- -pv
スレッドの閲覧状況:
現在、- がスレを見ています。
これまでに合計 - 表示されました。
※PC・スマホの表示回数をカウントしてます。
※24時間表示がないスレのPVはリセットされます。

ここだけポケモン世界の都市ロールスレ

1mMItnivpDI:2018/04/14(土)21:09:34 ID:01g()
ポケットモンスターの世界へようこそ!
ここはナナイタシティ、とある地方の中核都市で、自然と街が共存する大都会。
今日も此処で人はポケモンと共に集い、戦い、力を合わせて暮らしている。
街の至る所でトレーナー達が腕を磨き、またポケモンと一緒に絆を深めているのだ。
さぁ、キミも夢と冒険とポケットモンスターの世界へ!

【ルール】

・タイプの相性・特性・性格補正などは絶対ではありません
・技の効果も絶対ではありません、アニメのように自由に戦ってください
・バトルはとにかくいい感じにプロレスすればOKです
・手持ちは最大3匹まで、バトルは1vs1制
・禁伝・幻無し、UBと準伝は応相談
・Z技、メガ進化、その他一撃必殺技などは応相談

wiki
https://www65.atwiki.jp/openpokemon/pages/1.html
2ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/14(土)21:40:52 ID:01g()
「ゆらゆらー、いい加減その辺にしてあげなよ」

昼間でも薄暗いナナイタシティの路地裏。
バッドボーイズが折り重なるように倒れ、ポチエナやらデルビルが戦闘不能になり、ボールが転がっている。

「いててててギブギブギブギブ!助けてジュンサーさぁぁぁぁ・・・・・・」

トレーナーに容赦なく締め上げを食らわせているユレイドル。バッドボーイは真っ青になって意識を失い、やがて路地裏に静寂が戻る。
大きなランクルスに乗っかってその惨劇をただ眺めている、糸目のサイキッカー風の少年。

「悪タイプなら何でも勝てるって訳じゃないでしょうに」
「・・・・・・まぁきあいだまのいい練習になったね、ぷにぷに」

「ぷにー!」

ぷにぷにと名づけられたランクルスは余裕しゃくしゃくで返事を返す。
3ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/14(土)21:54:36 ID:Z6k
とあるTV局の屋上から飛び立つチルタリス
それに乗った少女、今日も少し抜け出して、ポケモンバトルに向かうのだった

「・・・あ、チルチルー、あの広場、近くに劇団があるじゃん、あそこなら人集まりそうじゃない?」

少女はそう言って、チルタリスに支持すると、チルタリスも首を縦に振って答え、その広場に降りる

「ありがとチルチル」

運んでくれたチルタリスのほっぺに軽くキスすると、モンスターボールへと

「さってと、誰かいるかなー」

そう言って、周囲を見渡すのはサングラス、金髪にミニスカが特徴的な少女であった
4オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/14(土)21:55:31 ID:2P9
>>2

薄暗い路地裏の奥の闇が突如として光った、直後、折り重なる様に倒れたバッドボーイズ達が爆発と共に吹き飛んだ。
路地裏の闇から姿を現したのは一匹のジヘッド。

「なら試してみるかい?
うちのジヘッドに勝てるかどうかな。」

その背後には白のジーンズを除いて黒に統一されたジャケット、ニット帽、マフラーを着用した少年である。
ピタヤとほぼ同年代に見える青年はモンスターボールを片手に喋る掛ける。
少し伸びた前髪に手を当てるとニィっと笑い、モンスターボールをピタヤに向けた。

「俺はポケモントレーナーのオトギリ……
あの瀕死のトレーナーとポチエナ共の山を見るに中々の手腕と見た……
ここで俺と勝負して貰おうか!」

オトギリの威勢の言い言葉と共にジヘッドがオトギリの前に躍り出た。
『トレーナー同士、目と目が合ったら勝負』……そんな言葉もあったかもしれない。
何にせよオトギリはやる気に満ち溢れていた。
5スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/14(土)22:02:27 ID:3Xh
>>3
少女が広場を探すと、明らかに他とは一線を画す容貌のトレーナーが目を惹くだろう。
仮面とマントを身に付けたタキシードの男性だ、その異様な容姿は一目見て忘れられるようなものではなく、何処かで見たような気がするかもしれない。
……そう、ナナイタシティの掲示板や塀に貼られた劇団のポスターの中に彼の姿が写っていた。

そしてその男はミカがチルタリスに乗ってきたのを見ていたようで、和かな笑顔を浮かべながら近づいて来る。

「やぁ、こんにちはお嬢さん」
「今のチルタリスは君のポケモンかい?チラリと見ただけで素晴らしい毛並みだと気が付いたよ」
6ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/14(土)22:10:25 ID:hn2
「1、2!1、2!」

「リ、オ!リ、オ!」

電線のムックルが鳴き散らして日の出を知らせる朝っぱら、まだ人影のまばらな街頭には声を合わせてランニングをする少年とリオルの姿があった。

「リッ、リオ~~」

リオルの方は疲れているのかすでに、目が引き絞られて不等号の並びになっていた。

「おい、リオル!遅れてるぞ!まだ三時間しか走って………三時間!?」

少年は動きの鈍ったリオルを振り返ると、時計に目を降ろして驚愕した。
たしかランニングを開始したのは早朝4時だ。思い出して、慌てて足を止める。

「ごめんなリオル~~!、えっと、どこだっけ、キズぐすり…あれ、ない?」

やる気が先走って空回りしてしまうのが欠点だと自覚していたソウジは反省してリオルに駆け寄る。
腰に付けたポーチを漁る…が、ない。キズぐすりがあれば、ポケモンの大体の状態異常は回復するのだが・・・
ショップ、ポケモンセンター。あるいは頼れる人が居ないか、あたりを見回した。
7ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/14(土)22:11:27 ID:Z6k
>>5
近づいて来た男の容貌は見覚えがある、ポスター等は見た事があるからで

「へー、なかなか見る目あるね、おじさん」

少女はチルタリスが褒められた事に少し上機嫌に答える
尤も、この少女もサングラスをかけているとはいえTV等で見た事あるかもしれないが

「ポケモンを見て近づいて来たって事は~、おじさんもトレーナー、なのかな?」

少し口元を緩めて、そう尋ねる
8ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/14(土)22:11:39 ID:01g()
>>4

「あぁ・・・今日は無駄に連戦だなぁ・・・薬も安くないのに」

やれやれ、といったジェスチャーで帽子を被りなおす少年。
よっ、とランクルスの背中から降り、手持ち無沙汰な様子のユレイドルをボールに戻す。

「まぁぷにぷに、悪いけどたのむよ」

「ぷにっ!」

来るなら来い、と言った顔つきでジヘッドに構えるランクルス。
両者に一寸の沈黙が流れる。

「このピタヤ、僭越ながらお相手させて頂きます」

ピタヤの深々とした礼と同時に、ランクルスはサイコパワーで鍛え上げた豪腕を思いっきり振り下ろした。
9オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/14(土)22:19:17 ID:2P9
>>8

「そう来なくちゃなぁ……ククク……行け!ジヘッド!お前の『牙』をお見舞いしてやれ!」

オトギリの号令と共にケンタロスの如くジヘッドはランクルス目掛け駆け出した。
途中、幾度かポチエナやデルビルにぶつかったが怯む事無くそれらを跳ね飛ばし、真っ直ぐとランクルスへと向かう。
同時にジヘッドがその巨大な口を開いた。
「噛み砕く」。巷ではそう呼ばれる悪タイプの主力技の一つ。

「「グオアアアア!!!」」

強力な顎を持つジヘッドの二つの頭の連続攻撃をまともに受ければエスパータイプは無事では済むまい。
10オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/14(土)22:19:51 ID:2P9
/途中送信!少々お待ちを!
11スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/14(土)22:22:13 ID:3Xh
>>7
「その通り、僕もトレーナーだよ、そして劇団員もやっているんだ」
「今日は劇団の宣伝をしようと思ってね、手伝ってくれる人を探しているんだけど…」

そう言ってスパーダは口元を緩めたミカを見た、どうやらお互い言わんとしている事が分かっているようだ。
トレーナー同士で目が合えばどうなるか、それはこの世界の決まりである。

「君、僕とポケモンバトルをしないかい?」
12セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/14(土)22:24:10 ID:kx1
>>6

ピュ~リロロ~。
そんな間の抜けた笛の音がその場に響く。音が響いてきた方を見ればそこには一人と一匹が。

「やぁ少年、朝っぱらから精が出ているようだね?」
「でも考えなしはいけないなぁ」

そう言ってセレーネはソウジの元へと歩いていく。
一見すれば怪しさ満点だが、セレーネが差し出した手にはキズぐすりが握られていた。
セレーネの傍のルカリオは無言でセレーネについてくる。

「受け取ってくれたまえ、ポケモンのことも考えてあげなければ可哀想だよ?」
「君のリオルも随分とお疲れの様子だしね」
13オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/14(土)22:28:32 ID:2P9
>>8

「……急所は外せ!」

ランクルスの剛腕をバックステップする形でジヘッドは回避……否、射程距離内でジヘッドは止まった。
振り降ろされる剛腕を受け、ジヘッドはその衝撃でオトギリの足元まで吹き飛んだがダウンする事無く堪えた。
ダメージは確かにあったが、全く問題では無いかの様子でジヘッドはランクルスを威嚇した。

「俺のジヘッドは唯のジヘッドじゃねぇ……。」

ジヘッドの右の頭の口内から微かに光が漏れる。

―――『進化の輝石』。

進化の可能性を捨てる事で所持したポケモンの耐久性を向上させる宝石である。

「ククク……行け!ジヘッド!お前の『牙』をお見舞いしてやれ!」

オトギリの命令と共にケンタロスの如くジヘッドはランクルス目掛け駆け出した。
途中、幾度かポチエナやデルビルにぶつかったが怯む事無くそれらを跳ね飛ばし、真っ直ぐとランクルスへと向かう。
同時にジヘッドがその巨大な口を開いた。
「噛み砕く」。巷ではそう呼ばれる悪タイプの主力技の一つ。

「「グオアアアア!!!」」

強力な顎を持つジヘッドの二つの頭の連続攻撃をまともに受ければエスパータイプは無事では済むまい。
14ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/14(土)22:32:10 ID:Z6k
>>11
「劇団の宣伝?ふーん、ポスターとか広告じゃ不十分なの?」
などと呟いたが、続くスパーダの言葉に対して、にっこりとしました
「当然!その為にわざわざ抜け出して・・・いや、まぁここに来た訳だし!」

モンスターボールを構えてやる気まんまんで

「私はポケモントレーナーの・・・通りすがりのドラゴン使いよ!勝負と行こうじゃない!」

名前は隠す、そして先程のボールからチルタリスのチルチルを出す

「一番手はチルチル!」
15ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/14(土)22:40:23 ID:hn2
>>12
「あなたは…?」

近付いてくる笛の音に振り返ると、放浪者のような女性が横笛を口に立っていた。
それは率直に評価すれば、鼓膜に痛みを覚えるような聴くに耐えない音色だった。
少年はすこし身構えたが、セレーネが差し出したキズぐすりを見て、顔を明るくした。
ソウジは善意を持って応じてくれる人は信用することにしていた。

「あっ、ありがとうございます!」

受け取ったキズぐすりを、早速肩で息をするリオルに吹きかける。
何かと消耗の多いポケモン用のキズぐすりは栄養満点だ。人間に使えば劇薬並の影響すら及ぼすそれは、たちまちリオルの体力を回復させるだろう。

「すみません、オレ、一人でつっ走るからテッポウオみたいだっておじいちゃんからよく言われてて…」

リオルの容態が安定したのを見て、ソウジは改めて頭を下げる。
一方、リオルの目はセレーネの側に佇むルカリオに向けられていた。
もし、自分が成長したら……その頼りがいのある姿は彼にとって憧れの的だった。
16スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/14(土)22:42:50 ID:3Xh
>>14
「僕の劇団はポケモンと共にある、ポスターもいいけど活き活きとしたポケモン達を見せるのが一番なんだ」
「ここは人も多いしいい宣伝になるだろう」

ミカと距離を離し、モンスターボールを手に持つスパーダ。
3つある内の1つを手に、ゆったりと構える。

「…では、僕も一番手を見せよう」
「魔剣の主人スパーダ!いざ参る!」

ミカの名乗りに対して雄々しい声を上げボールを投げる。
開いたボールから飛び出したのはふた振りの剣、地面に交差して突き刺さったかと思うと交差したままフワリと浮遊した。

「「ダンッ!ギールッ!!」」

二体一対のとうけんポケモン、ニダンギルだ。
17ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/14(土)22:52:09 ID:01g()
>>13

「・・・・・・ぷにっ!」

急所を外した感覚がランクルスにも伝わったのか、舌打ちをして振り下ろした手を引っ込める。

「輝石持ちのジヘッド・・・・・・ですか」
「高レベル進化持ちのトレーナーにはよく見かけますね・・・・・・まぁ、それなりに場数は踏んでいるとみて間違いないでしょう」

「何が来るか分かりませんよーぷにぷに、リフレクター」

「ぷにぃぃ~」

サイコパワーで作られた透明な鎧が物理攻撃をある程度弱める。
とはいえ、それは所謂「まもる」ではないので、攻撃を跳ね返す事はできない。

しかしあえてガードに出ないのも算段のうちである。

「ぷっ!・・・・・・にっ!」

両腕に噛み付かれるランクルス。しかしランクルスもそう易々と落ちる耐久力のポケモンではない。リフレクターで鎧を纏っていれば尚更。

「そのままきあいだま!」

「ぷにぃーっ!!!」
18ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/14(土)22:54:58 ID:Z6k
>>16
「よっし、それじゃあまずは・・・チルチル!挨拶代わりやっちゃいなさい!」

ミカがビシッと指を指すと、チルタリスはふわりと飛び、そして口から吐き出したのはりゅうのはどう!!

その口から広がる衝撃波がニダンギルへと襲いかかる!!

しかしニダンギルには半減ではあるだろう、そんな事は分かっているが

(チルチル・・・はがねに有効な技ないんだよね・・・もしかしてこのおじさん・・・はがね使いならやばいかも・・・)

などと思って少し表情は不安になってる様子
19セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/14(土)23:01:06 ID:kx1
>>15

「なぁに、ただのしがない旅人さ。困っている人を見逃せない…ね?」

吹いている本人は満足そうな顔をしているが唯一隣のルカリオだけは顔をしかめているようにも見える。
キズぐすりを受け取るソウジを見れば楽しそうに頷いている。

「礼には及ばないよ、困っている時にはお互い様さ。ふふ、テッポウオか。言い得て妙…かな」
「……おや?そちらのリオルはうちのルカリオに何かあるのかな?」

『……?』

ルカリオは不思議そうな顔をしてリオルを見つめる。その佇まいは立派なもので、放つオーラも強者のそれだ。
20スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/14(土)23:05:31 ID:3Xh
>>18
「ニダンギル!ワイドガード!」

「「ギィルッ!!」」

スパーダの指示を受けたニダンギルは交差した体制で防御姿勢を取る。
その防御力は進化系であるギルガルドには及ばないが、しかしこのニダンギルのワイドガードは堅牢だった。

「お返しだ!つじぎりを食らわせてやれ!」

「「ギルルッ!!」」

そしてりゅうのはどうを耐え切ったニダンギルは、反撃としてチルタリスに飛びかかる。
2つの刃が空中で分かち、左右からすり抜け様に斬撃を放った。
21オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/14(土)23:09:17 ID:2P9
>>17

(リフレクターかッ……!)

「「グオオッ!?」」

噛んだのも束の間、ジヘッドは想像以下の手応えに戸惑った。
刹那、オトギリの額を冷や汗が伝った。


「―――!まずい!ジヘッド、避け……」

突如として巻き上がる爆風。オトギリは思わず怯み、右腕で視界を遮った。
ランクルスの気合玉。並大抵の悪タイプのポケモンにとっては致命的な一撃になる事は必至。
脳裏に浮かぶのは瀕死になったジヘッドの姿。

「ジヘッド……ッ!」

「「グオオオオオオ!!!!」」

だが、オトギリの予想は良い意味で裏切られた。
煙の中に姿を現したのは威勢良く吠えるジヘッドの姿である。
だが、見掛け程元気では無い。流石に今の一撃は響いた様で、もう一撃食らえば無事では済まないだろう。

「……悪いな、トレーナーの俺がお前を信用しなくてどうするんだって話なのによ……」

オトギリがニヤリと笑う。

「ジヘッド!『あくのはどう』!」

「グオオオオオオ!!!」

ジヘッドが咆哮と共に周囲に赤黒い衝撃波を放った。
だが、ジヘッドの攻撃はそれだけでは終わらなかった。
次の命令が何かわかっているのか、ジヘッドは両足の爪を足元に食い込ませ、低い体勢で構えた。

「……リフレクターなんかぶち破れ!」

―――刹那、ジヘッドがロケットの如く飛んだ。
あくのはどうと共に凄まじい速度でランクルスに肉薄する。

「『もろはのずつき』!」

自分自身への反動を一切顧みないその強力な頭突き。
命中しても、しなくても、その反動は計り知れない。勢いに任せた一撃が波動と共にランクルスへと迫る。
22ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/14(土)23:15:25 ID:hn2
>>19
「ははっ、そうっすね」

案外人当たりの良さそうだと分かって、ソウジも年齢相応の垢抜けた笑顔で対応する。

「リオルが…?」

パートナーの事を言われたのでその方を向き直ると確かに、リオルの視線はセレーネのルカリオに釘付けだった。
この目は……見覚えがある。忘れる筈もない。
これは、この見開かれた目は、彼が『燃えている』ときの眼光だった。

「リオル、お前もしかして…勝負したいのか?」

ソウジははっとした表情でリオルにそっと問い掛ける。
リオルは拳を強く握った。

「リ、…リオ…!」

リオルは声を振り絞って頷く。
こわばった身体はルカリオのオーラに怖気づいていることが明らかだったが、その目だけは決してルカリオから離されていなかった。

「…いいっすか?」

相棒の熱い思いを汲んで、トレーナーであるソウジもすっかりその気になってしまっていた。
セレーネに視線を合わせる。トレーナーの目と目が合ったら…それはポケモン勝負の合図だ。
23ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/14(土)23:17:58 ID:Z6k
>>20
「チルチル!!急所は外して!!」

「チルルゥ!!」

辻斬りに対し、なんとか回避しようとするチルタリスだが避けきれずに、受ける

「チルゥゥゥウ」

と叫び、地上へと落ちるがまだ体力はあり、じっとニダンギルを睨んでいて

「・・・このままじゃやばい、相手は鋼、チルチルじゃあ分が悪いし・・・戻って!」

ミカはボールを出して、チルタリスを戻すと

「んじゃあ、鋼相手にはやっぱり炎よね、てことで!!行け!カゲッチ!!」

新たに出したモンスターボールから現れたのは

「ガルルルゥゥウ!!」

燃えるしっほの先、大きな身体に大きな翼
ドラゴン使いと名乗っていたのに繰り出したのは、、リザードン!!
24セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/14(土)23:26:12 ID:kx1
>>22

「ふふ…勇ましいパートナーだ」

ルカリオもその瞳の意味に気付いたのか、リオルをしっかりと見据えて逸らさない。
強者だからと言って奢ることはない、そしてこんな視線を向けられれば尚更にだ。これに今応えなければいつ応える。

『………』

「あぁ良いとも…どうやらルカリオもやる気のようだからね」
「目と目があったらポケモン勝負の合図…いやはやなんて言葉だ――――あぁ、嫌いじゃないとも」

瞬間、ルカリオ、それにセレーネの瞳に力が宿る。力強いその瞳は"手加減"など一切しないという意思の表れ。
セレーネも旅人である以前にトレーナーだ。ならばこの状況、燃えないはずがない。

ソウジと距離を取りルカリオを前に出す。これでいつでもバトルはもう始められるだろう。

「じゃあ始めようか、先行は譲ろう。どこからでも掛かっておいで?」

『……ふんッ!』
25ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/14(土)23:30:53 ID:01g()
>>21

「ぷにぷに、じこさいせい」

ランクルスもまた鈍足故、それ程急激に回避体制を取る事は出来ない。
故にランクルスは回避ではなく、回復で反撃のチャンスを得る。

「ぷにぃーっ・・・!」

波動がランクルスを貫くが、再生した上で体力をそれなりに残す程度には耐える。
問題はその後から付いてくる諸刃であった。

「ぷにいいいいい!!!」

ずががががが!と両手で押さえる諸刃。多少リフレクターに補強は掛けているとはいえ、その威力は別物。
サイコパワーで地面にガリガリ傷を付けながら、ジヘッドの諸刃を真正面から防御する。

「・・・・・・ふむ」

砂煙を上げて一時の静寂。
リフレクターがあるとはいえ、中途半端な体力で諸刃の威力を正面から受けたランクルスは・・・

「ぷ・・・・・・ぷに・・・」

地に倒れ伏した。
ピタヤは、落ち着いて拍手でオトギリを讃える。

「お見事、お見事でございます。流石に鍛えられた悪タイプには敵いませんね」
26ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/14(土)23:37:56 ID:Z6k
>>23は破棄で
>>20
「チルチル!急所は外して!!」

少女はそう言うが、辻斬りに対してチルタリスは避け切る事も出来ずに

「チルゥゥゥウ!!」

身体にそのダメージを受けて落下し、ニダンギルを睨んでまた立ち上がる

「このままじゃ形勢は不利・・・チルチル!!動きを止めるのよ!!」

「チルゥ!!」

そして、チルタリスはその指示を受けると
いい感じに歌い出す!そして、その歌声は聴いたものを眠らせる効果があるが果たしてーーー成功するのか!?
27ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/14(土)23:41:09 ID:hn2
>>24
「ありがとうございますっ…」

「いくぞリオル、全力だ!」

「リオッ!」

ソウジの呼びかけにリオルは威勢よく振り向いて返事する。
腰を落として、掌を曲げる拳法の体勢を取った。息をゆっくりと吸って吐く。
波動がみなぎるのが、同じ手合いであるルカリオにも見て分かるだろう。
まだまだ量は少ないが、練度は悪くない。それなりの勝負になるはずだ。

「先行いただきます!リオル、初手はでんこうせっかぁ!」

ソウジの号令の直後、思い切り押し引いたぜんまい四駆のように、リオルがコンクリートを蹴って駆け出した。
電線に止まっていたムックルたちが一斉に飛び去る。
あたりはまだ朝方なので長引かなければ二次災害の心配も要らない。リオルは一瞬にしてルカリオとの距離を縮める。

「眼の前で止まれ!そこからスカイアッパー!」

ソウジの指示に一瞬のタイムラグもなく、息ピッタリにリオルは動く。
リオルは瞬時に足を曲げて体長を半分ほどにすると一息置いて、堅く握った拳をルカリオの顎めがけて繰り出した。
進化前の個体は小柄ですばしっこいので、目で追いにくいという利点もある。だが、ワザの精度は相手からすればまだまだだろう。身を大きく引けばかする程度に躱せるが、どう出るか。
28スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/14(土)23:43:34 ID:3Xh
>>26
チルタリスを辻斬りしたニダンギルは、再び交差する体制を取りながら振り返る。
このまま畳み掛けんと一気にチルタリスへと距離を詰めるが…

「…ッ!ダメだニダンギル!下がれ!」

歌い出すチルタリス、聞こえてくる歌に対応する間も無くニダンギルはその歌声に囚われてしまい…

「「ギィィ……ルゥゥゥ……」」

うとうとと、動きを止めて眠り始めてしまった!
29オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/14(土)23:46:30 ID:2P9
>>25

―――衝突。
やがて砂煙が晴れる。

「「グオオオオオ!!!!」」

ぶつかり合いを制したのはランクルスだった。
地に倒れ伏したランクルスを前にジヘッドは咆哮を上げる。
……だが、その直後ジヘッドもその反動を受けてその場で力尽き倒れた。
戦闘終了時、立っていた者が戦いの勝者。然し両者倒れたこの状況……即ち、勝負は引き分けである。

「ジヘッド……!」

オトギリはジヘッドに駆け寄り、抱きかかえた。

「「グ、グ……」」

心配させまいと笑みを浮かべるジヘッド。だが最早動く事すら叶わない。

「良くやった……ゆっくり休んでくれ。」

オトギリは瀕死のジヘッドをモンスターボールに戻し、立ち上がるとピタヤを見た。

「……ふん、お前も中々やるじゃないか。
エスパータイプで悪タイプに勝つなんて中々出来る事じゃないぜ。
あのランクルスとのコンビネーションも素晴らしいものだった。」

オトギリもまたピタヤを称えた。

「……改めて自己紹介させて貰うぜ。俺の名はオトギリ。
相棒のジヘッドとコロトックと一緒にチャンピオンを目指して戦っているのさ。
……ピタヤと言ったな。アンタとはまた戦える、そんな気がするぜ。」

オトギリは右手を差し出し、ピタヤに握手を求めた。
30ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/14(土)23:48:12 ID:Z6k
>>28
「・・・ここがチャーンス!!!」

バッと手を出して、激しく動いたからかサングラスをその勢いで吹っ飛ばした少女

「チルチル!!全力であれをお見舞いしてあげなさい!!」

しかし高揚して、サングラス外れた事に気づいてないミカはそのまま命令

「チルルルルゥゥゥウウウウ!!!」

そしてチルタリスは月の光を集めると、その光を球状にして放つ!!!
チルタリスの得意技、ムーンフォースを繰り出した!!

「いっけーー!!」

一直線にニダンギルへと迫る!!
31セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/14(土)23:58:10 ID:kx1
>>27

『……ワォン』

「へぇ、筋は悪くないということかなルカリオ?」

リオルが波動を練るのを見ればルカリオも同様に波動を練り始める。
その練度はかなりのもので、波動が拳に漲り僅かに目で視認できるほど濃いものだ。

「……まずはお手並み拝見といこう…ルカリオ、躱せ」

『バウッ!』

でんこうせっかからのスカイアッパー。選択肢としては悪いものではない。それにトレーナーとの相性も良い。
だがやはり、まだ足りないものがある。
技の精度、完成度…まだまだあるだろうがやはり一番大きいのは"経験"だろう。

ルカリオは身を引きはするもののそこまでリオルとは離れていない。その代わりに頭を後方へと下げてリオルのスカイアッパーはほんの僅かに掠る程度。
そして攻撃を放った直後は一番無防備な状態になる。

「ルカリオ、はっけいだ」

スカイアッパー後の無防備な腹部へとルカリオはリオルが何かしらの対処を取らなければその掌を添えようとする。
もし添えられたら――――次の瞬間に凄まじい衝撃がリオルの腹部を襲うだろう。
32スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/14(土)23:59:16 ID:3Xh
>>30
「ニダンギル!しっかりするんだ!ニダンギル!」

「「ギルッ!?」」

眠っていたニダンギルをスパーダの呼び掛けが目を覚ます、しかし既にチルタリスはムーンフォースを放った後だった。
眼前に迫る光の塊に対し、ニダンギルは一歩も(足は元々無いが)引かず睨み付ける。

「よし…行けるな、ニダンギル!」

「「ダダンッ!ギルッ!」」

目を覚ましたニダンギルはお互いの手をガッシリと掴み合い、対象に大きく広がった形態となる。
その形態のまま互いが互いをぶんまわし、回転する巨大な刃となった。

「「ギィィィィィルルルルルルルルルル!!!」」

立ち向かうはムーンフォース、どうやら威力は拮抗しているようだが、どちらかがあと一押し出来る何かがあれば容易にそのバランスは崩れる。
逆に一瞬でも気を抜けばその瞬間に押されてしまうだろう、さて、それはどっちが先か───
33ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/15(日)00:11:11 ID:SD9
>>32
「頑張ってチルチル!!」
「チィィイイイイルゥゥゥウウウウ!!」
ミカはチルタリスを応援し、チルタリスは奮起して、ムーンフォースに全力を注ぐ!!
が、チルタリスの力が尽きて来たのか押され始める

「くぅぅううう!!まずいーー!!チルチルー!!耐えるの!!何とかしなさいよーーー!!」

少女はチルタリスに言う
「チィルウウウ!!」

そして、ムーンフォースは押されてしまい、、、チルタリスの方へと跳ね返って来たーーーが!!!

「チルゥゥゥゥウウウウ!!」

なんとチルタリスはそのムーンフォースに、突進!!!そのまま光に呑み込まれていき

「ちょっと!!何やってんの馬鹿ぁぁぁああああ!!!!」

少女は叫ぶが、その光の中、最後の力を振り絞って、文字通り一直線
チルタリスの最後の力を振り絞った突進がニダンギルへと迫る!!!

しかしチルタリス本人も、ムーンフォースを受けた事によりボロボロ、その一撃を凌ぎきれば、最早闘う力は残ってないだろう捨て身での突撃であった!!
34ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/15(日)00:11:42 ID:kyg()
>>29
「いえいえ、オトギリさんもよいおてまえで」

社交辞令的に握手に応じるピタヤ。
手を交わした時、サイキック的な力で何か読み取られたような気がしたが、恐らくは気のせいか。
元気のかけらを食べさせると、ランクルスは傷と埃だらけになりながらも目を覚ます。

「ぷにー・・・」

「ぷにぷに、僕も連戦で疲れた、ポケセンに戻ろうか」

「ぷに」

「ユラァー・・・・・・」

「ゆらゆら、この勝負は終わりました、百裂拳の構えはやめなさい」

いつの間にかボールから出てきてピタヤの背中に張り付いていたユレイドル。
血の気の多い性格のようでシュッシュッとシャドーボクシングをして威嚇する。

「わたしはピタヤ、旅のサイキッカーですよ。自慢じゃありませんが野宿の達人なのです」

ふふん、と胸を張るピタヤ。それほど褒められた事でもない気がするが。

「時にオトギリさん、最近この街で不審な人の集まりを見かけませんでした?」
「そう例えば・・・・・・顔を隠した集団とか」
35スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/15(日)00:23:37 ID:ojJ
>>33
「「ギルギルギルギルギルギルギルギルギルギルギルギル!!!!」」

「いいぞニダンギル!そのまま押し切るんだ!」

ムーンフォースに負けず退かず、光を削り取る様に斬撃を繰り返すニダンギル。
やがてその光は剣に押されつつあり、勝利を確信したのかスパーダはニダンギルを後押しした。
跳ね返されるムーンフォース、それを見た誰もがニダンギルの、スパーダの勝利を確信しただろう。

───が。

「───何ッ!?まさかそんな事を!!」

一体誰が考えようか、跳ね返されたムーンフォースに自ら飛び込みながら突進するなどと。
ムーンフォースの光を纏いながら突っ込むチルタリス、ニダンギルは未だ回転を続けるもムーンフォースとの打ち合いで消耗していた。

「「ギルルッ!?」」

更に不意を打たれたのもあり、チルタリスの強力な一撃を食らったニダンギルは強い衝撃を受けて弾き飛ばされる。
攻撃動作中なのもあり受けたダメージは大きい、地面の石畳に突き刺さったニダンギルは、そのまま目を『×』にしてくたりとうな垂れた。

「……成る程、そんな攻撃があったとはね」
「よくやったニダンギル、戻れ」

戦闘不能となったニダンギルをボールに戻し、「完敗だ」と手を叩くスパーダ。周囲から歓声が上がった。

「最初に思った通り、素晴らしいチルタリスだ、しっかりと回復して労ってあげてほしい」
「それと……素性を隠すならサングラスはちゃんとかけておくことだ」

ニッコリと微笑んだスパーダはミカに歩み寄り、彼女とチルタリスの健闘を賞賛しつつ、何かを差し出した。
それはミカが興奮の余り弾き飛ばしたサングラスである。
36ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/15(日)00:29:52 ID:ON0
>>31
「(よしっ…!)」

着々と目標地点へ向かうリオルの拳を見て、ソウジは直撃を確信した…が。
風をまとうアッパーがルカリオの顎を突こうとする直前、たった十センチほどの移動でそれは躱されてしまった。

「リオ――――――!」

それほどの余裕を見せるルカリオに、反撃が可能なのは明らか。
繰り出される掌を目では追えても、身体はすでに宙の上。どこにもすがる場所などない。無残にもはっけいを腹にお見舞いされてしまう。
ソウジから見た光景はまるでスローモーションだった。中点を突かれたリオルの身体がくの字状に曲がり、気付けばその幼い体躯は、小さなうめき声と共にたやすく吹き飛ばされていた。

「リオル!!」

街灯に叩きつけられたリオル。揺らぐ柱をずるずると背から滑り落ちるリオルにソウジは駆け寄る。
リオルは荒々しく息を吐いて歯を食いしばっていた。…レベルの差は明らかだった。
ソウジはこれ以上、相棒が傷つく姿を見たくないと思った。

「リオル、やっぱりもうっ―――――」

「リ…オォッ!!」

ソウジの弱々しい声を遮るように、リオルは額のタスキをソウジに投げやる。
反撃の意志あり。リオルはそう告げていた。そう、頭に巻いていた「きあいのタスキ」が彼にチャンスを与えたのだ。
―――――リオルはまだ『HP1』の状態でも、耐えている。

「リオル………」

ソウジは覚悟を決めた。ここで相棒を引かせたら、トレーナー失格だと固く決意した。

「よしっ、もう負けたっていい、仕掛けたからには、俺たちもちゃんと切り札を出さなきゃなっ!」

ソウジのクシャッとした笑顔。リオルは静かに頷くと、また駆け出す。
繰り出したのは先程と同じ、でんこうせっかだ。再びルカリオとの距離を一瞬で縮めたが、リオルの動きは先程と違い、目の前で止まる事がない。
それも、前より素早さが増している。何が起こったのか―――――目ざといルカリオなら分かるはずだ。
僅かに、リオルは地面に浮いていたのだ。
摩擦をなくした状態で、コンクリートを滑って加速しているのである。
ルカリオを育てたセレーネなら、その芸当に覚えがあるはずだ。
そう、『リオルはでんじふゆうを覚えられる。』

リオルはなんと、その小柄な体格とでんじふゆう滑走のスピードを生かし、ルカリオの股の間をすり抜けたのだ。
その直後。リオルが思い切り腰を捻って斥力を反対に向けると同時に、ソウジは叫んだ。

「リオル、『インファイト』―――――!!」

ソウジが指示した技――――それはその名の通り。ゼロ距離にまで相手に近づき、全ての防御を捨てて全力のラッシュを叩き込む大技だ。
それをリオルは、この距離でルカリオに、しかも背後から行おうというのだ。
動きに疲れはにじみ出ていたがそれでも。リオルはその一撃という一撃に全身全霊の力を込めていた。
37オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/15(日)00:30:19 ID:cxw
>>34

「……?」

握手の際にサイキック的な力で読み取られた様な奇妙な感覚がした。

「ぎぃ……」

不意に背後を見ると同じくいつの間にかボールから出ていた彼のもう一匹のポケモンであるコロトックがピタヤのユレイドルを威嚇していた。
クールな性格だが非常に喧嘩っ早い。
過去には怒り、ガブリアスやバンギラスと言った大物相手にも果敢に挑んだ事もあった。

「ほう、お前はサイキッカーなのか。」

怒れるコロトックをボールに戻しながら、先程の感覚にも合点が行くと納得した様子で答える。

「不審な人の集まり……?」

オトギリは腕を組んで何か心当たりが無いか探った。
バッドボーイやバッドガールの様な不良であればお洒落だと思っているのか髑髏入りのマスクをしている事が多い。
そんな輩は何十、いや、何百人も葬り去って来たがピタヤの問う様子から察するにあんなチンピラ共の事は聞いていないのだろう。
だが、一つ脳裏を過った。

「……いや、見掛けなかったな。
だが……もしかするとお前が探しているのはカントー地方で活動していたロケット団みたいな類の犯罪集団か?」

ロケット団。
オトギリにとっては思い出したくも無い忌々しい単語である。
38ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/15(日)00:32:49 ID:SD9
>>35
突進したチルタリスはそのまま、勢いよく地面に滑り、倒れたまま

「チルゥ・・・」

満身創痍の身体で立つ事すら覚束ないが、ニダンギルを倒した事により、表情は笑っている
そんなチルタリスにミカは駆け寄り、頭を撫でて

「・・・馬鹿」

と、笑いながらも言う、そしてスパーダが拍手でやってきた、チルタリスを褒めてかつ、労ってやって欲しいの一言に

「うん、おじさんのニダンギルもとっても強かったよ、回復させてあげてね」
とウインクして言った後に、サングラスをスパーダから渡されると

「ーーーーーあ」
それを素早く受け取り、素早くかける、ぶっちゃけ手遅れだろうが

「・・・しまったぁぁぁぁぁぁ」
顔赤くしてる

「まぁわ、私の名前は・・・名乗ってないけど分かるよね、ドラゴン使いのミカよ・・・スパーダさん、いい勝負だったよ」

そして、立ち上がって握手をしようと右手を差し出して
39スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/15(日)00:40:14 ID:ojJ
>>38
「ああ、いい勝負だった!次があったら負けないよ」

顔を赤らめながら握手を求めるミカに、笑顔で応える。
ミカがどの様な人物であるかは最初から分かっていた、スパーダ自身は彼女がアイドルだからと言ってどうこうするつもりは無いが。
……ただ、大きな宣伝になったのは間違いない、周囲の観客の反応を見るスパーダは強かだった。

「暇があったら是非とも僕たちの劇団を見に来てくれたまえ!友達も誘ってね!」
「それじゃあ僕は行くとするよ、そろそろ稽古の時間だからね!」

バサリと大袈裟にマントを翻し、スパーダはその場から歩き去る。
道行く人々の拍手に頭を下げて、何処か異人めいたその男は歩いて行った。

/お疲れ様でした!
40ミカ◆2NA38J2XJM :2018/04/15(日)00:48:32 ID:SD9
>>39
「えへへ、またいつでも相手になるよ」

にっこり笑顔をスパーダに返す

「もちろん、劇団にも行きたくなっちゃったし」

そう答えると、稽古の時間と言ったスパーダに、手を振って見送ると

「・・・私もそろそろ帰ろうかな、チルチル・・・は厳しいよね流石に」
「チルゥ・・・」

チルタリスの頭を撫でるとボールへと戻して

「後で回復させてあげるからちょっと我慢しててね、んでカゲッチ」
「ガルルルゥ」
ボールから出したのはリザードン、そのリザードンの背に乗ると

「カゲッチは暑いからあーんまり乗りたくないんだけど、この際仕方ないし、飛んで」

「ガルルル・・・」

そう言うとリザードンは少し悲しそうな表情になり、飛びだした

「あー、別にカゲッチが嫌って訳じゃないよ」

苦笑いしてリザードンを励まして、帰って行きました

//こちらこそロールありがとうですよー!途中ややこしい事してすみませんでした!
41セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/15(日)00:50:12 ID:UZZ
>>36

「……眩しいね、あぁ」

『…………』

今までから少年とリオルの間に絆が芽生えていることは察せた。しかし、それはこちらの想像以上のものだったらしい。
その姿はあまりに眩しく、そして遠い。あの頃の自分には無かったそれをこの少年は持っている。
逆境に立ち向かう術を、パートナーと共に薔薇を歩く術を。
この少年とリオルは、きっとまだ強くなる。

「今の君たちに巡り会えたことを本当に感謝しよう」

彼らならば、いつか"あれ"さえも使いこなしてしまうかもしれない。
未だ自分でさえ使いこなせない、いや…使う資格が無い"メガシンカ"を。

「しかし…それでももう少し考えるべきだ。同じ技を二度も――――いや…違う…!?」

明らかに先ほどよりもスピードが増している。
こうそくいどうなどでは無いはずだ。じゃあこれは――――

「っ…なるほど、タネはそういうことか…!」

でんじふゆう。
その技は確かにセレーネも記憶している。だがまさかこの土壇場でそれを技に組み込んでくるとは予想外だった。
咄嗟のことにルカリオも反応が遅れて背後を取られる形になってしまう。

「面白い…面白い…!!」
「ならばこちらも応えようルカリオ!『インファイト』!!」

『ワォオオオンッッ!!!』

背後を取られた。しかし素の対応力ならばルカリオは相当なもの。
トレーナーの指示が来る前に背後を向き、そしてリオルのインファイトに応えようと己の拳を同様に叩き込んでいく。
リオルの拳とルカリオの拳。両者の拳が何度もぶつかり合い周囲に凄まじい風圧を生み出す。
お互いがお互いに全身全霊の一撃を放ち続けている。その様子は鬼気迫るもので、どちらが勝っても不思議ではない拮抗した状態となっていた――――
42ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/15(日)00:53:20 ID:kyg()
>>37

「ぷにぷにぷに、ぷにぷに、ぷにぃぃーっ、ぷに」

「ゆらぁ・・・ゆらり」

ランクルスはユレイドルに諸刃の威力を説明してなだめている。
エスパータイプは押しなべて賢く表現力も豊かである。意思疎通は簡単なのだろう。

「いえ、ロケット団のように大っぴらに活動を宣言しているような集団ではありません」
「ただ・・・そう、暴力的な人々ではあるようで、特にあの時ゆらゆらが居なければ今頃私は・・・」

「・・・・・・いえむしろ、特に心当たりが無ければそれに越したことはないのですよ」
「路地裏で集団を見かけたので何事かと思ったら、不良たちの大集会だっただけです」

「ぷーにっ」

ランクルスがピタヤを掴んでまた頭の上に乗っける。ユレイドルもボールへ戻る。

「これは私のメッセージナンバーです、特に怪しいと思った集団を見かけたらご一報ください」
「あなたを腕利きと見込んでの事です。それでは。」

そう言って、少年は路地を去っていった。
43オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/15(日)01:06:03 ID:cxw
>>42

「……そうか。」

ピタヤも何やら訳ありの様だった。然し深く詮索しない方が良いだろう。
誰にだって何かしらの辛い過去はある。それはオトギリ自身良く分かっている事だった。


ジヘッド……

コロトック……

そしてオトギリは自らのジャケットの下に隠された三つ目のボールに軽く手を添えた。
三つの中でも一際古いボール。

「……何にせよ暴力的な集団か。わかった。
そういう輩がこのシティに居るのであればそれを野放しにしちゃいけねぇよ。」

オトギリはピタヤのメッセージナンバーを受け取ると懐に仕舞った。

「んじゃあな、またいつか。」

ピタヤが背を向けるのと同時にオトギリもピタヤに背を向け、ピタヤとは真逆の方向へと向かう。
会うのはこれが最後ではない。
またいつか会えるだろう。

……そんな根拠の無い予感をオトギリは感じていた。
やがてオトギリの姿は路地裏の闇に飲まれ、見えなくなった。
44ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/15(日)01:18:03 ID:ON0
>>41

大きく身体を振って放つ右手、左手。
拮抗する一撃一撃をリオルはがむしゃらに楽しんでいた。
吹き荒れる風圧の向こうを、ソウジは目を潜めて見守った。
塵が飛ぶ。捨てられた新聞紙はとぐろを巻く。空っぽのコーラ缶がカランカランと音をたてて壁を打った。

リオルは目の前が霞み始めていた。やはりいくら拳を打ち込んでも、打ち込んでも。
ルカリオのインファイトは一発一発が衰えることがなかった。
…やはり、まだ敵わない。その一瞬の諦観が最後の一発を生んだ。
すり抜けた拳の向こうに写ったルカリオの勇ましい表情を、リオルは今まで戦ってきたどのポケモンよりも、

―――――――かっこよかった。

「リッ」

ルカリオの下向きに放った拳がリオルの額へ最後の一発を落とし込む。
直撃の瞬間力をなくしたリオルは、身体を思い切り地面に叩きつけられ、身を大の字に伏せた。
…ひんし状態。激戦の末、勝利の旗はルカリオに上がったようだ。

「…り、リオル」

事が終わったのを見届けてから、ソウジはしばらく放心していた。
もう身体はピクリとも動かなかったが、リオルは虫の息でルカリオに弱々しい一瞥を送った。
感謝だった。こんな自分にも全力で戦ってくれたことを、何より感謝している目だった。

「強かったです………」

率直で、これ以上ない賛辞の言葉。ソウジはゆっくりと顔を俯いた。
45ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/15(日)01:20:49 ID:ON0
>>41

大きく身体を振って放つ右手、左手。
拮抗する一撃一撃をリオルはがむしゃらに楽しんでいた。
吹き荒れる風圧の向こうを、ソウジは目を潜めて見守った。
塵が飛ぶ。捨てられた新聞紙はとぐろを巻く。空っぽのコーラ缶がカランカランと音をたてて壁を打った。

リオルは目の前が霞み始めていた。やはりいくら拳を打ち込んでも、打ち込んでも。
ルカリオのインファイトは一発一発が衰えることがなかった。
…やはり、まだ敵わない。その一瞬の諦観が最後の一発を生んだ。
すり抜けた拳の向こうに写ったルカリオの勇ましい表情を、リオルは今まで戦ってきたどのポケモンよりも、

―――――――かっこいいと思った。

「リッ」

ルカリオの下向きに放った拳がリオルの額へ最後の一発を落とし込む。
直撃の瞬間力をなくしたリオルは、身体を思い切り地面に叩きつけられ、身を大の字に伏せた。
…ひんし状態。激戦の末、勝利の旗はルカリオに上がったようだ。

「…り、リオル」

事が終わったのを見届けてから、ソウジはしばらく放心していた。
もう身体はピクリとも動かなかったが、リオルは虫の息でルカリオに弱々しい一瞥を送った。
感謝だった。こんな自分にも全力で戦ってくれたことを、何より感謝している目だった。

「強かったです………」

率直で、これ以上ない賛辞の言葉。ソウジはゆっくりと顔を俯いた。

/誤字すみません!
46セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/15(日)01:36:39 ID:UZZ
>>45

「ルカリオ、お疲れさま」

激戦の後。
それはまるで水を打ったような静けさだった。まるで先ほどまでの戦いが嘘のような……
しかし、それが嘘ではないことを何よりもお互いの相棒が証明していた。

『……っ…』

ルカリオが僅かにフラつく。
それは紛れもない…ダメージの証明だ。

「ナイスファイトだった。あぁ実に良いバトルだったよ」

セレーネはソウジの元へと歩いていき握手を求める。

本当に素晴らしいバトルだった。
身体はまだバトルの熱を帯びている。それはきっとルカリオも同じはずだ。こんなバトルが出来て、むしろそうならない方がおかしい。
バトルの余韻とでも言うのだろうか。

「ポケモンセンターに早く連れていっておあげ。私は…そうだね、今日はもうお暇するとしよう」
「では少年。次に会う時を楽しみにしているよ」

そう言って――――少しでも目を離せばもうそこにはセレーネとルカリオの姿は無いだろう。
まるで夢のような出来事で、しかし今回のバトルはきっと両者にとってとても良いものになったに違いない。


「あぁ、ルカリオ…あの少年になら、いつかメガストーンを渡しても……」
「おやなんだい?もしかして嫉妬でも焼いているのかい?」

『…………』

まだまだ、旅は終わりそうにない。
47ソウジ◆tmf7N4yP5A :2018/04/15(日)01:54:17 ID:ON0
>>46
「ありがとうございました、勝っても負けても、全力でやるバトルはやっぱ楽しいです。」

