ呟いて、彼女もまたステージを後にした。残された歓声を背に浴びて、確かな熱量を胸裡に感じながら。
280日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/14(木)16:57:13 ID:2k1
>>174
 
「……若いって、いいなぁ」
 
勢いよく走り去っていく青年の背中を見つめ、そう呟く。
武士があんな風に何かに熱中した事は、それこそホビーを最初に触った小学生の頃かそこらまで遡らないと思い出せない。
純粋に羨ましいな、と武士は思った。
 
「さて……俺も行きますかっ 、と……あっ」
 
青年の背中が雑踏へ消えたあと、自分も街へ出ようとして踵を返すが、視界に入るのは散らかったままの梱包材と転がった箱。
誰も片付けなかったのだから、当然ではある……。

「……勘弁してくれよ……」
 
ぼやきと共に、武士はその場にしゃがんで梱包材拾いを始めるのだった……。
281アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/16(土)01:35:54 ID:83O

 夕暮れの海上都市。沈む西日が全てを茜色に染め行くひととき。それでも尚、この街に灯された熱が止まることはない。
 大通りから少し離れた自然公園にも人は絶えず、そこかしこに設けられた公共筐体にてフリーバトルが繰り広げられていた。
 ――その、散策路。時折振り向く人の顔さえも意せずに歩く、長い銀髪とゴシックロリータの少女。その表情は、どこか不機嫌だった。

(本戦までにフヨウの構成は変えておきたいのよね。私を知ってる連中がメタってくるかもしれない)
(それに今更だけど、武装構成は至ってベーシックなのよねこの子――。パンチ力不足、って言うか)
(この間なずなに負けた時だって、結局はセットアップの時点で向こうに遅れを取ってた、そう考えていい……。)

『……マスター。お悩みのようですね?』「当たり前でしょ。貴女への悩みよ。……ちょっとは良い案ないの?」


 その肩に座った黒い戦姫が、己の主人に声をかける。足を止めることなく、彼女は言葉を返した。
 WHBT出場者用のホテルにカンヅメになり、連日来る取材は全て面会謝絶、睡眠時間を限界まで削り――尚も彼女は、自身の戦姫のセットアップに納得が行っていない。


『……ふうむ。』
『例えば、物質化寸前まで圧縮したエネルギーパックを使用して撃つ超高出力ビームライフルとか、』
『リボルバー式の超大型パイルバンカー、6連装の高周波戦術チェーンソー、射撃武器レベルの射程を誇る対艦レーザーブレード――』

「カッコいいけど、どれも扱いにくそうねえ……今から調整し直せるとも思えないし、ああもう……。」


 ――不意に、少女は気が付いた。自分が、「カッコいい」、だなんて? そんな価値基準で装備を選ぼうとした?
 ああもう、本当に疲れている。わしゃわしゃと長い銀髪を惜しげもなく掻きながら、彼女は憤懣やるかたない様子で近くのベンチに腰を下ろした。
 夕日に照らされて煌めく本戦ドームが見えた。綺麗だった。然しそれは今の彼女にとって、随分と遠く見えていた。
282菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/16(土)02:03:52 ID:0rD
>>281

「いっぱい買ったねぇ、アイちゃん」

 世界は静かに夕暮れに向かい、人々は帰路を思い思いに歩いていく――――その中に、一人と一機の少女の姿があった。
 中に幾つもの模型や塗料の箱が透けて見える、ホビーショップのビニール袋を両手いっぱいに持ちながら夕暮れの道をフラリフラリと歩いて行く。
 彼女が語りかけるのは、その頭の上に揺れる、帽子に飾り付けられたリボンを掴む青い瞳の戦姫。
 この町では、さして珍しくもないかもしれない光景である。

「ふわぁ……改修なんてしなくても私勝てるもん」

「うん、アイちゃんはとっても強いは知ってるけど……私はそうじゃないから、どうにかそこをカバーしないと……」

 欠伸をする戦姫と他愛もない会話をしながら歩く――――とはいえ、それは大きな問題だった。
 少女、菱華は愛機であるアイゼルネスを信用している。しているが、実際の試合を経験するとやはりそれだけでは駄目だという部分が浮かび上がってくる。
 その為に散々に機体の強化案に頭を悩ませていたのだ……プランは幾つかに絞れたが、その幾つかが絞りきれない。
 それを決めるために、実際に模型を触って考えるために、こうして想定される素材を購入してきたのだが……これでも、決まりきるかどうか。

「菱華は最高だけど、でもやっぱり、悩むくらいなら誰かに聞いたほうが良いと思うけど……」

「うーん、それは確かに……あっ!」

 ふと視線を別にやった瞬間、見覚えのある銀色を視界に入れた。ゴシックロリータも併せて、間違いないだろう。
 アリス・"エンプレス"・リリエンリッター……先に色々と世話になった彼女だ。
 タイミングとしては非常に丁度良い。相談相手としては抜群だ。

「おお、ナイスタイミング! 相談すればいいじゃん!!」

「ええ、で、でもぉ……」

 急かすアイゼルネスに、足踏みする菱華……同じようなやり取りを数度、繰り返したところで、菱華はようやく彼女達の下へと向かうことだろう。
 もしかしたら、この騒がしさに先に向こうが気付いているかもしれないが――――


「ど、どうも……アリスさん」


 そう言って彼女へと頭を下げる――――頭の上のアイゼルネスは、がっしりとリボンを掴んで落とされまいとしていた。
283アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/16(土)02:23:44 ID:83O
>>282

 ――疲れた頭でひとり思索に耽り、可能性を浮かべては否定するアリスに、目前の押し問答など目に入る筈もない。
 虚空に目をやっていた彼女は、話しかけられてから数秒後、――くい、と己の戦姫に肩口のフリルを引かれる。
 そうして彼女は漸く、自身に宛てられた言葉に気が付いた。剣呑であった顔立ちは、見知った顔を見るなり柔和に緩む。

「――あら、こんばんは。お久しぶりね、蓮見さん」
『ご無沙汰しております。蓮見さん、アイゼルネスさん』

 勤めて悠然たる口ぶりで、アリスは挨拶と微笑みを投げかけた。されどその表情には、隠しきれない疲労の色があった。
 対して彼女の黒い戦姫は、やはり変わらず余裕綽々と言ったところか、片腕を開いて深々と礼をする。主人よりも、こなれていた。

「貴女も、本戦までに機体を組み直すつもり?
 ――私もよ。ここだけの秘密だけど、ね」

 蓮見の抱えるビニール袋に彼女は反応したようだった。スランプ気味とはいえ、チャンプの慧眼は伊達ではない。
 補修パーツとは明らかに違う別キット。再構築に使うなら余るであろう各種塗料。何より、少しばかり物憂げなその表情。
 見抜くのは決して困難ではなかった。――これ幸いとばかりに、やや疲れた溜め息を吐き出しながら、彼女は近日の身辺を語り始める。

「ホテルにカンヅメになって、幾つか試作機を作ってみたんだけど――全然ダメだったわ。
 アイデアはポツポツ浮かぶんだけど、うまく実戦に落とし込めない」

 ベンチの上から両足をぶらぶらと彷徨わせて、自嘲気味な微笑み。「女帝」らしからぬ独白ではあった。
 「――貴女は、どんな機体にするつもり?」不意に溢れたのは、そんな問い。
284菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/16(土)02:58:09 ID:0rD
>>283
「おひさー、フヨウー、アリスー」

「は、はい……お久しぶりです」

 ちゃんと挨拶を返してくれたことに、菱華は先ずホッとしていた。
 未だに彼女は人付き合いに恐怖心めいたものを抱いているがために、相手の挙動が気になって仕方ないのであり……強張っていた表情は。
 最初、険しかったアリスの表情が緩んだのを見ると、そちらに合わせるように笑顔に色を変えた。
 対して、アイゼルネスの方は持ち主に反して余りにも軽いものであった。片手を上げて、最初からたるみきった顔で彼女達に返した。

「は、はい。実は……あ、アリスさんもなんですか?」

 然しながら、彼女が何処か疲れた様子をしているのが気になった。
 というのも、彼女に関しては常に余裕があるイメージを持っていたのだが――――今回は、どうもそうではないらしい。
 そして答えはすぐに出る。成程、彼女は――――烏滸がましいながら、彼女のような上位のモデラーでも自分と同じことで悩んでいるのか、と。
 頭のなかで思い、ほんの少しに親近感を抱いた。そして、同時に少しだけ安心しつつ。

「そうなんですか……実は、私もなんです。
 色々と思いつくんですけど、どれがいいか分からなくて……その、私は今から色々試してみるんですけど」

 彼女の微笑みに、菱華もまた少し『困っている』笑いを見せながらそう言った。
 なんとも……雑誌や番組で見るような姿とは随分違う姿だったが、それも菱華にとっては……彼女の現状を見ると少々失礼かもしれないが、嬉しく感じていた。
 そうして、彼女が溢した一言に――――顔をぱぁっと輝かせ、そして危険を察知したアイゼルネスが肩とビニールの模型を蹴りながら地面に降りる。

「あ、えっとですね! 私はですね、勿論というか、アイちゃんの強化機体を考えてたんですけど幾つかプランがあって!
 どれにするかまだ決め兼ねてて、取り敢えず全部作ってしっくりするものにしようかなって思ってるんですけど、えっとまだちゃんとは決まってないんですけど!
 まずはですね、アイゼルネスの元機体になったヴァルケンのデータを流用してよりそちら側の性能を再現しようとしたって設定でのプランがあって……。
 あ、これ、これです! ヴァルケンってキット化されてなくて、未稼働のガレキか完成済みの限定品可動フィギュアくらいしかなくて。
 だからガレキをフィギュアを参考にしつつ、稼働改造してアイゼルネスと合わせてみようかなと思って!」

 持っていたビニール袋をその場において、そこにしゃがみ込むとその中の内の一つを開いてガサガサと漁り始める。
 スカートを履いている少女としては少々はしたない格好であるが、そんなことは全く気にしていない様子で実に楽しげに。
 その中から二つの箱を取り出した。二つとも中古ショップの値札が付いているが……たった今、彼女が言った二つの商品のパッケージを彼女に見せる。

「それから、えっとですね、フリーデンダール研究所がアイゼルネスを接収して試験機として使ったって設定も考えていまして!
 その場合はインコムを増設して無線誘導兵器を増やそうかと思ってるんですけど、その場合のカラーリングもちょっと迷ってて
 あとどうせなら面白い武装を積みたいなとも思っ……ってまし……て……」

 そうして、そこまで捲し立てるように話してようやく正気に戻る……テンションを上げすぎた、と。あまりにも喋りすぎた、と。
 勝手にヒートアップして、勝手に冷静になって、勝手に恥ずかしくなるという一人芝居に、足元のアイゼルネスもやれやれと言った表情だった。


「……あ、あとこれはアルティメットニッパーです……すみません……うるさくて……」


  恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら……新品未開封の、ニッパーを握り締めつつ。そう言った。
285アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/16(土)17:36:49 ID:83O
>>284

 ――きらめきを宿したその瞳。アリスは微かに気圧されたようだった。なにか来るのだと察したフヨウは、するりとその肩から降りた。
 ぐいっ、と一つ押し来る蓮見に、有無も言えずに赤い目を瞬かせる。頷くことも、かぶり振ることもできずに、ただ溢れ出る言葉の奔流を聞く。
 目の前に並べられたパッケージふたつ。漸く彼女はなにかを分かったように、しかし鷹揚に頷いて――。

 なればこそ。なにかを恥じらって止まる言葉にだけは、首を傾げる。


「……。どうして、謝る必要があるの?」
「とても興味深いお話だったわ――すごいわね、蓮見は」

「貴女がそこまで綿密な設定を練り込んで、プラモを作ってるだなんて。驚いた。
 プロの中にもそういう人はいるけど、アマチュアでも一般的な文化なの?」

 今しがた、なずなが語ってみせた言葉。それはアリスにとって、想像も及ばぬ世界だった。
 原作品をベースにした二次創作。それを基盤としたメイキング。ましてそれを観賞用ではなく、実際の競技に用いること。
 彼女の考えるホビーとは、種々の競技で勝利を収めるための手段であり、あるいは己のことを誰よりも知る小さな友人であった。
 彼女が初めて製作したのが、これといったバックストーリーを持たない実在航空機の擬人化シリーズであったというのも、その一因ではあろうが――。


「……スランプに陥るのも、宜なるかなって所なのかなぁ」


 「なにか根本的なところで、自分はホビーに対する誤解をしている」――今のアリスは、そう思えてならなかった。
 自分にも、蓮見のようなアプローチができたのならば、納得のいく機体も作れるのではないだろうか?
 また溜め息をつく。憂鬱な横顔を晒して、自嘲のように呟く。

「にしたってそれだけ設定を詰められるなら、運用方法もハッキリしてくるものじゃないの?
 その系統的な発想力が、すごくすごく羨ましいわ――。私なんて、どういうコンセプトの機体に組み直すかも、悩んでるところなのに……。」
286菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/16(土)23:10:15 ID:RQv
>>285
「――――そ、そうですか」
「……は、初めてです。そんな風に言われたの」

 え、と瞳を揺れ動かして菱華の表情に困惑が混じる。
 興味が有ることを、熱心に、それに一方的に語って引かれるという現象は何度かある。何度もある。
 それが彼女が社会生活に上手く馴染めない理由でもあった。熱心が過ぎる――それは異端であり、大多数は近寄り難いと敬遠する。
 故に、興味深いや、あまつさえ凄い、だのと言われたことなど……全くの想定外だった。また知り合いを失うのか、とすら思えていたほどだった。 
 嬉しいだとか、そうでないだとか、そういうことを考える前に、先ず困惑が彼女を襲い。

「あ……えっと、インターネットだと、同じようなことをしている人達もいて……。
 アマチュアでも、それなりには。プロの人達に比べたら……全然だと思いますけど」

 突如飛んできたカマキリを目の前にして、何だこのやろう、やるのかばかやろう、と喧嘩を売ろうとするアイゼルネスを拾い上げながら菱華はそう言った。
 少なくとも、プロにもアマチュアにも一定数そういう人間は居るだろう。二次創作の延長線上に、模型作りが有るという人間が。
 そういう輩がホビーバトルに参戦するのは、性質としてはなかなかあることじゃないのかもしれないが……兎も角、菱華自身もその珍しくない内の一人だった。

「……私、少し前まで引きこもりだったんです。その時からこういうことにのめり込むようになりました。
 その時の私は、この世界が嫌いで、自分が嫌いで……だから、これは全部現実逃避の延長線上ですから。凄くなんかないです、凄くなんか」

 それから、少しだけ声のトーンを抑えて。
 自嘲気味、或いは自虐気味にそう言った。何の事はない、何ということはないように話したかったが。
 そういう場合に限って、感情とは湧き出るものである。僅かに声を震わせつつ。

「そうですね、私は……運用方法は、後についてくるものなんです。完成する頃には、出来上がってくる感じで。
 数多の中で妄想を只管繰り返した結果の産物で、勝とうと思いながら作ろうと思ったことなんて一度もないんです……恥ずかしいんですけど。

 それを言うなら……プロの人達の方が、すごいです。勝てる方法を、勝つための手段を考えて、それを一つのホビーとして形にするなんて。
 私には出来ませんから。だから……アリスさんは、私なんかより、ずっとずっと、凄いと思います。なんというか、その」

 それから菱華は言葉を詰まらせた。
 こんなことを自分が言って良いのだろうかと思いはしたが……いい言葉を思いつかない。
 彼女に対して、自分如きの言葉がどれ程の意味を持つのだろう。そういうものが、喉元まで迫り上がった言葉を堰き止めるが。


「げ、元気、出してください……!!」


 『自身を持って下さい』、なんて言おうかと思ったが流石にそれは失礼にも程があるかと思いつつそう言った。
 然し、元気を出して……何ていうのも少々的はずれな気はしていたが。
287ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/16(土)23:20:17 ID:S8t
WHBT会場に複数ある施設のうちの一つ、ホビーバトル体験フィールド。
最近このフィールドでホビーが暴走するという事件があり、安全上一時的に規制がされていたものの遂にそれが解除された。
とは言えあの様な事件があってからは中々近寄る子供も少なく、乱戦用の広いフィールドは以前と比べるととても閑散として寂しくなってしまった。

これはいけない、ホビーバトルは本来楽しむ物であり恐る物ではない、ホビーの未来を担う子供達にそれを伝えなくてはならない。
そう考えたのはWHBTの運営スタッフではなく、ただの一個人、それも普通ならこの会場に用事が無いはずの大会出場者であった。

「よーし、いいぞジョーカー!」

ワイワイと集まる子供達と、子供達の操るホビーの中心にいるのは一人の青年と彼の操るホビーであった。
赤と白のカラーリングを施された、ピエロのような外観のホビーが青年のホビー、大会参加登録も確りと済まされているれっきとしたバトル用ホビーである。
本来なら今ホビーを体験するような初心者と戦っても勝負にはならない、しかし趣向を少し変えて、子供達を白熱させていた。

「おっとっと!今のは危なかったかな?でも私のジョーカーはそう簡単には捕まりませんよ!」

青年の駆るホビーは子供達のホビーが繰り出す攻撃を次々と回避し続けている、銃撃をしゃがんで躱し袈裟斬りを回転して躱し突進をジャンプして躱す。
そのどれもが当たりそうで当たらないギリギリの所で、ジョーカーと呼ばれるホビーが攻撃を躱す度に子供達は白熱した声を上げた。
しかし矢継ぎ早の攻撃を躱すジョーカーは一度も反撃が出来ず…否、攻撃をせずにいた。

「さあさあ、途中参加もOKですよ!三分の間に私のジョーカーを捕まえることが出来た子には豪華商品をプレゼント!」
「そこの君も、見ている君も、友達を誘って是非是非チャレンジをして下さい!」

彼等がこの初心者用のフィールドで行なっているのは、ホビーを使った鬼ごっこ勝負であった。
ルールは簡単、三分の間に挑戦者チームがジョーカーを捕らえる事が出来たなら勝ち、挑戦者チームは何人でも構わない。
ホビーが無ければ貸し出しの物でも良いし、特別なバトルの腕も必要無く危険度も低い、何よりバトル以外の遊び方もあるのだと示す理由もある。
それに〝豪華商品〟があると聞けば、子供達はそれにつられてチャレンジをする、そうしていつの間にかその鬼ごっこは観客を含めて盛り上がりを見せていた。
288ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/16(土)23:49:14 ID:58B
>>287

「……あれは…」

そんな光景を遠くから眺める少女が一人。その雰囲気は周りの観客と比べると異質で一際目を引くものだった。
言うなれば、人形と表現すべきだろうか。そんな彼女が見つめるのはその青年と子供達のホビーバトルだった。

「……何が楽しいんだろ…あんなおもちゃ遊び…」

ぽつりと呟くのはそんな言葉だった。およそこの場にいる人間が発する言葉ではなく、では彼女は何のためにこの場に居るのかと思うものも居るだろう。
だがそれは単純なこと。彼女には"それしかない"からそこにいるのだ。他に出来ることが何もないから。

『ニーナ、そのバトルに参戦しろ。あのホビーは大会参加者だ、倒せば予選通過に近づける。お前なら出来るだろう』

「………はい、分かりました先生」

短く返事をするとニーナは人混みをかき分けて進んでいく。目指す先は現在行われている乱戦用のフィールド、そしてあのピエロのようなホビー。
子供達の中に紛れ自らのホビーをセットしようとするその姿、そしてそのホビーに観客と子供達は息を飲む。

「ニーナ・アルキファイス、"リコリス・ラジアータ"出る」

『……了解、リコリス出撃します』

その短い出撃合図と共に現れたのはまさに戦闘をするために組まれたかのような機体だった。
戦姫と闘機のミキシング。ほぼフルスクラッチのオリジナル機体。それは周りの子供達のホビーを軽く見渡すと、そのホビーの瞳はジョーカーをしっかりと捉えていた。
289アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/17(日)00:01:08 ID:wMW
>>286

