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魔神戦線ロールスレ

1XinJSqnmnQ:2017/12/10(日)21:07:32 ID:cIW()
魔神戦線

其は剣と魔法の物語、其は伝承と冒険の物語────何処か、彼方に存在する幻想世界"アルタナティブ"。
この世界は悠久の時を経て未だ尚色褪せぬ神秘の楽園。魔法に代表される幾多もの幻想が実在し、人ならざる種族もまた数多く存在する。
異種族間の衝突も数え切れぬほどに────然し、皆が平和を望んだことで彼等は手を取り合い、そうしてこの世界に平和な時代が築かれた────筈だった。
この世界に住める者同士の争いは確かになくなった。だが、平和を手に入れた人々を嘲笑うかのように、"彼等"はある日突然、世界の外側よりその姿を現した。
そして世界が漸く手に入れた安寧は呆気なく破壊され──────絶望と混沌が渦巻く災厄の時代が幕を開けた。



"彼等"について判明している情報は余りにも少ないが、確かなことが三つだけある。
一つ────"彼等"は己が存在を"魔神"と名乗る。
一つ────"彼等"は合計で五体、この世界に現出を果たしている。
一つ────"彼等"は其々の手段は異なれど、共通してこの世界の破滅を望んでいる。


一体目の魔神が現出を果たしたその日、その魔神の手によってまず一つの王国が"消滅"した。
冗談のような話だった。嘗て栄華を極めた大国が、一夜にしてその領土全域を焦土に変えられた等、誰もが信じようとはしなかった。
だが魔神の暴虐は続き、更に幾つもの国が決死の反抗も虚しく滅ぼされ────漸く人々は、此れはこの世界の存亡を賭けた戦いであると理解する。
魔神の現出に呼応するかのように、世界各地にて強力な魔物の出現が多数確認された。また魔神によって滅ぼされた地域は人智の及ばぬダンジョンへと変容し、これらは"異界"と呼称されるようになる。

"異界"────魔神の力の影響を受け、一帯が魔物の巣食うダンジョンへと変容した地域の総称。
その内部では人の生存が困難な極限環境が形成されており、凶暴な魔物のみならず地形や気候、植生、果ては重力までといった環境そのものが侵入者に牙を剥く危険地帯と化している。
だが、異界を消し去り、嘗ての在るべき姿を取り戻す方法が一つだけ存在する。
全ての異界には例外なく、その領域を総べる“異界の主”と呼ぶべき魔物が君臨している。その命を奪いさえすれば異界はその在り方の維持が不可能となり、やがて崩壊を迎えることになる。
ただし“主”は魔神の影響を色濃く受けた魔物であり、その力もまた魔神には到底及ばないものの並の魔物とは比較にならないほどに強大なものであり────解放を成し遂げたという話は、未だ存在しない。



そして────最初の魔神が現出した日から、五年が経過した。既に多くの命が奪われ、多くの国が滅ぼされ、多くの大地が魔神の手に堕ち、人の生存を許さぬ異界へと変容した。
人々の生存圏は確実に縮小し続け、今や嘗ての4分の一にも満たないまでとなっていた。
だが、それでも人々は抗い続けた。魔神という世界の危機を討ち果たす為に人々は団結し、国、種族、言語、あらゆる垣根を超えた連合国家を樹立し、一丸となって世界の滅びに立ち向かった。

連合国家首都“ユニアス” ────世界に現存するありとあらゆる武力、財産、技術が結集して成立した、この世界に生ける人々にとって最後の牙城となる要塞都市。
各国軍が再編、統合され誕生し、国と民を守る為にその力を振るう“騎士団”。そして騎士団に所属せずとも各々の理由で戦う者達を束ね上げる“ギルド”。二つの巨大な戦力が、残された人々の領域を敵の魔の手から護り続けていた。

それでも、敵は余りに強大は存在だった。単騎にて一国を容易く滅ぼす魔神は当然のこと、その影響下で増殖を続ける魔物の力もまた、既に並の兵士や魔術師では太刀打ちできないような存在と化していた。
しかし────絶望的な力を前にして、それでも立ち上がる者がいた。一騎当千の武力を以って、民を護る盾として、敵を斬る剣として、戦い続けた者達がいた。
人々の希望となり、世界を守る為に戦い続けた彼等を────────人々は“英雄”と呼んだ。


これは、滅びの時代を迎えながらも抗い続けた人々の軌跡が紡ぐ、英雄譚に他ならない。
 
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231ウィル◆qkLQDfymyI :2018/02/03(土)00:17:31 ID:sxX
>>229
駆ける。多分、背中の色は暗くて。絶望とか、そう言うものが見えているのだろうか。
向かう先は死地、正の道へ向かう訳でもなくて、負を零にするために駆け抜ける。
どうせなら、自分こそ彼女たちを置いていってしまいたかったのだけれど。
彼らは先陣を許してはくれなかった。ああ、もう、覚悟は決めてしまっているのに。

「―――ま、」

それでも

「やるこた変わんねぇんだがなぁ!!」



アニスが号令し、しかけた一斉攻撃。全ての器官を防御に移行させることによる、一時的な無力化を狙う。
彼の狙いはその正反対。もとより一人ででも遂行するつもりだったのだから、必然的にこうならざるを得なかった。
槍を伝い未だ体に残る風。最早必要ない。ありったけを、前へ前へと突き進める。
辛うじて動く右手に、辛うじて刃を成す剣を握り。ありったけの速度で前へ、前へ。目指すは、エレインを包む刃の中心地。
数えることも出来ない刃が織り成す檻であれど、最早要らない部位を捨ててしまえば隙間はある。
刃は男の左腕を切断し、腹部の肉を抉りぬくが。心臓、首、致命にいたる一撃の一切は"受け、流された"。
殆どの刃を逸らす、もしくは対象を男へと強引に変換する。取れる選択肢は大幅に増えている筈だ。

「人間はいいだろう。こんな状況で、まだこんな台詞が吐けるんだ。」

折れた切っ先を陶器に向け

「どうだい。あれが全部、お前の好きな顔になると思えばさぁ?」

挑発。

「だからまずは――――"俺"から味わって下さいよォ!!!」

刃を振りかぶり、首へ目掛けて。何の防御もなければ、致命傷を与えられるだけの余力はあった。
なにより彼の立ち位置は、まるでエレインをかばうような。巨大な的と化し、彼を越えなくばその先はありえないと言わんばかりに。
"全ての攻撃を自身へ向けること"。それが男の狙いであった。
確かに男は、いまや一つの希望として。あの惨劇を回避した英雄の一人として。絶望の火種としては優秀なのだろう。
燻る炉にくべる火種としては、きっとこの上なく優秀な筈だと。そう思わせるにはきっと十分。
232IzOd6sdCas :2018/02/04(日)12:11:50 ID:Tyf
(1/4)
>>230
≪人間はわからないわね。まさかあんな程度の戦力で……私と戦えるつもりでいたのかしら?≫
≪かわいい雛鳥。あなたたちなど本当にただの虫ケラに過ぎないと、その身にすぐに教えてあげる――――≫

剣兵たちと長槍騎兵を前に、魔物が小さく首を傾げながら、憐憫じみて結論を告げる。
直後――“頭部”の手元に残された大鎌が数十に分かれ、音さえ切り刻みながら標的へと解き放たれた。
真正面から競り合えば、恐らくは城塞でさえ朽ちた土塊も同然に斬り裂かれる。それほどの殺傷力が、刃の一つ一つに載っている――‼

そして厄介なのは、眩惑の魔法が一切の効果を及ぼしていないと思しきその精度だった。
遠隔地の情報を容易く捉えてきた卓越した知覚力は、サマンの様な一工程すら必要とせず領域内の全存在を捉えきっていた。
だが――術者たちは受け流すための補助となる、大気への干渉を行うことで力の流れを伝え、鎌刃の軌道を照らし出すだろう。

まともにやりあえば直ちに数名が押し切られ、犠牲になる可能性はあったが、その犠牲を以て、生存者が絶対的な圧を理解することは叶うはずだ。
さらに。この威力と規模を前提とした接近ならば、剣兵たちが攻撃を凌ぎきり、反撃を試みる余地自体は生まれる。

そしてアニスの勇気に応えるように、バスタードソードがエレインを取り囲んだ爪檻を切り払ってみせた。
けれどそのまま爪槍を迎え撃とうとする彼女の脳裏に、天幕の内でギルド側から伝わった警句が蘇るだろうか。

……“もし出くわしても、絶対にまともに打ち合うな。受け流せれば生存の目は残る”――――

……かつて異界の主さえ滅ぼした一閃には及ばない解放でこそあれ。
攻撃面に全てを振り切ったエレインが、魔の力を解放してさえ正面対決では遠く及ばないのがこの魔物の攻撃であり――

その中でも特級の一撃は、今度はバスタードソードを跳ね除け、当然のようにほんの僅かに軌道を変えただけで直進を続けていった。
サマンの乗騎を薄絹も同然に引き裂ける怪物の爪槍――速力も膂力も人知を越えた域にある一撃。
鎧や剣ごと粉微塵にされかねない桁外れの圧力が、迎え撃つアニスの総身を襲うだろう。だがそれは、ごく一瞬だけ持続して終わる。

「……“化物”1人なんかを守るために、あのサマンから人々を守りきった“英雄”が死ぬなよ。
 ――どっちが重要かは……守られた人たちに聞くまでも、ない……‼」

ふわりと、半死人が揺るがず笑う気配が傍らに生まれる。アニスが稼いでみせた一瞬を利用し、エレインが、黎石の剣を突き出して再び僅かに爪槍の軌道を変えていた。
それで爪槍の軌道はアニスの致死圏を外れ、バスタードソードの刀身を滑る様に動き、けれどそれだけで行動を封じる圧倒的な圧を残すだろうか。
傍らの鋭く濃密な魔の気配は、確かにエレインの右腕が剣呑さとともに纏うもので――

……やはり押し負けたのか、その腕から血が爆ぜた。同時、トン、と残る左手で生んだ軽い衝撃がアニスの肩を優しく押して。

その動きで足場へと乗った体重が、そのまま乗騎に運ばれてゆくだろう。
元凶はエレインの乗騎――有鱗馬の血を引く強靭な一頭の指示が、戦場を共にする軍馬を次善の一手へと導こうとする。
数多の野生馬を率いてきた獣の頭目の命令が、主のためにあり、主を守ろうとするはずの、アニスの騎馬に働いたのだった。

当然、2択から傷に慣れ過ぎていないほうを優先しようとしたギルドの女はその死地に残って。
覚悟を決めた様に、自分たちの死期を引き延ばした長剣を構え直す。無数の棘槍に変容して再び襲い来る爪槍を前に、消耗しきった肉体が、静かに息を呑み――――。
233IzOd6sdCas :2018/02/04(日)12:12:08 ID:Tyf
(2/4)
>>231
アニスが切り拓いた爪檻の内への進路を、もう一人の“英雄”が突き進んだ。寸断せんとする鋸刃を巻き込みながら、爪槍が変化して降らす連撃さえも処理してのける。

エレインの身を貫くはずの刺突と斬撃の雨が、護りに長ける騎士の剣に躱され、その死を遠ざけ続ける。
そして決着を――否、誘導を目的とした斬撃は容易く鋏角に絡め取られ、けれど封じられはせず、揮うウィルの命を奪うこともさせない。

「――――な……!?」

穿たれ、切り刻まれ、その中から僅かな生存の目を探して突き進む。そのはずだったギルドの指揮官は、ただ無力な娘のように目を見開くしかない。

爪槍への対処で悪化した手傷に動けずにいる女の目の前で、英雄と魔物の攻防と、挑発をあえて受ける合意が展開されてゆく。


≪ふふ……そうね。素敵なお誘い。私好みの言葉だったわ。騎士さまは、花であれ血であれ、“わたしたち”への捧げ方をよく知っているよう……≫
≪そんな“化物”を身を挺して守ろうとする――――奇特なあなたから肉の欠片にしてしまうわね?≫