ソウジは快く握手を受け取って、セレーネの穏やかな微笑をわずかな悔しさをもって見上げる。
一方で、ルカリオに与えたダメージに確かな手応えを感じてもいるのだった。

「また、会えたら…」

握手を終えて、ソウジは独り言のように呟いたが、そこに二人の姿はなかった。
春先のぬるい風のようにどこかへ消えていくセレーネとルカリオの姿を、ソウジはふとした時に見失っていた。

「(…名前、聞いてなかったな)」

もうすっかり昇ってしまった太陽を眺めてぼんやりと思う。
でも、それほど後悔がなかったのは彼女とはまた会えるという、なんと無い確信があったからであろう。
ソウジはリオルに歩み寄る。

「リオル、また戦おうな」

抱えられた腕の中で、リオルは曖昧に頷く。
ゆったりと落ち着いた瞼の裏にはまだ、あのルカリオの勇ましい波動が、赤く滾る眼が焼き付いていた。

ソウジとリオルの一日は、ちょっと特別なトレーニングで始まりを迎えた。
48スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/15(日)21:44:53 ID:ojJ
ナナイタシティの中心にある公園、青々とした草が茂る広場ではトレーナーとポケモンが自由に駆け回り遊ぶ事が出来る。
今日はその広場の一角に人集りが出来ている、どうやら何か見せ物が行われているようだ。

人々の視線を集める中心にいる人物が持っていたリンゴを放り投げる、そのリンゴを空中で斬り裂き、皿の上に乗ったリンゴは綺麗に六等分に割れた。

「どうですかこの斬れ味!僕のエアームドご自慢の翼です!」
「スラァーッシュ!!」

視線の中心にいるのはエアームドとそのトレーナー、パートナーのポケモンを模した仮面とマントを付けた男は、リンゴの乗った皿を片手にお辞儀をする。

「さて!折角御観覧の皆様が集まってくれたのですから、ただデモンストレーションをするだけではつまらないですね…」
「どうです、このエアームドの凄さを体験してみたいという方は何方か!?」
49マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/15(日)22:05:44 ID:78T
>>48
ナナイタシティの中心部、彼女は他の群衆と一緒に、見世物を拝んでいた。
手には最新機種のスマートフォン。最前列で彼女は、どうやら動画を撮っているようだった。
いかにも現代風若者といった感じだが、意外なことに割と熱心にエアームドの動きを見ているようである。

(ふつーのエアームドより相当早いなぁ……。確実に見世物用じゃなくて、戦闘向き……。)

なんて考えながら、次の演技を待っていると……。

『どうです、このエアームドの凄さを体験してみたいという方は何方か!?』

仮面の男が周囲を見渡す。人々はお互いに顔を見合って、誰一人として前に出ようとはしない。
無論、少女も名乗り出る気は無かった。目立つのが嫌い、というより、周囲との同調圧力というか。そういったものに弱い質だったから。

ふと、誰かが彼女の背中をドン、と押した。

「へ?」

間抜けな声を上げて、彼女は一人、輪の内側へと飛び出してしまう。

「あ……。」

周囲を見渡す。全員がこちらを見ている。
少女は一人、訳の分からないような表情で、スパーダの方へと顔を向けた。
50スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/15(日)22:18:16 ID:ojJ
>>49
張り上げる声に応えてくれる観客はいない、少々やり過ぎたかと思いつつスパーダは少し反応を待った。
すると、周囲を囲う輪の中から一歩目の前に飛び出してくる少女が目にとまる、緊張しているのか挙動不審な彼女に、スパーダはニッコリと笑い掛け歩み寄った。

「これはこれは!君が僕エアームドに興味のある子だね?」
「エアームドも喜んでいるよ!」

「スラッシャァーー!!」


マユズミの勇気有る立候補を囃し立てるようにスパーダは仰々しく語り、観客には拍手を煽る。
エアームドも両の翼を広げて鳴き声を上げ、嬉しそうに羽ばたいた。

「さて、それでは準備は良いかな?君の自慢のパートナーも僕に見せてくれたまえ!」
51マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/15(日)22:31:59 ID:78T
>>50
「え、いや……。まぁええか。」

少女はスマホを腰ポケットへと入れると、態勢を立て直す。
こだわりのムーンボールを取り出すと、勢いよく投げる。彼女のパートナーであるデルビルが、勇猛に吠える。

「ワタシ、仮面被っとる男嫌いやねんか。勝ったらそのマスク外してもらうで。」

「いくでぇ、デルビル。」

「バウッ!」

答えるように吠えると、デルビルは戦闘態勢を取る。

「デルビル、ふいうち!!」

戦闘開始の合図も待たず、少女の声と共にデルビルはエアームドに突撃していく。
52スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/15(日)22:52:12 ID:ojJ
>>51
「おっと、これは厳しい言葉だ」
「それじゃあ負ける訳にはいかなくなっちゃったかな、エアームド!」
「スラッシュ!!」

マユズミがデルビルを繰り出したのを見ると、エアームドが前に出て一声吠える。
少女の鋭い罵倒も笑顔で受け流したスパーダは、視野を広げるべく後ろに下がる。

「それじゃあ、始め───」

そしてバトルスタート…の合図を下す前に、デルビルがフライングで飛び出した。
まだ態勢の整っていないエアームドにデルビルのふいうちがかまされる、防御する隙も無く攻撃を受けたエアームドは大きく後退する。

「スラァァァ!?」

「おっと…これは随分とあくタイプらしい戦法だね」
「だがこの程度じゃエアームドは倒れないよ!エアームド、まきびしだ!」

「スララァッ!!」

最初に一撃を受けてから漸く動き出したエアームドは、地面に降り立ったまま翼を振るい、その中から鉄の棘をばら撒いた。
地面にばら撒かれるまきびし、空を飛ぶ事が出来ないポケモンには厄介な牽制となる。
53マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/15(日)23:11:27 ID:78T
>>52
エアームドに向けて突進したまでは良かったが、返しの技で周囲にまきびしが巻かれてしまう。
デルビルも辺りを見渡して、どう動くべきかと迷っている。

「そっちこそ、なかなかいやらしい戦法やなぁ。」
「さっきまではもっと派手ぇな見せもんしとったやないか。」

とはいえ、このままでは空を飛べないデルビルの不利だ。
少女は悪態をつきながらも次の作戦を練っていた。デルビルがちらり、と彼女の方を振り向く。

「うん、取り合えず動かんでええ。待機やデルビル。」

ここは相手の出方を見る、と少女はゆっくりと相手の動きを観察する。
54スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/15(日)23:23:51 ID:ojJ
>>53
「ふふふ、時として戦法は様々に形を変える物です」
「まだまだ、エアームドはこんな事も出来ますよ!」

地をかけるデルビルに対しまきびしはやはり効果が大きいようだ、まきびしを撒いた前方の範囲にはそう容易くは近寄っては来ないだろう。
そこでエアームドは翼を大きく羽ばたかせ、空気をその羽で斬り裂き渦巻く、三日月状の真空の刃が一閃デルビルに向かって射出された。
空気の刃を作り出し攻撃をする遠距離攻撃、エアスラッシュである。

「スラァーッシュ!!」

だがそれだけで終わりではない、エアスラッシュを放ったエアームドはそれを追い掛ける様に飛び立ち、デルビルに向かって自ら接近をする。
接近したエアームドは、右の翼でデルビルを叩き付けようとするだろう。鋭い刃の羽根を以ったはがねのつばさ、その斬れ味は先程見ての通りだ。
55マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/15(日)23:40:41 ID:78T
>>54
エアームドから放たれる真空の刃。強力かつ素早いその一撃が、デルビルのボディを切り裂く。

「キャウン!!ガルル……。」

「デルビル!耐えて!!」

ここで無理に動いてしまってはそれこそあの素早さに翻弄されてしまう。
はがねのつばさ。鋭い切れ味を持った刀のような翼が、更にデルビルに突撃してくる。
しかし、少女が待っていたのはこの瞬間でもあった。

「よぉ耐えたで!!デルビル、ほのおのうず!!」

「バウッ!!」

少女のサインと同時に、激しく渦を巻く炎が、エアームドを中心に巻き上がる。

「それだけやないでぇ!」

激しい渦は、周囲のまきびしを巻き上げる。
全てでは無いが、ある程度動くことが出来る程度には移動経路を確保できるし、炎そのものではなくとも巻き上げたまきびしがエアームドに当たるかも知れなかった。
56スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/15(日)23:54:01 ID:ojJ
>>55
「スラッシャッ!?」

振り下ろしたはがねのつばさが炎の壁に阻まれた、自身を中心とするほのおのうずに包まれたエアームドは身動きが取れなくなる。
硬い体は物理的な衝撃に強いが熱は普通以上に伝わる、炎に熱せられた体に自分で撒いたまきびしが傷を付けていく。

「成る程、こちらの攻撃を利用するとは中々やるね……ではこちらも同じ事をしようか」
「エアームド、ふきとばしだ」

「スラァァァァァッッッシュ!!」

だが、この程度で封じられる程甘くはない、スパーダの指示を受けてエアームドは吠え、翼を大きく広げる。
そして力強く羽ばたいて強い風を巻き起こし、自身を包むほのおのうずを吹き飛ばした。
勿論その中に巻き込まれたまきびしも吹き飛ばされる、余り距離が近ければデルビルにもまきびしが襲い掛かるだろう。

「よし!お返しだエアームド!空に御招待してやれ!」

「スラァァッ!!」

更に、ふきとばしを放った体制から一直線にデルビルへと空中を突っ込み、猛禽類を思わせる動作でデルビルを脚で掴もうとする。
エアームドに捕まってしまえばそのまま空中へと攫われ、落下の勢いを乗せて地面に叩き落とされてしまうだろう。
ひこうタイプの攻撃技、フリーフォールだ。
57マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/16(月)00:16:53 ID:GUF
>>56
「アカンっ!!デルビル、ニトロチャージで避けて!!」

ふきとばしにより、デルビルのほのおのうずがかき消される。
襲い掛かるまきびしとエアームド。
デルビルは自らの体に炎を纏うと、飛んでくるまきびしを右左に避ける。しかし……。

「危ない!!」

まきびしを避けた瞬間、エアームドにより上空へと連れ去られる。

「ガウッガウッ!!」

抗うも遅し、デルビルはそのまま地面へと落とされてしまう。
砂煙が巻き上がり、衝撃の強さを物語る。

「デルビル!!」

マユズミが不安そうに相棒の名を呼ぶ。
砂煙の中から出てきたのは、傷だらけになりながらもなんとか立つデルビルの姿だった。

「バウッ!」

「クク……せやな。このままじゃ終われんわな。」

(あの気取った男に、一泡吹かせたらんとな……。)

デルビルは再び戦闘態勢をとる。
まだ可能性はある。ニトロチャージにより、今なら素早さでも負けていない。その上、炎を纏ったデルビルを掴んだのだ。もしかしたら『やけど』しているかもしれない。
少女はこの場でもなお、冷静に状況を分析していた。
58スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/16(月)12:56:00 ID:kZQ
>>57
「スラァァァッ!!」

デルビルを地面に叩きつけたエアームドは低空で姿勢を建て直し、砂埃を見詰める。
炎に包まれたデルビルを掴んだ両脚はやけどを負っており、焦げ付いていた。

「さて……どうかな?」

観客が固唾を飲んで見守る中、スパーダは半ばある確信を持っていた。
デルビルの身のこなしを観察し、『この程度で倒れる訳がない』と、それはパートナーのエアームドも同じく。

そして、その予想通りにデルビルは姿を現した。

「グレート!実に素晴らしいポケモンだ!良く育てられている!」
「エアームドのフリーフォールをまともに受けて立っているとはね、しかしまだエアームドも負けてはいないよ!」

「スラァッシャッ!!」

どこか演技じみてて大袈裟だが、これは心からの賞賛だ。
まだ進化もしていないポケモンであるにも関わらずこれだけ闘えるのだから、間接的にマユズミのトレーナーとしての腕もあっての事だと褒め称える。

「では行こうエアームド!はがねのつばさ!」

「スラァァァァァッッシュ!!」

立ち向かうデルビルに対して、エアームドは翼を大きく広げて体を倒し、地面を鋭い翼でえぐりながら飛んで行く。
その斬れ味とスピードが乗った攻撃の威力は非常に高い……が、この時はまた事情が違っていた。
デルビルのほのおのうずとニトロチャージによるやけどがエアームドを蝕み、痛みによって全力のパフォーマンスが出せずにいた。
59ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/16(月)20:34:31 ID:vtf()
「ぷにぷにぷーに?」

春も半ばとはいえ、ナナイタシティの夜は未だ少し冷え込みが続く。

街道に程近い森では時折テントを貼っているトレーナーの姿が見える。
この辺りはキャンプスポットのようで、時折バトルしたり、あるいはポケモンを手入れしたりしてトレーナー達は思い思いに過ごしているようだ。

「ヤドンのしっぽが安かったのでネコブの実と水炊きにしました、温まりますよ」

「ぷにぷーに!」

鍋からはネコブの出汁の利いたヤドンのしっぽの湯気が食欲のそそる香りを立ち上らせている。
サイキッカーらしき糸目の少年の調理を手伝っているやや大きめのランクルス。
よく懐いているようで、少年とも完全にコミュニケーションが成立しているらしい。驚異的なかしこさである。

「この辺りは野宿がしやすくてよさそうですね……暫くはこの街で過ごすとしますか」
60セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/16(月)20:50:19 ID:Jl6
>>59

「――――やぁ、こんばんは。とても賢いランクルスだね?」

周りを見渡しても人影は無い。その声の主は上方、すぐ近くの木の上に居た。
太い木の枝に座り込み、木の幹に身体を預けて下を見下ろすその姿はどこか妖しさを滲ませる。
あたりには他のトレーナーだって居る。だというのになぜ少年に声を掛けたのか――――

「おっと、驚かないでくれ?別に驚かそうとしたわけじゃない……」
「君がこの街に居るということは……そういうことなんだろう?かつてのように…ね」

『………』

見れば別の木の枝にはセレーネの相棒であるルカリオが立っていた。
その瞳は警戒心を宿しているが敵対する気は未だ無い。

「まだ"奴ら"のことを追っているんだろう?……抜けた身で言うのもアレだが、何か情報は掴んだのかい?一筋縄ではいかないだろう」

不敵に笑みを見せるその姿はまるで少年を試しているようにも見えるだろう。
突然の来訪者に少年はどう応えるのか。
61マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/16(月)20:56:55 ID:GUF
>>58
既に限界ギリギリのデルビルに対して、冷酷なまでの全力攻撃。
どうやら火傷の影響は受けているようだが、それでもなお、この一撃で沈められかねない。そんな勢いを備えている。

「デルビル、いくで!ニトロチャージ!」

「ガァウ!!」

マユズミの合図で、デルビルは再び体に炎を纏い、真っ向からエアームドに突進していく。
地面をえぐりながら進むその勢いに、彼女もまた心の中で賛辞を贈る。

そして、刃と炎がぶつかる瞬間、デルビルは僅かにその体を捻る。
まるで次の彼女の指令を読んでいたかのように。

「デルビル、カウンター!!」

はがねのやいばがその身を切り裂くまさにその瞬間、デルビル最後の一撃が発動する。
相手の技の威力と、自身の力を合わせる、まさにカウンター。決まれば流石のエアームドにも大きなダメージを入れられるはずだが、結果は……。
62ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/16(月)21:18:22 ID:vtf()
>>60

「――――聞き覚えのある声ですね」

「・・・ぷに!」

一瞬、ピタヤの鋭い眼光が幾らか見えた気がした。
ぷにぷにはサイコパワーで感づいたのかすぐに木の方を向くが、ピタヤはあくまで振り向くまではなく、平静を保っている。

「ぷに、ぷにぷにぷにぃ(元幹部が何の用ぷに)」

本来相当に訓練したエスパータイプでなければ出来ない、念話による意思疎通。
それはこのランクルスの出自が普通ではないことも意味している。
普通、人間に念話を向けることは滅多にない。だが、セレーネなら心当たりはあるはずだ。

「この街も大分変わりました・・・・・・まだ僕が旅をしていたあの頃と比べると」

「ぷにぷにぷに、ぷに(そこのルカリオも見えてるぷによ)」

「当然です、連中にはまだ大きな貸しがありますから・・・・・・それに、情報を掴んだからこそこの街に戻ってきたんですからね」

少年には――――重い過去がある。まだ最初の旅をする前からの、重い過去。

「そうですね、老婆心ながら忠告するとしたら、「"ガスマスクが後を付けている"」―――今のところ、僕から教えられるのはそれだけです」
63スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/16(月)21:57:23 ID:vGV
>>61
「成る程───」

スパーダはデルビルのニトロチャージを見てニヤリと笑った、満身創痍の状態で真っ向から立ち向かうとは蛮勇に過ぎる。
こちらの攻撃を利用したりする程狡猾な者がそんな事をやけっぱちになってもする訳がない、つまりこれはブラフである。
…と、そこまで読めても最早エアームドの攻撃は止めようもない、只々この瞬間まで奥の手を隠し、切るべき場所でカードを切った判断を賞賛するのみである。

「スラァァッ!?」

寸前の所で攻撃をかわされ、勢いを利用した一撃を受けたエアームドは、空中で体制を崩し吹き飛ばされる。
余りの勢いに地面を転がったエアームドは、それでも体制を建て直し立ち上がろうとしていた。

「……ス……ラァァッ………!!」

その気高い眼光は未だ諦めと闘争心が止まらず、スパーダのその一言が無ければまだバトルを続けそうな程だった。

「参った!負けたよ!素晴らしいコンビネーションだった!」
「エアームド、もう休め、それ以上は今後の活動に響くぞ」

パチパチと手を叩き、笑顔で負けを宣言するスパーダ、その言葉を聞いたエアームドはスパーダの表情を読み取って、静かに目を閉じ負けを認めたようだった。
64メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/16(月)22:07:18 ID:D0D
ナナイタシティ郊外、他の町とを繋ぐ道路の丁度入り口。

木々と草むらが茂るその場所に似つかわしくない閉じた傘を腕にかけた水玉の黒いワンピースの女性が居た。
スカートがめくれないようにと軽く手を載せながらしゃがみ込むと、そっとその場の土を指でつまみ上げる。

「んー・・・まあ、このくらいの土ならちょうど良いわ」

指に残った土を引き延ばしながら、立ち上がった女性は腰に下げたモンスターボールに手をかけた。

「お願いね、ラグラージ。」

手首のスナップで軽く投げられたボールの中から現れたのは青の体色に黒のヒレを持つ大型のポケモン。
屈強な肉体をした明らかにその場に相応しくない存在の登場に、いきさつを眺めていた野生のポケモンたちのビクリとした震えが草むらに伝わった。
65セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/16(月)22:10:04 ID:Jl6
>>62

「おや、覚えていてくれたとは光栄だね?……ふふ、冗談さ」
「何の用、か…特に無いよ、用がなければ会いにきてはいけないのかい?」

普通ならば驚くところをランクルスの念話に動じることなく話を続けている。
お互いのその口振りから二人がお互いのことを何かしら知っているというのは明らかだ。

「旅、ね…まぁ変わったことは確かだ、でも変わったのは君もだろう?……いや、私が会う前にもう変わっていたのかな?」

「情報…抜けた私には奴らが今何をしでかそうとしているのか、未だ情報源も無いままさ……でも私はもう隠居した身。手出しするのは野暮なことだろう――――少なくとも…今は、ね」

かつてのことを思い出せば、本当に頭が痛くなる。
……どうにかしなければならない、とは思っている。彼らの理想には、分からなくもないことも多少はある。
だが今となればもう関係はないだろう。ただ向こうがこちらに何か手出しをしてこようとするのならば、邪魔をしようとするのならば容赦はしない。
だがそれは誰であっても同じことだ。

「ふふ、胸に刻んでおくよ……」
「未だ私に何か用があるということかな?今更何を、と言ったところだけど…まだ私に利用価値があるということか」

こちらはもう奴らには利用価値など無いというのに。
66アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/16(月)22:19:20 ID:4rc
>>64
「うわわっ!?」
「……びっくりしたぁ……!」

草むらからひょこっとやって来るのはマオカラーの薄緑色のワンピースの小柄な少女
野生のポケモンを狙っていたのが、突然の大物の出現に驚き飛び出してきたのだ

「ラグラージ!」
「……へー、ねぇねぇ……見てごらんかばごん、かっこいいねー!」

続きずーるずーると引きずって、べちゃっと桃色の物体を放った
それは大きなお目々をとろーんと、半ば寝惚けているヤドン!

「あのー、何をしているんですかー?」

ヤドンを連れている、つまりポケモントレーナーである少女はラグラージの主に尋ねる
67マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/16(月)22:23:15 ID:GUF
>>63
エアームドへのカウンターはどうやら成功したらしい。
しかし、デルビルの方もダメージが無かったわけではなく、地面に伏せた状態で息を荒げている。

「デルビル、お疲れさん。」

「……バウ。」

少女はデルビルの元へ駆け寄ると、労いの言葉と共にいいきずぐすりを与える。
デルビルはその言葉を聞くと、ようやく落ち着いた様子で、こちらも満足そうに瞳を閉じた。

少女はボールの中にデルビルを入れると、立ち上がって再び仮面の男の方へと向き直る。

「対戦ありがとう。ええ勉強になったわ。」
「癪に触る仮面だけはいただけんけどなぁ。」

張りつめていた緊張の糸がほぐれたからか、ようやく彼女の表情に笑顔が浮かんだ。
68メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/16(月)22:29:06 ID:D0D
>>66
「あら?」

草むらから飛び出してきた何者かの気配にラグラージのヒレが反応し、瞬時に向き直る。
対してラグラージの主はと言えば、逆にスカートが殆ど揺れないほどにゆっくりまったりとその場から振り返った。

「こんにちは。あなたはトレーナーさん?」
「かわいいヤドンね、でも少し寝坊助さんみたい。」

警戒していたラグラージに軽く手をやって下がらせると、少女の前でしゃがみ込んだ。

「私はメユリ。」
「土をね、見ていたの。」

「そうだ」

何かを思いついたのか、メユリと名乗った女性は肩から下げたバッグの中を探り、手にほらサイズの何かを取り出した。
目に痛いような紫色をしたたけのこのように波打った小さな…きのみのようだ。

「これは『カゴのみ』」
「そのヤドンに食べさせてあげて。すぐにシャキッとするわ。」
69ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/16(月)22:46:54 ID:vtf()
>>65

『(生憎、まだ和やかに会話するほど許してないぷによ)』

ランクルスはぷにぷにした柔らかい双腕でピタヤを抱きしめながら睨みつけている。

「強いトレーナーも増えました、勿論僕もそれなりに強くなったつもりではいます」

「ですが・・・・・・一人では足りない、ガキが単独でどうにか出来るほど大人の集団は甘くない」

かつてロケット団に単独で挑んだ少年の噂話などは耳にしたことはあるが、そんなゲームか漫画のような話が誰にでも出来るほど世の中は甘くない。

「それは僕もあなたもよく知っているはずです」

「それに・・・・・・あなたも、まだメガ進化に固執しているんですか?」
「僕は・・・・・・あの研究を見ても尚、あの力を使おうとする神経が理解できません」

検討のつく連中は何人か居るだろうが、そのどれと鉢合わせるかは予想がつかない。
何にせよ、奴らは手段を選ばない。標的となるのは、ポケモンだけではないのだ。

「――――さて、僕達はそろそろ夕食としましょうか。一緒に食べていきます?なんて。」
70スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/16(月)22:47:21 ID:vGV
>>67
「よくやったエアームド、実に良い闘いだったぞ」
「スラッシャァ……」

やけどとダメージを負ったエアームドだが、宣伝の為に役者が退がる訳にはいかない。
はねやすめで体力を回復させながら、スパーダに頭を撫でられて御満悦であった。

「礼を言うのはこちらさ、おかげで良い宣伝になった」
「君もデルビルも素晴らしい闘いだった、ポケモンリーグの熱い闘いを思い出したよ」

「……おっと、僕が負けたら仮面を外す約束だったね」

ようやく笑顔を浮かべてくれたマユズミに礼を返して、ニヤリと笑って仮面に手を掛ける。
仮面に隠された素顔が遂に露わになるか……と、思わせ振りにしておいて。
仮面を外そうとしたその瞬間、観客達の隙間から突然白いスモークが噴射されスパーダの姿を隠してしまう。

「おっとすまない!これでは仮面を外しても顔が見えないね!」
「だが約束は約束だ!仮面は外したのだからこれで勘弁してくれたまえ!」

スモークの中から凄く楽しそうな声を上げ、次の瞬間には飛び立つエアームドに掴まって飛び去って行くスパーダ。
スモークが無くなった後には、確かに彼が付けていた仮面が落ちていた。
71アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/16(月)22:49:25 ID:4rc
>>68
「はい、私アキっていいます、この子はかばごん!」
「土?土って、この土?」

自己紹介つつ頭を下げて、続きピンクのなまけたポケモンを指差した
そして小首を傾げ、周囲の地面を眺めるのである。なんら変哲のない土に見える

「え、いいんですか?」
「……じゃあ遠慮なくー……」

カゴの実を言葉通り遠慮なく受け取り、既にばったばったと尻尾を振っているヤドンに差し出した
ゆーっくり口を開いてそのまま、トレーナーの少女がポイっと投げ込めばムシャコラムシャコラ
世の中にヤドン多しとはいえ、これはなかなかのなまけっぷりであろう!

『……!!』

直後、きゅぴーん!と目が光って後ろ足で立ち上がるヤドンの姿が!凛々しい!(気がする)
72メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/16(月)23:03:47 ID:D0D
>>71
「おはよう、寝坊助さん。」

カゴのみを食べて覚醒したヤドンに微笑みかけると、まだ手に残っていた紫色のきのみをアキへと見せる。

「『カゴのみ』にはポケモンをねむり状態から回復させる力があるの。」
「ポケモンに持たせてあげていればバトル中でも食べてくれるのよ。」

後ろを見ると立ち上がったヤドンに対抗意識でも沸いたのか、ラグラージもまた後ろ足で立ち上がって居た。
フン!と大きく鼻から息を吐き、ボディービルダーの様に腰に手を当てて胸を張り、その立派な体躯を更に大きく見せているではないか。

「なにを意地悪してるの、やめなさいラグラージ。」

たしなめる様なメユリの声に渋々といった様子でゆっくりと前足を地につける。
唇を軽く尖らした様子からして、少し残念そうだ。

「ラグラージ、土は耕してくれたの?」

メユリの指示を思い出したのか、ラグラージは慌てた様子でその口から軽く水を吹き出す。
次にその大きな手で土を掘り返しては混ぜる、掘り返しては混ぜるを繰り返しはじめた。

「もう……ごめんなさい、何をしていたかって話だったわね。」
「きのみをふかふかの土に植えようと思っていたの。」

確かにラグラージの足元にある土は黒く、草むらの土と比べてラグラージの足跡がくっきりと残るほどに柔らかでほんのりと湿っているのが見て取れる。
73セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/16(月)23:11:05 ID:Jl6
>>69

「とって食ったりはしないよ、私はそこまで場を弁えないような人間じゃないさ。ルカリオだってそうさ、ねぇ?」

『……フンっ』

やれやれ、といった様子でルカリオに同意を求めるが対するルカリオは一つ返事をしただけ。

「そうだね、正直言って君一人ならば対処だって用意だろう」
「君のこれからやることはまぁ人数集めかな?」

大きなものに逆らうにはそれ相応の力が必要だ。
力のあるもの一人が挑んだところでたかが知れている。だがそれが複数なら?
そうなれば、結果は分からないものになるはずだ。

「メガシンカはポケモンの可能性だ。ポケモンとの絆、そして何よりそのポケモンの持つ可能性が形を持って現れたもの……」
「ではその可能性を越えれば一体何があるのか?メガシンカのその先…例えばゲンシカイキ、もしかすればまだまだあるかもしれない」
「確かにメガシンカはポケモンに負担を強いる…それには私も心を痛めるよ……でもその先にあるのは可能性の更に先にある可能性……それを求めたいと思うのは人の性というものだろう?」
「……あの"研究"は確かに私が提案したものだよ。でもあれでは不完全だ…もっと、まだ何かあるはずなんだよ……」

「――――……さて話し過ぎたかな?ご一緒していいのなら是非とも」
「よっ……うわっ!?」

そう言うと木の枝から降りようとして……そのまま落下してしまった。
一方ルカリオは綺麗に着地しているのだった……
74マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/16(月)23:13:38 ID:GUF
>>70
「せや。仮面着けてるような男は信用おけん。」

少女はそう言いながらスマートフォンを構える。その顔を記録してやろうと待ち構えながら。
別段、彼女はスパーダ本人が気に入らない訳ではないのだが、彼女の生い立ち故『仮面を着けている人間』に苛立ちを感じるだけで。

「へ?ちょ、まっ!?」
「なんやそれ!!そんなんアリ!?」

突然のスモークでたちまち彼の姿は見えなくなる。
次の瞬間には彼の姿は既に遥か上空へと消えてしまっていた。

「……。」

少女は怒りでわなわなと震える手で、落ちた仮面を拾う。

「やっぱり、仮面被っとるような男は信用おけん!!」

ショーも終わり、ざわざわと街の中へ消えていく群衆を前に、少女は一人空へ叫んだ。
75アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/16(月)23:15:50 ID:4rc
>>72
「なるほど……体力回復の実くらいしか知らなかったです……!」

少女本人は搦め手の類にそこまで明るくないらしく、その辺は年相応と言えた
さて、ラグラージの体躯を前に一方ヤドンは

『……』

色々察したのか、ズベラっと前のめりになってまたなまけ始めたのであった
諦めの良さはなかなかのものといえよう!

「きのみを、ふかふかの土に?」

作業の邪魔にならぬよう二歩後退り、ヤドンの尻尾を掴んでずーるずーると引き摺って寄せる
きのみ栽培なども勿論未知であり、興味深そうにラグラージの作業を見詰めるのだ
76メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/16(月)23:29:01 ID:D0D
>>75
「そうよ、きのみはきのみ畑に植える他にもふかふかの土に植えることが出来るの。」
「ふかふかの土は栄養満点だから、すぐに大きくなってそのきのみを沢山つけてくれるのよ。」

作業が終わったのか、のしのしとラグラージが二人の元へとやってくる。

「ありがとう、ラグラージ。」

メユリが労う様にラグラージの顎の下と頭頂を優しく撫でると「ラグルァァ」と低く響くような声色で喉を転がして喜んだ。
手が離れると今度は名残惜しそうにその手を視線が追うが、主の邪魔をしない為に決して催促する様な仕草も見せない。

メユリは肩から下げたバッグから先ほどの紫色のきのみだけでなく、更に黄色や緑、赤色のきのみを取り出すと土の中に植え始めた。

「そうだ。」

何かを思いついたのかアキの元へと戻ると、手にしていたきのみの数個少女へと手渡そうとする。

「植えるのを手伝ってもらえないかしら?」

つまんだサクランボのような小さなきのみを揺らしながらそう問いかけた・。
77アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/16(月)23:34:17 ID:4rc
>>76
「ほへー……」

口を開いたまま説明に聞き入り、ラグラージを撫でる所作を、そしてその実に行き届いたしつけに感嘆
チラリとヤドンに視線を落とせば、もう鼻ちょうちんなマヌケヅラ
溜息と共に爪先で割ると、弾けた音に驚いたのかハッとして左右確認。んでもってまたすぐ寝た

「え、わ、私が!?」
「上手く出来るかなぁ……?」

口ではそう言いながらも、ウズウズとした感覚を堪えていられないのは年相応
何事もチャレンジなのだ、その性分は
きのみを受け取り、見様見真似でレッツ栽培!
78メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/16(月)23:46:26 ID:D0D
>>77
「クスクス、そんなに難しい事じゃないわ。」
「私だってガーデニングをやっていた訳じゃないから、アキちゃんとそんなに変わらないわよ。」

しかしおしとやかな容姿や雰囲気に反してと言うべきか。
しゃがみ込んだメユリは手が汚れることに臆することなく素手で躊躇なく土に触り、軽く掘り返してきのみを植える様は明らかに手慣れている。

「…あら?」

ふと彼女の足元を小さな影が走り、きのみを植えている土の前でぴたりとそれが止まった。
それは黄色くて綿のようにふわふわとした体毛に、茶色い長い耳を持った小さな来訪者。
野生のミミロルがきのみの匂いにつられて草むらから姿を現したのだろう。
先ほどのアキと同じように「何をしているのか」と首を傾げながら二人の手元を見つめている。

……それだけではない。
気づけばコラッタやヤングース、様々な小型ポケモンが二人の様子を遠巻きに見つめていた。
恐らくこの草むらを住みかとしている小さな先客たちなのだろう。

「このきのみはまだ食べちゃダメよ。大きくなったら沢山の実が出来るからみんなで食べてね。」

メユリはミミロル達を散らすようなこともせず、優しく窘める様な声で諭した。
79アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/16(月)23:53:25 ID:4rc
>>78
「は、はいっ……!」

オトナな雰囲気に気圧され、まだまだお子ちゃまな少女は若干の萎縮を覚えつつも所作を真似っこ
此方も土に触れる事に一切の逡巡など皆無、元々野山を駆け回るのが大好きなトレーナーなのだから

「ん?」
「……あっ!」
「……え、あ、……」

しめた、とミミロルを前にモンスターボールを構えて……停止!
メユリの言動を前に、自制の効かない自身を恥じるくらいの常識と良識はあった模様
やり場のない振り上げた手はボールと共にゆっくりと所在無く下され、なんとなくヤドンの頭を撫でる

「きのみ、」
「……早く育つといいなー……」

それでも、植えた土を眺めて自然と微笑みと共に溢れる言葉は全くの本意であり、メユリに向けるそれらも然りなのであったとさ
80ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/16(月)23:55:58 ID:vtf()
>>73

「可能性・・・・・・か」

「僕は・・・押さえつけられない力というものが、どういう結果を招いてきたのか見てきました」

「きっと、いつかまたあの日みたいになると考えると―――ああ、この話はよしましょう、不毛ですし」

とぷとぷと椀に注がれるネコブ汁を一口すすれば、春の夜の冷える体を少し暖めてくれる。
ランクルスはお行儀よく主人とスープに舌鼓を打っている。
一方でユレイドルは鍋に残ったネコブの出汁ガラをバリバリと咀嚼している。
ていうか口どこだこいつ?

「もぐもぐ・・・・・・やっぱり採れたてのネコブでないとこの味は出せませんねもぐもぐ」

『(コケてる暇があったら食うぷに、ご主人が作る料理は基本的に神ぷに)』

野宿の達人が作るスープで夜を過ごせば、行きずりのトレーナー達との談笑も始まる。
久しぶりにセレーネもトレーナーらしい生活を思い出すだろう。
81メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/17(火)00:11:15 ID:31j
>>79
「―――そうね」

アキの小さな呟きに、すっと溶け込むような言葉に言葉え返した
そして続いて誰かに語りかける物とは違う、独り言のような言葉が綴られる

「きのみ畑と違ってこういう場所に植えたきのみは野生のポケモンも取って食べることが出来る」
「それに気づいた名前も顔も知らないトレーナーもこのきのみを手に取るかもしれない…私はそれが好きなの」

出していた全てのきのみを植え終えて立ち上がった二人に機をうかがっていたラグラージが近寄ってくる
すぼめるように口を開け、水を吹き出して土で汚れた両手を洗い流してくれる

「ありがとう、ラグラージ」

メユリはバッグから取り出した水玉模様のハンカチで手を拭くと、それをアキへと差し出した。

「はい、どうぞ」
「植えるのを手伝ってくれてありがとう、これはお土産としてあげるわ。」

ハンカチの他に複数のきのみをバッグから取り出していたのか、それもまた少女へと手渡す

「ポケモンに持たせてあげてもいいし、こうやってどこかに植えてもいい」
「今日はありがとう」

ハンカチを返してもらったメユリは小さく手を振りながらアキと別れて道路へと戻っていく
それに続くラグラージは長い腕を天に掲げ、大きく腕を振って去って行った
くるくると土の周りを回っていたミミロル達もまた、草むらへと帰ってゆくのだった―――
82ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/18(水)20:48:33 ID:HJ6
市街地を外れて、その先に広がる森の奥には、多くの野生ポケモンが住み着く森道がある。
そこには今や使われなくなった神社の跡地がある。
突き抜ければミルタンクの農場があるが、ちょうどいい所で寄り道すれば自然と辿り着ける場所だった。
寂れてしまったとはいえ、人気の無さやポケモンのトレーニングに最適な広さの広場は隠れた人気がある。
広場までの長い階段は苔が茂っており、観光地にも最適な趣がある。

「うーん…」
「ぶぅる…」

そんなソウジも、ここへトレーニングをしに来ている一人だった。
ソウジの唸りに、エレキブルはほぼ同時に続く。今、ソウジはエレキブルとリオルのでんじふゆうの修行に立ち会っていた。

「やっぱり、あの時みたいには行かないか…」

リオルとエレキブルは向かい合って地面から座禅の状態で浮遊している。
だがやはり、リオルのでんじふゆうはまだ安定しない。
先日のルカリオとの勝負…あの時は、実戦にかなう効力を発揮できたと思うのだが…
ソウジもその場であぐらをかいて、夜空に思案を巡らせる。

「リッ、リッ…リオッ!」
「…ぶぅる!」

「リオル!」

考え事に気を取られていたソウジは、リオルが体勢を崩した事に気が付かなかった。
リオルは足を滑らせて、どんどんとあらぬ方向へ進む。
神社の周辺は滑りやすく、苔だらけだった。

エレキブルの伸ばした手も間に合わず、リオルは長大な階段を転がっていく――――――!
83ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/18(水)21:03:12 ID:ZY3()
>>82

ごろごろと苔むした石段を転がり落ちていくポケモンの先に、緑色の水まんじゅうみたいな物体。
ふよふよと浮遊しながら石段をすいーっと昇っていく。

『ぷにー・・・・ぷに?』

「ぷにぷに、集中してください、念気が乱れますよ」

ピタヤはランクルスの中に入り、ランクルスと共にサイコパワーの修行をしていた。
ランクルスの中身とピタヤ、2人分をランクルスのゼリー状の特殊な液体が包み込んで浮遊しているのだ。
ランクルスは別名ぞうふくポケモン。こうすることでサイコパワーは倍々ゲームに増幅される・・・・・・らしい。

『ぷに!ぷにぷに!』

「一体なんですか・・・・・・はおっ!?・・・・・・リオル??」

どぷん!と水饅頭の中に3人目の客が迷い込んできた。
柔らかいゼリーの中でリオルを抱きかかえるピタヤ。衝撃は見事に吸収される。
程なくして彼らはそのまま浮遊して神社の境内へ上がってくるだろう。

『ぷにぷにぷにー』
84ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/18(水)21:14:08 ID:HJ6
>>83
ぶにゅっ。

眼を固くつぶっていたリオルは、電磁浮遊のときとは違った異様な浮遊感に、身の回りを大慌てで見回す。

「リッ、リオ!?」

リオルを優しく包むのは、肌が触れるたび不思議な感触のある液体だった。
息が出来ないのではないかとじたばたしたりもしたが、そこに人間も居る事に安心し、深く呼吸してみた。息ができる。
そしてその隣のぬいぐるみのようなポケモンから、そこがランクルスの体内だと分かり、もじもじとしながらもされるがままに階段の上までを共にする。

「ありがとうございます!ってか、ランクルスのゼリーって入れるんだな…」

ソウジは到着した瞬間に飛び出してきたリオルに身体をふらつかせながらも抱きとめて、ランクルスのトレーナーに頭を下げる。
落ち着いた風貌のエレキブルが心配そうにソウジの背後から顔を覗かせていた。
85ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/18(水)21:29:31 ID:ZY3()
>>84

「ふぅ・・・キミのリオルでしたか」

ランクルスの体内からぬぽっと出てきたサイキッカー風の少年。
汗を拭い服をぱたぱたさせる。サイコパワーも中々体力を使うようだ。

「突然ぷにぷにの中に入ってきたのでびっくりしましたよ」

『ぷにぃー・・・』

ランクルスの中の人も同じようにゼリーからぬぽっと出てきてぱたぱたと少年の真似をする。
中身を失ったゼリーも同じようにぱたぱたと身体を仰ぐ真似をするが、多分これは中の人に連動しているだけだろう。

「あ、ええ。知らない人結構多いんですよね。まぁこの時期になると結構な蒸し風呂なんですけど・・・・・・そろそろこのトレーニングも厳しくなってきました」

『ぷにっぷにぷに』

中の人がぽてぽてと歩いてきて握手を求めてくる。
86ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/18(水)21:45:00 ID:HJ6
>>85
「ぶぅる!」

エレキブルが大きな口を開いて驚く。
ジムリーダーと幾多の修羅場をくぐり抜けたエレキブルも、ゼリーから出てきたランクルスは初めて見たようだ。
少年のほうは見た所同年代のようである。

「なんか、人間みたいなランクルスだなぁ…」

ソウジも、狐に顔をつままれたような気分で手を取っていた。
エスパーポケモンはみんな知能が発達していると言うが、ここまでとは驚いた。
ランクルスの手は冷凍ゼリーの内核のようにいくぶんか固いものの、ぷにぷにと柔らかい。

「あっ、オレはソウジって言うんだ。リオルと電磁浮遊のトレーニングしてたとこで、でもうまく行かなくて、リオルが転がってっちゃって…」

ソウジはクシャクシャと後頭部を掻いた。リオルは小さく残念そうな声を上げて、ぷかぷかと浮遊するランクルスの液体を見つめていた。
普段からの浮遊を心得るサイキッカーなら、何かしら力になるかも知れない。
87ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/18(水)22:12:22 ID:ZY3()
>>86

「ええ、僕が小さいときから人間社会に慣らした賜物ですから」

『ぷにっぷに!』

ぷにぷにがゼリーを脱ぐというのは紳士的な挨拶の証とのこと。
ピタヤが挨拶の時に帽子を脱ぐようなものらしい。

「えーっとリオルリオル……へぇ、電磁浮遊って覚えるんだ」

学生帽を被りなおし、図鑑を開くと確かに教え技:でんじふゆうと書かれている。
ただ技教えというのはそう一筋縄ではいかないものが多い。

「僕はピタヤ、しがない旅のサイキッカーです。僕も丁度浮遊しながらサイコパワーを保つトレーニングをしてた所で」

糸目の少年はぷにぷに、と一言声を掛けると、それだけで意思が通じたかのように、中の人がサイコパワーを増幅させる。
ピタヤはその場で蓮華座を組むと、いとも簡単に宙に浮いてみせる。

『ぷにっぷにっぷに、ぷに!』

「「念」と「気」、と言えば、波動ポケモンには伝わりやすいでしょうか?」

「僕がサポートします。徐々にサイコパワーを抜いていきますので、それで電磁浮遊を訓練してみましょう」

そして、リオルにもサイコパワーを流し込む。ふわっ、とリオルの足が浮き、宙に浮かぶ事になるだろう。
88セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/18(水)22:34:59 ID:d7Y
「ふむ………やはり一筋縄ではいかないか」

とある山への道の途中。そこは周りは岩壁で囲まれており様々な鉱石がよく見つかる場所である。
しかし野生のポケモンも多く出現するため人が通ることは少なく、それ故に貴重な鉱石が見つかることも多い。
そこでセレーネとルカリオはなにやら鉱石の採集を行っていた。と言ってもどうやら目当てのものは見つかっていないようで。

「メガストーン…生成方法やその出自さえまったく不明…こうして鉱石の採集をしているものの一行に見つかる余地は無し……やれやれ、メガストーンとは、メガシンカとは一体なんなのだろうね?」

隣のルカリオの方を見るもルカリオは何も答えない。いや応えられないのだろう。
ポケモンがその問いに対しての答えを持っているはずもないし、これはいつもの癖のようなものだ。ルカリオも反応しても意味がないと分かっている。

「………"奴ら"はメガシンカに関しての新しい情報でも手に入れているのかな?活動が活発化したということはそういうことなのかもしれないが……」
「接触するのは…ふふ、いや…まだ愚策だろうね」

「さて、と…少し疲れたし一休みしようか」

そう言うと近くの岩に腰を掛けて休憩を始めるのだった。
89ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/18(水)22:36:14 ID:HJ6
>>87
「そーなのかぁ、ルカリオは波動が発達するらしいからな…喋れたらいいなぁ」

遠くを見るような眼差しでリオルに視線を送るソウジ。
リオルは首を傾げる、進化の遠いリオルにはまだ分からない話のようだ。

「『念』、と『気』…か」

言葉の持つ感覚を噛み締めながら、ソウジはピタヤのキーワードを復唱した。
リオルもランクルスの言葉に頷く。
人間にはぷにぷにとしか聞こえなくても、ポケモンにはちゃんと聞き分けられるようになっているのだろう。

きょとんとしていたリオルに不思議な力がみなぎる。

「リ、リオっ?リオ~~~!!」

体格に沿った光の枠のようなものがリオルの身体を包み、ガス風船のようにゆったりと浮遊を始める。
突然の事で最初は先程のような愛らしい犬掻きを見せていたが、段々要領を得たのか、姿勢は自然と今までの座禅の形に落ち着いていく。

「リオ………」

サイコパワーの影響か、心も落ち着いているようだ。
エレキブルも、近くで腕を組んで感心している。

「ぶぅる」

エレキブルが合図すると、リオルはこくりと応じて目を閉じる。電磁浮遊の併用を開始した。
段々と全ての音から意識が遠くなっていくような…。得体のしれぬ快感がリオルの闇を包む。
物事を起こす火種である念。無への純粋な集中をもたらす気。この2つが、まだ粗かった心の中に線を引いていく。
リオルは深い息をした。もう大丈夫だ。

「ぶぅる…」

エレキブルの刺すような眼差しが一度瞬いて、落ち着きを宿す。
彼は穏やかな微笑みをソウジに向ける。その意味を、ソウジは理解した。

「エレキブル…サイコパワーを解除しても大丈夫ってことか?」

エレキブルが頷いたのを見て、ソウジの顔がぱぁっと明るくなる。
90ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/18(水)23:01:47 ID:ZY3()
>>89

『ぷにー』

「ゆっくりそのまま……電磁浮遊だけに意識を集中して……」

段々とピタヤとリオルを包んでいる念力が薄くなり、ピタヤは少しずつ地面に降りていく。
サイコパワーは徐々に抜けていくが、電磁浮遊を保ったままのリオルは宙に浮き続ける。
そして―――

