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ここだけ異能都市東京@ロールスレ

1結城薬子◆4FxCjUEIcx.V:2017/10/09(月)22:30:29 ID:WvC()

 東京上空に突如として出現した謎の黒い巨大な物体は、やがて竜の姿となって黒い流星を降らせて回った
東京は大混乱に陥り、間もなく政治中枢に流星が直撃し首都機能を喪失
黒い竜は三日三晩に渡って流星を降らせ続け、最後には乗り込んできた多国籍軍の対空攻撃により空中で爆散した
一連の事件は「黒竜事件」と呼ばれ世界史に深くその名を刻みつけることとなった

 さらに驚くべきことが起こった
流星や竜の破片によって死に至った人々の一部が蘇生し始めたのだ
それも超常的な力を備えて……

 多国籍軍は黒い竜を「ニーズヘグ」と呼び、治安維持を名目に居座り研究を開始する
どうやら竜に関連する物質の発する放射線を浴びながら死ぬと、あの世から超能力を持ち帰れるようであった
彼らは能力者を「ドラゴノイド」と呼んだ

 加えて物質そのものにも何かしらの力が宿っているようであった
間もなく流星や竜の破片を用いた超常の兵器が開発され始めたのである
それらの兵器を用いる者は「ドラグーン」と呼ばれた

 一方、研究施設建設のための雇用や、その維持のためのインフラ整備は日本にも有利に働いた
「黒い竜」事件から十年が経つころには、東京はほぼ復興を終えていたのだ
しかし人々の生活が人間味を取り戻すにつれ、ドラゴノイドへの差別は苛烈なものとなった
多国籍軍が彼らを研究対象にしていたこともそれを助長した
一部の者たちは徒党を組んで地下に逃れた

 彼らは慰めのように自分たちのルーツを求め、流星や竜のかけらを集めた
手に入った二つの竜の破片を近づけたとき、二つは水滴が合わさるように融合した
彼らは考えた
すべての破片を集めれば、黒い竜は復活するのではないか
自分たちを排斥した地上の人間たちを逆襲し、仲間を作り出すことができるのではないか……

――生存のための悲壮な集団は、復讐のための狂気の軍団に姿を変えた


・本スレは期間限定です
・確定描写・俺TUEEE・R18展開は禁止です
・キャラの査定は住人全員が行えます

【名前】
【所属】
【年齢】
【外見】
【技能】
【装備】
【備考】
348詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/05(日)01:31:28 ID:IrU
>>346

攻撃を読まれたらしく避けられる。

「随分ご大層な名前だ事で」

名乗られた名は重い意味を持っていて、どこか悲しい名だった。

「俺は朱銀。まあ見た目と刀の色から。音の由来はあるけど恥ずかしいので省略」

短刀に炎を纏わせて横凪に振り抜こうとする。
349罪咎 :2017/11/05(日)01:44:59 ID:KP4
>>348
「朱銀…。」
「ぐっ、…覚えとくぜ…その名をっ!」

予測を立て身を仰け反らせ回避を試みるも、思い止まり仁王立ちで攻撃を受けると脇腹を掠り。
先日縫い逢わせたばっかりの傷跡から血が滲み一瞬、顔には苦悶の表情が蘇る。
しかしここで倒れる訳には…。根性と気力だけで体勢を立て直し大きく身体を捻る。

「喰らいなっ!」
「全身全力の俺の本気《マジ》の拳をッッ!」

 敢えて攻撃を喰らい、至近距離までの大振りの拳骨を顔面目掛け浴びせようとする。

いつしかの出来事を思い出す…そう、あれは前に朱銀と闘った出来事だ。
同じ様なことをしてる事に内心懐かしむ。
350流ヶ野新星◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/05(日)01:48:32 ID:n8J()
>>347

 背後から再び襲いかかるハロルドの気配が、流ヶ野を現実に引き戻した。
その眼にはもはや黒竜軍総統の威厳はなく、剥き出しの殺意だけがある!

「――貴様らは」

 星竜を上段に構える。
その熱狂と裏腹に、羽衣が増幅した動体視力はハロルドの動きを正確に捉えていた。

「貴様らは!」

 総統が睨みつけるとともに、ハロルドの口元で流星剣がうごめく。
ぶるぶると震えて炎を振り落とし、がっちりとホールドされた牙の隙間から滑り出ていく。
流星剣は常に流ヶ野のコントロール下にあるのだ。

「どこまでも!」

 その干渉によって甘いものとなった刺突を、星竜の一振りで払いのける。
流星剣はハロルドのあぎとをすり抜け、吹っ飛んで床に転がった。

「この、神に!」

 星竜を切り返し、両手でがっちりと握ったそれを、斜めに振り下ろす。
ハロルドを真正面から強襲する、オーラを纏い威力を増幅された袈裟斬り。

 流ヶ野は明らかに冷静さを失っていた。
戦闘開始直後の彼であれば、ハロルドへ向かう鎖に気づき、何らかの思惑を感じて叩き落したであろう。
しかし今の彼は目の前の敵を殺すことしか考えられず、これを見逃した。

「役立たずの黒竜軍……邪魔立てばかりの治安維持局……どいつもこいつも無知蒙昧、おそろしいばかりの無能者……!」

 代わりに始めたのは、彼の最大火力の発動準備。
ハロルドの肩から流星剣が抜け出て、流ヶ野のほうへ飛ぶ。
床に転がった二本の流星剣が浮かび上がり、飛ぶ。
彼の体から四本の流星剣が滲み出て、飛ぶ。
羽衣を失い、馬小屋で生まれた赤子のように無防備な姿となった流ヶ野の背後で、後光めいて七本の流星剣が回転する。

「何もかも……俺の全力で……滅してくれる!」

 やがて七本から黒いオーラが噴き出し、回転軌道に沿ってどす黒いリングを作り出していく……
351詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/05(日)01:54:27 ID:IrU
>>349

「罪咎、お前変わんねーな!」

捨て身で攻撃してくるその様子は炎に突っ込んで攻撃をして来たあの時を思い出す。

「そっちが本気なら、こっちも本気だ!」

短刀を逆手に握り炎を拳に纏わせて踏み込む狙うは右の頬。そして同じく炎を纏わせて左の腕を掲げて防ごうとする。
352罪咎 :2017/11/05(日)02:07:42 ID:KP4
>>351

「……!」
「へっ、俺が今更炎に怯まない事はお前が一番知ってんだろォッッ!」

 雄叫びと共に振り抜かれた拳は焔を灯した左腕ごと吹き飛ばそうと怯む事無く、寧ろ左腕を折る位の勢いで拳は加速する寸前───。

 そして、クロスカウンターの様に朱銀の拳が頬に触れ大きく仰け反る所か、そのまま迎い受ける様に頬を差し出し、顔が歪む。しかし歪む顔は何処か無邪気な子供の様だった。


「───覚悟は、いいか?」

 途中で止められ行く場を失った右腕がそのまま顎を狙い拳底で下から上へと打ち上げようとする。

右肩が痛もうが。
火傷が疼こうが。
傷跡が滲もうが。

この熱き闘志を燃やし尽くすまで、俺は止まらない。
353ティナ ◆bN4hYTufOFjS :2017/11/05(日)02:19:38 ID:qow
>>350

剣を弾き飛ばされたハロルドは、攻撃手段を即座に切り替える。
袈裟切りに振りかぶられた星竜をよそに、突き出されたのは神経毒の爪だった。
右の頭を深々と斬られながら放ったそれは、氷牙の様に彼に届いただろうか。
双頭狼は鮮血を棚引かせて、たどり着いた先で片頭を項垂れさせた。