一度は凌ぎきられた爪槍が変化して放たれるのは、数十層の鋸刃の網檻。片腕を失ったウィルを滅ぼすためだけの、耐久力を度外視した殺意の奔流。
それは、もはや論われたエレインを全く脅威と見做さないからこそ択ぶ一手であり――

その油断を突く血塗れの戦士が、ウィルの隣に並び立ち。先を越える規模で解き放つ魔の力の生む斬撃が、その威圧感もろともに鋏角の細刃を刻み、微塵に砕いた。

反動が全身の裂傷から紅く鮮血を降らせ、けれどアニスとウィルの決断によって守られた命は未だ健在。
僅かな勝機を切り拓くため、躊躇いなく彼らの守り切ったものを再び賭けた。

その一手は、ウィルによる護りがなくば残りの鋏角の追撃で容易く命を散らすものだったのだろう。
けれど彼女は彼を信じ。彼が、鋏角の斬雨を凌ぎきるならば――エレインが側面に回りこむように動き、攻撃圏を外れることで、再びウィルの狙いが成立するだろう。
個々の動きが連携として機能し、消耗は避け得ずとも、それぞれの生存確率を跳ね上げる。

≪死に体なら、大人しく死んでいなさいな。守られなければ疾うに八つ裂きになっていた身で……いつまでも足掻くのは見苦しいだけよ?≫

「“だけど、現にこうして私は元気なままだ”。その前で餌をぶら下げていれば、何度でもこうして食いちぎってやるよ――……
 ――“化物”を相手取る覚悟はあったんだろ? だけどどうやら――――私が本物にはなれずにいる“人”は、並みの化物の比じゃないほどに強いらしい……‼」

人間側の消耗からすれば、あまりに強いものだったはずの言葉。やっと与えられた有効打は、共に戦う彼らの尽力によって成立したもの。
最も多く呪いを積み重ねられた鋏角が、予期せぬ複数の衝撃からの追撃を受け、ついに耐久限界を越えて破損した。
言葉にすればたったそれだけで。それも、この戦いが過ぎ去れば容易く再構成を終えられる程度の損傷だろう。
この状態でなお遥か高みにある魔物に、力押しは恐らく一切通じない。――――けれど

けれど、希望を繋いだその先にしかない勝利を先に掴み取った騎士たちが――少なくとも2人、此処にいて。
剣執る理由は、何も変わらない。守り、戦い、そして人の世を滅ぼすモノを殺す。
ならば、絶対にここで諦める訳には行かないだろう。もはや勝利への導線に過ぎないモノが、勝因となりうる戦力たちを、遂に共闘者に得てそう誓った――。
234IzOd6sdCas :2018/02/04(日)12:12:34 ID:Tyf
(3/4)
>>230>>231

「……アニス。悪いが、私の兵たちは預からせてもらうぞ……代わりじゃないが、攻撃役を任せたい。
 奴には既に、私への警戒が植え込まれたはずだ――――……勝機があるとすれば、ウィルが戦線を支える間に、その意識の隙を突くことにしかない。
 ……やれるか?」

言葉を交わす余裕があるのかわからないウィルを映す瞳。そこに宿りかける苦渋を内に沈め、アニスに向けるのはあくまで冷静さを保った言葉。
ギルドの戦力の指揮にかけては、恐らくエレインに一日の長がある。そして。

彼女に斯く言わしめるほどに敵は強大で、同時になお勝機を途絶えさせずにいられるほど、騎士たちの存在は大きい。
だから、術者たちによる彼らへの支援がこれまで以上のものになることは当然でさえあった。
風の魔法による魔物の攻撃の把握補助、“受け流す”ための軌道のさらなる鮮明化。
切り刻まれた草地をも利用して、肌と目とで生存の道を掴むことを助けるだろう。

そしてアニスがその戦いに応えるならば。短期決戦は必定との判断をエレインは下し、術者たちがエンチャントの度合いを引き上げる。

ウィルには回復補助と風の防壁による被害軽減、アニスには重点的な筋力強化。
本隊とこの場の、計4名の術者による強化度合いの倍加に加え、個々の役目に合わせたさらなる強化が提供されていった。
剣兵たちが編成の再編を要するなら、それも可能か。何れギルド戦力へのエレインの指揮は、臨機応変に状況に即応し、槍兵たちを望む援護に回してみせるだろう。

けれどそんなありとあらゆる努力を、幾度となく踏み躙ってきたからこそ――〝陶器の貌の女〟は絶望の具現を自認する。    
これだけの戦力を相手取りながら、戦力バランスは今なお魔物の圧倒的な優位にあった。 
陶器の貌に浮かび続ける人類種への笑みは、毒蜜を塗りたくったかの様に甘くおぞましく、未だ途絶えず。

残る3つの鋏角――うち2つは消耗を重ね。そうでない1つは再び騎士団と槍兵に、仮に生存者があれば数十の鎌刃による斬撃の瀑布となって再び向けられる。
そして、消耗・再構成した2つの鋏角による攻撃こそが騎士団・ギルド両戦力の直面する真の脅威であった。
235IzOd6sdCas :2018/02/04(日)12:12:55 ID:Tyf
(4/4)
>>231(ウィル)

この状況でもっとも死に近い場所で、魔物の主力たる鋏角の三分の二かそれ以上を一手に引き受ける役割。それがウィルの“護り”の戦いだ。

切断された左腕側から襲い来る連撃は、強敵を相手取ることに長けた彼には読みやすくさえあるだろう。
問題は―――その一つ一つが桁外れの威力と鋭さの、量ではなく質に特化した攻撃であることだった。

半ば再構成を終えた鋏角のひとつは3枚の分離した重厚な刃となり、左腕側から、3連続でウィルに斬りかかる。
残るもう1つの鋏角はその防御の隙を狙い、ごく細い4本の鋼棘を素早く延ばし両の眼球を狙う。

それを見守るエレインの表情は固く、もはや傷一つとして彼に負ってほしくはないようで――それでも彼に託すしかない状況が、自らの役目を果たすことを選択させた。

>>230(アニス)

魔物の鋏角を砕いたもののうち火力に特化した1人――――エレインへと向く警戒は、アニスに攻撃の好機をもたらすだろう。
剣呑な魔の気配は苛立たしいものでもあるのか。異形の大蜘蛛の魔物は、絶対者として振る舞いながらも疾く命を摘み取らんと殺意と警戒を向け続けるようで。

魔物が鋼爪を大地に突き立てる。
再び自分へと襲い掛かる地中からの爪棘の群れを、黎石の剣と移動でいなしながら。
あくまで殺意を研ぎ澄ますエレイン――そこに加わる鋼爪の追撃は、攻撃を加えているという余裕――つまりは意識の隙に繋がって。
唯一フリーに近い好況にあれるアニスには、兇器となす脚爪で地に自らを縫い止め、鋏角の全てを攻撃に回した〝陶器の貌の女〟が残される。

だがそれは、決して容易な道を意味してはいなかった。

この先に待つであろう未知の脅威に対処し、〝陶器の貌の女〟の命へと刃を届かせる役目。
それにもはや堪えられないと判断したからこそ、アニスに委ねる決断を下した。
この場で最も年若い少女騎士に攻撃の要という大役を託し、“油断すれば喉笛を食い千切る”はずの罅割れた牙は、
死に程近い現況を隠し通しながら、魔物の死とヒトの“生”がために全力を振り絞っていった。

“有効打となる部分であればこそ対処された”――――先のウィルの一撃を踏まえれば。サマン戦から掴みうるそれは、ヒトの胴を模した“頭部”、特に首を狙うことを促すだろうか。
或いは生き残っていれば剣兵たちも、何らかのアニスの望む役割を果たし得るはずだ。
236アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/05(月)20:32:38 ID:4yp
(1/2)
>>231>>232-235

数十の鎌が風を斬り、兵達を切り刻まんと斬撃が放たれる。
眩惑の魔法は効果を成していないのだろう、それは正確無比に近接する兵へと向かっていった。
唯一救いだったのが、術師達が大気に干渉することで鎌刃の軌道を照らし出せた事だろうか。

"村を一瞬にして消し去った"という魔物を相手取るのだ、それ相応の攻撃と規模は想定できるだろうか。
恐らくその軌道を読めば近接する者達は攻撃を凌ぎ、受ける被害を最小限に抑える筈だ。
無論ここまで近接しているのである、少なからずも確実に負傷者は出てしまうだろう。

アニスの方は見事爪檻を断ち、そしてそのままの勢いで爪槍を受けんと剣を振り上げる――が

「――――ッ!」

まず間違いだったのは、少女が"陶器の貌の女"のその力を見誤った事だろうか。
それは目の前の光景に焦りが生じたせいか、それとも自身の力に過信があったか――。
何にせよ、その一撃はいとも容易く跳ね退けられ、その行動のツケが回ってくる。

みしり、と嫌な音を立てて身体に衝撃が伝わってくる。嗚呼、やはり化け物。力で常人に敵うはずもないのだ。
かの爪槍から伝わる衝撃は明らかに人智を凌駕した物で―― 例えるならそう、破城槌を振り回しているような物だろうか。
少女の来ている鎧は低位の魔物の攻撃なら衝撃を殆ど吸収してくれる程の逸品ではあったが、これほどの衝撃をまともに受ければ耐えられるはずもない。
まさに動く砦であるような鎧を自身の身体ごと鉄屑にしかねない圧力が迫り――

ふっと、急に自身に迫る圧力が軽くなる。
それは今しがた身を挺して守ろうとしていた者による援護で、しかしそれは望んで無かった事で。
一瞬の隙を突いたエレインの行動は、アニスを死地から救った。

「駄目、エレインさん――!!」

右腕が爆ぜるエレインを後目に、自身の騎馬は彼女の騎馬の指示通り主を守るべくその場を脱出する。
死地に残るは守るべきだった者、ただ一人。戻ろうにも騎馬が言う事を聞かない。
兜の下で悲痛な表情を浮かべる少女は、ただただエレインを見つめる事しか出来なかった。

何が化物か。人を守れずして何が英雄か。今ここに居る英雄は紛れも無く"貴女"ではないか――。

誰もが最悪を想像した――刹那。
手負いの"英雄"が折れた爪檻の中に突き進むや否や、迫る刺突と斬撃を逸らし、時には自身へと誘導し彼女の盾となる。
無数に刻まれるも決して致死には及ばず。"護る事"に徹した戦いが目の前で繰り広げられていた。

騎士のその挑発に乗った"陶器の貌の女"が放つ一撃を今度はエレインが魔の斬撃にて粉砕し、騎士を"護った"。
一糸乱れぬ見事な連携で鋏角の斬雨を凌ぎ、ついにはその一本を破壊せしめた英雄が二人、そこには居た。
237アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/05(月)20:33:18 ID:4yp
(2/2)
>>231>>232-235

攻撃圏外にて一度合流し、エレインと短く言葉を交わす。
一度は死を考えてしまった相手が目の前で話をしていると言うのはこれ程までになく嬉しい事であったし、ウィルへの感謝が尽きなかった。
そして、ここで戦いを終わらせようとせんとするその言葉に対し――

「……分かりました、攻撃役はお任せ下さい。
私達なら…やれます、きっと」

少女は決意し、それに応じた。
身体は先ほどの衝撃で痛むが、剣を振るえない程では無かった。
それにきっと、あの魔物はそう易々と逃がしてはくれまい。生きて帰るにはここで終わらせるしか選択肢は無かった。

剣兵達は数名負傷しつつもまだ生存し、部隊の再編を果たしていた。
アニスは剣兵達に両英雄の援護を指示する。彼らの意識の外から飛んできた斬撃をエンチャントで強化された剣で受け流し、負担を出来るだけ少なくさせる目的だ。
剣兵達はそれに応えるだろう。この場に居る3人が勝利の要になるという事は明白であったし、自らの身体を盾にするのも厭わないだろう。
それは"老獅子"に教えられた、人々を守る騎士としての"誇り"の為。死を恐れる者は誰一人居なかった。

外せば恐らく誰かが死ぬだろう。チャンスはたった一度きり。
再び剣を構え、少女はその時を待つ――
238ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)18:46:41 ID:nkn
>>214