「……今、サイコパワーを抜ききりましたよ。」

―――そこには、しっかりと電磁の力で宙に浮き、地面技を寄せ付けない技、「でんじふゆう」の習得に成功したリオルの姿があった。

『ぷっにー♪』

中の人がピタヤにハイタッチする。外の人もエレキブルにグータッチで無言の祝福をする。
そして中の人と外の人もピシガシグッグッ!と喜んだあと、ようやく中の人が外の人の中に入って完全体ランクルスに戻った。

「ふぅ……成長性は申し分ないですね。きっといいルカリオに育ちますよ」

ピタヤも微笑み、ぱっぱっと砂利を払って立ち上がる。
ふと、暫し考え込むような姿を見せた。

「この調子で波動もマスターすれば……キャスタナのような要塞パーティを上から圧倒できるかも……」
91マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/18(水)23:08:55 ID:TiK
>>88
「スパーーダ!!」

切り立った岩壁を、ゆるゆると降りてくる影が一つ。
突き出た岩肌から糸を垂らし、下へ下へと向かうのは、あしながポケモン、アリアドスだ。
そして、そのアリアドスと自身をきつく結び、共に降りてくる少女。

「特訓終わりでごめんやけど、落ち着いて降りてやアリアドス。落ちたらお陀仏やで。」

「スパーーーダ!!」

「ひいいい!!!せやから騒ぐな!!」

グラグラと危なげに振り子を揺らしながら、下方を確認する。
もうすぐ大地に足が着く。安心からか少女はようやく周囲を確認する余裕が出来たらしい。
岩陰に座る人の姿が見える。こんなところに人がいるとは思わなかった。

「もうすぐや、落ち着いてや……?」

「あしゃま!!」

アリアドスにそう声掛けした途端、彼女の腰に下がるモンスターボールからまた別のポケモンが飛び出す。
あしかポケモンアシマリ。長いことボールの中にいるのが耐えられなかったのだろう。まだ子供な彼女は元気に上空へ飛び出した。

「ちょ、アシマリ!!?アカン!!」

「スパーーーダ!!?」

アシマリに手を伸ばそうと上体を倒した瞬間、アリアドスの糸がぷつん、と切れる。
ドーン、とド派手な音を立てて少女は地面へその腰を打つことになる。
地表までもう少しだったのが幸いか。

一人華麗に着地したアシマリが、岩肌で休むセレーネの下に近づく。
92セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/18(水)23:17:08 ID:d7Y
>>91

「まさか…上から来客が来るとは思いもしなかったよ」

派手な音と共に落ちてきた少女の方を見て苦笑を浮かべる。
そして近づいて来るアシマリに気付けば頭を優しく撫でて、その後立ち上がりマユズミの元へと歩いて行く。

「こんにちは、危なっかしいお嬢さん?怪我は無かったかな?」

尻餅をついているマユズミへと手を伸ばし立ち上がらせようとする。
それを尻目にしながらルカリオは岩肌に背を持たれて動こうとしない。主人を信頼しているのか、それともただ単に興味が無いのか…どちらかは不明だが。

「それでお嬢さんはなぜこんなところに?ここは危険な野生のポケモンも出現する、ピクニックならばもっと見晴らしの良い場所が最適だよ?」
93マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/18(水)23:26:57 ID:TiK
>>92
「いてて……。」

目じりに涙を浮かべながら腰をさする少女。
流石に見かねたのか、岩に背を預けていた女性がこちらに近づいてきた。

「ウチは大丈夫……、あ、アシマリ!?アリアドス!?」

「スパーーーダ!!」

セレーネの手を借り、立ち上がると、少女は辺りを見渡す。
ルカリオを興味深そうに見ていたアシマリが、名前を呼ばれて少女の下へ駆けてくる。
アリアドスもどうやら無事だったようで、元気そうに声を上げながら少女の足元に擦り寄る。

「いやー、これはお恥ずかしい……。」

顔を赤らめながら笑う少女は土煙を払うとあたらめて女性の方へと向き直る。

「特訓っちゅうか、なぁ。ウチもトレーナーやし、少しはこの子らも育ててやらんと。」
「おねーさんこそ、なんでこんなところにおんねん?」
94ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/18(水)23:31:59 ID:HJ6
>>90
リオルのでんじふゆうはとても安定していた。
サイコパワーとはまた違ったオーラを纏っては居たが、そのぷかぷかと宙に浮く姿はランクルスらの超能力と遜色ない。

「ぶぅる」

エレキブルはランクルスのノリに戸惑いながらも、大きな拳をちょこっとランクルスに返して、静かに礼を言った。

「ああ、感謝しきれないよピタヤ!やったな、リオル!」

宙に浮いたままのリオルはソウジに近づき、とびっきりの笑顔でもってハイタッチをした。

…と、集中が切れたのか、でんじふゆうは浮力を失い、リオルはポテっと転んでしまう。
リオルがてへへと舌を出したのを見て、ソウジも笑った。
弟子の成長を喜ぶエレキブルは大きな掌でリオルの頭をごしごしと撫で、場は和やかな雰囲気に包まれる。

「はははっ、まだまだ修行しなくっちゃな!」

ポケモンの技は覚えただけではただの技だ。その技をどの技と混ぜるか、いつ使うのが最適か…
バトルには色々な要素が絡む。だから例え同じ名前の技でも、ポケモンによってその効果や威力には違いがあったりするのだ。

「はどうだんか…リオルが使うのは難しいかも知れないけど…キャスタナって…?」

リオルがはどうだんを習得するのは至難の業だと言う祖父の言葉を思い出しながらも、ピタヤから聞き慣れない単語が飛び出たのをソウジは聞き逃さなかった。
95セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/18(水)23:47:25 ID:d7Y
>>93

「ふふ、どうやら彼女はルカリオに夢中のようだね?モテモテなようで羨ましい限りさ」

そんな軽口を叩きながらルカリオへと悪戯めいた笑みを送る。
しかし一方のルカリオは相変わらず無関心。

「いやはやすまないね、恥ずかしがり屋なんだよ彼は」

なんて茶化してフォロー。

「特訓か、確かにそれならば納得だよ。お嬢さんのポケモンたちはとても懐いているらしい、きっと良いトレーナーなんだろうねお嬢さんは」

アリアドス、そしてアシマリを順番に眺めて微笑む。
ポケモンとの信頼関係がしっかりと構築されている。ポケモンとの信頼…絆はポケモンバトルでは不可欠なものだ。そういう面から見れば彼女はきっと優秀なトレーナーなのだろう。

「私かい?そうだな…私は旅をしていてね、偶々ここを通りかかったから何か面白いものがないかと物色していたのさ」
96ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/18(水)23:53:53 ID:ZY3()
>>94
>>89

『ぷにぷにぷにー♪』

ランクルスも協力できてうれしそうだ。リオルとも打ち解けている。
そして、不意に漏らした言葉に、ピタヤはすこし気まずいような表情で答えた。

「あ、いえ……独り言ですよ……」

『ぷに……ぷに』

「……まぁ、周知しておいてもバチは当たらないですかね」

ランクルスの説得に押されて、ピタヤは静かに語りだした。

「キャスタナというのは僕の古い知り合いなのですが……その、彼女はあまり褒められたものではない仕事をしています」

「僕は何度も足を洗うように説得しました。ですが彼女もトレーナーとしてはかなり強い部類に入る人間……組織としても容易には手放せないでしょう」

俯き気味に、その身の内を語る。
キャスタナ、という少女はガスマスクを付け、フードを被り、最近ナナイタシティ近郊でも暗躍しているらしい、裏社会の用心棒トレーナーとも言うべき少女らしい。

「もし彼女と対峙するようなことがあれば、真っ向勝負でぶつかり合うのは極力避けてください」

彼女が物理防御力を極端に重視する事、そのため特殊攻撃に比較的弱いパーティだという事、また特殊アタッカーを揃えたとしてもその攻撃力には十二分に注意しなければいけない事などが、ソウジに伝えられた。

「僕は……ある目的があってこの街に来ました。その目的のために、貴方を巻き込むことになるかもしれません」

「ですが……貴方が僕の目的を協力して解決してくれるというのであれば、僕も快く受け入れたいと思います」

ピタヤのメッセージナンバーだ。何かあれば駆けつけるという。

「それでは、またどこかで。よい夜を」

月夜の境内に、ぷにぷにとピタヤの後姿が消え、また月明かりが境内を照らすばかりとなった。
97マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/19(木)00:02:05 ID:bzK
>>95
いいトレーナー、という言葉に少女は一瞬押し黙る。
一瞬、脳裏にフラッシュバックする男の影に、少女の表情が固まる。
しかし、次の瞬間にはもとのヘラっとした笑みを浮かべる。

「もー、褒めたって何もでえへんで?」
「ふーん。でもこんなとこに、なんも無さそうやけどなぁ。」

「スパーーダ!」

ふと、アリアドスがつんつんと少女をつつく。
振り返ると、先程少女が落ちたところに何かが落ちている。
少女の持ち物である古い本。落ちた時の衝撃により、どうやらバッグから飛び出したらしい。

「ああ、落としとったんか。ありがと、アリアドス。」

「スパーーダ!!」

少女はそれを拾うと表紙についた埃を落とす。
『時わたりの伝説』。ジョウト地方に古くから伝わる伝説についてまとめた伝記だ。
98セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/19(木)00:19:27 ID:oEn
>>97

「――――」

少女の表情の変化、いや硬直をセレーネは見逃しはしなかった。
だがそれを追及するのは野暮だろう。下手に触って良いことは無い。

「なに、ただ事実を言ったまでさ」
「そんなことはないさ、何やらここでは化石が見つかることもあるそうだよ?」

事実先ほどまで色々発掘していたが、ほのおの石やその他にも様々な鉱石が見つかった。
探し方にもよるのだろうがここが鉱石が豊富な場所というのは間違いないだろう。まぁ目当てのものが見つからなければ意味がないのだが。

「――――時渡り…セレビィ…」

ふと、その単語が目に入ってしまった。
セレビィ。確か、ジョウト地方に伝わっている幻のポケモンだっただろうか。しかしその伝記をなぜ彼女は持っているのだろう……
99マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/19(木)00:35:30 ID:bzK
>>98
「うん。セレビィ。」

時を超えると言われている幻のポケモン。
もはやおとぎ話のような話で、その存在すら怪しいポケモンである。

「ウチの旅の目的なんよ。セレビィに会うって。」
「面白いやろ?こんな昔話大真面目に信じとるんやから。」

少女はそう言いながらバッグの中に伝記を大切そうにしまう。
かつて何度も、このことで笑われてきた。少女自身も、笑われても仕方ないと割り切っているし、笑ってもらった方が気が楽だった。

「出会って捕まえたろうとか、闘ったろうとかじゃないねんけど、一度でええから会ってみたいねん。」

その先の言葉は辛うじて飲み込んだ。『会って、父親がしたことを謝りたい』と。
100ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/19(木)00:41:40 ID:XFA
>>96
脈々と語られる『キャスタナ』が持つ単語の重さにソウジは驚いた。
ちょうど気まぐれに触れた一冊の本が隠し扉のスイッチだったときのような。
多少は戸惑ったが、彼の持ち前の正義感は彼女の話す事を事件として認識し、また自分も協力をしなくてはならないと思ったのだった。

ソウジは ピタヤのメッセージカード を だいじなもの に しまった !▼


「………ロケット団やプラズマ団みたいな奴らがこのナナイタシティにも居るってことかよ…」

ソウジはピタヤの調査におよそ協力的な返答を残し、ランクルスとの別れを惜しむリオルにはオレンの実を齧らせながら、彼女が去った後の静寂に思考を浸した。
最上段に腰を降ろした彼は自然と笑顔を浮かべている自分に気付いた。ワクワクしている自分が居たのだ。
悪事を働く連中は許せないが、それらに立ち向かうこともまた、彼の憧れの一つだった。

「そのときは出番だよな?エレザード」

ソウジの呼び掛けで、月光を背にする人影が一つ増えた。
新しい影は暗闇の中でもそれと分かるほどに、こちらへニヤリと笑って見せた。
101セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/19(木)00:53:45 ID:oEn
>>99

「セレビィに会う、か…あぁ、旅の目標にしてはこれ以上無いほどぴったりだね」
「それに私は笑ったりなんかしない…誰にも言ってはいけないよ?伝説や幻と呼ばれるポケモン……私は、その中の何体かに会ったことがあるんだ。旅をしていると不思議なことに恵まれる…だから私は決して笑わないよ。きっとセレビィは何処かにいる…それは私に誓って保障しよう」

かつてはそれらを求めたことさえあった。
だが……それでも、それらの力を使っても目的の到達には叶わないと知ったのだ。ポケモンの力を使ってさえも、それはきっと実現することはできない。
だからこそ自分自身の手で、どんなことをしてでもそれを実現させる。
どんなに非難されても構わない、自分が正しいとただ信じて――――

「……人は、自分の手で届かないものにこそ憧れるものなのさ。いつしかそこに手が届くものだと信じてね…そして、それが手に届いた時にこそ……
「ふふ、君はメガシンカ…という言葉を聞いたことがあるかな?実は私はそのメガシンカの謎を追っているんだよ」
102マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/19(木)01:14:13 ID:bzK
>>101
「ホンマに!?」

伝説や幻と言ったポケモンたち。そんなポケモンと、目の前の女性があったことがあるなんて。
少女はセレーネの発言に、子供の様に目をキラキラと光らせる。

「メガシンカ……。」

聞いたことはあった。遥か海を越えた、カロス地方で見られるという不思議な現象。
昔、セレビィについて調べる過程で、少女はメガシンカについて、古い文献を読んだことがあった。

「たしか、メガシンカに必要なメガストーンは、宇宙からきた隕石が変化したものやって。」
「カロスにしか無い文化とされてるけど、その起源はホウエンにあるって、読んだことあるわ。」
103オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/19(木)22:09:57 ID:36n

「た、助けてくれぇ!!」

夕焼けに赤く染まるナナイタシティの路地裏は既に夜の如き薄暗さに包まれていた。
突如として路地裏から聞こえた悲痛な叫びの直後、二人のバッドボーイが路地裏から飛び出した。
その背後より姿を現したのは一人の少年。

「……話にもならねぇな。つまらん悪事ばかり働きやがって……。」

片手に持ったモンスターボールを腰のホルダーに収めながら、その目深く被った黒のニット帽の下から鋭い眼光で夕時の大通りを睨んだ。
流石は都会という事もあり一日中眠らないこのシティでも、この地域は治安が悪い事もあってか比較的人通りは少ない様だ。
……とは言え、「比較的」だ。それでもそこそこの人通りはあった。
中にはトレーナーと思しき人間が幾らか見られ、右方では既にバトルが始まっているのか、微かにトレーナーの声も聞こえた。

(あのピタヤとかいう奴が言っていた悪事を働きそうな連中ってのは……)

(……流石に見た目じゃあわからねぇな。まぁいい。)

周囲を見渡した後、少年ことオトギリは自身の背後で先程敵を切ったばかりの前足の具合を確かめていたコロトックに合図をする。
『連戦だ』と。コロトックは何時でも戦える、と言わんばかりに前足でウォーミングアップをした。
ポケモンを引き連れてさえいれば目と目が合えばバトルを仕掛けて来る者が多いのがこのシティの法則。

(―――さて、何処からでも掛かって来な。
悪人探しついでにポケモンバトルと行こうじゃねぇか。)

オトギリは両手をポキポキと鳴らす。
成程、この大通りであればバトルの相手を探す事にも困らないだろう。
オトギリは笑みを浮かべた。
104セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/19(木)22:10:37 ID:oEn
>>102

「あぁ…だがそれでも私の求めるものは未だ手に入らないらしい。まったく残酷なものさ」
「それにそんな劇的なものでも無かったよ、あれは人の触れていい領域じゃない……"今"は、ね」

太古から生きていると云われるポケモン。
未来から来たと云われるポケモン。
そのほかにも様々なものと逢ったことがある――――だがそのどれも身のある出逢いでは無かった。目的に近づくことはなかった。

「そうだね…私が聞いたことがあるのもそんなところだ」
「なら――――ホウエン地方に伝わる"伝説の巨石"というのをご存知かな?」

伝説の巨石とはメガシンカのルーツと言われるものだ。
そう言ってセレーネはローブの下からこぶし大の大きさの水晶のようなものを取り出した。その水晶からは強大なエネルギーが感じられ、それはポケモンたちにとってはより一層感じられるだろう。

「ならばこんなことを聞いたことがあるかな?メガシンカ時には爆発的な進化エネルギーは観測されることを……」
「メガシンカとはポケモンの可能性だ……だが、人間の可能性をも膨らませることもできる…そうは思わないかい?」
105マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/19(木)22:26:28 ID:bzK
>>104
「"伝説の巨石"……もしかして、それが?」

セレーネが取り出した水晶は、少女にも分かるほど、強大なエネルギーを放っている。
少女の足元にいたアリアドスとアシマリは、より一層その力を感じるのだろう、どこか魅了されたようにその結晶体を覗いている。

「進化エネルギー?人間の可能性……?」
「なんや、話が難しゅうてよく分からんわ……。人間がメガシンカのエネルギーで何をするん?」

セレーネの話は少女には少々難しすぎたようだ。
ただ、話を聞いてなにか恐ろしいような、都市伝説や陰謀論を聞いた後の様な、ざらついた感触が残る。
106スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/19(木)22:32:05 ID:loG
>>103
「少年、随分とやるじゃあないか」

ビルの隙間から帯の様に一筋夕焼けの光が射し込んでいる、ナナイタシティの夕焼けは濃い影を作り出し街のの姿を象っていた。
オトギリに話し掛けるその男、逆光を受けて影を纏い、一陣の風に棚引くマントと特徴的な仮面のシルエットがオトギリの興味を引くだろう。

「どうだい?次は僕とバトルをしてみないか?」
「丁度暇を持て余しているポケモンがいてね、少しばかり血の気が多いからそれなりのトレーナーに相手をしてもらいたいのだが…」

仮面の下に湛えるのは余裕を持った微笑み、碧色の目が真っ直ぐにオトギリを見つめ、そのマントの下には3つのモンスターボールが吊り下げられている。
107メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/19(木)22:37:04 ID:ilf
ナナイタシティの東地区にある大きな広場、よく手入れのされた見晴らしの良いこの場所には今日も多くの人が集まっている。
だがその中に小さな子供の姿は少ない。
いや、正確には「子供もいるがそれと同じ数だけ大人も居る」というチグハグな光景だった。
しかしそれもこの世界では珍しい事ではない。
子供も大人も関係なく、平等に楽しむことが出来るものがこの世界にはあるのだ。

あー!ボクのクルマユ!!

中央にいた二人の子供の内の片方が声を上げた。
どうやらようやく決着がついたらしい、クルマユとイワンコの小さなケンカはイワンコの勝利で終わったようだ。

悔しそうな顔をしながらクルマユをボールに戻した少年が、大事にそのボールを抱えながらキョロキョロと周囲を見渡す。

『バトルに名乗り出るトレーナ-が居ない場合、先ほど戦っていたトレーナーが次の対戦をするトレーナーを指名する』
それがこの広場のルールだった。

少年がある女性の前で足を止める。
レジャーシートを敷き、日傘をさしならがバトルを観戦していた水玉のワンピースの女性の前で。

「あら~、私ですか?」

この女性はよくポケモンバトルを観戦しに来ているが、バトルしている姿をここにいる誰もが見たことはなかった。
いつも見ているだけではつまらないだろうと言う少年の気遣いだったのだろうか、多くのギャラリーは断られるだろうと思っていた矢先……

「ん~…仕方ないわね、一回だけよ?」

食い下がる少年に根負けしたのか、女性は傘を畳むとギャラリーたちの中央へと歩み出てきたではないか。
さて、この女性のバトルの相手となるのは―――
108オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/19(木)22:40:38 ID:36n
>>106

「ああ、構わないぞ。」

挑まれた勝負。トレーナーならば断る理由があろうか。
オトギリがその特徴的な容貌の男を見た、同時にコロトックがオトギリの前に躍り出る。

「丁度バッドボーイ共の相手ばかりで飽き飽きしていた所でな。
……俺様のコロトックも並のコロトックではない。
お前の血の気の多いポケモンもこいつが相手ならば相手にとって不足はないだろう。」

「キシィィィ……」

コロトックが殺気立った様子で静かに鳴く。
相手がポケモンを繰り出せばそれがバトルの始まりの合図だ。

「さぁ、いつでも掛かって来な。」

周囲にギャラリーが集まって来た。
ポケモンバトルは住民にとってはする事も見る事もエンターテイメントなのだろう。
109セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/19(木)22:51:14 ID:oEn
>>105

禍々しい、というよりも神々しいという方が正しいだろう。
キーストーンともメガストーンとも違うそれはどこかこの世のものとは思えないような蠱惑的とも呼ぶべき魔力が秘められているようで。

「あぁ、その一部さ。しかしたった一部だけでもこれほどの強大な力を放つ…本当に興味深いよ」

水晶に魅入られるポケモンたちを尻目にセレーネはそれを懐へとしまう。

「ふふ…そうだね、これはまだ語るべきでは無いだろう。なんて言ったって未だ実現できるかも分からない泡沫の夢……」
「でも、一つ言うとするのなら……私は、今の停滞した人類を進ませたいんだ。その先にこそきっと…まだ見たことのない景色が広がっている、そう信じてね」
110スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/19(木)22:53:09 ID:loG
>>108
「コロトック、それが君の相棒かい?」
「いいポケモンだ、僕はコロトックの奏でる音楽が大好きでね…おっと、その話はまた後で」

オトギリの前に躍り出るコロトックを見て、笑みを深くする。
コロトックというポケモンに対して戦闘向きであるというイメージを持つ者は少ない、しかしこのコロトックは誰がどう見てもそのイメージを払拭する雰囲気がある。
まずそこまで育て上げたオトギリの手腕に賞賛を送り、それからボールを投げた。

「では、遠慮無く君達の胸を借りるとしよう!ゆけっ!キリキザン!」

「……ザン」

スパーダが投げたボールから飛び出したのはキリキザン、先程彼が言っていたのとは裏腹に、落ち着いた雰囲気で腕を組みコロトックを見遣る。
111ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/19(木)23:00:13 ID:XFA
>>107
そこそこ離れた木陰では、目立つライムイエローの服装に身を包んだ少年が試合を観戦中だった。
子供たちのバトル風景はとても微笑ましく、彼は終始にこやかに技の変遷を追っていた。
日替わりのバトルスポット巡りが彼の趣味だ。

「ナイスバトル!」

ソウジは肩を落としてとぼとぼやってくるクルマユの少年の頭に手を置く。
最近メキメキとバトルの腕を上げてきた彼は、街のバトルスポットではちょっとした有名人だった。

さて、バトルに名乗り出る人ももうおらず、そろそろ解散かと思われた矢先、新たな挑戦者が現れる。
大人っぽいパラソルおねえさん――――あんな人居たっけか。
ただならぬ雰囲気を感じ取ったソウジの手は、自然と腰のボールスロットに乗っていた。

「ソウジです!よろしくお願いします!」

急いでその女性の対角線上に走り寄ったイエローの少年は、離れた距離でも聞こえるように声を張って挨拶した。
彼が靭やかに一礼すると、拡大されたハイパーボールが掌より現れ、弾みよく地面に投げつけられた。

「ゆけっ、!エレキブルっ!」

いっせいに膜を張る光をやぶって現れたのは、らいでんポケモン、エレキブルだ。
荒々しく奔放な気質の多いエレキブルには珍しくその様子はなく、むしろ仙人のような落ち着きさえ見せる風貌をしている。

「先行はどうぞ!」

エレキブルは勇ましく四股を踏んで地面を揺らすと、堂々とした仁王立ちの構えをとった。
112オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/19(木)23:06:40 ID:36n
>>110

「……キリキザンか。
成程、中々良い顔付きをしている。楽しませてくれそうだな。」

オトギリがニィッと笑う。
既にバトルは始まっている。野良試合には勝負開始を告げる審判等存在しないのだ。

「……俺のコロトックは良い音楽を奏でるぞ。
相手のポケモンを楽器に、阿鼻叫喚の狂走曲をな。
コロトック!シザークロス!」

「キシィキシィ!!!!」

オトギリが命じた、それと同時にコロトックが低い体勢でキリキザン目掛けて駆け出す。
刹那、両腕が薄緑色に発光した。
殺意の権化と言っても過言でもない鋭利な刃が、悪を滅ぼす虫の刃が、キリキザンへと迫った。

―――唯のシザークロスではない。

「命の玉。」

オトギリがポツリと呟く。
己の命を削る事でその技の殺傷性を高める無慈悲なエンハンスメント。
対価としてコロトックが身体の何処かに持つその命の玉が疾走するコロトックの肉体を紫色に輝かせ、命の取引を始める。

それを気にも留めず向かう命を刈り取る刃、獲物は当然キリキザンの命のみ。
113マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/19(木)23:08:57 ID:bzK
>>109
「うーん、やっぱ何言うとるかよくわからんけど。」

少女は今の人類が停滞してるとか、人類の進歩などの、大きなものの捉え方は出来なかったが。
むしろ少女が気になったのは、自身の目標について語るセレーネの表情だった。
そのことについて多少考えてから、少女は一つ一つ言葉をしっかりと考えて言う。

「うーんと……、よく分からんねんけど。」
「多分、お姉さんの目標って凄いことなんやろうし、すごいええことなんやと思う。」

初対面の小娘にこんなことを言われるなんて、気分のいいものであろうはずもないが。
それでも、セレーネのその目になんとなく覚えがあったが故。彼女は言わざるを得なかった。
自分の夢を応援してくれた彼女に、傷付いてほしくないから。

「その、目的のための行動は、しっかり考えてほしいねんか。」
「やろうとしてることが大きいほど、人を傷つける可能性も大きくなると思う。」
114メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/19(木)23:16:59 ID:ilf
>>111
「私はメユリ、よろしくねソウジくん。」

メユリと名乗った蒼い髪を結い上げた女性は目を細め、優しく微笑みながら若き対戦相手へと小さく手を振る。
その柔らかな物腰のまま腰に下げたモンスターボールを手に取ると、小さな手首のスナップでそれをバトルフィールドへと投げ込んだ。

「いきなさい――――――ラグラージ」

草原に落ちたボールが大きく口を開き、中から何かが勢いよく飛び出してくる。
太い腕から伸びる巨大な掌を大地が揺れるほどに叩きつけ、荒々しくその体躯を現したそのポケモンは
水と地面の複合タイプにして、ミズゴロウの最終進化形態―――――

『ラグラ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァァアアアズィ!!』

吠える青い巨体は通常のラグラージと比べても一回り近く大きい
鼻息荒く伏せるように低く構えるその眼光はバトルに不慣れとはとても思えない、むしろ完全な武闘派の雰囲気すら醸し出している。

「ほんとうに攻めていいのね?」
「……なら、遠慮はしないわ。」

メユリの小さな合図で大きく地面を蹴り上げたラグラージは、体格を感じさせない程の跳躍を見せて大きく飛び掛かる。
自らの左腕を盾のように構えて突き出し、捉えたエレキブルに対して躊躇無くゼロ距離まで接近する!

「ラグラージ!かわらわりよ!」

肉薄したラグラージはその長い腕を大きく振り上げると、刃のように立てたその掌を叩きつけるように自らの体重を乗せて振り下ろした!
115セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/19(木)23:18:59 ID:oEn
>>113

「まだ君には理解できなくてもいいさ…いや、君だけじゃない。誰も理解しなくても、ね」

今の人類は…停滞している。技術自体の進歩はあるだろう。確かにそこだけを見れば人類は次々と先へ進んでいるのかもしれない。
だがその思想と本質は全くもって変わっていない。
争いは終わらず、人間同士のすれ違いは絶えることはない。悲しみや絶望、そんな感情は今もなお生まれ続けている。

「――――そうか、そう言ってくれるかい」
「ならば君が私に恵んでくれたその忠告はしかと胸に刻んでおこう」

………そんなことは、もうとっくに気付いている。だがその上でも目指さなければならない。
犠牲が出るかもしれないということは覚悟している。罪悪感が無いと言えば嘘になる。
だがもう今更どうすることもできない。気付いてしまったからには動くしかない。この世界に、人類に変革をもたらさなければならない。

「………私はセレーネ、覚えていてくれると嬉しいな」
「そして、良ければ君の名前も――――」
116スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/19(木)23:20:23 ID:loG
>>112
「キリキザン、クールに行こう」

「ザン……!」

戦闘が始まっても尚、その場で腕を組んだまま微動だにしないキリキザン。
コロトックが鋭利な鎌を以って迫ってくるのを見ながらも動かない───やがて気付くだろう、『攻撃をわざと引きつけている』と。

コロトックの鎌がキリキザンに突き立つその瞬間、コロトックの気が一番緩んだ瞬間を鋭く見定めキリキザンが動く。

「ザン!!」

コロトックの腹部を狙った素早い手刀、不意を突いて後の先を取った先制攻撃が放たれる。
ふいうちである、最初からキリキザンとスパーダはこれを狙っていた。
本来ならちょうはつでもして攻撃が大振りになるのを狙うのだが、熱気を帯びたオトギリ達にはそれすら必要無いと判断したのだろう。
117マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/19(木)23:33:32 ID:bzK
>>115
「セレーネさん。よく覚えとくわ。」

少女はそう言うと、再び笑顔を見せる。
彼女の目指すところは分からないが、彼女を応援しよう。
彼女もまた、自分を無条件に応援してくれるような人なのだから。

「ウチはマユズミ。よー覚えときや。」
「いくで、アシマリ、アリアドス。」

少女はセレーネを残し、ゆっくりとその道を歩いていく。
そして、途中でくるりと振り返り、笑顔で告げる。

「おねーさんが道間違えたら、真っ先に殴りに行ったるわ。」

そう言うと、少女は山道を走って去っていった。
118オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/19(木)23:40:12 ID:36n
>>116

―――動かない相手。
コロトックが肉薄した。
然し直後、コロトックの身体は無様な悲鳴と共に後方へと吹き飛んだ。

「キシィィィィ……」

コロトックの身体が地に落ちる。
その表情は青醒め、最早戦闘を続行出来る様な状態ではない。不意打ち。キリキザンの扱う技としても有名な技の一つ。
キリキザンの殺傷性の高い一撃から放たれる不意打ちをまともに食らったのだ。
早速勝負あったか―――

―――その答えは否。
オトギリの表情にはこの状況で尚、笑みが浮かんでいた。

「……お前の攻撃、確かに効いた。
だが……俺のコロトックは少し手品が得意でね。」

コロトックの身体があった場所には唯、ぬいぐるみが転がっているのみ。
ぬいぐるみは跡形も無く消滅。
直後、キリキザン、オトギリ、スパーダ。三者の間に風が舞った。

ギャラリーが一斉に顔を見上げる。

「……コロトック―――」

オトギリは右手を前に出す。
ギャラリーの視線の先には宙を舞うコロトックの姿。
然し紙一重の回避故か、不意打ちによるダメージは多少入っている様だった。
加えて身代わりにより削られた生命力。不意打ちを無事過ごしたとは言い難い。

「―――歌え!」


「「「――――ギイイイイイイイィィィィィィ!!!!!」」


ギャラリーが一斉に耳を塞いだ。
建物の外壁、コンクリート、看板―――数多のオブジェクトで反響し、騒めく様な音がシティ一角に響き渡る。
むしのさざめき。羽の振動による生じる音波により、生物に悪影響を及ぼす攻撃を仕掛ける。無論命の玉によりその性能も向上していた。
だが、それはフェイント。
コロトックが急降下する。その両腕は先程同様に緑色に輝いていた。

「―――シザークロスッッ!!」

再び始まる力の対価、命の玉による生命吸収。
再び仕向けられた刃が、キリキザンへと向かう―――!
119ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/19(木)23:40:15 ID:XFA
>>115
「ラグラージ…初めて見るけど…大きいな」

メユリが繰り出したラグラージを目にして、まずその体格に圧倒された。
エレキブルのざっと1.3倍はある。だが、当のエレキブルは不敵な笑みをもってラグラージの猛る様を眺めていた。

「エレキブル、みきりで躱せ!」

繰り出されたラグラージの迫力もさながら、その体格からは想像できない程のスピード。
ソウジは後攻を選んだ事を少し後悔していた。
かなりの強者――――トレーナーの本能がそう告げていた。
だが、エレキブルは動こうとしない。
風圧がその額に触れる―――――その直前まで動かない。

「…ああくそっ、エレキブル!クロスチョップで受け止めろ!」

「…ぶぅる!」

瞬時、目にも留まらぬ速さでエレキブルの両椀がクロスされる。
白刃取りを思わせる、手練の技。その隙間に挟まる形でラグラージのかわらわりは受け止められた。

ソウジはふぅ、と安堵の息を吐く。
エレキブルは確かにとても訓練されたポケモンだったが、やはり貰い物のポケモンだ。
そう、トレーナーとのコンビネーションにはまだ難がある。

最近になって分かってきたことだが、エレキブルはできるだけ動かず、最低限の対処でその場を乗り切るスタイルを得意としているようだ。
ソウジも自然と、それに合わせた技の選択を理解し始めていた。
トレーナーがポケモンに歩み寄る…ポケモンはトレーナーに応える。二者のコンビネーションはそうやって完成されていく。

「よーし、そのままかいりきで押すんだ!」

両手を思い切り開放してラグラージの腕を返したなら、その豪腕に負けじと掴みかかるだろう。
パワータイプの押し合いへし合い、その様はまさにワイルドな相撲勝負だ。
120メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/19(木)23:59:00 ID:ilf
>>119
「良いエレキブルね。」

ソウジと対象的にメユリは非常に落ち着いていた。
余程ラグラージを信頼しているのか、その間には確かな歴戦の絆が感じ取ることが出来た。
現に技を指示されるまでもなくラグラージは彼女の意思を感じ取りエレキブルへと接近している、幾重ものバトルによる賜物なのだろう。

声をかけた少年も、周囲にいたギャラリーもヘビー級ポケモン同士のバトルに困惑し、同時に息をのんでいるのが伝わってくる。

かわらわりを受け止められたラグラージはひるむ様子もなく、力によってこじ開けようとその腕に更に力を籠める。
ラグラージが浮足立った瞬間を逃さなかったのか、エレキブルがそれを素早く打ち払うと、エレキブルがかいりきをもって掴みかかろうとしてくるではないか。

『ラ゛ァ!!』

いじっぱりなラグラージからして見ればその挑戦を断る理由は一ミリも存在しない。
エレキブルの両手に自らの両手を叩きつけ、手四つの状態での力比べに乗ってきた!
筋肉が浮き上がる程の力を籠めるラグラージは当然一歩も引かないが、この形になる時に体制を崩していたラグラージは電車道を作りながらジリジリと押されている。

「……もう、仕方がない子ね。」
「良いわ、貴方のパワーを見せてあげなさい!」

だが、それもメユリの一喝によって覆る。

「ラグラージ!たきのぼり!!」

『ラ゛ァ゛ァ゛ァァアアア!!!』

まるで頭突きでもするかのように上半身を一気に落としたラグラージは、大地を響かせるように一歩、一歩と押し返そうと踏み込む。
そして今まで溜めていた力を開放するかのように全身に水を纏い、エネルギーを突進力へと変換する!
名の通り、それは瀑布を縦に割る如きパワーを持つわざ―――――たきのぼり、エレキブルを押し切って叩きつけようというのだ!
121スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/20(金)00:00:37 ID:v1C
>>118
「ほう……これは凄い」

「ザン…?」

キリキザンのふいうちが綺麗に決まった、これ程上手くふいうちが入ればいくら鍛えているとは言えコロトックの防御力ではひとたまりもない。
だが、その手応えが余りにも軽過ぎる事にキリキザンは動揺を覚えた。

ふいうちをくらったコロトックがいるはずの場所には緑色のぬいぐるみが転がっており、コロトックの姿はない。
完璧なタイミングのふいうちにすら対応しみがわりを置く速さ、スパーダは素直に賞賛し、キリキザンと共に空を飛ぶコロトックを見上げた。

「ザンッ!!?」

その瞬間、コロトックが掻き鳴らす激しい音波攻撃に、キリキザンはよろめき隙を晒してしまう。
そこへ迫り来るコロトックの鎌、今度はふいうちを放てる程の余裕は無く、キリキザンの胸に十字の斬り傷が刻まれる。

「キリキザン!!」

上がるスパーダの叫び声、しかしその声色は悲痛な叫びというよりも、尚も気高さを失わない力強い指導者の雄叫びに近い。
───というより、周囲のギャラリーですら思わず耳を塞いでしまう程のむしのさざめきに、彼は表情1つ変えずに戦況を見定めていた。

「───今だ!メタルバースト!」

「ザ……ン…ギリッ!!」

スパーダの指示に力強く眼を見開いたキリキザン、仰け反りかけた身体を無理矢理前へと押し戻し、受けたダメージを倍増して上乗せした一撃を両手で放つ。
掌低の形で放たれるその一撃は、カウンターとしてはトップクラスの性能を持つ攻撃、まともにくらってしまえばタダでは済まないが…?
122オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/20(金)00:19:09 ID:I5b
>>121

「キシィィィ……」

キリキザンの胸に刻まれた十字。
直後、オトギリは己の迂闊さを恨んだ。キリキザンには有名な二つの大技があった。
一つはふいうち。
相手を直前まで釣った上で強力な一撃を浴びせる大技。
そしてもう一つは―――

「―――メタルバーストかッ!!」

既にコロトックは「間合い」だ。餌に釣られたのだ。オトギリも、コロトックも。
無論、至近距離からの一撃。今度こそ回避出来ない、不意打ちよりも遥かに強力な一撃を。

「避けろ、コロトック!」

オトギリの叫びも虚しく、コロトックの身体をキリキザンの刃が抉り、その上で衝撃波が放たれた。
体液をまき散らしながら後方へと吹き飛ばされ、建物の外壁に叩き付けられるコロトック。
瀕死、いや、それどころか命すら失いかねない一撃。

「コロ、トック……」

オトギリは冷や汗を流しながらコロトックを見た。
ギャラリーも固唾を飲む。その場に居合わせた多くの者がコロトックの死を予感した。

「……寝ている?」

ギャラリーの一人が呟いた。
コロトックは深い眠りに就いていた。比喩表現ではない。本当に眠っていたのだ。
オトギリも理解が追い付かぬ様子でコロトックを見ている。
直後、コロトックは奇妙な舞を踊り始めた。

「チュミ……チュミミ……」

見る見る内に両腕が発達する。「つるぎのまい」。
これは「ねむる」による回復と「ねごと」による睡眠中の技の使用。
土壇場でコロトックはこれらの技の使用を自ら選択したのだとオトギリは理解した。危機は脱した……のだろうか。

……とは言え、睡眠中のコロトックではコントロールが効かない。
オトギリは冷や汗を流しつつコロトックの行方を案じながら、キリキザンとそのトレーナーがどう出るかを見ていた。
123スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/20(金)00:41:36 ID:v1C
>>122
「さて……キリキザン、やれるか?」

「ザン……ッ!」

流石にキリキザンも息が荒く、表情が険しくなって来る。それくらいにこのコロトックは強敵であるという事だ。
眠りについたコロトックを見つめ、息を整えながらキリキザンは持っていたきのみを食べる。
チイラのみ───体力が落ちた時に食べる事で攻撃力を増強する事が出来る希少な木の実だ。

「ふむ……回復をしながら自分を強化するか、器用な事をするね」
「これは君の考えた戦法かい?凄いじゃあないか」

眠ったままつるぎのまいを踊るコロトック、体力を大幅に回復するわざと、自らを大幅に強化するわざを見事に組み合わせている。
全く無駄の無い行動だ、スパーダは手を叩いて褒め称えた。

「ザン……ザァンッ!!」

だが、キリキザンは違っていた。
まさか自分のメタルバーストをまともに受けてまだ動けるなど、ましてや目の前で眠りこけるなど、バカにされているとしか思えない。
ならばこのまま眠った所で回復したぶんのダメージを与えてやろうと、一気にコロトックへと距離を詰め、腕の刃を振り下ろしかわらわりを放った。
124ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/20(金)01:20:21 ID:ar6
>>120
「ぶぅぅぅぅるぅぅぅ…………!!!」

エレキブルの側も格闘戦は得意と言えども、ラグラージのたきのぼりはその怪力で一歩、また一歩とエレキブルの後退を余儀なくしていく。
素人目にも、形勢の盤上の駒がせわしなく繰り動いているのが見てわかる程だ。
竜虎相対するが如きその圧倒的な光景は、ギャラリーの老若男女を湧き立てた。
だが、ここで安々と押し切られるほど、エレキブルの実力も伊達ではない。

「当然です、…センゾウじいちゃんのエースですから…!」

メユリの称賛に、トレーナーであるソウジは自信を持って肯定する。
彼の祖父センゾウは電気タイプのジムリーダーだった。
数年前まで現役。リーグ招致官のメユリならば、その豪快なバトルスタイルを目にしたことがあるかもしれない。

ならばやがて思い出すだろう、このエレキブルが得意とする芸当を――――

「ぶぅぅぅぅるぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

エレキブルが背を触れる大地を、電撃が奔った。
ほどけた糸のような光が閃いたかと思うと、次の瞬間、膨大な量の電流が二対の尾から放出され、強力な推進力となる。
そのシンプルなパワーとパワーのせめぎ合いは、両者の掌がめり込む程に拮抗するだろう。

しかしこれは――――この推力の方向は、単純にラグラージのたきのぼりへ対抗するためのものではない。
その推移はとても緩慢だが、手練のメユリには確実な違和感を抱かせた筈だ。
だがその対処にも間を与えず、尻尾の一つがエレキブルの股を潜って上方向に電流を噴射するだろう。

そう、こうして推力を反対側に一つずつ置くことで、エレキブルの身体は「車輪のように回転する」事ができる――――!