ハロルドへと向かった鎖、それが捉えたのはまさしく彼の肩口の流星剣だった。
音もなくハロルドの肩から流星剣を抜き、彼の巨体の陰に隠れるようにして追従させていく。


「そろそろ、限界……?」

やっと喋れるだけの余裕を取り戻したティナは、息を荒げながら呟く。
さすがはこれだけの武力集団を束ねる長と言ったところか。ティナの力量ではこれが限界だろう。
出来れば逃走を図りたいところだが、理性を失ったハロルドをどう逃がすか。それが問題だった。


だから、この答え。新星に引きちぎられた方の鎖がハロルドに絡みつき、運動能力を阻害する。
引き抜いた流星剣は新星に向かうことなく、まっすぐにハロルドへと向かう。
彼の事だ、攻撃自体には気づきうるだろう。自分がどのような状況に置かれているのかも。
ヘッドギアの導き出したシミュレーション、しかも常にそばにいたハロルドの事だ。見誤るはずもない。

封印の鎖で拘束し、鋭利な剣で背後からの刺突。今この瞬間だけは、ハロルドはティナを脅威と見做した。
振り向いて迎撃する?ブレスで本体を攻撃する?否、どちらも遅すぎる。
だからこその吶喊だった。背後の刃から逃れつつ、本体たるティナに一撃を加えるための。

「じゃあね」

斬撃の衝撃波を受けた壁面が、耐えきれず崩壊する。
壁に空いた虚ろな穴へと、二人と一匹の影が遠ざかるのが見えた。
354詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/05(日)02:22:09 ID:IrU
>>352

ああ、やっべー失敗した。
そう思いつつ後悔はなかった。

「そうそうしゃべれなくなる前に言っておくが…」

地面を蹴って後ろに下がろうと最後の悪足掻きをしながらそう言う。
思い出される数日前の光景。

『『『トリックオアトリート!』』』
『ほい、特製クッキーだ。美味いぞ~』
『やったー!』
『しゅぎ兄ありがとう!』
『お返しはこれ。アメさん!』
『お、美味そうだな。後でしっかり味わせてもらうぜ』

「ぜってぇ子供達に手を出させるなよ」

思ったより低い声が出た。
次の瞬間、朱銀の体は打ち上げられた。
飛びながら朱銀は気絶した。
355罪咎 :2017/11/05(日)02:34:04 ID:KP4
>>354

「…あぁ、わかった。
 約束しょう。」

 突き刺していた短刀を抜き鞘に納めると、踵を返さずに奥に入り込むだろう。
「子供達、か…」、と。小さく呟く。

 ニーズヘグを再臨させたらその“子供達”が悲しむ顔を拝む事になるんだぞ…?朱銀、お前はそこまでしてニーズヘグを己で討ちたいのか…?
頭の中で雑音の様に靄が払えずに蠢く。

「俺は誰かが悲しむ姿はもう見たくない…。」
「そう、妹に誓ったんだ」

 壊れた懐に入った懐中時計を眺め、血で鉄分まみれとなった口に嫌気をさしつつも歩を歩ませる。
356流ヶ野新星◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/05(日)02:57:25 ID:n8J()
>>353

「ヌゥッ……!?」

 流星剣を奪われ必殺技ともいうべき最大火力の一撃を阻止された流ヶ野は、
壁を破壊して逃亡するティナたちを憤然と見やった。

「バカめが、ここは俺のホームグラウンド……追いかけてトドメを刺すまで……!」

 その口ぶりは強気だったが、その息は荒い。
左肩がハロルドの爪によって切り裂かれ、毒が体に染み込み始めていたのだ。

 ゆっくりと歩きながら、全力の念動力で流星剣を呼び戻し、その全てを体に収める。
闇のオーラが全身に行き渡り、その新陳代謝をも加速していく。
一歩進むごとに、毒が急速に抜けていく。

 ――しかし、天祐は治安維持局にあった。

『突入――ッ!』
『ムーヴムーヴムーヴ……!』
『総統だ!撃て!』

 次の瞬間執務室に雪崩れ込んでくるのは、黒竜軍の最終防衛線を正面突破した治安維持局本隊!
流ヶ野がティナにくぎ付けにされていたために、黒竜軍最後の組織的抵抗は援護を得られず崩壊してしまったのだ!
無数の銃弾と異能による飛び道具が一斉に流ヶ野に襲い掛かる!

「貴様らァ――ッ!」

 流ヶ野は目まぐるしい動きで星竜を振るい、そのことごとくを撃ち落としていく!
しかし多勢に無勢、反撃を織り交ぜようとも数の利は覆しがたく、流ヶ野はあっという間に祭壇まで追いつめられる!
357流ヶ野新星◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/05(日)02:57:43 ID:n8J()

「貴様ら……貴様ら!俺は!俺は神だぞ!それを!こんな!」

『知ったことか!死ね!』
『くたばれ薄汚いテロリスト!』
『貴様らのせいで生きにくくて仕方ないわ!ドラゴノイドの恥さらしめが!』

「おのれ……!」

 殺意の雨霰をひとしきり捌くと、流ヶ野は祭壇の上に飛び乗る!
星竜で黒竜の首を突き刺し、掲げる!

「ならば見るがいい!そして思い知れ!俺はニーズヘグさえも従える、完全な存ざ――」

 流ヶ野がオーラを送り込む直前、黒竜の首がどろりと「融けた」。

「い」

 どす黒い肉は剣を伝い、瞬く間に流ヶ野の全身を覆う!
流ヶ野の体は痙攣し、星竜を取り落とす。
得体の知れない黒竜の構成物質に侵食された星竜は、床に当たって無残に砕け散った。

「い……い……お、こ……こん、な……」

 治安維持局隊員たちは流星攻撃を予期して身構えたが、思わぬ事態に混乱する。

『な、なんだ……何をやってるんだあいつは……』
『早く攻撃した方がいいんじゃないか……』
『いや、しかし……なんかヤバげな……』

「ゆ……許さんぞ……ゴミトカゲめが……こん、な!」

 流ヶ野の体がひときわ大きく痙攣し、がくんとうつむいて――「翼が生えた」。

「……グ」

「グオオオオオオオオオオオオオオオオッ」

 異形の姿となった流ヶ野が大きくのけぞり、その口から光芒があふれ出した。
その正体は――無数の流星!
上向きの流星群は地盤を貫き、黒竜軍アジト全体を揺さぶり、ごく短時間のうちに崩壊せしめる……
358流ヶ野新星◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/05(日)02:59:06 ID:n8J()

 激震は地上にも伝わっていた。
治安維持局の管制トラックが地震のように揺れ、オペレータたちのどよめきが走る。

「これは……」

 結城は椅子から立ち上がり、モニターに目を走らせる。
――総統執務室に突入した部隊の反応がロストしている。

「……一体!?」

『た、大変ですッ!』

 松葉杖を引きずるようにして飛び込んできたのは、別の車両で異能による情報収集を担当していた摩周だ。

『総統が……流ヶ野が、トチくるって流星をばら撒いてますッ!真下!ここの真下で!』

「何だと!?」

 直後、摩周の背後で激震とともに「光の柱が立ち昇った」。
否、それは地下の流ヶ野が吐き出した流星の一つ――さらに一つ。奥にもう一つ。
次々に立ち昇る流星がアスファルトを叩き割るたび、蜘蛛の巣のような亀裂とともに路面は崩壊、陥没していく。
管制トラックが徐々に傾斜し始める。

「総員退避ーッ!」

 結城の指示より早くいほどの勢いで、オペレータたちはトラックから駆けだす。
周囲の車両や施設からも治安維持局隊員たちが走り出し、遅れて出てきた一般人をどうにか遠くへ誘導しようと試みる。
しかし流星は無慈悲に吹き上がり続け、そして――降り注ぐ。