グロウキメラが次の標的に襲い掛かろうとした瞬間、割り込むように。出し抜けに地面から流体が昇り、打ち寄せる。
何らかの理由で、地下水が噴き上がったのだ――勢いこそ相当だが、質量と無に等しい硬度ゆえ打撃にはならず。
ただ、不意の刺激と正体不明であることが追撃の阻害としてのみ働くだろう。

その正体を告げるように、地を踏む鎧の音が人と魔の耳に届き、

「哨戒を立て、軍勢を警戒し……

 そして、村一つすらも人のある場所は許しませんか。魔物らしく、貪欲なことです――」

涼やかな声とともに現れる姿は、魔物にとっては待ち望んだものでもあったのだろう。
溝状の凹凸のあるバイザー付きサレット、魔力を充填された強化革と合わせ、軽量化を図った強固な板金鎧。
その背には身の丈を優に越える大剣が、ごく軽い魔物避けの魔法を施されたマントとともに据えられている。

ユニアスからの伝令役として騎士団より派遣され、帰路にて偶然この村を通りかかった。
そして、グロウキメラにより一方的に蹂躙されるこの状況を目にする運びとなったが――。


(この惨状……増援は元より、住人の誘導にも期待はできない)

兵士すら欠いた村――魔の嵐を前にすれば、恐らくは容易く吹き散らされる木の葉の楼閣。
……けれど、大風一つが吹く今ならば。

「〝洽剣〟――――ジュヌヴィエーヴ・コンタリア・ドリーブがお相手仕りましょう
 
 ……動ける方はできる限り自らの足で避難を。それが、結果的により多くを救うことに繋がります」

―――― 一振りの剣によって護りうる、“人”の城に他ならない。
ツヴァイハンダーが抜き放たれ、切先を合わせるだけで迎撃の見込める刺突の構えをとる。
対人ではなく、対魔の闘法。荒ぶる力を相手取るための、精密さと鋭さを重んじた戦闘論理。

間合いの広さから、集団戦において僅かな時を稼ぐのにも向くそれは、目に見えぬ火の壁がごとく、村人へと向かおうとすれば魔物を突き、苛むだろう。
239エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/10(土)19:25:59 ID:Jro
>>238
突然の水流の噴出に怯み後方へと跳び退くグロウキメラ。
そして其れを後方から眺めていた脳の魔物は表情筋はおろか顔すら持たぬその貌で嗤い。

ジュヌヴィエーヴ >> 『待ッテオリマシタ。人トハ難儀ナモノデスネ』
           『脆弱ナ同族ナド切リ捨テテオケバ良イノニ』

性別や感情を感じさせない声が、現れた女騎士の脳内に直接響き渡る。
その主が目前に居る脳の魔物であることは何となく察することが出来るだろうか。

ジュヌヴィエーヴ >> 『丁度コノ子相手ニナリソウナ人間ヲ探シテイタノデス』
グロウキメラ >> 『命令。村人ハモウ良イ。コノ人間ヲ標的トスル』

念波によってキメラへと指示を下し、自身は静観を貫くとでも言いたげにその場に漂う。
魔獣は先刻の様子とは打って変わり逃げる村人に一切の関心を示さず、次なる獲物へのみ其の殺意を向けるだろう。

唸りを上げる魔獣とその主は名乗る騎士に相対し。

ジュヌヴィエーヴ >> 『ソレデハ精々、足掻イテイッテ下サイマシ』
グロウキメラ >> 『目測出来ル限リデハ相手ハ近接戦闘ヲ主トスルト推察』
         『先ズハ炎ノブレス攻撃デ出方ヲ窺エ』

脳髄の魔物の挨拶と殆ど同時に密かに念話で下された命令の下、魔獣は燃え盛る火焔の吐息を吹き付けた。
一瞬で焼き切る程の火力こそ無いが真面に受ければ軽くはない火傷を負うだろう
240ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)19:52:12 ID:nkn
>>239

「獣ならばそれで佳くとも、捨て置けぬ理由を抱き、進むのが人というもの――
 その“脆弱な同族”がもたらす強さを以て、けだものを躾けて差し上げましょう」

脳裏に響いた声にそう応じ、戦闘へと意識を切り替えきった。

グロウキメラが村人たちへの関心を失う様を確と見定め、ジュヌヴィエーヴの意識も眼前の魔物ひとつへ。
警戒した顎門が開くと同時、猛烈な炎のブレスが放射され――――、


「……ッ!」

偶然地表近くにあった水脈を利用した、村人たちを守るためだけの一手。それが先の妨害の正体であり。
炎のブレスを平然と無力化できるほどの水の力は、この騎士には備わらない。

だが先の妨害の残り香と、水脈の残りを利用した水の隔壁を展開。
一気に蒸発させられる自らの道具に、兜のうちで瞳は険しさを増した。
この距離では不利と悟り、踏み込み、一息に距離を詰めようとする。そして――――

既に魔力を通した水の残りを土へ浸透させ、その土を宙に浮き上がらせ、蒸発させられた水分を媒介にその動作を補助。
土と泥の混合物を以てグロウキメラの視界を遮りつつ、攻防の機先を制することを狙い、記憶したグロウキメラの位置へと接近――
自分から見て右に位置をずらしながら、一方的にこちらが敵手の位置を知る状況を作り出そうとする。

阻まれることなく接近が叶ったならば、翼の片方を狙い、土の膜を突き破りながらツヴァイハンダーの切先が急襲する。
リカッソを掴んでの一撃は、通常の刺突を上回る圧を乗せるだろう。
たとえ炎のブレスを再び放たれようと、泥と鎧の二重の守りが致命傷には及ばせない。
そして翼をもぎとったならば、墜落の隙を狙いうる――――。

それは、確かな手ごたえを得られた場合の挙動だ。どちらにせよ土の膜を解かずには、一撃を放ったあとの対等な戦いすら望めない。
そうして視界が晴れた先には、攻防の結果如何によって生まれる優劣だけが残る。
どの道刺突を放つことで、こちらの位置を正確に教えることにはなるのだから。
241ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)19:55:44 ID:nkn
>>240はちょっと分かりづらい部分があったので、以下の様に読み替えていただけると分かりやすいかもしれませんっ
****

×そうして視界が晴れた先には、攻防の結果如何によって生まれる優劣だけが残る。

○そうして視界が晴れ、その先には、攻防の結果如何によって生まれる優劣だけが残る。
242エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/10(土)20:24:53 ID:Jro
>>240
先刻噴出させた水流が相手の能力によるものならば火焔に対しても効果的な対処をするだろう。
而して実際に行われたのは水流の残り香による僅かな抵抗のみ。
司令塔たる脳の魔物は見過ごすことなく其れを捉えていた。

魔力操作による泥土の壁は確かにグロウキメラの視界を塞いで見せた。
だが、この場にはその戦場を俯瞰する者が居る。

脳内へ響いてきた魔物の声がヒントになるだろうか。
脳髄の主人は念話を用いて密に指示を下す事が出来るのだという可能性の。

グロウキメラ >> 『左方ヨリ翼部ヘノ攻撃。迎撃セヨ』

『増設進化』>> 蟷螂の腕部を獲得

相手側から見て右、魔獣の左舷から歪に生えた二つの大鎌が迎え撃つ様にツヴァイハンダーと咬合する。
強度からして受け止めた後に機能不全に陥るだろうが、
損傷した部位は切り捨て後から後から部位を増設できることこそがこの魔獣の強みである。

新種ゆえまだ完全に情報が出揃っている訳では無いが。
このグロウキメラと云う魔物の元々の知力は大したものでは無いとされている。
状況に合わせ適切に進化するのも戦略的というよりは本能に任せたものであり、
人間の頭部を獲得していない限りはこの魔獣の知略には警戒する必要は無い。

故に戦い慣れした騎士であれば現状の違和感に気付く事が出来るやもしれない。

詰まりはこの戦場に於いて一定の距離を空けながら浮遊するあの魔物こそが、
グロウキメラ頭脳としての役割を担っているのであると。
そして其れは同時に獲得できる部位数の限られている下位種であるこの魔獣に於いては重要さの比重が高いのであると。

グロウキメラ >> 『炎ニヨル攻撃ハ有効デアル。継続セヨ』
         『ソシテ飛行デノ移動ニハ墜落ノ危険ガアル』
         『緊急時ヲ除キ地上ニテ迎エ撃テ』

晴れた視界の先、予め位置を知り得た魔獣は地に降り立ち再度火焔の息吹を齎す。
243ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)20:57:42 ID:nkn
>>242
目論見通りの接近と、そこから連なる強い刺突。それらは望みどおりに成立し、

「…………ッ!?」

(――これは……ユニアス付近に報告のあった、あの魔物の……!?)

不意を打ったはずの一撃は、グロウキメラが新たに得た部位によって阻まれる。

かの〝老獅子〟がユニアス近郊で対峙したと聞く、戦闘中に新たな形質を獲得する魔物――
……浮遊する脳の魔物が動く前にと1体へと集中したのだが、いっそう決着を急がねばならない理由ができてしまっていた。

そしてこの状況は、新たな理解を騎士に与える。

西方の獰猛な猿然り、海に住まうと聞く流線型の獣然り……
高度な知性を持った捕食者ならば、圧倒的優位に立てば嬲るような所業を以て、
狩りの技を磨こうとすることを、ジュヌヴィエーヴは魔神出現以前の平穏の時代に学んでいた。
だが、グロウキメラが村人を狩り立てた段階においては。そのような遊びが一切見られず、かといって効率的な殺傷を行う訳でもなかった――

加えて視界を遮ったにも関わらず、完全な形での対処を行ってみせた正確な状況判断。
対敵以外の、より優れた知性を持った何者かがこれを操っているはずで――候補となるのは、残る魔の気配一つをおいて他になく。

「く……ぅ……!」

地表を薙ぎ払い、剣の持つ膨大な魔力を浸透させる。再度放たれる炎のブレスを水気を含んだ土壁が防ぐが、それほどに相性がいい訳でもない――
だが、これが今なせる精一杯で。

鎧越しの熱が肌を焼き、呼吸を一時的に奪われかけるが、進行は意地でも止めない、突き進む。
そのさなかに土壁を厚くするのではなく、自身の周囲を全方位から覆うようにして先を読ませない状況を作り上げる。

その内にて。魔力を通した柄頭の飾り紐を第二のエネルギー源に――
刀身を蹴り抜くことで腕・脚・飾り紐の3つの力を束ねて生み出される斬撃が、ジュヌヴィエーヴ自身を乗せて一気に突き進んだ。

「――――――……ハァアアッ‼」

自分自身が土壁を突き破りながらグロウキメラまでの距離を詰め、土壁と、先程の比ではない速力が前兆を殺す。
放つのは、喉笛を裂き、たとえ獅子の腕のひとつばかりが遮ろうと趨勢を決し得る一撃となる横薙ぎの一閃だ。

――――人形の視界を遮ることが無為ならば、誰の目にも映らぬ影より襲い貫けばよい。
徒に参戦を促す攻撃ではなく。対敵のみならず、万人の目を欺くための策がこの場での答えだった。
そして覆いを貫くための大加速は、そのまま殺傷力の高さに繋がる――

英雄の域には遠く及ばねど、遠心力を最大限に活かした斬撃。
だがそれも、魔物の爪や牙に阻まれればどの程度威力を残せるか――未だ見えぬ結末を、地上で自由度を増した迎撃の先になお求める。
244エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/10(土)21:28:48 ID:Jro
>>243
水気を含む泥土の壁で防いでは見せているが、やはり其れにも限界があるのだろう。
脳の魔物はこの戦法に確かな手ごたえを感じていた。

だが、想定していた範囲外の事象が起きる。
相手が自らの全方位を土壁で覆ったのだ。
いや、想定の外という程では無いか。
こちらからの指示があるという点に気付いたなら視界を塞ぐというのも合点はいく。

グロウキメラ >> 『緊急事態。飛翔セヨ』

その命令を魔獣が受け取るより速いか、騎士が凄まじい速力にて一閃を放つ。
命令と獣の直感により上方へ回避を試みるも完全には躱しきることは叶わない。
獅子の身体の左脚部から蠍の尾に掛けての大きな損傷を負う。