 これで褒められぬのならば、果たして何が褒められるというのか。少なくとも今のアリスとしては、そう言いたい気分だった。
 積極的な思考のアウトプットとシェアリング。彼女は比較的一匹狼に近いスタイルのファイターではあったが、チームを組むのであればそれらは何より重要である。
 続く蓮見の独白には怒りさえ覚えた。これを異端として晒し上げるのが日本人というものか。自分にとって理解しがたい他者との交流を拒絶するムラ社会か。
 ――憤懣遣る方無いといった表情で、アリスがなにか怒りを詰まらせたところで。絞り出すようにして蓮見が口にした言葉に、またも彼女は目を丸くした。


「……わ、私? 
「そんなに、元気、ない?」

「――そっかぁ。私、元気ないように、見えちゃってたか……。」


 それはまた、「女帝」にとっては驚愕でしかなかった。無論はたから見たのであれば、彼女はひどく憂鬱であったろう。
 だが彼女は理解していなかったのだ。あまつさえ、いつものように取り繕えているとさえ思っていた。無意識の表情ほど気付き難いものもない。


「――……私もね。ホビーは、逃げ道だったのかもしれない。」

 不意に彼女の口から紡がれるのは、彼女自身の暗い独白。あるいはそれは、蓮見に絆されたのかもしれない。

「実家がどっかの貴族の血筋でね。血統を絶やしたくないとか何とか。けれど私は末子だったし、正直期待はされてなかったのよね」
「文句は言わせないよう、欲しいものだけは強請れば買えて――たまたま手に入れたのが、フヨウだった。」

「そこで少し才能があったから、プロでそこそこ稼げるようになった。今はもう実家とは殆ど縁切ってるけど、未だに連絡が来るわ。皮肉な話よ」

 詰まる所。それがアリスにとって、ホビーというものを「楽しめない」理由だった。
 遊ぶために始めたわけではないから、友情と実績を築くためのツールであれど、創作の舞台として見做したことはない。
 ――吐き出し終えたのなら。ふっ、と。吹き出すように、アリスは笑った。俯いていた白皙の面を上げて、浮かべたのは穏やかな微笑みだった。


「……ありがと、蓮見。その言葉で、わたしも頑張らなきゃなって――そんな、気持ちになった。
 こんな姿を撮られたら、危うくスッパ抜き記事にされるところだったわ。『女帝に翳る凋落の兆し――』みたいな、煽り文句でね」


「貴女も自信を持ちなさい。折角『この』わたしが褒めたのに、この好意を無碍にするつもり? ――なんて、ね。
 プロのわたしといい勝負をして、思いもよらぬ刺激を与えて、頑張り直すいい切っ掛けも作ってくれた。これで凄くないなら、世の中の大半は凡人よ」


 気付いたのなら、冗談のひとつまで飛ばしていた。体の気怠さはまだ残っていたけれど、それが気にならなくなっていた。
 ――他人と関わることが、こんなにも自分を幸せにするだなんて。思ってもみなかった。気の知れた相棒と生きるのが、一番幸せだと思っていたのに。


「そうね。これでまた、現ナマで御礼をするのは無粋に過ぎるわ。そこまでわたしも、非常識じゃない。
 ――今のわたしにどれだけ適切なことが言えるか解らないけど、どこで悩んでるのか話してみなさい。アドバイスくらいは、できるはずだから」

 悠然とベンチに座りなおして、じっと蓮見の瞳を見つめながら、彼女はそう言った。――猫じゃらしと戯れていたフヨウを、そっとその肩に乗せながら。
290菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/17(日)00:38:56 ID:3QG
>>289
「あ、ご、ごめんなさい……ただ、その、何となく……そういう風に、見えて」

 彼女自身が、それに驚いている様子に今度は逆に菱華が驚かされ、そして萎縮した。
 確かに表情の変化は些細なものだったかもしれないが、なんというか、雰囲気が違っていた……というべきか。
 兎も角、なんというべきかと頭をぐるぐるしていた。ああまた、余計なことを言ってしまったのだと思っていた……の、だが。

「……そう、だったんですか」

「ごめんなさい。私じゃ、よく分からない世界の話です……けど」

 血統、貴族、そういうものにはとんと縁のない生活であった。そも、日本人の中で未だにそういうものを気にして生きている家系は少数派だろう。
 そして、蓮見菱華という家自体も平々凡々な家系だった。華族の家でも、高名な軍人の家系でもなく、ただ平凡なだけの。
 だから……彼女のその重圧は分からなかった。子孫を残せだとか、期待されないことの辛さというものは。
 故に理解など及ばない、それは正しく天上人の理屈だ。だが、それでも一つ言えることとすれば。妙な同情よりも、心で素直に思ったことだろう。

「いえ、嬉しいです! 私なんかとのお話で、その、そんな風に笑ってくれて……そんな風に思ってくれたなら。
 ……大変なんですね、有名になるっていうのも」

 何処と無く、彼女の表情は……少なくとも、自分が彼女の悩みを打ち消したなどと自惚れてはいないが、それでも。
 憑き物が落ちたように……彼女が浮かべた穏やかな笑みを、そして頑張ろう、なんて思ってくれたことをとても嬉しく。
 それにしても、有名になるというのは実に柵の多くなることか――――有名税なんて言う言葉はあるが、そんなものは屁理屈でしかないだろうに。

「うぅ、はい。自信……頑張って、持ちたいとは、思ってるんです……けど……。
 ……でも、もっと頑張ります! 頑張って……アリスさんがそう言ってくれた人だって思って……胸を、張りたい、です」

 また言われてしまった。最初に彼女に会ったときにも、先に戦ったバトルのお姉さんにも。
 実際、そろそろそれを持ってもいい頃なのかもしれないと流石に思い始めて、それを持とうとは思っているのだが……。
 兎も角自己肯定にあまりなれていないのが問題だった。だからせめて……“認めてくれた人がいる”ということを誇りにしてみようと。
 たった今思ってそう言った。断言できないのが、また随分と優柔不断だが。

「え……いいんですか!?」

 まさか、そういう流れになるとは思ってもいなかったと菱華はまた酷く驚いてそう叫んだ。
 彼女に話を聞いてもらえるなら、正しく値千金――――そこらの初心者ビルダーにとっては、どんな現金よりも価値は高い。
 うんうん、と頭を悩ませてみた。何処に悩んでいるのか、と言われると少々困るのだが――――強いて言うのであれば。

「えっと、ですね。今まで予選を二回、戦ってきたんですけど……アイちゃんはとっても頑張ってくれるんですけど、どうしてもあと一手で勝てなくて。
 し、仕方ないんですけどね! 相手は、チャンピオンとバトルのお姉さんでしたし……でも、でも、私は……アイちゃんと、頑張りたいんです。
 予選で終わりたくない……お、烏滸がましいかもしれないですけど、優勝だって狙ってみたいんです! で、その……。

 実際のところ、私設定ばかりで、弱いところをちゃんと把握できていない……んです。
 だから、何処を、どういう風に、直したからいいのか……」

 「私も菱華も弱くない!」と掌の上で叫ぶアイゼルネスを取り敢えず置いておくとして。
 そう彼女に打ち明けた。根本的な問題で、厄介なところだった……「実力不足」と、言ってしまえばそれまでだから。
291アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/17(日)01:19:07 ID:wMW
>>290

 そうそう其の意気よ、なんて。自信を持とうとする蓮見を、励ますように言葉を重ねる。
 とはいえ人間は、「自信を持て」と言われて直ぐに胸を張れるほど、真っ直ぐな性根をしていない。それは、アリス自身もよく分かっていた。
 ただもしこの先、蓮見がなにかに躓きかけたとき、重圧に押し潰されそうになったとき――己の言葉が、立ち上がる支えになればよいと。そう、思っていた。


「ふん、ふん――。なるほど、ね。どこをどうすればいいかも、いまいち分からない感じ、かしら?」


 そうして続く蓮見の告白を、アリスは頷きながら聞いた。――「勝てない理由」が分からないのなら、「勝てない結果」から逆算するしかない。
 幸いなことに、このような失敗の日々はアリスもよく知っていた。あるいは今、現在進行形で経験しているとも言える。


「――『あと一手』で勝てないのなら、総合力を引き上げるのが一番ね。つまり、勝ち筋は見えてるってことだから」
「けれど、どうしても技術や戦略の面で、一枚下手に回ってしまう……分かるわ、そういう負け方」

 基本的な技術が足りていない。だから、勝てない。――だが彼女の口から続く言葉は、ありがちな結論を出しはしなかった。

「よくこの手の話になると、練習とか経験とか基礎訓練とか、そういうのをすぐ勧めたがる人がいるけど……
 それは、あまり褒められたことではないわ。それぞれ人間には得意不得意がある。機体操作が上手い人もいれば、構築が上手い人もいる。
 無理を推して苦手なところを中途半端に治すより、得意なところを思い切り伸ばして補った方がいい。そっちの方が次回へのモチベーションも保つわ」


 「女帝」は決して、「だから練習を重ねなさい」などと口にしない。勝つためであれば、いかなる手段も辞さない。それが彼女であるからだ。
 今からホビーバトルに関する操作練習をしたところで伸び代は知れている。それよりも、蓮見が得意とする機体構築で勝負すべきだ。
 彼女はそう言っていた。細い唇から、滔々と言葉が続く。なんのことはない。彼女もまた、バトルに関してはヘビーなマニア――蓮見と血を同じくする、輩である。


「……まあ要するに、『得意なところを伸ばしなさい』ってこと。アイゼルネス・クロイツは、ハイエンドモデルでしょう。
 中機動、高火力、重装甲。これなら火力をまず伸ばしたほうがいいわね。どうしようもない格上にも、1発当てれば勝ち目が見えるような武器が欲しいわ」
「格下と同格は力押しで捩じ伏せて、勝てそうもない格上にも運否天賦に持ち込める。予選はトーナメント形式じゃないし――総合的な勝率を上げれば、本戦には残れるはずよ」

「そうそう。この間バトルして思ったけど――武装切り替えの判断が、少し遅いわね。自律攻撃兵装も悪くないんじゃないかしら?
 あるいは支援システムを無線操作に切り替えてもいいかもしれない。ファンネルとか、オービット・キャノンとか」

「あとは攻撃の試行回数を増やすための重装甲、高火力兵装を当てに行くための高機動、多少は安定性を犠牲にして高出力ブースターを多数搭載……
 総合性能を出来るだけ底上げして、ピーキーにして、ワンチャンスのリターンを引き上げるのが一番ね。機体スペックのゴリ押し、とも言うけれど」


 それが、彼女の語る戦闘理論。「腕が足りないのならば、機体それ自体のスペックで補うしかない」。
 総論すれば、そうアリスは述べていた。その方が、成果希薄な練習など重ねるよりも、遥かに手早く勝利を手にできると。
 ――何より。「優れた機体は、優れたパイロットを育てる。」誰かがそう、教えてくれた。


「……しかし我ながら、とんでもなく扱いにくい機体ができそうね。……参考になったかしら。なった自信がないわ」


 そして彼女もマニアである。ホテルで過ごした鬱屈的な時間のアウトプットも兼ねれば、思い切り言葉を紡ぎ切ってしまった。
 やや自省気味に溜め息をつく。これで伝わっただろうか、と。オタクが悩む部分は、プロもアマチュアも変わらない。
292菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/17(日)01:59:45 ID:3QG
>>291

「……ひゃ、ひゃい! あ、メモ、メモ取らなきゃ……」

 菱華が思っているよりも、アリスのアドバイスは細かいものであった。
 肩に飛び乗るアイゼルネスと、その直後に慌ててジャケットの内側からメモ帳とボールペンを取り出した。
 常に持ち歩いているほどマメという訳でもないが、然し今日はお買い物メモを持ってきていたが故の幸運であった……カリカリとそこにメモを取っていく。
 成程流石だ、というくらいに的確な言葉の数々だった。何より先ずは練習、とでも言われるかと思ったが、まず最初にそれを否定されたのに驚いた。

「『得意なところを伸ばす』……」

 成程、それは確かにそのとおりだ……あと一歩が及ばないのであればそのあと一歩を基礎性能で埋め合わせる。
 とても理に適っている、設定から機体を作り上げる菱華には考えたこともない発想であった。
 支援兵器の載せ替えも視野には入れていた。アイゼルネスは比較的ジェネレーターに余裕がある機体であり、無線操作武器に載せ替えても問題はない。
 要するに……装甲強化、機動強化、武装強化。この三つが重点である――――一度そのペンを動かす手を、ぴたりと止める。

「と、すると……」

「運動性能自体はヴァルケンのほうが高いから、ヴァルケンのデータを利用した機体性能強化っていう路線が正解だったのかな。
 装甲自体はアイゼルネスの方が高いから、そこを更に強化すればいいとして問題は武装の強化と、高機動化におけるジェネレーター出力……。
 アイゼルネスは本来大量のジェネレータ直結武装を搭載できる機体だけど、それに戻すだけじゃあ火力は強化されるけど機動性能は今から落ちちゃう。
 だとしたら……重要なのは、ジェネレーター? もう一つジェネレーターを追加で搭載したら機体が大型化しちゃって被弾率も上がっちゃうけど。
 ……ヴァルケンとクライング・イオタは同じ宙域で戦ってから回収されたけど、その後の話はまだ出てないはず。
 イオタの方は後の時代の機体と比べてもジェネレーター出力が桁違いに高い機体だから、そのデータを参考に新造したジェネレーターを搭載した設定にすれば……。
 いや、新造だとちょっと不都合かな、ジェネレーターを修復して搭載した実験機ってことにすれば違和感もないんじゃないかな。
 ビーム・ライフルについてもあの機体のそれに手を加えれば火力強化が出来る。とすると……。
 ヴァルケン、クライング・イオタ、アイゼルネスの複合機体が一番答えに近いかな。デザインはヴァルケンとアイゼルネスは似てるから、そこは大丈夫……あっ」

 そこで、ようやくぱっと顔を上げた。
 時折呟く『クライング・イオタ』という機体は、彼女が好むロボットアニメ作品の外伝『旭光のι』の主人公機体であり、ヴァルケンはそのライバル機。
 そしてそのヴァルケンの量産機こそがアイゼルネス、という系譜であり――――つまり、またもや菱華は彼女の言葉を聞いて自分の世界に入っていた訳だった。
 彼女の提案した強化案と、想定できる設定の摺り合わせの最中……ぱっ、と顔を上げて。

「ご、ごめんなさい。……あ、あの! す、凄く参考になりました!
 私なんかじゃ思いつかないくらい、その、なんていうか、とても実戦のことを考えていて……私なんかじゃ思いつきもしないことばっかりでした!

 凄いです、凄いです……これでもっとアイちゃんを強く出来ます!! 本当に、すごくすごいです!!」

 正直に言うと、まだ皮算用の域を出ていない筈なのだが――――それでも少女は、まだ見ぬ機体の方向性に胸を膨らませて、そしてより強くなる愛機に夢を見て。
 彼女へと憧憬と尊敬と感謝とを目を輝かせて、彼女へとそう……彼女の語彙が追いつかないのだろう。
 とにかく彼女を凄い凄いと騒いでいるばかりであるが、兎も角、いろんなものを言葉として吐き出そうとしていた。
293アリス◆.9ydpnpPps :2017/09/17(日)02:31:54 ID:wMW
>>292

 ひとしきりアリスが話し終えたのなら、次は蓮見の番だった。設定方面に造詣のない彼女にとっては、やはり何を言っているのか理解できない様子ではあったが――。
 今一度顔を上げて、きらきらと目を輝かせる蓮見の感謝を受けて、アリスは少々誇らしげであるようにさえ見えた。
 自身の言葉によって、悩めるプレイヤーに適切なアドバイスを送れた。それは即ち、自己の修正においても間違えて踏み出すことはないということ。


「――よかった。参考になったみたいで」


 静かに微笑んだまま、アリスは蓮見の手を取った。励ますように。――あるいは、彼女自身から、なにかを頼るように。


「次もプレーしたいと思えることが、何よりも大切。――私の尊敬するプロゲーマーが、昔残していた言葉よ。
 そう考えるのなら、そうやってバトル用の機体に設定を考えて楽しむことは、とても大切なことなのでしょうね」

「それに。きっと貴女の一番の強みは、やりたいことに熱中できる集中力なんじゃないかしら。
 もしもそれがバトルで活かせたのなら、これ以上ない武器になるわ。――無理にとは、言わないけれどね」


 ――そこまで口にして、漸く彼女は気付く。それはつまり、バトルを楽しむということではないだろうか。
 これ以上ないほどのリアリティを展開できるホビーバトルである。自身の憧れる作品や人物に准えた戦いをすることが、バトルのひとつの楽しみ方ではないか。
 自分がフヨウを愛しても、バトルそのものに心躍ったことが少ないのは、ひとえに憧れや理想を戦いへ持ち込むことを、心のどこかで忌避してきたからではないのか――。

 ふふ、と。銀色の少女は静かに唇を緩めて、息を漏らすように笑った。――〝やっと、理解ができたかもしれない〟。


      「――――――さて!」

「貴女と話して、アドバイスする内に、私も色々分かってきた気がするわ。もう一度ホテルに篭って、機体を練り直すことにする。
 蓮見も日が暮れない内、早く宿に戻りなさいね? ――何か悩むことがあれば、この間のアドレスにメールか電話ちょうだい」

 意気揚々とアリスは立ち上がった。その横顔にもはや憂鬱さはない。齢20にも満たぬ矮躯に、幾多もの死線を潜り抜けてきた風格。
 別れ際の毅然とした笑顔に宿っていたのはそれだった。――彼女の彼女たる所以を、蓮見は感じることができたろうか。


「それじゃあね、蓮見。――――〝本戦で〟会いましょう?」


 上機嫌な足取りに、彼女は夕暮れの講演を去りゆく。その肩に乗り合わせた黒い戦姫が、主人に背を向けながらも別れの一礼をした。
294ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/17(日)09:28:42 ID:do2
>>288
「───おや、君は……」

順番待ちの子供達を掻き分け、ホビーを乱入させた人物を見てジョセフは目を細めた。
白いコートにマフラーの少女、そして一見ゴテゴテとした重装甲のホビー、そのどちらも参加者名簿で見覚えがあった。

「〝チームシュタール〟の選手、ニーナ・アルキファイス……だったかな?」
「横入りはいけないよ、企業の看板を背負っているなら恥ずかしくない立ち振る舞いをしなきゃ」

まさか、この初心者用のフィールドに企業チームの参加者すら現れるとは完全に使用者達は予想外、余りの威圧感に子供達達は固唾を飲んで見守る事しかできない。
例外はこの青年ジョセフで、シルクハットのつばを指でつまんで埃を取りつつ冷静に相手を分析した。

「……とは言っても、素直に順番まで待っていてはくれなさそうだね」
「OK、特別に許してあげよう、順番じゃないけど君と勝負してあげる」

リコリスの放つ威圧感は周囲の空気を凍らし、固まらせる。
このままでは先程のように子供達を交えて遊ぶ事が出来ない、これは早急に対応するべき由々しき事態である。
…と言うものの、そこまで実は問題ではない、この空気では子供達も横入りに文句は言えないだろうし、そろそろ新しい流れが欲しい所だったからだ。

「ルールは簡単、三分間私のジョーカーは逃げ続けます!君の相棒はそれを捕まえると勝ち!」
「武装を使っての攻撃もOK!動かなくしてから捕まえるのも作戦の内ですよ!」

ニーナがどのようなつもりかは知っていても当初のルールを変更するつもりはない、鬼は武器使用可能の鬼ごっこ。
ジョセフがパチンと指を鳴らしたのが開始の合図、フィールドに浮かぶホログラムのタイマーがカウントダウンし始めた。
295Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/17(日)21:23:56 ID:ohH()
大会会場の一角にある模型カフェ。
オシャレなカフェと模型製作ブースとバトル施設が一体となったこの施設は、現在ある少女によって貸切状態になっていた。

瑞樹カナデ。“鋼獣”を愛して止まない中堅モデラー。
彼女が今日、ここを貸し切った理由はただひとつ……大会参加者、同好の士による交流会を企画したが為である。
折角の大会なのだから、戦う以外の場面でも他の参加者同士、公流を深めたい!!そんな至ってシンプルな動機。
そうして彼女は現在、愛機である狼型鋼獣と一緒にカフェ内の一席にて他の参加者を待ちわびていたのだが……。