 治安維持局のバンの一台が直撃を受け、跳ね上がったあと爆発。
次の隕石は地面に突き刺さり、謎めいたきらめきとアスファルトの破片をまき散らす。
さらに一つ墜落し、旧地下街直上の地盤に致命的なクラックが入る。
次の一つ、二つ、三つはさらに遠く、結城からは見えない場所へ落ちていく。
359流ヶ野新星◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/05(日)02:59:29 ID:n8J()

「……こ、これは……」

 結城は摩周を背負い、なんとか路肩に辿り着いていた。
標識を掴んで振動に堪え、空を見上げる。

 夜空に幾筋もの光が伸び、地上に死と破壊をもたらす流星が無数に降り注ぐ。
彼女はその光景を覚えている。
忘れられるはずもない。
十年前のあの悪夢を。

 ひときわ大きな振動とともに、一塊のアスファルトがオモチャのように空中へ跳ね上がった。
結城は反射的にそれを見た。
黒いオーラとともに地面の大穴から浮かび上がってきたそれを、見た。

 ――全身をどす黒い肉に覆われた、大きな翼を持つ竜人めいた人形。
全身を黒竜の首に乗っ取られた、流ヶ野新星の成れの果てを。

〈グオオオオオオオオォ――ッ〉

 形容しがたい耳障りな咆哮とともに、大きく開かれた顎の奥から無数の光の束が吐き出された。
光の束は瞬く間に天頂までのぼりつめ、拡散。
東京の全域に飛び、落ち、新たな闇を作り出していく。

「……ニ」

 結城は無意識のうちに摩周を放り出していた。
摩周が呻き、呑気にも何か不平を言うが、彼女の耳には入らない。
 
「ニーズヘグ」

 トンファーを抜き、電流を漲らせて「ニーズヘグ」へ駆けた。
「ニーズヘグ」がこちらを向いて、口を開けた。

『結城さん!』

 ――爆音が響いた。
360ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/05(日)22:07:10 ID:n8J()

 ひび割れ、傾いた無人の首都高速をニーズヘグが闊歩する。
真っ黒な竜人めいた姿のそれは翼をマントのように翻し、得体の知れない瘴気を漲らせつつ進む。
無感動に振り仰ぐ夜景はあちこちに篝火のような炎を孕み、
彼の者が打ち上げる流星の被害の大きさを嫌が応にも推測させる。

『グググ』

 ニーズヘグはふと立ち止まり、唸って、振り返った。
ハイウェイに足を踏み入れた二人の不信心者を見とがめるかのように。
361詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/05(日)22:45:33 ID:IrU
>>360

地震。いや着弾の衝撃で起こされた祕詠は準備をすると家を飛び出した。
準備、というのは着替えをして夜食と毛布と900㏄のペットボトルに飲み水を詰めたものを用意。リュックに突っ込むというもの。
水と夜食は途中でお腹が空いたり、喉が渇いた時の為。毛布は家が潰れても寝れるように最低限必要だと思ったから入れた。
ちなみに夜食は今日祕詠が作ったカレーだ。
冷めてそうだが食べたい気分だった。
親が防災リュックや非常食を取りに行っている隙に何も言わずに出たので帰ったら怒られる事だろう。

河川の近くにやって来た。辺りを見まわして燃えている家があればちまちま消火して行く。
工場が燃えている場合は水をかけたら危なそうなので、近隣の住宅などを濡らして退避するようにする。
通報は面倒くさいのでしない。

「あっちの方か?」

黒い流星。祕詠は覚えていないが黒竜事件の際に黒竜が降らせていたらしい。
黒竜事件はドラゴノイドと深い関係を持つ。ドラゴノイドについて知りたい祕詠は流星が発射されているらしき場所へ向かっていた。
362罪咎 :2017/11/05(日)23:14:33 ID:Mk4

 後方に鳴り響く激しい怒轟と共に冷や汗を垂らし我を忘れ夢中に踵を返し韋駄天の如く地を駆けずり立ち尽くし。───絶句した。

「何だ、こりゃぁ…。」

 “地獄絵図”という言葉があるが正に、言葉通りの地獄を顕す世界が罪咎の瞳に映る。燃え上がる赤い海の大地と夜空照らす光る粒子。
それ等が、全て絶望に染め上げるのには時間が掛からないだろう…。

「……! 朱銀…!」
「おい、起きろッ!」

 暫く呆気に取られると駐車場の片隅にて倒れている朱銀を見据える、傍らにら黒竜軍の仲間が朱銀を庇う様に横倒れ血を流している。輝く流星群が直撃し命はもう途絶えているだろう…。

なら、と思い無理矢理、朱銀を抱き抱え再度走り駆ける。

「はぁ、はぁ、……お目覚めはどうだい? これが、お前が望んでいた黒竜の復活だ」
「どんな気分だ?」

皮肉混じりに空を眺めながら朱銀を地に下ろす。
363ティナ ◆bN4hYTufOFjS :2017/11/05(日)23:20:33 ID:yR4
>>360
気が付いたときは、瓦礫の下だった。
消耗したハロルドを胸元に、かろうじて身動きできる程度の瓦礫の隙間に身を完全に埋めていた。
恐らくは、あの後施設の崩落に巻き込まれたのだろう。そしてティナを襲うべく覆い被さったハロルドを盾に、かろうじて生き残ることができたか。
双頭の片側に首輪をあてがう。残った頭は幻影のようにいつの間にか掻き消え、残ったのは一回り小さくなった狼だけとなった。

「いくよ」『......kk』

寝ぼけ眼のハロルドを少し揺さぶって、瓦礫の中で身を起こさせる。
非力なティナではここから抜け出すことすらできない。故にそれは彼の役目だった。
耳をつんざく咆哮。瓦礫は砂埃を上げて吹き飛び、外の光を垣間見せた。
そうしてうまく動かなくなった身体をティナは鎖で引きずるようにして、ハロルドの嗅覚の先導を元に歩き出した。
364詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/05(日)23:25:29 ID:IrU
>>362

「う…あ…?」

誰かの声が聞こえた気がして。朱銀は目を覚ます。

「ここ…は…?」

ゆっくりと体を動かして辺りを見まわす。
地上らしい。という事はわかった。それと…

「痛つっ…!ざ…い咎…か?どう…なってやがる…」

痛みを感じつつ朱銀を地上に運び出したであろう罪咎を見る。
365罪咎 :2017/11/05(日)23:39:48 ID:Mk4
>>364

「説明してほしいのは俺の方だ」
「お前ら『黒竜軍』はこの“景色”を望んでいたのか?」

 朱銀を責めるのはお門違いなのは分かっているが罪咎も混乱し何が何やら解ら頭を掻き毟る。尚も降り注ぐ光の粒子群が場を照らし影が延びる。
彼方此方に爆発音が連鎖する様に鳴り響き、まるで“あの事件”の再現をしてるようだった…。

「───立てよ?
復讐するんだろ?“ニーズヘグ”によォ」

「生きる道は違えど、俺とお前の“護り”たいと言う意思は変わらんだろ」
「なら、もう一度燻った火種に正義の心を焔を灯せ。」

「利害は一致した、ヤツを倒すぞ
───朱銀っ!」

竜人の元へ駆け出すだろつ。
366詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/06(月)00:13:27 ID:msa
>>365

この景色だと?
軽く目を閉じてから空を仰ぐ。
流星が、降っていた。

「っ!?」

黒竜のパーツはまだ集まっていないはず…なぜだ!?