「エレキブルっ!今だッ、『じごくぐるま』ぁっ!」

「ぶぅぅぅぅぅぅるぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

エレキブルはラグラージの力に身を任せるスープレックスの要領で、大きく後ろに転ぶ。
空気を震わせるような魂の轟きが合い混ざる。彼は決してラグラージを掴んで離そうとはしないだろう。
順調に行けば恐らく、空中での大回転でラグラージに対する体力削りが行われる。

息を呑む大衆の眼前で、二者はタービンの如き怒涛の回転劇を始めようとしていた。
125オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/20(金)01:34:57 ID:I5b
>>123

「……さぁな。どうだか。」

この状況はオトギリが考えた戦法ではない。
ポケモンバトルの瀕死という状態を超えた「死」に迫った事。
それにより呼び覚まされたコロトックの生物としての本能が命じた、睡眠という最も原始的な回復手段。

迫り来るキリキザンの鋭利な刃。
唯のダメージならまだしも、死に至りかねなかった傷は「ねむる」とは言え回復がまだ不十分だ。
チイラのみで殺傷力を大きく増したこの一撃をまともに食らえばコロトックは一刀両断され確実に死ぬ。

「……キシィ」

キリキザンの刃が振り下ろされた。
ポケモン同士の命の駆け引き。二匹の「刃」の使い手による修羅場に唾を飲む事も出来ない人々。
トレーナーとしても何一つ為す術が無いので何も出来ずに唯々固唾を飲み続けるオトギリ。

―――直後、再び体液が飛散した。

コロトックの左腕が文字通り切断され、緑色の体液と共に宙を舞う。だが急所である臓物は無事だ。
「急所は外せ」。オトギリが普段、躱し切れない攻撃への対処法としてジヘッドとコロトックに命ずる曖昧な言葉。
その命令を朦朧とする意識の中で生存手段として探し当てたコロトックは想起し実行した。

「コロトック…腕がッ!もういい!やめろ!」

コロトックの命を案じたオトギリが強引にモンスターボールに戻そうとしたが、コロトックは微かに振り返りオトギリを睨む。
邪魔をするな、と言っているのか。オトギリは言葉も無くモンスターボール片手に黙って立ち尽くした。

「キ、シィ」

コロトックが夢現でほぼ意識の無いまま、両目のみを大きく見開いた。
オトギリと同じ時を生きて来たコロトックにもそこそこの知識があった。
それはまだコロボーシだった頃に幼いオトギリと共に読んだ図鑑に書かれていたキリキザンについての一文。

【どんなに 強い キリキザンでも 頭の 刃が 刃こぼれすると ボスの 座を 引退すると いう。▼】

(――――つまり、それは、貴様の、プライド、そのもの)

無意識に近かったコロトックの脳裏に一つの言葉が過る。
夢か現実かの判断も付かない様な意識の中でコロトックはその右腕に力を込めた。
その身体が命の玉の対価として一際強く紫色に発光する。
126オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/20(金)01:35:05 ID:I5b

「虫の……知らせ!」

オトギリが思わず声に出した。虫の知らせ。手負いの際に放つ虫タイプの技の威力を底上げするコロトックの特性。
其処に先程のつるぎのまいとコロトックが持つ命の玉の効果が加わり、最早桁違いの破壊力がその腕には秘められている。

「ギギギ、ジジジジジジジジジジジジジジィィィィィィッッッッッ!!!!!!!!!!」

叫びと共にコロトックが鋭利な牙を剥き出しにし、己の生命力を更に右腕に乗せる。

――――シザークロス。
狙いはその頭を飾る刃をへし折る事。左腕を失った、とは言え片腕でも破壊力は相当なものだ。
だが瀕死まで持ち込めるのかは微妙な所ではある。が、然しその破壊力はキリキザンのシンボルである刃を破壊する事に重きを置いていた。
それは最早、意地っ張りなコロトックの「意地」だったのかもしれない――――。
127スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/20(金)12:45:39 ID:onO
>>125>>126
(───不味いな)

宙を舞うコロトックの片腕、むしポケモンの再生力なら腕の一本を回復する事は容易いのかもしれない。
しかし、だからとてこの状況を黙って認めているとその先には何が起こるか───興奮した二匹のポケモンが行き着く先は明るいものでは無い。
戦うポケモンと絶句するオトギリの様子を見て、ここで初めてスパーダの表情から笑顔が消えた。

もう何度も見て来た悲劇を、こんな所で繰り返してはならない。

「キリキザン───」

「ザンッ!!」

キリキザンに呼び掛けるスパーダの声を掻き消すように、コロトックの叫びとキリキザンの雄叫びが重なった。
牙を剥き出しにするコロトック、血走った眼を見開くキリキザン、最早どちらのトレーナーの指示も聞かずに両雄は激突する。
最大限まで攻撃力を高めたコロトックのシザークロスに対して、キリキザンは敢えて狙われている頭部で挑む、思い切り仰け反った勢いを利用したアイアンヘッド。
剣がぶつかり合うような音を響かせて衝突した刃と刃は、キリキザンの頭部の刃にヒビを走らせた。

「ザン───ッ」

その衝撃に仰け反るキリキザン、コロトックの狙い通りに頭部の刃が破壊され、彼の誇りは傷付いた。

──────〝ブチッ〟

と、同時にキリキザンの中の何かが切れる。

「……キル…」

シザークロスを受けて仰け反ったキリキザン、そのまま倒れるかと思われたキリキザンはしかし、右腕を伸ばしてコロトックを掴み踏み止まる。
ゆらりとコロトックを至近距離で睨み返すその眼は、完全に瞳孔が開き切っていた。

「キルキルキルキルキルキルキル!!キル!キル!キル!!キル!!キィィィルゥゥゥゥ!!!!」

コロトックに掴み掛かり、鬼の形相で矢継ぎ早に罵声を浴びせるキリキザン、こわいかおとバークアウトの合わせ技……と言えばまだ聞こえはいい。
その様子はどう見てもまともな戦い方とは思えない、怒りに身を震わせる者のそれ。
そして、キリキザンはコロトックを掴んで逃さないようにしつつ、ヒビが入った頭部を振りかぶって至近距離からアイアンヘッドを浴びせようとした。
128スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/20(金)12:45:48 ID:onO
ポケモンバトルの度を超えた鬼気迫る様子に思わず眼を瞑る観客達、そして振り下ろされるキリキザンのアイアンヘッド。
〝ガキィィィンッ!!〟と硬い音が鳴り響き、やがて嘘のように静かになる。
恐る恐る眼を開き、事の顛末を確かめようとした観客の眼には、信じられない光景が広がっていた。

「───そこまでだ、キリキザン。私の声は聞こえているか?」

そこにいたのはコロトックとキリキザン、そしてキリキザンのトレーナーであるスパーダの姿。
彼の手には腰に下げていた模擬剣が握られている、鍔の部分に小さな丸い宝石が嵌め込まれた美麗な剣が。
そして、彼がその剣によってキリキザンのアイアンヘッドをその峰で受け止めている光景だった。

「……キル……キ…ザン……!?」

突然のトレーナーの乱入に驚愕したキリキザンはコロトックから手を離し、一歩後ずさる。
それを見たスパーダは、模擬剣を持つ手を下ろし、オトギリに振り向いてこう言った。

「僕達の負けだ、少年」
「ポケモンバトルだと言うのに居ても立っても居られなくなってしまった、許してくれ」

オトギリに背を向け、剣を鞘に収め、キリキザンの肩を優しく叩くスパーダは、自ら負けを宣言する。
129オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/20(金)15:35:42 ID:I5b
>>127
>>128

――場は静寂に包まれていた。
怒り狂うキリキザン、その一撃を制止したトレーナー。そして満身創痍のコロトック。
オトギリは力が抜けたかの如く、膝から崩れ落ちた。
膝が、切断されたコロトックの左腕より漏れ出た体液の水溜りに浸かった。

「……そんな」

自らの未熟さが招いた結果だった。トレーナーとしての不注意。或いは互いの信頼に頼り切った末に露呈した指導不足。
早い段階で降参しておけば、自分がコロトックにしっかりと指導していれば、こんな事態には。
キリキザンの手から離れ、その場に力無く崩れ落ちたコロトックの下へ這う様にして向かい、抱き抱える。

「キ、シィ……」

幸いまだ生きている。だが虫の息だ。

「ポケモンセンターに連れて行ってやるからな……」

コロトックをその切断された左腕と共に今度こそモンスターボールに戻した後、オトギリは暫く俯いて物思いに耽っていた。
キリキザンの最後の一撃。この男が止めなければ、コロトックはどうなっていたか。
試合自体は相手の降参によって勝利した。だが、あのまま続いていれば自分は敗北どころか、幼馴染のコロトックを―――。
暗い表情のオトギリは立ち上がり、スパーダの方を向いた。

「……いや、別に……構わない。お前が止めてくれなければ、俺のコロトックは確実に死んでいた。」
「……。」

"いい勝負だった。"

"良く育てられたキリキザンだ。"

"そういえばまだ名前を聞いてなかったな。"

そう言おうとしたが、言葉が喉でつっかえて出て来なかった。
だが、一度深呼吸をして再び発言を試みる。

「……おい」

自分に背を向けたスパーダに声を掛ける。
そして一度俯き、再び顔を上げると言葉を発した。

「……すまなかった。俺のトレーナーとしての力量が至らなかったばかりにこんな結末になってしまって……。」

それはスパーダだけではなく、コロトックに対しても向けられた言葉だった。
130スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/20(金)17:33:59 ID:v1C
>>129
「……謝る必要は無いよ、それは僕も同じだ」
「それに……勝ちたいと願うのは誰もが同じ事だ、君のコロトックも君の想いに答えようとした結果だろう」

コロトックを御しきれなかったオトギリが未熟だと言うのなら、それは自分も同じだとスパーダは語る。
お互いがトレーナーの為に勝利を求めたが故にこうなった、それを誰が責められようか。

「少年、どうかこれを気に病む事なく、己のポケモンと共に切磋琢磨してくれ」
「そして…二度と自分でそう思ってしまう事の無いように願うよ」

寧ろ失敗があるからこそ人は成長する事が出来る、まだ未来ある若者がこれに懲りず腕を磨き上げる事をスパーダは望んでいた。
マントを翻しオトギリに向けて何かを投げ渡す、黄金に輝く小さなかけら…げんきのかけらだった。

「ここからポケモンセンターまで少し距離がある、それを使って少しでもコロトックを癒してやるといい」
「よく育てられた素晴らしいコロトックだった、君さえ良ければまた良い勝負をしよう!」
「僕の名はスパーダ、魔剣の主人スパーダだ!」

オトギリにげんきのかけらを投げ渡すと、再びマントを大きく翻しキリキザンと共に歩き去って行く。
声を張り上げ、演技のように仰々しく名乗りを上げて、その男は去っていった。
131メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/20(金)18:32:13 ID:KFb
>>124
「“センゾウ”……?」

その名前をメユリが思わず繰り返したのは自分の記憶からその単語をサルベージするためだったのだろう。
――――自分がポケモンリーグ本部の招致試験官として働き始めたのは10年程前。
当時既にポケモンリーグの支部が存在していたこの地方への視察に同行した際、それと同じ名前の人物を見た覚えがある。
その時はバトルすることこそなかったが―――――

「電気使いのジムリーダー“センゾウ”……。」
「そうか…それが“センゾウのエレキブル”なのね…!」

失礼ではあったが、エレキブルはソウジのトレーナーレベルとは不釣り合いだと薄々感じていた。
その剛腕、歴戦の体の熟し……なるほど、今なら理解できる。

「まさかこんなところでジムリーダーのポケモンとバトルすることになるなんて……。」
「少し、昔を思い出すわ…!」

澄ましていたメユリの表情がわずかにほころぶ、彼女の心に僅かに火が付いたのだ。
エンジンがかかってきたエレキブルとラグラージの今のパワーは互角。
だがいじっぱりな彼女のラグラージがそれを良しとする訳がない。
まだ余力があると言わんばかりに技の出力が更に上がっていくのが見て取れた、少しまた少しとエレキブルを追い詰めてゆく。
対するエレキブルは単なる押し合い圧し合いではなく、力を逃がすかのように立ち回っている。
まるで、流れをいなすかのような―――――

「!!ラグラージ、仕掛けてくるわ!」

何かを感じ取ったメユリが声を荒げる。
その叫びを聞いたラグラージが目を見開いた時、間髪入れずにそれは起こった。

『ラグァ゛ッ!?』

ラグラージのエネルギーを斜め上へと逃がし、エレキブルは潜り込むように持ち上げる。
その状態のまま互いのエネルギーで水車のように空中で回転するこの技は。

「『じごくぐるま』……珍しい技をつかってくれるわね。」

じごくぐるまと言えば回転状態でじわじわと体力を奪い取り、フィニッシュで地面に自分ごと相手を叩きつける大技だ。
この高速回転状態を抜け出さなければ間違いなくラグラージは大地へと叩きつけられる。

「――――ラグラージ!かわらわり!!」

メユリは躊躇なく技を叫ぶ、この状況を打開する手がこの技にはある。
両腕をがっちりと組んだこの状態での『かわらわり』、だが瓦は―――――

『ラァァ―――――グラァア゛ッッ!』

頭でも割ることが出来る。
ラグラージは回転の最中、渾身の膂力をもってその頭蓋叩きつけた!!
132オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/20(金)20:25:16 ID:I5b
>>130

「……」

オトギリは憂鬱な表情でスパーダの言葉を聞く。
その言葉の意味の一つ一つが理解出来た。だが、理解する度に彼の悔恨の念が彼自身を苛んだ。
自分がもっと慎重に攻めていればコロトックは傷付かずに済んだのだろうか。
そんな言葉が彼の脳内を反復する。

「……すまない。」

オトギリはげんきのかけらを受け取るとコロトックに使った。少しは応急処置になっただろう。
だが完全な回復にはやはりポケモンセンターで腕の接合手術を施術せねばなるまい。

「切磋、琢磨……。」

スパーダの言う通りだ。こんな過ちは二度と繰り返してはならない。
確かに心は今にも折れそうだった。だが、ここでこのまま折れてしまってはチャンピオン等夢のまた夢。

『―――俺達でチャンピオンを目指すぞ!』
コロトック、ジヘッドと共に故郷を旅立ったあの日の光景がフラッシュバックした。

―――悩んでいてはいけない。

オトギリの表情に笑みが戻る。

「……お前のキリキザンもよく育てられた良いキリキザンだった。
ああ、勿論だ。またいつかバトルしよう。」

―――その時は、実力で勝つ。

オトギリは胸に決意を抱いた。

「達者でな、スパーダとキリキザン。」

名乗り、去って行くスパーダとキリキザンをオトギリは見送ると大きく一呼吸。ポケモンセンターのある方角へと歩み始めた。
目深に被ったニット帽の下から除く眼はより一層強い決意を孕んでいた。
日も没し、すっかり暗くなったナナイタシティの大通り。見物に集っていた大衆が歩む彼に道を開けた。
133セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/20(金)20:38:05 ID:IHp
>>117

「マユズミくんか。ふふ、私もしっかりと覚えておくよ」

彼女の言葉は、確かにセレーネの胸には響いただろう。
しかし、それでも歩みを止めはしない。その先にあるものが希望だと信じて、そこに求めるものがあると信じてやまないのだから。

「そうか…あぁ、そのときは是非とも殴りにきてくれ。私もそれをきっと、待っているのだろうから……」

その言葉はもう小さくなってしまったマユズミには届かないだろう。
だがその言葉はきっとセレーネの心中を表すのに最も適したものだったに違いない。
いつか、誰か自分を止めてくれ――――と。
134ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/20(金)21:06:51 ID:ar6
>>131
「まさか!あの状態でかわらりなんてどうやっ―――――」

技の成功を確信していた。メユリがこの状況でその技を指示した意味が、ソウジの頭には理解できない。
だが、エレキブルはそれよりも早く、ぐばっと口を開く―――驚きの形相だった。
ソウジよりも幾多のポケモンとの激戦をくぐり抜けた彼の直感は、目の前のラグラージがこれからせんとする事をすでに探り当てていた。

命令から実行までのコールアンドレスポンスには幾らかのラグがある分、トレーナーには逸早い判断力が求められる。
それを縮めるには何度もバトルをして鍛えるしかない。
これはトレーナーとしての明らかな経験差―――、あとは無残な格差が現実になるだけだ。

「ぶぅろぉっ!」

ずん、という重い接骨音が辺り一面に鳴り轟いた直後、逆に地面に叩きつけられる形となったエレキブルは、煙溜まりに包まれた。
鈍重な体格を持つ二体のポケモンが地面に衝突した結果、起こる風圧はギャラリーからの悲鳴が飛ぶ程だった。
渾身の体術…じごくぐるまが技の途中で遮られれば、そしてその反撃が屈強な重骨の一撃となれば、エレキブルが受けるダメージは並々ならない。

「エレキブル!!!」

ソウジが思わず伸ばした手の指の、隙間に起こった光景だった…トレーナ―としての実力不足…そんな苦い味を、舌の奥まで味わった瞬間。
背徳の感情が全身の力を引き抜いていった。

「そんな……頭で、…かわらわりなんて…」

トレーナーとしての判断が遅かった。もっとやりようはあった筈だったのに。
エレキブルと2年も旅をして、それも何度したか数えきれない失敗。
やはり自分が偉大なジムリーダーのポケモンを使いこなすの無理なのか…若い少年が抱いた諦観の念は、まだ浅いはずの傷口をどんどんと入り侵していった。
135ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/20(金)21:07:05 ID:ar6
「………………………ぶぅるゥ!!!!!!」

だが、―――――そんな彼に鋭い一喝を入れたのは、他でもない、エレキブルだった。

土煙がとぐろを巻いて消え去り、うっすらと浮かび上がってきたその光景に、ソウジは怯えていた心の奥底を突かれた。
エレキブルはそれこそ体重を乗せられて地に伏す形になっていたものの、ダメージを負った身体でなお歯を必死に櫛歯って、その広大な頭蓋に対抗していたのだ。

エレキブルは叫んでいた。
俺に命令しろ。まだ戦える。お前が俺に命令しなければ、誰がするというのだ。
お前はもう俺のトレーナーだ。命令だ、ソウジ――――!

「ぶぅるぁッ!」

「あ…………!」

だらりとしていた両腕に、シャキりと力が入る。
そうだ、センゾウ爺ちゃんとの約束は…

「オレはっ、お前とポケモンリーグに行かなくちゃならない………」

「行って、約束を果たすっ…じいちゃんが叶えられなかった夢を…オレがっ!!」

ソウジは腹の底から声を張った。
エレキブルが物言わず、ニヤリと口角を上げる。彼がトレーナーに思いを返すにはそれで十分だった。
ソウジの顔には自然といつもの笑顔が取り戻されていた。今まさに、センゾウの子とポケモンには、同じ言葉が浮かんでいたはずだ。
―――――バトルをより楽しんだ者が、勝者。

「エレキブルっ、『電磁砲』ぉっ!」

ソウジが勢いよく人差し指を振り下ろすと、エレキブルは今までより強くラグラージに額を押し返して、威勢よく鼻を鳴らした。
エレキブルの残りの技一つ。それは電気タイプ最大最強にして、鍛え上げられたでんきタイプだけが習得できる究極の技。
裂けんばかりに顎を開いたエレキブルは、体内で生成できる限りの全ての電気エネルギーをラグラージの眼前に凝縮し始める。
でんじほうのエネルギーが一度解き放たれれば、それは山をも貫くほどの威力を発揮する。

だが至近距離でそんな事をすれば、いくら電気タイプのエレキブルの身体とて、ただでは済まされない。
それでも、エレキブル掴むラグラージの腕は堅く握られていて、血がにじむほどに指の一つ一つが喰い込んでいた。
これから行われる事はもはや自爆に近い…エレキブルの赤い眼はひどく笑っているようにも見えた。

エレキブルは目の前のラグラージに、ほそぼそとした声を向ける。

『(今は、こんなもんで、すまんな)』

全身を駆け巡る電撃波が一斉にその方向を変え、はち切れんばかりとなった黄金の球体は、今まさに爆発の時を迎えていた。
136スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/20(金)21:54:46 ID:v1C
>>132
「───やれやれ、まさかこんな事になってしまうとは」

夕暮れるナナイタシティ、街の片隅でキリキザンにかいふくのくすりを与えながら、スパーダは小さく呟いた。

「ザン……」
「あぁいや、君のせいじゃないさキリキザン、ただちょっと驚いていてね」

申し訳なさそうに鳴いたキリキザンに笑顔を返す、事実あのバトルは決して不快なものではなかったのだから。
あの少年はもっと強くなる、いつかまた戦う時は素晴らしいバトルになるだろう。

なにせ、彼は───

「…僕が【メガソード】を抜く事になるなんて久々だったからね」

どんな理由であれ、切札を晒す事になった相手なのだから。
137ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/20(金)22:02:36 ID:OKk()
――――――ナナイタシティ 産業廃棄物処理場
屑鉄や石ころがうず高く積み上がるゴミ山の麓に、何やら人影が見える。

数は四人、うち一人は……どうやら何か問い詰められているらしい。

「た、頼む!見逃してくれぇ!俺は何も知らねえんだ!」

「フォートレス」

「があああああ!おれっ、折れるぅぅうぅ!」

フォレトスに足を挟まれ逃げられなくされている一見チンピラ風味の男。ガスマスクをした二人の男と、一人の少女がそいつを取り囲んでいるようだ。

「混ぜ物は重罪だぜ?あんちゃんそこらへん分かってる?」

「どう落とし前付けてくれんの?ん?」

「……配合比的にPPエイダーの薬液で色をごまかしてるってとこかしら、舐めたマネしてくれるわね」

ガシャン!とポイントマックスの偽造品は地面に叩き割られ、ガスマスク二人が怯える男を連れ去ろうとしている。
まぁ、何にせよ裏取引のそれであることは間違いないようだが。
138セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/20(金)22:20:17 ID:IHp
>>137

「ふふ…何やら怪しい現場に出くわしてしまったらしい」

そんな怪しい取引が行われているそこに響いたのは女性の声――――
その声が聞こえた方を見れば声の通り女性のシルエットが見える。しかしよく見れば顔は狗面で隠しており、その素顔は分からない。そしてその隣にはルカリオが憮然とした様子で佇んでいる。
だがキャスタナならば、その女性の佇まい、声。そしてルカリオを見ればそれが誰だか分かるかもしれない。

「まぁ、別に私はそいつを助けにきたわけではないのだけれどね。だからそいつのことはどうとでもすればいいさ」
「私はただ、君たちと"交渉"をしに来ただけだしね」
139メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/20(金)22:30:49 ID:KFb
>>134-135
『かわらわり』は腕や尻尾でやるもの。
多くのトレーナーはそう理解しているし、技マシンの説明にもそう書いてある。
――――しかし

「アローラ地方に住むナッシーは一般的なナッシーと異なり『かわらわり』を習得することが出来るの。」
「もちろん彼らに腕はないし、短い尻尾を大きく振り回せるほどの体躯もない。」
「―――――でもあの子たちは異様に長い首と頭部を使って『かわらわり』をするのよ。」

頭でもかわらわりは行えるという知識、それを直感的に行って見せるラグラージとの阿吽の呼吸。
それこそ年齢と経験の差が現れた瞬間と言ってもいいだろう、ギャラリーもその解決法にあっけに取られていた。

ドカンという轟音と共に大地へと叩きつけられる両ポケモン。
当然バランスを崩したエレキブルを下として激突した彼らは、この一合によって決着はついたと思われた。

『―――――――ラグァァア゛!!』

静寂と共に土埃を払い飛ばしたのは立ち会う二匹の怒号。
『勝負はまだついていない』―――――互いを叱咤激励するかのような雄たけびがバトルフィールドに響き渡る。
組み合ったまま互いの頭を突き付けあい睨み合う二匹に指示が飛んだのは全くの同時だった。

ソウジが『でんじほう』を叫び、メユリもまたラグラージが持つ最大威力の技の名を叫ぶ。

「ラグラージ!『じしん』よっ!!」

『ラグラ゛ァァァ゛ァ゛ァ゛――――――!!』

エレキブルを地面へと抑えつけたまま喉を震わせるラグラージ。
衝撃によってガタガタと音を立てる地面から小石が跳ね上がり、トレーナーたちの足元へも振動が伝わる。

それでもエレキブルのでんじほうは止まらない。
じめんタイプを持つラグラージに対してでんじほうは明らかに悪手だ、しかしそれも“通常の距離であれば”だろう。
この密着した状態であれば確実に急所に当たる、如何に強靭な肉体を持つラグラージと言えども耐えきれるものではないだろう。

――――――刹那
でんじほうは炸裂する。

明らかに命中の感触はあった、ギャラリーも息を飲み、メユリもまた口を閉じる。

爆煙が消えて行く中、重なり合ったシルエットがゆっくりと姿を現す。


―――――――悪いなジジイ、お前に負けてやる事はできない。


でんじほうは確かに命中した、だが命中によって黒く焦げた痕はラグラージの急所から逸れた位置に残っている。
じしんによる振動で『でんじほう』を無理やり急所への直撃を外したのだ――――
当然ラグラージのダメージは深く、ぜえぜえと息を吐きながら膝がガタガタと震えるのを無理やり力でねじ伏せていた。

余力は殆ど残っていない、先ほどの一撃で恐らく勝負は付いた――――メユリはそう直感した。
140キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/20(金)22:39:30 ID:OKk()
>>138

「なんだぁ?テメェ……」

「取り込み中だ、邪魔するなら痛い目見て貰うぜ」

ガスマスクの男二人が威嚇して向かってくる。
それぞれモンスターボールを持っており、あくまで邪魔者は排除する体のようだ。
ボン!ボン!と開いたボールから飛び出してきたのは、リングマ、そしてツンベアー。

「……貴女、初めて会う気がしないわね」

お互い仮面で顔はわからないが、その声と、なにより手持ちのルカリオ。
一方で少女も、ガスマスクをしているミニスカートというその風体が逆に強く印象に残るはずだ。

「いわなだれ!」「けたぐり!」

熊2匹がドスドスとルカリオめがけて攻撃しにくるが、動きとしてはあまり洗練されたポケモンとは言えない。
恐らくその動きはルカリオにとってはあっさり見切られてしまうだろう。

「………」

少女は黙っているが、勝負にもならないといった冷めた表情でその2対1を眺めていた。
141セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/20(金)23:09:00 ID:IHp
>>140

「やれやれ…人の話はしっかり聞いた方が良いよ、私からの忠告だ」

「――――ルカリオ…メガシンカ」

瞬間女性のローブの胸付近が光り輝き、そしてそれはルカリオに伝染していく。
ルカリオを光が包み、そしてそのシルエットは段々と形を変化させ――――

『ウォオオオオンッ!!!』

メガシンカ。
ポケモンの可能性、進化を超えたシンカ。ポケモンの力を最大限に、いやそれ以上まで引き上げた究極の姿。

『ウガァウッ!!』

岩をひらりひらりと歩きながら避けて、リングマのけたぐりを片手で受け止めてなお涼しい顔をしている。
そして次の瞬間にはリングマとツンベアーは地面に伏していた。
それは刹那の出来事であり、時間にして一秒にも満たない時間。そんな一瞬で二体のポケモンを瀕死にまで追い込んだというのだ。

「さて、と……これで話を聞いてもらえるかな?……なぇキャスタナ?」
142キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/20(金)23:18:50 ID:OKk()
>>141

「グマァッーーー!?」「ベアァッーーー!?」

ルカリオの放った鋭い一撃が熊のだらしのない体を貫く。こうかはばつぐんのようだ。
その一撃で意識が昇天したリングマとツンベアーがゴミ山を転げ落ちる。

「なっ……」「一撃っ!?」 

目を回した2熊をボールに引っめる事すら忘れて驚愕するガスマスク二人。
チンピラはこの隙に逃げようとするが、フォレトスの殻が足を挟み込んでそうはさせない。
ずりずりと鋼の甲殻を引きずって涙混じりに這いずっている。
狼狽えるガスマスク二人を差し置き、少女がガスマスクを外して首にかける。

「あなたたちじゃ相手にもならないわ。先に街に戻ってなさい」

フードを外すとおかっぱの髪が揺れ、愛嬌はあるが冷めたジト目がセレーネを睨みつけていた。

「―――「組織」に戻る気にでもなったのかしら?セレーネさん」

ボフン!と彼女の背後に巨大な貝殻が飛び出す。
その濃紺色の殻に、鋭い視線を潜ませた―――キャスタナのパルシェン。
143ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/20(金)23:28:42 ID:ar6
>>139
空間に穴を開ける程の威力のでんじほうといえども、相手がじめんタイプ持ちでは本末転倒なのは確かだ。
だが、ここで使わねばどう使うと、日々欠かさなかった電錬トレーニングの成果をここで見せつける事ができれば、ソウジは満足だった。
メユリが反撃の決定を下したのはほぼ同時。
ラグラージは相手を振りほどこうとし、エレキブルはそれを追う。
イカれたフォークダンスのような様相を呈した二体の組み合いは、決着の直前まで止まらない。
捲れ上がる大地のマグニチュード。電気エネルギーの過剰凝縮による大爆発。観衆の動揺はただほどではない。
お互いが自身にもダメージを与えかねない技の運用で、誰もが勝負の行方に顎の力を失った程だ。

爆風の後に現れた二体のシルエットは、微動だにしない。
――――どちらが倒れるのか。ソウジやメユリだけではない。その一瞬に、誰もが息を呑んだ。

…だがやがて、支えを失った石像のように、どっしりと地面に身を沈ませたのはエレキブル。
彼にはもはや指一本、動かす体力は残っていなかった。最後の舞踏を制したのは、メユリとラグラージだ。
エレキブルはラグラージに視線を交わすと、ゆっくりと外した。賞賛とも悔恨ともとれる、複雑な眼。
彼はやがて敗北を認めるかのように、瞼を閉じた。

―――――ラグラージが勝った。
誰かがそう呟く。暫し決着の余韻に浸っていた観衆からは次の瞬間、どっと歓声が湧き起こる。

「はは…やっぱり、駄目だったか」

次、どうすれば勝てるのか。
バトルに決着がついた直後だと言うのに、そんな事で頭がいっぱいになっていた自分に、思わず笑ってしまう。

「――――――完敗です、オレ、まだまだです。トレーナーとして…ラグラージとメユリさんのコンビネーション、まるで歯が立たなかった……」

毛並みが焦げ焦げになってしまったエレキブルに歩み寄り、そっと頬を撫でる。

「でも、楽しかった。エレキブルだってきっと。経験を積んで、いつか二人のような連携ができるようになりたい、そう思いました!!」

悔し涙に眼を潤わせながら、顔を上げてソウジはメユリに宣言する。
ポケモントレーナーとしての最上級の賞賛を込めて、握手を求めるだろう。
144セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/20(金)23:29:32 ID:IHp
>>142

「すまないね、メガシンカしたルカリオは加減が効かないんだ」

一撃で瀕死へと追いやったリングマとツンベアーを見てそんな心にもない謝罪を投げ掛ける。
一方のルカリオは次はキャスタナへと視線を移し、その鋭い瞳で睨みつけている。

「ふふ、それはどうかな。まぁ強いて言うなら"交渉"次第だよ。もう一度言うけど私は戦闘をしに来たわけじゃないのだからね、そう警戒しないでもらいたいな」

やれやれと肩を竦める様子はどこか余裕が見て取れて掴みどころを見せることはない。
キャスタナがマスクを外すところを見ればセレーネも被っていた狗面を外しその顔を明かす。その表情はキャスタナの知るであろう底の見えない微笑みを浮かべていた。

「今、君たちは何をしているのかな?その内容と…私の目的に協力してくれるのなら、また手を組まなくもない…そういうことさ」

一方的であまりに身勝手な要求だろう。しかしセレーネはそれが当然であるかのように悠然と振舞っていた。
145メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/20(金)23:51:17 ID:KFb
>>143
『ラ゛グァ゛ァ゛ァァァォォオオオ!!!』

惜しみない称賛の拍手の中、今尚戦場に立ち続けるラグラージは天へと勝ち名乗りを上げた。
破った者を前に騒ぎ立てるのは野蛮だと思うものも居るかもしれない。

だがラグラージはそうは思わない。
バトルをする以上勝者と敗者は生まれる。
ならばこそ、勝者は対戦相手を―――――勇者を打ち破った事を高らかに誇るべきなのだと。

「よくがんばったわね、ありがとう…ラグラージ。」

無意識のうちにお互いのポケモンの側に寄っていたメユリとソウジ。
傷つきながらも誇らしく振る舞う自らの相棒を労わる様に、細い指が頭のヒレの間を優しく撫でる。
戦闘の疲労と聞こえてくるギャラリーの興奮、そして信頼するトレーナーから与えられる慰撫。
その心地よさに目を閉じ、ラグラージは甘える様に喉を鳴らしていた。

「ソウジくん」

頭から離れてゆく手を名残惜しそうに見つめるラグラージを尻目に、差し伸べられたソウジの手をメユリは取――――らず
するりとすり抜けて、肩から下げていた鞄の中に収まる。
そこから青地に水玉のハンカチを取り出すと、ラグラージにそうしたように、優しい手つきでソウジの頬に触れて涙をそっと拭きとった。

「いいバトルだったわ。でもそんな顔しちゃダメよ。」
「オトコの子でしょ、シッカリしなきゃ。エレキブルに笑われちゃうわよ。」

他のトレーナーのバトルを観戦していた時に見せた、見守るような柔らかな笑みが少年へと向けられていた。
そして涙が止まったのを確認すると、ソウジの掌を両手で包み込むように握るのだった。

「――――チャンピオンを目指してるなら、きっとまた会えるわ。」

軽くしゃがみながらそっと顔を耳元へと近づけると、メユリは小さく耳打ちする。


―――――そのときは、本気にさせてね?
146キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/20(金)23:51:22 ID:OKk()
>>144

「おあいにく様、用心棒は満席よ。貴方の居た頃と違ってそうドンパチしてもいられないの」

殻の隙間からギロッ、とパルシェンの眼光が輝いたが、キャスタナは彼をボールに戻す。
強者は無駄な戦闘をしない、という一種の自戒はお互いに意識しているようだ。

「別に。研究の一環よ。PP強化剤が必要になったから取引していたまで」

割れた瓶のそれは一般にも手に入るポイントマックスに見える。
しかし恐らく彼らの求めていた中身は違法に製造され薬剤を強化された類の物だろう事は容易に想像がつく。
でなければ、こんな辺鄙な所でわざわざ差し渡しで取引などをするはずがない。

「……ま、アテは外れたみたいだけど」

哀れチンピラは簀巻きにされ男二人に担ぎ上げられる。
本来なら熊達に運ばせるつもりだったがとんだ大誤算をしたようだ。

「大方、そのメガシンカの研究にでも付き合わせるつもりなんでしょう?」
「だけど、あのラボの権限を取り戻したいのなら―――少なくともそのルカリオはたっぷり実験台にさせてもらうことになるけど?そのつもりなのかしら?」
147セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/21(土)00:01:09 ID:l3u
>>146

「そうかい?まぁ、そうだね……あぁでも、これからはそうは言ってられないかもしれないよ?彼が動き出したのだから、ね」

ふと思い出すのはランクルスを連れた少年。
あの少年はきっと立ちはだかる存在となるだろう。彼のことを思えばそう思えて仕方がない。
あの瞳はそういう瞳だ。

「それは…看過できないな」
「だが――――ルカリオの代わりにこれを提供することならできる」

そう言って懐から取り出したのはまるで吸い寄せられるかのような力を放つ不思議な水晶だった。
虹色に透き通るそれは力強い生命力を感じさせる。

「ホウエン地方に伝わる"伝説の巨石"というのをご存知かな?これはそれを削ったものだ。もちろんこれだけじゃなくあと数欠片は私の手元にある……」
「これを使えば更に進んだ研究ができるんじゃないかな?」
148キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/21(土)00:27:25 ID:UR4()
>>147

「彼……?」

「何のハッタリか知らないけど、私に因縁のある奴なんて大勢居るのよ」

目を細めるキャスタナ。実際、彼女も裏で仕事をしてきて長い。
然し、内心ピタヤの事はどこかで考えている節があった。雑念を振り払うように髪を振る。
水晶を間近で見つめ、ルーペを取り出し真贋を確かめるキャスタナ。

「……ふぅん、貴方も見ない間に随分と遠くまで行ったものね」

パチン、とルーペを閉じ、手持ちの端末に何かを記録した後、再びフードを被りなおす。

「…………いいわ、データベースへのアクセス位なら許可する。着いてきなさい」

『ズズッ……ガキン』

ガスマスクを被りなおした彼女は、フォレトスに声を掛けると、彼も連れてゴミ山を去った。
恐らく、彼らの組織に取り入れる一番近い人間として、セレーネは表と裏の世界を行き来することになるだろう。
まだ、黒と白のどちらにも染まりきれないまま―――
149ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/21(土)00:31:00 ID:ZDH
>>145
「ごめんなさい…」

握手をすり抜けて来たメユリにされるがまま、目尻を拭き取られる。
ソウジは堪えていたのか、涙の量は増えるばかりだった。
しかし彼女のハンカチはそれを認めるかのように、濃紺の水玉をさらさらと奪い去っていく。

「そうですよね…笑顔、ですよね」

鼻をずずと啜り、目元を赤くしながらも彼はメユリににっこりと笑ってみせた。
包み込まれた掌のひんやりとした感触に、すこしどきりとする。

「はい、その時はぜったい―――――――」

見上げた身体が硬直した。メユリの顔が近い。
彼女の息がすぅと耳たぶに触れる。

「あ………」

言葉が詰まって、出てこない。
はい。ソウジは口の形だけで、そう伝えた。

もどかしい感触が身体を疼いた。
この気持ちを少年の心はうまく理解できず、僅かに頬を染める。
良く分からなかったが、ふと、いい匂いがしたなと思った。

バトルが終ったのを確認したギャラリーの熱も冷め、空になった広場には静寂が訪れている。
静かな空間の間近で、水彩画のような微笑みを浮かべるメユリを、綺麗な人だなぁ、とソウジは改めて感じていた。

…と、その余韻を遮るように、ソウジのズボンの裾を引っ張る者が。

「…………ぶぅる」

エレキブルは大人の魅力に翻弄されてソウジを呆れた眼で見上げ、早くボールに返してくれと訴えていた。
あっ、と声を上げて、ソウジは彼を急いでボールへと収める。

「はは…コンビネーションはこういうとこから、ですよね」

恥ずかしいのを誤魔化すように彼は急いで立ち上がると、反対側に向き直って頭をくしゃくしゃと掻いた。

「とにかく、次は絶対に負けません!」

踵を返したソウジがメユリに向けた表情は、さながらエレキブルのような、ニヤリとした笑顔だった。
150メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/21(土)00:51:04 ID:ti9
>>149
「あら?」

エレキブルがボールに戻してくれと主張した様に
ソウジとの会話の蚊帳の外に置かれていたラグラージもまたメユリにボールに戻してくれと擦り寄っていた。
『自分を差し置いて』と嫉妬しているのか、それとも『バトルに勝った俺をもっと褒めてくれ』とせがんでいるのか。
メユリは困ったように眉を下げ、しかし目を細めて笑いながらラグラージをボールの中へと戻そうとする。

「――――ええ、がんばってね。」

次こそは負けない。次もバトルしよう。
これは言ってしまえばトレーナー同士が別れ際にする恒例のような挨拶である。
所詮これはお互いに口だけの約束。
だがこの場にいた多くのトレーナーがその言葉の証人であり、メユリもソウジもまた戦う日が来るであろうと、そんな展望を感じていたに違いない。

ひらひらと手を振ってソウジを見送るメユリを背に、先ほどのバトルに触発されたのかすぐにでも次のバトルが始まろうとしていた。
ラグラージが彼女の袖を引く。

――――どうせポケモンセンターに行くのに、別れる意味はあるのか。と

そんなラグラージの口元にそっと人差し指を当てると、彼女は微笑みながら口を開いた。

「ラグラージ。」


「――――オトコの子にはね、別れの時までカッコつけさせてあげる物なのよ?」


だからポケモンセンターに行くのはもうちょっと我慢してね、と続けて言われた彼は顔をしかめた。
同じ男としてメユリの言葉に思う所があったのか、深く頷きながら彼女のボールへと戻っていく。

「夢に向かって一直線……若さって、すごいエネルギーよね。」

有望なトレーナーに遭えたからか。久しぶりに心の踊るバトルが出来たからか。
抑えた口元からそれでも笑みがこぼれ落ちるのを感じながら、メユリは今から始まるバトルへと視線を向けるのだった。
151セレーネ◆WABCAFs6Hg :2018/04/21(土)15:42:02 ID:l3u
>>148

「そうかい、でも私は近い未来確信しているよ。彼はきっと君の…いや私たちの前に立ちはだかるとね」

彼だけではない。今まで出会ってきたトレーナー。その誰もがきっと敵として立ちはだかることになるに違いない。
だが、それでも構わない。目的の為ならば非常に徹し切ることなど容易いことだ。むしろ彼や彼女らの成長を楽しみ、それが目の前に現れると思えば今から楽しみでさえある。

「いろんな場所を渡り歩いたからね、これは私の苦労の結晶とでも言うべきものさ」

「――あぁ、感謝するよ。それと…そうだね、私のことは"セレーネ"ではなく前のように"EV(イヴ)"と呼んでくれると助かるね」

キャスタナがガスマスクを被るのに続いてセレーネも先ほどまで被っていた狗面を被り直す。

その瞳に映っている感情は力強いものであると同時に酷く歪んでいるもので。
目的はただ一つ。その為ならば表も裏も両方相手取って見せよう、と。
152オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/21(土)21:31:19 ID:5Y4

「……これが賞金だ。」
「ああ。」

――――エリートトレーナーとのバトルを終えたオトギリはバトルの賞金として数千円を受け取ると懐に納めた。
夜の公園は人通りが少ない、とは言え、やはりバトルは盛んであり、寧ろこの時間帯になって強力なトレーナーが増えて来たまであった。
先日のスパーダとのポケモンバトルで彼の相棒であるコロトックは入院した。
怪我の方は治ったが、どうやらポケルスなる病原菌に感染していたらしく、要検査との事であった。

従って今彼を支えている手持ちのポケモンはこのジヘッド一匹である。
今宵この公園を訪れたのは修行の他にもコロトックの治療費を稼ぐという目的もあった。

「「グガー!」」

「……ご苦労だったな、ジヘッド。」

オトギリの横で鳴くジヘッドにオトギリはかいふくのくすりを使用する。
目と目が合ったらポケモン勝負の合図。既に隣では次のバトルが始まっていた。

「ハクリュー、ねむる!」「ロトム、ボルトチェンジだ!」……

目を閉じて耳を澄ませば、公園の各所からトレーナー達の声やポケモンの技と技が衝突する音が聞こえた。
そんな耳に入る音の数々がオトギリの好戦的なトレーナー魂を常に奮い立たせる。

―――さて、このまま連戦して良いだろう。
だが、流石のジヘッドも疲労が……

「「グガー♪」」

……どうやら大丈夫らしい。
苦笑いをしながら、オトギリは元気そうに鳴くジヘッドにポロックを二つ投げた。
ジヘッドが軽くジャンプし左右の口で一つずつポロックを頬張る。

「……さて、と。」

オトギリはポロックケースを鞄に仕舞うと周囲を見渡し、次の対戦相手を探した――――。
153マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/21(土)21:48:32 ID:RCW
>>152
「なんや夜なのに血の気ェ多いんがいっぱいおるなぁ。」

血気盛んな実力者たちがたむろする夜の公園では、あちらこちらで大きな声と技の炸裂する音が響いている。
近くのポケモンセンターで休んでいた少女もまた、騒がしい声に誘われたトレーナーの一人だった。
ちらっと覗くだけで帰ろうかと思っていたのだが、どうせこの喧噪だ。しばらくは眠らせてもくれないだろう。

「まぁ、食後の運動っちゅうんも悪くないか。」

あちらこちらの試合の様子を見ながら、人だかりの輪を縫うように歩いていると、一人の少年と目が合った。
目と目が合えば何とやら……。古い慣習だがこれもある種運命というものか。

「自分も対戦相手探してんの?」

男の下に近寄りながら、少女は少し大きな声で尋ねる。
154オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/21(土)21:59:01 ID:5Y4
>>153

「……ッ」

周囲を見渡したオトギリは一人の女性トレーナーと視線がかち合った。
見た限り自分よりは少し年上の女性だろうか。
……等と考えている内にその女性トレーナーはオトギリに近付きながら問う。

「あ、ああ。そうだ。俺も探していてな。」

実は女性に免疫があまり無かったオトギリは一度背を向けて軽く深呼吸をすると再び振り返りジヘッドの頭を軽く撫でた。
そして両腕を組み、彼女を見る。

「……俺はオトギリ。チャンピオンを志すトレーナーだ。よろしく頼む。」

オトギリは距離が少々近かった彼女から少し後退り。所定の位置に着く。
同時に彼の傍に居たジヘッドが彼の前に躍り出て唸った。

「さぁ、ポケモンバトルを始めるぞ。何処からでも掛かって来な!」

「「グゴォォ!!」」

彼のジヘッドが咆哮を上げる。
野良試合に審判は居ない。彼女がポケモンを繰り出せば、それが試合開始の合図だ。
155マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/21(土)22:11:02 ID:RCW
>>154
「?」

少年の慌てたような行動に、少女は首を傾げる事しか出来なかった。
ただ、バトルはしてくれるらしい。相手が繰り出してきたのはジヘッド。らんぼうポケモンとも呼ばれる暴れん坊だ。

「チャンピオンか。ならウチなんかに負けてられんよなぁ!?」

少女が腰に下げたモンスターボールからポケモンを繰り出そうとした時、手に取ったものの右隣のボールから、勢いよく一匹のポケモンが飛び出す。
あしかポケモン、アシマリだ。

「あしまっ!!」

「へ?アシマリ?もう、勝手に出たらあかんで。」

やる気満々、といった雰囲気のアシマリを両手で抱える。
アシマリは少女の腕の中でもがくが、なかなか抜け出せない。

「すまんなぁ、未来のチャンピオン。この子じゃなくて、出すのはコイツや。」

「スパーーーーーダ!!!」

両手でアシマリを抱えたまま、少女が繰り出したのは、あしながポケモン、アリアドスだった。
アリアドスは低い前傾姿勢でジヘッドと対峙する。
156オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/21(土)22:20:22 ID:5Y4
>>155

「……アリアドスか。」

アリアドス。確か主にジョウト地方に生息する虫・毒タイプのポケモンだったか。
繰り出されたアリアドスをジヘッドが威嚇する。
この手のポケモンは毒を持つ。迂闊に攻めれば手痛い反撃が待っているに違いない。

(ここは様子を見るか……。)

「ジヘッド!ふるいたてる!」

「「グゴオーッ!」」

オトギリの命令と同時にジヘッドが動いた。
低い体勢で屈み、自らの闘志を奮い立たせ、攻撃と特攻の力を向上させる。
そしてジヘッドが軽く顔を上げ、アリアドスを再び睨んだ。

(……慎重に攻めさせて貰おうか。さて、どう出る……?)

オトギリはアリアドス、そして彼女がどう出るかを見た。
ジヘッドもやや守りの体勢で構える。
157マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/21(土)22:30:17 ID:RCW
>>156
「ふるいたてる……。様子見ってとこか。」
「ほなら、こっちから仕掛けさせてもらおか。」

ジヘッドは様々なタイプの攻撃に加えドラゴン系の攻撃も洒落にならない。
真っ向から攻めていたのでは力で押し負けてしまうだろう。

「アリアドス、くものす!!」

少女の命令に合わせ、アリアドスは尻部にある器官から糸を吐き出す。
網目状の糸が周囲の木々にも張り巡らされる。
更にアリアドスは素早く自分が吐いた糸に飛び移る。

「スパーーダ!!」

ジヘッドの頭上から、大きな声で牽制をいれるアリアドス。
お互い相手の様子を見ながらの戦闘となった。
158オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/21(土)22:43:07 ID:5Y4
>>157

「……糸を張ったか。」

アリアドスが糸を張り巡らせた事は理解した。
然しオトギリが目視しようにも現在は夜。暗さも相まってまともに目視出来ない。
益してや目の見えないジヘッドでは圧倒的に不利だ。ここはトレーナーであるオトギリがジヘッドの目となる他無い。

「……見えないならば見える様にすれば良い!ジヘッド!あまごい!」

「「グオオオオ!!」」

咆哮を上げるジヘッド、同時にジヘッドの頭上に雷雲が立ち込めた。

―――ぽつり。

  ―――ぽつり。

始めは水滴程度だった降水は、数秒後には豪雨へと化けていた。
公園に居た他トレーナー達も狼狽える中、オトギリは雨に打たれつつもアリアドス周辺を見る。
アリアドスの周辺に張り巡らされた糸には水滴が付着し、その水滴に街灯の光が反射。
これならばオトギリでも目視が出来る。

「……見える。」

オトギリが笑みを浮かべた。

「ジヘッド!少し、左方にジャンプしながらりゅうのはどう!アリアドスはお前が元居た場所の真上に居るぞ!」

「「グゴゴオオ!」」

雨に打たれながらも構わずに命令を下すオトギリ。命令に従いジャンプするジヘッド。
刹那、ジヘッドの二つの口から放たれる波動。
波動は降り注ぐ雨水を割きながら真っ直ぐとアリアドスへと向かう。
159マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/21(土)22:53:40 ID:RCW
>>158
「あまごい!?もー、シャワー浴びなおさんといけんやんか!!」
「アリアドス、かげぶんしん!!」

見当違いなところを心配しながらも、少女は次なる指令を出す。
素早い動きで分身を作り、相手の攻撃を躱すかげぶんしん。
特に、クモの巣上でのアリアドスの3次元的な分身は、強力な波動を躱すには十分な働きだった。

「スパーーダ!!?」

しかし、波動の衝撃で巣の一部が破壊される。
アリアドスは必然、分身ごと地面へと着陸する。

「まだまだいくでぇ!!アリアドス、更にかげぶんしんからの……」

アリアドスは更に地上でのかげぶんしんを作り出す。
分身はジヘッドを囲むように複数体出現する。

「どくのいと!!」

更に、口から放たれる糸は、相手を拘束し、その素早さを低下させながら毒状態にしてしまう毒の糸。
強力な一撃がジヘッドに向かっていく。
160オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/21(土)23:05:58 ID:5Y4
>>159

「……ッ随分とトリッキーな戦術を……!」

雨水と共にオトギリの額から汗が伝う。
複数体のアリアドスから放たれた毒の糸。このままでは毒状態となり圧倒的不利な状況となるだろう。
オトギリはジヘッドの周囲を見た。波動の衝撃で崩壊した巣の一部。
それに伴い、ジヘッドの動きを拘束するものは僅かながら無くなった。

「ジヘッド、今度はさっきりゅうのはどうを撃った方向へとジャンプしろ!」

「グゴオオ!!」

ジヘッドが跳躍、どくのいとは間一髪で回避した。
地上には複数のアリアドス。このまま落下すれば大きな隙が生じてしまう。

「……ジヘッド、あくのはどう!」

街灯を背に、ジヘッドが両の口に波動の力を集約。落下と同時に解き放った。
その波動は広範囲にアリアドス目掛け波打ちながら向かう。

(本体がわからないのであれば、すべて攻撃すれば良いッ……!)