「…………誰も!!こない!!なんでだろ!!!」

「そりゃあ、一人だけ集合時間より大分早く到着したからじゃないかな」


閑散とした店内の光景に思わずそんな台詞が飛び出した彼女に、やんわりとツッコミをいれたのは店員であるメガネをかけた女性だった。
現在、店内にいるのは彼女ら二人だけ。集合時間にはまだ少し早かったが、けれどもすぐに時間は経過していくだろう。

……もし店の扉を開けたなら、すぐに彼女達の姿が見えるはずだ。
そして貴方が訪れたならカナデはぱあっと顔を輝かせ、そしてここが交流会の会場だと告げるだろう。
大会の喧騒からは少し離れた、この穏やかな空間でどのように過ごすかは、すべて貴方次第。
296ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/17(日)21:45:18 ID:wMW
>>295

 ――ちりんちりん。午後の西日射す後光と共に、その少女は意気揚々と喫茶店に踏み入った。
 銀色の髪、小麦色の肌、黒い眼鏡。ややダボついたカットソーを着て、丈のごく短いデニムを履いた、背のちいさな少女。
 肩で風切り掲げた手を振り、彼女は高らかに挨拶する――やや、外人訛りの日本語で。


「どもーっ! こにちはーっ! OFF会来たいって話してた、ラニアです!」


 少々舌ったらずなのは、日本語に慣れぬためか、あるいは幼すぎるためか。
 ともかく彼女はずいずい歩いて、主催者たるカナデの元まで歩き、その手を取ってハンドシェイク。
 「なんか飲み物くださいー! え、じゃあ、オレンジジュースで!」――まったく悩まずオーダーして、手頃な椅子に座るだろう。スニーカーの足先は床についていなかった。
297Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/17(日)21:59:56 ID:ohH()
>>296

「…………—————!!!!」


ドアベルの音を聞いたなら、カナデは顔を太陽のごとくキラキラと輝かせる。
慌てて席を立ち上がったなら、ハンドシェイクに答えれば握った手をぶんぶんと振って喜びを露わにするだろう。
何せ、待ちに待った参加者の到着なのだから。誰もこないのかと少しばかり不安になっていたところだったので尚更。


「お、お待ちしてました−!!今回の交流会を企画したカナデです!!今日はよろヒキュっ!!?」

勢い余って早口になってしまった所為で、最後のほうで舌を噛んでしまったようだが。
何事もなかったかのように取り繕えば、そのままラニアの着席に合わせて自分も席に戻るだろう。


「んー、その話し方って……もしかして外国の人?」


自分はというとコーラを頼みながら、彼女の喋り方を聞いて真っ先に思い浮かんだ疑問を彼女は口にする。
その目の前の机の上ではカナデの愛機である白銀の狼のホビーが、うつらうつらと丸くなってくつろいでいた。
298深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/17(日)22:12:33 ID:cjm
>>295

SNSに流れてくる情報でこの交流会を知ったとき、深山エンジはほとんどノータイムでそこへの参加を決めていた。

企画者は鋼獣使いの学生モデラー。
主な目的は偵察。だが同じ鋼獣使いとしてシンパシーを感じたというのも確かだ。


集合場所に定められたカフェに到着すると、少年は迷う様子もなく扉を開く。
お洒落な雰囲気の店内にはあまり似つかわしくない、エナメルバッグを肩から提げた青と黄色のジャージ姿。強豪チーム「多嘉山スタードリーマーズ」のクラブジャージだ。
そんな場違いな格好にも動じた様子を見せず、すでに到着していた企画者と思しき少女へまっすぐ近寄っていく。

「よう。ネットで見たんだけど、交流会の会場ってここでいいんだよな?
 ……カフェなんて入ったことないからちょっと緊張するぜ」

ほかの参加者であろう、元気いっぱいの少女(>>296)の姿に少し驚いた様子を見せながら。
口にしているような緊張などみじんも感じさせないまま。

「ああ、俺は深山エンジ。今日はよろしく、瑞樹カナデさん?」

軽く頭を下げて挨拶。ひょっとしたら、先日の事件のことでも彼の名は知れ渡っているのかもしれない。
299ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/17(日)22:19:24 ID:wMW
>>297


「ハイッ! 産まれはミシガンデトロイト、ラニア・エルハレド=シャリフィーです! ヨロシクね!」

 まったく威勢良く彼女は頷いた。ぶんぶんと首を縦に振って、その度に分け目のアホ毛がぴょこぴょこ揺れる。
 届いたオレンジジュースをぐいぐい飲み干して、「あ、ケーキとココア、ください!」もう1つばかり、オーダーを。


「こんなんですが、ファイターで食べてます! ハイ! これ名刺です!」


 携えたトートバッグをがさごそ漁れば、彼女の茶色い手には随分と小綺麗な名刺が乗せられていた。
 ――もしかすれば、聞いたことがあるかもしれない。「鋼の北風」と渾名されたストリート・ファイターの快進撃。
 その経緯を彼女は、「近くでやってたから来ました!」と語る。――他意はない、らしい。


「いやーにしても、日本はいいとこ! デトロイト、こんな綺麗じゃないよ! ゴミもラクガキも全然!」
「でもこの間、ホビーの事故あって、あれだけ怖かったなぁ。ワタシの子も、もしかしたらボーソーしちゃうかも――なんて! アメリカンジョークです、ハイ!」


 カナデに倣って彼女もまた、カバンの中から自身のホビーを取り出す。やや目にドギツい白黒の流線型を持つ、人型の「闘機」。
 あまり冗談になっていない冗談を飛ばしながら、果たしてその言葉、どこまでが本心であろうか――。
300ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/17(日)22:27:00 ID:1Hm
>>294

〈参加をしろとは言ったが…なぜお前はそう強引に……いやいい、お前は目の前のそのホビーをやればそれで良い〉

「はい、先生」

空虚な声で周りには聞こえないようにそう返事をすると戦闘態勢に入る。
相手は逃げるだけの相手、三分間という短い相手だが攻撃が可能ならば幾らでも手はある。どんな手を使っても良いのだから。

〈それと、強化外装のパージはするな、こんな大衆の面前でこちらの手を晒す必要は無い〉

「分かりました……行くよ、リコリス」

『了解、マスター』

周りの空気は先ほどとは打って変わり緊迫したものに移り変わる。当然だろう、大会参加者同士のバトルが突然始まってしまったのだから。
目標は敵ホビー、ジョーカー。タイマーがカウントダウンを開始すると同時にリコリスは動き出す。
外装の武装が収納されている部分が解放、そこから飛び出したのは対艦ミサイルにガトリング砲。そして背部に副腕を伸ばすと巨大な銃身のビームライフルを取り出す。
あっという間に全身が武器と化し、その全てがジョーカーへと向けられている。

「リコリス、全弾発射」

『了解…フルバースト開始します』

そうして全武装がジョーカーへと向けて放たれる。ミサイル、それにガトリング砲がジョーカーを粉微塵にしようと襲い掛かり前方を濃密な弾幕で覆う。
あくまでこれは鬼ごっこだ、だがそこにホビーを破壊してはならないという旨は説明されなかった。つまり、破壊してから捕まえても良いということだ。
301Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/17(日)22:35:16 ID:ohH()
>>296

「わあ、エンジさん!!今日はよろしくお願いします!!
 多喜山スタードリーマーズのエースにも来てもらえるだなんて、いや〜光栄です!!」

同鋼獣使いとして彼のことは知っていたらしく、彼を見つめる瞳はキラキラと尊敬の念に輝いていた。
早速、色々と語りたくて仕方がないようでウズウズとしているカナデだったが……彼女が言葉を発するよりも先に彼に語りかけたのは。


「……あれー、先日ぶりだね。元気にしていたかい?」


エンジに語りかけたのは店員である眼鏡をかけた若い女性。現在はウェイトレス姿に身を包んでいる彼女だったが、しかし彼女のことをエイジは知っている筈だろう。
先日のホビー暴走事件の後始末にあたって挨拶を交わした、ユニバース社社員にして開発主任、六徳セツナ。彼女がなぜかここで働いていた。


>>299

差し出された名刺を見て、少しばかり考え込んだ後に思い出す。
確か、そんな名前の海外ファイターがいた筈だと。ストリートにて頭角を露わにし、躍進を続けているというが彼女こそがーーー。


「……デトロイド!!アメリカン!!海の外のファイターとも会えるなんて……この交流会開いてよかったあ……!!」

「暴走……いやいや、きっと大丈夫だって!!もう原因は判明したっていうし、防犯レベルも引き上げられたってニュースで言ってたからさ!!」


ジョークを流さず真面目に答えるのは、カナデがそういう性格をしているからか。
そして出された闘機を見るとカナデは瞳を輝かせ……今まで寝ていた白狼の鋼獣がぴくりと目を覚ます。
バイザー越しにラニアの見つめるその瞳に宿るのは、果たして闘志だろうか。
302マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/17(日)22:35:41 ID:KRl
>>295
カフェの扉が強引に開き、ドアベルの鐘が無作法に鳴り響く。
扉の向こうに立っていたのは息を切らした一人の青年、白吉 マキトだ。
赤いキャップにキャップにジーパン、胸には紫色の下地に"ETC専用レーン"の文字が堂々と輝くTシャツ。少し大きめのリュックを背負った青年。

「ハア……ハア……オフ会の会場はここで合ってるよね?」

ドアノブから手を離し、洒落たカフェの中へと重い足取りで中に入る。店の雰囲気から考えるとめちゃめちゃ浮いている。
そして次の瞬間、彼が捕った行動は――

「私、白吉 マキト、ものの見事に寝坊して遅刻をかましましたッ! 本当にスイマセンでしたーッ!」

土下座である。丁寧にキャップまで床に置き、額を床に押し付ける古き良きジャパニーズスタイル。
何が彼をそこまで駆り立てたのかはわからない。だがそれほどまでさせる何かがあったのは確かだろう。本人が遅刻と公言しているのだが。

「いやね、まさかこんな時間まで寝てるとは思わなかったのよ。明日はオフ会だからって早めに寝ようとはしてたんですよホント。
 でもさ、夜遅くに試合のリプレイ集とかやってたら見るでしょ。見ちゃうでしょ。それが健全で正しいバトラーってもんでしょ。
 酷えと思いませんかね、思いませんかね皆さん。だからボクは悪くなくって悪いのはあんな時間に再放送やるテレビ局に問題があって……」

「アッハイ、ホントスンマセンでした。ハイ」

頭を床に擦りつけたまま妙な早口で言い訳を展開する姿はまさに異様。コイツの目的が本当に謎である。
ともかく開幕土下座という姿は嫌でもインパクトに残ってしまう結果になりかねない。掴みはバッチリ。
303初風なずな&冬芽つばき◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/17(日)22:44:50 ID:nR5
>>295

こんこんとノック音をさせてから扉を開いたのは、二人の少女だった。

「こんにちはー。あの、交流会ってここでやるんですよね?」

一人は栗色のセミロングヘアとくりくりした瞳を持つ、小動物然とした女の子。
フェミニンなピンクのニット・セーターと白いチュールスカートに、こげ茶色のショートブーツを合わせた、いかにもフェミニンな秋の装いで。
はきはきと挨拶を交わしつつ、集まった人たちにもにこにこと会釈する。
その腕には、ぬいぐるみのようにスカイブルーの『戦姫』が抱かれていた。

「こんちわーっす。……エヘヘ。一体どんな機体(こ)たちが集まってるんでしょうか」

もう一人は、なんというか干物みたいなやつだ。
色褪せたジーンズに白いタンクトップという下地に丈の長いデニムジャケットを適当に羽織り、分厚い赤縁ナイロールの眼鏡をかけている。
年季の入ったベージュのキャスケット帽とダサい迷彩柄のブリーフケースも相まって、雰囲気は相当濃いオタクのそれ。
ただ――よくよく見てみると顔は結構いいし、スタイルも良い。どこかちぐはぐな印象を与える、不思議な少女だった。
彼女は人より先に、ホビーの方を舐めるような視線で精査していて、自身も肩に翼竜型の鋼獣を乗せていた。

二人の姿を認めれば、驚く人も居るかもしれない。
彼女たちは女子高生アイドルグループ『ぷりずまてぃっく』のメンバーであり、ファイター・モデラーとしても一定の知名度がある、初風なずなと冬芽つばきその人なのだから。
304ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/17(日)22:49:37 ID:kf1
>>300
「さあ、どこからでも掛かってきてください!時間は限られていますよ!」
「早くしないと時間切れ……に……」

相手が本気であってもあくまで態度は崩さない、ショーの進行に間違いがあってはならないように煽り言葉をまくし立てて焚き付ける。
そんなパフォーマンスをしていると、目の前でリコリスが武装を展開し始めた、ガシャガシャと次々に姿を現わす火器、ミサイルとガトリングが見えてきた辺りで嫌な予感がして来た。

「……あー……ちょっと待って、今から『ミサイルとガトリングとビームライフル禁止』ってルール付け加えてもいい?」

流石にドン引きする量の武器群、鬼ごっことは言ったが戦闘不能に陥らせるのは構わない、勿論それをわかっているが故の曖昧なルールであった。
だが、まさかいきなり破壊寸前まで攻撃を仕掛けてくるとは誰が思うか、ジョセフは引きつった笑みを浮かべる。

「わーっ!わーっ!!ストップストップ!!危ないって!!」
「ジョーカー!頑張れ!どうしようもないけど頑張れ!!」

四方八方から襲い来るミサイルと弾丸の雨あられ、一度でも受けてはひとたまりもないその猛攻からジョーカーは必死で逃げ惑う。
ミサイルが地面に落ちた爆発で吹き飛ばされ、弾丸が掠り、頭上をミサイルが通過する。
何とかいい所にダメージを食らってはいないが回避するだけで精一杯だ、こちらから攻撃することが無いだけ回避に専念出来るのが不幸中の幸いとなった。

だが、ジョーカーは確実に攻撃を回避している、戯けたような動作だが、その実動きに全く無駄が無い事がわかるだろう。
305深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/17(日)22:55:12 ID:cjm
>>301

「あ、ああ……知ってくれていたみたいで嬉しいぜ。」

彼女の興奮した様子に少々面食らいながらも返答する。
そう。クラブチーム所属の彼は多くの参加者に知られている。
一方的に情報アドバンテージを失っている現状をなんとかしなくては、という思いは当然あった。
しかし、

「あー……どうも。」

意外な人物の登場に目を丸くする。
まさかこんな場所で再会するとは。できるなら大会の運営サイドとはあまり関わりたくないのだが……

「まあ、ぼちぼちっすね。幸いそこまで大きな破損もなかったですし。
 ……ていうか、白衣の印象が強すぎて気づかなかったんですけど。副業か何かっすか?」
306Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/17(日)22:58:07 ID:ohH()
>>302

「うん、とりあえず店内で土下座はやめてくれないかな
 景観的にも衛生観念的にもよろしくないから、ね?」

笑顔のままやんわりと告げる店員こと六徳セツナ。そして貴方が立ち上がったならまずはお手拭きを手渡すだろう。
そして視線の高さが同じになったなら、改めて主催者であるカナデが貴方に向けて歓迎と自己紹介を告げるのだった。

「……え、ええっと。まあ、よくあるよくある!!寝坊なんて私も模型製作に熱中した翌日には大体やらかすし、気にしない気にしない!!
 あ、主催者の瑞樹カナデですっ、今日はよろしくお願いします!!」

>>303

「…………………マジで?」

思わず真顔で呟いてしまったカナデと、その表情に少しばかり吹きそうになるのを堪えるセツナ。
モデラー界隈においても一定の知名度があるアイドルがそれも二名……驚かない方が無理な話かもしれないが。

「あらら、主催者さんが緊張でフリーズしてしまったね
 とりあえず開いている席なら自由に座っていいよ。あ、飲み物何がいい?」

硬直してしまった主催者の代わりに店員であるセツナが席へと案内するだろう。
この面子の中ではどうやらセツナが一番の年長者らしく、その対応も落ち着いたものだった。
307ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/17(日)23:02:31 ID:wMW
>>301

「だよねえだよねえ、まさかまさか!
 『神聖なる知性と闘争の式典を、斯く卑劣で野蛮なる手段にて侮辱するような――』って、誰か言ってました!」

 変わらずニコニコ彼女は笑って、恐らくはニュース番組かどこかで聞いたような、わざとらしく格式ばった言い方を真似て――。
 やはり冗談かそうでないか、話し方だけでは解らない少女だった。本気にしているのか、していないのか。
 ともあれ彼女の笑顔に嘘はなかった。テーブルの上に立たされた白黒の闘機は何も喋らなかった。
 ――然し。カエデと共なる鋼獣の、闘志に似た視線を感じ取ったのなら、初めて少々慌て気味に。

「わあ、どーどー! わたしちょっと今、バトルできないんですよ――。」

 そしてやや、申し訳なさそうに。初めて少々頭を下げた。その弁解は、いまいち要領を得ていなかったが――。

>>303


「――あーっ! なずなサン、つばさサン!」


 ――2人が、席に座るや否や。不意に彼女は椅子から飛び降りて、長い銀髪をたなびかせながら、とてとてと入り口へ駆け寄ってゆく。
 恐らくはふたりの背丈でも見下ろせるほどに小さな少女が、小麦色の手に愛機を握り、眼鏡の奥から金色の瞳を輝かせていた。やはり、見上げていた。

 
「はじめましてー! 『PrisMatic』、わたしファンなんです! この間のシングル、買いました!
 やっ、なずなサンがホビーファイトをやり始めてから知った、俄か者ですが……。」

「あッ。申し遅れました! ワタシ、ラニアといいます! よろしくお願いします!」


 ぴょこんとまた名刺を差し出す。今度は、2枚。――受け取ってほしい、とのことらしい。
308ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/17(日)23:06:36 ID:1Hm
>>304

「拒否します、ルール変更は受け付けません」

淡々と告げるとさっさとリコリスの補助に専念。ミサイルの弾着予想、敵の回避行動の予測、ガトリング砲の制圧射撃。
どれも相手の動きを止め確実に葬ろうとしているそれらの攻撃はしかし致命傷を与えるには至らない。これだけの重火器を持ってしても当たらないのは回避ばかりに専念していることもあるだろうが機動力も大きいだろう。

「ミサイルの着弾ルート変更、地面に着弾するようにして地形を崩せ」

既にジョーカーの周りの地形はボコボコになっている。ニーナはそれ以上にジョーカーの足元の地形を崩すように指示しジョーカーが満足にその場で回避行動が取れないようにしようという魂胆だ。
そしてそれでも足りないと思ったのかニーナはもう一つの指示を出す。

「……リコリス、粒子バズーカ砲構え。フルチャージで発射」

『指示受諾、バズーカ砲チャージします』

弾幕は緩ませず、しかし構えた長大なバズーカ砲には光の粒子が集まっていき高濃度のエネルギーを生成していく。
圧倒的な熱量を誇るそれは明らかにかなりの威力を誇るものだろう。

『粒子圧縮率70%…85%……100%』

「……撃て」

合図と轟音と共に放たれたのは極太の光の柱。大地を抉り膨大な熱と共にそれはジョーカーへと迫っていく。
309菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/17(日)23:12:41 ID:Sn7
>>293
 アリスは菱華の手を取った……まるで、彼女と自分が対等であるかのようだと、ふと菱華は思った。
 いつもならばそんなことを考えるなんて、烏滸がましいし失礼だと考えるし、実際のところそうであったのだが……それでも、その感情よりも。
 彼女がそういう風に見てくれているならば、とても嬉しいという気持ちが湧き出たのは、きっと少しでも……“自信”を持つための第一歩なのだろう。

「私の武器、私の強み――――」

 噛みしめるように、菱華はそう言った。……そうか、自分にも、そんな取り柄が有るなんて。
 たった今、一度そう言われたばかりだと言うのに、然しアリスという少女が言うのであれば間違いはないのだろうという安心感が確かにあった。
 柔らかく笑う彼女に合わせて、透き通るように、浸透していくような。そんな微笑みを、自然と浮かべて。