『───立てよ?
復讐するんだろ?“ニーズヘグ”によォ』

「…ああ」

罪咎の言葉に混乱しつつも頷く。

『生きる道は違えど、俺とお前の“護り”たいと言う意思は変わらんだろ』
『なら、もう一度燻った火種に正義の心を焔を灯せ』

『利害は一致した、ヤツを倒すぞ
───朱銀っ!』

「“護る”ね。そんな高尚なものではねえよ」

苦笑しつつそう言う。

「守ろうとしたのは自分の心で。お前みたいに誰かを、
“護る”事はしてねえ」

“護り”たいという意思があるのならば。それを持ったのは、気づけたのは。罪咎の言葉と気絶する前に浮かんだ子供達とのやりとりがきっかけ。

「正義なんてかっこいいもんじゃないが…」

痛みに悲鳴を上げる体を気力で動かして立ち上がる。

「全力でぶつけてやるさ」

過去に独り叫んだ言葉を思い出す。

『俺の怒り(ほのお)が消えるのは、
お前らが全員(すべて)燃える時だ!』

独りで一体誰に向かって言葉を叫んだのか。ただ、その時の言葉を借りるのなら。

    焰  あいつ
「俺の怒りをニーズヘグにな!」

そう言って。
罪咎と共に駆け出す。
367ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/11(土)21:56:52 ID:U1E()

 鐘の音が響く。
流星群の波状攻撃を受けた東京の緊張はすでに喧噪を通り越し、その全域が死んだように静まり返っている。
人々は地下に逃れ、一刻も早くこの災厄が通り過ぎるよう震えながら祈り続けているのだ。
聞こえるのは、時折思い出したように打ち上げられては降り注ぐ流星の墜落音と、何かが燃えて弾ける音。
そして町外れの教会の塔の天辺にて、流星が吹き飛ばした瓦礫でも当たったものか、一定のリズムで鳴り続ける鐘の音だけ……

 闇が竜人の形をとったような異形の「ニーズヘグ」は、半ば浮遊するような奇妙な足取りで進んだ。
ちりちりと燻る黒いものをオーラめいて後に残しつつ、満身創痍の街を往く。
やにわ空を振り仰いだかと思えば、口をぱかりと開けて光の束を吐き出した。
その一つ一つが、光を棚引かせる無数の黒い流星だ。
それは東京全域に降り注ぎ、さらなる破壊をもたらしていく……十年前のように。

 ニーズヘグは歩きつつ、流星を次々と打ち上げる。
まるで自分の位置を何者かに誇示するかのように。
やがて、音色に引き寄せられるかのように、未だ鐘が鳴り続ける教会へと辿り着いた。
扉を無感動に押し開け、整列する長椅子の先、突き当りの十字架を眺める。

『グググ』

 「神」。「救済」。
どす黒い竜の腐肉に浸された脳が疼く。
ニーズヘグは教会の中へと進む……
368詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/11(土)22:19:06 ID:0bp
>>367

火を消しながら川沿いを進んだ祕詠。流星が打ち上げられた場所に向かい続けた祕詠がたどり着いた場所は教会だった。

「ここか」

小さく呟く。声が出てるのかわからないくらい小さく。
鐘の鳴り続ける教会の近くで祕詠は黒い『何か』を発見する。
人に闇でできた竜で覆ったような、奇妙な存在。竜人という事だろうか。それは教会に入って行った。
そう言えばドラゴノイドはゲームや小説では竜人を指す言葉だった。私達が『竜の力で能力を手に入れた人』と
    ドラゴノイド
いう意味で竜人なら、あれは『竜の形を持つ人』という意味で竜人だろう。
さて、どうしたものか。
私一人が教会の中に入った所で死体が一つできるだけ。しばらく近くに隠れて様子を見るか。
ここで帰るという手段を取らないあたり普通より感覚がちょっとズレているかもしれない祕詠であった。
369ティナ ◆bN4hYTufOFjS :2017/11/11(土)22:27:48 ID:gT0
呼吸、呼吸。また呼吸。
荒げた息を意識せざるを得ない状況というのは、即ち体力の危機に他ならない。

「はぁ……はぁ……
 あぁー……」

奇跡的に崩落の中で一命を取りとめたとは言え、事は一刻を争う。
滴る流血、下がる体温。黒竜降り立つ夜は容赦なくティナの体力を削っていく。
対して半ばティナの身体を預けられるように寄り掛かられたハロルドは、嗅覚を頼りに流星のもとへと過たず歩く。
満身創痍の主を引きずっているにも関わらず、その尻尾は激しく振られていた。

『asap』
「……わかってる」

点々と紅く軌跡を残しながら。
370ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/11(土)22:34:00 ID:U1E()
>>368
>>369

 ニーズヘグはしばし時間を忘れたかのように正面の十字架を眺めていたが、
やがて耳のあたりから突き出した角のような器官をピクリと反応させた。

『グググ』

 耳のあたりまで吊り上がった口を醜く歪めつつおもむろに踵を返すと、扉を撥ね飛ばすようにして開け放った。
どす黒く濁った瞳に映ったのは、様子を伺っていた少女、傷つきなお猛る獣、そしてそれに体を預けて教会に辿り着いたもう一人の少女。

『……グオオオ』

 ニーズヘグは聞き苦しい声で唸ったあと、彼らのほうを向いて僅かに俯くような姿勢をとった。
ついでぱかりと開けた口から光が溢れた。
光の束と化した無数の流星が機関銃のように放たれ、弾幕となって彼らに襲い掛かる。
371ティナ ◆bN4hYTufOFjS :2017/11/11(土)22:47:23 ID:gT0
やがて黒竜の姿が見えると、ティナは大きく息を吸う。
もはや自分が生きるために使命を果たしているのか使命のために生きているのかすら曖昧になっていた。
ただ彼女にとっての真理は、課せられた使命には忠実に取り組むことだけ。

「すぅー……ふぅ。《りりーす》」


双頭狼、二度咆哮。

ティナもまた全身を鎖で縛り付け、筋肉ではなく鎖で身体を動かして。

瞬間、駆け出した狼。
放たれた閃光を翻るような体裁きで避けてまだ駆ける。

鎖の少女もまた、身を擲つような跳躍で星弾を避けてみせた。
締め付けられ鬱血した四肢の間から、じわりと血を滲ませながら。
372詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/11(土)22:48:46 ID:0bp
>>370

「まじすか!?」

竜人が教会の扉を勢いよく開ける。
唸り声がしたかと思うと口を開く。
ええと氷間に合わないぞ!
近くの川からとりあえず水を引っ張り、目の前に壁状に広げる。そして急いで軌道から転がるように退避しようとする。
直後光が発射される。
あ、これ水で防げなかったら死ぬわ。
そう思いつつ必死に脇に転がろうとする。
373ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/11(土)22:56:23 ID:U1E()
>>371
>>372

 ニーズヘグの腐った脳味噌は、彼らはたやすく排除可能と判断を下していた。
かつて流ヶ野を相手に善戦したティナの姿も、もはやその脳裏に残ってはいなかった。

 ティナとハロルドを狙った流星は回避され、詩吟を狙った流星も水の壁により減速し、たやすく避けられてしまう。
予測に反して、彼らは流星攻撃にたやすく対処してみせたのだ。

『グオオオオ……!』

 ニーズヘグは苛立たし気に唸ったあと、やにわ大きく仰け反った。
ぶるりと身を震わせると、体から七本の剣が滲み出た。
以前よりも一層深い、どす黒い色の流星剣。

 七本の流星剣はニーズヘグを中心として衛星のように高速で周回しつつ、その半径を急激に広げていく。
やがてその軌道はハロルドに達する。ついでティナと詩吟に。
七つの殺意は彼らに横殴りに襲い掛かり、何度も、何度も、彼らをみじん切りにすべく執拗に襲撃を繰り返すであろう。
374詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/11(土)23:05:39 ID:0bp
>>373