オトギリは固唾を飲み、波動の行方、ジヘッドの行方を見守った。

―――その時、波動の反射で一瞬ジヘッドの右足に見えた。紫色の糸が。
先程の回避では全ての糸は避ける切れずにほんの一本の蜘蛛の糸がジヘッドの右足に絡みついていたのである。

(―――まずいッ)

波動は糸も構わず、真っ直ぐとアリアドスとその分身へと向かう。
然し空中で毒に苛まれたジヘッドは体勢を崩し、着地に失敗した。

「「グゴオッ……」」

ジヘッドの身体が毒に苛まれる。果たして波動は―――
161マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/21(土)23:19:07 ID:RCW
>>160
「っ!?アリアドス!!」

「スパーーーーダ!!?」

広範囲の波動攻撃は、分身ごとアリアドスを襲う。
高い位置からのあくのはどうを避けることは叶わず。
高威力の波動攻撃をまともに食らったのだ。無事で済むハズもない。

「アリアドス!!まだいける!?」

「ス、スパーーーーダ!!!」

マユズミの問いかけに大きな声で返事をするアリアドス。
無論大きなダメージであろうが、それでもなんとかこらえていた。

「おしゃま!!!」

「アシマリ……。」

胸に抱えられたアシマリが大きな声で応援する。
その時、少女の頭の中で、一筋の小さな光が駆け巡る。

「よし……。作戦変更や!!アリアドス、もう少し気張ってや!!」
「アリアドス、ベノムトラップ!!」

マユズミの声に合わせ、アリアドスは特殊な毒液を、体勢を崩したジヘッドに吐きかける。
相手の毒に反応し、相手のこうげき、とくこう、素早さを下げる特殊な液が、ジヘッドに襲い掛かる。
162オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/21(土)23:35:50 ID:5Y4
>>161

(―――この隙はやはり逃さないか)

オトギリの脳裏にはベノムトラップの急所への直撃によって瀕死寸前に追い込まれるジヘッドの姿が過る。
とは言え、このまま回避しても完全に回避する事は不可能であろう。
オトギリは歯を食いしばった。

「……ジヘッド!」

「「グ、グゴオオ……」」

「急所は外せ!」

オトギリのその言葉に呼応するかの如く、ジヘッドはその嗅覚を頼りに前方にアリアドスが居る事を確認した。
そして右足に絡みついた毒の糸。
全ての状況を把握したジヘッドはわざと左方に転倒―――

「「グゴオオオオッ」」

転倒したジヘッドに降り掛かる毒液。爪が、体表の皮膚が溶け、毒がより深く染み込むのを感じた。
攻撃と特攻、素早さが低下する。凄まじい激痛に悶え苦しむジヘッド。
急所は確実に外した、だが――――

(―――……だが、それでもこれ程のダメージか……ッ!)

「大丈夫か、ジヘッド……!」

ジヘッドの脳裏を過るはスパーダのキリキザンと死闘を繰り広げたコロトックのあの雄姿。
自分もここで倒れるわけにはいかない。無様な醜態を晒す訳にはいかない。
使命感が、毒液に蝕まれたジヘッドの身体を再び立ち上がらせた。

「……ジヘッド!」

「「グゴオオオッ!」」

再び低い体勢で構えるジヘッド。オトギリの表情に笑みが戻った。

「ジヘッド、ジャンプしろ!そしてかげぶんしん!」

「グオオオオッ!!」

ジヘッドの跳躍。同時にジヘッドの身体が無数に増殖し、今度はジヘッドがアリアドスを囲んだ。
ジヘッドが低い姿勢でアリアドスを威嚇する。

「アクアテールッ!!」

囲んだジヘッドが一斉にアリアドスへと飛び掛かった。
アクアテール。水タイプの技。水タイプ。雨乞いの恩恵を受け、その破壊力は増していた。
然し毒に蝕まれ、その上素早さを下げられている事もあり、ベストコンディションの動きでは無かった。
163マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/21(土)23:59:09 ID:RCW
>>162
ベノムトラップは成功する。
相手の攻撃力と素早さを下げながらの一撃。
だがそれでもなお、相手は立ち上がり、攻撃を仕掛けてくる。

「かげぶんしん!?そっちもかい!!」
「アリアドス、『きあいだめ』からの……。」

あまごいによるパワーアップしたアクアテールが襲い掛かる。
だが、どくの糸や、ベノムトラップでの素早さ下げが、ここにきて有効に働いた。

「バトンタッチ!!」
「出番やで、アシマリ!!」

「スパーーダ!!」

「あ、あしまっ!?」

光がアリアドスを包んだかと思うと、次の瞬間にはアリアドスとアシマリの位置が交代。
即ち、アクアテールが迫りきているのは、アシマリだった。

「アシマリ!みずのはどう!!」

アクアテールが直撃する正にその瞬間、アシマリが放ったのはみずのはどうだった。
こちらも雨乞いでのダメージ増加。
先程、アリアドスに対してのあくのはどう。彼女なりの意趣返しでもあった。

しかし、今一つとはいえ、凶暴なジヘッドのアクアテールを食らってしまったのだ。
体力のないアシマリが耐えれることが出来たのか。土煙が晴れたところにその結果があった。
164オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/22(日)00:17:55 ID:hy8
>>163

「何ッ……アシマリだと!?」

オトギリは驚愕した。
ここでまさかのバトンタッチ。控えかと思われたアシマリが躍り出る等と一体誰が予想しただろうか。
直後、ジヘッドのアクアテールとアシマリのみずのはどうが衝突し土煙が上がった。

―――衝撃で崩れ落ちたアリアドスの蜘蛛の糸が光の粒となって雨と共に降り注ぐ中、オトギリは固唾を飲む。

「「グ、グゴォ……」」

土煙が晴れた景色、そこにあったのは予想外の一手を食らい吹き飛ばされたジヘッドの姿。
対するアシマリはオトギリには無傷に見えた。アリアドスを仕留める為に放った一撃。
アシマリの反撃は想定しておらず、益してや雨乞いの恩恵が後押ししているのだからジヘッドも対処し切れなかった。

ふらふらとした足取りで、毒に蝕まれる身体に鞭打ち立ち上がるジヘッド。
ジヘッドは水に塗れた体毛の下から、サザンドラに見られる真紅の瞳でアシマリを睨む。

ダメージは深い。蝕む毒、ベノムトラップの素早さの低下、打ち消されたふるいたてるの攻撃、特攻上昇。
然し流石は進化の輝石を飲み込んだだけはあり、まだ戦える様だ。

「ジヘッド……」

ジヘッドを案ずるオトギリ。
相当な痛みがある筈だが、にも関わらずジヘッドは一切苦痛の声を上げずにオトギリの命令を待っていた。
オトギリは険しい表情でアシマリを凝視する。万全な状態のアシマリ。如何にして突破するか。

「……ジヘッド!りゅうのはどう!」

「「グゴオオオ!!!」」

オトギリの命令と共に放たれるジヘッドのりゅうのはどう。

「――そのままジャンプしろ!そしてからげんき!」

りゅうのはどうの命令の直後、立て続けに下された命令通り、ジヘッドは跳躍―――そしてアシマリ目掛け急降下。
からげんき。状態異常の時に威力が倍になる技。今、ジヘッドは毒状態にある。従ってその破壊力は倍だ。
とは言え、毒自体は有効。加えて素早さ低下が足を引っ張っているが、果たして―――。
165マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/22(日)00:40:30 ID:bMr
>>164
「アシマリ!!こっからや!!油断すなよ!!」

「あしゃま!!」

ジヘッドもあの一撃を食らってまだ立ち上がってきた。
とはいえ、咄嗟に思い付いた策だ。ここから先は急ごしらえで考えるしかない。

(恐らく持ち物はしんかのきせき……。幸い毒のダメージも入って来とるハズや……!!)
「アシマリ、ミストフィールド!!」

辺りに霧が漂い始める。これでドラゴンタイプの技の威力が半減される。
とはいえ強力な龍の波動。更に奥からは威力2倍のからげんきが飛んできている。
タイミングは逃せない……!!

「アシマリ、りゅうのはどうを耐えて!!」

龍の衝撃がアシマリの小さな体を震わせる。
半減とはいえアシマリももう限界ギリギリだった。

龍の波動の終わり際、少女とアシマリの最後の反撃のチャンスだ。
からげんきが襲い掛かる瞬間、最後の指令が下る。

「アシマリ、バブルこうせん!!」

今できる最大級の水技を、向かい来るジヘッドに真っ向からぶつける。
雨の天候に加えて、アシマリのげきりゅうが発動していた。
ただ、一つ一つは弱弱しい泡だ。果たして、ジヘッドの猛攻を防げるか……
166オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/22(日)00:59:05 ID:hy8
>>165

雨乞いにより豪雨に見舞われた戦場は更にミストフィールドによって覆われた。
ミストフィールドと雨、微かに残ったアリアドスの蜘蛛糸が神秘的な空間を演出する。

(……ッ……!)

りゅうのはどう。
その手応えによりからげんきを当てるまでも無くアシマリを仕留めた、かと思った。
然しアシマリはまだ瀕死ではない。とは言えかなりの手傷は負わせたと見た。
―――だがジヘッドも同様に満身創痍だった。

「……ジヘッド!持てる限り、最大のパワーでからげんきだ!」

オトギリも同様に最後の命令を下す。
これが最後の命令になるだろう。からげんきを仕掛けたものの最早ジヘッドの身体は限界に限り無く近い。
毒も全身に回り立っている事もやっと、或いは立つ事すら困難かもしれない。

故に、これが最後の命令なのだ。

「「グガアアアアアアアアアッッ!!!」」

至近距離で放たれたアシマリのバブルこうせん。最早回避も必要無い。
泡沫の体力の中、ジヘッドが咆哮を上げながら突っ込んだ。

――爆音が響き渡る。

「――――クッ……」

凄まじい衝撃に思わず怯むオトギリ。
二匹のポケモンの強力なエネルギーが衝突し、場は土煙に再び覆われた。

「……ジヘッド!」

土煙が晴れて行く。
同時に雨乞いの効果が切れ、雲間から明るい朝日が差し込む。

雨乞いの効果が切れた。
これが示唆する事、それは―――

「……!」

――――土煙の中、オトギリの目に最初に入ったのは瀕死に陥ったジヘッドの姿。
一方のアシマリは―――。
167マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/22(日)01:18:01 ID:bMr
>>166
爆音が響き渡り、土煙が巻き上がる。
少女は居ても立ってもおれず、アシマリの下へとかけていく。

「アシマリ!!」

「あ、あしま……」

土煙が晴れる。
アシマリは地面に横たわっていたが、駆け寄ってきた少女を見ると、ゆっくりと近づいてその胸の中に飛び込む。
お互い瀕死、勝負は引き分けというところだろうか。

「アシマリ、ようやったなぁ。偉いで。」

少女はそう言うと、アシマリを抱えたまま立ち上がり、少年の方へ向き直る。

「さっすが、未来のチャンピオンさんやわ。ごっつい強かったで。」

恐ろしいくらいに攻めてくるジヘッドの猛攻には、少女もただただ感心するしかなかった。
こちらに来てから、強いトレーナーばかりだ。自分の無力さを恨むと共に、彼らの技術にただただ感心するばかりだった。

「あ、賞金は勘弁してや。ウチもそんな金無いねん。」
「じゃ、体濡れてもうたし、そろそろ帰るわ。」

雨に濡れて体に張り付いてくる服を煩わしく思いながら、少女はゆっくりと公園を後にした。

この日以降、一つ変わったことがある。
少女は戦闘にもアシマリを積極的に使いだしたのだ。
168オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/22(日)01:36:40 ID:hy8
>>167

「……。」

オトギリは笑みを浮かべた。
結果はどうであれ、ジヘッドと自分、持てる全ての力を出し尽くしたのだから、彼は満足していた。
ミストフィールドが徐々に切れていく中、オトギリはジヘッドに歩み寄った。

「ジヘッド……。」

ジヘッドは完全に意識を失っていた。
以前ランクルスと戦った時は力尽きても尚、心配かけまいと笑っていたが今回ばかりは完全に伸びていた。
「良くやったな、ありがとう。」と呟くとジヘッドをモンスターボールに戻し、オトギリは立ち上がり彼女の方を向いた。

「……良い勝負だった。お前のアリアドスとアシマリも相当強かったぞ。
タフなジヘッドが表情一つ変えられない程に全ての力を使い果たしたのも始めてだ。」

オトギリは賞賛を送った。
アリアドスの俊敏な動きとトリッキーな戦術。
特性のはりきりに加え状態異常状態のジヘッドのからげんきと相殺する程の力のバブルこうせんを放ったアシマリの底力。
この試合を見て彼女達を賞賛しない者は居ないだろう。

「……そうか。またな。」

去り行く少女を見送ると、オトギリは日の出の方角を向いた。
朝日はまだ昇り切っていない。

「……最近は強い奴と良く会う。」

――――朝日に照らされるナナイタシティ。
周囲は微かに明るくなっていた。公園でバトルをしていた他のトレーナー達も殆どが決着が着いた様で疲弊した様子だ。

「退屈しないな。」

オトギリは微笑みを浮かべると、今宵稼いだ入院費を手にコロトックの待つポケモンセンターへと帰って行った。
169キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/22(日)22:23:04 ID:c3M()
繁華街から少し離れると、荒れ果てたストリートが広がる。
この辺りはあまり治安がいいと呼べる地域ではなく、人通りも殆ど無い。
そんな夜のナナイタシティには、ぽつぽつと雨が降っていた。
濡れたアスファルトの上に、フードを被り、ガスマスクを着けたミニスカートが一人。

「――――そう、じゃ、その段取りで任せるわ」

「こっちは少しトラブったわ。ええ、数人がかりなら何とかなると思ったみたい。」

コンクリートの転がる空き地に、何人かの男とポケモンが倒れ伏している。
街灯に薄っすらと照らされた少女は、ガスマスクを外し、首にぶら下げた。
まるで全てに興味を失ったかのような冷めた目つき、光の無い瞳の少女。

「ええ、モノは律儀に持ってたから有難く頂戴させてもらうわ。契約成立。」

「そぅ。じゃ。」

『ズリッ・・・ゴトゴトゴト』

ピッ、とコールを切ると、少女は空き地を後にしようとする。
ゴトゴトとフォレトスが鈍い音を立てながら地面を転がって付いてくる。
170スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/22(日)22:40:12 ID:zSN
>>169
少女が空き地を出ようとした時、右方の角から通りかかる男の姿があった。
調度彼女と鉢合わせる形になるその男は、少女に気がつくとはたと立ち止まる。

「おや、こんばんは」

エアームドを模した仮面とマントを身に付けた───更に今日は雨が降っている為、ランプラー型の傘をさした男が、少女の前に現れた。
どうやら彼の位置からは空き地の大部分が死角になっているらしく、まだそこにいる倒れた男達には気が付いていないようだ。

「こんな雨の日に傘もささずにいると風を引いてしまうよ」
「良かったらこの傘を使うかい?そこのフォレトスも入れてあげるといい」

その仮面の下に優しげな微笑みをたたえながら、男は少女に持っている傘を差し出そうとする。
171キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/22(日)23:09:35 ID:c3M()
>>170

ふと目の前に現れた何ともうさんくさい風体の男。
これで彼女が小学生ならブザーをけたたましく鳴らして不審者案件モノである。
春は変な奴が増えるとは言うし、この辺りもそういう連中が多いのだろうか。

「………………」

雨の中突然話しかけてきた仮面に投げかける視線はとても警戒心に溢れていた。
が、やがて大きなため息をついて彼女はこう返した。

「雨の中、傘を差さずに濡れる女の子がいてもいいと思わない?」

ポタリ、と濡れた前髪から雫が垂れ、アンニュイな表情と濁った瞳が暗に「関わらないで」と訴えているようだった。
最も、夜の雨の街を濡れながら歩く彼女の訳あり少女感はその容姿から溢れんばかりであるが。

『………ズリッ』

フォレトスは彼女の足元にぴったりとくっついて様子を伺っている。
正体不明の中身が、虚ろな目玉だけを仮面の男に向けている。

ふと、通りがかったトラックが、空き地で気絶する男達を煌々と照らし、水飛沫を上げて走り去っていった。

「……それとも、貴方もああなりたいのかしら」
172スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/22(日)23:28:11 ID:zSN
>>171
「ふむ、いい言葉を知っているね」

警戒されているのか、申し出を断る少女にスパーダは、彼女の言った言葉が誰かの語った言葉であったかと頷いた。
雨の中で傘をささずに濡れる子供がいれば心配にもなるが、旅をするトレーナーにはそんな事を一々気にしない者もいる事だし。
余りしつこく気にするのも失礼か、と思った矢先、トラックの光に照らされた空き地の奥が視界に入る。

「……成る程、あれは君とこのフォレトスがやったのかい?」
「あの人数を相手によくやるものだ、でもやり過ぎはよくないよ」

少女の言動とやって来た方向からして明らかにその犯人が彼女だと気が付いたスパーダ。
しかし彼の口からはまず賞賛の言葉が出て、少女を諭す言葉はその後でやんわりと告げられる。

「強さに自信を持つのは悪い事じゃあない、でも奢ってはいけないな」
「……さて、それじゃあ君は僕をどうするつもりなのかな?」
173キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/22(日)23:50:54 ID:c3M()
>>172

「貴方はあまり首を突っ込まないほうがいい話ね。ちょっと込み入った事情だから」

雨粒が彼女のフードを濡らし、雨音は静寂を引き立たせる。
そもそも手を出してきたのは向こうなのだ。彼女はあくまで防戦に徹したに過ぎない。
とはいえこの惨状はどう見ても過剰防衛なのだが。

「別に、どうもしないわ。春先の変質者に構ってられるほど私も暇じゃないの」

差し出された傘を押し返し、光の無い濁った瞳で上目遣いに見つめる。
そしてとぼとぼとまた歩き出し、その場を離れようとする。

「通報したいならすればいいんじゃないかしら?私は付き合わないけど」

『……ジャキンッ!!』

「……フォートレス、無用なバトルは無しよ」

フォレトスの殻の隙間から鋭い棘が切っ先をちらつかせる。
あくまで、邪魔をするようなら容赦はしない、という意思表示が明確に見て取れる。
174スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/23(月)17:54:18 ID:nic
>>173
少女の鋭い一言、変質者扱いの言葉に苦笑いを浮かべつつ、歩き出す少女の背中を見つめる。
無用な詮索はしない方がいい、例え少女にどのような思惑があろうとそれをどうにかする義理はないのだから。

───だが、理由ならある。

「「ダダン!」」

少女がその場を去ろうと振り向くと、目の前に今までそこにいなかったポケモンが道を塞いでいた。
ふた振りの剣の形状をした、二体一対のポケモン、ニダンギルだ。

「すまないねお嬢さん、君が僕に構う理由は無くとも、僕には君を放って置けない理由がある」
「何故かは……もう分かっているだろう?そのガスマスクがよく知っている筈だ」

少女の行く手を阻み、彼女の素性を知っているような口振りで話しながら、スパーダはマントの下から取り出した手帳を少女に見せる。
開かれた手帳には街灯の反射で顔が隠れた写真と、国際警察の証が、雨の夜にあってハッキリと現れていた。

「国際警察だ、君には犯罪の容疑がかけられている」
「少々お話を聞かせてもらえるかな?」

───様々な地方を旅する劇団の団員にして、楽しむ事を重視するポケモントレーナー、そんな彼のもう1つの顔。
各地方を劇団員として巡りながら悪の組織の動向を探る、国際警察としての顔。
175スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/23(月)18:07:02 ID:nic
/>>174は取り消します
176スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/23(月)18:19:38 ID:nic
>>173
「はっはっは、最近の子供は怖いねぇ」
「そんなに忙しいと言うのなら余り引き留めるのも悪いかな、いや済まなかった」

少女からの辛辣な突き放す言葉に、茶化すような笑いを返すスパーダ。
差し出された傘を突き返され、その場を去ろうとする少女の背中を見つめる。

明らかに警戒心を剥き出しにしているフォレトスにも笑顔を返して、歩いていく少女とフォレトスをその場で見送る。
……かと思いきや、少女の横に着いてスピードを合わせ、同じ方向に歩き出した。
ついでに少女は自分達に雨が当たらなくなったのも感じるだろう、スパーダがさしている傘を少女側に傾けている。

「おっとすまない、調度行く方向が同じだったものでね」
「歩く速さが君と同じくらいだが気にしないでくれたまえ、僕は昔からこれくらいの速さで歩くんだ」

少女達の言いたい事を感じ取ったのだろう、スパーダは笑みを浮かべて嘯き、自分の肩を濡らしながら少女に傘を傾ける。
別に少女に対して疚しい物を感じたり、怪しんでいるからという訳でもない、何処か訳ありであろう少女が、それでも雨に濡れているのを放って置けない性分なだけだ。
勿論それは彼女が連れているフォレトスに対しても同じく、彼の傘はフォレトスも濡らさないように傾けられていた。
177キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/23(月)20:45:54 ID:dGG()
>>176

「子供―――そうね、最近の子供は危なっかしいの」

そう言い捨ててとぼとぼとまた歩き出す。
棘を突き立てていたフォレトスも、仮面の男を睨みつけながら再び転がりだす。

「……はぁ」

傘を断っても尚付いてくる男に、少女は呆れたようなため息をついた。
二人ぶんの足音に、ゴロゴロと転がり付いてくる鋼の塊の音が、奇妙なリズムを奏でる。
フォレトスは相変わらず訝しげな目で男を睨みつけているが、少女も特に何か命令する様子は見せない。

「……どうしてそんなに私に興味を持つの?」

差された雨傘に言葉を返すも、その濡れた髪の張り付いた、物悲しい表情は変わらない。
まるでその転がる鉄殻虫と同じように、鉄壁のごとく硬く心の殻を閉ざした少女だ。
その殻の隙間から伺うような言い回しで、こう返す。

「……私から何か聞き出したいのなら、貴方も素性くらいは明かして欲しいわ。」
178スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/23(月)21:11:07 ID:nic
>>177
「うん?」

隣を歩く少女から問い掛けられる、子供の唐突な問いに答えるように、スパーダは答えた。

「君の事に興味がある訳じゃない…と言えば失礼になるかな」
「ただ単に雨で濡れる女の子を放って置けないだけさ、それが好きでやっているとしてもね」

「……そうだな、じゃあ代わりに僕の話を少ししようか」
「僕の名前はスパーダ、ポケモン劇団の劇団員をやっていてね、暫くこの街に滞在しているんだ」
「この服はその劇団の衣装さ、気に入っているから宣伝ついでに借りて歩いているんだ」

少女の秘密を探ろうなどとは思わない、単なる紳士的行動を心掛けているが故の行動であり、何一つ彼女を陥れようとはしていない。
だから躊躇わず自分の事を少女に語って聞かせる、胡散臭い表情と口振りを信じるかは彼女の勝手だが、嘘は語っていない。

「劇団員の前はバトル施設の専属トレーナーなんかもやっていてね、少しはバトルに自信があるんだ」

まるで思い出を楽しむように、和かな表情でスパーダは少女に語る。
179キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/23(月)21:53:15 ID:dGG()
>>178

「そう……好きにするといいわ」

そんな紳士ぶった理由に少女は素っ気無い返しをするだけだった。
少女は男を振り払うことなしにある目的地へまっすぐ向かっている。

やがて繁華街が見え、眠らないネオンの街並みと、雑踏が増えてくる。
スパーダの話を黙って聞いている少女は、顔色一つ変えない。ただじとっとした目だけが見つめている。

「大層な宣伝ね、ジュンサーに職務質問されるのにぴったり」

そんな辛辣な皮肉を時折返しながら、人混みの中に入っていく。

「私、バトル自体が好きな訳じゃないわ。」
「相手の攻撃を完膚なきまでに跳ね返して傷一つ付けさせない、そういうワンサイドゲームが好きなだけ」

「だから、私を傷付けてくる奴は全員ああなるの」

先ほどの空き地の事を言っているのだろうか。
180スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/23(月)22:31:45 ID:nic
>>179
「成る程、カウンター型の戦法を好むのか、厄介な戦法だね」
「そのフォレトスを見るだけで分かるよ、君もかなり腕に自信がありそうだ」

少女がどのような思惑で言っていようと、それもれっきとした戦法の一つ、そしてそれを成せるのはトレーナーとしての腕とポケモンの強さがあっての事だろう。
……と、スパーダはあくまでもそう考える、他者の戦い方を否定はせずに、それを実現できる手腕こそを肯定する。
実際、ワンサイドゲームを叶える事が出来るのはそれだけ実力があるという事、そしてそんな実力は何の努力も無しに身につくものではない。

「最近の子はみんなバトルが強いね、リーグ戦の中継が今から楽しみだよ」
「君はポケモンチャンピオンなんかには興味は無いのかな?」

スパーダがこの街に来てからバトルしたトレーナー達は、誰も彼からすれば幼い子供達だったが、しかしそのバトルの腕は本物だった。
そんな少年達がいると思うと胸が高鳴ると、まるで彼こそが子供のように笑いながら語っていた。
181キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/23(月)23:11:41 ID:dGG()
>>180

「チャンピオン……フッ」

鉄仮面のポーカーフェイスをしていた少女がスパーダに初めて見せた表情は、そんな苦笑いだった。

「私も、そういうバトルを純粋に楽しめる、素直で正直な子供だったらよかったのに」

曖昧な口ぶりからして、やはりそこまで勝負そのものに興味があるわけではないらしい。
というより、見た目は少女だが、その口ぶりはとても年頃の思春期の女子とは思えないほどひねくれている。

「私は……この子達に守られて生きてきたから。バトルなんかよりもっと汚い世界でね」
「だからチャンピオンなんてものは目指さないの。そんな純粋な気持ちはもうないの。」

「そんなにバトルがしたいなら、そのうち接待試合くらいはしてあげる。」
「私はキャスタナ。覚えなくていいわ。」

ふっ、とキャスタナの姿が、人混みに紛れて消えた。
フォレトスはその場に立ち止まっていたが、スパーダをもう一度見つめた後、ゴロゴロと人ごみの中に転がり込んでどこかへ行ってしまった。

喧騒の中で、やけにやさぐれた少女の姿が脳裏にだけ焼きついていた。
182スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/23(月)23:29:56 ID:nic
>>181
「まだ人生の行く末を決めるには早すぎる、と僕は思うけどなあ」

どんな理由があろうと、どんな過去があろうと、スパーダからすれば少女はまだ子供である。
誰かを頼ってもいいし、何かを投げ出してもいいし、何かを間違ったっていい、そうして人は大人になって行くのだ。
捻くれているの一言で自分の性格を自覚したり、素直ではいられないと決め付けたりするには余りにも早い。

「それは楽しみだ、実の所恥ずかしながらここ最近負け続けでね」
「……また会えるのを楽しみにしているよ」

皮肉めいたキャスタナの言葉に、冗談めかして言い返し、その姿が消えると立ち止まる。
キャスタナの姿を探したり、驚いたりする様子もなく、その場に残ったフォレトスに優しく微笑みかけてその後を無言で見送った。

「やれやれ……衣装をこんなに濡らしたら怒られるなあ」
183オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/24(火)00:16:03 ID:QW6

―――ナナイタシティの郊外には小さな森林公園があった。
森林公園のポケモンは整備直後に自然と住み着いた、所謂野生のポケモンである。
然し此処のポケモンの中には珍しいポケモンも多くシティの保護対象に指定されており、捕獲や倒すといった一切の行動は条例で禁じられている。

「……良い公園だ。」

公園に住み着いた数多のムックルやマメパトを見上げながら独り言つ少年が一人。
黒のジャケット、白のジーンズという出で立ち。右手に持ったモンスターボール。
彼は露骨な程にポケモントレーナーであった。

「……害虫が集るのも至極当然の事か。出て来い、コロトック!」

少年の名はオトギリ。コロトック、ジヘッドを従えるカントー出身のポケモントレーナー。
直後、森林公園の一角に切断音が幾度と無く響き渡った。

モンスターボールから飛び出したコロトックが居合抜きの如く何かを無慈悲に切り裂いた。
―――直後、木陰からバタリ、バタリと倒れながら現れる目付きの悪いトレーナー達。
此処は珍しいポケモンが多い、故に条例で禁じられた密猟や虐殺行為を行う悪しきトレーナーも多いのだ。
シティも警察やエリートトレーナーを派遣して警備に当たっているが、それでも防ぎ切れていないのが現状である。

「……罪の無いポケモン達に手を上げる悪人め。」

獲物達を切り裂いた左腕の具合を確かめながらコロトックがオトギリの下へと歩み寄る。
オトギリはコロトックにポロックを与えると、腕を組んで野生のポケモンを見上げた。
……成程、確かに此方では見かけないポケモンが多い。
中には色違いのポケモンも居た。

一仕事を終えたオトギリはふぅ、と息を吐くと手首に嵌めた最新式のポケッチで現在位置を確認した。
184アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/24(火)00:25:13 ID:XHf
>>183
「ち、ちちち違います違います私たまたまここに遊びに来てただけの一般市民なんです命ばかりはー……!」

少女がひとり、木陰でヤドンを抱きかかえて屈み込みガタガタと震えて命乞いをしているではないか
ヤドンを連れているという事はトレーナーである、腰にアタッチメントしてあるみっつのモンスターボールもそれを証明している
すわ、密猟の悪人が演技までしているのかと言われればただ、どうにも迫真めいているではないか

「たたた確かにマメパトはカワイイですけど私の好みはもっとこうもっちりした感じなんですー……!」

そんなトレーナーを尻目に、ヤドンは鼻ちょうちんを作ってお昼寝だ。麗らかな陽気だから仕方ないね!
185オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/24(火)00:38:01 ID:QW6
>>184

「……」

突如として表れた少女をオトギリはジト目でまじまじと見た。
少女を指差し、コロトックにジェスチャーでこの少女は何なのかと問う。
コロトックもジェスチャーで「特に害はなさそうだから切らなかった」とオトギリに伝えた。
暫し考える素振を見せた後にオトギリは少女の様子を見た。確かに無害っぽい。

「一般市民かぁ……」

オトギリが少女の間近まで接近し、見下ろした。
顔を近付け、眉間に皺を寄せながら少女の顔を凝視する。

「……す・じょ・う」

オトギリは顔を近付けながら少女に語り掛ける。

「素性を言え素性を!そこのヤドンと一緒に密猟団と仲良く警察に突き出すぞ!」

オトギリは睨み付けながら少女に素性を問う。
余談だがオトギリは女性に免疫が無い。その上初対面の女性に対しては多少女性不信な一面を見せる。
オトギリが本気で言っているのかは不明だが何にせよ、素性を言わなければこの少女は警察送り……かも?
186アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/24(火)00:52:11 ID:XHf
>>185
「素性!?」
「え、えーっと、アキです!ポケモントレーナーのアキ!」
「で、これがかばごん!」

ハッとして立ち上がり元気良く挨拶
その辺の態度の急変があるが、それは挨拶時は元気良くとの自分ルール()がある為だ
空元気と共に名乗り、ヤドン(40kg弱)の首根っこを掴みでろーんと垂らしながら!
薄緑のマオカラーのミニ丈ワンピースにストレッチ生地のパンツ、活発な印象の少女はアキと名乗った
ハーフアップの髪をまとめるかんざしの飾りのモンスターボールの造形がキラリと光る

「……あ、ポケモントレーナーの時点で一般市民とは違うのかな……?」
「でも私一般人だしー……あぁ、一般ポケモントレーナー!」
「……キミは、……っていうか、キミもポケモントレーナーだよね?」

うむむと唸り一人納得したように手のひらを叩く!
この辺りでもうすっかり怯えモードは影を潜め、彼女自身の素とペースが鎌首を擡げているではないか!
187オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/24(火)01:08:50 ID:QW6
>>186

「……」

オトギリは立ち上がり、傍まで歩み寄ったコロトックとこのアキという少女をどうするか話し合った。
当然、言語は全然違う。だが二人はこのアキをどうするかについて言葉で話し合っていた。
色々と掴み辛いが無害……と言えば無害である事に間違い無さそうである。
二人(一人と一匹?)は様子見という結論に達した様だ。

「……まぁ、俺もポケモントレーナーだな。チャンピオンを目指している。
未来のチャンピオン……だ。」

ほぼ定型文と化した自己紹介を述べながら、オトギリはアキの変わり様に驚いた。
この少女の発する摩訶不思議なオーラにオトギリは困惑した。

この少女は今までオトギリが関わって来たどんな人間よりも異質だった。
マイペースというか、能天気というか……。
188アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/24(火)01:19:26 ID:XHf
>>187
「チャンピオン!未来の!」
「……スゴい、いいなー!私も目指すはチャンピオン!なんだけどまだバッジも集めてなくてー……」

そもそも旅をしてこの地方に来て日が浅く、ジムの存在の有無すら確認していないくらいなのだと言う
それを話し終える頃にはもう色々とアレな彼女の性格なんかも大体理解出来ていてもおかしくはないだろう

「……で、えーっと、なんだっけ?バトルしようって話しだったっけ?」

キッカケすら忘れてのマシンガントークだった模様。 つまり彼女はアホだ
因みにヤドンはまた寝た。尻尾がゆーらゆーら揺れてちょうちょがそれに戯れている
189オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/24(火)01:47:36 ID:QW6
>>188

「……お前もチャンピオンを目指しているのか。」

少々驚いた、という様子でオトギリは少女の顔を見る。
人は見掛けにはよらないものだと感心した様子で顎先に手を添えて少しばかり考える。
この辺りのジム事情についてこの少女は把握しているのかという疑問も浮かんだ。
だが、暖簾に腕押し、糠に釘。そんな気がしたので問うのはやめた。

「……そうそう容易い道ではない。だがポケモンを信じる者には必ずその道を歩む権利がある。
俺はそう信じている。
お互いに頑張ろう。ライバルとしてな。」

「……さて、そろそろ行……」


「えっ」

オトギリは密猟団を警察に突き出すべく去ろうと思ったその時、少女から発せられた言葉に気の抜けた素の声が漏れる。

どうやら自分は勝負を挑まれたらしい。

勝負自体はオトギリは全然構わなかった。受けて立ってやろうの精神だ。
だが、突然少女からその言葉が飛び出したものだからかなり驚いた。

「……」

オトギリの思考回路は完全に停止していた。

――――という経緯があってオトギリはこのチャンピオンを志す少女、アキとバトルする事となった。
オトギリは少女から少し距離を置いて所定の場所に立った。
コロトックもまた然り、所定の場所に立って構えた。

「さぁ、いつでもポケモンを繰り出してかかって来な。」

―――とは言ったものの、油断ならない。
人は見掛けに依らず、こういうトレーナー程案外強かったりするものだと、オトギリは自分自身に言い聞かせる。

野良試合に審判は居ない。
アキがポケモンを繰り出せばそれが勝負開始の合図だ。
190アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/24(火)08:09:00 ID:XHf
>>189
「もちろんっ、ポケモントレーナーたるものの嗜みだもんねっ!」
「……よぉし、いくよ!はりたろー、ゴー!!」

『……!!』

嗜みで目指す程甘い道ではないであろう、多分彼女の語彙と言葉選びのセンスの問題である
ともあれ目が合ったのだからバトルだ、むしろ此方がトレーナーとしての嗜みと言えるだろう
繰り出されたのは巨体を揺らすつっぱりポケモンハリテヤマ!
……ん?しかしどうも、アキの方を振り向いて首を振るなど様子がおかしいぞ!

「……え?あ、はぁい……」
「ごめん、ちょっと変えるね、えーっと……」

ハリテヤマはアキの所持ボールや相手のコロトックなどを指差したり何なり
どうやらこのバトルに向くのは自分ではない、との指示らしい。タイプ相性がマイルドとはいえ虫に格闘出すのは流石にちょっとね
アキは大人しく従ってハリテヤマを隣に立たせて仕切り直し!ズルイ!

「……こほん」
「よぉし、いくよ!れんが、ゴー!」

『……ヂーッ!』

さてさて、どうやらハリテヤマの指示通りねずみポケモンサンドパンで挑む模様
放たれたサンドパンは威嚇めいて背を丸め鋭いツメを誇示するが如く両腕を広げた!

「……ソッコー!こうそくスピン!」

そのまま丸まって針玉化!
回転高音と共に土壌を削り、コロトック或いは彼の新たに繰り出したポケモンへと迫る!
191オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/24(火)15:00:18 ID:QW6
>>190

繰り出されたアキのポケモンはハリテヤマ……と思いきや、サンドパンだ。
サンドパンがコロトックを威嚇する、コロトックも低い姿勢で構えを取った。
鋭いツメ、それを見たオトギリは必要以上に警戒する。というのも、切断系の相手には以前手痛い目に遭わされているからだ。

(……慎重に攻めねば。)

オトギリは固唾を飲む。
さて、先手を取ったのはアキのサンドパンであった。迫り来る針玉。
あれに巻き込まれればひとたまりもない事は素人目に見ても明らかだった。

「回避しろ、コロトック!」

オトギリが命ずる、同時にコロトックの身体が揺れた。
その姿が微かな残像を残しながら、こうそくスピンを紙一重で回避する。
然し紙一重故に頬を微かに掠り、コロトックの頬から体液が滲み出た。

「―――そのまま距離を取ってむしのさざめきだッ!」

こうそくスピンにより巻き上がる土煙の中から高速でバク転を決めながらコロトックが飛び出した。
そして数メートル離れた地点で跳躍。
太陽を背景にその羽根を羽ばたかせ刹那の対空、同時にその振動により特殊な音波を発した。

「ギィィ!!!」

コロトックが発した音波。これはむしのさざめき。
特殊な音波により生物にダメージを与える虫タイプのポケモンの十八番とも言える技だ。
同時にコロトックの身体が紫色に輝いた。

―――いのちのたま。
所有者の繰り出す技の一つ一つの殺傷性を高める鉱石だ。だが、それには対価が伴う。
対価、すなわち所有者の命そのものである。

「―――歌え!」

威力を増し、紫色の闘気を帯び可視化した音波が真っ直ぐにサンドパンへと差し向けられた。
果たして―――
192アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/24(火)18:23:53 ID:XHf
>>191
「っ、」
「……あぁっ、危な……す、ステルスロック!」

しまった特殊技か、とアキ
傍に立つハリテヤマも渋い顔である、何せサンドパンは体は固く物理攻撃には驚異的な耐久を見せるがそうでない干渉には弱いのだ!
因みにヤドンはぐーすか寝ている
決死の判断、放たれる無数の浮遊岩石!
可視性を帯びた音波は内幾つかの岩を砕き突き進む!

『ヂ……ッ……!』

被波!白き飛沫を纏う豪波濤が如き衝撃はサンドパンを包み体を吹き飛ばす!
だが、それでもだが!

「……がんせきふうじ!!」

更に追加の岩石を、投げ付ける事に不足無い程度のダメージに抑える事がなんとか叶った!
ステルスロックは本来の威力を大きく削がれたが防壁として役目を果たしたのだ!
ヤドンの尻尾にちょうちょが止まった!
193スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/24(火)21:58:20 ID:ysM
ナナイタシティを朝日が包み込む、海辺を望む街道の傍らで、朝の風にマントが棚引いた。
朝日を照り返し仮面が煌めく、人通りの少ない街道でその男と彼のポケモンは朝日を眺めている。

「素晴らしい朝日だ、ナナイタシティの朝日はこれまで見た中でも特に素晴らしい」
「そう思うだろう?エアームド」

「スラーッシュ!!」

エアームドを模した仮面とマントを着けた男が、エアームドと共に朝日を眺めて笑っている。
───これは一体どういう表情で見るべき光景なのだろうか、しかし本人達は実に優雅に佇んでおり、一切の疑問も無さそうだ。

「……この光景を彼にも見せてあげたかったね」

「スラァ……」

男の腰に収まるのは剣の鞘、側から見ても装飾が煌びやかな剣の柄に手を当てながら、彼等は何かに想いを馳せているようだった。
194キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/24(火)22:07:38 ID:lxY()
まだ水溜りの残る雨上がりのナナイタシティ近郊、ハイウェイの下にある駐車場。

「ワルビル、かみくだく!」

「グライガー、きりさく!」

丁度、地元のワル達が車やバイク、あるいはポケモンを停めてたむろっていた。
ストリートな感じの音楽が流れ、ある者はポケモンを戦わせたり、ある者はそれに賭け、ある者は酔っ払っている。

フードを被った少女は車に寄りかかってガムを膨らましながらその様子を眺めている。
ガスマスクを首に下げ、冷めた表情で盛り上がるワル達を遠巻きに眺めている。

「待たされるのは慣れっこだけど……なかなか遅れてくれるわね」

『ズリッ、ガコッ』

フォレトスも殻を閉じて完全に昼寝状態だ。
不良が好むポケモンはバリエーションに乏しく、一つ覚えの肉弾戦ばかり。
目の肥えたキャスタナにはこの上なく退屈な集まりである。
195ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/24(火)22:21:46 ID:Xnp
>>193
「313…314…」

海辺の街道、防波堤の眼下に広がる砂浜。
都会のビーチというのはゴミだらけでレジャーに適したものではないが、朝日を細々と反射するガラス片などにはむしろ何か言い知れぬ趣がある。

物好き以外には目もくれられないスポットだったが、広さはバトルにも十分な広さがある穴場。ソウジとリオルの朝練はバレーボールのパス繋ぎから始まっていた。
風に流れる不安定なボールを、リオルは小さい身体ですばしっこく打ち返し、ソウジもそれに何とかついて行く。
一見ただの遊びのように見えるこれも、トレーナーと一緒にトレーニングする事もまたポケモンとの連携には欠かせないのだ。

「…リオ!」

…と、リオルが地面に埋まっていたシェルダーに躓いた。その勢いで、ボールも明後日の方向へ向かっていく。
ソウジの方はもうくたくたで、ボールがどこへ向かうかなどに気を配る余裕もない。

「…あっ!」

顔を上げれば、ボールが飛んだ街道の上には日の出の誕生を見守るエアームドと仮面の男が居るではないか。
朝風へふらふらと導かれたビーチバレーボールはエアームドの鋼鉄の翼に引っ掛かり、一瞬で斬り破れてしまうだろう。
196エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/24(火)22:28:04 ID:MN1
>>194
ばさり、と空気を裂く音が一度だけ響く。
その音すら、悪ガキ達は喧騒の最中。聞こえてすらいないだろう。

「あーあ、このブーツおニューだったのによ。」

帽子を目深に被った男が、一人ごちる。
少女が振り返れば、車越しに背のひょろ長いシルエットが、カイリューの背から降りているのが見れるはずだ。
どうやら先程までの雨にやられたらしい。濡れたポンチョの端をぞうきんのように絞っている。

「すまんな。レディを待たせるのは趣味じゃないんだが……。」
「イッシュから超特急で飛ばしてきたんだ、許してもらいたいね。」

『ぐるぅ……。』

ブルブルと体を震わせ、水滴を飛ばすカイリューに、お疲れさん、と一声かけると、男性はボールの中に入れてしまう。
少女の隣に立つと、男性も乱雑な悪ガキ達の試合へ目を向けながら、ポケットから煙草の箱を取り出す。

「シケてやがらぁ。」

煙草の感想か、それとも、ギャングたちの対戦の感想かは分からない。
男は舌打ちをして煙草の箱をポケットの中へ戻した。
197名無しさん@おーぷん :2018/04/24(火)22:39:44 ID:ysM
>>195
「───スラッ!?」

「ん?どうしたんだいエアームド───」

それは一瞬の出来事、自分に向かって何かが飛来して来たのに気が付いたエアームドが、鋭い眼光でそれを睨み付け翼で払った。
硬く鋭い翼に触れたボールは容易く引き裂かれてしまい、バラバラになった欠片が力無く翼に引っかかる、それを見て漸くそれが無害であったことに気がついたエアームドは首をかしげていた。

「おや、これは……やってしまったな」
「あー……すまない、そこの少年!このボールは君のだろう?」
「エアームド、これは君が悪いぞ、ちゃんと謝るべきだ」

自分のポケモンが他人の道具を壊してしまった、本人にそのつもりは無くともやってしまったのは事実である。
砂浜にいるソウジの視線に気がつくとこのボールだったものが彼の持ち物である事は明白、声を上げて謝罪しつつ、柵を飛び越え砂浜に降り立った。

「スラァ……」

それに続いてエアームドも砂浜に降り立ち、申し訳なさそうに翼に引っかかったボールの残骸をソウジに差し出した。
198オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/24(火)22:45:56 ID:QW6
>>192

「―――ギィッ……!」

向かい来る数多の岩石。一つ一つを躱すコロトック、然し全てを躱し切る事は叶わない。
岩石が次々とコロトックの身体に傷を一つ一つ刻んでいく。
直後、飛来したがんせきふうじ。

「コロトック!ハイパーボイスで岩石を破壊しろ!」

オトギリの命令と共にコロトックに両目が赤黒く輝いた。
飛来する岩石の内の一つを踏み台―――直後、凄まじい金切り声が森林一体に響き渡った。
文字で表現できないその音は轟き、飛来する岩を破壊。
岩が防音壁と化し、サンドパンへのダメージは微塵も無かろう。

落下と同時にコロトックは正面のサンドパンを睨む。

「―――ギィィィィィィッッッ!!!!」

咆哮。同時にいのちのたまを源泉にコロトックの全身から紫色の闘気の波が溢れ出た。
発生した風圧にオトギリはニット帽が飛んでいかない様に抑えながら微かな笑みを浮かべた。
コロトックが低い体勢で構えを取り、オトギリの命令を待った。

「中々良い動きをするサンドパンだ。
まさかステルスロックを防壁にし、その上がんせきふうじでカウンターとはな。」

オトギリはアキに賞賛を送った。
コロトックの全身には細かい傷。そこからはだらだらと緑色の体液が垂れ流されている。

「……だが、俺のコロトックもまだまだこれからだ。コロトック!かげぶんしん!」

直後、コロトックの身体が八つにも九つにも分裂、分身がサンドパンを囲む形で出現した。
全てのコロトックから発された紫色の闘気が帯を形成する。

「―――シザークロスッッ!」

「「「「「「「「「「「ギィィィッ!!!」」」」」」」」」」

刹那。全てのコロトックが一斉に中央のサンドパン目掛け飛び掛かった。
全てのコロトックの両腕が深緑の闘気を纏う。
同時にいのちのたまがコロトックの精気を吸収。コロトックの肉体を覆うオーラは更に色と重みを増した。

「これは避け切れるか?」

鬼の形相のコロトックが殺意を両腕に纏いながらサンドパンの命を刈り取らんとするその背後で、オトギリが挑発的に笑った。
199キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/24(火)22:53:09 ID:lxY()
>>196

「全く、デートだったら帰ってる所だった。」

パツン、とガムを割りながら男に呆れ顔を向ける少女。

「……そう、遥々ご苦労様、と言いたい所だけど……」

『……ガコッ』

フォレトスが殻を開け帽子の男を見上げる。
鳴き声も上げない寡黙なポケモン故に、彼が何を考えているのかはよく分からない。
ただ、黙って二人の話に耳を傾けているようではあった。

「またなんで、貴方みたいな有名人がウチに興味持ったわけ?まぁ……ラボは貴方を欲しがってるみたいだけど」

シケモクから漂う紫煙を眺めながら、少女は淡々と組織側としての交渉を進める。
彼らとてタダでは指名手配犯など匿えない。それなりの理由があって呼んだのだろうが…

「……あんなチンピラ気取りでもウチでケツ持ちしてる連中なのよ、多目に見てやって」
200ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/24(火)22:57:14 ID:Xnp
>>197

たった翼の一振りだと言うのに、エアームドの体はボールを重ねて破ったちり紙のように粉々にしてしまう。
ソウジは彼のトレーナーである仮面の男に呼び止められるまで、暫しその姿に見とれていた。

「あっ!全然かまいません!フレンドリィショップで200円だったんで!」

その少年は残念がるよりもむしろ、恥じ入るようににっこりと手を振って返答した。
興味の対象が男のポケモンに移ったというのもあるが、ソウジはエアームドがトレーニングの相手に最適かもしれないと内心槌を打っていた。

「それにしても、そのエアームド、いい翼ですね…!強いエアームドは体の切れ味がするどいって」

それにしてもをやたら間延びして強調する彼は半ば意地の悪さを見せた。面倒ついでのバトルを所望する意志は明らかだった。
リオルも感心した様子で、エアームドの鋼の身体に移りいる朝日に情熱を馳せていた。
こんな鉄のような身体で、どうやって飛ぶのだろう。
201スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/24(火)23:17:14 ID:ysM
>>200
「いや、値段の問題ではないよ、君の持ち物を壊してしまったのは事実だからね」
「とはいえ弁償しようにもこの時間では店も開いていないだろうし…」

いくら値段が安くとも人の物を壊してしまって何も礼をしないのは彼自身が許せない。
他にボールを持っていれば話は早いがそんな筈もなく、早朝な為今すぐ買って返す事も出来ない。
どうしたものかと悩んでいると、ソウジとリオルの視線がエアームドに向いているのに気がつく。

「ほう、わかるかい少年?」
「このエアームドの強さには僕も自信を持っているんだ、自惚れるようだがね」

「スラーッシュ!!」

自分のポケモンを褒められ、嬉しそうに笑顔を浮かべながらエアームドのアタマを撫でる。
エアームドもそれに答える様に大きな声で鳴き声を上げた。

「君のリオルも中々珍しいじゃないか、色違いのポケモンだね?」
「……ふむ、見ただけでわかるよ、随分と鍛えているようだね」
202エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/24(火)23:19:40 ID:MN1
>>199
「『有名人』か……。」
「俺らの世界じゃ誉め言葉にゃなんねえよなぁ。」

ふぅ、と口から煙を吐き出す。目深に被った帽子故、その表情はハッキリとは伺えないが、口元はニヤリと笑っている。
目の前では大技のぶつけ合い。ゲラゲラと汚い笑い声が辺りに響く。

「まぁ、俺ぁ金さえ積んでくれりゃそこら辺のガキにだって従う……と言いてぇがな。」

不味い、というと男は煙草を地面に放り、靴底で踏みつぶす。
一瞬、フォレトスに視線を向けて、男性は続ける。

「確かに俺も色んな組織に出入りしてきた。」
「大地だ海だ、宇宙がなんだ、ポケモンの開放だ。どいつもこいつも立派そうなもんは掲げてたが、結局のところ全員パクられた。」

悪ガキ達の集団からひと際大きな声が上がる。
大技が決まり、試合に決着がついたらしい。

「ま、俺ぁ俺なりに、アンタらに期待してるって事だ。」
203アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/24(火)23:22:29 ID:XHf
>>198
「!」
「……ありがとう、キミのコロトックもとってもステキ!」

浮かべる笑みは屈託のないモノだ
彼女はアホだ、しかしそれ故に裏表など一切が皆無
故に、超出力のノイズで揺れる前髪を抑えながらの言葉も全くの本心である

『……ヂヂ……!?』

「、かげぶんしん……!からの連携(コンボ)!?」

円陣!闘気の残光を帯びて迫る数多のコロトック!
殺到!サンドパンはたじろぎ、既に不可避の距離!
つまりそれは必殺を意味するのか!?
否、断じて否ッ!!