「――――はい。私、絶対本戦に行きますから。絶対、絶対、戦いに行きますから。

 それから、私――――」


 『次は、勝てるようにがんばりますから』と。
 彼女にしては、ありえないくらいに前向きな発言とともに、一人と一機を見送った。

 さぁ、さぁ、さぁ――――やることが山積みだ、やりたいことが山積みだ。何をしよう、何から弄ろう、何をどうしよう、どれをどうしよう。
 けれども、その視界は今まで以上に明瞭で透き通っていて。迷いなく、突き進むもので在ることだろう。彼女は、それをそう導いたのだから。
310深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/17(日)23:16:18 ID:cjm
>>302

「ええ……」

己と同様に場に不釣り合いな人物の登場にすこし安堵の表情をにじませた
が、次の行動にはさすがにドン引きである。

ちょっとかかわらないほうがいい人かなあ、とか思いつつも、

「録画すればいいんじゃないっすかね」

茶々を入れる場所はそこでいいのか。本人にもよくわからなくなっていた

>>303

「お、この前のアイドル」

続いて現れたのは、先日の事件の時に同席したアイドル……と、そのグループ仲間のひとり。
正直そこまで詳しいわけでもないのだが、それでも一応露出の多いモデラー、バトラーとして把握はしていた。

……とはいえ、一方的に知っているだけで向こうが覚えているとも限らない。
それに有名人の相手をするのはファンからのやっかみとか色々非常に面倒っぽいので、そちらへ目線をやって軽く会釈するに留まって。
311Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/17(日)23:19:32 ID:ohH()
>>305

「副業というか、趣味みたいなものだね
 本社での仕事が一段落した時なんかは、よくお手伝いに入ってるって訳」

つまりプライベートだから、そう警戒する必要もないよと付け足して。
同時にその胸ポケットの中から、小さな顔がひょっこりと顔を出してエンジを見つめるだろう。
純白の髪に青い瞳の神姫……しかし何処か一般のキットとは雰囲気が異なるのは、セツナが特殊な立場であることに関係があるのだろうか。


「先日の事件、ニュースで見ましたよ!!あのマッドレックスベースの機体ってエンジさんのホビーですよね!!  
 やっぱり恐竜型のホビーっていいですよね!!そういえば今度マッドレックスのカラバリが出るらしいですよ!!気になりますよねー!!」


高テンションでカナデが話かけるのと入れ替わるように、神姫はセツナのポケットの中に引っ込んだ。


>>307


「……ワン」

仕方ない、といった風にないて白狼は再び寝る姿勢に戻る。
そもそもAIであるこの狼に睡眠は必要ないのだが、これも感情構築の一貫である。

そして残念そうにしているのはカナデも同じだったが、選手であるならば戦えない状況というのも理解できる。
模型の改良や修理、調整の最中ではホビーバトルなんてもってのほか。そのデリケートな状態で無理強いするほどバカでもない。


「そっか、それなら仕方ない!!まあ大会期間はまだまだある訳だし、また別の機会にね!!」


その時を楽しみにしていると笑みを浮かべる彼女の後ろで……店員でありユニバース社の一員でもあるセツナはラニアを見つめていた。
その表情はまるで訳知り顔とでもいうべきもので、然しセツナは自分からは何も言おうとはしなかった。
312ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/17(日)23:29:41 ID:kf1
>>308
華麗とは言い難いステップで攻撃を回避し続けている内に、自分にダメージは無くともステージが傷ついて行く。
段々と地形は悪くなり回避に有する動作もしにくく、動きにくくなっていく、それ程までにリコリスの攻撃は苛烈だった。

「足場を崩すか……中々上手い手を使って来ますね!!」

ミサイルの狙いが今までよりも下の方へ、ジョーカー自身よりも足元を破壊する事にシフトした軌道となる。
それでもジョーカーは軽やかにかわし続け、大きく跳躍した、しかし───

「あっ───」

着地した瞬間ボコン、とミサイルがあけた穴に右脚を取られ、体制を崩してしまう。
そこに襲い掛かるのは止まぬ弾幕と、地面を抉る光の塊。

「ああ!まずい!!ジョーカー───!!」

誰がどう見ても躱せない、ジョセフの悲痛な叫びがその光景から来る予測を裏付けていて。







「───なんちゃって」

しかし、それすら台本通り、彼の考える演出の内の一つだった。
ジョーカーは崩れた体制のまま、ナイフを3つ投擲し、精密な狙いでミサイルの弾頭を突き刺す。空中で爆発したミサイルが巻き起こした爆風に後続の弾丸とミサイルを巻き込ませる。
更にその爆風に乗り高く跳躍、間一髪の所で光を回避しつつリコリスの頭上高くを飛び越えて、背後に着地を披露した。

背後を取ったからと言ってジョーカーは反撃に出るのではない、新体操のような着地から、流れるようなお辞儀をして、観客に応える。

「間一髪、って所かな?」
「いやあそれにしても素晴らしい!足元を崩してからの一撃、まさに仕事人のような冷静な判断!流石企業の一流選手!」
「こんなに楽しい勝負、まだ終わらせるには早い、そうでしょう?」

リコリスを操るニーナに賞賛の言葉を送り、ジョセフはにこやかに笑った顔で彼女と、周りの子供達に腕を広げてみせた。
大会出場者の実力、その一端を目の当たりにした子供達は、最初は驚いていたものの徐々にその魅力に取り憑かれつつある。
ジョセフとしては非常に良い流れ、それもこれも彼女あっての事だと、ジョセフはニーナに礼をした。

「どうです?まだまだこんな物で終わりじゃあ、ないですよね?」

残り時間は、あと一分。
313初風なずな&冬芽つばき◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/17(日)23:33:43 ID:nR5
>>306

「おや。チラシにはどなたでも歓迎、と書いてあったはずですが」

「あはは……コナユキ、流石にその物言いは酷だよ」

スカイブルーの戦姫の皮肉屋な物言いを、なずなは相棒の頭を指先で撫で、曖昧な微笑を浮かべて諌める。
彼女たちの後ろにカメラマンの姿はなく――どうやら、本当にいち参加者として交流会を訪ねたらしかった。

「あ、六徳さん。その節はお世話になりました。でも、どうしてここに?」

何でここに、なんて質問は出来た立場じゃないけれど、それでも聞かずにはいられない。
そういうわけでなずなが気安く聞いてみると、目の前に現れた人物の顔を認識したつばきが短く叫んだ。

「――えっ!? なずなサン『主任』と知り合いだったんすか?」
「うん。ちょっとソロのお仕事でお会いする機会があって」
「マジっすか……そのことも『主任』がウェイトレスさんってのも初耳っす。ラテアートでサインとか書いてくれるんすかね……?」
「あ、それブログのネタにいいかも。……って、無茶振りしちゃダメだよ。セツナさん、普通のエスプレッソお願いします」
「すいませんっす。じゃあアタシはホットココアで」

バトルシステムの開発主任である六徳セツナは――つばきにしてみれば、それこそミリオンヒットを飛ばしたアイドルのような存在である。
興奮気味でまくし立てるのをなずなにあしらわれつつ、二人はドリンクを注文し、カウンター席に並んで座った。

>>307

「うひょわーっ、こ、こっちこそホンモノなんすか!?
 あの子、『インビジブル・ダークホース』ことラニア・エルハレド=シャリフィーっすよ! なずなサンご存知でないっすか!?」

「あっ――聞いたことある。確か、全米グランプリで初出場トップ3を決めたって」

着席したつばきは辺りをキョロキョロと見回した後、なずなの耳元に囁く――にしては大きすぎる声で耳打ちする。
極めて癖の強い機体を自在に使いこなし、デビューから短期間で実績を上げたデトロイトの俊英。
ある意味、なずなにも近い形で始まり――しかしずっと優れた経歴を持つ、若手のトップエースの一人が、そこにいた。

「はは、はじめましてっ。ラニアさんだよね。
 ……にっ俄なんてとんでもないよ。わたしこそ、海外にファンが居るとも、自分よりずっと強い人がそう言ってくれるとも思ってなかったし。

「あーもう、やばいよ。ちょっとうるっと来ちゃった……」
「ごめんなさいっす、なずなサン泣き上戸で。アタシなんか憧れの有名人に立て続けに会って、爆笑を堪えるフェイズっすよ。
 ただまあ、こっちからファンって言うつもりだったんで、この展開は驚きっすけどね」

クククッとアイドルらしからぬ笑い声を喉奥から溢しつつ、つばきは名刺交換に応じる。
なずなも促されて懐から自分のそれを取り出し、渡そうとするだろう。
314マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/17(日)23:36:36 ID:KRl
>>306
「おお? ボク許された感じ? いやー、ココの人たちが遅刻に寛容で本当に良かった良かった」

店員に声を掛けられ、というより許されてようやく顔を上げるマキト。床と接触していた部分が若干汚れているのが真剣だった何よりの証拠。
手渡されたお手拭きを受け取り、汚れた額と両手を入念に拭き上げる。

「それでは改めて……。ボクが話を付けてた白吉 マキト。今日はいろいろとよろしく。
 ところでボクみたいなのが来ても大丈夫なトコだったのかな、ココって。正直めっちゃ居づらいんだけど」

周りを見ればこのようなイマイチイケてない大学生感丸出しの学生が入ってはいけない空気が出ていることぐらい理解できた。
おかげで先ほどまで土下座まで勢いで行っていた程の勢いは急速に失われていた。
主催のセツナへと語り掛ける声がわかりやすいぐらいに小さくなっている程度には。

>>310
「いやまあ、録画してりゃいいんじゃないかとは途中で気づいたんだけどね、もうその頃には番組終盤だったんだよね。
 だからもうここまで来たら最後まで見ちゃうかーって思ってね。いやまあキミの言う通りなんだけどね」

ヤジとも受け取れる声が飛んできた方向には、自身と同じく、この場所にはいかにも似合ってなさそうな青年が。しかも同性ときた。
マキトの表情からも不安の色が一気に抜けたのがわかるだろう。この目は居場所と同類を同時に見つけた目だ。

「ってキミは前にどっかで見たことあるよ! えっと、なんだったっけなー……確かにどっかで見たんだけどなー……」

少年の顔には見覚えがあったらしい。が、何なのかは正確には思い出せず、頭を捻るばかり。
315深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/17(日)23:43:12 ID:cjm
>>311

「はー、なるほど。それ聞いて安心しました」

警戒がバレていたか、と髪色の違う一房を弄りながら、誤魔化すように笑う。

参加者サイドと運営サイドが親密になりすぎて八百長だのヤラセだの言われるパターンはごまんとみてきた。
大抵は周囲のやっかみだろうが……わざわざ批判材料を作るまでもない。
自分ひとりの話で済むなら別に問題はないが、今の自分はチームの看板を背負っているのだから。

とかなんとか考えていたら、胸ポケットから顔を出した戦姫と顔があった。
作り自体は一般的なものだが……どこか、違和感を覚えるものがあって。

「その戦姫がセツナさんのっすか?
 やっぱり特殊なAI積んでたりとか……っと」

面倒ごとには関わりたくないとか思いながらもついつい訊ねてしまうのはモデラーとしての性か。
食い気味に話しかけてきたカナデに質問を遮られ、

「おう、そうそう。やっぱりアニメで主役機とかライバル機だと公式で色々アレンジ効かせてくれて滾るよなー。
 その点ホワイトウルフも人気作だし、アレンジのし甲斐があるんじゃねえか?」 
 
「あんな形でニュースに載るなんて思わなかったけどな。
 ま、大会優勝で一面飾る予行演習くらいにはなったぜ」

ニヤリと笑いながら大口をたたく。カナデの反応を待つように挑発的な目線で、だ。
316ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/17(日)23:43:58 ID:1Hm
>>312

「……楽しくなんて、無い…」

『…マスター……』

小さく呟き、その表情が一瞬陰る。だがそれも一瞬ですぐにいつもの無表情へと戻る。
そしてそんな様子を心配げに憂うのは彼女の機体であるリコリスだけだった。

「接近戦へ移行する、ミサイルを四発発射後急速接近。アームによる捕縛を指示」

次にリコリスが取った行動は先ほどとは対照的。ミサイルを牽制として放った後、ホバー走行によりジョーカーとの距離を詰めにかかる。
ミサイルは二発はジョーカーの左右、もう二発で後方を狙い前方しか逃げ場が無いように無理矢理仕向ける。だがミサイルが着弾する前にその思惑に気づけば十分対処可能な類だろう。

リコリスがもしも接近できたのならばその両腕の巨大なアームでジョーカーを掴もうとし、接近が出来ないのであれば再びガトリング砲とミサイルの弾幕を張るだろう。
317深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/17(日)23:55:44 ID:cjm
>>314

「はは……まあ気持ちは分かりますよ
 実際ああいう番組はうまい構成になっていて、なかなか辞め時が見つからなかったりしますしね」

安堵に似た雰囲気を漂わせる男に、ため息をつきたくなる。
まあ、周囲が周囲で主催と店員を除けばアイドル2人と、外人女子。
しかもこの男からすれば全員年下となれば、それも仕方ないかな、という思いもあって。

「俺っすか?俺は―――」

どっちかな、と思案する。
ひとつは、「多嘉山スタードリーマーズ」のエースとして知っていたか。
もうひとつは先日のホビー暴走事件のニュースで知ったか。

だが、どちらにしても、

「―――俺自身より、こいつを見たら思い出すかもな」

言いながら、肩から提げたエナメルバッグから己の愛機を取り出した。
『タイラントレックス』。黒と紫を基調としたティラノサウルス型大型鋼獣だ。
318Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/17(日)23:55:49 ID:ohH()
>>313

「……あ、すいません興奮の余りちょっとトリップしてました!!
 今日はよろしくお願いします!!あ、あとサイン頂いても宜しいでしょうか!!!」

軽くテンパりつつもペンと色紙を出そうとして……色紙なんて持ち歩いてる筈もなく見兼ねたセツナがカウンター奥から用紙を渡すフォローを入れる。
そして改めて紙とペンを若干不安げに差し出す姿は、どうやらカナデが二人のファンであることの証明に他ならない。
その様子を楽しそうにカウンターから眺めつつ、セツナはココアとエスプレッソの支度を進める。ラテアートは流石にサービス外のようだったが。

「あー、今の私は一店員に過ぎないので気にせずどうぞー
 あれだよ、ずっと開発室に引き篭もってると人間ダメになっちゃうから、気分転換にね」

そう戯けながら、二人の目の前に注文の品を置く。
その隣に置かれた小皿に乗った闘機モチーフのキャラクッキーは、彼女からのサービスだった。


 >>314

「気にしない気にしない!!ホビーバトルが好きならここにいちゃいけない理由なんて一つもなし!!」

そういうのを一切気にしないタチであるカナデはマキトの負い目など知って知らず、席に座ればメニュー表を差し出すだろう。
そしてちらり、と彼の持ち物を一瞥する。何が気になるかといえば、それは言うまでもなく。

「ねえねえ、貴方のホビーも良かったら見せてくれない?
 あ、ちなみにこの子が私のホビー、シルバーウルフカスタムだよ!!!」

「わおん」

それまでテーブルの上で丸くなっていた小さな白狼が、カナデの紹介に応じるように小さく鳴いた。
319ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/18(月)00:06:25 ID:TEQ
>>311

 ――実の所。ラニアの機体に不調などはなかった。まして、次の試合に向けた気力の温存などでもなかった。
 何故ならば彼女の機体に、「修繕箇所」など有りはしないのだ。何故ならば彼女に初めから、「次の試合」など有りはしないのだ。
 無邪気で小さなその背中を見つめる視線に、きっと彼女は気付いていた。であればこそきっと、斯くも明るく振舞おうとしていた。

>>313

「やー、強いだなんてとんでもゴザイマセン! まぐれまぐれ、Beginner's Luck! アハハ」
「にしても、憧れのつばさサンやなずなサンに褒めてもらえるなんて、ワタシ冥利に尽きる!」

 照れ隠しのように笑って頭を掻くラニアは、しかしやはり満更でもないようだった。幼気な笑顔だった。
 小麦色の小さな手がテーブルの上に伸びて
、ことん、と自身の機体を置く。「彼には、頑張ってもらってます――」。
 それは正しくラニアの愛機、F/A-23"ヘマタイト・シャドウ"。目に痛い白黒のフェリス迷彩が施された、人型の「闘機」。
 ご丁寧に彼女の代名詞とも呼ばれた、200cm電磁火薬複合射突槍――「ブリューナク」パイルバンカーまで、その右手に握られていた。

「実はブッチャケた話しちゃうと、なずなサンがホビーバトルで凄い戦績挙げてるって聞いて、これは目を付けとかなきゃ! って思って」
「どんな闘い方してるカナーって色々調べてたら、いつの間にかハマっちゃってたって言うか――ミイラ取りが、ミイラになる。みたいな!」

 返された名刺を丁寧に懐へと仕舞い、どうにも怪しい日本語でへらへらと笑いながら、まったく自然に彼女はふたりの隣に座る。
 出てきたショートケーキをぱくつきながら、ココアをひとくち。――けれど。


「……まあ今回の大会で、わたしアナタたちとぶつかれないし! 安心して勝ち進んでほしいです、ハイ!」


 少しだけ、元気な声のトーンが落ちた。悲しそうな横顔には、それでも笑顔が残っていた。
320Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/18(月)00:11:10 ID:jgj()
 >>315

「ああ、この子ねーーーそれについては、企業秘密」

セツナは戯けるように答えをはぐらかす。ただ、その回答からしてその戦姫が市販のキットとは全くの別物であることだけは解るだろう。
開発スタッフであるからこそ所有が可能な、そんな特殊な機能を搭載しているといったような事情だろう。彼女は開発者であって、競技者ではないのだから。


「ええ、勿論!!ホワイトウルフだってバリエーションの数なら沢山ありますし、外伝漫画なら主役を務めたこともある名機ですから!!
 公式で色んなバリエーションが提示されているとやっぱりモデラーとしても妄想が刺激されて製作が捗りますよね!!」

ホワイトウルフ、鋼獣シリーズの中でも最もポピュラーな機体の一つであり、その人気からマイナーチェンジも数多く存在する。
カナデがその機体を今回の大会のパートナーに選んだのも、やはりその機体が好きだからであり……模型製作には誰も彼も少なからず、愛が伴うものなのだろう、きっと。


「……いやー、確かにすごいですね!!ニュースの一面を飾るなんて!!
 けれども!!最後に優勝を飾って一番のニュースになるのは……この私ですから!!!」


そして張り合おうする程度には、負けん気が強かったらしい。
優勝してみせると何の躊躇いもなく言い放てる彼女のメンタルは、豪胆なのかそれともタダのバカなのか。
321ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/18(月)00:21:06 ID:UyI
>>316
「そうかな?じゃあもっと頑張って楽しんで貰おうかな!」

表情の陰るニーナ、彼女が楽しめないというのなら、それは自分がまだ未熟である証拠。
エンターテイナーである以上戦う相手すらも楽しませなくては一流とは言えない、その為に何をするべきか。

今はまだ、例え何かに気付いていても手を出すべき時ではない、少なくとも今の自分はそうあるべき人間なのだから、それらしいやり方をするだけだ。

左右と後方を抑える軌道のミサイル、それに気付いた時には既に誘爆が危険となる距離となっており、回避が難しくなっていた。
ならば、ミサイルの唯一存在しない方向、リコリスの迫る前方へとあえて踏み出す。
ジョーカーは自分からリコリスへと接近し、自分に&#25681
322初風なずな&冬芽つばき◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/18(月)00:23:58 ID:OWU
>>310

会釈に対して、なずなは軽い目配せで応え、コナユキも手を振るに留める。
つばきはエンジの所属チームを知っているのか、少し身を乗り出していたが、翼竜の鋼獣に首を軽くつつかれて話しかかけるのをやめた。

彼の姿から連想するのは、あの事件で一緒に居た幼い少年のこと。
サインを楽しみにしてくれていたのに、気がつくといなくなっていた。事情は知らないが心配だ。
とは言えエンジに聞くことではないし、自分が分け入っていいことかもわからないので、なずなはそれを口にしなかった。

>>318

「もちろん! それと後で事務所の人に、お店に掲示してもらってもいいか聞いてみるね」
「嬉しいけど、あんまり字には期待しないでほしいっす。デカールにポチポチっとロゴを書くのは得意なんすけどねぇ」