あっぶねえ。ギリギリだ。
冷や汗をかきつつ。逃走をはかる。楽に逃げれたら良いけど。
ただしそうは問屋が卸さないようで。黒い剣が現れた。そしてそれは祕詠と祕詠とは違う方向に飛んで行く。
ポケットに手を伸ばし硬いものを掴む。
左側に体をそれを持っていき、右側は固まり始めた水の壁を多少の歪みをつけて置いておく。
さて、防げるか?
375ティナ ◆bN4hYTufOFjS :2017/11/11(土)23:07:44 ID:gT0
円軌道を描き水平に流れた黒剣。
ハロルドはそれを跳躍することで難なく回避する。
幾度となく迫る斬撃も、その刀身ごと飛び越えられてしまえば効果は発揮できまい。
ついにその威容をブレスの射程内に捉えたハロルドは、火炎と氷結の吐息を片方ずつの頭から同時に放った。

その様子を見ていたティナの元にも刃がたどり着こうとしていた時。
彼女はその五体をアスファルトの上に横たえることで刃をやり過ごすことにした。
風を切る音が頭上で響く下で、冷え込んだ地面が夜の気温以上にティナの体力を削いでいく。
それなりの勢いで地面に叩きつけられた際の擦過傷もまた、出血量を増す一助となった。

身体は鎖が動かしてくれる。思考はヘッドギアが動かしてくれる。
横たえられたティナという自我が、戦況の中で薄れていく、そんな錯覚。
376ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/11(土)23:12:25 ID:U1E()
>>374
>>375

 周回する流星剣は詩吟に防がれ、ティナとハロルドには回避され、いずれも決定打とはならない。
逆に高温と低温のブレスが襲いかかり、ニーズヘグの体表をボロボロに傷つけていく。

『グオオ……!』

 しかしその傷からどす黒いオーラがにじみ出し、その体を包み込む。
これによってブレスの威力は減衰し、それもまた、決定打とならなかったのだ。

『グオ……ゴオオオオオオオオッ……!』

 それでも無視できぬダメージを負ったニーズヘグは悶えるように呻いたあと、大きく体を震わせた。
周回を続けていた流星剣がその背後へ集合し、後光の光芒のごとく回転を始める。
やがてその一本一本からどす黒いオーラが噴き出し、ニーズヘグの背後に暗黒物質がリング状に蓄積していく。

『グオオオオ――ッ……!』

 そしてある瞬間、リングはニーズヘグの正面の一点に集約した。
次の瞬間その点から前方へと、集中したエネルギーが光線ならぬ「闇の線」となって迸る。
受けてしまえばトラックに撥ねられたかのような強烈な衝撃とともに吹き飛ばされ、甚大なダメージを受けてしまうことだろう。
線は侵入者たちを根こそぎ消し飛ばそうとするがごとく薙ぎ払われる。
地面もまた抉られ、粉塵が猛然と噴き上がる。

 やがて、収まり始めた土煙の中から竜人めいた姿のニーズヘグが姿を現す。
腐れ脳味噌は全ての敵の排除を確信し、早くも踵を返してその場から立ち去ろうとする。
……粉塵が晴れる。
377詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/11(土)23:38:38 ID:0bp
>>376

飛んで来た剣でパキッという音を立てて割れるケース。そのまま逸らして躱す。そして、ケースを捨てて中身を取り出す。ひんやりと冷たい感触。
エクスからもらったあの黒い短剣だった。
リュックに入れっぱなしだった物のを教会に着いた時にポケットに入れ直していたのだ。
短剣と完全に凍った水…氷の壁で剣を防ぎ続ける。
やっと剣が来なくなった。
そう思い立ち上がると。

『グオオオオ――ッ……!』

「はあ!??」

速い。そして氷で防げんだろうあれ。
ダメ元で氷を置くが…派手に砕け散る。
そのまま黒い光線…いや闇線は迫る。
今度こそ死んだ。
引き攣った苦笑を浮かべると祕詠は目を閉じる。
衝撃。しかし思ったより小さい。それどころかふわふわ浮いているような…?

「大丈夫か?」

男の人の声が聞こえ、目を開ける。
赤色の瞳、黒の中に赤が混じったボサボサの髪だ。黒いジャージを着ている。どこか懐かしさを感じる人。

「ぁ…助けて、くれたんですか?」

祕詠がそう言うとその男性は照れくさそうに、顔を少し逸らしながらこう言った。

「まあ、な。…死体が転がってると殺りにくいし…」

後半はよく聞こえなかったが、様子を見る限り照れ隠しだろう。
そうやって二人は煙が晴れるまで浮かぶ。
何で浮かんでいるかというと、どうやっているのか足から炎が噴き出している為だ。
378詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/12(日)00:08:03 ID:7qY
>>377

途中罪咎と別れた朱銀は教会にたどり着く。

「見つけたぜ、ニーズヘグ…!!」

黒い竜の頭は紛れもないニーズヘグ。だが体は人の形が見受けられる。パーツが足りない状態での復活は憑依によって実現されたのだろうか。
目の前には二人の少女と一匹の双頭狼がいる。
直後に放たれるニーズヘグの攻撃。
近い方の少女…青みがかった黒髪の少女が氷の壁を操り防ごうとするが…失敗する。氷は砕け散り、儚く舞う。
気がつけば体が動いていた。
炎を作り足から噴射して加速。少女を拾い上げるとそのまま上昇する。

「大丈夫か?」

少女に声をかける。
閉じていた目を開き、戸惑いを顔に浮かべながら

「ぁ…助けて、くれたんですか?」

と言った。
急に顔が熱くなる。赤面し始めているのだと気づいて、そっと顔を逸らす。そしてこう言った。

「まあ、な。…死体が転がってると殺りにくいし…」

後半は完全に取ってつけた内容である。
朱銀は気を取り直すと教会の方を見つめる。
煙が晴れた瞬間にあいつに全力を叩きつける!
そう思いながら睨みつける。
379詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/12(日)11:34:00 ID:7qY
>>378

煙が晴れた。
ニーズヘグは油断して背中を向けている。
絶好のチャンス。

 falling sun
「『堕ちる太陽』」

これまでとは比べものにならないくらいの量の炎が集束する。丁度ハンドボールくらいだろうか。それはやはりこれまでで一番熱い。
残っていた全ての怒りを燃やして、朱銀は小さな太陽を作り出したのだ。
小さな太陽はニーズヘグの頭上まで飛んで行くと技名の通りに堕ちた。
足から噴射されていた炎がふっと消える。
作った炎も、作り出せる炎も技に使ってしまった為だ。
そのまま二人は落下を始める。


「ちょおっ!?」

何やら凄そうな、ヤバそげな技を使ったかと思うと落ち始める。炎の噴射がなくなっていた。
さすがに大怪我負うだろ、これ。というかこの人、ボロボロなんですけど!
慌てて祕詠は川から水を持ってきて支える。
下から上昇してきた慣性が付いた水は操作を破棄する。そしてどんどん水を川から持ってくる。
何とか落下速度を抑える事ができたが、着地できない。川の上ならましだろうか。
そう思い川の方に押し上げ続ける。
ドボン!
という音を立てて川に落下する。

「ぷはあ!大丈夫ですか?」

なんかちょっと放心していたらしき青年はハッとして

「あ、ああ。ごめん、空中だって事忘れてた」

と言った。

「忘れてたって…うまくできなかったら大怪我してた!気をつけなさい!」

何で私は年上を叱っているのだろう。
そう思いながら祕詠は岸に彼と共に上がる。
一体あの黒い竜人はどうなったのか。
そう思い、祕詠は目を向ける。
380罪咎 :2017/11/12(日)14:44:18 ID:j1g