「……れんが、横こうそくスピン!」

端からアキは、そしてサンドパンも回避をイメージしていない!
敵が増えた!なればどう全てを迎撃するか、トレーナーとポケモンの思想はシンクロしそしてサンドパンは瞬時に指示を理解した!

『!!』

腕を広げての高速スピン!
それはコロトックへ直接向けられてはいない、ならば何か!?
周囲に浮かぶ浮遊岩石(ステルスロック)だ!
これらを弾き飛ばし弾き飛ばし散弾銃が如き迎撃の嵐!
この戦法にハリテヤマは呆れて頭を抱えた!

『……ヂ、……!!』

それでも無論全てを射ち倒す事など叶わず被斬!
強固な防御力も容易く切り裂く紫紺の一閃!
204ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/24(火)23:34:30 ID:Xnp
>>201
「へぇ、すごいなぁ…」

戦ってみたい、という言葉が続きそうになるのを、慌てて呑み込む。
幼少期ソウジが誰彼構わずバトルを仕掛けるので、センゾウにげんこつを食らった事があるからだ。
もちろん、相手もこちらの力量を認めてくれた場合はその限りではない。

「やっぱり、分かりますか?」
「コン!」

ソウジはふふん、と嬉しげな鼻笑いをする。
ポケモントレーナーなら誰しも、自分のポケモンを褒められるのはこの上ない喜びだ。
リオルも珍しい声で鳴いて胸をポンと叩いた。

「でも、うちのリオルは珍しいだけじゃないですよ………試してみますか?」
「ボールの事で気がすまなかったら、埋め合わせはリオルのトレーニング代って事で」

ソウジは、すでにウォーミングを始めているリオルを微笑ましく視線で示した。
205キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/24(火)23:50:41 ID:lxY()
>>196

「ふぅん……ま、ウチにそんな「らしい」大儀は無いから、安心して頂戴」

「強いて言えば……あら?」

「オラオラオラァ!テメェら誰の縄張りでタムロしとんじゃーーーーー!」
「スッゾコラーーーー!」「タココラーーーー!」

ブォンブォンブォン!!!と複数の車やバイクがエンジンを吹かせて乗り込んでくる。
ポケモンに乗った者もいる。駐車場に乱入してくるや否や毒針やら乱れひっかきが飛び交う。
どうやら対立グループのようだ。

「ンダトコラー!!」「おい!ヘルガースの連中にバレたぞ!」
「くっそ誰だよタレこんだの!撤収撤収ー!」

「ちょっと、あんたたちの縄張り争いに付き合うなんて言ってないわよ?」
「ウッス!乗せますお嬢!」
「はぁ……場所を変えるわ。貴方も後ろに乗って。フォートレス!」

『ガゴッ!ガシャン!』

少女とフォレトスはガスマスクを被ると黒塗りのSUVに乗り込み、他のバッド達もバイクやらポケモンやらに飛び乗って逃走を開始する。当然、対立グループの連中も追いかけてくる。
雨上がりの昼下がりに、騒々しいカーチェイスが始まった。

「ダウンタウンの西アジトに付くまでに撒かないと殺すからね」
「任せてください!」
206オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/24(火)23:52:53 ID:QW6
>>203

「ギィッ……」

サンドパンに飛び掛かった数多のコロトックは至近距離より発された弾丸の如き岩を受け、次々と消滅して行く。
その内一体、サンドパンに手傷を負わせた本物のコロトックのみが仰け反り、後方へと吹き飛んだ。
然し体勢を崩す事無く砂埃を巻き上げながら着地する。

「コロトック、とぎすます!」

とぎすます。次の一撃を必ず急所に命中させる補助技。
コロトックは左腕に付着したサンドパンの血を啜りながらその両腕を研ぎ澄ました。次の攻撃に備えるのだ。
全身から体液を垂れ流すコロトック。そのダメージは決して無視出来るものではない。
とは言え、まだ戦えない程でもない。
オトギリとコロトックの脳裏を同じ言葉が過る。まだ戦える、と。

「コロトック、奴に接近しろ!」

コロトックが低い姿勢で虚空を眺めた。否、其処には数多の見えない岩が存在している。
不可視の岩だが、コロトックには何処に存在しているのか把握出来た。
その理由は先程の攻防戦でステルスロックがコロトックの身体を傷付けた際に、幾つかの岩にコロトックの体液が付着したからである。
コロトックは跳躍、ステルスロックの内の一つに着地し、上空からサンドパンに狙いを定めた。

「……ギィ……」

忍者の如く岩から岩へと飛び移りながら素早くサンドパンに迫るコロトック。
四つ目の岩から跳躍―――同時にオトギリから命令が下った。

「―――じごくづき!」

命令を理解すると共に紫色の闘気を全身から放ちながら、その右腕に赤黒い光を纏う。
じごくづき。強烈な貫手と共に声も出せない程の激痛を同時に与える技である。
この技の起源は諸説あるが、声を武器とする一部のポケモンを仕留める為に編み出されたともされる技を、歌で人を楽しませると言われるポケモンのコロトックが使うとは何処か似合わぬ光景にも見えるが。

重力による加速をも上乗せした無慈悲且つ強力な一撃が、上空からサンドパンへと襲い掛かった。
207スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/24(火)23:59:23 ID:ysM
>>204
「うん、僕もポケモンについては少し詳しくてね」
「良く育てられたポケモンは見た目でわかるんだ、なんとなくね」

嬉しそうに胸を張るソウジとリオルを微笑ましく見つめ、笑顔を浮かべる。
ただのお世辞でこんな事は言わない、言葉にして本人に思った事を伝えてもいいと思うくらいに、リオルの育て方が───もとい、ソウジのトレーナーとしての腕が良いと感じた。

さて、問題は振り出しに戻る、エアームドが破壊してしまったボールの埋め合わせをどうするか…という事であるが。
どうやら、事は簡単に済みそうだ、ソウジの言葉と表情を見て、スパーダは満足そうに頷いた。

「……わかった、君がそう望むのならそうさせてもらおう」
「エアームド、いけるな?」

「スラァァッ!!」

そうと決まれば、意気揚々と戦闘体制に入ったスパーダとエアームド、大きく翼を広げて吼えたエアームドは、強い圧を風と共に周囲に振り撒いた。
自分よりも遥かに小さいリオルを鋭く見つめる、研ぎ澄まされた日本刀のような翼は朝日を反射し煌めいている。

「手加減は……いらないという事でいいだろう?」
「僕のエアームドは相当やるよ、覚悟するといい」

不敵に笑う、悪どい笑みだが悪意の無い、どこか無邪気で子供っぽい、そんな大人の笑み。


げきだんいんの スパーダが しょうぶを しかけてきた!
208アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/25(水)00:19:21 ID:sLf
>>206
「れんが、いけるね!?」

『ヂッ!』

呼び掛ける少女、応じるポケモン
本来それすら不要なのだ、それだけの信頼関係にあり阿吽の呼吸と言える!
何故ならそれこそ、ポケモントレーナーとポケモンの在り方なのだから!

「、上っ!?……が、がんせきふうじ!」

敵は頭上!上天より迫る双鎌の紅旋風!
咄嗟放つ岩石、しかしやぶれかぶれなのは否めない!

『……ヂッッッ!!』

被刺!
研ぎ澄まされた一閃は確かにサンドパンの生物的構造のボトルネックを突き吹き飛ばした!
ぼて、ころころ……がくっ!目を回してダウン!戦闘不能!

「あぁっ……!」
「……うん、お疲れ様、頑張ったねれんが」

モンスターボールの回収ビームが飛んで、サンドパンを包み込んだ

「……悔しいなぁ……ん、でも勉強になったっ!」
「ありがとう、とっても楽しいバトルだったよ」

悔しそうに、しかし次には笑顔
これが美徳と言えるか、それとも否かは不明だが
209ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/25(水)00:20:35 ID:fMT
>>207
「はいっ、もちろん、オレもリオルも全力で行かせてもらいます!!」

バトルが始まった途端、ソウジの笑顔は一層明るくなる。
リオルは怖気づくことも驚くような素振りもなく、強く覚悟のこもった眼差しをエアームドへ返す。
鋼鉄の翼を広げる彼の目にも、リオルの矮小な体格は朝日に押されて勇ましく演出されたことであろう。

ポケモントレーナーの ソウジがしょうぶをしかけてきた!

「ゆけっ、リオル!」
「リオ―っ!」

朝焼けの薫るほの暗い砂浜を舞台に、ソウジとスパーダによるひそやかなポケモンバトルが幕を開けた。
戦闘位置についたソウジは思い切り人差し指で空を裂き、リオルは瞬間に飛び出す。

「リオル!しんくうはぁっ!」

リオルは靭やかな脚力で一飛び。
高度を合わせてエアームドに狙いを定めると、片足を突き出した身体を竜巻のようにスピンさせ、弧状の空気の刃を標的めがけていくつも放った。
命中精度はまだまだだが、真空刃の数と威力は十分に経験が積まれていることが見て分かる。スパーダも飛び退かなければ、あのボールのような見るも無残な姿になってしまうかもしれない!
210エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/25(水)00:20:55 ID:vWG
>>205
急に、周囲が喧しさを増す。
男は帽子の上から頭を掻き、ため息を漏らす。

「おめえさんら、子飼いにするにしてももう少し選ぶこったな!」
「頼んだぞ、ガズム。くろいきりだ」

『マータドガーース!!』

男性はゆっくりと立ち上がりながら一匹のポケモンを繰り出す。
マタドガス。どくガスポケモンの名にふさわしく、ふてぶてしい態度で笑うそいつは、体中のガス排出器官から、黒色の煙をまき散らす。

「なんだこりゃあ!!!」「見えねっぞオラァ!!」

「さっさと車ァ出せ!!」

男は車に乗り込むとすぐにマタドガスを呼び戻す。
黒い煙は相手方も味方も関係なく視界を遮る。辺りではガシャンガシャンと車やバイク同士の擦れる音が響く。

「鬼ごっこはスクールと一緒に卒業しときな。」
211オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/25(水)00:40:48 ID:tBZ
>>208

「……ギィ……」

鞘に得物を納めるかの如く、コロトックの全身から紫色の闘気は蒸発するかの如く消失した。
同時にコロトックの表情からは鬼の形相が消え、瞳の真紅の輝きも消失する。
全身から滴る体液。戦闘中蓄積したダメージに思わずコロトックは膝を着いた。

「良い勝負だった。」

オトギリが賞賛を送りながらアキに近付く。
満身創痍のコロトック。今の勝負、かなり紙一重の戦いだった。
成程、チャンピオンを志すだけの事はあると、オトギリは感心した様子で頷く。

「……見ろ。コロトックは満身創痍。
この傷を付けたのはお前のサンドパンだ。流石はチャンピオンを目指すだけの事はある。
中々の実力だった。」

二人を称えるオトギリ。

オトギリが後方を見ると、其処には山積みになった密猟団共の姿。
その傍でダウンした密猟団を睨みつけるオトギリのジヘッド。
彼の目を盗み逃げようとした密猟団達がジヘッドに噛まれて再びダウンしたらしい。

「……さっきは密猟団の仲間等と疑ってすまなかったな。
これはその詫びも兼ねてお前にやるよ。」

オトギリは懐からげんきのかたまりを取り出すとアキに差し出した。
これをサンドパンに使え、という事なのだろう。
212アキ◆gbAXUJI0VY :2018/04/25(水)00:48:43 ID:sLf
>>211
「だねー、次は負けないからね?」
「んふふ、そうかなぁっ」

それがお世辞であろうとそうでなかろうと
褒められればただ純粋に嬉しい、まるっと信じるのがアキなのだ
ハリテヤマは何となく難しい顔をしているが、要するに彼の方が色々と現実を直視出来る性格であり己にも他人にもキビシイ

「え、い、いいのにそんな……」
「……でも嬉しい、ありがとね?」

トレーナーからすれば、ダウンしたポケモンをセンターまで連れ歩く時間とは即ちそれだけの時間痛みを認識させていると同義だ
だがげんきのかたまりを使えばキズまでを瞬時に癒してくれる、これが有り難くなくて何だと言える
早速、と前置きげんきのかたまりを使った
どうやって使ったのかは割愛させて頂こう、何せ原理が不明なのだから

「ねぇねぇ、キミの名前を教えてよ!」

『……んあー……?』

ヤドンは起きて、大欠伸をひとつ
213キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/25(水)00:52:49 ID:uTd()
>>210

「不良ってのはそういう生き物なの……敵の縄張りで乱闘しないだけまだ賢い方だと思いなさい」

急発進しながら揺れる車の中、片道3車線の大通りを暴走するチンピラ集団。
車通りが少ないのもあって、あちこちでチェイスしながらの迎撃戦になっている。

「……で、さっきの続きだけど。一応ボスには手土産くらいは用意してよね」

「あとウチはあの辺の連中と違って大っぴらに活動宣言したりしてないわ。仕事は出すけど立場は弁えてやってよね」

『ドガガガガ!バチュン!バチュン!バチュン!』

窓枠に引っ付いてガンタレットの如くミサイル針を叩き込み銃撃戦を繰り広げるフォレトス。
その鋼鉄の体が相手の攻撃をバチバチと跳ね返し、窓越しにキャスタナを守る。

「逃がさねーぞテメー!」「殺せーー!」

後ろと隣の車線から2つずつ。うち一つは車ではなくケンタロスだが。
214スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/25(水)00:53:19 ID:DW4
>>209
バトル開始とほぼ同時に動き出すリオル、素早い動きから先制のしんくうはがいくつも発射される。
一つ一つの威力は小さくもそのスピードは速く、その量は回避を難しくさせる。
ならば、と、エアームドはその場から動かず仁王立ちし、大きく翼を広げた。

防御の体制?背後にいるトレーナーを守る為に盾となった?いや、どちらも違う。

「エアームド、エアスラッシュだ」

落ち着き払ったスパーダの指示、その言葉を待っていたとばかりにエアームドは広げた翼を大きく振るった。
空気を切り裂く鉄の翼が同じく真空の刃を作り出し、迫り来るしんくうはを巻き込みながら吹き荒れる。
複数のしんくうはに対して、エアームドは一つの強力なエアスラッシュによって相殺させ、攻撃を防いだ。

「スラァァッシュ!!」

そして、そのまま捲き上る砂煙の中を突っ切り、低空を物凄い速さで飛びリオルに接近。
そのまま硬い嘴を先にしてリオルに突進しようとするだろう。
215オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/25(水)00:54:02 ID:tBZ
>>212

「……オトギリ。俺の名前はオトギリだ。」

オトギリは自らの名を名乗る。

『『フゴォォ……』』

ヤドンの欠伸が移ったのか、ジヘッドが大欠伸をした。

「……さてと。そろそろ俺もアイツらを警察に突き出してやらなくちゃならない。」

「コロトック。」

オトギリがコロトックに声を掛けながらかいふくのくすりを振りかける。
コロトックの傷口は見る見る内に塞がって行く。

「アキと言ったな。
お互いチャンピオンを志す者同士だ。またいつか戦える。
……ライバルとしてな。その時はまた全力でぶつかり合おう。」

オトギリはアキに背を向けると歩み始めた。

「またな。」

去り際に一言呟くと、オトギリは密猟団の下へと歩み寄って行った。
昼下がり、やや傾き始めた太陽が照らす中、森林の木々の上で羽を休めるポケモン達は彼らを見下ろしながら静かに囀った。
もうじきに日が暮れる。
216エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/25(水)01:53:02 ID:vWG
>>213
「手土産ねぇ……。」

男は面白くなさそうに後ろを振り返る。
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら殴り合い、唾を飛ばしあい、追いかけ合っている。
ふう、とため息をつくと、ハットをずらし、顔を覆うようにする。

「まぁ、俺に盗めんポケモンなんざいねぇ。なんでも好きなもん取ってきてやるさ。」
「で?」

そういうと、男は睨むようにして少女の方を見る。
彼女から見て、片目だけがぎょろりと見える形になる。
彼の目を見たものはそう多くない。つり目がちで濁った目をしている。人によってはそれだけで夢に出てきそうな恐ろしさを持っている。

「まだ半分だ。」
「大仰な大義は無い。構やぁしねぇさ。」
「『強いて言えば。』この言葉の先だよ。」
「こんな風に明日の事も考えてねえガキと楽しくお遊戯会がしてえなら、俺ぁ降りる。」

「大義なんざ無くたって一向に構わねえ。だが信念が無い奴について行くほど暇じゃねえんでな。」
「お前らが掲げた旗がお飾りじゃねえって教えてくれ。」
217ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/25(水)19:50:36 ID:fMT
>>214
「さすがだな…技の練度が違う…避けろ!リオル!」

思い切りそらした上半身の胸の上を、空気の刃がかすめていく。
リオルは空中ブランコを飛び移るような鮮やかな姿勢変更を見せつけた。
生粋のかくとうタイプであるからこそなし得る芸目。

そこからエアームドの追撃は間髪入れない。
空中に舞い視界の通らないリオルの代わりに、ソウジの視線がそれを捉えた。

「…っ!みきり!」

トレーナーとして磨いてきたソウジの感覚が一瞬の判断を下す。
リオルは目をかっと見開いて、五感を研ぎ澄ます。
み、き、り。その三文字が全身に滞りなくとどき渡り、狭まった瞳孔が正確にエアームドの頭をエイムした。

しかしリオルはその場を動かない。みきりという技の本懐から逸れた行動とは思いきや、むしろ体勢を崩すまいとしているのである。
前方に構えた両手で眼前の嘴を待ち構える、白刃取りの図―――――リオルの『せいしんりょく』は決してひるまない。
突っ込んできたエアームドの鋭い先端を掴み取り、そのまま空中戦を繰り広げることになるだろう。
218スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/25(水)22:05:27 ID:xE3
>>217
「ほう、勇敢なリオルだ」

エアームドの突撃に一切怯む事なく立ち向かう、それはリオルのとくせいがせいしんりょくであるというだけの理由ではないだろう。
目の前に脅威が迫っても立ち向かう勇気がリオルには確かにある、ならばその勇気がどれ程のものか確かめてやらんとする。

「エアームド!そのまま空へ!」

リオルを嘴に捕まらせたままエアームドは急上昇、遥か高空へと連れ去り、リオルを振り払う為に高速で宙返りを披露する。
リオルがエアームドから離れてしまえば、空中において優位性があるのはどちらか明白だ、飛ぶ事の出来ないリオルにエアームドは容赦なく襲い掛かるだろう。

「スラァァーッシュ!!」

空中で振り払ったリオルにエアームドは再び突撃、刃のように鋭い翼を広げ、その翼で斬り裂こうとする。
エアームドの得意技、はがねのつばさである。
219ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/25(水)22:40:36 ID:fMT
>>218

リオルは空中でぶらぶらとキーホルダーのようにスイングされる。
ド派手なアトラクション、ポケモンでなければ嘔吐は必至だ。
白刃取りした嘴にリオルは必至でしがみつく。
だが、考えもなしに鳥に飛びつくという突発的な行動だったのでは、劇団仕込みのエアームドが描く芸術的な飛行旋回を前には抵抗は虚しい。

「リッ、リお~ぉっ!!」

そして、エアームドの行った一回転がついにリオルを振り落とす。
どんなに鍛えたポケモンでも、飛べない空では落ちる金槌。
散々振り回された挙げ句は軽く混乱状態である、相棒のソウジもこればかりはリオルの無茶を自覚した。

「リオル、姿勢をでんじふゆうで安定させろ!ブレイズキックで迎え撃て!」

空中で弄ばれる以上、こちらから仕掛ける事はできない。
ソウジはもっとも効果的な手段として、鋼タイプに有効なほのお技を選択した。
反撃する隙が残されていないとはいえ。
相手が勢い任せに向かってくるならば、突き出した脚に炎を纏って牽制するだけでも、威力の軽減には十分な筈だ。
220スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/25(水)22:55:24 ID:xE3
>>219
「スラァァッシュ!!」

「でんじふゆう……成る程、リオルにはそのわざがあったね」

地に足をつけて戦うのが基本な格闘タイプのポケモンが空中に運ばれれば対抗する術はない…そう思うのが普通である。
だが、進化によって鋼タイプを得るリオルがでんじふゆうを使う事が出来るのはおかしい話ではない。
空中で体制を立て直しブレイズキックで迎え撃つリオルに対し、エアームドは止まる事が出来ずそのまま突撃。

いや、攻撃するかと思われたエアームドは空中で体を捻り、リオルの脇をすり抜けた。
反撃を恐れて攻撃を中断したか───と思われた瞬間、リオルをすり抜けたエアームドはそのスピードのまま急旋回を行なった。

「───エアームド、つばめがえし」

「スラァァァア!!」

目にも留まらぬ切り返しで回避不可能な攻撃を繰り出す、飛行タイプのわざ『つばめがえし』。
はがねのつばさから瞬時に攻撃わざを切り替え、背後からリオルを狙う。
221エイジ :2018/04/25(水)23:17:18 ID:yO0

 ーーー夕方。

 都市から少し離れた辺鄙な地に、痛々しい程の真っ赤な髪を揺らし、怒声を上げる青年が居た。
 理由を聞けば些細な事であるが、彼にとっては譲れない何かの琴線に触れたのであろう。と伺える。その怒りの矛先は、何故かバトルに負けた『敗者』に向けられる。

 「てめぇ…!さっきの勝負なんで「諦めた」!?」
「勝てないと思ったからか?あ"ぁッ!?」

 壁際に追い込み、逃げ道を塞ぐ様に片腕で壁を抑え尋問をする様は正に不良そのもの。
そして、エイジの足元から覗く一匹の『宝石の瞳』を持つ紫色の体躯。

 苛々が募り、顔が険しくなり。その場は静寂に包まれ、隙を掻い潜り逃げるトレーナー。

 「っておい!くそがき!逃げんなコラ!」
 「……チッ。」

 夕陽に向かって逃げるトレーナーに呆れた様子で、眩い夕陽に舌打ちをすれば、夕焼け空にヤミカラスの群れが、飛び交う。
222ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/25(水)23:33:45 ID:fMT
>>220
「退いた……!?」

やはり、分が悪いと踏んだのかエアームドのはがねの翼はリオルの横脇をすり抜ける。ソウジは束の間、口端を吊った。
が。


「―――――つばめがえし!?」

その直後、スパーダが呟いたその名にはっとする。
焦燥感に鼓動を奔らせながら記憶を手繰り、やがて彼の不安は現実味を帯びる。

『つばめがえしかの?つばめがえしと言ゃあ、俊敏な動きで死角に回り込み放つ一撃。近場でやられたら―――』

祖父センゾウの言葉が頭を過る。古い記憶の反芻は、リオルの悲鳴によって中断された。
鋭く残像する半月状の軌道。リオルの無防備な体躯は無残にも、エアームドが描いた美しいシルエットの餌食になる。

「リオォォオオッーーーッ!」

地面に角度を付けて叩きつけた身体がごろごろと転がって、ソウジのランニングシューズへ力を失った手が触れる。

「リ、…リオル大丈…」

ソウジが言い掛けた言葉を遮るように、リオルの手は靴を強く握った。
彼は何よりもまず、慰めの言葉をかけられる事を嫌った。
どんなに惨めな思いをしても、どんなに弱い自分にも、例えいつか強くなったとしても、自分には言い訳をしない。
それが、はもんポケモン、リオルの強さの秘密だ。

「リオ…!」

リオルは口端に滲んだ血を拭って立ち上がる。
若干ふらついているが、ダメージはまだまだといった様子。

「…リオル、やっぱり、ひこうタイプ相手でアクティブにやるのは無茶だ」

「だから………今は、「とぎすませ」…。ここって時、最高の一発を叩き込め」

リオルは静かに頷く。
格闘タイプは物理に強力な技を多様に持つ分、逆を欠く。距離を取られると元も子もない。
だからそういう時は、チャンスを待つ。逆境を覆すのもまた、格闘タイプの本懐。カウンターを狙う。
ゆっくりと深く腰を鎮める。知覚をとぎすまして、相手の行動、息遣い、翼一本一本のなびき全てに気を配る。
――勿論、もっとも意識をつなぐのは、トレーナーであるソウジからの指令だ。
223オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/25(水)23:36:54 ID:tBZ
>>221

「た、助けてくれぇぇぇ!!!」

エイジが怒鳴りつけていたトレーナーが逃げた方角とは真逆の方角から一人のバッドボーイが涙目で現れた。
エイジにも一切見向きもせずにバッドボーイが走り抜けると、その背後から一人のトレーナーが姿を現す。
姿を現すやいなや、エイジの顔を凝視した。

「……」

そのトレーナーの名はオトギリ。
オトギリは窃盗を繰り返したバッドボーイを脅しながらも同時にエイジと少年の一部始終を聴いていた。
青年の顔を見るや、何とも言えない表情を浮かべる。

「……何もそこまで脅す必要は無かったんじゃないのか?
アイツは確かにトレーナーとしては失格だが、特別『悪い事をした』ってワケでも無いだろう。」

悪人ならば別に脅迫だろうと痛めつけようと構わない。最悪命を奪う事になっても悪人ならば致し方無い。
だが、先程の少年は果たして『悪人』であっただろうか。

別にオトギリはヒューマニストではない。

少年が諦めた、バトルを途中から放棄したも同然の態度で進行したのだからトレーナーとしては完全に失格だ。最早何の価値も無い。
だが、オトギリがそういった敗北主義者の人間と立ち会ったならば最早相手にするのも馬鹿馬鹿しく思い怒る事もしないだろう。
然し果たしてそこに「罪」は生まれるだろうか。

「……まぁ、それがお前の価値観なのであれば俺は別に否定はしないが……。」

物思いに耽る様子でオトギリは呟いた。
224スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/25(水)23:55:35 ID:xE3
>>222
「スラッシャァァァァァ!!」

エアームドの雄叫びが海辺の空に響き渡る、獲物を叩き落とした勝鬨の声だ。
地面に落ちたリオルの後を追うようにエアームドも地面へと降り立ち、その動向を自らのトレーナーと共に見守る。

「ふむ、エアームドのつばめがえしが綺麗に入った筈だけどね」
「それでも諦めずに立ち向かうと言うのかい?」

スパーダから見てリオルのダメージは決して小さくはない物だ、無理して立っていても戦闘には大きく響くだろう。
だが、それでもリオルと、リオルのトレーナーであるソウジが立ち上がる事を望む。その先にある勝利を掴む事を諦めずにいる。
ならば、スパーダはそれ以上降参を進言したりはしない、彼等に立ち上がる意思があるのなら自分達はそれに対する壁として立ちはだかるのが礼儀という物。

「……いいだろう、少年、君達の意見を尊重する」
「だが───次はさっきよりも早くなるよ?」

「スラァ……!」

精神を研ぎ澄ますリオルに対して、スパーダはあくまでも此方の戦法を変える事なく行く事を決める。
次の瞬間、エアームドの羽根がガシャガシャと音を立て抜け落ちた、翼の内から羽根を脱ぎ落とし重さを削ぐ───軽量化により素早さをグーンと上昇させるわざ、『ボディパージ』だ。

「エアームド、彼等の精神に敬意を評しよう」

「スラァァッシュ!!」

そしてエアームドは飛ぶ、そのスピードは先程迄とは比べようもなく、一瞬にしてリオルの横をすり抜けソウジの真横すらも通り抜けた。
かと思えば瞬きをする間に元の場所へと戻って来る、右へ左へ前へ後ろへ、リオルの周囲を砂埃を上げながら高速で飛び回り、攻撃に転ずる位置とタイミングを悟らせまいと翻弄している。

「───時に少年よ、君はそのリオルと共に何処まで行きたい?」

エアームドがリオルを翻弄する最中、スパーダはソウジに唐突に問い掛けた。
それは、ソウジが強さを求める理由を聞いている。
225エイジ :2018/04/25(水)23:56:36 ID:yO0
>>223

 「んだァ…!?」

 とんでもない速さで駆け抜け、バッドボーイの情けない声にこめかみを抑えながらも、舌打ちを奏でる。
そして、かなりの速さで過ぎ去っていく様に、思わず困惑の表情を浮かべれると。同時に新たに現れたオトギリを見据える。

 「…あ”ぁ!?なんだテメー!」
 「ハッ!下らねえ説教か…?あぁ、下らねえ。」

 「……アイツのポケモンの瞳は最後まだ闘志があったんだよ。それなのにーーーーーアイツは勝負を諦めたんだよ。」

 第三者からの呼び声にエイジの怒りも、だんだん収まった様に、ボソリ、と。小さな声を漏らす。それは蚊のように羽音の様に小さく。
エイジにとっての『悪い事』はオトギリの『悪い事』とは少し価値感が剥離しており、話が拗れてしまうかもしれないが、それでもエイジにとっては譲れない事だった。

 「んで?テメー…、いや、お前は何やってんだ?カツアゲか?」

 「人は見掛けによらないな。」と得心した様な表情を浮かべれば、先程のバッドボーイを思い出す。
226オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/26(木)00:10:12 ID:Lqg
>>225

「……そうか。」

ポケモンに対する裏切り。それがエイジにとっては罪に当たるのだとオトギリは解釈した。
オトギリは「ポケモンとトレーナーは一心同体であるべきもの」という思想を持つ。
故にその二つが解離している時点でそいつは最早トレーナーとは呼べない。
ましてやトレーナーが先に戦意を消失するなど以ての外だ。

「……まぁ、良いだろう。それがお前の正義なんだな。」

否定するでもなく、挑発するでもなく。オトギリはエイジの顔を見ながら話す。

「……ああ、さっきの奴か。」

カツアゲを疑われたオトギリはリュックサックから幾つかのモンスターボールを取り出した。
何れもオトギリのものではない。

「さっきの糞野郎がポケモンセンターや育て屋から盗んでいったモンスターボールだ。」

「俺のものではない。何一つ。だからこれから返しに行く。カツアゲだなんて心外だな、全く。
……にしても、どうやらお前と俺の間には価値観に違いがあるみたいだな。
まぁ価値観人生観は人の数、星の数。違って当然だ。」

オトギリはモンスターボールをリュックサックに戻す。

「あのゴミクズは他人のポケモンを奪った。それは立派な『罪』だ。
価値観や正義に違いがあるとは言えど、流石にそれはお前の価値観でも『罪』なんじゃないのか?」

もしもこの青年がこの場で「NO」と答えれば―――
オトギリは目深く被ったニット帽の奥底から覗く両目を細め、青年に問う。
227ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/26(木)00:29:31 ID:Uu5
>>224

メタルパージ。
防御をかなぐり捨てて一撃必殺、疾風迅雷の極意を究める技。
エアームドは、軽くなった身体を圧倒的なスピードで体現する。

身構えたソウジの肩を風がきる。
だが、リオルは動かない。ソウジの指示が下るその時まで、決して。

「………速いっ」

肌がしびれるような鋭い風圧。
喉を詰まらせた味の無い唾液を、ぐっと呑み込む。
殺気に決して切り刻まれない固い意志だけが、二人の集中力を繋いでいた。


「――――チャンピオンです」

スパーダの問いに、ソウジはキッパリと言い放った。
笑えぬ冗談だと鼻を鳴らされる事は数え切れない、そんな夢。
だがこれは彼にとって、誰よりも叶えたい夢。覚悟のこもった表情が、スパーダの瞳をマスク越しに照らすほどに。

「最初は、ジムリーダーのじいちゃんが諦めた夢をオレが叶えたいって思ってたけど…」

「でも、もうこれは、オレだけの夢じゃないんです!」

ソウジの言葉に賛同して、リオルの構えはより深くなった。
右、左、前、後、エアームドの高速移動は凄まじい。意識を追随させていると、気が遠のきそうな程に。
それでも何故か、いつもより深く、より鮮明に"ビジョン”が明鏡止水の鏡面に浮かび上がってくる。
身体の底から、力の源のような蒼いエネルギーが立ち昇ってくるのが見える。
――――――この感覚は。何かは分からない、それでも、身を任せても良い、リオルはそう直感していた。
228エイジ :2018/04/26(木)00:33:00 ID:62t
>>226

 「お、おぅ…。」

 否定でも肯定でも無く。ただ淡々に応えるオトギリに思わず調子を崩す様に曖昧な相槌を打つだけの存在になってしまった。
 すっかり、怒りも覚めて顰めっ面を浮かべれば真っ赤な髪を整えオトギリへ、視線を向ける。

 「俺は、難しい話はよくわかんね。ーーーけど、お前が“良いヤツ”って言うのは良くわかる。……多分。」

 頭がパンクになりそうな所を必死に脳裏を処理しながら、オトギリの話に相槌を打ちながらウンウンと頷く。
 マシンガントークの様に連なる言葉の数々を整理しながらやっと、出た答えは。情けない回答だが、それでも何とか絞り出した答えである。


 「そうだな。確かに、盗みは良い事じゃねーな。……お前の言う『つみ?』なんじゃねーか?」
 「ーーーけど、さっきのヤツは何か事情があるかもしれねぇ。…一方的に犯罪者扱いは、『強い』やつのする事じゃねーかも。……多分。」

 オトギリの話を聞くだけでは、一方的にバッドボーイが悪いのかも知れない。けど双方の話を聞かない限り何とも言えない。第三者としての意見を述べる。

 睨まれた瞳は、敵意なのか。それとも…。それは解らない。

 「まぁ、…さっき恐喝紛いした俺の言えた義理じゃねぇけど。」
229オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/26(木)00:54:16 ID:Lqg
>>228

「例え事情があれど罪は消えない。罪を犯した者には等しく『罰』があるべきだ。」

一切の迷いも無く答えたオトギリ。
その瞳には強い正義感―――或いは微かな狂気とも言える類の何かが信念の中に浮かんでいた。


「―――『チャンピオン』とは何か。」


「ポケモンと共に一心同体となって戦う事。絶対的な強い信念。そして悪を罰する正義感。」

「それを併せ持つ者こそが『チャンピオン』になる資格がある者だ。
俺はチャンピオンを目指している。だから悪を捌く義務がある。ゴミ共を始末する義務がある。」

オトギリは真顔で己の思想をその口から垂れ流しにする。
それはチャンピオンを志すオトギリの価値観であり、彼の思うチャンピオンたる資格、理想像であった。
オトギリは青年に近付くとその肩に手を添えようとする。

「……お前は恐喝紛いの行為をした事を何も恥じる必要は無いさ。
全てはお前の価値観に従ったまでの事。俺も俺の思うチャンピオンの偶像、俺の価値観に従ったまでの事。」

こころなしか語る内に恍惚していた己の表情を塗り潰すかの如く笑顔を作るとオトギリは青年に語り掛けた。
日が更に傾き、二人の顔が微かに影に隠れる。
影の中でもオトギリのニット帽の下から覗くぎらぎらした眼差しだけははっきりと浮かんで見えた。

「……お前が良い価値観の人で良かったよ。
お前、名前は何て言うんだ?目標はあったりするのか?」

先程のやり取りでどうやら悪い人間ではない事を確信したオトギリは、トーンの高い声で青年に問うた。
230スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/26(木)01:15:19 ID:CWI
>>227
スパーダは仮面の下で口角を吊り上げる、それはソウジの夢を聞いたから。
チャンピオンになるなどという程遠い夢、しかし夢は道のりが遠ければ遠い程、目的が大きければ大きい程素晴らしい。
故にスパーダの笑みの意味はソウジの夢が冗談ではないとする嘲笑などではない、彼の夢の大きさが感心する程素晴らしいと歓喜に満ち溢れた物。

「チャンピオン……いい響きだ」
「ならばこんな攻撃程度、あしらってみせなければな!少年!」

チャンピオンを目指すのなら、自分程度の相手に手間取るようでは叶わないと。
ソウジの成長を期待するようにスパーダは叫び、エアームドは空中へと大きく飛び上がった。

「エアームド!!お前の力を見せてやれ!!」

「スラァァァァァァァァァァッシュ!!!」

高く高度を取ったエアームドは再び急降下、重力による加速を乗せて更に早く、更に勢いを付けてリオルに突進する。
飛行タイプの大技『ブレイブバード』、そしてその動作に『ドリルくちばし』による激しい回転を加えて貫通力を最大限まで高めている。

「───ブレイブ・ピーク・ブレイク!!」

二つの大技の合わせ技、スパーダは自らその技に名前をつけ、エアームドの切札としていた。
体が吹き飛びそうなくらいの勢いを帯びたエアームドの攻撃は果たして、リオルまで届くのか。
231エイジ :2018/04/26(木)01:22:49 ID:62t
>>229

 「あー。」
 「なんつーか、あれだ。お前の目指す世界は息が詰まりそうだ。」

 ーーー『罪』は消えない、か。
 その言葉が妙に引っ掛かり、頭の片隅から離そうとしない。人は多かれ悩みは尽きない。
 人々は大小問わず過去に侵した罪はあるだろう。無い人間等居ないハズだ。そして彼が言う罰を受け乗り越えていく。彼の言うことは正しい。

 しかし目の前の少年は、“正義”は歪んでいる様に見えた。

 「お前の過去に何があったかなんて知らねーし。別に咎めるつもりもねぇけどな。」
 「…見ず知らずのヤツと、価値感が違うのも当たり前だ。」

 「けどなーーーこのまま進めば、多分孤立しちまうぞ?」

 それは経験則なのかは伝わらないだろうが、彼の正義感に賛同する者はいるだろう。しかしその逆も然り。
 肩に置かれた手を、そっと。手を払えば複雑な表情を浮かべるエイジ。

 「ハッ!だからよ。お前が間違った方向に行かない様に助けてやるよ!」
 「んー、目標…、か。 まぁ、…無い事は無いけどな。」

 懐から取り出したのは、ホウエン地方で流行りのポケモンナビゲーター。通称。「ポケナビ」
 そこに照らされたのは、彼の名前と少しばかりの自己紹介欄。

 「ん。」

 ぶっきらぼうに向ければ、交換先が交換できる機能を開きオトギリに向ける。そして曖昧に誤魔化した『目標』と言う言葉。
232オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/26(木)01:44:42 ID:Lqg
>>231

「……孤立だと?」

オトギリは微笑みを浮かべた。
最早彼が失うものと言えば家族――ポケモンのみであった。他には何も失うものはない。
唯、ひたすらにチャンピオンになるべく貪欲に「得続ける」のみ。

「……孤立は無い。俺には二匹の大事な家族が居る。彼らが居る限り、孤立などする筈もない。
何、俺は他人の価値観を塗り替える真似はしないさ。他人の価値観は受け入れるか、或いは―――壊すか。その二択。」

俯いていた顔を上げると、そこにはポケナビに示された彼の僅かな個人情報があった。
オトギリは手首に着けたシンオウの時計型のナビゲーターであるポケッチ、その最新機種を起動。
空気中に浮かび上がるモニターを簡単に操作すると青年―――エイジの連絡先を登録する。
同時にその連絡先に自身の情報を転送した。

「……俺は絶対に間違った方向には進まない。俺の前にチャンピオンへ続く道は既に広がっている。」

「……とは言え、もしも俺が道を違える事があれば、その時は俺の始末を頼もうか。エイジ。」

まぁ、そんな事がある筈もない、と笑いながらオトギリは話す。
エイジが目標を誤魔化した事にオトギリは気付いていた。だが、人には知られたくない事もあるだろう。
そう思い、オトギリはそれ以上の一切の追求をしなかった。

「……無論、逆もまた然りだ。お前が道を違えれば俺は容赦はしない。
俺の価値観を以て、その時は一切の慈悲も無く叩き伏せさせて貰おう。」

「約束だぞ。」

オトギリが両目を細めながらにやりと笑った。
握手を求め、右手をエイジに差し出す。
233エイジ :2018/04/26(木)02:14:04 ID:62t
>>232

 「そう、か…。」
 「む。」

 エイジの表情は、複雑に歪んだ表情であり。微笑んだオトギリの表情に対応する様に慣れない笑顔を浮かべる。
若干、否。かなりその表情は極悪非道の笑みであり、何人か人を殺したんではないかと疑われる程だろう。

 しかし、例えるなら何処か。ほっと置けない弟の様にオトギリを瞳を覗き込めば顎に手を添える。
 人は、支えあって生きていくものだ。とは昔、糞みたいな親父に散々聞かされた言葉だが、オトギリはどうなのだろうか…。

 「こりゃ、…他の地方のナビゲーターか?」
 「すげぇな。……ん。」

 転送された情報を興味津々に覗けば、成程。別の端末でも可能なのか。と呟けばその言葉は風によってかき消される。
用が済んだら懐に「ポケナビ」を仕舞い込み、軽く手を伸ばし欠神する。


 「ったりめーだ!もし道を違えたら俺が殴ってでも蹴ってでも頭突きしてでも止めてんよッ!」
 「ま、まぁ…と、友達?みたいなもんだからな?」

 「約束だーーーオトギリ。」

 握手を乱雑にしかし、何処か優しく包み込む兄の様な手圧で応じると、照れ臭そうに頬を掻く。


 「あ、そうだオトギリ!お前チャンピオンを目指してんなら相当自信はあんだろ?
ーーー今度はポケモンバトルでもしような。…へッ!ま、勿論俺が勝つけどなッ!!」

 「えーと、確かにこういう時は“ベストウイッチ”!良い旅を!だっけな…?バイビー!」

 そして、別れを惜しむ事なく挨拶をする。何故ならまた会えると信じてるから?
234オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/26(木)02:31:26 ID:Lqg
>>233

「……ああ。俺はいつでも勝負は受けて立つ。
お前が挑めば俺は全力で迎え撃つ。」

「またな。」

オトギリはエイジの顔を暫く凝視した後に、エイジに背を向けて歩き出した。
日はすっかり没しつつあった。周囲もかなり薄暗くなっており、街灯が道を照らす。
遠方に見えるシティの高層建築物の数々には既に明かりが灯っていた。

「……それと」

オトギリが足を止める。

「……それを言うなら”ベストウィッシュ”だ。じゃあな。
ベストウィッシュ、エイジ。お前も良い旅を。」

言葉の誤りをエイジに教えるとオトギリは再び歩み始めた。
その背中に大きな鉛玉が圧し掛かっているかの如く、足取りは重かった。

歩きながら右手の感覚を確かめるかの如く拳を握り絞めては解く。

(―――何時以来だろうか。)

(―――誰かとこんな約束を交わしたのは。)

もしかすると産まれてこの方、一度も人間とは約束を交わした事が無いかもしれない。
思い当たるものは何れも自らの中で自己完結した決意が大半だ。
そんな事を考えていると街に出た。不意に一人のエリートトレーナーと視線が合う。バトル開始の合図である。

「……俺は強くならなくてはならない……チャンピオンになる為に……」

「誰でも良い、掛かって来い……ッ、俺は強くならなくちゃ、勝たなくちゃいけないんだッ……!!!」

「行くぞ!コロトック!」

―――すっかり夜の帳が下りたナナイタシティの一角で、今宵もトレーナーとポケモン達の闘志がぶつかり合う。
この世にポケモンが存在する限り
いや、強さを求め続ける者が居る限り、浮世からそれが無くなることは決して無いのだろう―――。
235オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/26(木)21:59:35 ID:Lqg

―――明け方のナナイタシティ。
"バトルロード"とも呼称される霧が掛かったその道はトレーナーが集う事で有名な一つの名所となっている。
とは言え今は早朝だ。流石に人も少ない様である。電柱の上ではまだヤミカラスが鳴いている時間帯だ。
そんなバトルロードを歩む一人の少年の姿。黒のジャケットに白のジーンズ、黒のマフラーに黒のニット帽という出で立ち。
右手に持ったモンスターボールから推測するに彼がトレーナーである事は自明である。
彼の名はオトギリ。