カナデのお願いを快諾してサインを書き始める二人。慣れた手つきのなずなに対し、つばきは若干筆に迷いがある。
なずながさらさらと書き上げたのは、最初の「な」と「ず」を繋げて、最後の「な」の書き終わりがハート型になっているアイドルらしい丸文字のサインだ。
このハート型、ファンの間では植物のナズナの実をイメージしたものだと考えられている。
一方でつばきは、フルネームをロボットアニメのタイトルロゴのような角ばった書体で書き上げた。

「そりゃインドア派には耳が痛い話ですな……って、おおっ! この絵柄はアタシが出たアニメの主役機じゃないっすか!」
「ほんとだー。でもつばきちゃん、確かその時はロボットに乗らないお姫様の役で」
「それは言わないお約束っす。……乗りたいんすけどねえカッコいいの。
 いっそラスボス機の生体ユニットとかでいいんすけど」

ちょっと濃くて形振り構わないトークでなずなを苦笑させつつ、つばきは絵をなるべく残すよう、キツツキが木を少しずつ削るようにクッキーを食べていく。
コナユキに「はしたないですよ、母様」と注意されると、呻きながらもちゃんと食べたが。
323ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/18(月)00:29:31 ID:UyI
>>316
「そうかな?じゃあもっと頑張って楽しんで貰おうかな!」

表情の陰るニーナ、彼女が楽しめないというのなら、それは自分がまだ未熟である証拠。
エンターテイナーである以上戦う相手すらも楽しませなくては一流とは言えない、その為に何をするべきか。

今はまだ、例え何かに気付いていても手を出すべき時ではない、少なくとも今の自分はそうあるべき人間なのだから、それらしいやり方をするだけだ。

左右と後方を抑える軌道のミサイル、それに気付いた時には既に誘爆が危険となる距離となっており、回避が難しくなっていた。
ならば、ミサイルの唯一存在しない方向、リコリスの迫る前方へとあえて踏み出す。
ジョーカーは自分からリコリスへと接近し、自分に掴みかかるアームをギリギリの所で回避、そのまま前方至近距離の位置をキープする。

「残り時間30秒、ここからはボーナスタイムだ!!」
「ジョーカーは君の相棒の目の前から動かない!さあ捕まえられるかな!?」

それはジョセフの計らいであった、ジョーカーをリコリスの至近距離のまま、いつでも捕まえられる位置で捕縛をかわし続ける宣言。
相手に塩を送るかのように思える行為だが、しかしそれはジョーカーにとってはやりやすい体制であった。
何故ならばジョーカーは先程から弾幕を回避するにあたり、ダメージが蓄積していたことによりこれ以上遠距離を回避し続けるのが難しくなっていた為。
相手が遠距離攻撃をし辛い位置をキープしつつ、場を盛り上げるジョセフの知恵だ。




───誰かが言った、「頑張れ」と。
それは小さな子供の声、自分達が束になっても捕まえられなかった憎々しいピエロがもう少しで捕まえられるところにいる。
自分達の雪辱を今こそ晴らしてくれと、子供達の声援がニーナ達にかけられる。
「頑張れ」「もう少し」と叫ぶ声、彼等にとってはただの遊びでも、遊びに本気になれるのが子供達であって、それこそがホビーの正しい遊び方なのだ。



「…あれ?もしかして僕、嫌われてる?」

呟いた内容とは裏腹に、ジョセフの表情はとても楽しそうに笑っていた。
324マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/18(月)00:34:50 ID:liu
>>317
「そうそうそれそれ! そんでもってボクはテレビ局の構成の手のひらの上でまんまと踊らされたって訳だ。
 このままじゃボクはテレビの前から動けなくなりそうだよ。ま、今日からは録画の準備をすることにするよ。見る時間が確保できればの話だけど」

いくらこの中では比較的年上であるとはいえ、中身はいわゆるオタク寄り。女性との免疫がそれほど強くないのも事実。
そうなると逃げ道として選ばれるのは、多少年下でも同性になってしまう訳だ。

「んんー? その機体は……」

マキトの目の奥が鋭く光った、ような気がする。あくまでも気分の問題。

「ああ! 思い出したよ! この前の事件の時にいた機体じゃないか!
 いやー、まさかあの時の功労者がキミだったとはねー。アレは凄かったよー。ボクもあそこまで操れるようになりたいもんだ。
 ホントはあの場に居合わせたかったんだけど、生憎知ったのがその日のニュース映像でさ。でも現場の光景はネット経由で見させてもらったよ」

どうやら後者の方で。あの事件に現地にいた観客の一人が、一部始終をネットに上げていたらしく、その映像で見た、という訳だ。

>>318
「なら安心安心。ほら、ボクが自分で言うのもアレだけど、浮いてるじゃん。自覚はちゃんとあるんだよ。ホントに」

カナデの言葉を聞き、ホッと胸をなで下ろす。
キャップを被りなおせば、近くにあった席に座りメニュー表としばらくにらめっこ。

「あー、ホント何頼めばいいのかわからないなー。こんなトコ来るの初めてだからなー。
 んじゃあ、アイスココアで頼みますわ。これならボクでも何が来るか想像付くし」

マキトには少々敷居が高かったようで、メニューに載る品を見てもピンと来るものが片手で数え切れる程度しか見つけられなかった。
数少ない理解できる品を見つければ、意気揚々と注文。メニューをテーブルの端に寄せる。

「おっと、コレがキミのかい。おーよしよし、いい子いい子」

テーブル上の白狼の頭を人差し指で撫でるようになぞる。その中でも目線は機体の隅々へと向かっている。

「なーるほど、やっぱり気になるよね。お呼びとならば仕方なし。カモン、ストーム。行動を許可する」
『よっこらせっと。招集でありますか、隊長』

マキトがリュックの口を開けると、中から一機の兵士が顔を出す。風体を言い表すならば一兵士そのもの。このまま人間サイズになれば戦場に居そうなモノ。
オリーブドラブ一色の塗装に身を包んだ兵隊が、リュックより飛び降りてテーブル上に着地する。
325深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/18(月)00:37:37 ID:WNt
>>320

秘密、と言われてしまえばそこからさらに言及することはない。
開発者であるなら非公開のデータを搭載することだってあるだろうし。

「そっすか」とか気のない返事で、会話を打ち切るだろう。


「まあな。でも俺なんかは天邪鬼だから改造案を公式に先越されて頭抱えることも結構あるぜ。
 後追いしてくれる分には大歓迎だけどなー」

射撃タイプの機体をシールドに持ち替えさせるなど、敢えて王道から外している節もあって。
そういう点では公式と被ってしまうのは複雑な気持ちになるという。

「ククク、言うね。だがそうじゃなくちゃ面白くない」

満足げな笑みをカナデに向ける。どうやらその返答を待っていたようで。
チャンスは誰にだって訪れる。立ちはだかる全員がライバルなのだから、
優勝を語るくらいでないと面白くない。

「あの事件なんてただタイミングが合ったのが俺だっただけだよ。もしあの場にいたのがお前だったら、多分お前が載ってただけさ」
326初風なずな&冬芽つばき◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/18(月)00:43:20 ID:OWU
>>319

「ヘマタイト・シャドウ! 武装未改造でプロシーンに持ち込んでる凄腕、ラニアサンしか見たことないっすよ!
 うちのコナユキも近いところがあるんすけど、パフォーマンスの理論値相応に要求が高すぎるんすよね。
 とっつきに隠し腕にステルス、こんなのアタシなら絶対脳がパンクするっす……」

加えて言えば、複雑を極めるダズル迷彩の塗り分けも完璧。
ディティールの暴力と言ってよい剥き出しの推進機関や駆動系に至るまで、注意深く作られている。
気がつくと、つばきは魂の篭った仏像を目にしたかのようにヘマタイト・シャドウを拝んでいた。

「褒められてうれしいけど、ラニアさんにすごいって言われちゃうと何かくすぐったいなあ。
 順位も大会の規模も、何から何まであなたのほうが上だも――、――ん?」

まるで予選で既に敗退したかのような発言がひっかかった。
例え当たり運が下振れて負けが込んでも、まだ予選通過の芽はあるはずだ。
実績を加味すれば数回分の不戦勝すらあってもおかしくない。なのに、どうして対戦の確率が無いと?


「ラニアさん、今なんて言ったんですか。予選、まだ半分ぐらいありますけど……」

おおっぴらにしていない事を敢えて口にしたというなら、これは根掘り葉掘り聞くべきことだろう。
アイドルとしてではなく、一人のファイター仲間として、なずなは詰問に踏み切る。
327Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/18(月)00:52:14 ID:jgj()
>>319

「“マリオン”」


そう呟いたセツナに答えるように、彼女の胸ポケットの中から一機の戦姫が顔を出す。
その青い瞳はわずかな間だったがタニアと彼女の機体を観察し、その視覚情報を取得したなら再びポケットの奥へと引っ込んでいくだろう。

セツナが何を考えているかは分からない。けれども彼女の事情に立ち入ろうとする様子もなかった……少なくとも今の所は。

>>322

「おおー……文字も綺麗です。流石アイドル、私もそれくらい画力があったらなー……
 戦姫のアイリペとか、一時期興味があって手を出したことがあったんですけど全然描けなくて……」


余談であるが、そのアイリペした戦姫をSNSにアップした所ファンからは“目力で呪い殺されそう”という有難い評価を頂いたりした。
ちゃっかりとクッキーのひとつを頂き、頬張りながら二人のアイドルをじっと見つめる。そのやりとりは画面越しに見えるフィクションではない、本当の光景。


「お二人とも、仲良しなんですね!!やっぱり生で見ると良いものです……!!」

二人のやりとりを満足そうに眺めながら、自分の紅茶をくいっと飲み干した。
328深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/18(月)01:07:27 ID:WNt
>>322

(鋼獣使いかよあの女、ていうか『アズダルカス』とかやるなアイツ……)

なずなの方の機体は先日目にしたものだが、つばきの機体を視界に入れるとひそかに目を光らせる。
鋼獣使いとして、同じ鋼獣使いに対するチェックはどこか厳しくなる。そういうものだ。
ましてや恐竜と翼竜、絶滅種同士となればなおさらだ。
燃え上がる対抗心は、今はひとまず押しとどめて。

>>324

「ただああいう番組は結局大衆受けするスーパープレイが主ですからね。
 試合の参考にするには、やっぱ試合全体を自分の目で見ないと。
 ……まあ、娯楽としての強度は勿論ありますけどね」

テレビを見るのも研究のため。少年はそう言っているのだ。
マキトのほうの語り口をみるに、おそらくそこまでのことを考えてはいないのではないか、と思っているようだが。

「はは……いや、あれはほんとにただ居合わせただけで。
 それに実際、相手との相性も良かったですよ」

敵も二体だったが、もう一方は苦手なタイプの機体だった。
あの時はそこのアイドルともう一人が引き受けてくれたが、そっちと相対していれば自分の機体もどうなっていたか、と続ける。
しかし、不謹慎な話ではあるのだが、褒められればどうにも誇らしい。

「まあ当然運営側も動くみたいですし。あんなことはそうそう起こらないでしょうよ」
329ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/18(月)01:08:19 ID:TEQ
>>326

 つばさからの絶賛を浴びれば、やはり彼女は満更でもなさそうに、しかし照れたような爛漫の笑いを浮かべる。
 その手先の器用さは、幼い頃の廃品漁りで身に付いたものだった。ホビーファイターとして成功する前の、多くは知らぬ彼女の過去。
 憧れのふたりと出会えたこと、憧れのふたりから褒め称えられたこと――その喜びが、ついラニアの口を滑らせたのかもしれない。


「――や、……それが、デスね」


 問い詰めるなずなに気圧されたのなら、彼女は言葉を誤魔化すことはできなかった。ファンの1人としても、先達のファイターとしても、嘘はつきたくなかった。
 ――躊躇うようにひとつ息を吐いて、俯いたまま。不承不承のうちに、彼女は語り始める。

「ワタシの機体、フォローアップの時に弾かれちゃって。……大会、出られないんです」

 悲しげな笑いを、もはやラニアは隠すこともなかった。ちいさな指先を"ヘマタイト・シャドウ"へと這わせて、愛おしげに撫でる。

「ステルスユニットの起動システムに違反モジュールが見つかった、――って、聞きました。
 確かにあの部分は、ソフト側の更新が遅れていたけれど……でも、旧型のホビーじゃ出られない規約なんて、どこにもない。
 ルール解釈のエラッタがあったとも聞かないし、前の大会では問題なく出られてた機体なンです」

「例えばCCチップみたいな、明らかに悪意のある非公認装備なら、即刻の出場停止も分かります……。
 でも、ただ旧バージョンのモジュールで出撃しようとしただけ、ですよ? そんな理由で出場できないなんて、聞いたことありませン。
 まして弁明の余地も、再提出の機会も与えられないなんて――こんな対応、ぜったいオカシイって、いま抗議してる所なンです」

 次第にその言葉は、独白から嘆きにも似て、もはや悲しみに笑うこともない。不意に、彼女は振り向いて。

>>327


「……あのッ。セツナ、さン。」

「先日WHBTの運営のホウに、検査の再試と裁決への抗議、申し出たンですけど」
「そちらは、どうなっていますか。ワタシ、大会、出られそうですか」

 ――そう、声をかける。嘆願するように、あるいは祈るように。ラニアは、彼女を知っていた。
 WHBT運営へと処罰の是正を訴えようとした時に、相談にあたってくれたのがセツナだった。
 彼女と話をして、然るべき筋から運営へと不服の意思を申し出たのが、数日前のことだった。
330Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/18(月)01:13:34 ID:jgj()
>>324

「……そうですか?確かに変わった人だなーとは思いましたけど…」

そう言ってカナデは店内を見渡す。見事に変わり者しか存在しない空間だった。
なので浮いているとか、そういった要素は気にならない。寧ろ色んな意味で濃い人間ばかりなので、多少の浮き沈みは分からないと言った方が正しい。

テーブル上に着地した兵士の如き闘機に対して、白狼は闘志の宿った瞳を向ける。
流石に今から戦う訳にもいかないが、それでもこの大会にいるのならばいつかは戦うことになる可能性のあるライバル……つまりは倒すべき敵だと。
そういった認識がこの狼の中にはあるようだった。尤も、マスターであるカナデはというと狼とは対照的に目の前の機体に夢中だったが。

「おお。かっこいい!!良いなあ、こういうリアル志向のモデルも……!!」

つんつんとつついたり、じろじろと眺めたり。
そんな熱心な主人の姿を見て、白狼は少しばかり呆れたように欠伸をこぼすのだった。

>>325

「ええ、勿論ですよ!!なんたって私、強いですから!!!」

自分を強いと言い切れるだけの自信が、そしてその自信の裏付けである愛機への信頼が彼女にはあった。
だからこそ有名チームのエース相手にもここまでの大口を叩けるのだろう。そして彼女もまた、その時を楽しみにしていた。
今は同じ大会に出場する同好の士として、けれども次は…… 

「戦う時が訪れたなら、その時は全力で挑ませていただきますよ!!
 ええ、勿論コテンパンにしちゃいますので!!覚悟しておいてください!!」

堂々と宣戦布告————どうやら同じ鋼獣使いとして、そして憧れの選手が相手であることで、彼女の闘争心に火がついたようだった。
331初風なずな&冬芽つばき◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/18(月)01:26:58 ID:OWU
>>327

「あー、ハイライトのパターンがまずいと呪いのビデオのアレみたいになるっすよね。
 髪パーツを取った状態でつけた時のことイメージしないとダメっすし、結構難儀っていうか。
 アタシも中学生の頃は、削りすぎて色が乗らなかったり筆をケチって失敗したりそりゃもう大変で」

過去の失敗を共有する、というのはつばきが得意とする芸風のひとつだ。
あのモデラーも前はこんな下らないミスをしてたんだ、と思って貰えれば間口は広がる。

「戦姫だと、もとより可愛くなくなっちゃったらかわいそうだもんね。わかるわかる」

尤も、他の誰より大事な少女は〝こっち側〟を体験してはくれないのだけれど。
お陰でアーキテクトとして絶対的に信頼されているのだから――と、つばきが暗い喜びを感じているのも事実だった。

「そりゃ仲良しっすよ。何せ冬休み使って原作アニメ一挙視聴合宿した仲っすから!」
「そうそう。お陰でだいぶ詳しくなったかな。お相手さんが何使ってても、これつばきちゃんゼミでやったやつだ!ってね」

お互いに言いたいことを言い合い、受け止め合い、適度に受け流す。
「百合営業」と揶揄されることもある二人だが、私生活でも実際かなり近い距離感を持っている。
なずな自身からしてみても、つばきは気の置けない友人であると共に、ファイターとしての半身である。
彼女の調整は繊細にして大胆、機体の損壊に対するケアも入念。なずながレーサーなら、つばきはピットクルー。
お互いを補う関係がこれからもずっと続くのだと、二人は漠然と信じている。
332Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/18(月)01:31:09 ID:jgj()
>>329


「……問い合わせたけど、依然審議中だってさ
 そもそも責任の所在が曖昧なもんで、畑違いの研究職じゃあこれ以上手が出せない」


一切誤魔化すことなく伝えたのは、セツナなりの優しさか。
今の時点ではどうしようもない……それが彼女からの残酷な回答だった。

当然といえば、当然の話。彼女は技術者であっても大会運営に直接携わっている訳ではない。
仮にその立場を利用して彼女の救済に動いたとしても、できることなどタカが知れているのだろう。


「まだ予選の期間はあることだし、もう少し待ってみなよ」
「もしかするとーーーー“状況を打開するような救いの手が転がり落ちてくるかもしれないし”」


それは慰めか、気休めか、それとも。
そんな不確かな言葉を残して、空になったカップを洗う為にセツナは一旦カウンターの奥に引っ込んでいく。
333深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/18(月)01:37:09 ID:WNt
>>330

「クククッ、コテンパンと来たか」

本当に滾らせてくれる。なんなら今すぐ戦いたいくらい、熱い少女だ。
しかし、自分が挑戦を受ける側とは。勿論強豪チームのエースとして誇らしくもあるが―――


「―――お前が強いのは知ってるよ。強くなきゃこの大会、出場権すら得られないからな」

実際、同じクラブチームでも出場を逃したチームメイトは沢山いる。
強豪とされるチームでさえ、だ。それだけ、この場にいるのは世界中でほんの一握り。

「だが、ここではその一握りの中からただひとりを決めるんだ。
 そのとき、何が必要になるか―――わかるか?」

ただ「強い」だけではなく、「最強」であるために必要なこと。
彼自身がクラブチームでずっと追い求めてきたことだ。それが分かるかと、宣戦布告してきた彼女に問うた。
334マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/18(月)01:48:26 ID:liu
>>328
「んー、確かにその通りだよねー。ボクも出来ることなら直接見たいんだけど、どうしてもパーツ探しに時間取られちゃって観に行けてないんだよ。
 それにさ、たまにはいいプレー集めたモンタージュ集とか見たくなる時だってあるじゃん? たまにはいいじゃない夢見たってさ。
 まあ、ボクには自分のプレーを見て研究するなんて羞恥プレーは出来っこないけど」

どちらかと言えばマキトは他人のプレイしている所を見るのが好きなタイプである。もちろん自分で実際に動かすのも好きであるのだが。
この中ではかなり観客側に近い存在なのだろう。なぜ出場したのか本当にわからなくなりそうだ。

「申し訳ないんだけど、ボクはイマイチキミの使ってる鋼獣シリーズに詳しくないから偉そうなことは言えないんだけどさ。
 あの試合…と言ったらダメなんだろうけど、まああの時のキミは良かったと思うよ。一視聴者として。相性がどうたらの話なんて気にならないくらいに」

「このまま平穏に過ごせればいいんだけどねえ。いつの間にボクの機体も不具合で勝手に動きだしたりして。なーんて」

凄かったことを素直に言って何が悪い、と言わんばかりの口調でひたすらに捲し立てるマキト。
根は思ったより真面目で素直なのだろう。それこそ人前で堂々と土下座が出来る程度には。