「おい、こっちだ! 急げッ!」

 時は少し遡り、朱銀と別れた後に我を忘れ無我夢中にて街の避難誘導兼安全確保を率先として行い駆ける一人の男が居た。
空は荒れ果て罪咎の瞳に宿すは紅蓮の焔は、この光景は忘れようとも記憶に媚り付いて離れようとしない。

 今、何人救ったのだろうか…?
身体中に突き刺さる岩の礫や焚き付ける炎が罪咎の意思を関係無しに思考を停止させていく。
段々と動キが、鈍ク、オチテイク。

“泣き忍ぶ声。”“怒号舞う声。”“嘆き叫ぶ声。”
『----俺ハ、マタ救エナイノカ…!』

「……ぐぅっ! 怪我は、無いか…!?」

 駆ける罪咎の視界には、巨躯なる岩盤が二人の兄妹に襲い掛かる姿が瞳に移り込み、息を継ぐ暇も無く紙一重の差で岩盤を練り上げ軌道を逸らすと同時に膝を着く

「(体が動かない、ここまで、か…。)」

湧き上がる力を絞り兄妹達の頭を撫でると、眠る様に地に頭を垂れ瞳を閉じる最中に何か鐘の音が聴こえたが天へと誘いなのか、と。悠長に考える。

「(朱銀の野郎……上手く、やってるといいんだがな…)」
381エリシア ◆13VxAhN3EKTU :2017/11/12(日)20:24:32 ID:1Bz
黒々とした光の奔流に対して、ティナができることは限られている。
体勢を崩された彼女が今できることは、精々衝撃に耐える体制を作ることくらいしかない。
これがもし、体が動くのならば。防御のためにと鎖を使えたはずだったのだが。
兎にも角にもこの瞬間、地面に激突した闇の余波でティナの矮躯は軽々と吹き飛ばされ。

「あぁああああああ――!!!」

コンクリートに背中を強かに打ちつけた瞬間、鎖の締め付けが緩みコートの白をうっすらとした紅に変えた。



一方で、ハロルドは舞い上がっていた。
散華した氷の粒、突如現れた爆焔。何より無差別に撒き散らされる瘴気。
闘争本能に身を支配されながらも、僅かな理性がシンパシーを覚える。こいつは、俺のために用意された舞台かと。
そう錯覚するほどには、まるでこの戦場自身が彼を体現するかの如く。

『―――――――――!!!!!』

最早何とも形容できない、異様で異形の咆哮。
瞬間、駆け出したハロルドの足元は、わずかに吐き出し続けられるブレスで凍っていた。
そのまま自分の少し先を凍らせ続け、文字通り統べるようにニーズヘグの位置へ向かうハロルド。
ようやく晴れかけた砂煙の先に黒龍が健在であることを、その時ようやく認めた。


まるで、太陽が落ちるかの如き光芒。
それならば、この戦場で彼が体現すべきは。

双頭のどちらもが放つ、周囲の氷片を巻き込んだ冷気。
どこまでも灼熱の恒星。それが照らす下からは、まるで地獄の氷河の如き零下の世界。
そして剥きだされた、地獄の氷牙。その二撃が今、黒い闇へと突き立った。
382ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/14(火)18:58:00 ID:8HZ()
>>379
>>381

 土煙が収まる。
天蓋のように立ち込めた雲はいつの間にか晴れていた。
満点の星空が、出来損ないの黒竜を迎える。

 背後がふと明るくなる。ついで、耳のような器官が再び異常を報せた。
振り返ったニーズヘグに、太陽のごとく燃え盛る火球が襲いかかった。
とっさに剣を呼び寄せる。流星剣が体に沈み、どす黒い闇の羽衣が噴き出す。
一瞬遅れて火球が激突し、炎と光が猛然と迸った。

『――グオオ……!』

 闇が光を引き裂く。
全身にジリジリと炎を燻らせつつ両手の鉤爪を振るい、纏った闇のオーラがその光を掻き消す。
それでも闇は戻らない。星は未だ、天に在り。
光と闇にて眩んだ視界の向こうから、双頭の狼が氷の牙を剥き出しにして襲い掛かる。
ニーズヘグの最後の足掻き、鋭く伸びて二重三重の凶器となった鉤爪のオーラは空を切る。
冷たい闘志が捉え、火照った鎧は凍てつき、ひび割れた。

『……オオオオオ……』

 ニーズヘグは大きくのけぞって、どす黒い体液をまき散らしながらハロルドの牙から逃れる。
しかし反撃を試みることもできず、痙攣しながら全身からどす黒いオーラを溢れさせ、
黒竜軍アジトから姿を現したときのごとく、徐々に、徐々に、空中へと浮かび上がっていく。

 空の高みに達したとき、オーラはひときわ派手に噴き出して巨大な竜の姿を形作り、消える。
ニーズヘグが凍り付いたように静止する。

 いつの間にか鐘の音は止んでいて。
一瞬だけ、無音が世界を支配した。
383ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/14(火)18:58:14 ID:8HZ()

「そ」

 付近のビルの谷間、マンホールを開けて姿を現し、呆然と空を見上げる人影。
血と土埃に塗れた朧権兵衛。

「総統閣下」
384ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/14(火)18:58:28 ID:8HZ()

『グオ……』

 空中のニーズヘグの胸のあたり、亀裂がびしりと音を立てて広がった。
その奥からは光が漏れる。
流星と同種の、青白い病的な光。
胸の亀裂が広がるとともに、肩、腰のあたりからも光の筋が生まれて、伸びた。

『グオオオオ……』

 ニーズヘグはそれを振り払おうとするようにもがくが、崩壊は止まらない。
痙攣を始めたニーズヘグの顔までも亀裂は伸び、どす黒く濁った眼を真っ二つに裂いた。

『グオオオオオオオオオオオオオオ――……』

 光が溢れる。
一瞬だけ七つの石ころのシルエットが浮かび、直後、ビリヤードのように四散する。
竜人の輪郭が光芒の中に霞み、弾けて、消えた。
385ニーズヘグ◆4FxCjUEIcx.V :2017/11/14(火)19:00:34 ID:8HZ()

 全ては十年前のリフレインのように始まり、終わった。

 後に残るものも同じ。

 荒廃した摩天楼と、傷つき猜疑に呑まれる人々……
386イロピア◆sLevA3xb3LWK :2017/11/14(火)22:33:37 ID:Oll
>>381
>>382
>>384

ただ言葉を失ったまま。
二人は目の前の光景を見届ける。


寒っ!何あれ狼?二つ頭あるけど、どゆこと?ブレスを吐いてるっつう事は何?ドラゴノイドなの?
ええ!?炎裂かれちゃったよ!?
狼すげえ!なんか出血もどきしてる!
何故に浮かぶ!?え、竜人だから浮かぶの?
でか。
ヤバそげな雰囲気何ですが…もがくの?
見たことをありのままに言うぞ。竜になったと思ったら弾けた。何言ってるか分からないかもしれないけど本当なんだ。


届かない。
俺の全力がニーズヘグには届かなかった。
虚しさが増した気がする。
二つ頭の狼が氷の牙を突き立てる。
強いなあ。
浮かぶニーズヘグ。
空高くまで昇るといつかの竜の姿になる。
いつかの間にか鐘は止まり。無音となる。
一瞬のはずなのに、永い時を過ごした気がする。
終わりを。見届ける。
影が光に映る。
七つの石。何を意味するのだろうか。
それは四散して。
竜人の輪郭が見えた。
と思ったら消えた。霞んで、弾けて。それは消えた。
俺は。結局変わらないまま。
ニーズヘグはその姿を消した。
387ティナ ◆bN4hYTufOFjS :2017/11/15(水)21:28:37 ID:chJ
ハロルドは全身を爛れさせながら、それでも愉悦に浸っていた。
焔の上顎と氷の下顎が、瘴気の竜を食い千切る。これほどまでに愉しい時間がかつてあっただろうか。