複数の生物の鳴き声が混じり合った様な悲鳴とも怒号とも取れる咆哮が木霊する。

"老獅子"による報告を知っているのなら解るだろうか。
この魔獣の弱点はベースとなっている生物の胴部であると。
この反応は先刻蟷螂の腕を損傷させた時とは明らかに違うと感じさせるだろう。

『増設進化』>> 馬の下半身を獲得

傷を負った下肢全体を新たに増設した馬の脚で補強する。
だがこれによってこの魔獣を打破する道は見えた筈だ。

(ヤハリ下位種デハ限界ガアルヨウデスネ)
(恐ラクハ其レモ含メテノ戦闘記録ノ収集ノ命ノ様デスガ……)
(私ガ手出シシテシマッテハ純粋ナ戦闘記録ニハナラナイ)
(アレハ切リ捨テル事モ視野ニ入レマショウ)

脳の魔物に与えられた任務は飽く迄情報収集。
念話に出さぬ脳内ではいざという場合への対処も検討し始めていた。
245ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)21:50:54 ID:nkn
>>244
重量を増すために刀身に付与した土くれが一挙に剥がれ、確かな手応えと魔物の叫びが戦果を伝える。
だが仕留め切れてはいない――新たに増設された部位は機動力を補うようで、未だ敵手の滅びには足りぬことを雄弁に伝え。


「……、……――――――」

(……傷の深さはあちらが明らかに上。しかし、元の身体的な差は否めません……か――)


炎に苛まれた状態から無理に放った一撃は、酸欠に近い状態にその身を追い込んでいた。
反撃を受けたならば危険ではあったが……この系列の魔物特有の急所に叩き込んだ刃が、その危機をも遠ざけたようだ。

そして、その成果は元の体力差以上の意味を今や与えるものとなっている。
蠍の尾を切り裂けていたならば、ジュヌヴィエーヴは毒袋と思しき部位を突き刺し、毒を溢れさせ、刀身までも塗れさせる。
そして自らの身を支えるように、地に大剣を突き立てて待つ。
炎のブレスが好適と思えるような距離を保つことは、誘いのようにも見えるだろうか。

だが、接近であれブレスであれ。魔物の次の一手に対し、図るべき狙いは究極的には変わらない――
脳の魔物に無意味に近い思索を選ばせ、少しでも最良に近い状態で、次の一手を凌ぎ、仕留める。
回復を意図するこの状況は、一見した印象とは真逆の、攻性の一手そのものだ。

静かに敵手の滅びへのカウントダウンを読むように、兜越しの視線を据える。
迷い無く、躊躇いを潰して。護るために、滅ぼすために。
246エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/10(土)22:09:23 ID:Jro
>>245
斬り落とした蠍の尾部から毒素を抽出することには成功するだろう。

相手と魔獣との間合いは丁度ブレス攻撃に適する程か。
大地に剣を突き立て身を支える様な姿を晒してはいるも。
今の行動、蠍の毒を剣に纏わせた動作が無意味なものであるとは考えず。
而して相手の誘いに乗りつつあわよくば致命打を与えるべく命令を下す。

グロウキメラ >> 『炎ブレスヲ吐キツツ突撃セヨ。ソレデ終ワル』

そう、終わるのだ――――どちらにせよ。
脳の魔物にとってこの魔獣は守るべきものでも同士でもない使い捨ての駒にしか過ぎず。
故にこそ守る為に戦うこの騎士に魔物達は勝てないのかもしれない。

(戦闘ノ記録収集トシテハ上々デショウ)
(後ハドノ様ニ帰還スルカヲ考エマショウカ)

自身は戦いに参加せず未だ無傷であるこの魔物。
そのアドバンテージをどの様に交渉に活かすか。
手下の魔獣が死線へと突撃する間際でさえ冷酷に思える程、魔物の思考とは無慈悲であった。
247ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)22:38:57 ID:nkn
>>246

(ここに来て、新たな一手を――――それも、今や手遅れですが……‼)

土を鞘としたかの様な構えが動く。
ブレスと突撃を同時に行うことは初めて識り。されどそれらへの対策を同時に行うことを以て、生存の道は拓かれるのだろう。

板金鎧の一部に用いている、潤沢に魔力を通すことで強化した革――
緊急時の魔力源としてのその貯蔵を解放、一瞬だけ大気を掌握するようにして風の障壁を以てブレスを阻害。
劇的に耐久力を喪うことを代償に、決定打になりうる一撃を一切の減速なく耐え切ってみせた。

そしてそれは、ブレスおよび突撃するグロウキメラへと突き進むという狂気とも映る一手と同時に行ったからこそ有効となる。

自らの怯みの不在、“土壁を作り出す”工程の不在。
攻撃の隙や脳の魔物の動揺といった、敵側からの有利要素こそ得られなかったが――2種の有利要素を揃え、攻撃を阻害させないための状況を作る。

だがそれでもなお、部位増設の余地は残るのだろう。突撃の勢いゆえ退避は困難だが、新たな部位を捨て去るだけの猶予はあろうか。


それなる部位を諸共に貫かんと、再び飾り紐に魔力を通し――――
グロウキメラの突撃の勢いを活かす迎撃に加え、投擲するかの様な勢いを突撃から乗せて。斜め上から縫い止めるような、熾烈な刺突をここで放った。

土を跳ね飛ばす刀身からは、先程溢れさせた毒液が爛々と輝くだろう。
〝洽剣〟――――魔力を通した蠍の毒を刀身表面で流動させ、グロウキメラの肩口から、動脈を切断・貫通――
さらに剣から体内へと毒を流し込み、それを体内で暴れ狂わせる異なる剣技。
臓器を高速で液体が流動するというだけでも危険な威力を有していたが、それを強毒を以て行うことで真価を発揮する。

そしてそれは、ふたつの答えを見出そうとするものでもあったのだ。

第一に、この系列の魔物は自らのあらゆる部位への耐性を持つか。
毒を有するものに限らず、危険部位を逆手に取るような策を今後取れるか否か、その情報は有益なものにはなるのだろう。

第二に、部位増設に限界はあるのか。
かの英雄が凄まじい手傷を負ってようやく斃したというほどの恐るべき脅威は、未だ眼前のグロウキメラからは感じられなかった。
だからこそ接近と、明確に危険である胴への〝洽剣〟の発動を以て――――
脳の魔物がジュヌヴィエーヴが知らぬ間に実験を行うのと同様に。“その猶予があるはずの状況で増設が起きるかを見る”。

かの魔物が既に離脱を思案していることは、ジュヌヴィエーヴが知る由もなく。
されどこの戦闘自体に、全力の闘争と同時、人類種の勝利を目指すための意味を加え――本来集団戦を得意とする騎士は、魔物を滅ぼすことによる2つの勝利を目指し突き進んでいった。
248エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/10(土)23:17:20 ID:Jro
>>247
焔を纏っての突撃は大気を掌握しての風の障壁を以てかき消される。
だがこの魔獣には後に引くことは出来ないのだった。
煩雑な量産性の魔物の多くがそうである様に、
ある程度の自我を宿していた原種とは違い上位種からの命令に背かぬ様にと。
そう――――設計されている。

故に忠実に命に従うべく突撃し獅子の膂力をして相手を下すべく、
馬の脚力と跳躍、そして蝙蝠の羽による滑空と持てる全てを籠めて。

そして両者はぶつかり合い、結果魔獣は強毒の刃で体内を裂かれることとなる。

第一の問いはどうやら耐性を持たないというのが正解の様だ。
そも蠍とは自身の毒で死んでしまうと云う特性を有しているが。
それを抜きにしても自らの一部であるからと云って絶対的耐性を持つのでは無いらしい。

第二の問いに関しても増設出来る部位には限界があるという事で間違いは無い様子。
これは姿、特性こそ似通っているが"老獅子"を瀕死へと追い詰めた彼の魔獣から大分劣化しているのだろう。

それらの問いの答えを合わせる様に自らの毒でその身を裂かれた魔獣は巨体を沈め沈黙する。

ジュヌヴィエーヴ >> 『素晴ラシイ戦イデシタ』
           『私トシテモ充分ナ記録ヲ得ラレテ満足ニゴザイマス』

騎士の脳裏へ直接届く声は白々しく軽薄。

ジュヌヴィエーヴ >> 『シテ、コノ後ハドウナサルノデショウ?』
           『私トシテハ貴方ヤソコラノ村人ヤラノ命ヨリ優先スベキ事項ガアリマスノデ』
           『コノ場ハオ暇サセテ頂キタイノデスガ』
           『シタイノデスヨ? デスガモシ其方ガマダ戦イタイト申スノデシタラ……』

脳髄の魔性は冷気を纏いながら自身の周囲に氷塊を漂わせ、
更には幾つもの触手の先から電撃の迸りを見せびらかし問う。

ジュヌヴィエーヴ >> 『私ニモマダ取レル手段ハゴザイマスノデ』

未だ以て脅威は健在であると誇示してみせる。
魔法を扱えるという事は魔獣よりも遥かに攻撃範囲が広いという事であり、
場合によっては懸命に逃がした村人に再び脅威が迫るやもしれない。
249ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)23:43:10 ID:nkn
>>248
毒による反応、部位増設の限界。それらを認めながら臓腑までを抉り、ここに人と魔のひとつの決着は成る。
安堵の吐息をひとつ零し、極限の緊張は一拍だけの終わりを迎えて。

「……ッ……ふぅ……。……、――――」

迎撃を以て初めて貫くだけの威力を得て。
敵から得た毒を以て、初めて確実な致命打を為す殺傷力を得る。
未だ万全ではない体力で大質量を迎え撃った一撃は、衝突の衝撃から、騎士の余力の大半を奪い去っていた。
グロウキメラの骸から大剣を引き抜くジュヌヴィエーヴの脳裏に、今一度あの声が響く。

眼前に骸を残すあの惨禍の元凶を、この場で仕留めることは叶わない――
兜のうちで僅かに苦渋に歪む表情は、それを確信しつつ、けれど呑み込めばそれが答えだと刻むように胸に仕舞って。

「……私にも、まだ戦う余力ならばあるのですが?

 ……けれど。2つ条件を呑むのなら――この場は見逃して差し上げます。
 一方的に蹂躙されるばかりの村人たちは、護るべき大切な民ではありますが……私が護るべきものは、ひとつ限りではありませんので。 」

毒とグロウキメラの血に塗れた切先を向け、揺れぬ刀身を以て牽制とする。
本来、優位は圧倒的に魔物の側にある。状況でも……そして今では戦力においても。
人々を犠牲にするような戦いも、その営みをこそ愛するものには取るべき/取れるものでは決してなかった。

だが兜が表情を隠す今は、この惨禍を繰り返させないために――――鋼を纏うままに、魔物に要求を突き付けるための強さとするのだろう。
250ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/10(土)23:44:25 ID:nkn
>>249に1行抜けてました……!