>>330
「はは……言ってくれるね。ボクもよく言われるけど」

カナデの言葉でスッと自身に張り付いていた緊張が剥がれ落ちる音がした気がした。この場にいるのは皆同じホビーファイトが好きな同類ではないか。
ならば性別の差が何だ。年齢の差が何だ。流石に幼すぎるのはいろいろとマズイだろうが、この際はいったん置いといて。
とりあえずこれからは気兼ねなくこの場にいる面々と話が出来そうな気がした。あくまでもこの場では、の話だが。

マスターたちの知らないうちに同じ機体通しである兵士と白狼の間には闘争意識というべきか、ライバル意識というか、そういった意識が飛び交っている。
もちろんこの兵士にも意識はあるし、戦うのであれば勝ちたいという思いはある。それは持ち主であるマキトも同じ。思いがけない場所で前哨戦はすでに始まっていたのである。
まあ、当の本人たちは互いの機体に夢中なのであるが。

「キミの機体も凄いね。ボクも背伸びして鋼獣にも手を出してみるかな」
『隊長、自分を手放すつもりでありますか? 隊長の夢はどうするつもりなのですか?』
「いや、言ってみただけだって。第一今のボクには新調出来るほどの資金を持ち合わせてないんだから」

白狼を指先で触りながら、もう片方の手で兵士をつつく。二方向から弄ばれる兵士は左右に揺らされながらも、直立を続けようとする。この性格も生真面目というわけだ。
335初風なずな&冬芽つばき◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/18(月)01:53:14 ID:OWU
>>329 >>332

「えっ、そんな」「おぶえあ!?」「……は?」

悲嘆に思わず口元を抑えるなずな、鳩が豆鉄砲を食ったようなつばき、冷たい憤りを見せるコナユキ。
二人と一機は、ラニアの告白に三者三様の――而して一様な困惑で以て応じた。

「おかしいですよラニアサン! だって直近の大会じゃ完璧にフォーマットリーガルだったじゃないっすか!
 確かなずなサンが出た学生選手権でも、純正ヘマタイト使ってる人が居たっすよ。
 多分ファンで、真似してたんでしょうね――案の定負けてたけど失格はしてないはずっす!」

世界大会の前哨戦と目される世界各地の大会で、ヘマタイト・シャドウが失格の原因になっているはずはない。
もしそうならレギュレーションに記載があるだろうし、欠陥商品としてのバッシングがニュース沙汰にもなるだろう。
それが突然、掌を返すように。到底納得できる話ではなかった。

「……聞く限り、私には誰かがあなたをハメようとしているようにしか思えませんね。
 恨まれるようなことに心当たりは? 怨恨があってプロファイターの機体に細工ができる人間など、そうは居ないでしょう?」

コナユキはひょいと机の上に飛び乗ると、腕を組んだ姿勢を取る。
理詰めに義憤が同居した、重々しい声音がラニアに問いかけた。
お姉さまと、対等以上に戦える可能性のあるファイターが権利を奪われたことが許せないのだ。

「抗議、わたしにもさせてくれないかな。折角アイドルなんだもん、この声が届く範囲には伝えたいよ。
 こんなのぜったい間違ってる――なんて、初対面で言われるのも鬱陶しいかなって、ちょっと思うけど。
 でもわたしは、ラニアさんが正しいって信じたい気持ちなの」

そしてなずなは感情的に語ると、ラニアの手を取ってぎゅっと握ろうとするだろう。
殆ど本能のように、彼女は目の前の苦境に立つ少女を励ましたいと感じた。
それはアイドルだからというより、彼女が初風なずなであるが故の行動だった。
336深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/18(月)02:18:36 ID:WNt
>>334

「見てる分には最高に気持ちいいですからね。
 ただ、ああいうの見すぎると土壇場でああいうスーパープレイに頼りたくなっちゃいますから」

スーパープレイの基本パターンは超技能による回避、超長距離の狙撃、ロマン武器による一発逆転・一撃必殺。
シールドと装甲による堅牢な守備をベースとする彼のタイラントレックスの戦い方とは真逆なのだ。

「まあ、だからこそ。この間みたいに自分で滅多にできないスーパープレイができると滾るんですけどね」

先日の事件の最後。敵のミサイルを薙ぎ払った、最大出力エネルギーキャノンの一撃。
あれは良かったと自分でも思う。というか出来すぎだった。普段の戦いではとても参考にはならない。
だからこそ熱くなるものがあることは、彼も認めるところではある。

「もしそうなったらまた俺が止めてあげますよ。
 機体どうなっても知らないですけどね」
337Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/18(月)02:24:02 ID:jgj()
>>331

「模型製作とは別系統の技術ですよねえ
 純粋に絵心がないと難しい加工ですし、せめて市販の瞳デカールがもっと種類増えればいんですけどねー」

モデラー同士の会話、趣味の通ずる者だからこそ、気兼ねなくできるあるある話。
普段であればSNSなどのインターネット上のコミュニティでしかできない話が、こうしてリアルで交し合える、それだけでもこの交流会を開いた甲斐があったと思えた。
しかも、その相手が応援しているアイドルメンバーの一員なのだから、まるで夢でも見ているかのような心地である。


「ああ、何というか二人だけの世界って感じがします……!!
 一ファンとしてはこの間に割って入ることなど断じて許されない……!!なのでここから眺めてます……どゆるりと!!」

二人の間に流れる濃密な空気を満喫しつつ、その光景を眺める方向にシフトするカナデ。
なんだかんだ、この交流会を一番満喫しているのは彼女自身のような気がしなくもなかった

>>333

「ふ……愚問ですね」

彼からの問いかけに対して、少女は不敵に笑みを返す。
カナデとて何も考えずにこの大会に参加した訳ではない。彼女なりの信念があって、愛機と共にこの戦場に訪れたのだから。
そしてその信念とは、彼女の考える戦いに勝ち抜くために必要となるものはーーー

「—————“愛”……ですよ!!模型にかける情熱、その想いがどれだけ込められているかこそが、ホビーバトルの本質です!!
 ホビーバトルなんて、言ってしまえば子供の遊び。けれども遊びだからこそ、誰よりも本気で、誰よりも楽しんだ人が勝者に成り得るんです……多分!!」


彼女の答えには根拠があった。それは昨年度のWHBT優勝者である男の、彼女が最大の目標とする選手の在り方があった。
彼はホビーバトルを楽しんでいた。作り上げ、壊し、そしてまた作り上げるその全てを愛し、そしてその情熱が彼を優勝に導いた……とカナデは分析している。
その姿に憧れたからこそ、カナデはこの大会に出場することを決意したのだった。その情熱が、何れは頂点にだって届くものと信じて。
338Rumors◆o7SK7L7zxJvm :2017/09/18(月)02:24:08 ID:jgj()
>>334

「お、いいですねー、鋼獣ぜひ作ってください!!
 パーツ数こそ闘機よりも多くて複雑なものが大半ですが、その分完成させた時の満足感はとても素晴らしいですから!!」

鋼獣をメインに作成するカナデにとって、鋼獣勢が増えることは喜ばしいことに他ならず。
ダイレクトマーケティングを仕掛けたなら、最初のオススメはシルバーウルフですよーと自身の愛機のベースになったキットを紹介するだろう。

それから少しして、白狼はぴょんと飛び上がってカナデの肩に着地する。
流石にこれ以上、戦い前に機体を触らせるという訳にもいかず、続きはホビーバトルの時に披露するということで。

>>all
「では、一旦買い出しに行ってまいります!!お菓子とか模型とか、いろいろ買ってきますので!!
 それまで皆さん、適当に寛いだり話したりしていてくださいな!!ではっ!!」

そう言ってカナデは駆け足で店を飛び出していった。
肝心の主催者は席を離れたが、交流会自体はまだまだ続く。

話したいことがあれば、気の向くままに話せばいい。まだまだ、貸切の時間はたくさんあるのだから……。
339ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/18(月)02:34:45 ID:TEQ
>>332

「……そう、ですヨね。……ありがとうございます。ごめンなさい、急かすようなこと言って」
「もう少しだけ、待ってみまス。……このまま、帰るわけには、いかないんです」

 ふたたび彼女は俯いて、ひとつ拳を握り締める。遣り場のない悔しさと焦りが、今の彼女を駆り立てていた。
 今のラニアには、負けられない理由があった。――ともすればそれは、この大会に出る他の誰よりも重い荷でさえあった。

>>335

「――強いて言うなら、アップデートは遅れていました。セキュリティ改善用の定期更新でス。
 けれどそれは、前の大会の時から同じでした。……いくら検査の厳しくなるWHBTだからって、あり得るハズがないンです」

 カウンターの椅子に座り直して、呼吸のようにココアを口にする。それでも、ラニアの心が落ち着くことはなかった。
 何よりも異常であったのは、基準違反と看做された後の「即刻出場停止」。
 本戦であれば兎も角、ホビーバトルの初心者も多く参加する予選の検査において、ここまでペナルティが厳しくなるはずもない。

「……ストリートで戦ってた頃には、いくつか因縁も作りましたケド。でも、彼らにそんな高度な技術があるとは思えない。
 日本に来てからの事前検査は、問題なかった。だから本戦直前でひっかかるのは、何かの手違いだって、思うしかなくって」

 なにかに潤んだ金色の瞳は、小さくとも威厳あるコナユキの声にも顔を上げることはなかった。遣る瀬無くアイスココアの底を覗き込んでいた。
 決して治安の良くないデトロイトのストリートにおいて、暴力沙汰は珍しくもない。ホビーバトルに負けた腹いせに、小狡い嫌がらせを受けたことはあった。
 けれども精々彼らにできるのは、備品の破壊や落書きといった程度の低いもの。ソフトウェアの意図的な書き換えといった、高度な犯罪をこなせる人間はまずいない。

 異議を唱えても、なしのつぶて。彼女は途方に暮れていた。だからこそ理由もなくあてもなく、偶然にSNSでの募集を見てこの喫茶店に入りこんだ。それだけだった。
 ――しかし。憂いを帯びた横顔が、不意に戸惑いに変わるのは、その手に温もりを感じたから。

      「へ、ッ――?」

「……そ、そんな! なずなサン! これ、ワタシの問題! アナタに助けてもらうなんて、申し訳なくて、ワタシ、……。」
「もしかしたら、なずなサンやつばさサンまで、巻き込まれちゃうかもしれないし――。」

 ――初めて、ラニアは戸惑いを見せた握られた手の優しさと力強さに、何をすれば良いか分からなかった。
 いままで彼女が頼ってきたのは、己が身とその才能だけだった。貧しく辛い日々を生き抜くために、彼女は自身だけを頼りにした。
 であればこそ誰かに頼るという行いには、少なからぬ躊躇があった――まして、自分の憧れたアイドルが、そんな約束を契ってくれるだなんて。
 そこにきっと、ラニアは最も躊躇いを覚えていた。だが己の小さく柔らかい手を強く握り締めるなずなの瞳から、彼女は何かを知ったらしかった。


「……ありがとう、なずなサン。つばきサン。コナユキさン。ワタシ、もう少しだけ頑張ってみまス。
 今回の大会は、絶対に負けられないんでス。……こんなところで逃げるなんて、できませン。」

「それに。なずなサンとつばきサンがいらっしゃるのなら、ワタシに手を貸してくださるのなら――百人力、ですかラ!」
 

 ――にこり、と再び屈託無く、ラニアはふたりに笑いかけてみせた。白磁の歯が綺麗に並んで、天真爛漫なる小麦色の笑みを彩っていた。
 これが誰かに力を与えることなんだ。これがアイドルという仕事なんだ。彼女たちふたりは、ワタシより、余程「プロ」をしている――そんな、心強い確信も、胸にしながら。
340マキト◆M0KwQrAFd. :2017/09/18(月)02:50:36 ID:liu
>>336
「その気持ちすっごいわかる。めっちゃわかる。ああいうの見てると自分でも頑張れば出来るんじゃないかとか思えて来るからタチ悪いんだよ。
 んで、実際にバトルでやって難易度の高さを思い知っていつも通りやる羽目になるまでがワンセット。結局そういうモンなんだよねえ」

「でもさ、ロマン兵器を抱え込んでる以上、そういうのでキメてみたいじゃん? 結果がどうであれ自分が気持ちいいプレーをするのが一番。
 ……いや、勝負するなら勝ちたいってのが正直な所なんだけど。そこは人間ってことでどうか一つ」

戦術で言えば彼とかなり近いモノはあるかもしれない。高い装甲値による波状攻撃で、相手を出来るだけ寄せないように立ち回るプレー。
そしてシメのロマン砲。このカタルシスに勝るものはそうそうない。少なくとも今のマキトが知る中では。

「いやー、機体ぶっ壊されるのは勘弁してもらいたいなー。パーツ全部そろえるのめっちゃお金掛かったのよ。冗談抜きで。
 じゃあ何でバトル出てるのかって話でしょ。ホントなんでなんだろうね」

「そうだ、この際だからキミにも聞いとこう。チタニア社って知ってるかな。ボクの探してる企業なんだけどね、機体の大体のパーツをこの企業製パーツで補ってるんだよ。
 今じゃもう会社自体が無くなってるから流通量が少ないの高いので苦労してるんだよ。見かけたら教えてほしいなーって話なんだけど……ダメ?」

リュックからそれなりに年季の入った冊子が出てくる。いわゆるホビーのカタログというヤツだ。
所狭しと大企業から中小企業が展開する販売戦略が載る中で、小さいが得体の知れない存在感がにじみ出るページがある。ここに載るのが彼の言うチタニア社である。
販売している商品はどこに需要があるのかイマイチわからないニッチな品物ばかり。こんなことしてるから早々と店じまいすることになったのだが、それは別の話。
そして、彼の前にいるマキトという青年は、この危険な沼に魅入られてしまった哀れな被害者なのであった。
341深山エンジ◆h3le2z/CaI :2017/09/18(月)03:17:18 ID:WNt
>>337

「―――――――」

ぽかん、と。彼女にとっての答えを聞いて、呆気に取られたかのような表情を浮かべる。
しかし、徐々にそれは笑みに代わっていって。

「……クククッ、愛と来たか。いや実際いい答えだと思うぜ」

己の機体を愛し、信じ、ともに戦い抜くこと。
ホビーバトルの基本にして、なるほど本質と言っていいかもしれない。

………だが。

少年はクラブチームで過去何年も、大会の本戦への出場を決めてなお最強の座に届かず敗れていった者たちの背中を見てきた。
あの人たちに機体への愛がなかったとは思わない。誰もが己の機体を信じぬいて、それでも王者にはなれず去っていった。
この差は何だ。勝者と敗者の分水嶺はどこにある。

そんなことを思いながら、カナデに手を振り見送った。

>>340

「上手い人はさも当然みたいにやりますからね……」

多分、その行動パターン自体を練習して身に着けたわけではないのだろう。
磨かれた直感。それによって導き出される最適解。それを実現するセンス。
そういうものは不足しているなあ、と考えることはある。
――――と、いつもよりネガティブ思考になっている自分に気づく。いかんいかん、と頭部を軽く掻いて。

「俺はどっちかというと結果重視ですわ、勝てるなら頭突きでも踏み付けでもいいから勝ちたい
 ロマンは分かりますけどね。思っていた通りの試合運びでいけると脳汁めっちゃ出るし」

「壊れたら直しゃいいんじゃ……って、チタニア社?」

名前はちらっと目にしたことがある程度だ。既に会社としては存在せず、大会環境にも滅多に姿を見せないため大会参加前のチェックから漏れていた。
そんなところの機体だったのか。そりゃ見慣れないわけだ。そしてそりゃ直せないわけだ。

「率直に言ってかなりマイナーなパーツばっかり作ってますよね、これ見る限り……
 一応ショップとかで見かけたら教えますよ。こっちで使うアテもないですしね」

勝敗にすらさほどこだわらない男の、強烈なこだわりなのだろう。可能なかぎり助けになってやりたいと思う。
342初風なずな&冬芽つばき◆Y7uW0eJRp9Ye :2017/09/18(月)03:18:41 ID:OWU
>>339

「……アタシ、作るのは自分でも上手いと思ってるんすけど、バトルがほんとダメなんすよ。
 だから世界大会に出られる人たちみんなに、すッごく憧れてて。
 その人が目の前に居て戦う前に敗けそうってなったら、放っておけるわけじゃないっすか」

つばきにとって、トーナメントシーンのファイター達は届くことのない綺羅星だった。
穢されてはならない高みにいる人のために、少しでも役立ちたいという切なる願いが、その言葉にはある。

「あのC.C.チップ事件といい、この大会はどこかがおかしい。
 最もシンプルに考えるならば――獅子身中の虫がいます。背中を預けあえる友軍を作るメリットはリスクを上回る。
 あなたが心配するまでもなく、この舞台にいる時点で既に、お姉さま達は後ろから刺されかねない立場なのです」

声を顰めて語るコナユキの口調は相も変わらず冷淡だったが、ラニアを仲間と認めようとしていた。
それでも若干辛辣で不機嫌な理由は――〝お姉さま〟と慕うマスターがラニアのそれに重ねた手を頻りに横目で見る様子から、想像できるだろうか。

「うん。……そうだ。ちょっとだけ、名刺返して貰える?」

ラニアが了承したなら、なずなは名刺の空欄にすらすらと数字を――彼女の私的な連絡先を書き込んでいく。

「わたしたち友達だから。いつでも、どんなことでも聞いてね。
 辛い時は全部喋っちゃえる相手がいれば、意外と何とかなるから」

一拍置いて、これ経験則だよ、と付け加える。唇に指を当て、作るのは秘密を示すジェスチャー。
或いはそれは、この予選大会で緒戦から敗北を喫した彼女自身が立ち直るために使った方法論なのかもしれない。

「取り敢えず、今日だけは美味しいもの飲んで――ゆっくりしていこ?
 わたしも最近働き詰めでさー。こういうのんびりした時間、貴重なんだよね」

エスプレッソを啜ると、なずなは口元に泡の髭を生やした顔でにっこりと笑った。
343ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/18(月)20:48:11 ID:d7r
>>323

「こんな…こんな遊び…!」

ただの子供遊び、おもちゃを戦わせるだけのただの遊びだ。
こんなものに熱中するなんて、あり得ない。私にとって苦痛しか与えないホビーバトルなんて楽しい筈がない。
だから目の前の男にも、男が操るホビーにも何も感情は浮かばない。ただ倒すべき対象というだけ、ただそれだけの存在だ。

『マスター、敵機捕らえられません。機動力は完全に上回られています』

「パージ許可は出ていない…ここは……
………随分と舐められたもの。リコリス、粒子バズーカ砲構え、充填を開始」

『了解、粒子圧縮開始……』

相手が動かないというのなら遠慮なくやらせてもらうだけ。
そんなとき、聞こえてくるのは子供達の声援。誰かから声援をもらうなんて生まれて初めてのことだった。
だが今はそんなことに気をとられるわけにはいかない。
声援を耳で感じつつも、勝つためにニーナとリコリスは全力を尽くす。それしか存在意義は無い。勝たなければ、生き残れない。

『マスター!』

「リコリスッ!撃てッ!!」

粒子圧縮はすぐに終わる。そしてニーナの掛け声と共にバズーカ砲から先ほどとほぼ同じ熱量の粒子砲が発射される。
大地を抉り、空気を焦がしながらそれは確実にジョーカーを捉えてる。普通、この間合いで射撃攻撃を行うのはあり得ないだろう。
だがしかしこのバトルの場合、このバトルだけは違う。なんたって相手は攻撃をしてこない。反撃が無いのなら存分に撃てるというもの。それも極太のこのバズーカ砲ならば避けることはかなり難しくなるだろう。
344ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/18(月)21:28:19 ID:AU4
>>343
「そうだよ、こんなのは〝遊び〟だ」
「だってホビーバトルは楽しい遊びじゃあないか、みんなが笑顔になれる素晴らしい発明だ」

ホビーバトルを遊びと言うのならそれは間違いではない、これは戦争でも闘争でもない、ただの遊びなのが事実なのだから。
でも、『遊びだから本気になれない』というのは大きな間違い、遊びだからこそ本気で遊べば楽しくなれる、楽しいから熱中する。

「───それに、本当につまらないなら、君はこんな遊びに付き合ってはいないだろう?」
「こんな遊びに『勝ちたい』と思えるのなら、君もきっと気付ける筈だよ」

熱中するから、『勝ちたい』と願う。機械的に勝ちを欲するだけならここまで勝利に執着する事は出来ない筈だ。
ジョセフはこの戦いに全力を尽くす事が出来る彼女らを無感情とはとても思えない、感情の無い戦闘マシーンにこんな事はとても出来ないから。

「さあジョーカー!幕引きだ!」

ジョセフの掛け声に反応し、物言わぬジョーカーは眼を輝かせた。

「この至近距離!ミサイルだろうとガトリングだろうと撃てば本人もタダじゃ済まない!」
「全力でアームを躱せば───」

だが、この戦況を最後の最後で見誤ったのはジョセフのほうであった。
アームを伸ばせばすぐ届く程の至近距離、この距離で遠距離武器を放つなど、自分が巻き添えを喰らう自滅行為だ。
そう考えるのが定石である、しかしニーナの考えはその更に上を行っていた。

「ちょ……!そんな事したら君の相棒もタダじゃ済まないよ!?」

バズーカを構えたリコリスを見て制止の声をかけるジョセフ、しかしそれが相手に聞き入れられる筈もない。
至近距離で放たれた光子バズーカは、回避を行おうとしたジョーカーを逃さず炸裂し爆裂する、しかしこれだけの距離で爆発が起こればリコリスだって無傷ではいられない筈。
しかしそれを耐え切る事が出来たのなら、莫大なダメージによって機能停止し、爆煙の中から吹き飛ばされるジョーカーのボディを掴む事は容易であろう。
345ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/18(月)21:55:33 ID:d7r
>>344

「知ったような、口を…!何も知らない癖に…!!」

ジョセフのその言葉を聞いた瞬間、その表情には憤りとも取れるものが浮かび上がる。
こんな遊びに付き合ってはいない?付き合わざるおえないこちらの身の内も知らないで、いけしゃあしゃあと…!!