ハロルドの氷は既にほとんど溶け、墜ちた恒星の齎した炎がそこかしこに燻っている。
そんな彼をまるでスポットライトのように、ひび割れた黒竜から漏れ出た光が照らす。
さあ、勝鬨を上げよう。そして更なる闘争へと身を投げうとう。双頭は大きく、確かに二重に咆哮した。


「―――――させ、な……」

そんな彼へと、まっすぐに伸びる鎖が二つ。吠える双頭の首を過たず捕える。
そのまま巻き付いた鎖はわずかに捻られ、未だ吠えていた狼の頚を縊り倒した。

鎖の元は、もちろん白の防寒コートの袖口。両手の鎖をどちらもハロルドに使った今、全身の出血を抑えるものは何もない。
コートをじんわりと暗い紅に染めながら、ずるずると這うように歩く。鎖と同じくまっすぐに、過たずハロルドの元へと。
その手には、無骨な首輪を握って。


その首輪は、最終拘束。ハロルドが意識を失った時に付けることができ、彼の能力を封じ込める竜装。
首輪をつけることでハロルドはようやく、社会で生きていけるだけの節制を得ることができる。
吸い込まれるように狼の首元に収まったそれを見てティナは安堵の微笑を浮かべ。彼によりかかるようにして倒れる。

そうして、遠のく意識の中で人影を見つけて。


「ハルを、お願い――――」

ふっと笑って見せたかと思うと、糸が切れたかのように顔を落とした。
388イロピア◆sLevA3xb3LWK :2017/11/15(水)22:57:38 ID:Erg
>>387

「「大丈夫(か)!?」」

ハモる二人の声。

「冷たい…」
「どうにか暖めよう。まだ間に合うかもしれない」

駆け寄った二人は治安維持局の少女を介抱する。
朱銀はまだ消えていない炎をかき集めて近くに置いた。その後はハルと呼ばれた狼が、勝手にどこかに行かないように見張る。
祕詠はできるだけハルと呼ばれた狼の近くに少女を寝かせる。そして毛布を持ってきて、応急処置が分からないので被せて置く。
スマホで電話をかける。

「繋がってくれ…!」

電話先は治安維持局である。
毛布はどんどん赤くなっていく。

「くそ…医療知識があれば…!」

苦虫をかみつぶしたような顔をする朱銀。
時間は、過ぎていく。
389ティナ ◆bN4hYTufOFjS :2017/11/16(木)19:01:47 ID:U53
しかし、電話の返答は芳しくない。
それも当然、黒竜軍への攻勢で人員も出払っているのだ。色よい返事がもらえるはずもない。
ついにコートから滲み出た血が炉端へと這い出て血溜まりを作る。ティナの小さな体からこの出血量では、希望的観測を持つ方が難しい。
冷たくなっていく身体は眠るように目を閉じて――――そして、うっすらと見開かれた。

「あぁ、そっか………」

血みどろの右腕を月明かりに翳して呟く。自分が命を一度失ったのだと、彼女は全身に巡る活力で実感した。
首輪、鎖、ヘッドギア。身を包み隣を歩く数々から、彼女の運命は決まっていたようなものだ。
自分を覗き込む二人の男女の姿も、最早気にならないようだった。

「あはっ、あはははっ。あははははははっ……」

乾いた笑いの中に、何処か充足感を滲ませて。すっかり紅くなったコートの少女は、そのまま傍らの狼を抱き寄せる。
ずっしりと血を吸った毛布から這い出るティナは、そのまま眠る彼の額を軽く撫でた。
毛布とコートに染み込んだ血が、線のようにアスファルトに残り線を描く。
ティナはハロルドの胸に体を預ける様にして、煤けた胡麻毛に身を横たえた。

「これからも、いっしょだよ……」

そうして再び目を閉じる。続くのは先ほどとは打って変わった安らかな寝息だった。
3904FxCjUEIcx.V :2017/11/16(木)19:05:12 ID:7so()

 一か月後。

『しかし結城さん、今度は貴方がミイラ男ですかあ。私と入れ替わりですねえ』

「ああ。全く……あの忌々しい流ヶ野め」

『まあまあ、右目まで潰れなくてよかったじゃないですか』

「……無神経な奴……電気ショックは受けたことあるか?」

『わーすいません、すいません!』

 要塞での一幕の再現のように、結城と摩周がエレベータ内で会話を交わしていた。
あの時と違うのは、エレベータが下方を目指していること。
そしてもう一つ、結城が体のあちこちに痛々しく包帯を巻いていること。

『しかし、その調子だと安静にしてたほうがいいんじゃないですか?バリバリ動いてますけど』

「そうもいかんだろう。黒竜軍の処理。『黒竜案件』の対応。仕事はいくらでもある」

 治安維持局の総攻撃に端を発する騒動により、最終的に黒竜軍は全構成員の九割が死亡もしくは逮捕。
組織としては完全に崩壊し、滅亡した。
総統は死亡、副官の朧は行方不明で、残党を束ねるような人物も居まい。
その狂気の野望も潰え、強奪された黒竜の体は頭を除くすべてが回収され、元の在処に変換された。

 しかし彼らは最後の最後に爆弾を落としていった。
流ヶ野がばら撒いた流星は東京全域を黒竜関連物質により重篤に汚染し、多種多様な超常現象を巻き起こし始めたのだ。
ワームホール出現騒動。平将門復活騒動。山手線幽霊列車騒動。
死亡時の被爆によらない異能者の出現もこれに含まれる。
それらの事件は「黒竜案件」と呼ばれ、治安維持局は総出でこれの処理に奔走していた。

『忙しそうですねぇ。ま、私はここの……〈黒竜軍アジト処理班〉の副チーフってことで、ゆるゆるやらせてもらってますが』

「まったく、何でお前のようなガキがそんな役職なんだ」

『元黒竜軍の連中から地理を吐かせるのに私の能力はうってつけなんですよ』

「脳味噌を電子レンジにかける能力がか?」

『結城さん……私の能力をただの遠隔拷問装置だと思ってません……?』
3914FxCjUEIcx.V :2017/11/16(木)19:06:22 ID:7so()

 やがてエレベーターは地下九階に到着する。
黒竜軍アジトの中で唯一崩落を免れた区画、「造船所」へと。

 突き当りが霞むほど遠い壁、天井は不愛想なコンクリートが剥き出し。
涼しい空間の向こう、間仕切りのように設けられた壁の奥から、何か高い音が断続的に聞こえてくる。
摩周が手渡すヘルメットを被り、その壁の奥へと進む。

そこに横たわっていたのは、ちょっとしたビルを横倒しにしたような、横長の巨大構造物であった。
黒く塗装された側面のあちこちにガラス窓が開けられた姿は客船のようでもある。
そして今、周囲には足場が組まれ、作業員が取りついて溶断作業の火花を散らしていた。

「……これは……」

『〈ナグルファル〉。黒竜軍の最後の切り札……になるはずだったもの、です』

 結城は「ナグルファル」の巨体を、首を巡らせて見回した。
その両側には翼のような張り出しがあり、先端には前後に一基ずつダクテッド・ファンが設けられている。

「飛ぶのか」

『完成していれば。未完成なんです、これは……底の部分には地上を砲撃するための大砲が据えられてまして、ま、空中戦艦ってとこですね』

「大層な切り札だな。ところで、ここからどうやって出すんだ?サンダーバード基地みたいに天井が開くのか」

『サンダーバード?……よくわかりませんが、そんな大層な仕組みはありませんよ。地上を占領してショベルカーで掘り出すつもりだったらしいです』

「……無茶苦茶だな」

『無茶苦茶ついでに言えば、これは黒竜軍空中艦隊のフラッグシップに過ぎないらしく……』
『黒竜復活が成らなかった場合、これと同じものを三十隻作って東京を直接攻撃する予定だったらしいですよ』