****
まず対話に持ち込まなければ、それすらも無意味な話ではあったのだが。
251エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/11(日)15:42:39 ID:ZJB
>>249
騎士は毒と魔獣の血に染まった切先を此方に要求を突き付ける。
相手も未だ健在か、しかしグロウキメラとの戦闘で消耗していない筈が無いと。
そして何より此度は一切戦闘に介入こそしなかったが。
この脳髄の魔物も決して戦闘に向かぬ訳で無く、
寧ろ今の状況下に於いてはグロウキメラ以上に厄介な存在であるのだという自負。
其れ等を込みで交渉に乗ろうと嗤うのであった。

ジュヌヴィエーヴ >> 『lol,lol,lol.』
           『2ツノ条件デスカ……』
           『一先ズ聞クダケハシテミマショウカ』

毅然とした騎士の要求に不敵に/不気味に嗤い返す魔物。
実の所、究極的には自らの生存すら眼中の外。
魔神の眷属たる魔物達の最も恐ろしく最も忌まわしい点。

個体差こそあるのだろうが総体として存続出来るのであれば、
魔神という究極の個さえ無事であるのであれば、
その他の個々の存在が如何に滅びようとも気にも留めないという異常性。

弱きを守る事を強さへと変えられる人間とはまるで真逆の性質。
それこそが恐らくはこの地を脅かす魔性達の本質にあるのではないだろうか。
252ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/11(日)17:10:51 ID:Od6
>>251
対峙するという状況こそ演じられているが、優勢がどちらにあるのかは脳の魔物にも悟られているのだろう。
嗤う声が脳裏に響き、剣を構える腕がやや強張る。けれど、揺るがぬ切先と鎧がそれを隠しきることを願う。

「……ひとつは、この村とその周辺をこれより2週間捨て置くこと。
 あの魔物による介入のみならず、一切の干渉を許しません」

兵士はおろか、ある程度の練度の自警団すらもない村。
魔物にとっての重要度としては……恐らくは、相当に低いのが実情だろう。
けれどそこに息づく人々にとっては、命の所在という一点で、重要さを問う意味すらもない区域だった。
だからこだわり、

「もうひとつは、あなたや、その主があるならばその目的は何なのか――――
 ……或いは、それらが何者であるのか。
 話せる限りを、この場で話していただきます

 何も語れぬというならそれも結構。
 与えられた命を繰り返すだけの機械など、指揮官の器に非ず――
 ……その程度の者に委ねられるものならば、幾らでも代えが利くのでしょうから。 」
 
そして続けられる言葉は、それ自体が魔物の反応からなにかを読み取ろうとするものではあった。
……表情の読める相手であれば、いっそうに望み通りの効力を持てたのかもしれないが。
挑発と、あれが量産される魔物の1体に過ぎないという可能性の憶測。

少しでも人類の勝機を取り戻すためのそれらは、魔物の返す言葉次第で如何様にも意味が変わりうるものだ。

守るべきものゆえに強く、その在り方ゆえに行動を縛られる。必然的なその不利のなか、どれだけの意味を勝ち取れるか……。
半ば魔物の掌中にある状況ながら、飽く迄人の側で戦おうとする意志が、鋼を内から支える様でもある。
すべてを蹂躙するような気まぐれを、見過ごすつもりはないのだろう。
253エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/11(日)18:06:00 ID:ZJB
>>252

『……ひとつは、この村とその周辺をこれより2週間捨て置くこと』

ジュヌヴィエーヴ >> 『ソノ程度ナラ良イデショウ』
           『ソモソモガ実験ノ為手頃ナ集落ヲ気マグレニ選ンダダケデスノデ』

息づく人々の事など知りもしないと魔族特有の非情さ、傲慢さを見せる。

『もうひとつは、あなたや、その主があるならばその目的は何なのか――――』
『――――話ていただきます』

ある種挑発めいたその問いに、表情を持たない脳髄は――――。

ジュヌヴィエーヴ >> 『lol,lol,lol.』
           『失礼。余リニモ検討違イナ質問デシタノデ』

抑揚も感情の熱も無い耳障りな声で嘲笑う。

ジュヌヴィエーヴ >> 『何時私ガ指揮官デアルナドト言イマシタカ?』
           『エエソノ通リ。私ニ委ネラレタモノ等全テガ代エノ利クモノバカリ』
           『今モ空ヲ覆ウ"リーパーズ"モ』
           『ソシテ貴女ガ先程斃シタ"グロウキメラ"デスラモネ』
           『私ナド成果ヲ上ゲラレレバ良シ』
           『ソウデナケレバ切リ捨テラレルマデノ駒ノ一ツニ過ギマセンヨ』

自嘲などでない、本心からそれが正しいことであると確信している様な口ぶりであった。

ジュヌヴィエーヴ >> 『デスガ。ソウデスネ』
           『折角ナノデ少シダケオ教エシマショウ』
           『主様ハ"老獅子"ノ一件ヲ快ク思ッテハオリマセン』
           『"グロウキメラ"等トハ違イアノ個体ハ特別デシタカラ』
           『……今開示デキルノハコノ辺リデショウカ』
           『エエ。時ガ来レバ何レ解ルデショウ』

(――――コノ襲撃ノ意図モ)

ジュヌヴィエーヴ >> 『サテ如何ナサイマス?』

一通り相手の要求に対して応えた魔物は騎士の返答を待つ様に宙を揺蕩う。
外見から一切の感情を読み取れないその姿は只々不気味であった。
254ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/11(日)18:42:04 ID:Od6
>>253

「……、――――」

第一の要求には同意が返る。
静かな安堵と、僅かな苛立ちと。戦闘の余韻を残す思考は、普段より険を増した感覚で魔の声を受け止める。
沈黙は先を促すようで。

そして得られる答えこそが、人と魔の差異を明確に示すものでもあった。


(……あの魔物が、幾らでも代えが利くもの、ですか――魔物の侵攻も、本当にこれ以上を許す訳に行かない段階まで来てしまっている……)

汎用型と思しき構成は、部位を捨て去って得る生存力ゆえ、同規模の魔物と比べても滅ぼし難いものではあった。

そして数を揃えた場合の脅威と、仮に何らかの目的に特化した個体がそう編成された場合の脅威は――此度の戦いの比ではないはずだ。
それ以上にその精神性を、明確な脅威として実感する。
滅びる事を恐れもせず、ただ人間を刈り滅ぼすために生み出され続ける魔物たち――
尋常の生命とは存在の目的すらも違うようなそれらは、まさしく異界の尖兵と呼ぶにふさわしいものなのだろう。

……それでも。
嘲笑はいずれ滅びを以て必ず返すと、人を守る剣としての誇りが胸中で誓わせた。
たとえそれが、何らこの魔物にとって忌むべきことではなかったとしても――――。それが、この戦いを無にしないことだったのだから。


「……いいでしょう。満足な答えではありませんでしたが、これ以上を求めるのも無為な様です

 今は、追手も出しません――増援がこの地を訪れぬうちに、村から退散されるがよろしいかと。 」

苦渋を呑み干した言葉は、あくまで平常の体を保ちながら紡がれる。
人類(こちら)が有利になる情報はほぼ与えず、ユニアス近郊の個体が“特別”であったというただそれだけ。
復讐戦の可能性は脳裏を過ぎったが――手段への示唆と思しきものが、不確実なまま識れたことに留まった。

……けれど、それが今得られるすべてなのだろう。守ることの強さと脆さが、これ以上の闘いを許さない。

剣を下ろし、地に突き立てる。似た構えが泥土を利用した闘法の起点になったことを思えば、そうそう油断できる状態でもないのだろうが……。
一考に動く気配を見せない姿は、その言葉が偽らざるものであることを示していた。
剣執るものとして、自らの言葉を守るということでもあるのだろうか。魔物が相手でもその在り方は変わらない様ではあった。
255エウロパ ◆q3pzNvXt82 :2018/02/11(日)19:03:25 ID:ZJB
>>254

『今は、追手も出しません――退散されるがよろしいかと。』

ジュヌヴィエーヴ >> 『エエ。ソウサセテ頂キマス』
リーパーズ各位 >> 『撤退スル。散リ散リニコノ場ヲ離レヨ』

念話による命令があったのだと察する事が出来るだろうか。
暗雲の如しに上空を覆っていたリーパーズがバラバラに退去を始める。
集中する方角から撤退先を悟られぬ為の策といったところか。

脳の魔物も残された魔獣の死骸に何かしらの感慨を残す様子も無く。

ジュヌヴィエーヴ >> 『ソレデハサヨウナラ。〝洽剣〟ノ騎士サン』

別れの言葉を最後に、悠然と漂う様にその場を去っていった。

小さな村の存続を掛けた戦いは人間側の勝利で。
しかし覆しようのない後味の悪さを残して終わりを告げた。
256ジュヌヴィエーヴ ◆IzOd6sdCas :2018/02/11(日)19:34:54 ID:Od6
>>255

「“また会いましょう”――命を、命とも思わぬ魔物さん」

宣告めいて告げる言葉は、どれだけの時間魔物の記憶に残るだろうか。
魔物たちの姿が見えなくなるまで視線で追い、視て得られた成果は言葉にできるほどのものはなく。
脳の魔物の命令が、的確かつ迅速なものだったという理解ぐらいになるか。

そしてグロウキメラと村人たちの骸を見やり。
何より重要な、数多の命を守りきるという戦果はあったが……それに付随する、魔物から奪えた“なにか”はきっと僅かなのだろうと理解する。

(あまり、慣れぬことに手を出すものではありませんね。魔物との交渉事に慣れた方ならば、もう少し情報を引き出すこともできたのでしょうか――)

兜を外し、ようやく人心地ついてふと思った。
果たしてそんな人材があるのかは、ユニアスで確認してみるほかなかったが。

手頃な実験地であったということは、やはり地理的にも魔物の脅威に晒されやすい場所ということ。
各地で進められる作戦と同様に、ユニアスへの移住以外に、彼らの生存の道はないと思えた。

騎士団に掛け合ってみるほかないが、状況が状況だ――……最悪1人で指揮するしかないが、このちいさな村ならば可能ではあるだろうか。
そしてユニアスへの帰路を急ぐより先に、まずここで果たすべき役割があった。
村の責任者への意思伝達、状況とそれまでの経過の報告。

村人たちへのケアも欠かしたくなかったが……生存を最優先するならば、今は致し方ないものとして胸裏に留める。
先の暗雲は先のものとして、忘れぬまま果たすべき今を貫く。この日滅ぼすことのできなかった魔物の声は、いつまでも脳裏にこびりつく様で……

それを前に進むための力と換えながら、ツヴァイハンダーの血と毒を拭い、騎士の足取りは先を目指してゆくのだろう。
その先に、暗中にもまたひとつ“生”を守れる未来があるものと信じて。
257名無しさん@おーぷん :2018/02/11(日)21:44:26 ID:yTf
>>233
「どっちが重要かなんて、そりゃお前が考えることじゃあねぇ。」

千切れた方からは止め処なく赤色があふれて、命がこぼれて落ちていく。
それでも男は余裕を————ただの、やせ我慢ともいうけれど————を崩さずにつぶやいた。
降りしきる刃の雨はそのすべてが致命打になり得る物で、ゆえに読みやすい。
振りかざすのが魔の膂力であるのならば"受け流せる"。もとよりそれを生業として生きているのだ。
片手の、ひび割れた刃を刃がなぞる。攻撃は流水のごとく、刃に触れて流れていく。
けれど、けれど、所詮は人間、所詮は片手。少しずつ削れていく肉は、まるで消しゴムか何かのように。
男が役目を果たす度に、男のからだはちいさくなっていく。

「聞き飽きてんだわ、その手のセリフ。
 死にたがりの格好付け。誰も聞きやしねぇさ。」

助けられる側の意見など知ったことか。関係は一切ない。
ただ、信じたように動く。思うまま、最良の未来へ駆けていく。
思えば彼らもこんな気分だったのだろうか。それが正しいと信じたから、ああも簡単に命を投げ捨ててしまうのか。
ああ、ならば———やはりひどい皮肉。自身が否定し続けた道をたどろうとしている。

ほぼ同時に繰り出される三連撃、対応するべき腕はなく、であれば。
動けさえすればいい。それ以外の機能はいらない。だから、もう、彼にとって最早半身は不要であり。
取った選択肢は前進。ひたすらに前のめり、より強く盾として前に出る。
眼球へと放たれたとげは剣により振り払われ、片目を抉るにとどまった。
連撃は彼の肩に触れ、そのまま体を斬り振り抜き。断面がひどく広くなってしまった。が
棘を振りぬいた刃を断面に押し当て、自らを"焼き切る"。いまだ残る禍炎の熱にて、傷口の止血を図った。
その痛みはきっと想像だにできないし、そもそもそれを感じる機能など残っていないのかもしれない。
彼は止まらない。ただ、前へ前へと突き進む。援護など眼中に内容だった。傷つくのは、自分一人で十分だろう。
攻撃を振り切った鋏角は必ず隙になる。このまま、進みづければ必ず届く——————