〈ニーナ、耳を傾ける必要はない。はやく蹴りをつけろ、"その為に"お前は居るのだぞ〉

「っ……分かっています、先生…」

誰にも聞こえないように言葉を返す。感情を押し殺し、やらなければいけない。それしか道はない。こんな自分を、分かってくれる人なんている筈がない。
壊すだけだ。立ちふさがる敵は全て粉砕する。誰にも理解は出来やしない。
……少なくとも、彼女自身がそう思っている間は彼女とわかり合うことはなし得ないだろう。
自ら塞ぎ込んでいるのだから、それをこじ開ける以外にはどうしようもない。

爆炎と爆煙でリコリスとジョーカーの姿は見えなくなり、あたりは沈黙に包まれる。
しかしその沈黙はリコリスの生存を持って破られることになる。煙の中から現れたのは外部装甲を所々破損しながらもリコリスは立っていた。そのアームでジョーカーを鷲掴みにしていて、誰の目から見ても結果は決まっていた。
346ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/18(月)22:17:37 ID:AU4
>>345
爆煙がもうもうと立ち込め、固唾を呑んで観客がそれを見守る。
煙が晴れてその中に立つ者を見る前に、結果を知っていたのはニーナとジョセフの両者だけだった。

「……残り時間は1秒、おめでとう!君の勝利だ!!」

爆煙の中から力なく四肢を垂らすジョーカーを掴むリコリスが立っているのが見え、観客が歓声を上げる直前にジョセフは賞賛をニーナに送った。
自らのダメージを覚悟した捨身の一撃をもって勝利をもぎ取った、素晴らしい覚悟を持った戦いに拍手を送る。

「皆様ご覧下さい!ニーナ選手は見事私の相棒を捕まえてみせました!」
「いやあ流石は企業の公式選手だ、私のような大道芸人では敵いませんね……一応私も大会選手なんですけど」

そして、これは二人だけの勝負ではない、観客の存在する彼の公演でもある。
有力選手の実力の一旦を思わぬ所で垣間見る事が出来た、貴重な機会は観客を沸かせるには最適であった。
結果として───ニーナを利用する形ではあるが───ジョセフは沢山の人々を楽しませるという目的を達成した、勝利などは目的ではない。

「さて、それでは私の相棒もお疲れのようですし、本日はここで幕引きとさせていただきます」
「またの機会には皆様どうぞ、私達の芸をご覧になって行って下さい」

「それでは、私ジョセフ・ドーソンとその相棒、マジカルジョーカーが」
「そして、華々しい勝利を飾ったニーナ・アルキファイス選手とその相棒、リコリスがお送りいたしました!!」

観客に大きな身振りと共に話しかけるジョセフ、彼が恭しいお辞儀と共に締めの挨拶をすると、観客はそれにつられるように拍手をした。
347ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/18(月)22:58:40 ID:d7r
>>346

『…任務完了、目標討伐完了しました』

「………やっぱり、くだらない…どうせ私が勝つんだから…」

小さくぼそりと呟くと、周りの観客の歓声など物ともせずにニーナはリコリスを回収し帰っていく。
一切の観客へのサービスも無い、クールというよりは無表情。しかし立ち去る前に僅かにジョセフを一瞥し、一言聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた。

「私には、これしかないの」

──────
────
──



『ニーナ、今回の戦いは無茶苦茶だったぞ。冷静さを欠いていた、貴様の役割と自分の立場、お前にどれだけの金が掛かっているかというのをよく理解しているんだろうな?』

「……はい…分かっています、先生…」

会場に存在する選手用のホテル。ニーナは先生と呼ぶその男とそんな会話をしていた。

『お前はチームシュタールの看板、お前に負けは許されない。何度も言わせるなよ』

そんな言葉を受け、顔を伏せて受け応える。
その顔にはやはり笑顔は無く、ホビーバトルを楽しむという気持ちは感じることさえできない。
その内にあるのはどす黒い感情だけ、一切の光すら差さないその心は救われることはあるのだろうか。
348ジョセフ◆LtdXCssiII :2017/09/18(月)23:41:41 ID:AU4
>>347
「───お疲れ様、ジョーカー」
「悪いね、いつもこんな役回りをさせて」

観客への挨拶も一通り済んだ後で、フィールドに残されたジョーカーを回収し、その傷付いた機体に労いの言葉をかける。
楽しませる為のパフォーマーは、その為に傷付く事は慣れたものだ。
鈍痛がジョセフの全身を襲う、リンクしたダメージが身体中を蝕んでいるが、持ち前の演技力はそれを一切感じさせない。

「……チームシュタール……アイゼンカンパニーか」

やれやれ、と片目を閉じてニーナの所属チームを思う。
彼女がどうあれ、下手に首を突っ込むべきではない事情なのは分かっている、無駄に行動を起こせば自分の事すら手が回らなくなる事も。
だけど、それでも。

こんなに楽しい事を楽しめないなんて、悲しい事じゃないか。

「……さてと、どうしようかな」

アリーナから去るジョセフの足取りは、暗い影を歩いていた。
349AcfUisI7l2 :2017/09/19(火)01:03:25 ID:I7T
WHBT会場の一つ、とあるフィールド。
市街地のフィールドが展開された中、その一角にパチモノ臭いフォルムの胴体に馬鹿でかい両腕を携えた機体────スーパーヒナタ3号はいた。

「なんでよりにもよって乱戦なんだよ……」

それを操る参加者は、周りの参加者と比べ年齢が一回りほど行っているであろう、サラリーマンルックの男性────日向武士。
げんなりした表情で握るのは、これまた一際でかいコントローラー。
『いくら乗り気でないとはいえ、一度も戦わないというのはまずいだろう』と重い腰を上げ、重い機体を運んで会場まで来たものの、始まろうとするのは入り組んだ市街地フィールドでの大乱戦。
どう見ても、鈍重なスーパーヒナタ3号では不利だ。
……それに、ホビーの珍妙さと年齢のせいもあり、明らかに変な意味で注目を集めてしまっている。
WHBTへの参加は趣味ではなく、仕事なんだ……武士は自分にそう言い聞かせて平静を保とうとするが、ため息と羞恥心は抑えきれない。

「……勘弁してくれよ……」

そんな武士のつぶやきをよそに、スタートまでのカウントダウンが始まる。
どんな相手が待つのだろうか?
350東雲 真鶴◆0SuLG0jdAEYi :2017/09/19(火)01:24:24 ID:LXK
>>349
全国各地から選りすぐりのプレーヤーが集う、WHBTが会場の一つ。
上空にホログラムで浮かぶ赤色の信号灯が、カウントを刻むと同時にゆらりと点滅する。


「さて、ようやく出番だ…… 頼むぞ、陽萬」

ポニーテールに鉢巻きを巻いて、獣型のホビーを撫でるプレーヤー。
彼女のホビーは呼応するように首をもたげ、そして軽やかに地面に降り立った。
ふわりと広げた白い翼、名状しがたき三本だけの鳥脚で。
モノトーンの間隙にわずかに艶やかな紅の舞う、その機体の名は『陽萬』。

目の前に広がる市街地のミニチュアを前に、陽萬は伸びをするように翼を伸ばし。
信号灯が緑色に染まるとともに、ふらりと街を駆けだした。


「陽萬、まずは機動力の活用と遮蔽の利用を確認しよう。
 エナジーピストル3,4を使え。極力エンゲージは避ける様に」

そう冷静に事を運ぶプレーヤー、彼女の名は東雲真鶴。
ついこの間ホビーを持たされたとは思えないほど落ち着いた様子で、液晶付きの端末に視線を落とす。

ビルの合間を揺られるように、見えない対象にヒットアンドハイドを繰り返す白い機体。
若干六度のそんな演習の末に、メインカメラが鈍重そうな機体を捉えた。

『……!』
「エンゲイジか。少し隠れていてくれ、陽萬」

すぐさまビルの陰に隠れ、そっとその機体の様子を窺う陽萬。
対峙する重厚なホビーのメインカメラには、彼女たちの様子はどう映っただろうか。
351日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/19(火)02:11:37 ID:I7T
>>350

「えーっと……どうだったっけ?確か……」

一方の武士は、信号が青になった後も十数年ぶりにホビーを持たされたプレイヤーに相応しいぎこちなさでコントローラーをいじる。
ある程度の練習はしたものの、ほぼマニュアル操作である都合上まだあやふやな箇所が多いのだ。
巨大すぎる手のひらを地面につけ、指を蜘蛛の足のように扱いながらガシャガシャと音を立てて3号は動き回る。

『ノー!ノー!バーン・ヒナタ・スピリッツ!』
「ハァ……誰のせいでこんな難儀背負ってるか、分かって……わからないよなぁ……」

やたらでかい音量と無駄にネイティブな発音で、3号は武士の操作にダメ出しを行う。
専門外の日向製作所が無理やり作ったAIは、とてもオート操縦に耐えうる代物ではなく、武士のため息を増やす一因だ……。
その時、コントローラーの液晶に翼を持った機体が映る。

『ピガー!フルパワー!ヒナタ・ナックル・スタンバイ!』
「あっ、待てっ、おい!」

ちらりと見えた方向へ3号が巨大な左腕をまっすぐに向ければ、腕から重厚な機関音が唸りだす。
ロケットパンチ。それはホビーが生まれる以前よりロボットに積まれてきた、由緒正しき男のロマンの必殺技……だが、序盤でぶっ放すべき技ではない。
3号に乗せられているそれは、撃った後勝手に戻ってきてくれるような便利な代物ではなく、1試合左右1発ずつの完全な使い切り兵器であるのだから。
必死になってポンコツAIを止めようとするが、慌てているせいかキャンセルのコマンドがなかなか成功せず……。

『ファイァァァア!!!』
「あ˝ー!!!」

結果、鳥型機体が隠れているビルの影へ向け、必殺拳は暴発する。
その拳はかなりの強度が設定されているはずのビルのミニチュアを易々と砕きながら、鳥型機体へ迫ることだろう。
その威力は凄まじく、生半可なガードを張っても一発スクラップ待ったなしだろう……まともに当たれば、の話だが。
352東雲 真鶴◆0SuLG0jdAEYi :2017/09/19(火)02:29:51 ID:LXK
>>351
ビルの影から望んだホビーは、ぎこちない動作でゆっくりと視線を合わせる。
何事かを宣う敵機の音声信号は、ビルの壁面に反響し奇妙なハウリングを生んだ。

「陽萬、そろそろだ。牽制しつつ隣のビルの影に移ろう」

真鶴も初心者とはいえ、出場権を勝ち取ったプレーヤーの一人。
そして期間は短いながらも妹との練習試合を重ね、操作くらいは滑らかにできるようになっていた。
ビルの陰で白い翼を広げ、今いるビルの影を飛び立とうとしたその時。


「な……っ!陽萬、急げ!!」

悠長に突き出された腕から放たれたのは、あろうことか拳そのもの。
飛び立とうとしていた三足の鳥の、翼の先の黒い羽根を圧倒的な破壊力が掠める。

「くっ……」

被弾箇所がパージ可能な部位で助かったと言える。だが、完全に初動は失敗だ。
バランスを崩した三足の鳥は、空中を回転しながらもう片翼の黒羽を解き放つ。
散弾のようにばら撒かれたそれは、しかし大した威力も出ないだろう。少なくとも鈍重と引き換えのかの装甲には。

不意打ち用の武装でもある黒羽を、こんなにも早く削られるとは。
初めての予選で受けた手痛い仕打ち ――たとえ、それが偶然であっても。真鶴を緊張させるにはそれで十分だった。

わずかに汗ばむ手で操作端末を握り直し、機動力の落ちた翼で。
サブウェポンの低威力エネルギー弾をばら撒きながら、鈍重な機体へと吶喊する。
353日向 武士 ◆AcfUisI7l2 :2017/09/19(火)22:43:38 ID:I7T
>>352

『日向!日向!世界の日向!ただいまお見せした一撃は、日向製作所謹製、油圧式……』
「あああぁぁぁーもう、なんでこうなるかな!ホント勘弁してくれよ……」

相手を焦らせているとはいざ知らず、武士は年甲斐もなく軽くキレていた。
唯一の武装である腕を片方(手首から先だけとはいえ)くだらないポカで失ったのだ。それでいて拳がかすりはしたものの、敵はいまだ健在。初動失敗どころの騒ぎではない。
それをよそに、3号は「日向製作所」社歌をBGMに先ほどとは打って変わって滑らかな女性の声で宣伝アナウンスを垂れ流す……。

「うおおおおおあっっ!?」

ばら撒かれる黒羽に慌ててコントローラーを操作すれば、3号は左腕を折り曲げて盾にしながら相手から遠ざかろうと移動する。
片方の手のひら分軽くなったためか、右手のひらだけでも移動はできている……バランスの悪さからくる偏りに目を瞑れば。
腕の重厚すぎる装甲は羽を易々と弾くが、通常程度の装甲しか施されていない胴体はそうもいかず、いくつか刺さって耐久値が減少する。
そして、機動力が低下しているとはいえ侮れない速度での吶喊が3号へ迫る────。

「くっ……こんのっ!」

路地の中、機動力に劣る3号で逃げ続けるのは無理だと悟った武士は3号を止め、手のひらのない左腕を空中の相手へ向ける。胴体部分へ当たった光弾は、じりじりと耐久値を削っていく。まだ戦闘不能まではいかないが、あまり長々とこの状況でいることは避けたい。
レバーを操作すれば、まるで孫悟空の如意棒のようににょきにょきと勢いよく、迫る相手へ向け腕が伸びていくではないか。
本来ついているべき手のひらがついていないものの、手のひら抜きでも攻撃には十分な質量と速度はある。鉄パイプで突きを放つのと同じぐらいだと思えばいいだろう。
そしてそれの命中にかかわらず、伸ばした腕をそのまま、まるでハエを追い払うかのように腕を振り回すだろう。闇雲ではあるが、これもまた並の鈍器レベルの攻撃力はある。
354ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/20(水)00:05:00 ID:poZ
>>342

 嗚呼こんなにも誰かとは優しいのだろうか。まして己が憧憬の視線を向けていた人たちが、決して打算ならぬ温もりを投げかけてくれている。
 少しだけ、ラニアは泣きそうな思いでさえあった。けれど自身の目尻に溜まる熱い感覚を彼女は必死で堪えた。――こんなに優しいひとたちに、心配をさせたくない。
 3人の言葉に幾度となく彼女は頷いた。「シシシンジュー……?」と小首を傾げ、怪訝なコナユキの視線を不思議がった。


「――へ? 名刺、ですカ?」


 なずなの言葉に少しばかり疑問符を浮かべながら、しかしペンを取り出す彼女を見て、ラニアはふたたび驚いた。
 手の中に帰ってきた1枚を見れば、みたび。――この番号は明らかに、事務所の連絡先などではない。


「わあっ、――ありがとう、ございまス! ワタシ、嬉しくて、すごくって、――感謝感激、雨アラレ、です! ハイ!
 辛いことある、すぐ話します! なずなサンが仰ってくださるなら! ワタシ!」


 涙に潤んだ目をきらめかせて、ラニアは何度も感謝の言葉を述べるだろう。信頼。恩情。友達と呼んでくれたことのへの、嬉しさ。
 「ワタシ、またヒトツ、ファンになっちゃいました――」やはりその日本語はどこか、伝えるに拙いものではあったけれど。


「――ハイ! フツツカ者デスが、どーかこれからも……宜しく、お願い致しまス!」


 午後の安らかな時間。ケーキをひとくち頬張りながら、にっこりと彼女も笑うのだった。
355藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/20(水)00:43:07 ID:poZ



     (……満たされないなぁ)


 WHBT予選会場、バトルブース。尋常ならざる数のギャラリーに囲まれた、ホビーバトル用の筐体。
 1P側のバトルポジションに腕を組んで立つ、白衣の女。銀縁眼鏡の奥から気怠げな目線を投げかける彼女の肩に、その愛機たる白青の「闘機」が降り立つ。
 2Pサイドに機体を構えていた1人の青年は、大破した己のホビーを片手にその場を去る。
 「対戦ありがとねー」――去りゆく背中に、一応はそう声をかける女の語調は、どうにも間延びしていた。


(ホビーバトルは自己表現だ。言葉で伝わらないからこそ、競技と戦闘を通して"伝える"。)
(言葉では伝えられないものを。大切なものを。激情を。矜持を。信念を。)

(――――。じゃあ。あたしはこいつに、何を籠めてやればいい? それほどまでに譲れないものが、今のあたしにあるのか?)
(こうして勝ち続けても何も感じることのない、この感覚はなんなんだ? どうすればあたしは、「伝えて」、「伝わる」んだ?)