「……クソッ……まだ駄目だ……。」

此処数日間、戦い続けていたオトギリは今日も今日とてバトルロードをふらふらと彷徨っていた。
その足取りは十字架を背負ったかの如く酷く重い足取りであった。
自問自答を続ける。
というのも、彼はチャンピオンを目指し日夜修行に励んでいるのだが、ここ最近の己の実力に伸び悩んでいた。

特に最近の戦績は酷いものだった。
バトルロードは歴戦のトレーナーも一定数集まる。敗北も無理はないのだが、何であれ敗北したという事実が彼に必要以上の焦燥感を与えていた。

「……俺は強くならなくてはならない、勝たなくてはならないのにッ!」

「こんな……こんな実力ではチャンピオン等程遠い……!戦って強くならなければ……!」

やや猫背になっていた背筋を伸ばすと、周囲を見渡す。
霧で全貌は見えないが、早朝とは言え人は少ないらしい。それでもオトギリは叫んだ。

「―――誰かッ、誰か居ないのか!俺とバトルをする者はッ!」

オトギリのポケモンバトルの相手を求める声がシティの一角に響き渡る。
果たして、その声に答える者は―――。
236メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/26(木)22:18:26 ID:AiN
>>235
「――――――ダメよ?」

朝靄の中に木霊した少年の焦燥への問いとして投げかけられた言葉は、彼の溢れ出た心情に反して余りにもあっけらかんとしてた。
たった三文字の言葉の後、舗装された道の上を歩む靴の音だけが響き、オトギリの元へと近づいてくる。

「そんな大きな声を出したら、みんなビックリしちゃうわ。」

白くぼやける空気を割って少年と対峙したのは、水玉の黒いワンピースを身にまとった彼よりも十は年上であろう女性だった。
左腕に閉じた傘をかけ、肩からバッグを下げるその出で立ちは『朝の散歩にでも足を延ばした』と取ら得るのが最も適しているだろうか。

女性の言う“みんな”というのは何もトレーナーのことだけではなかった。
朝だというのに、オトギリの周囲には野生のポケモンすら居ないのだから。

「おはよう、ボク。」
「朝から元気…には、ちょっと見えないわね。」

朝の日差しよりも柔らかな笑みを浮かべながら挨拶を交わそうとするも、少年の状態を見て僅かに眉を顰めた。
だが笑顔を崩すようなことはしない、その表情はまるで……そう、まるで悪戯をした子供を見止めるかのようだ。

「少しおやすみした方がいいわ。」
「あなたも、あなたのポケモンも疲れているみたい。」

少年に同意を求めるように、女性は人懐っこい表情で尋ねる。
傍から見れば、オトギリが無理をしているなんてことは一目でわかる程の状態だったからだ。
237オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/26(木)22:35:14 ID:Lqg
>>236

「……。」

霧を割いて姿を現した女性。オトギリは警戒した表情で睨んだ。
その容貌と時間帯から、多くの者は彼女が散歩をしている一般女性であると推測するだろう。

だが、オトギリは違った。
最早ポケモンバトルに囚われた彼は彼女がポケモントレーナーである事を直感的に理解した。
故にオトギリは彼女を睨む。

「……貴婦人が此処で何を。散歩をするには少々危険な場所ですよ?」

「……何て言うと思ったか?お見通しだ、お前もポケモントレーナーなのだろう。」

「さあ、ポケモンを繰り出せ!!!
最早会話は要らんッ!俺とお前は今、目と目が合ったんだッ!!トレーナーならば俺の挑戦を受けて立て!!」

オトギリは細めていた両目を大きく見開き、同時にモンスターボールを持った右手を突き出した。
だが、やはりその頬は痩せ、全体的に窶れている。

「……そんな言葉で俺を案じなくても良い。心配は無用だ。
俺はまだまだ戦える、戦い続けなくてはならない、ここで鞘に刀を納める様ならばチャンピオンなど程遠いッ!」

彼女の優しい言葉に対して、オトギリは震えた声で吠えた。
それは何処か自分に言い聞かせ、奮い立たせている様でもあった。

「さぁ、ポケモンを繰り出せ!俺とバトルしろ!」

彼女にバトルを挑み続ける。
此処で彼女がポケモンを繰り出せばオトギリは迷わず手持ちのポケモンを繰り出し、二人のポケモンバトルが始まるだろう。
238メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/26(木)22:50:12 ID:AiN
>>237
「そーねぇ……。」

怒鳴る様に叩きつけられる言葉に怯む様子も見せず、そしてトレーナーという一見すれば難癖に近い一方的な啖呵を否定する様子も見せない。
むしろ穏やかな表情のまま、女性は何かを思索するように目を閉じていた。

「受けてあげてもいいわ。」
「でもね、ひとつだけ条件があるの。」

閉じていた長いまつ毛を持ち上げた女性は、そう言うとオトギリから踵を返して歩き始める。
ゆっくりとした足取りで、しかし確実に少年からは離れてゆく。

数歩進んだ所で、朝霜でしっとりと濡れた結い上げた蒼い髪に日の光を映しながらオトギリを急かすかのように見返った。
からかうように笑いながら、本気で逃げるという訳でもなく、むしろひらひらと誘う蝶のように少年の手から逃れてゆく。

「わたしのお話しにね、少しだけ…付き合ってちょうだい?」

女性は道路の片隅にある草原まで歩くと、肩から下げたバッグの中からビニールのシートを取り出し、風に靡かせる様に大きく広げた。
なにを思ったかそこに腰を落ち着かせると、同じくバッグから――――今度は、桃色の水筒を取り出して見せる。

「ほら、あなたも座って?」

ぽんぽん。と。
ビニールシートの上、自らの傍らの横を叩きながら付いてきているであろう少年に尋ねた。
239オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/26(木)23:08:58 ID:Lqg
>>238

「……貴様、挑まれた勝負を受けない気か?」

オトギリは失望した様子で一際強く睨み付けた。
……だが、彼女の様子を見るにそういう訳でも無い様だ。
バトルの条件として何かしろ、という事なのだろう。条件?敗北したら何か渡せとでも言うのだろうか?
――そうも考えている内に彼女の口から飛び出した言葉に彼は拍子抜けした。

予想外の女性のその言動にオトギリは困惑した様子で右手を下した。
オトギリは最早戦う事しか頭になかった。だが、内心自分でも疲労を感じていた。無休の戦いは身を滅ぼしかねないと。
手首に着けたポケッチを横目で見れば、時刻はまだまだである。人が本格的にバトルロードに集うまでに時間があった。
やや俯き、暫し物思いに耽った後に顔を上げる。

「……他のトレーナーが集まるまでだ。」

「それまでに話が終わらなければ、俺は他の奴らにバトルを挑みに行く。」

やや覚束ない足取りでメユリのビニールシートの傍の電柱に背凭れした。
そして右手のモンスターボールを腰に納めた。
その際に微かに残り二つのモンスターボールが顔を覗かせた。

「……立ったままで俺は構わない。座ると疲労がダムの決壊の如く襲って来る人間だからな。
話やバトルどころでは無くなってしまう。」

「……で、その話とは何だ?」

俯き、オトギリの目がニット帽に隠れて見えなくなった。
ニット帽の下で瞼を閉じると同時にその女性に問う。

周囲に人気は一切無い。ポケモンの気配も遠くからヤミカラスの鳴き声一つ響く限りで、周囲は静寂に包まれていた。
240ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/26(木)23:10:37 ID:Uu5
>>230

「来るっ……!」

会話を終えると同時に、ジェット機のようなシルエットは急速に飛び上がった。
昇り切った太陽の光がエアームドの姿をまばゆく霞めて、ソウジは目をひそめる。

「行くぞ、リオル…!きあいを溜めろ…」

ソウジの言葉に応えるべく、リオルはぐいと標的を見上げて構えを締める。
研ぎ澄ました五感は針のように細いエアームドの進攻をはっきりと正確に捉え、自身に万全の状態を確信させた。

「リオォォォッ…………」

リオルは"水晶大のガラス玉"空高く掲げるように、射出状態を作り。
思い切り声を吐き、全てのエネルギーを掌へ集中――――――――小さなエネルギーの泡が集合して、大きな塊を象ってゆく。
今まで積み重ねた失敗の為にも、これからの成功の為にも。こればかりは、絶対に外すわけにはいかない。
リオルは湧き上がる闘志に自然と目を見開いていた。

「これって………」

ソウジはリオルの姿を鑑みて、息を呑んだ。

リオルの身体を覆い出した真っ赤な衝動は、波紋する静かな流れかのように碧く染まっていったのだ。
リオル自身も突然に起こったその光景に戸惑っていたが、彼の激流する感情が、やがてそれを自信へと変えていった。

「リオル…"できる"のか…!」
241ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/26(木)23:10:48 ID:Uu5

リオルは敢然と頷いた。熱い確信が身体の隅々を満たしていく。
二人は同時に確信した。

俺達は、今―――――――。

――――――――はどうだんが、使える。

リオルはエアームドが鼻先にふれるそのギリギリの位置まで、ソウジの指示を待った。
彼の巨岩すら貫くだろう暴力的な旋風を受け止め、跳ね返すには、本当にギリギリの距離で至極の一撃を放つしかない。
エアームドの姿が接近する。
刺すような点だったシルエットが、螺旋になる、鳥になる、顔になる。

今だ。

「リオルッッッ!」

「リオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーっ!!!」

「『 は ど う だ ん 』!!!」

掌の波導エネルギーが一斉に噴射した。
エアームドの眼前で放たれた蒼流の激動は、ブレイブ・ピーク・ブレイクと竜虎の如く拮抗する。
押されている感触があった。それでもリオルの、否、ソウジとの繋がった思いは、敗北の二文字を決して予感させぬ気迫が、あった。
戦盤返しの様相を呈した、勝負の行く末は――――――――――
242メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/26(木)23:37:43 ID:AiN
>>239
「心配しないで。ちゃんとバトルは受けるわ。」
「――――そう?じゃあお茶だけでも飲んでちょうだい?」

着席を拒否されるも、今度はそれを出しに少年へお茶を――――半ば強制的に渡した。
水筒の内蓋をカップとして注がれたそれは、湯気からでもほんのりと爽やかで甘い香りが鼻孔を擽る。
そしてカップと同時に、これもまた無理やりに透明な包み紙にくるまった、小さなチョコレートを握らされていることだろう。

「私の名前はメユリ。」
「――――あなたはチャンピオンを目指しているのね。」

シートの上へと戻った女性は自らの名を名乗ると、フフ、と小さく笑いながら口を開く。

「あら、ごめんなさい。チャンピオンになる事を笑った訳じゃないのよ?」
「最近別の子から同じ事を言われたものだから。」

気を悪くしないで。とメユリは続けた。

「立派な夢ね。“チャンピオン”―――――」
「全てのトレーナーの頂点であり、強く、優しく、誇り高い。」
「トレーナーとポケモンが力を合わせて、初めて手に入る称号だもの。」

どこか遠くに声をかけるように、半ば一方的な調子で会話を続ける。

「今まで頑張ってきたものを土にして、大きく育っていくものよね。」
「でも、それだけじゃせっかく伸びてきた芽も枯れてしまうわ。」
「大きく、強く育つには水も必要なの。」

お説教とも違う、まるで独白のようなそれが彼女の口から綴られる。

「そうして初めて、自分や、一緒に頑張ってきたポケモンや、他の人を幸せにする花が咲くものだと思うわ。」

「もし仮に自分の手で水をあげられないのなら――――雨が降るまで待てばいいと思うの。」
「それくらいの時間なら、待っても損はないでしょう?」

誰かに同意を求めるかのような問いかけで締めくくると、一息ついたのかメユリの手元にもあった紅茶を少しづつ飲み始めた。
『話を聞いてほしい』という彼女の言葉通り、それはオトギリに一言も挟ませる隙を与えない一方的なものであった。
清々しいまでに自分本位な会話であったがそれを悪びれる様子もない、むしろ出会った時のように穏やかな表情を浮かべたままだ。

「―――ふぅ。お茶も飲み終わったし、バトルしましょうか。」

立ち上がった彼女は、その手にモンスターボールを握っていた。
243スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/26(木)23:48:49 ID:iOQ
>>240>>241
ポケモンが強くなる為には、成長する為に最も必要なのはやはり、戦いの経験を積むことなのだろう。
少し羨ましくも思う、成長出来る伸び代がまだ無限大にある彼等の事が。

「そのわざは……!そうか、君のリオルはもうその段階まで来ていたんだね」

はどうだん───波導と呼ばれるエネルギーを集め弾丸のように射出するわざであり、やはり代表的な使い手はリオルの進化系であるルカリオだろう。
リオルはルカリオへと進化して漸く波導のコントロールを習得しはどうだんを放つ事が出来る、言うなれば成長の証だ。
そのはどうだんが今、ソウジのリオルから放たれようとしている。通常リオルははどうだんを使う事は出来ないが、順番が逆なだけであり得ない話ではない。

エアームドの嘴がリオルに触れる瞬間、その小さな掌から放たれる力強い波導がそれを押し留める。
重力加速度と有りっ丈のスピードを乗せた突撃をも押し留める波導、しかしエアームドも負けじと全身を竜巻のように回転させて一歩も引かない。

「エアームド!まだ行けるだろう!お前の力はこんなものじゃない筈だ!」

スパーダの激励にエアームドが嘴の回転数を上昇させる、どうあってもはどうだんを貫き通さんとする鋼のような固い意志。
スパーダも同じ気持ちであった、ただ少年に勝ちたいというのではなく、この場では意地でも勝ちに行く事こそが最大限の礼儀に値すると。
244オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)00:11:49 ID:82z
>>242

「……。」

半ば強引に押し付けられたのはお茶が注がれたカップと一つのチョコレート。
甘美な香りが彼の疲弊した身体に染み渡った。
その渡された茶と茶菓子を手に、オトギリは黙って彼女の話を聞く。

『今まで頑張って来たもの。』彼女の言葉を聞いている内にオトギリは無意識に過去の自分を顧みていた。
随分と無茶をして来たものだ、と、オトギリは身の丈にも合わない事をして来た自分を嘲笑うかの様に笑みを浮かべる。
彼女の言葉の一つ一つは一切の疑いも無く彼の耳に届いた。疲弊していたからこそ警戒が弱まり、耳に届いたのだろう。

その言葉の一つ一つが張り詰めた彼の心を、糸を解く様に和らげて行った。
オトギリは紅茶を啜る。

「……。」

ジヘッドでもない、コロトックでもない。オトギリは腰に着けた古びた一つのモンスターボールを意識した。
そのモンスターボールは相当乱雑な扱いを受けたのか、まともに機能しているのかすら怪しい。

(……なぁ、俺、頑張って来たよな?)

『―――俺達でいつかチャンピオンを目指そうぜ』
『―――俺達全員の名前を歴史に刻むんだ』

オトギリは脳裏でそのモンスターボールに問うた。同時に過去の記憶がフラッシュバックする。
彼女がバトルを提案する。だが、先程の出会ったばかりの頃に比べたら少々落ち着いた様で血気盛んな雰囲気は失せていた。
オトギリは静かに紅茶を全て飲み干し貰ったチョコを口に放り込むと、口の中のチョコを噛みながら腰からモンスターボールを取り出した。

「……ああ。そうだな。」

今までは戦い続きの日々だった。これ程までに落ち着いて茶を啜り、茶菓子を食べる時間など一分一秒たりとも無かった。
この女性が彼に投げかけた言葉。彼に与えてくれた時間。
それは彼に己を顧みる機会を与えた。そして彼の心に圧し掛かった使命感という鉛を少しばかり取り除く結果となった。

オトギリは背筋を伸ばし、一息吐くとニット帽の下から彼女を見据える。

「……やるか。」

いつの間にか飛び出していたコロトックが彼の手に握られたコップを瞬く間に弾いた。
コップが彼女の下へと緩やかな曲線を描きながら、然し傷一つ付ける事無く飛んで行き、水筒の上に「ポン」と再び覆いかぶさった。

深い霧。

それを軽く切り裂くかの如く両腕を振るい、微かながら周囲の霧を払うとその両目を赤黒く輝かせながら低い姿勢で構えを取った。
野良試合。故に試合開始を伝える審判はやはり居ない。
彼女がポケモンを繰り出せばそれが試合開始の合図となる。
245メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)00:32:11 ID:qNP
>>244
「まあ!上手ね。」

オトギリの手にしていたコップを弾き、見事水筒の上に被せて見せたコロトックの妙技を見て小さく拍手を送る。

「いってらっしゃい――――」

メユリは手にしていたモンスターボールを小さな手首のスナップで放り投げた。
空中でボールはその口を大きく開け、中から閃光と共に何者かが現れる。

朝霧の中にそれは浮き上がる。
突如として現れた黒い影はまるで大岩の様で、コロトックを影だけで覆い隠すほどだ。
霧の中のそれは蠢き、天へと巨大な腕を掲げると―――――

「――――ラグラージ!」


『ラァァグラァァ゛ァ゛ア゛ア゛!!』


メユリのコールを皮切りに、名乗りを上げるようにラグラージは咆哮する。
その一喝で彼の周囲の霧が撒きあがり、続けざまに大地に叩きつけられた掌の振動によって吹き飛ばされた。
岩のような体躯をしたそのポケモンは、一般のラグラージよりも一回り近く大きい――――目測でも2mは越えようという大きさだった。

もちろん体格だけではない。
コロトックを睨みつけるその眼光は明らかに普通のポケモンの眼では無かった。
相手を視界に捉えるというその動作だけでも、明らかにバトル慣れした……言ってしまえば歴戦の戦士のそれである。

『ラ゛ァ゛……!』

ラグラージは岩をも砕く拳を大地に打ち付け、獲物を狩る肉食獣の如く背を付して構える。
この瞬間にオトギリは認識を改めた事だろう。

目の前に立つこの女性――――メユリが、先ほどまで探し求めていた猛者であるという事実を。
246ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/27(金)00:37:19 ID:Peq
>>243

波導の力を攻撃に使うのはルカリオの芸当だが、進化前のリオルにもそれを行う個体は僅かながら存在するという。
そしてこのリオルはただ、ソウジの夢に応えたいという想いでそれを可能にしたのだ、波導のコントロールを。

「くっ……!」

激しい衝突のエネルギーは、その衝撃波に立っている事すら危うくなるほどだった。
しかし、ソウジは精一杯脚を踏ん張る、この勝負の行く末を見届けるために。

「リオル、まだ行けるだろ!俺達も……っ!」
「リオッ!」

リオルは自分とソウジの鼓動が反応するのを感じていた。
波導の力は、それを操る者なら見て分かる通り、本来誰にでも備わっている物。
二人の築き上げてきた信頼関係は間違いなく、リオルの力になっていたはずだ。

掌に伸し掛かる圧力の上昇はとどまる所を知らない。リオルはエアームドとスパーダの心の同調の色を読んで、心が熱くなる。
燃え上がる情熱がそれぞれ形は違えど、全力のエネルギーとなって自分を表現する。
リオルの弾け散るような流動も、更に激しさを強めてそれに抗していく。
負けたくないという想いは、ぶつかり合う。

「リォォォォォォォォォッ!!」

ただがむしゃらに波導の力を押し上げる。
熱く燃えるように感触した身体の内では、はちきれそうな力の衝動が手足の四隅に行っては返す。
全て燃やし切る、暴れるような感情がリオルの意識を支配し、掌から吹き出す波導の力はより強い飛沫を上げた。
―――しかし、まだ使いたての技をコントロールしきる事などできる筈もない。
出鱈目に放出された力の塊は、トーレナーのソウジにも見て分かるほどに膨張していた。
爆発する。

「リオル―――――っ!」

津波のような衝撃が一つ奔り、ソウジの身体を吹き飛ばした。
慌てて上半身を起こした彼が爆煙の先に見たものとは。
247オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)00:53:13 ID:82z
>>245

目の前に突如出現した巨体。コロトック等比ではないサイズだ。
ぬまうおポケモン、ラグラージ。何時だったか―――ホウエン地方に立ち寄った時に一度だけ目にした筈だった。
だが、彼女のラグラージはその比ではない。圧倒的な巨体。
前方からの風圧とそれによって後方へと追いやられて行く霧を全身で受けながら、オトギリは笑みを浮かべた。

「―――成程。」

「お前が俺の登竜門という訳か。」

コロトックが構えを取った。美しい音色を奏で、人を楽しませる事で有名なコロトック。
だが彼のコロトックは殺気に満ち満ちており、とてもあの温厚ななコロトックと同一の種族とは思えぬ出で立ちだ。
加えて体表に付いた数多の古傷が、多くの修羅場を潜り抜けて来た事を言葉無くして物語っていた。

「ギギィ……」

「―――コロトック、かげぶんしん。」

既に試合は始まっている。
命令からコンマ一秒にも満たぬタイムラグの後に素早く行動をした。
コロトックの身体が煙の如く揺れた。刹那、ラグラージを取り囲むかの様に出現する十体以上のコロトック。
既に全てが次の攻撃の為に構えを取っていた。

「―――むしのさざめき!」

オトギリの命令が下る。コロトック達は一斉にその羽を広げ、激しく振動させた。
むしのさざめき。虫ポケモンがその羽を振動させた際に発生する音波で攻撃する技だ。
同時にコロトックの身体から紫色の闘気が溢れ出た。その源泉はコロトックの有する―――

「―――いのちのたま!」

所有者の技の威力を高める鉱石。だが、その対価として所有者は生命力を奪われる。
即ち生命力を薪に高火力の技を繰り出す為のアイテム、という事だ。

(奴は見るからにパワータイプだ。迂闊に近距離で殴り合いは危険。)

脳裏にスパーダのキリキザンとの戦闘がフラッシュバックした。
あの戦いでは迂闊に攻めて敗北を喫した。先ずは慎重に攻めるべきであろう。
コロトックの振動と共に放たれるのは紫色の闘気を纏い可視化した音波。向かう先は当然ラグラージ。
果たして―――。
248メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)01:21:17 ID:qNP
>>247
「うふふ。」

一方のメユリは変わらず穏やかに目を細めている、左腕に傘をかけ肩からバッグを下げる姿に変りもない。
だと言うのに彼女から受ける印象は先ほどと180度反対の物だろう。

コロトックの影分身を前に、ラグラージは視線と首だけを身じろわせる。
左右から囲うように一定の距離を保ったまま展開するコロトック。
その場から一歩も動かないラグラージだが、細められたその眼光は確実に敵の一挙手一投足を捕らえていた。

オトギリの命令によりコロトックがさざめきを放とうと構えたその瞬間を、彼と彼女は決して見逃さない。

「―――――ラグラージ、“じしん”!」

『ラァァ――――――ア゛ア゛ッ゛!!』

コロトックの翅が震え、そのエネルギーが確かな破壊力となって放たれた時、ラグラージは己の右拳を大地へと叩きこんだ。
ラグラージの足元が大きく歪み、巨大なうねりとなって地面に強烈な負荷がかかる。
波紋の様に広がるその歪みに耐えきれず大地の表面がひび割れると、ラグラージを中心に隆起した岩盤が大きく捲れ上がる。
それはまさしく大地の壁だ、全周から放たれたコロトックのさざめきを受け止めるための障壁。

超振動を受けた壁はその役目を終えて砕け散る。

だが砕け散るまでの間――――壁に包まれたラグラージの姿を誰が見れただろうか?

隆起した岩盤が砕け、舞い上がる石片と土埃を吹き飛ばし。
巨大な大槍が周囲のコロトック達を穿つように突然彼らの眼前に現れたのだ!

その中心にラグラージは確かに立っている。
――――――大地へと“両腕”を打ち付けた姿で。

右の拳で起こした“じしん”は確かに壁を作り出した。
だがラグラージは続けざまに左の拳でまた“じしん”を起こしていた。
時間差で放たれた二度目の“じしん”こそが本命。
最初の地震と同じく大地を歪ませる剛力の波紋が地表を割り――――鋭い大地の槍を作り出したのだ。

全てのコロトックを一網打尽に放たれた巨大なる大地の楔、果たして避けることが出来るのか
249オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)02:04:57 ID:82z
>>248

「――ッ!?」

突然の揺れ。オトギリは驚愕しながらも何が起こったのかを理解した。地面タイプの十八番、じしんである。
一方のコロトックはさざめきを放ったは良いが、同時に起こった地の震えと隆起した岩盤に少々驚いた。
案の定音波は隆起した岩盤と衝突し岩盤を打ち砕くもラグラージに手傷を追わせるには至らなかった。

オトギリは両目を見開く。これは唯の防壁等ではない。
既に彼女は次の手を打っていたのだ。

「―――コロトック、れんぞくぎりッ!!!」

コロトックの全身から紫色の闘気が溢れ出した。加えてその両腕が深緑の闘気を纏う。
土埃が払われたと同時にコロトックの目前に迫っていたのは鋭利な槍。
死を予感させる形状。
コロトックは低い姿勢で"槍"を目前に刃を構える。

「―――ギィィィィィッッッッッ!!!!」

迫った槍。コロトックの魂の叫びに共鳴し溢れ出る紫色の闘気。
消滅する影分身。最早回避は叶わない。ならば、正面から受け切ってやれば良い。
コロトックがその両腕を振るった。深緑の闘気、紫色の闘気。二つの残光が幾度と無く描かれる。
それをなぞるかの如く切断される大槍。徐々に加速するコロトックの動き。
だがその破片は切る度にコロトックの全身の古傷の上に新たな傷を刻んで行く。それでも尚、コロトックは止まらなかった。

―――だが、この程度の傷が何だと言うのか。

直撃していれば一撃で戦闘不能に陥りかねない強力な一撃を直に食らうよりは幾分マシである。
全身から僅かに滴る体液を一切気にも留めずにコロトックは迫り来る大槍を黙々と切り裂き続けた。

―――目の前で少しずつ確実に傷付くコロトック、頬に飛沫する体液。然しオトギリは一切の焦りも見せない。
コロトックならばこの程度の傷を受けても全く問題無く動けるだろうという信頼故だ。

「コロトック、シザークロスッ!!」

幾度か切った後にコロトックは切断の為に振るった左腕の勢いのままに跳躍。
れんぞくぎりによる加速が途絶えぬ内に真っ直ぐとラグラージの下を目指した。
落下と同時にその両腕に再び深緑の闘気を宿す。

「ギィィィィッ!!!」

両腕に殺意と共に闘気を宿したコロトックはその落下の勢いと共に両腕を十字に振るった。
狙いはラグラージの背中。その背中に十字の傷が深く刻まれるか、否か。
この高度であればじしんによる影響は受けまい。
250メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)17:17:26 ID:qNP
>>249
―――――居ない。

じしんによって地表を突き破り現れた槍へ、死地へ向かう様に突っ込んできたコロトックの姿が消えていた。
消えたこと自体は不自然ではない、ラグラージを囲んでいたコロトックは一体を除いてかげぶんしんだ。
だから“消えていない”コロトックが存在するはずだった。
粉々に砕かれた石片がラグラージの視界を阻害するせいか、コロトックを捕らえることが出来ていない。

右か、左か、後ろか――――

「――――ラグラージ、上よ!」

メユリの声にハッと目を見開いたラグラージは自らの体にかかる影へとようやく気付く。
見上げれば、朝日を背に逆光を纏ったコロトックが宙を舞っていた。
ラグラージがその光に眼を凝らしたその瞬間。

『ラグァアアッッ゛!?』

その隙を逃さんと、ラグラージの後方へ着地するすれ違いざまに背面へコロトックのシザークロスが刻み込まれる。
衝撃でラグラージの巨体が僅かに浮き上がり、反る様に伸びた肉体が前方へと倒れこむ。

『……ラ゛ァ゛ア゛!』

だが地には伏しない。
右腕を地面に叩きつけ、自らの重量を流すように体勢を持ち直す。

「ラグラージ、まだ戦えるわね?」
「お返しよ。れいとうパンチ!」

メユリの指示が耳に入るか入らないかという速度で、ラグラージが弾き飛ばされるようにコロトックへと飛び掛かる。
ラグラージは確かに歩行速度だけ見れば速いとは言えない。だがそれは地上の、ましてや脚力で以って移動した場合の話だ。
手を突いたまま地面を掴んでいた右腕の、己の体重すらも超える大岩を持ち上げて砕く怪力も加えれば結果は当然変わる。

足元に抉りこむ様な破壊痕を残して強襲するラグラージの左拳が青白く輝き、周囲に漂う朝露を結晶へと変えてゆく。
冷気によって自らの腕すらも薄っすらと氷が張り、離れているトレーナーであるメユリですらその冷たさを感じるほどだ。

『ラァ゛グゥ゛――――』

コロトックに肉薄した瞬間、構えた左腕が大きく膨れ上がった。
込められた渾身の膂力に筋肉が浮き上がり、腕を包んでいた氷膜が硝子の様にいとも容易く粉々に砕け散る。
先程のお返しだ――――コロトックを捉えて離さないラグラージの双眼が雄弁に語る。

『―――ラァア゛ア゛!!』

この瞬間を肉体はどれだけ待ち望んだことか。
筋肉のバネによって無理やり捩じったラグラージの腰が、肩が、脚が解き放たれる!
コロトックを叩き潰さんとする氷結の拳が振り下ろされたのだ!!
251オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)17:51:07 ID:82z
>>250

―――肉を切った確かな感触、その余韻は肉薄する気配によって容易く打ち消された。
蛙の如しその跳躍に驚愕しながらもオトギリは次の命令を練る。猶予は無い。
振り返るコロトック。
目前に迫るラグラージの拳。

「―――シザークロスで迎え撃てッ!!」

響き渡るオトギリの叫びとほぼ同時にコロトックは両腕を逆十字に組んだ。
刹那にも満たぬ間の後にその上からラグラージの強力無比な拳が叩き付けられる。
鳴き声を漏らす余裕も無く、コロトックの身体は瞬く間に拳の下敷きとなり見えなくなった。

「コロトックッ……!」

思わず声を上げるオトギリ、大地に走る亀裂、巻き上がる砂埃。
勝負あったか―――。

「……ギィッ……。」

土埃が晴れると大地にめり込んだコロトックの姿。だが、まだ辛うじてコロトックには意識があった。
どうやら直前に放ったシザークロスの威力が多少ではあるもののラグラージの拳の威力を弱めた様で、一撃死は逃れた。
とは言え、最早文字通りコロトックは虫の息だった。
然し無慈悲にも拳に纏われていた冷気がコロトックに追い打ちを掛けた。

(コ、コロトックが……)

打撃は防げても冷気は防ぎ切れなかったのである。

(氷漬けにッ!?)

「ギ、ギィ……?」

コロトックの身体は瞬く間に凍てつき、氷の中に封じ込められてしまった。

―――万事休すか。

(……このままでは次の一手は確実に受けてしまうッ……)

オトギリはこの状況を打開する案を模索した。
然し一向にそれは見つからない。

「コロトック!何とかしてそこから脱出しろッ!コロトックッ!」

必死にコロトックに呼び掛けるオトギリ。
最早今の彼にはそれしか出来なかった。
その言葉が届いているのかいないのか、氷の牢獄に囚われの身となったコロトックはピクリともしない。
252メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)18:19:28 ID:qNP
>>251
「あらあら…氷っちゃうなんて、運が悪かったわね。」

れいとうパンチで相手が氷る確率は高くない、運が悪かったと言っても許される事象だ。
だが勝負がついた訳ではない。
勝利へと猛進するラグラージも、温厚そうなメユリも、この状況でなお勝負を続行する事に何の躊躇いもなかった。

『――――ラ゛ァ!!』

左の拳を叩きつけたままラグラージの右の腕が振り上げられる。
巨大な掌に再び青白い輝きが集まり、舞い上がった土埃がその冷気によって氷の衣を纏って地面へと落ちてゆく。

まるで巨岩を打ち砕くモンケーンのような追撃の右拳がコロトックの元へと撃ち出される。
その一撃はコロトックを拘束する氷を粉砕し、それでも尚威力が衰える事無く叩きこまれるだろう。

勝敗が決するだけの威力を持ったこの一撃――――果たして。
253オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)18:45:05 ID:82z
>>252

「―――コロトックッ!!」

オトギリの叫びが響き渡った。
―――だが、それも虚しく無慈悲にも叩き込まれるラグラージの拳。亀裂が入る氷。迫るラグラージの拳。
瞬間、コロトックの耳にオトギリの声が聞こえた。

―――「く」の字に捻じ曲がるコロトックの身体。

全身から体液を噴出しながら後方へと吹き飛ばされたコロトックの身体がオトギリの後方の電柱に激突する。
その瞳には一切の生気も宿っていなかった。いのちのたまを根源に出ていた闘気も全て失せている。
最早生命力が残されていないのか。

「……嘘、だろ?」

ふらふらとオトギリは動かないコロトックに歩み寄った。
オトギリがもう動かないその身体を抱き抱えると膝から崩れ落ちた。

「―――!」

オトギリはハッとした表情でラグラージの方を振り向いた。
ラグラージの放ったとどめの一撃により生じた土煙の中に、赤い閃光が走るのが見えた。

「―――ギィィィッ……」

――――オトギリの表情に笑みが戻った。

「―――コロトック、じごくづき。」

最早勝敗は決したかと思われたこの状況でオトギリは独り言つ様にして呟いた。
同時にオトギリが抱えていたコロトックは塵となって消えた。
みがわり―――自らの生命力を削り、ダミーを作り出す技。今消えたのはコロトックのダミー。
ならば、本体は―――?

―――ラグラージの左方より突如として紅の閃光が飛び出した。コロトックである。その両腕には漆黒の闘気。
最後の一撃を食らった際、氷が砕けてから本体に当たるまでの刹那に己のダミーを作り出して回避していた。
とは言え、冷凍パンチの一撃とみがわりによる生命力の消耗は激しい。瀕死に限り無く近い極限状態。

―――だが、手負いのポケモン程恐ろしいものは無い。コロトックの特性、むしのしらせ。
極限状態に達した時に発動する特性で、コロトックの放つ技の殺傷力を高めるというもの。加えていのちのたまによる技の火力の向上。

「ギィィィィッ!!!!!」

コロトックが叫びながらラグラージ目掛け、闘気を纏ったその両腕を同時に向けた。
特性と道具によっれ二段階に上昇した「じごくづき」が、ラグラージの脇腹に迫っていた。
254メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)19:05:55 ID:qNP
>>253
『ラガッ゛……ッ!!』

ラグラージの左半身をコロトックのじごくづきが捉える。
宛ら巨岩のようなラグラージの外皮はその一撃を受け止めるが、ミシリと鈍い音と共にその巨体が大きく弾き飛ばされた。
痛みにより顔を顰め自らの左脇を抑えるラグラージ。
だが倒れてはいない。
弾き飛ばされて、大地を削ぎ取る様に叩きつけられても尚、ラグラージの体力は尽きていないのだ。

「―――ラグラージ、“じしん”よ。」

『ラ゛ア゛!!!』

傷の痛みとじごくづきによって乱れた呼吸のまま、それでも自らを鼓舞するかのようにラグラージは叫ぶ。
思索するように瞼を閉じているメユリの指示に疑う事も、ましてや痛みによるわざの発動への躊躇もなく、ラグラージはその両腕を大地へと叩きつけた。
最初の一合と同じく、地面が上下に大きく歪み、歪みが波紋となって地表を駆け抜ける。

まるで爪痕でも残すかのような亀裂と共に広がり、それはコロトックへと迫りながら波紋から波へと、そして巨大な土の津波――――鋭い土砂の大槍へと姿を変える。
再びコロトックに襲い掛かる大地の大楔、避けられるか――――――
255オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)19:22:20 ID:82z
>>254

(―――やはり耐えるかッ!)

ラグラージの耐久性にオトギリは舌打ちをしながらもコロトックに目配せした。
コロトックも本当に限界が近いのか、常に呼吸が荒いでいた。一切合切の力は出し切った。
だが、そんなコロトックに更なる一手が放たれた。

「……!まずいッ……コロトック!れんぞくぎりだ!」

命令と同時にコロトックが俯いていた顔を上げた。その視線の先には最早眼前まで迫った大槍。
コロトックが両腕を再び振るう。
―――しかし先程と違い、体力の消耗した現状。れんぞくぎりは加速するどころか徐々に減速し―――。

「―――ィッ……」

切断しきれなかった大槍を胸部にまともに受け、体液をまき散らしながらコロトックの身体が跳ねた。
ドサリ、と地に落ちる音のみが戦場に響き渡る。
先端部は切断されていた―――故に貫通は免れた。だが、最早立ち上がれまい。

今度こそ光の失せた瞳。生気は微塵も無い。みがわりでもない、本体だ。

――――直後、コロトックの身体がピクリと動き、緑色体液を垂らした口が開いた。

「……これは―――」

突如として周囲に響き渡る美しい音色。「うたう」。
この絶体絶命の状況下で無意識的にコロトックが選択した技は、コロトックというポケモンの本来の十八番の技だった。
それは生き物としての最後の抵抗だったのか。
或いは理性的に選択された起死回生の一手だったのか。

聴く者を夢の世界へと誘う美しい音色が周囲に響き渡った。
256メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)19:52:10 ID:qNP
>>255
「あなたは2つミスをおかしたのよ。」

ゆっくりと瞳を開けたメユリは、垂れ気味の眼でオトギリを見つめる。
優し気なその顔つきと異なり、彼女の口から告げられたのは冷酷な言葉だった。

「一つ目は“じごくづき”を選んだこと。」
「あなたのコロトックのむしのしらせは“じごくづき”を強化してはくれないわ。」

むしのしらせはピンチになった時、むしタイプの技を強化する特性――――あくタイプのわざに分類されるじごくづきに補正を乗せることは出来ない。
ラグラージが倒れなかったのはただラグラージがタフだったからではない、コロトックの特性を土壇場で活かしきれなかったからだ。

「そしてもう一つは、“同じ手段”を選んだこと。」

最初と同じラグラージのじしんによる攻撃、これは距離が離れていたからではない。
初撃にて見せたみだれぎりによる鮮やかな迎撃――――それを誘っていたのだ、この時を狙われていたのだ。

「あなたのコロトックの特性がむしのしらせだって事は、ダメージを恐れない無茶な戦い方ですぐわかったもの。」
「だから――――――」

じしんを放っていたラグラージが低く構え直す。
左脇腹から走る鈍い痛みが彼の技を鈍らせる―――――いや、逆だ。
痛みが。死闘が。ラグラージの力を引き出し。その技を。力を。更なる領域へと高める。

「――――同じ手を取らせてもらったわ。」


『ラ゛ア゛ア゛ァ゛―――――――ッ゛!!』


ラグラージが最初の一歩を踏み込んだ瞬間、まるで決壊したダムの様に激しい水がラグラージを押し出すように暴れ出す。
コロトックにむしのしらせがある様に、ラグラージもまた同様の特性を持っている。

大瀑布をも逆風の一太刀に叩き割るラグラージ必殺の一撃“たきのぼり”。
その名の通り行く手を塞ぐ物を砕く、傷つく事で発動するラグラージの特性“げきりゅう”。

「――――たきのぼり!」

――――仮に最初の様に上に逃げて居たとしても“たきのぼり”で迎撃されていたであろうこの状況。
そして名実共に“激流”となったラグラージを、うたうでは、ねむりでは最早止めることはできない。
メユリはどのような結果になれ、これが決着の一撃となる事を理解していた―――――。
257オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)20:11:06 ID:82z
>>256

「―――!」

オトギリは己の未熟さを恥じた。土壇場とは言え、コロトックの特性の性質を忘れていたのだから。
最早前も後ろもわからない、意識があるのかすらも怪しいコロトック。
オトギリの頬を涙が伝う。

「……すまない。」

歌うコロトック、迫るたきのぼり。
その破壊力が今までのれいとうパンチやじしんの比では無い事は容易に想像出来た。
破壊力だけではない。コロトックの末路もだ。

「すまない、こんな……未熟なトレーナーで……。」

俯き、膝から崩れ落ちるオトギリ。零れ堕ちた涙が膝元を濡らした。
俯いても尚、耳に届くコロトックの歌声。あの時、スパーダとの戦いの時に誓ったはずだった。
二度とコロトックを、いや、家族をあんな目には遭わせないのだと。

「……恨んでくれ……無力なばかりにまたもや家族を犠牲にしてしまった俺を―――」

迫るラグラージ。
最早避ける事もせず、唯歌い続けるコロトック。

「―――怨んでくれ」

――――凄まじい爆発音。オトギリの頬を水と共に緑色の体液の様な何かが濡らす。
膝元に転がって来た一本のへし折れた腕。最早見ずとも、コロトックがどうなったのかが容易に想像出来た。
想像出来ただけに恐ろしかった。

ラグラージの攻撃によって巻き上がった水を浴びながら、オトギリは唯々自分を責め続ける事しか出来なかった。
一体何処で間違えたのだろう。一体何がいけなかったのだろう。
自問自答を繰り返す。

―――勝負あった。

オトギリはふらふらと立ち上がると女性に歩み寄った。なるべくコロトックの末路を見ない様に。
そしてそっと右手を差し出す。
結果はどうであれ、勝敗は決したのだ。彼女に非は無い。これはバトル。無力だった自分が何もかも悪いのだ。
オトギリは震える手で、静かに彼女に握手を求めた。
258キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/27(金)20:32:09 ID:XCa()
>>213

「そう。頼もしいわ。楽しみにしてる」

「ジョン、右に切って」
「あいよっ!」

車が急旋回して後輪を滑らせ、一瞬追手に車の側面を晒す。
それと同時にフォレトスがガコッ、と窓枠から外れ、追手の正面に投げ出されると――――

『――――――カッ』

「なっ――――」

『バグオォォォォオォォオオォオング!!!』

追手のチンピラが爆煙に包まれ、衝撃波が一瞬耳をつんざく中、すかさずフォレトスをボールに戻す。
文字通り星になった追手を遥か後ろに見ながら、車はストリートギャング達を振り切った。
少女はガスマスクを外し、ふぅ、と一息つく。

「……そうね。強いて言えばだけど――――」

この組織の目的。組織の行動指針と、その野望が、言葉を選ぶように語られる。
車は先ほどの乱痴気騒ぎとは打って変わって、穏やかに街を走ってゆく。
西日が少女の物悲しげな顔をオレンジ色に照らしていた。

「心配しないで。あんなギャング未満の連中に付き合わせるような仕事は寄越さないから。」

フォレトスに元気のかけらを与えてやると、フォレトスはすぐさまボールから転がり出て後部座席に乗り込む。

「だから、そんな”こわいかお”をするもんじゃないわ。」

猫背の男の鋭い眼光に、指でハットを傾けて蓋をする。
259メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)20:42:08 ID:qNP
>>257
激流となったラグラージを止められるものは居ない。
無意識のうちにコロトックはその両腕で“たきのぼり”を迎撃しようとしたのだろう。
ラグラージの拳はその右腕を穿ち―――――直撃する寸前で止まっていた。

止められるものは居ない―――――ただ一人、それと全く同じ力を持ったラグラージ本人を除いては。
コロトックへ突き出された右拳とは逆に、ラグラージの左腕は大地へと深々と突き立てられていた。
電車道の如く捲れ上がった土がその破壊力を物語る。
そしてコロトックの“じごくづき”を受けた脇腹の傷が大きく開き、ボタボタと滴り落ちるラグラージの血潮がどれだけの無茶をしたのかがありありと示されていた。

『……――――――――』

白い息を吐きながら、肩が外れてしまったのであろう左腕をだらりと揺らすラグラージはヒュウ、とか細く鳴く。
 “何とか止めて見せたぞ”
肩越しにメユリを見るラグラージの瞳がそう告げていた。

「最初からぼろぼろの状態でわたしに勝とうだなんて、そんな生意気は100年早いわ。」

メユリは差し出された手を握る様子もなく、少し拗ねた様な表情を見せたまま言葉をつづける。

「あなたの戦い方は否定しないわ、それは立派な戦術よね。」
「でもね、だからこそ引き際を見極めることもトレーナーがやるべきことよ。」

突然メユリがオトギリの腕をつかむと、思い切り引っ張ってくるりと遠心力を乗せながらそのまま放り投げた。
非力な彼女では精々その方向に押し出すのがやっとだが、それでも彼女が何をしたかったかはオトギリにはすぐに理解できただろう。

数歩歩み出たオトギリの前には戦いによって傷ついたコロトックが伏しているのだから。

「あなたのコロトックはあなたを信頼してるわ…命を賭けるほどに。」
「ポケモンたちも生きているの。賭けられた命の重さを、よーく考えて。」

メユリはのそのそと左腕を引きずるラグラージの元へ寄ると、屈みこんでその頭を胸に抱きしめる。
先程までの修羅のような姿はどこえ消えたのか、ラグラージは主の匂いに安心したのか気の抜けた様な息を吐きだした。
声には出さないが、ラグラージを見つめる彼女の慈悲深い瞳が悲しそうに揺れる。
一頻りラグラージを甘えさせると、メユリはすぐにボールの中へと戻し、オトギリの方へと振り返る。

「でも怯えたり、挫けたりはしないで欲しいの。」
「わたしが言うのもおかしなことだけれど……チャンピオンになるって夢は、諦めないで欲しいわ。」

朝日の中、儚く笑う女性の表情は、霧が晴れた晴天の様……とは言えなかった。
260スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/27(金)21:06:43 ID:5IJ
>>246
鋼の嘴と青き波導のせめぎ合い、両者一歩も引く事はなく、どちらかが力を緩めるまでそれは終わらない。
最早ここまでくればお互いの根性比べ、スパーダはそれ以上の事を望まずに真剣な眼差しでその戦いを見つめていた。

(……ああ…思い出すな…あの頃を)

ソウジとリオルの信じ合う心は、例え特別な力が無くとも感じ取る事が出来る、目の奥が熱くなってくるような感覚がしてスパーダは静かに目を閉じた。
純粋で無邪気な勝利への渇望、強くなる事に真っ直ぐな思いが伝わり───自分がかつて、この様な思いをいくつも感じて来たのを思い出す。
戦いの場から一歩引いた今であっても、矢張り熱いバトルは良いものだ、心踊り表情が緩む。

「───ラストスパートだエアームド!!最後まで気を緩めるな!!」

「スラァァァァァァァァァァッッシュ!!!!」

マントを翻して腕を振るい、スパーダもエアームドへと声援を送る。
それに答えんが為エアームドは更に力強く回転数を上げ、やがて───

───爆発。

膨れ上がった波導の爆発により巻き上がった砂煙の中に戦いの音は無い。
風が舞い上がった砂煙を攫い、そこにいたエアームドは、地面に俯せに倒れた姿だった。
261オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)21:12:26 ID:82z
>>259