「———————!?」

力が抜ける。構えた剣を振るう、その最後の一手の直前で全身の力が一気に抜けた。
当然なのだ。当たり前なんだ。あまりにも無茶をしすぎたのだろう。とうに動ける体じゃない。
足が地面をとらえることができずに、慣性だけが体を引っ張って振り回す。
前のめりに倒れこむ、剣はいまだ、魔物の首へと向けられているが——————それは絶望を至上の餌とする悪魔には、きっとひどく滑稽に映るだろう。
今この瞬間、ウィル・カーチスは皿にのせられたに等しく。きっと、どうしようもないほどに美味に映るのだろう。
258ウィル◆qkLQDfymyI :2018/02/11(日)21:45:14 ID:yTf
>>257
>>236
安価ミスと名前!
259IzOd6sdCas :2018/02/15(木)01:12:51 ID:dgB
(1/4)
>>236-237
アニスの言葉は、あまりにも真っ直ぐに優しい未来を想い、求めて。
けれどあの接触で消耗し、苦しむことが鎧越しにも見て取れた。
それでも共闘者に応え、最後まで戦い抜こうとする姿は――きっと共にあるものの勇気を呼び起こして已まぬもので。

(そうか……そうだな。やれるから、やり遂げられるように。皆を護るやさしい英雄(おまえ)と、共闘するのがきっと正しい――――)

「恩に着るよ」

穏やかな風のよう、灯が温めた“人”の声が奏る。

「お前の強さは、きっと人類(ヒト)の希望の灯そのものだ
 何があっても、絶やさず進め――――……それで“勝てる”よ。皆の戦いを何一つ無駄になんてせず、あの化物を斃してやれるはずだ……‼」

無責任な期待ではなく、この先までを見据えた確信のように。微かに楽しげな響きを添えて、その信頼をアニスに託した。

一度の攻撃を叩き込ませ、数名の犠牲の上であろうと反撃を凌いで止めを刺す。
恐らく異界の主であるあの怪物を滅ぼすには、その程度の覚悟は必要で。
だが――その特攻紛いの“二度”を、全て彼女に強いていい理由がどこにある? 殺すことにばかり長ける兇器の剣など、そのための護りとしてはあまりに脆く。

(……悪いな。黒蹄――最後まで、この戦いに付き合え……‼)

ならば、択ぶ道など一つきりだった。
最後になる接触に追憶を重ねるように、女の指がやさしく鬣を撫でる。
それを失うことへの絶対の拒絶と、直接接触をトリガーに――――エレインは、乗騎を喰らわんと“自我共融”を発動した。

逞しい体躯が分解される。魂魄さえも純粋な“力”へと還元され、修復と賦活という帰結を以て、主の肉体に融け込み、消費される。

“愛馬の全存在を喰らっての再動”。もはや戦力になり得ないはずだった身が、今一度力強く黎石の剣を構え、棘爪の森を潜り抜ける。
けれど――それは、所詮は最後の一撃を託すための軌道に過ぎない。
攻撃の合図は言葉か、さもなくば一も二もなく征くべき状況が伝える。

決着の始まりを告げる碧い視線は、今もどこまでも躊躇いなく。この場で勝利を齎すことのできる唯一の存在を――アニスを、微笑むように一瞬映して前に進んでいった。
260IzOd6sdCas :2018/02/15(木)01:14:10 ID:dgB
(2/4)
>>257
常人ならば幾千、幾万もの死をもたらしていたはずの剣と槍の嵐を耐え凌ぎ、けれど皆を護る騎士の身は否応なく削られてゆく。
溶け落ちてゆく糖蜜細工を愉しむ様に、魔物はさらなる緩急をつけながら血肉を抉り切り刻み続ける。

やがて訪れる限界は、魔物にとってひどく待ち望んだ瞬間だったのだろう。
変わることのない陶器の貌に、膨大な歓喜が波濤するかの様で――
入れ違いになるように前に出る女の声に、魔物は“餌食”から“鑑賞者”へとその意味を変えて傲然とウィルに視線を注ぎ続けた。


「……五月蝿いんだよ。そんな言葉を吐くのなら、どんな傷を負っても――たとえ不可能だろうと生き残ってみせろ……!
 あんなものの手にかかるつもりなら、その前に私がおまえを殺すぞ――――……ウィル……‼」

守られ続けたものが騎士へと絞り出す言葉は、その細い背には似つかわしくないほど強いもので。
彼を、これほどに傷つかせてしまったこと。なにかを守ろうとする戦いが、殺すためのそれより苦手で仕方がないこと。
ついでに、痩せ我慢する彼の言葉そのもの――。

言葉に漏れ出る苛立ちは、きっとそのどれもが真実。共に戦い、束の間でも歩んだ彼を死なせたくないという想いでしかなかった。

――――けれど、戦いに慣れきった躰は心を裏切るように。嫌になるほど精密に、勝利のための手を重ね続けて前進する。

1本の鋏角が倒れ臥すウィルに、残る2本の鋏角が数多に分岐して迎撃に割かれる。
一気に前に出る剣兵たちが深手を負いながらも受け流し、槍兵たちは本命の一撃のために自分たちを温存させながら、風の魔法の総和を以て全体の被害を可能な限り抑える。
そう――――これが切り札だと、魔物に誤認させるには十分なだけの戦力が投入される。
砕けることまでを役目と刻み、

(……いいや、違う。“生きる”さ――生きて、この先まで越えてやる――……死なせてくれないやつらがいて。こんなにも想わせてくれるんだ……‼)

騎士たちの勇気は鋼の冷たさにさえ灯を燈し、護るために、生きるために、越えるために――――殺すばかりの器物(モノ)が、自らの機能を最大限に行使する。
生きて帰るべき居場所を想い。胸当ての中で鼓動に応える“角”に、騎士たちの護りを加えるかのように安らぎを得て弛まない。

そうして詰めきった距離を背に振り抜く一閃は、幾度となく音を振り切って大蜘蛛の頭頂部を狙った。
迎撃は視線越しのものと思しき不可視の“なにか”。黎の斬撃は外殻に浅く亀裂を入れるだけに終わり、弾き飛ばされる。
だが――――その亀裂に指を掛け、獰猛な光を宿す瞳は、冷徹に魔を微笑して見下ろした。

≪――――ギ、ィィィ……ッ≫

ベキベキと凄まじい破壊音とともに魔から響く水音が、その視線の意味を伝えるだろう。
篭手ごと右腕を完全に砕かせながら、魔物の大質量をその腕でもぎ取ったのだ。
徒手で陶器の貌と鋼の外殻を“頭部”から剥ぎ取り、尋常の生命であれば致命傷であろう域まで外観を損壊させる。

だが、その内から覗く深紅の巨大な単眼こそが――――彼らが遂に直面する未知、真に終焉を導く絶望だった。
261IzOd6sdCas :2018/02/15(木)01:14:41 ID:dgB
(3/4)
>>236-237>>257

血腥い風が吹き抜けた。傍目の体感としては、たったそれだけ。

「――――か……は、……ッ‼」

直後苦鳴とともにエレインの身から噴き上がる夥しい鮮血が、この攻防においてなお圧倒的な優勢を保った魔物の力の一端を示し――
鍛え抜いた身体を今度こそ切り刻まれ、血を吐き溢す女が墜落する。
世界そのものが刃となったかの様な異様な感覚が、彼女が味わったものから一拍だけ遅れて広がるだろう。

〝陶器の貌の女〟は未だ斃れず――“頭部”から鋼の甲殻を失いながらも、先を遥か上回る暴威を以て、人と魔の戦場に君臨した。
陶器の貌は、今や紅玉を穢したような魔の瞳へと替わって。全身を血に染めて目を瞑る女を映し、その身の倒れ臥す地から天頂までを掌握した。

紅く灼け墜ちてゆく空、同じ色へと枯れ落ちきる大草原。

深紅の瞳の照らす総てが、魔の意志ひとつが下に置かれ、未来をも規定される。
存在定義および法則・空間支配能力――――“すべては、〝陶器の貌の女〟の殺戮がための供物であり祭壇である”。
存在するだけで世界を侵食し、視線に触れるだけで死の現象に捉え、自己の規模を拡大しながら活動する異界。
この単騎こそがそのすべてであり、送り込まれた悉くを弑し続けた断頭台であった。

異界の主としての桁外れの存在規模を示す悪魔は、ひどく愉しげに彼らのここまでを嗤う。
262IzOd6sdCas :2018/02/15(木)01:15:33 ID:dgB
(4/4)
>>236-237>>257

≪絶望して、絶望して、絶望して、絶望して――――足掻くあなたたちの戦いが、何もかも無意味だったと潰える終わりが堪らないの……‼≫ 

≪末期の吐息をどうか聞かせて。哀悼する涙を啜らせて≫
≪全て全て私が奪ったのだと、その最期の想いさえも託して頂戴――――人類(ヒト)の心は、その瞬間に一番味わい深いのだから……‼≫

既に訪れた決着とこれより繰り広げる惨劇を思い、刈り取ることを残すばかりの雑多な標的と、その鑑賞者たちを魔は嘲弄せんと高らかに笑っていた。

槍を構え、最後の突撃を行おうとする長槍騎兵たち。
傷を負い、瀕死の身でなお力を振り絞る4名の剣兵。
血に塗れ、宙を舞う黎石の剣。

けれどそれらはすべて、アニスという攻撃役の全力を魔へと叩き込む舞台装置として機能する様に。
乗騎から継いだ生命を迸らせるような鮮血の煙は、あまりに濃く―― 数拍の間だけ続くそれさえも、決着の一撃がために用いうるのだろう。

その光景を映す魔の瞳は、“頭部”の鋼の外殻を失ったことをも、解き放った力に比べれば些細なものだと結論する。
そしてこの状況で冷静に戦意を保てるものが。
この結末を約束されていた“捨て石”など救おうと、この場に走ったはずがない――――、
攻撃と護りの要であるはずの二者が既に倒れた今、稚拙な特攻か、無意味な救助がせいぜいだろうと次の動きを想定した。

瞬きの間だけ焦燥を愉しんで、手が届くそのときに……喪失の慟哭に換えて終って味わおう。   

≪それじゃ……もう終わらせてしまいましょうね。――皆殺しにしてあげるわ、取るに足りない“人間”の剣ども……‼≫

再び魔の単眼が禍々しく輝き、生み出された世界が猛然とその脅威を増幅させる。
秒単位で二回りは規模を拡大した異界は、死の理もまた相応にさらなる強大さを得たことを示すようだった。
それは、視線を媒介として強まるものであり。

ならば、視線を引くものはそれだけ多くを引き受けることになるのだろう。

外殻ごと鋏角は既に失われたが、異界により放つ斬撃の規模は優に先の数十倍に及んでいる。
……剣兵たちに一任できる規模では到底なく。槍兵たちの全力を加えてなお、一拍ほど時を稼げるかどうか――
空間そのものを死の刃と成す権能は、僅かに物理攻撃としての性質を帯び。あらゆる標的を絶つ刃先の傍に、“逸らす”起点を見出せる可能性を残すかもしれない。

魔の剣が到底及ばなかった超級の怪物を、彼らが打倒できるとすれば何が差異となるのだろうか――――
総力戦の果て訪れる結末は、光明さえも呑み込まんと闇を深めようとして。
それでも、諦めず進むならば――――!
263アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/16(金)15:51:00 ID:VYc
>>257>>259-262
異界の刃が迫る中、少女は自分の乗騎を守る為に斬撃を逸らす。
無論、自身は無防備になる為に斬撃を多少は受ける事になるだろう。
幸いにも防御を誇るその黒鋼の鎧は切り裂かれながらも斬撃の勢いを抑え、少女は致命傷になる程の傷は負わなかった。
しかし、切り裂かれた鎧からにじむ血は、少女の負傷を明らかにするだろう。

紅く一変する戦場。全てを飲み込まんとする絶望。
陶器の貌を欠いた"それ"は、まさしく異界そのものと言える存在であった。
これまでの全てを覆す事の出来る強大なそれは、今まさに全ての希望を刈り取らんとしていた。

「"何があっても、絶やさず進め"――」

別れ際に言われた言葉を反芻する。
目を覆いたくなるような光景を前にしても狼狽えなかったのはその言葉があったからこそ。
かの者の言葉は、このような圧倒的に絶望な状況に置かれても少女を冷静で居させてくれた。