「いよいよ信じられん。どこにそんな金があるというんだ……今時SFでももっとマシな脚本を書く」

『ですが結城さん。無茶苦茶なようですが、もしこいつが離陸していればかなりヤバかったんですよ』

 ぶかぶかのヘルメットを被った摩周がにやりと笑う。

『この空中戦艦の装甲、エンジン、それに武装には、ふんだんに〈流星〉が使われているんです。そのスペックは既存兵器を寄せ付けません』
『はっきり言って、こいつは空では最強です』

 結城は表情を苦々げに歪めた。

「空恐ろしい話だ」

『え?駄洒落ですか』

「バカかお前は」
3924FxCjUEIcx.V :2017/11/16(木)19:06:46 ID:7so()

『……ま、何もかも完成していればの話です』

 摩周は冷笑を浮かべつつナグルファルを見上げる。

『こいつは未完成も未完成、内部はほとんどがらんどうなくらいで』
『〈鉄屑や黒竜軍が夢の跡〉以上の何物でもありません。まるでバカでかい棺桶ですよ』

「……棺桶、か」

 結城はいったんナグルファルから離れる。
作業員向けと思しき自動販売機で緑茶とミルクティーを買い、後者を摩周に放る。

『おっ、こりゃどうも』

「で、この棺桶はどう処分するんだ。この様子だとばらばらに切り離してから運び出すようだが……スクラップか?」

『えーと、確か……星見学園の研究施設が引き取るらしいです』

「テロリストの遺産を民間に引き渡すのか?」

 結城はぎょっとして聞き返した。

『もちろん非武装化はしますが。それにしても道徳的にどうなんだって話ですけど、向こうから持ちかけてきた話なのでなんとも』
『将来的には研究材料にするつもりらしいですね……さっき言った通りこれは〈流星〉製なので、黒竜技術の先進性の塊だから研究価値があるとかなんとか、言ってきてます』

「なるほど……しかし、治安維持局はよく許可したものだ」

『星見を戦場にしたことがある手前、断れなかったんじゃないですか?今まで散々黒竜軍にボコられたせいで治安維持局の発言力がカスッカスなのもあるでしょうけど』
『それにしても星見学園は何を考えてるんだか。首脳部に黒竜軍のシンパかスパイが混じって舵取りしてたら笑えますね』

 摩周はにやにや笑ったあと、ミルクティーを一口で半分ほど飲んでしまった。

「少しも笑えん」

 結城は言い捨て、緑茶で口を湿らせた。やけに苦く感じる。
3934FxCjUEIcx.V :2017/11/16(木)19:06:58 ID:7so()

 洒落が通じない、と言わんばかりに肩をすくめたあと、摩周は一転して緊張した面持ちになる。

『……そういえば結城さん。知ってますか、あの話』

 対する結城は怪訝な表情になった。

「なんだいきなり……まさか、お前も『K資金』の話を信じているクチか」
「黒竜軍が溜め込んでいた金塊の一部が未回収で、埋蔵金になってるとかいう……」
「あれはたしか、金相場の変動を知らないバカな記者が書いた新聞記事が発端のデマでだな」

『チッ、チッ。違いますよ結城さん。別のものが、本当に未回収になってるじゃありませんか』
『回収班が瓦礫の山をどれだけ掘っても漁っても、最後まで出て来なかったあれですよ……うーん、どうもそのご様子だと、ご存じないようですが』
『まあ表向きは回収済みとされてますし、私も本来知りようがなかった話です……しかし上司の話をちょいと耳に挟んだもので』

 結城はあからさまに不快を表す。

「……盗み聞きか。能力を使っただろう……いつか身を亡ぼすぞ」

『そうなりたくないから結城さんを味方に付いていただこうっていうんですよ』
『今回お呼びした用件も、実はこれなんです……いいですか、未回収なのは』
『黒竜軍が脅迫材料にするためにフクシマから持ち出したプルトニウム、ヒロシマ原爆三発分です!』
3944FxCjUEIcx.V :2017/11/16(木)19:07:08 ID:7so()

「プルトニウム……!?」

 結城は緑茶のペットボトルを取り落としかかった。
摩周は熱に浮かされた様な口調で続ける。

『いいですか?事情聴取によれば、あの日黒竜軍は防戦に手一杯で、プルトニウム搬出に割けるような人員はありませんでした』
『かといって、戦闘終了後に駆け付けた残党が持ち出したというのも無理があります。その頃にはブツは瓦礫の下ですから』
『黒竜軍には持ち出す機会はないんです。とすると残る可能性は一つ……治安維持局の、攻略部隊の中の、誰かが』

 結城は摩周の口を手でぱっと塞いだ。

「……わかった。もうわかった」

 摩周はいくらか冷静さを取り戻し、手を退けて小さな声で続けた。

『上層部は見て見ぬふりを決め込むつもりです。どこかの瓦礫に埋もれたままなのだ、という判断らしいです』
『黒竜の体を一片たりとも残さず探し出した腕利きの回収班が、大量の鉛ケースを見逃したっていうんですよ。まったくお笑いだ』
『獅子身中の虫を退治するのは我々しかいません。ご協力頂けますよね』

「……どこか、人のいないところで詳しく聞く」

 談話室へ先導する摩周。
結城はそれに追随しようとして、はたと立ち止まり、振り返る。
「ナグルファル」が解体中の鯨の死体のように横たわっている。

 あれが棺桶ならば、この戦いで死んでいった者達の魂はあそこにあるのだろうか。
犠牲となった仲間たちと、黒竜軍の人々に思いを馳せる。

『結城さん?』
「……今行く」

 結城は踵を返し、新たな戦いへと歩き出した。
もう二度と、振り返らなかった。
395詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/16(木)20:37:32 ID:5MT
結局祕詠があの夜に得られた物はあまりなかった。

しばらく経ったある日。学校にて。

「はあ~」

祕詠は深いため息を吐いていた。
治安維持局の少女は非ドラゴノイドであったのか、命を取り戻した。
あの後は朝方にようやく繋がった電話で来て欲しい旨を伝えた。その後は普通に事情聴取で時間を取られた。
家族に会う頃にはすっかり日は昇っていて、こっぴどく叱られた。
最終的に出会ったあの二人の名前は分からなかった。
多分二度と会えないんだろうな、と思うと少し寂しい。
あの夜は黒竜軍も含め多くの人の命が失われたらしい。
メールの返信もないし、エクスも死んでしまったのか。
色々な事があったが、分からない事が多くある。
そして知る機会はほぼないのだろう。
どうしようかな、これから。
未だ道の定まらない祕詠であった。
396詩吟◆sLevA3xb3LWK :2017/11/16(木)21:31:44 ID:5MT
一方その頃。
朱銀はドラゴノイド用の特殊留置所にて数日間過ごしていた。
あの後、少女の通報で来た治安維持局員からの事情聴取後にそのまま逮捕されたのだった。

「…俺は結局」

変わっていなかった。
ニーズヘグに全力は及ばなかった。
これまでの9年間、俺は進まなかった。
罪咎と闘って少し変われた気がしたが、気のせいだったのか。
朱銀は今一度これまでを振り返り。
軽く頬を叩いて前を見据えた。

「無駄な時間だったなあ…」

最初から気付いていたけれど。
復讐ってのはろくな事じゃない。
ひとつあくびをして。
これからはもう少し建設的な事を考えよう。
朱銀は少し前向きに、外に出たらどうするか考えた。
397名無しさん@おーぷん :2018/04/23(月)12:59:42 ID:UA3
てす

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