 ひとり人目も憚らず、彼女は思索に耽っていた。女が戦っているのは、「マキシマム」などと渾名される「勝ち抜き戦」。
 筐体の上に掲げられた液晶ディスプレイが、彼女の連勝数を大きく誇っていた。――「5」。
 1勝や2勝では盛り上がらない。だが3勝となれば空気は変わり、4勝となれば誰もが勇み、然し5勝となれば皆がたじろぐ。


「次のチャレンジャーは誰かしら。――いないの?」


 ざわめくギャラリーを歯牙にもかけずに、細い唇があくび交じりに呟く。――その手を挙げるものは、いるのか?
356オニミチ◆v9tS0arEUcVD :2017/09/20(水)00:56:40 ID:ZSW
>>355




 いた。


 五勝勝ち抜きと言う結果にたじろぐことなく、ギャラリーの波からゆっくりと歩み出した青年は女を見る。
 いや寧ろ、その顔には。頭を占めるヘッドホン。漏れるほどに垂れ流される何がしかの音楽に没頭するように俯くその顔に、薄笑みすら浮かべて。

 サンダルを突っ掛けた脚で、しぺたしぺた、と。女の前に立つのだった。


「やるよ。やらせて欲しい」


 自力で染めたのだろう。くしゃくしゃの金髪は、プリンの様な色合いをしている。
 ダメージジーンズめいた改造を施しただぶだぶの学生ズボンに、上に引っ掻ける赤いパーカー。耳には、ささやかに光るシルバーピアス
 そんなあるチャラけた見た目に反して、口調と、女に向けられた微笑みは至極柔和だった。

「キリが良いよね、五勝って。そろそろ回れ右してもいいかなって、そんな頃合いだろ? 待ってたんだ。貴女の勝ちのカウントが重なるのをさ」

 五勝したこの女を倒せば、この青年は或いは、さらにそれより強いのだと言う見方もできなくはないかも――。
 とにもかくにも。彼は鴨を太らせた童話の狼のような心持ちで、虎視眈々と、待っていたらしく。


「――オープニングには丁度良い」


 ワントーン下がった声の震えに呼応するように、ホビーらしからぬ重機めいた起動音を響かせて、パーカーのフードから影が飛び出した。
 乾いた血のような色合いのボディに、怒りを満面に振り撒くフェイス。その額から天を突くは金色の一角。それはまさしく鬼か天魔か。


「――――鬼門鬼道(きもんおにみち)ってんだ、よろしく頼むよ。こいつはヤシャ」
357藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/20(水)01:17:07 ID:poZ
>>356

 音漏れ、うるさいなあ。――青年を初めて目にした女の、実直な感想はそれだった。いやともすれば、それは少年であったろうか。
 アウトローな装いをした彼の姿は全くもって人目を引いた。時代からさえはみ出した旧世代の不良。だが存外に丁寧な言葉遣いは、かえって好感的でもあった。
 対して女は真逆である。着古した白衣にコーデュロイシャツ。タイトスカートとストッキングのサイズ感はやや小さい。
 引き締まったフォーマルな格好だった。それでいて貧相な身体つきではなかった。――だが気怠げな語調と態度は、あるいはギャラリーの不興を買ってさえいた。
 

「あら。宜しく」


 然し些事であった。彼ら/彼女らが戦うのはホビーバトルである。当人らの格好や人格に何の意味があろうか。
 組んでいた腕をほどき、ひらひらと振る掌にて彼女は軽い挨拶をした。煙草のひとつでも吸い出しそうな顔をしていた。


「気が合うわね。あたしもそろそろ退こうかと思ってたけど、挑まれたんなら吝かじゃない」

 バトルフィールドのスタンバイ・ポジションに、白く青い機体が降り立つ。繊細さと力強さの共存する、流線型のシルエット。
 だがその顔貌には、鬼のような角がみっつ。額から突き出して一本、こめかみから後ろに伸びて二本。
 突出した顎は邪神のそれだった。真っ当な双眸に見えるその両目さえ、幾多ものカメラアイが織り成す複眼であった。


「藤原。藤原篠見。この子はハチロク。――じゃ、始めましょうか」


 ――――ごく軽い語調で、特に躊躇うこともなく、彼女はスタートを宣言した。転瞬筐体よりVRフィールドが展開され、彼らの戦場を包み込む。
 「パーキングエリア・夜」と題された、文字通りのコンクリートの戦場。静かに降りしきる雨でさえ、其れは幻想。
358オニミチ◆v9tS0arEUcVD :2017/09/20(水)01:30:10 ID:ZSW
>>357

「こう言うときは――――」



 瞬である。それは雨降り注ぐ夜を駆けた。


 間はない。いやあってしかるべきなのだが、そのホビーの爆走はその間を感じさせなかった。駆動力が明らかに平均を頭二つほど抜かしきっている。
 ヘッドホンの片方に手を当てた青年は、鼻唄すら歌いながらそこをリズミカルに叩いた。タッチパネルになっていて、その入力がホビーに反映される型の――見た目に違わぬ、旧世代感。


「男から行くのが定石だよね」


 まるでピアノを滑らかに撃ちならすがごとくに指がうねり、それと全く同期したタイミングで鬼面のホビーが重機めいたうなりと共に――振り上げるは――剣。

 一般に出回っているホビーの初心者キッドに詰め込まれているような、片刃の剣だった。しかしどうであろうかその厚さ。明らかに幾重にもカスタムを施した鉈のごとき異様。
 そしてそれが、間を感じさせぬほどのパワー型ホビーの駆動力によって振るわれる。それは単純な降り下ろしにあって、余りにも無慈悲な質量爆弾。


「当たったら死ぬし、カスっても痛いよ?」

 それは大して根拠もない、相手の耐久力も度外視した煽りだったが。
 ぎゅごあと落下する刃の威圧を見ていると、強ちそれも――嘘ではないように思えてくるのが、困り物。
359藤原 篠見◆.9ydpnpPps :2017/09/20(水)01:54:25 ID:poZ
>>358

 開幕と共に、霧雨が弾けた。ヴェイパーコーンに似ていた。音速でも超えたような破裂音。
 銀縁眼鏡はウェアラブル・デバイスだった。紅いロックオン・アラートがレンズに映る。気怠げな瞳が微かに見開かれた。
 彼我の距離は急速に詰まっていた。だが女は焦らなかった。筐体と接続したアケコンのスティックを弾き、いくつかのボタンを潰す。
 青白の機体は身構えた。青い眼光が夜の闇に感傷的な残像を残した。然しコンクリートを踏み締めれば、舗装路が罅割れる。


「どうだか」


 確かに刃は迫った。少しずつ強まる雨を弾いて。無改造ではないことは、誰の目にも一目で分かった。彼の機体の駆動出力も、また。
 ――――雨粒を弾き飛ばして、女の機体が左の手甲を突き出す。そこに備え付けられているのは、かの機体を覆い隠さんばかりの大楯である。
 

「あたし、ジェンダー論とか嫌いだけどさ」

「こういう場でね。女扱いって、されて嬉しくはないんだよね」


 八つ当たりに似ていた。女は静かに笑っていた。だがそれは愉しさ故ではなかった。張り付いたような、愛想笑い。
 単段式宇宙船の船底を流用した歪な盾が、鉛を砕くような音と共に、分厚い刃と打つかり合う。であれば雨夜、痛々しく散らされるのは火花――である、筈だった。


「Peekaboo. ご機嫌いかが?」


 ――刃の切っ先が、大楯の表にめり込んだ瞬間。少なからぬ痛手を実感できる筈の一刹那。
 その盾は「爆ぜる」。ごく単純な構造のERAであった。絶対的な至近距離から繰り出されるのは、宛ら大袈裟な指向性散弾。
 弾け飛んだ装甲の破片と爆風により、迂闊な白兵戦を仕留める痛烈な罠。――白と青の機体、その右腕に構えられた粒子砲に、光が集まる。
360IoNFgh3FysYt :2017/09/20(水)02:12:31 ID:ZSW

>>359

「うおっひょぉ、マジィ!?」


 盾から弾ける散弾をもろに喰らい、耐久力が半分削れたにも関わらず。
 オニミチは嬉しそうに目を見開いて歓声を上げた。
 面倒なのは嫌いだ。だからこそヤシャは高機動力/高攻撃力/高防御力を重ねに重ねた、ごくシンプルな一枚岩のビルドにしてある。
 究極の一枚を持てば勝てる。それが彼の持論だったから。それが彼の拠り所だったから。


 ――やっぱり、路上のタイマンなんかとは違うんだな。

 噛み締めた歯から、耐えきれないように、空気が漏れた。
 悔恨ではない。焦りでは、勿論無い。負けるかも知れないって言うのに、自分の究極の一枚が今まさに崩れ去ろうとしているのに。その訪れかけている常識の崩壊が鬼道には嬉しくて仕方がなかった。

「――――ふ――」


 ――――ヤシャの面すら。


 ――――歓喜している、様で。


「ふははっ!!!」

 鋼鉄の左手が唸った。その腕力でもって盾を下から抉じ開け、その懐に体を捩じ込もうとする。前へ。
 ただ前へ。退けば確実に負けると言う確信もあったしかし何よりこの歓喜に嘘をつきたくない。
 この高揚に背を向けたくない。最高にグルーヴィなこのバトルに――勝ち負けを越えたクラッシュシンバルの大音声を刻み付けたい。

「上等だよ――。女扱いして悪かったな、おねーさん。あんた其処らのガラクタぶら下げてイキッてるギャングよかよっぽどこえーですよ。
 でもな俺だって――伊達にやって来た訳じゃねえッッッ!!!!」


 技術など彼には無かった。知識もほとんど浅薄極まる物だった。
 故にこそのシンプルな一枚。故にこその単純なビルド。だがそれはダメージお構いなしのストリートスタイルに於いては最適解――!!!

 懐に入りこんだなら、ヤシャの右腕のブレードが真紅の炎を峰から迸らせて唸るだろう。駆体すらもその勢いに乗せられ陰惨と煌光の融合した疾走にて虚空に朱を刻みつける。
 ブーストブレード――撃刀・流れ星が、その真価を発揮した瞬間であった。


 至近距離での抜き胴になろう。おそらく懐に入られたなら、それを回避するは至難の技と思われる。
361名無しさん@おーぷん :2017/09/20(水)17:34:32 ID:xoY
358 オニミチ◆v9tS0arEUcVD[] 2017/09/20(水)01:30:10 ID:ZSW

360 ◆IoNFgh3FysYt[] 2017/09/20(水)02:12:31 ID:ZSW



http://awabi.open2ch.net/test/read.cgi/net/1505750793/
オニミチこと名誉ヲチ民オリジンの実態はこちら(閲覧注意)
362東雲 真鶴◆0SuLG0jdAEYi :2017/09/20(水)19:27:52 ID:zLo
>>353
そろそろ、居合の射程に入る。斜め掛けに背負った刀の柄を鋼鉄製の嘴が掴みかけ。
次の瞬間には、闇雲に振り払った鉄パイプのような剛腕が空を薙いだ。

「腕が伸びた……?陽萬、止まろう」

両翼のローターフィンを逆噴射気味に傾けて、空中で立ち止まる三つ足の鳥獣。
無作為であるがゆえに軌道を読めない腕の乱舞が、彼を中心とした球の中への立ち入りを躊躇わせる。

東雲真鶴は、負けず嫌いであった。
勝負と名の付く出来事に敗北の二文字を刻むことが許せない。
そんな彼女の集中力が、敵の一挙手一投足を逃すまいと冴え渡り――。
……結果として、彼女は名も聞いたことのない製作所の知識ばかりを増やした。

「埒が明かないな… いや、行くぞ陽萬!」
『――!!』

逆に考えればこの程度しか牽制の手が無いのでは無いかとも考えた。
勝る機動力でこのまま距離を開け続け、光弾を打ち込めばいずれ事が済むのでは無いか、と。
――しかし、この試合は乱戦形式なのだ。
いつどこで、悠長な態度から不意を突かれるか解ったものではない。


故に、一閃。

それさえ届けば、決められる。

大きく腕が振り払われた直後の間隙を見出し、白色の翼が空を切る。
剛腕の嵐を、あるいは他の迎撃を。その白色が掻い潜ることができるなら。
――鋼の嘴に携えた銀閃が、その胴を袈裟斬りに断てるだろうか。
363ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/21(木)23:51:13 ID:C4q
会場内には様々な施設が存在しており、その中には当然飲食ができるようなカフェや喫茶店なども存在している。

そしてここはそんなものの中の一つの喫茶店。特にケーキなどと言ったお菓子が美味しいことで有名の場所である。当然それ目的でそこに立ち寄る客は多くバトルの観戦のついでに、またはバトルをついでにという理由で多くの客が今日も食べにきていた。
そしてその中には、ちょっとした有名人となりつつある人物の姿も。

「………美味しい」

『それならば幸いです、マスター』

ニーナ・アルキファイス。
有名企業が率いる初のホビーバトルチーム"チームシュタール"のホビーファイター。企業からの参加というのも珍しくは無い、だがその企業が企業で"アイゼンカンパニー"と来れば話題性は抜群だ。
更に彼女のその戦闘を見れば必然と知名度は上がるだろう。表情をほとんど崩さずその戦いの様は無駄のない洗練されたもの。いつしか"氷帝"という二つ名めいたものまで付けられるほどに。
彼女が操るホビー"リコリス・ラジアータ"は堅牢な装甲に身を包んだ姿をしているが、その装甲の機能を全て知っているのは"チームシュタール"の人間のみ。
未だリコリスはその装甲を纏った状態を解いたことはなく、装甲を纏った重厚な姿がリコリスの姿だと思う者で殆どだろう。
その装甲の下に存在する本当の姿は未だ晒したことはない。

────そんな彼女は今、この喫茶店の席で目の前のテーブルに山ほどに皿を積み上げ店のほとんどのケーキを食さんとしていた。そして同じくテーブルの上には相変わらずその重厚な"鐵"に身を包んだリコリスの姿があった。
喫茶店は混んでいるようで、空きの席もほとんど無い。もしもこの喫茶店に次に訪れるのならばニーナと同席ということになってしまうだろう。
364菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/22(金)00:25:10 ID:Q3m
>>363
「えっ……相席ですか、あの、えっ、どうしよう……」

「良いよ店員さん! 案内して!!」

 飲食店の混雑時となると、ただ客が来るだけで店員は殺意を抱きかねないものである――――手間取る客ならば当然であった。
 故に、ここで答えを待つよりかは、小さな客の言葉を優先したのは精神状況を鑑みると当然であったろう。
 兎も角、彼女は案内された。元よりコミュニケーションも他人との関わりを苦手とする彼女……蓮見菱華からすると、はっきり言って不安だらけだった。
 確かにこの店のケーキを食べてみたいというのはその通りであり、これを逃したら多分一生この店には来なかっただろう。
 故に、肩に乗った小さな友人……“アイゼルネス”の一押しは、結果を果たすものとしては最適なものであったのだが。

「あ、あの、失礼します……」

「わっ、めっちゃ食べてる!」

「だ、駄目だよアイちゃん!! そういうこと言わないで!!」

 申し訳無さそうに、その対面に少女は座るだろう――――そしてその肩に乗った戦姫が、余りにも初対面の人間に対して無礼にそう思わず言った。
 その持ち主である少女は、驚愕しつつ戦姫をそう叱りつける……ほんの少しだけしゅんとした様子を見せたが、余り気にしてない様子の戦姫を他所に。

「す、すみません……あの、どうか相席宜しくお願いします……」

 そうして、対面したニーナへと頭を下げることになる。未だ、彼女がホビーファイターであることには気付いていない。
 それも、相当な知名度を誇る相手であることも――――それよりも、相席になったことへの緊張と申し訳無さで他に気が回らないだけだったが。
 少女、蓮見菱華もまた大会に出場するホビーファイターである……が、全くの無名無所属の新人、且つ現在公式での戦闘記録は予選を二回程度しか無い。
 然し、特筆すべきはその試合相手であろうか。一回目はチャンピオン『武藤ツカサ』、二回目はアイドル『初風なずな』というビッグネームと行っている。
 その何方との戦闘も、敗北に終わっているのだが――――もしも、彼女が二人の試合に興味を寄せていたのであれば。
 初心者ながらに、両者を“あと一手”のところまで食い下がることが出来た……というのは、多少は印象に残る要素にもなるだろうか。
365ニーナ・アルキファイス◆P8zupxgDdA :2017/09/22(金)00:50:56 ID:Tw5
>>364

「やっと来た…!」

『相席、ですか。いえこちらは構いません。マスターもそうだと思います』

店員が次の皿を運んでくると同時に相席の旨を伝えてくる。だが当の本人はそんなことよりも次に運ばれて来たケーキに夢中のようで全く話が入っていない。
返事をしたのはテーブルの上で大人しくしていたリコリスの方で、しかし店員ももう何度もニーナのテーブルを行き来して慣れたのか卒なくこなす。

「……………」

『いえ、構いません。マスターは甘い物には目がないもので、それに日頃のストレスの解消の意味もあるのだと推測しています』

ニーナ本人は返事無し。対するリコリスは当然といえば当然の反応をされたので自分のマスターについてのことをとりあえず話していく。
日頃のストレス…はリコリスにとっては分かりきったことだろう。だがそのことまで事細かに口外するつもりは無い。そこまでの権限は与えられていない。

『マスターからも、何か挨拶くらいは』

「挨拶…?……あれ、いつの間にか人が居る…」

リコリスから促されやっと気付いたのか、先ほどまでケーキを食べていたフォークの手を止め相席したらしい相手を見る。

「あれ?どこかで見たことが………あぁ、思い出した。確か動画で…武藤ツカサと初風なづなに負けた……」

有力な対戦相手の候補の戦闘はいつも見させられている。見たくはなくとも無理矢理、何度も見せられるのだから嫌でも覚えてしまう。
確か目の前のこの少女は見せられた中の映像で二人に負けていたと記憶している。しかし圧倒的力量で負けたわけではない。あの二人の腕前は相当のもの、それにあそこまで食い下がったのだからきっと彼女も腕の立つファイターなのだろう。
────まぁ、自分には関係無いが。

『私も記憶しております、確か蓮見様…でよろしかったでしょうか
こちらは私の使い手、マスターのニーナアルキファイス様です。そして私はリコリス・ラジアータと申します。リコリスと呼称してもらえれば幸いです』

結局リコリスが挨拶を返すことに。
礼儀正しく頭を下げてのその挨拶は淡々としたものだったが、これがリコリスの精一杯なのだろう。
しかし当のリコリスのマスターはケーキを食す作業にすぐに戻ってしまうのだった。
366菱華&アイ ◆pit0XHwivyYW :2017/09/22(金)01:20:53 ID:Q3m
>>365
 返答は随分と下からであった……位置的に。必然菱華も目線を下げれば。
 闘機……だろうか、恐らくは彼女の持ち主であろうホビーがいる。
 一度ちらりと、恐らくマスターであろう少女へと目をやれば、此方側への興味は一切無いようで……それに対して、追求出来るほど菱華は強い心の持ち主ではなく。
 肩を縮こませながら、会話の相手はホビーへと移る……。

「あ、はい、どうも……ありがとうございます……」

 相席のことも、失言のことも、寛大な対応に感謝する……とはいっても、聞いていなかったから助かったようなものかもしれないが。
 兎も角、取り敢えず席にありつくことは出来たのだ。テーブルの隅に立てられた、メニューへと手を伸ばし。

「え、あ、は、はい……お、お二人に負けた、蓮見菱華です……」

 どうもこのまま無視を決め込まれたまま進むのかと思っていた――――であるが故に、不意打ちに感じつつもそう言った。
 自覚はしているし、あの戦いに悔いはないが、はっきりと言われると少しショックではあった……であるが、然し。
 同時に、無名で敗北記録しか無い素人ファイターである自分を知っていたことだけは少しだけ嬉しく感じてはいたが。

「はい、ニーナさんと、リコリスさんですか……え、ニーナさんって……。

 アイゼンカンパニー傘下チームのシュタール選抜選手……ですか?」

 恐る恐る、と言った様子で問いかける菱華――――アイゼンカンパニーと言えば超大企業、それの直下チームの選手が此処にいるのだ。
 ……女帝、チャンピオン、アイドルと来て、次は“氷帝”――――であるとするのであれば。
 全く自分の引き運の良さに驚くばかりであった。それが良いことであるのか、悪いことであるのかは、別として。

「……う~ん」

 そして、アイゼルネスは菱華の肩の上からテーブルの上に飛び降りると、訝しげな表情のままリコリスの下へと歩き出した。
 腕を組んで、首を傾げながら、その目前へと辿り着くと。ずいっ、とその纏う装甲を舐めるように見つめ――――


「――――う~ん?」


 やはり、訝しげに眉を顰める。
367ラニア◆.9ydpnpPps :2017/09/22(金)02:19:50 ID:RlX

 昼過ぎの通り雨が、「うみかぜ」の街並みを濡らしていく。
 街頭に設けられた液晶ディスプレイが60を超えた降水確率を伝える。ホビーバトルの祭典に、少しばかりの水を差す曇天。
 どこか白けたような顔をして、道行く人はみな傘を差していた。煩わしい雨を嫌って、自己の圏内を明示していた。
 強く降るでもなしに、馴れ馴れしい雨。膚に触れることを許したのならば、それは瞬く間に体温という自己を蝕み、心の隙間の奥深くまで冷え切らせる。


「…………――――」


 ――きぃ、きぃ、きぃ。繁華街から少しばかり離れたところにある、古い公園。錆びて軋んだ音を立てて、そのブランコに座る人。
 ひとりの少女だった。日本人ではなかった。生気のない茶色の肌に、雨に霞む銀色の髪が、蛞蝓のようにべっとりと張り付いていた。
 かけている眼鏡は雨粒に