もう迷いは無い。迷う必要も無い。
消えかけていた希望の道筋も、今ならはっきりと見える――。

「――ありがとう」

今がその機。少女は決意を固め、"異界の主"へと立ち向かった。
数多の異界の斬撃を掻い潜り、時には逸らし―― 少女は戦場を駆け抜ける一陣の風となる。
それでも尚迫り来る斬撃は、槍兵の援護が無ければ避けきれない。

もはや決定打となりうる攻撃は、この幼き少女の一撃しかないのだろう。
なればこそ、一拍の時間だけでも稼ごうと彼らは全力で攻撃を逸らし、少女を守るだろうか。
貴重な一拍を、ここに居る者の未来を小さな灯に託すのだろうか。

しかし、そう、その一拍だけあれば――

「たあぁぁぁぁーーーーーッッ!!!」

その一拍さえあれば少女は見事懐へ潜り込み、筋力強化されたバスタードソードによる一撃を魔物の首に目がけて叩き込むだろう。
全員の希望を繋ぎ、全員の思いを乗せた一閃。
たった一筋の希望を繋いで辿り着けた、渾身の一撃。
攻撃が届くか、否か。それで全てが決まる――。
264イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/27(火)21:47:08 ID:9gY
ユニアスから南方に3日ほどの距離に座すとある城塞都市。
防備の厚さや兵の質・量はかの連合首都と比べるべくもないが、この地を魔物たちの自由にさせておけぬという思いは確かなものだったのだろう。

だが、それは永遠の護りにはなりえなかったのかもしれない。
夜闇に紛れたなにかが外壁を切り裂き、最低限の音と衝撃を伴って地表へと突き刺さる。
それは、意図された通りに最も近い距離にあった一隊にのみ届き、

「何だ……? 見て来よう」

最低限の確認のため、1人が音の源に近づく。
黒い鏃としか見えない未知のなにか――警戒した兵士が同じ隊の仲間を集め、それぞれが武器を構え変化に備えたが、

鏃が解けるや否や――――それを構成していた“なにか”が兵士たちの首を刎ね飛ばし捩じ切った。
最後に残った二人のうち、ひとりが接近する何者かに喉笛を掻き切られる。怯む瞳に、獣人型の影が映り込み――、

「この程度のザコ共が、何を守る心算だったのかは知らんが――まぁいい、せいぜい味わいきってやる
 我が主の命により、手前ェらの命と財をまとめて頂くぜ……‼」

返り血の滴る爪に舌を這わす黒い魔物が、宣告とともに最後の1人を文字通り兜割りにして絶命せしめた。
それは、人が狩り立てられるこの世界で、厭になるほど繰り返される悪夢の縮図の様だっただろう。

標的とされた5つの隊のうち、3つ、27名までが何も分からぬまま強襲を受け潰滅される。
そして魔物は4つ目へ。僅かに血の彩を外観に加えた黒い鏃が、夜霧を切り裂きながら飛来する――。
ごく短時間で繰り広げられた殺戮に対するは、秘密裏に首都へと要請され、一時の護りを請け負ったある戦力となるだろう。
数も、状態も今は知れず――魔物は、惨劇を待ち望むかの様に牙を磨ぐ。
265アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/27(火)23:36:37 ID:TtE
>>264
黒き魔物が目指す4つ目の部隊、その部隊は先の部隊よりも圧倒的に少数の部隊であった。
ユニアス騎士団の鎧に身を包み武器の手入れをしている物が二名、簡素な椅子に座り他愛もない世間話をしているのが二人、修練に励む者が一人――。
5名にやっと届く程極少数の、されど屈強な男達で構成された精鋭部隊―― "ユニアス騎士団 第十三番隊"である。
彼らはユニアスから離れたこの城壁都市の一時的な援軍として派遣されていた。

正規の騎士団の鎧に身を包む者の中、たった一人異質な存在が居た。
真っ黒な分厚い鋼鉄で作られた、まさしく鉄塊とも言える重装甲冑に身を包み、少し離れた場所でたった一人修練に励む者――

『おーい、アニスちゃん! あんまり張り切り過ぎると毒だぜ!』

椅子に座る者の一人がその黒き騎士に声を掛ける。
アニスと呼ばれたその騎士は構えていたバスタードソードを降ろすと

「ふぅ…っ! 私は、大丈夫ですのでっ!」

と、その黒鋼鉄から連想出来ぬような声で返した。それと同時に相変わらずだなぁと小さく笑いが湧く。
アニス・ルークラフト。齢17の幼き騎士は再び構え、案山子相手に剣を振るった。

闇夜の襲撃者の存在など露知らず、一刻、一刻と時は過ぎてゆく――。
266イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/27(火)23:58:22 ID:9gY
>>265
無音の跳躍から一気に距離を詰める黒い影。
重装甲冑から漏れる声や穏やかな笑い声は、この凶事に対する備えが出来ていないことの証の様で。

(くく、楽な作業になりそうだなァ――――……5つ目まで潰し終わったら、城塞都市(ここ)の頭ででも遊んでやるか……!)

既にこの部隊とその次、最後の兵たちをも滅しきった先の戯れを思い浮かべる様に、魔物の口元が牙剥く様に愉しげに歪む。
音もなく宙を裂く漆黒の鏃が、解けるように空中で形態を変える。
流線型から蜘蛛脚にも似た、数多くの刃の突き出した鋭角的なシルエットへ――

――――全方位への、際立って硬質な数多の刃による広域型の斬撃。
分厚い装甲に守られた少女騎士はともかく、通常装備であれば甲冑ごと致命傷を与え得る奇襲だった。
そして一方的な鏖殺を得手とするこの魔物の隠形は、灯りや音など、ごく当たり前の予兆の大半を殺している。

だが特に感覚の鋭い者や、巧妙に殺意を隠匿した暗殺者の潜む空気を識る者があれば、静寂になにかを感じるかもしれない。
嵐の前の静けさこそが――この状況で唯一の、奇襲への備えを為すための手掛かりだった。
267イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/28(水)00:01:27 ID:LRx
>>266
流線型から蜘蛛脚にも似た、数多くの刃の突き出した鋭角的なシルエットへ――

流線型から、蜘蛛脚にも似た数多くの刃の突き出した鋭角的なシルエットへ――

…でしたっ
268アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/28(水)00:40:12 ID:R5W
>>266
少々穏やかな雰囲気に包まれる部隊の中、一番始めに異変に気が付いたのは黙々と武器を手入れしていた二人であった。
夜にしてもあまりにも静かすぎる都市、そして何処からか風で流れてくる血の匂い―― 戦場で幾度となく嗅いだそれを、二人は感知した。

『なぁおい!何か変じゃねぇか――』

一人が研いでいた武器を置き、立ち上がって席へと向かった――刹那
斬撃は席に座っていた二人が首を切り裂き、席へと向かった者の甲冑ごと背中を切り裂いた。
武器を研いでいたもう一人はとっさに頭を下げたために無傷―― しかし、たった一回の奇襲で屈強な騎士が3名死傷する事態となったのだ。

『がっ…!ジークッ!バレルッ!……くそっ!敵襲ーッ!!』

背中に傷を負った騎士が力を振り絞り声を上げ、もう一人は武器を構えて斬撃の方向へと向いた。

黒鋼鉄の騎士が最初に感じたのは、腕を思い切り剣で斬り付けられたような強い衝撃だった。
衝撃は吸収されたものの、びりりと衝撃で腕が縛れる。何があったのかと振り向けば

「ジーク、さん?」

先ほどまで生きて、笑っていた者の屍がそこにはあった。
たった一瞬の出来事、されど何が起こったかはすぐに理解出来た。
ここに潜む"何か"に殺された――

「……っ!」

気を緩めていた自身と仲間をやられた悔しさと悲しさを押し殺す。
バスタードソードを片手に持つと、背に付けていた盾を取り構え、かの襲撃者へと向いた。
269イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/28(水)01:00:31 ID:LRx
>>268
三つを裂き、ひとつ仕留め損ない、もう一つに耐え凌がれる。この一撃で奪った命と、人間たちが繋いだ命の数はそれなりに拮抗したと魔物は思う。
手応えを愉しみながら、予想外の硬質なものがあったことを、重装騎士の姿に確認する。
声をあげた者は、珍しく奇襲に気付いていた様だが……。

「少しは出来る奴がいたようだが――――……くたばれば結局は同じことだなァ
 それにしても……くくく、虫ケラなりに佳く鳴いたもんだ……!」

容易く命を奪った騎士たちを嗤いながら、黒い影が立ち上がる。
鈍色の3メートル強の獣人型の体躯を漆黒の獣毛で覆い、戦利品めいた骨飾りを右手に嵌めた魔物――
右前肢の鉤爪は夥しいヒトの血に塗れ、既に複数がこの魔物の手に掛かったことを示す様だった。
……恐らくは、ユニアス騎士団第十三番隊との邂逅以前に。

「名乗りな、小娘――せっかくこのイズヴォリィ様が決闘の真似事をする気になったんだ
 せめてその鎧の持ち主として、ひと時だけ覚えておいてやるからよ……!」

ざわめく獣毛は新たな血を吸って、黒をより深い色へと染め上げながら。
アニスと対峙する状況から、そしらぬカタチでもう一人の生存者への攻撃を為す。
夜闇に溶け込む様なその漆黒が、足元から延び上がる様に三つの槍となって、武器を研いでいた一人を突き上げようとした。
アニスに注意が向いているはずの状況に騙されなければ、風切る勢いに悟ることも不可能ではないのかもしれず。
270アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/28(水)01:35:27 ID:R5W
>>269
武器を研いでいた騎士の一人―― トレックはこの狡猾な魔物の次の手を考えていた。
自身の爪の一薙ぎで、近いとは言えないアニスの位置まで斬撃が届くだろうか?
それにこの魔物はわざわざ背を向けて自身の攻撃を弾いた騎士へ決闘などと―― まるで今からこちらを殺すとでも言うかのように
刹那、ひゅうと風を切る音を察知したその騎士はとっさに身体を後ろへ下げる。
鼻先を鋭い槍が掠め、間一髪命は助かった。すぐさま追撃が来ぬようにと持っていた剣で切り払おうとするだろう。


問に答える前に少女は動いた。
盾を前方に構えての突撃、間合いに入った瞬間片手に持っている剣での刺突を試みるだろう。
幸いにも先の攻撃は鎧を貫く程では無かった。攻撃を受けても多少であれば吸収してくれる筈。

「トレックさん!ここは私が抑えます!他の部隊に連絡を!」

魔物の後ろに居る騎士がその声を聞けば、すぐさま行動に出るだろう。
死んだ仲間の無念や、これ以上の被害を出さないためにも決して背を向けず。剣を構えたままその場を立ち去ろうとする。

「お前の様な下衆に名乗る名は――無いッッ!!」

一撃で決めんとする怒りの篭った刺突が魔物へと迫る。
しかし今、仲間を失った怒りからか少女は少々冷静さを欠いてしまっていた。
魔物から見れば恐らく隙がいくつか発見できるだろうか――。
271イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/28(水)01:52:46 ID:LRx
>>270
トレックの意図はどちらも遂げられるだろう。とりたてて打撃になることはなかった様だが、黒い槍は断たれ、追撃も追走も怒らない。

「下衆な魔物(バケモノ)なんだ、仕方無ぇなアッ――――カハハハハハハッ!!」

怒りの声を哄笑が迎え、さらにその赫怒を煽り立てようとした。
それは、刺突にさらなる力を篭めさせようとするがためのものだったのかもしれない。

柔らかに撫でる様な波打つ動きと、刺突を横に払うという“圧す”だけの、しかし確かな力で行われる対応。
剛柔織り交ぜた挙動が僅かに刺突に軌道を横に逸らし、それ以上は自分が反対側に動くことで躱しきる。
その最低限の動きで必殺を期した一撃への対応を終えれば、ごく軽い、そして非常に迅い一閃がアニスの腕へと走るだろうか。
それは直撃しても鎧に傷一つ与え得ず、しかし魔物にとっても一指を動かす程度の動きに過ぎず。

(……やはり硬いぜ――もう1つから潰しておきたかったが、まぁ、幾らでもやり様はある……!)

だから、本命はその次に襲い来る。
剛腕が唸り、剣を引き戻すことが間に合わなければ、鉄槌で殴り倒す様な衝撃をバスタードソードの刀身に叩き込むだろう。
篭手の部分ならば、武具の操作のために、兜や胴といった主要部位よりは守りが薄くなるという可能性――。
そこを武器への打撃によって浸透させる衝撃で突こうとする。
目論見が成功すれば、指は元より、前腕部までは相応の痺れが襲うだろうか。

そうして隙を作ることができたならば、盾を潜り抜ける様な動きで、剣の間合いの内側に入り込もうとする。
打撃や斬撃では効果が薄い――防御面でのアニスの優位を、既に確信していればこその仕込みだった。
状況の危険さは、それが成立した暁にこそ真のものとなるのかもしれない。
272イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/28(水)01:54:01 ID:LRx
>>2711
柔らかに撫でる様な波打つ動きと、刺突を横に払うという“圧す”だけの、しかし確かな力で行われる対応。


柔らかに撫でる様な波打つ動きと、刺突を横に払うという“圧す”だけの、しかし確かな力で行われる獣毛での対応。

…でしたっ
273アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/28(水)02:16:35 ID:R5W
>>271
怒りに任せた一撃は少々迂闊だったかもしれない。
まるで生きているかの様に動く魔物の毛に渾身の刺突を逸られた少女は確信する。こいつは全身が武器なのだと。
次に襲ってくるのは手に走る軽い衝撃、ここまでは想定内だった。

「――――ッ!」

防御が硬いのなら薄い部分を攻撃するのは定石。
魔物の重い一撃がバスタードソードから少女の手へと伝わっていく。
まるで鉄槌の様な一撃を受けた剣は弾き飛ばされ、少女は武器を失い、更には大きな隙まで作ってしまう。
さすれば次に来るのは懐に入り込んだ魔物の一撃――

「――させ、るかッ!」

否、少女のもう片方にある盾もまた"武器"だった。
60cm程の盾で懐に入り込もうとする魔物へ打撃を試みる。命中すれば多少は怯ませる事が出来るだろうか。
274イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/28(水)02:32:24 ID:LRx
>>273

「……!」

盾での反撃は、魔物にも予想外のものだったのだろう。盾での打撃は命中し、接近はそこで停止される。

「――…………チィ……ッ!」

軽く頭を振って隙をカバーし、状況からの自身の回復とアニスの行動の猶予が同時に生まれる。

そして地を這う様な前傾姿勢に移行する魔物は、盾での追撃を警戒しつつ、次の攻撃を阻害される要員を排除しようとする様だった。

鎧の隙間から内側に入り込まんと、漆黒の獣毛が展延され、重厚な鎧へと殺到するだろう。
目論見が成功すればそれらは鎧の内へと入り込み、そこから繋がるのはその内側で少女騎士の首を絞り上げ、窒息を狙うという悪辣な業。
アニスが剣を手放したことで、鎧に阻害されない攻撃手段として用いることができる様になった一手だ。

仮にアニスが剣を追ったならば、獣毛での反撃は片脚の膝に絡みつき、損傷させようとする様なものになるだろう。
何れにせよ、攻撃も、移動も、それ以外の何らかの挙動も。
盾での打撃を成功させたアニスにはこの間合いでの行動の猶予が生まれているはずだ。
275アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/28(水)02:58:22 ID:R5W
>>274
一先ず怯ませ、一瞬の隙を作った少女が次に取る第一の行動。
それは剣を拾いに行く事ではなく―― 盾の投擲。

「はぁッ!」

前傾姿勢に移行する魔物の顔へと目掛け、盾を持ち直しフリスビーの様に思いきり投げた。
かの魔物の自在に動く毛が武器である以上、いくら防御を固めても隙間から侵入される。
盾による打撃や刺突メインの戦術ではあまりにも効果が薄い―― ならば両手持ちによる斬撃のみ。
盾の投擲もまた、剣を拾う隙を再び作らんとする物。上手くいけば難無く剣を拾えるだろうが、警戒されている今は厳しいだろうか。

投擲するや否や、すぐに少女は剣を拾いに走るだろう。
盾による追撃が成功するか、否か―― 少女が剣を無事に拾えるかが次の瞬間を決める。
276イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/28(水)03:07:37 ID:LRx
>>275

「……効くものかよ――――この俺を、甞めるんじゃあないぞ小娘が……ッ‼」

四足による体勢の移行――上昇した機動力は姿勢の低さと相俟って、難なく盾の投擲を回避させる。
けれどその動きで、アニスがさらなる行動を起こす猶予を与えるだけの時間は生まれたのだろう。

その隙を補い、アニスの狙いを挫かんとするかの様に。
両手の鉤爪を巨大化させた様な10本の爪帯が、アニスの右脚を狙って魔物の両腕より迸った。
剣を掴む/膝を捻らせて阻害する、どちらが間に合うかは五分五分程度か。
だがこれに失敗したならば、アニスに待つのは両手の“武器”を手放し、右膝を捻られるというあまりにも不利な状況。
生存には、これを必ずや踏破することが要求される――。
277アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/28(水)03:31:45 ID:R5W
>>276

魔物の腕から爪帯が迸り、少女の右足を挫かんと迫る。
剣に届くか挫かれるかの刹那、少女が選んだ選択は――。

剣へ向かっての飛び込み前転―― 飛び込んだ先の剣を握り、そのまま前転し難を逃れようとする。
その爪帯が真っ直ぐ標的へと向かっているのなら、前転した事で狙いが逸れるか、若しくは鎧の別の個所に当たり弾かれるだろう。
しかし軽量化した重装甲冑とはいえそれは少々無謀であった。前転してすぐには行動を移す事は出来ない。
剣を得、足を守る代償として大きな隙を作ってしまった事になる。

だが、ここで剣を取り逃せば勝機は無い。それは少女にも分かっていた事だった。
次に少女に迫る攻撃が鎧を貫く程の物でない限りは―― まだ勝機はあるだろうか。
278イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/02/28(水)03:46:44 ID:LRx
>>277
爪帯による干渉は不発。しなやかな性質ゆえ地表を跳ね、痛痒を与えることすらなくその攻撃としては終焉し、

「死ぬがいい――――縊る程度では済ましはしねェッ、鎧ごと首を引き千切ってやるぜ……!」

魔物は。今度は硬化させた獣毛の十爪を左右から挟み込む大壁と成して迫らせ、先程は失敗した絞首のための侵入を狙う。
もしも捕らえられたならば、兜と胴鎧の継ぎ目を狙って言葉通りの惨劇を起こそうとするのだろうか。
それが無数の獣毛から構成されていること、両手持ちのバスタードソードに対して打つ手であることは、総てを断ち切ることの難しさを伝える様で。

左右の大壁の狭間――中心部だけが束の間の安全地帯としてあることは、そこに誘いをかける様でもある。
だが同時に、魔物への打撃を与えようとするならばそこが最上の線になることは明白。
つまりは――――両者を危険に晒しながら、この先の攻防でどちらが先に死ぬかを試そうと挑発しているのかもしれない。

決戦に臨む以外の手も或いはあるのだろうし、それが最適解である可能性もまた否めず――。
何を選ぶかは、最後はやはりアニスに委ねられるのだろう。左右からの大壁は、恐らくそれだけで攻撃を完成させるものではない。
279アニス◆LYIRBS0kyLyL :2018/02/28(水)04:08:28 ID:R5W
>>278

少女が立ち上がれば、そこに広がる光景は正に絶対絶命。
左右に死の大壁が形成され、捕まったらかの魔物の言う通りに死ぬのだろう。
唯一活路を見出せるのは中心部、魔物へと再び直進する道か。
しかしあの狡猾な魔物の事である。策か何かを講じているのか、それともこの一撃で決めようというのか。
どうであれこの状況は一瞬で命取りになるのは明白であった。

怒りに染まっていた気持ちも、少し落ち着いてきた。
かの魔物への怒りは深いが、それに支配されては決して勝てない。
ただ――少々冷静になるのが遅かったか。今、死が文字通り迫ってきている。
でも、こんな時あの人だったら――

「――面白いッ!」

――こんな、最期かもしれない状況を笑い飛ばすんだろうな。

尊敬する師の真似事か、それとも彼女の想像する英雄像なのか。
兜の中でにい、と笑い、両手で剣を構えれば再び魔物へと一撃加えんと突撃する。
迫る死の壁、それを越えれば少女は勢いのまま魔物へ向かってバスタードソードを斬り上げるだろう。
少女の武が勝つか、或いは魔物の策が勝つか―― 次の一手で決まるだろう。
280イズヴォリィ ◆IzOd6sdCas :2018/03/06(火)00:14:37 ID:BqK
>>279
振り上げられるバスタードソードの一閃。黒い獣毛の刃が、“封殺するに十分だと算定された強度を以て右腕に纏われ、振り下ろされ”――

「グウゥ……キ、サマッ―――――」

されど剣は迎撃の右腕を断ち切るのみならず魔物の顔面を斬り裂き、片目に深々と傷をつける。
傷口からの出血の激しさは、与えた手傷の大きさをそのまま示して。

命を下した者であれば、こんな状況に陥ることなどないのだ。ゆえ置き換えることはせず、そもそも推し量れるものでないのだから思いすらせず――

「……人間如きが――――
 俺たちを前に滅びゆくだけの取るに足らん種が、あの方の武器を前に……寝言ばかりを、並べやがって……!

 受諾した命令は、人間どもの鏖殺――そして、抵抗するあらゆる力の強奪だァアアアア……ッッ!!」

――ただ己が主の命ずるその機能を、己が全存在として暴走した。

憤怒と鮮血に彩られた凄絶な表情。
手負いの獣ほど獰猛になる――その言葉を証明するかの様に。
自らの身を顧みない狂気の猛攻は、まず己を崩壊させるかのごとく始まろうとしていた。

新たに血を滴らせながら剣を噛み締め、自らの後脚が地表にめり込むほどの圧を以て行動を抑制――
成功すれば。それと同時、黒き獣毛は鎧に潜り込み、アニスの右手首と前腕へと絡みつき、

「――――――ガァアアアッ!!」   

自らの口腔がさらに傷つくことも厭わずに、魔物は首を振り上げてアニスを鎧ごと浮かそうとするだろう。
そして両者の体重を肩部に集中させる形で捻りながら、アニスを地表に叩きつけようとする。
肩と手首を潰し、剣を握る腕を封じるための、殺し技としての“投げ”の一手だった。

恐るべき魔の膂力――――
だが、凶悪な破壊力は相応の下準備を要する。
第一に、自らの肉体を囮に、剣を噛み止めるという段階。
続いて、獣毛を腕に絡めることで投げの補助を行いつつ腕を破壊する威力を高めるという過程。
アニスを浮かせるという第三段階。そして、叩き付けて右肩から潰す最後の段階――、

それらを阻害すれば阻害するほど本来の破滅的な威力は軽減され。
そもそもの抑止に成功したならば、魔物に取れる手といえば獣毛で剣を殴りつけて仕切り直しを図る程度となろうか。
その後の有利・不利については言うまでもなく――

成功してしまえばひどく脳が揺れる危惧さえもあったが、それについては鎧が重厚さに見合った働きを見せるのかもしれない。
そして魔物の業としては読み難いこの攻撃への受け身が叶えば、威力全体を軽減しうる。
致命的なまでの制圧力と、それを成立させるために要する数多の要素。身を削って実践する殺意こそが、それらを必殺の域へと至らしめた。

そうして圧にひしゃげたとしても――たとえ、脳が揺れてしまっても。
魔の技と策を前に、潰えず、人々の無念を晴らし人の世を守るための戦いこそが――この状況で貫くべき、彼女の戦いなのだろう。
如何なる結末がもたらされるかは未だ誰も知らず。ただ互いの死を、人と魔が求めあうかの様でもあった。
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