―――握手を求めた手に彼女が答える事は無かった。いや、無理も無い。
こんな非力なトレーナーなど。最早チャンピオンという言葉を口に出す資格すらないトレーナーなど。
そんな者と握手をしたがらないのは当然であろうとオトギリは声無く心の中で呟いた。
ボロボロの状態でなくとも勝てたかどうか。今の彼にはその自信すら無い。

「……。」

本当に還す言葉が無かった。引き際を見極める事も出来ず。
どれだけ口で、心で決意を固めた"つもり"でいようとも、自分は結局この無茶振りな戦い方を変える事が出来なかったのだ。
不意にオトギリの視界が揺れた。
彼女に腕を掴まれ、押し出された先。その先には、コロトック。

「……ッ!」

オトギリは脳裏にコロトックだったものを思い浮かべ、思わず嗚咽しそうになった。
だが、いざ彼の視界に映った光景は、彼の想像していたものとはかけ離れたものだった。
右腕を引き千切られ、しかしそこまで。辛うじて生きている。
茫然とするオトギリの背後から彼女の声が聞こえる。

言葉を失い、両目を見開き、黙ったまま立ち尽くすオトギリ。
彼女の言葉の一つ一つが今の衰弱した彼の心には深く突き刺さり続ける。

オトギリは膝から崩れ落ち、意識の無いコロトックを静かに抱き抱え、先程以上に涙を流し始めた。
ひたすらコロトックに謝りながら声を上げて泣くオトギリ。

(――――もう、俺には、戦う事は……)

女性の言葉が耳に入る。然しオトギリにはもう何も自身が無かった。

最近の戦績は最悪。自身のトレーナーとしての実力も伸び悩み、終いには家族を傷付けてしまった。
これで二度目だ。
これ以上戦う事が怖かった。また自分の過ちで大事な家族達を傷付けてしまいそうで、恐ろしかった。

―――トレーナーとして生きる自信を、無くしてしまった。

彼の悪を許さない己の正義を重んずる価値観も、チャンピオンを目指す志も。
全ては恐怖と言う名の濁流を前にしては自信や勇気と共に無力にも流されていったのだ。

「……もう、戦いたくない。」

意識の無いコロトックを強く抱きしめながら、ぽつりとオトギリが呟いた。
それは14歳という年相応の少年らしい声だった。
262メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)21:35:19 ID:qNP
>>261
コロトックを抱きしめただ立ち尽くすオトギリの前に、カツカツと靴音を鳴らしながらメユリが立つ。
恐らく彼女の姿に視線すら向けていないであろうオトギリを尻目に、すぅ、と音が聞こえるほどに大きく息を吸い込む。

「 メ ソ メ ソ と 項 垂 れ る な ッ ! 」

朝の静けさを震わせて一喝が響き渡る。
それはどこか強制力があるような、どこか恐怖を与える様な怒号。

「 立 て ッ ! ! 」

穏やかな表情を捨て、眉を吊り上げて鬼気迫るその仮面は人を怯えさせるには十分過ぎる物だろう。
腕を組み仁王立ちをして見下する姿はまるで、どこかの軍隊のような雰囲気すら感じさせる。

「……この二つをあげるわ。」

小さなひし形の結晶と一通の封筒が彼女の手に収まっていた。
それをオトギリの手へと無理やりに握らせる。、黄色に柔らかく光を透過させる小さなひし形の欠片――――げんきのかけらだ。
そしてその封筒に押された印は“ポケモンリーグセキエイ本部”の物であるという事実に。

「それをコロトックに飲み込ませてあげたら、ポケモンセンターにいってその手紙をジョーイさんに渡してあげて。」

両の手でオトギリの手を包み込むと、そよ風のように優しく頬を撫でる声色で少年へ耳打ちする。
それだけをしてオトギリの元を離れると今一度その正面へ向き直る。

「―――――― 分 か っ た ら 駆 け 足 ッ ! ! 」
263オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)21:57:40 ID:82z
>>262

「―――!」

女性の怒号に思わずふらふらと立ち上がるオトギリ。
今まで怒鳴られた事も無かった。
怒鳴られる事に微塵も耐性の無いオトギリはコロトックを抱き抱えたまま怯えた表情で女性の顔を凝視する。

手渡されたげんきのかけら、そして封筒。
封筒に押された印を見て、オトギリは唯々驚愕するばかりだった。
ポケモンリーグセキエイ本部。間違いない。オトギリもカントー地方出身、一目で理解した。
そんなものを持っていたこの女性の正体とは、一体―――。

「―――こ、これは……。」

女性の素性について問おうとした。
―――が、それを妨げるかの如く再び響き渡る女性の怒号。

「―――は、はいっ!」

荒んだ人生、産まれて初めて使ったかもしれない敬語。
オトギリは跳ねる様に踵を返し、ポケモンセンターへと駆け出した。
走りながらオトギリは女性に貰ったげんきのかけらをコロトックに飲ませた。

「……ギィ」

「――!」

コロトックが鳴き声を微かに上げる。オトギリは安堵した。良かった、生きていた。
走りながら何度もオトギリはコロトックに謝った。自らの過ちを、謝り続けた。
手紙の中身、あの女性の正体も確かに気になった。だが、今はそれよりもコロトックだ。
一刻も早くポケモンセンターに連れて行ってやらねばなるまい。

涙を振り払い、ポケモンセンターまでの道をオトギリは一心不乱に駆け続けた――――。
264ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/27(金)21:59:32 ID:Peq
>>260
「リオルーー!」

ソウジは思わず駆け出していた。視界に纏わりつく黒煙を払い除けながら、やみくもに進む。
時折風が土煙を掠め、エアームドの力尽きた姿が視界の傍らに見えた。
リオルは…?爆発の末、あちこち抉れた砂浜を見渡して、彼の姿を探す。

「リオ……っ」

ふと、足元に聞こえた、忘れるはずもない相棒の弱々しい声。
仰向けに伏した状態のリオルは、もはや瀕死一歩手前の容態に見えた。
それでも、リオルはこちらへ親指を立てて、力のない笑いを浮かべていた。
―――ポケモンバトルは、最後まで意識のあった方の勝利だ。

「……………かっ、勝った…のかっ!」

頭に流れ込んできた歓喜、達成感といった様々の感情がこめかみをほとばしり、言い表せない余韻が身体を巡って、膝は力を失った。
震える唇でなんとかして微笑みを作り、死闘を制したリオルの傷だらけの身体を抱き上げて、よくやったと頬を触れ合った。
朝の風がふっと吹く。
それはリオルの勝利を祝福するかのように、エアームドの至闘を賞賛するかのように、トレーナー達の前髪を優しく撫でていった。

「…………ありがとうございます」

どれくらいの沈黙があっただろうか。静寂を切った言葉は、感謝の一言だった。
灼けるような橙色の朝日を背に浴び、ゆっくりと気を失うリオルを静かに見届けながら、ソウジは立ち上がる。

「あなたのエアームドはオレとリオル、二人の力を試してくれた」
「―――――僕の名前はソウジです。チャンピオンを…目指します」

ソウジはスパーダに歩み寄って、そっと手を差し出した。
少年は改めて名乗る。スパーダが目にした光景、朝日の影に忽然と煌めくのは、透き通るような尊敬の眼差しだった。
265メユリ◆5404GmzgaY :2018/04/27(金)22:17:38 ID:qNP
>>263
走っていく少年の背中を見つめながら、メユリはホッと息を吐いた。
あんな口調で喋ったのは“仕事としていた頃”以来で調子も分からなかったが、あの様子ならまだまだ現役で通用するという事だろう。

「わたしはあなたを立ち直らせることは出来ないわ。」
「――――あなたと、あなたのポケモンとの絆しかあなたを慰めることは出来ないのよ。」

けれどあのコロトックなら少年を立ち直らせる事が出来るだろう。
あのコロトックはトレーナー以上に負けず嫌いのじゃじゃ馬だろうから。
それにあの手紙を見せればあの重症でもきちんと無償で治療してくれるはずだ、ジョーイさんから怒られる…かもしれないけれど。
もちろん怒られるのは少年だけではない、こんなことに使ってしまったメユリ自身もポケモンリーグから怒られるだろう。

「……わたしも、ラグラージを治してあげないとね。」

ビニールシートを回収すると、ラグラージの入ったモンスターボールを優しく慰撫しながらポケモンセンターとは違う方向へと歩き出す。
その方向にあるものと言えばナナイタシティのバトル施設―――――確かに、あそこにもポケモンセンターが備え付けてあったはずだ。

「そういえば――――――――」

あの少年の名前を聞き忘れていた。
だがあの少年がトレーナーを続ければまた出会うだろう。
何せ今日、メユリはある決意をしたのだから。

「もしもし、メユリです―――――――――」

マルチナビをバッグから取り出したメユリは、歩きながらも着信履歴の一つを選び発信する。
その電話の先は誰なのか――――――、それはまだ誰も分からない。
266スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/27(金)22:35:37 ID:5IJ
>>264
パチパチ、とスパーダが手を叩きソウジとリオルに賞賛を送る。
その表情は嫌味の無い笑顔、心から相手の勝利を祝う表情だった。

「ブラボー!良い戦いをさせてもらった!」
「実にいいバトルだった!まさか僕のエアームドが破られるとはね!」

勝利を喜ぶ一人と一匹、そんな彼等を見ていると自分も負けたにも関わらず嬉しくなってくる。
そう思う事が出来る人間なのは、スパーダが本当にバトルを純粋に楽しんでいる人間だからなのだろう。

「……負けた僕が言うのもなんだが、君達はまだまだ強くなれるよ、僕が保証する」
「チャンピオンを目指す途中、また機会があったら戦おう」
「僕の名前はスパーダ、ポケモン劇団の劇団員をやっていてね、良かったら君達も見に来てくれよ」

ソウジの純粋な眼を真っ直ぐ見返し、スパーダは笑顔でその手を握り返した。
またいずれバトルしたい、それがいつ何処での事になるかは分からないが、彼の成長した姿をこの目で見たい。

「そうだ、君に良いものを上げよう」

ソウジと握手を交わした後で、スパーダは服の胸ポケットから懐中時計を取り出した。
それを開くと中には小さな宝石の様な物が収まっており、その宝石を外してソウジに差し出す。

「いつか必要になる時が来るかもしれないし、来ないかもしれない、しかし持っていても困るものではない筈だよ」
「僕の古い知り合いが持っていた物だが……君の様なトレーナーが持っていてこその物だ」

それは本当に小さな宝石だが、強い力を感じる宝石だ、形容しがたい色が中で反射していて、何か文様のような物が浮かんでいる様に見える。
267オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/27(金)22:46:48 ID:82z
>>265

―――ポケモンセンターの一室、オトギリは暗い表情で椅子に座っていた。
目の前のベッドの上に眠っているのは彼の過ちの結果、重症を負ってしまったコロトックだ。
最早救い難い自分。あの女性が怒鳴ってくれてほんの少しだけ暗雲が晴れた気がしたが、やはりコロトックを前にしては気分は暗い。

あの女性がくれた手紙には治療費を無料にする旨が書かれていたのか、「料金は結構です」とジョーイさんには言われた。

「「グガゴゴ……」」

彼の傍でジヘッドが彼を慰める。オトギリはジヘッドの二つの頭を均等に撫でた。
これからもオトギリが戦っていけるのかは現在はまだ定かではない。
だが、一つ言える事があるとすればもう彼は自分の価値観やプライドを捨てた、という事だ。
今回の一件で完全に牙が抜けたのだ。

「……なぁ、ジヘッド、コロトック……お前らはどうしたい。」

鞄からカントー行きと書かれたふねのチケットを取り出しながら問う。
―――オトギリが問うた直後にそのふねのチケットは真っ二つに裂けた。

「ギィ……」

ベッドの上でコロトックが左腕を振るったのだ。どうやら意識が戻ったらしい。
コロトックは「愚問だ」と言いたげな様子でオトギリの顔を横目で見た。
ジヘッドは「続けるに決まっているだろ」と言いたげな様子で飛び跳ねながら宙を舞うふねのチケットの切れ端を飲み込んだ。
―――二人のその様子にオトギリは笑みを浮かべた。

「……そうか。」

「お前らがそう言うのであれば続けるしかないな、この旅を。」

ポケモンがそう言っているのに、自分がそれを否定すればトレーナーとして失格だ。
オトギリは俯いて物思いに耽る素振を見せながら呟く。

(……そういえば)

オトギリの脳裏をあの女性の顔が過った。
あの女性には随分と世話になったものの、礼も言っていなければ名前も聞いていなかった事を思い出す。
あちゃー、とオトギリは頭を抱えた。

(……まぁ……。)

だが、不思議とあの女性とはまた会える気がした。
その時にお礼を言おう。名前も聞こう。

病室に飾られたグラシデアの花が風に揺られる。カーテンが風で靡いて外の光が部屋に立ち込めた。
すっかり外は明るくなった。
もうすぐ昼が来る。外をキャモメの群れが飛んでいた。
268ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/04/27(金)23:13:51 ID:Peq

>>266
「はい、きっと。その時はもっと成長したオレ達と…!」

不快感を与えられない程度にぐっと握り返す。いや、疲れていてただ単に力が入っていなかっただけだ。

「ポケモン劇団のスパーダ、通りで…」

ソウジはスパーダが名乗った事で、無機質なマスクに半分覆われた笑顔の怪しさに合点がいった。
普段なら忘れ去られる日々の記憶の残滓を思い起こす。彼のとエアームテレビで見たことがあったようだ。

「今度観に行きます、リオルと。スパーダさんとエアームドのコンビネーション、とても参考になりそうだから」

鋼の魔術師スパーダ。そんな高らかな謳い文句を、少し鼻で笑うように思っていた過去の自分は今、もう居ない。

「これは………」

スパーダの洋服から取り出された懐中時計は、相当使い古されたもののように見える。
彼はそこから、暁色にきらめく一つの宝石を取り出してみせた。
差し出されたそれを指でそっと摘んで、眼の前にかざす。
不思議な輝きだ。その宝石が照り出す虹彩には、新しい美しさの発見というよりもどこか―――懐かしい光を感じた。

よく注視するとその球体の外角には掠ったような切り傷や経年劣化のようなものが見て取れる。相当長く使い込まれたものなのだろう。

「何に使ったらいいのか分からないけど…貰っておきます」

水反質のパーカーのポケットに手を入れて、大事な物を仕舞う小袋にすとんと落とした。
その瞬間、腕に抱いたリオルが目を少し開いたような気がした。

「この宝石の持ち主にまた会えたら、是非、お礼を言っておいてください」
269スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/27(金)23:31:12 ID:5IJ
>>268
「ああ、持つべきトレーナーの手に収まったと聞いたらきっと奴も喜ぶだろう」
「……君がその力を正しく使える事を願うよ」

敢えてそれが何であるかをスパーダは語らない、語らずともトレーナーなら判別出来るものだと思っているのか、いつか自ずと知る時が来ると感じているのかもしれない。
だが、それは決してノーリスクで良い結果を与えてくれるものではない、と言う事をスパーダは暗に語った。

「さて、それでは僕はもう行くよ、朝稽古がそろそろ始まるからね」
「エアームド、起きれるかい?」

「ス……スラァ…!」

スパーダが声をかけると、倒れていたエアームドが意識を取り戻し顔を上げる、それを確認したスパーダはモンスターボールにエアームドを戻した。
マントの下、模擬刀の近くのストラップにボールを掛け、バサリとマントを翻す。

「それではソウジ君!リオル!またいつか会おう!」
「君達の益々の活躍を願っているよ!!」

劇団仕込みのよく通る声を張り上げ、朝の風にマントを揺らしながらスパーダはその場から歩き去る。
すっかりと明るくなりつつある砂浜、彼等の戦いの後はやがて波にさらわれて消えるだろう。
当事者達だけがその事実を覚えていて、それぞれきっと何かを心に抱いて。
270エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/28(土)11:57:20 ID:Ys5
>>258
おっと、申し訳なかった。と自分でも帽子を被りなおす。
西日が射すと、男性がふぅ、と感慨深げにため息を漏らす。

「俺が肩入れした組織はどうも惜しいとこで躓きやがるからなぁ。」
「こっちもちょっと慎重にならざるを得んのさ。」

そういうと、男性は先程までのニヤケ顔に戻る。
指先でモンスターボールを転がしながら、茜に染まる街並みをただただ見ている。

「ポケモンと一緒だ。他人様から貰ったポケモンは扱いが難しい。」
「俺を扱いきれるかどうかは、お前らのボス次第ってことだ。」

そういうと、男は自嘲気味に笑った。
271オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/28(土)22:30:12 ID:Ajh

―――ナナイタシティ都市部の外れ。摩天楼に彩られた風景は都市部とは然程変わらない。
然し眠らない都市部とは異なり、この地域一帯は深夜になると人通りは殆ど見られなかった。
故に治安もあまり良くは無く、役所には監視カメラの設置を求める署名活動が最近始まったとも聞く。

「……悪を滅ぼす、か。」

浮浪者や不良、煙草を吸うチンピラを横目に黒いコートを羽織った少年は独り言つ。
コートの下に更に着込んだ黒のジャケットの下には三つのモンスターボールが顔を覗かせた。
彼もまた、トレーナーだった。名はオトギリ。

今宵、既に何人もの悪党を狩っては警察に突き出していた。窃盗犯や密売人。そして何やら危険な組織との繋がりがある者も。
あのピタヤという少年の言葉は正しかった。
どうやらこのシティにはロケット団の様な大きな闇が蠢いているらしい。
そうも考えている内に目の前に二人のバッドボーイが立ち塞がった。

「―――へへへ」「オイ坊主、ちょっとオレらについて来いよ―――。」


―――数分後。大通りから更に外れた路地裏から傷だらけになった二人のバッドボーイが逃げるかの如く飛び出した。
その背後でジュース片手にジヘッドにポロックを投げるオトギリ。
退屈そうな表情を浮かべるとジヘッドをモンスターボールに戻した。

「……チッ。」

舌打ちするとオトギリは空き缶をコートの裏に終う(決してポイ捨てはしない)。
路地裏にひっそりと建つ、無人となったフレンドリィショップの看板に背凭れするとふぅ、と一息吐いた。

コロトックはポケモンセンターに入院、故に今の手持ちはジヘッド一匹。
ジヘッドの潜在能力は高い。戦闘や経験を多く積めばコロトック以上の強力なポケモンになる可能性を秘めている。
普段コロトックがやっていた悪党狩りを代理でやればジヘッドの良い修行にもなるだろう。
そう思い此処に連れて来たは良いが、どの相手も骨の無い雑魚ばかり。

「こんなんじゃ修行にもならんだろうなぁ……。」

人気の無い深夜の路地裏で静かにオトギリは独り言ちた。
時刻は深夜三時。周囲は深い闇に包まれていた。
272エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/28(土)22:59:53 ID:Ys5
>>271
「カッコいいなぁ坊主。」

路地裏の奥、闇に包まれた一角から、一人の男がオトギリに声をかける。
黒のハットを目深く被った、背のひょろ長い男だ。
ニヤニヤとした表情で近づいてくる男性は、正にこの場所にピッタリというべき『怪しい人』だった。

「そのジヘッドもよく育てられてる。ここら辺のチンピラじゃ相手にもなんねぇってか。」

帽子に隠された目がジヘッドに向けられる。
先程の闘いぶりをみても、相当の実力であることが伺える。『手土産』にするには惜しい。

「あの止まらねえ勢いはしんかのきせきか。面白れぇ型だ。それに見合うパワーも持ってる。」

一見するだけでジヘッドの持ち物を見抜く。
益々もって怪しい男である。
273オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/28(土)23:11:45 ID:Ajh
>>272

―――突如闇から聞こえた声、その主に目配せするオトギリ。
深夜のこんなところに居るのだ。堅気の者か、或いはやくざな連中か。
前者の可能性も当然ゼロであるとまでは初めは断言出来なかったが、その風貌や言動から後者の線が濃厚であろうとオトギリは推測した。

「……お褒めに与り光栄だ。」

オトギリはモンスターボールからジヘッドを繰り出した。
ジヘッドが咆哮を上げる、同時にその口内から七色の輝きが顔を覗かせ路地裏で星の如く輝いた。

「ご名答だな。
うちのジヘッドはしんかのきせきの力を得てサザンドラにも劣らぬ戦闘力を発揮している。
―――いや、物理攻撃に限っては特性がある分、サザンドラ以上かもしれんな。」

ジヘッドは嘗てしんかのきせきを飲み込んだ。
それにより進化に本来当てられるポケモンのエネルギーが輝石によってジヘッドの肉体の強化に当てられている。
故に耐久力は非常に高かった。

「……さて、おっさん。
いきなり話し掛けて来たお前の質問に答えてやったんだ。
次はお前の事について教えてくれよ、なぁ。」


「―――アンタ、なにもんだ?」

オトギリがニット帽の下から鋭い視線をその不審な男に向けた。
ジヘッドが臨戦態勢を取る。
274ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/28(土)23:26:42 ID:ubV()
ナナイタシティ近郊、トレーナーズストリート。
時折バトルをさせたり、あるいはポケモン同士でじゃれ合わせたりしている様子が見られる道路だ。

『ユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラ!!』

「ああっ、僕のモクロー!」

『ゆらゆら!そこまでです!勝負は付きましたよ!』

『ユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラ』

通りのはずれでポケモンバトルをしている少年達。
この少年のユレイドルはいささか血の気が多いようで、勝負がついても触手で殴るのをやめない。
その様はまるで百烈拳の如き高速パンチ。しかも触手で相手を絡め取りながらの、さながらリンチである。

「ああもう……戻りなさいゆらゆら!」

『ユラユラユラユラユラユ………』ピシュウウウン

少年がボールに戻したところで、やっとユレイドルは触手をぶんまわすのを止めてくれた。

『ぷにっぷ』

「はぁ……ゆらゆらも少しは自分を抑える訓練をさせたいものです……」

『ぷにー』

ランクルスを脇に連れた少年は、バトルに付き合わせた少年に軽く詫びると、ユレイドルを再びボールから出して手入れをし始めた。
ユレイドルの触手や体は植物の汁やら泥やらでかなり汚れている。

「まったくもう……泥だらけじゃないですか、もう少しスマートに戦う訓練をさせないといけませんね」

「ゆらり……」
275エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/28(土)23:30:39 ID:Ys5
>>273
「オイオイ、物騒なガキだなぁ。そこら辺のチンピラと変わりゃしねえ。」

ジヘッドの口にエネルギーが充満していく。
その気になれば人間相手にも容赦なく打ち込んできそうだ。
男はヘラヘラしながらジヘッドに近づいていく。『打てるなら打ってみろ』とでも言いそうな勢いで。

「俺ぁ最近こっちに来たばっかの旅人だよ。」
「ここら辺のチンピラの実力ってのを見とこうと思ってな。」

男は決して嘘は言って無い。事実彼はあちこちで行われている対戦を見て歩いていただけだし、最近この街に来たのも事実。
ただ、問題は彼がそこら辺のチンピラなんて相手にならないほどの悪党だということ・

「分かったらさっさとそいつの臨戦態勢を解いてもらいたいね。怖くて動きも出来ねえ。」
「触れてるものみんな傷つける悪ガキ気取んのは大人になってからダサかったって気付くもんだ。」

そう言いながらも男性はジヘッドの口元を覗き込むように軽くしゃがみ込む。
まるでオトギリとジヘッドを『ちょうはつ』するかの様に。
276オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/28(土)23:50:13 ID:Ajh
>>275

「―――"気取る"だと……?」

その言葉がオトギリの精神の地雷を踏み抜いた。
歯を食いしばり、その男を鬼の形相で睨み付けた。幾ら牙が抜けても虎は虎だ。
怒りのツボを押せば、当然怒り狂う。

「お前に何がわかるッ!
俺が一体何を思ってあのゴミ共を毎晩毎晩始末しているのかも知らずにッ!!!」

決壊したダムから水が流れ出る様に次々とオトギリの脳裏に鮮明に思い浮かぶ過去の旅での出来事。
オトギリが全ての悪を憎む様になった理由、悪党を狩り続ける理由。

気取る等ではない、本気で抱いた決意。

"悪ガキを気取る"。

その言葉はオトギリの怒りの導火線に完全に火を付けた。

「―――おい、そんなにジヘッドの口元が気になるのか?」

「ならもっと覗き込んだ方がしんかのきせきが良く見えるぞ。」

男を冷たい目で見降ろしながらオトギリは男にジヘッドの口の中をもっと覗き込む様に催促する。
直後、オトギリがその言葉を呟いた。
少年とは思えない冷め切った、そしてその男にも聞こえるかもわからない小さな声で。

「死ねよ、ゴミクズ野郎。」

「―――ジヘッド、りゅうのはどう。」

―――直後、ジヘッドの口内に集まる膨大なエネルギー。オトギリの怒りに呼応する様にそのエネルギーは凄まじいものだった。
一切の容赦も無くその男の目と鼻の先からりゅうのはどうが放たれた。
オトギリは思った。"この男は殺してしまっても構わない男だ"と。
277フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/28(土)23:59:26 ID:wjH
>>274

「おう。見させてもらったぜ!さっきのバトル」

そんな彼に話しかけてくるのは、民族衣装風の恰好をしたひとりの少年だ。
ピタヤより少し年上と思われるその少年、フロンはシティと逆方向からやってきた。おそらく冒険帰りかなにかだろう。

「ユレイドルか。古代ポケモンってのはいいよな、ロマンがあってよ!
 ま、見る限り若干扱いには困ってそうだけどな?」

自分も手持ちのひとつのモンスターボールを指先で撫でながら。

彼自身も化石を復元させてゲットしたポケモンを持っている。
そのことが少年とそのポケモンを気に留める理由となったのだろうか。

「訓練ねえ。具体的には何か案でもあるのかよ?」

俺としちゃあ実戦あるのみだと思うけどな、などと言いながら何が楽しいのか大きな声で笑う。
困った様子のピタヤとは随分対照的だ。
そしてそれは他人事だから、というわけでもなさそうで。どうやらこれが彼の性質らしい。
278ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)00:10:48 ID:H03()
>>277

『ぷにぷにー』

少年の前にランクルスが挨拶してくる。ゼリー状の鎧からぬぽっと本体を出して一礼。
ピタヤはユレイドルの体にこびりついた植物の汁を丁寧に拭き取り、きずぐすりを拭き掛けて回復させる。

「ええ、ゆらゆらは昔から少々血の気が強くて……ユレイドルに進化すれば少しは大人しくなってくれると思っていたのですが」

『ゆらっり』

ユレイドルはこんな風体をしているが肉食である。
8本の触手で相手を絡め取り消化液で溶かして食うというかなりエグい生態をしている。
故に彼に与えるフードも肉食用の物を与えなければならないらしいが……

「そうですね……なるべくバトル中だけでも言う事を聞いてくれるといいんですが」

『ゆら・・・ゆら・・・』

ずりずりと這いずってきたユレイドルはフロンの持つモンスターボールの中身を気にしている。
先ほどのバトルでは物足りなかったのか、それとも単に古代ポケモン同士で何かしら引き合うものがあるのか。
279エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/29(日)00:22:34 ID:3yj
>>276
「何を思ってたって?」

憤る少年と、吐き出されるりゅうのはどう。
男は片腕を前に出して防御態勢を取る。
とはいえ、普通はただで済むハズが無い。あのジヘッドのりゅうのはどうだ。普通であれば入院ものだ。
尻もちをつくように地面にケツを着ける。弾みで被っていたハットがぱさり、と地面に落ちる。

「そこら辺のチンピラよりはマシな覚悟してんな。」
「普通『殺してやる』って思っても行動には起こせねえ。その程度の勇気もねえ輩ばっかだ。」
「それに比べりゃ、随分立派なもんだ。悪党になりゃ一端の弾丸程度にはなれる。」

いてて、と言いながらも男性は目立った外傷は無かった。
先程波動を受けた右腕。服の一部が焦げ、地肌が丸見えになる。
そこから、無骨な、金属で出来ているであろう何かの装置が見え隠れする。あれほどの攻撃を受けていながら、装置そのものは傷一つついていない。

「だけどな、自分の行動の意味も正しく理解できねえ奴ぁ、やっぱり弾丸止まりだな。」
「三流じゃねえよ。お前さんは立派な二流だ。」

ふと、何者かがジヘッドの背中をちょんちょんと軽くつつく。
振り返ると、闇夜に金色の輪が浮かんでいるように見えるだろう。
月を思わせるそれは、げっこうポケモン、ブラッキーだ。

「フェンガリ、あくび。」

『くぁ~……。』

命令に合わせブラッキーはジヘッドに向かってあくびをする。
上手くハマれば、ジヘッドは眠気に誘われるはずだ。

男はゆっくりと立ち上がる。
暗闇の中でもハッキリと見える、潜在的に相手を怯えさせる彼の目が少年を捉える。
280フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)00:34:28 ID:nWq
>>278

「お、おおう……ランクルスってそこから顔出せたのな。ちょいビックリだぜ」

こっちのランクルスはよく躾けられている。この少年の育て方が悪いわけではなさそうだ。
なんてことを思いながら、ランクルスには手を振って。

「残念ながらそうはならなかった、ってワケだな」

それならば、生まれ持った性格なのだろう。
ある程度は仕方ないとはいえ、制御に困るレベルであるならばトレーナーとして改善しなくてはならないというもの。

「そういうことなら協力するぜ!」

言いながら先ほど撫でていたモンスターボールを勢いよく放り投げる。
ボールが開き光とともに現れるのは、ツンドラポケモン、アマルスだ。

『るるぁぁぁ―――――!』

アマルスはゆっくりとした動きで首を持ち上げると、準備万端だといわんばかりに高く声を上げる。
281オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)00:45:49 ID:sTq
>>279

「―――舐めるなよ、死にぞこない。」

ザン、と一歩前に出るオトギリ。
ニット帽の下からその男を殺意に満ちた強い眼差しで睨み付けた。

「お前みたいなクズを、いや、この世の悪を滅ぼす"刃"であれば俺はそれで十分だ。」
「二流でも三流でも構わん、俺はお前らを屠る刃ッ!!それでさえあれば良いッ!!」
「例え下衆だろうが屑だろうが!!貴様らを葬り去る力さえあればそれで、それで十分だッ!!!」

閑寂な路地裏に少年の怒号が響き渡る。
男の煽りはオトギリの感情を見事なまでに逆撫でした。怒りに呑まれたオトギリは息を荒げながら男を睨む。

―――直後、ジヘッドの足取りが覚束なくなった。

「「グ、グガ……」」

パタリ、とその場で意識を失うジヘッド。オトギリはジヘッドの背後に立つ影に目配せする。
其処に立っていたのは金色の輪―――ブラッキーだ。
オトギリは男に視線を戻した。

「……不意打ちか。」

オトギリは俯いた。
審判も居らず定まったルールも無い状況。益してやこの無法地帯。一匹のポケモンしか使えないというルールは必ずしも厳守しなくても良い。
二匹以上のポケモンが手持ちにさえ居れば、交代で代わりにそのポケモンを繰り出せただろう。
―――だが、オトギリの手持ちのポケモンは今はジヘッド一匹。交代は出来ない。

「――……何処までも、何処までも」

「俺の感情を逆撫でするクズめ……――!!!」

沸々と湧き上がる怒り。血が滲む程に強く握られる握り拳。
男のその目を怯えるどころか、強い怒りを含んだ眼差しで睨み返すオトギリ。

「―――ッらああああああああああッッ!!!!」

ジヘッドが昏睡状態で戦えないのならば自分が、と、オトギリはその男に殴りかかった。

大人と子供。
その体格差は歴然である。
オトギリがどれだけポケモンバトルで実力を付けようと、所詮は"子供"なのだ。
282ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)00:49:01 ID:H03()
>>280

『ユラァ……ユラ……』

「そうですね……これから先ゆらゆらを使う場面は結構増えてきますし……」

『ぷにっぷにぷに』

ランクルスも訓練には賛成なようだ。腕組をしてうなずいている。

「そうですね、このピタヤ、ふつつか者ながらお相手致します。」

ピタヤも先のランクルスのように一礼する。
すると、戦闘スイッチが入ったのか、頭から覗くユレイドルの目?のような部分がぎらっとアマルスを睨み付けた。

「ユラァ……ッ…」

ユレイドルはまずその触手でバコッ、と地面を蹴った。
ユレイドルの体が宙に浮き上がり、ハンマーを振り下ろすように弧を描く。
そして、アマルスの脳天目掛けて……重い身体をズドォン!と叩きつけた!

「ゆらゆら、まずは飛ばしすぎない事です。的確に相手を狙ってください」

『ユラリ…』
283フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)01:09:24 ID:nWq
>>282

「おう!俺はフロン、氷使いフロンだ!」

名乗り合うと同時に戦いのゴングが鳴る。
相対するユレイドルが意外なほどにアクロバティックな動きを見せると、

「距離を取るぞ、前進だ!」

『るぁぁぁ―――!』

鈍重な四足歩行のアマルスの身体構造は後退には不向きだ。
ゆえに、どんな時も退かない。振り降ろされるユレイドルの体を掠めるように潜って回避。

「続いて行くぜ!アマルス、でんじはだ!」

『るるぁぁぁ――――!』

ある程度の、触手が致命傷にならない程度の距離を取ると、振り返り際にユレイドルに向けて電磁波を放つ。
当たれば麻痺して動きが鈍ることだろうが、果たして。
284エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/29(日)01:20:59 ID:3yj
>>281
パシっと乾いた音が響く。少年の拳は男の頬に届いていた。
しかし、男は表情一つ変えない。ただ、その双眸はしっかりと少年を見据えている。

「自分本位なものの見方しか出来ねえのは仕方ねえ。ガキだからな。」
「自分が正義でそれ以外が悪に見えるのも仕方ねえ。ガキだからな。」
「自分の力を見誤るのも仕方ねえ。ガキだからな。」

男は帽子を拾うと、ゆっくりと被りなおす。
そして、どこか残念そうに、長い長い溜息を吐く。

「大人を舐めるんじゃありません。」
「フェンガリ、『しっぺがえし』」

『ふるる!!』

命令を受けたブラッキーが、後方からオトギリの後頭部目掛けて突進する。
攻撃向きのポケモンでは無いとはいえ、人間が食らってしまえば相当なダメージだ。

「何の意味も無くまた楯突いてみろ。」
「次は無え。」
285ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)01:30:35 ID:H03()
>>283

『ユラァッ……』

ユレイドルの上空からの攻撃は不発に終わる。その上で、背後から麻痺を喰らう。

「焦らない事です。逃げる場所はなるべく広く。仕掛けにいく時は……確実にです。」

「原始の力」

地面から、ボコッボコッと複数の石や岩が飛び出てくる。
それらは原始の力の紫の波動を纏って、宙に浮き――――

『ユ……ラッ!』

そのまま高速で打ち出すようにアマルスに飛んでいった。

『ユラララ……』

ユレイドルは力を蓄えている。
麻痺を喰らった状態では動きを殺されると判断したのか、後手に回り何か策を練っているようだ。

『ぷにぷにぷに、ぷにっぷにぷにに?(なるほど、原始の力を呼び覚ましてパワーアップを狙う作戦ぷに?)』

ランクルスが何か解説しているようだが、人間の耳にはぷにぷに言っているようにしか聞こえない。
286オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)01:35:55 ID:sTq
>>284

―――その拳は届いたが、案の定の結果だった。
感情を逆撫でされた、され続けた挙句。男から発せられた言葉はオトギリの正義を否定する言葉。
オトギリは歯が折れんばかりに噛みしめ、男を睨み付ける。

「……それ以上口を開くんじゃねぇよ。」

「このク―――」

―――再び殴りかかろうとしたオトギリの右頬に鈍い痛み。
後頭部を狙った攻撃はオトギリが殴り掛かる為に身体を傾けた事で頬にクリーンヒットした。
歯が飛んだ。血が壁に飛沫した。

半ば白目を剥いたまま突き飛ばされ、オトギリはフレンドリィショップの看板に顔面を強打した。
たらたらと血が流れる。ニット帽は衝撃で吹っ飛んでいった。

然しオトギリは未だ意識を失っていなかった。

「―――このまま食い下がってたまるかよ」

最早意地で立ち上がると、血塗れの顔で男を睨み付けた。
額から垂れる血が入り右目はあまり見えていなかったが、それでもオトギリは右目を閉じなかった。
震える身体。恐怖ではない、怒りだ。

「―――お前は俺の決意を、俺達の決意を侮辱したッ!!俺とネイティオの約束をッ!!」

「アイツが死ぬ前に、俺とアイツが交わした約束をッ!!!」

血塗られた鬼の形相で獣の様に怒号を上げる。
痛みは吹っ飛んだ。

「―――ぶっ殺してやる、お前は絶対に許さないッッ!!!」

オトギリは文字にも起こせぬ奇声を上げながら男に再び殴り掛かった、忠告を一切無視して。
敵う筈も無い。
だが、オトギリは再びその男に懲りずに殴り掛かる。
287エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/29(日)01:56:48 ID:3yj
>>286
再び。オトギリが殴りかかってくる。
男は瞬時に腰に掛かったボールを投げると、一匹のポケモンが姿を現す。
かつては伝説とさえ呼ばれたポケモン。ドラゴンポケモン、カイリューが、オトギリのパンチを腹で受ける。

「ラウト、少年にげきり……。」

『ガウ?』

「いや、『でんじは』だ。」

男は一瞬言いよどむと、改めて指令を下した。
カイリューは壊れ物を扱うかのように、弱弱しい電流を口から放つ。
でんじは自体に殺傷能力は無いが、ポケモンの動きさえ鈍らせる電撃、食らえばしばらくはまともに動けまい。

「いいか、坊主。」
「お前が誰と何を交わしたかなんか俺はまるで知らねえし興味もねえ。」
「だがな、過去の約束に縛られて今の仲間をほったらかしなんざ。」

「今のお前は俺以上のクズだよ。」

オトギリが振り向けば見えたかもしれない。
眠りこけるジヘッドの隣に立ち、臨戦態勢を取るブラッキーの姿が。

「フェンガリ、今日は見逃す。戻れ。」

『ふるる……。』

「ラウト、そらをとぶ。」

『ガウ!!』

男はモンスターボールの中にブラッキーを回収すると、カイリューの背に飛び乗る。
カイリューは翼を大きくなびかせると、その巨体を上空へと持っていく。

「次までにその性根、ちったぁ治しとけよ。そうすりゃ、次はまともに相手してやるかもな。」
288フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)01:58:47 ID:nWq
>>285

「アマルス、いつもよりテンション高いな?動きがいいぜ、いいことじゃねーか!」

古代ポケモンを前にしているからか、普段に比べて気合いの入っているアマルスに声をかける。
アマルスもそれに応じるように再び鳴きながら頷いて。

「原始の力、と来たか。いい手だ!」

これは持論だが、麻痺を浴びた次の動きにはトレーナーの我慢強さが表れる。
すなわち、気持ちだけが前のめりになってパートナーポケモンの痺れる体に鞭を打たせるのか、或いは一旦落ち着かせて何らかの方法で状況に対処しようとするのか。
その点、攻撃とパワーアップを同時に狙うピタヤの指示は賞賛に値する。特に、ユレイドルに我慢するということを教育しようとしている現状では正解にほど近いものだろう。

「だがよ!こっちだって見ているだけじゃあねーんだぜ!
 アマルス!こごえるかぜで吹っ飛ばせ!」

『るるぁぁぁ―――!!』

アマルスは頭部のヒレが波打たせながら、口から冷気を吐き出す。
冷気は飛来する岩石の勢いを弱め、その大半を地面に叩き落としながらその発生源、ユレイドルへと襲い掛かる。

『る、るぅ―――……!』

墜落せずにアマルスまで届いた岩もあり、氷タイプのアマルスに少なくないダメージを与えていく。
それでも凍える風を選択したのは、言うまでもない。その効果によりユレイドルの素早さを奪い、パワーアップより先に機動力を削いでしまおうという狙いだ。
思ったように動けなくすることでユレイドルのフラストレーションを蓄積させる。まずはそこからだ。

「悪いな、アマルス……耐えてくれよ!」

進化前のアマルスはさほど体力に自信があるわけではない。ダメージが蓄積しすぎる前に次のステップに進みたいところだが……。
289オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)02:11:18 ID:sTq
>>287

「―――。」

降り掛かろうとした、その勢いのまま全身が硬直した。でんじはだ。
前方へと倒れ、顔面を強打する。オトギリの顔を中心に広がる血溜まり。
声も発せない。だが、その男の言葉の一つ一つは耳に届いていた。

脳神経が焼き切れそうになる程の憤り。

そして極め付きは最後の言葉。『今のお前は俺以上のクズだよ。』その言葉がオトギリの怒りを最大限に高める。
呻き声にも近い声を上げながら、オトギリはじたばたともがいた。地を這い、その男の足元へと向かう。
だが、その男の身体はオトギリの視界から消えた。

上空から聞こえる声。

―――逃げられた。

最後の方の男の言葉は微塵もオトギリの耳には届かない。
オトギリは怒り狂い、その場で唯々呻き声を上げていた。

代わりに聞こえたのは足音である。一人、二人。そんなものではない。

何十、何百もの足音である。

此処は治安が悪い地域。そこでこれ程の騒ぎ。人が寄って来ない筈もない。

「……へへへ」

そして不幸にも寄って来たのは数多のバッドボーイ達。
彼らは皆、オトギリの悪党狩りで痛い目を見て来た者達だった―――。

「俺達はおめぇには痛い目に遭わされたからよォ。倍にして返してやろうと思って集めて来たンだ。
覚悟しろよ?正義を振りかざすヒーロー気取りの”クズ野郎”。全員満足するまでまで帰さねぇからなぁ。
行くぜテメェら!!!掛かれ!!!」

先頭に立つ男の声を皮切りに一斉にオトギリに襲い掛かるバッドボーイ達。
刃物、バット、縄。
中にはポケモンも混じっていた。

(―――すまない、ジヘッド――コロトック――ネイティオ――)

チャンピオンになるという夢は果たせなかった。自分が正義だと思ってやって来た事が全部帰って来た。
所詮はエゴだったのだろうか。
オトギリは瞼を落とした。


―――上空からはオトギリに群がるバッドボーイ達が微かに見えるだろう。
暴力の限りを尽くされるオトギリの姿は彼らに埋もれて見えないかもしれない。
290ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)02:22:48 ID:H03()
>>288

冷気の風圧は草タイプのユレイドルにはかなり堪えるだろう。
ユレイドルとしては今すぐにでもアマルスに掴みかかりたい所だが……

『ユ……!ラ……!』

麻痺と冷気で機動力を削がれている状態では、上手い具合に触手を動かせない。

『ユラユラユラ……!』

ビキビキと青筋が浮き出、ユレイドルの頭に血が上り始めているのが目視でも分かる。
こうなってからがトレーナーの腕の見せ所だ。ピタヤはその糸目をまだ開かない。
猛るポケモンを抑えてこそ、優位なバトルを運ぶことが出来るのだから。

「抑えなさい、ゆらゆら。キミの体の状態はキミ自身が一番よく分かるでしょう」

『ユラララ……!!!』

あくまで気を伺えと場を動かさないピタヤにユレイドルはイラつきを抑えられていない。
途中までは凍える風に防御体制を取っていたのだが、触手をぶんぶんと振り回し、麻痺している身体を何とか動かそうともがき……

『ユラァッ!』

風が緩んだ瞬間、再び脳天へ飛び上がった。あの重いスタンプをもう一度打ち付ける気だ。

『ぷにー、ぷにぷに……(あーあー、言わんこっちゃない)』

「……まぁ、喰らって覚えさせるのもアリでしょう……」
291エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/29(日)02:39:12 ID:3yj
>>289
にわかに地上の方が喧しくなってきた。
彼に恨みを持ったチンピラたちが、ここぞとばかりに集まってきたらしい。

「あーあ……。化けたかもしんなかったのに。残念だ。」

『ガルル……。』

ふと、カイリューが上昇を止め、その場でホバリングを始める。
男は眉をひそめ、ポンポンとカイリューの頭を叩く。

「どうした?早く帰ろうや。」

『ガルル……。』

「あの坊やが?仕方ねえよ因果応報だろ。」

カイリューは何かを渋るようにその場を動かない。
下では鈍い音が響いている。どうやら制裁は既に始まっているらしい。
カイリューは振り返ると、何か言いたそうに男を見つめる。

「……。」

『……。』

「……わぁーったよ!!分かりました!!!ラウト、ぼうふう!!」

『ガルウ!!』

カイリューは地面に向かって急展開しながら、翼を大きく振り、チンピラの集団に強力な風を巻き起こす。
チンピラたちやそのポケモンは、叫び声を上げながら倒れていく。
その渦中に、先程までの少年が倒れているのが見える。
292エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/29(日)02:40:53 ID:3yj
>>289>>291
「カイリュー、お前さんはジヘッドを!!」

男はカイリューの背から飛び降りる。勢いを殺すように2,3回地面を転がると、倒れている少年を抱え上げる。

「ナンダテメーオラーッ!!」
「スッゾコラー!!」

「うるせえうるせえ!!俺だってこんなことしたかねえ!!」
「ガズモ!!『えんまく』『くろいきり』『スモッグ』!!なんでも構わねぇからさっさとしろぉ!!」

『マータドガーース!!?』

突然繰り出されたマタドガスは、謎の指令に戸惑いながらも、自身の噴出口から黒色のガスを周囲に吐き出す。
狭い路地裏故、ガスは一気に充満し、辺りは何も見えなくなる。

「よし!!さっさとズらかるぞ!!」

男はオトギリを抱えたまま再びカイリューの背に飛び乗る。
カイリューが大きく羽ばたいた。

ガスが消えた時、そこにはチンピラたちだけが残されていた。
路地裏には、まるで何もなかったかのように何の証拠も残されていなかった。

その日の明朝、近くのポケモンセンター前で、傷付いた少年とジヘッドが、出勤してきたジョーイさんにより保護された。
293フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)02:50:12 ID:nWq
>>290

「おうおう!やっぱ根競べは苦手だよなあ!
 だがよ、さっきより身体が重いだろ!そんな状態で飛び上がったらな―――」

再び宙へ舞い上がるユレイドルを仰ぎながら、口の端を吊り上げる。
企てがうまく行ったことを意味する、悪い笑みだ。

『る、るるぅ――!』

ユレイドルが飛び上がる行動に移行したことで原始の力による攻撃から解放されたアマルスが、まだまだやれるとばかりに声を上げる。


「恰好の的だぜ!アマルス、オーロラビィィーーム!」

『る――――るるぁぁぁ―――――!!』

指示を下すと、アマルスのヒレが淡い緑白色の光を放つ。
そして甲高い鳴き声とともに、極光の光線が、飛び上がったユレイドルに向けて放たれた。
294オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)03:00:40 ID:sTq
>>291
>>292

―――目を覚ました時にはオトギリは病室に居た。
何やらチューブの様なものが繋がれているのが見える。

『正義を振りかざすヒーロー気取りのクズ野郎』『死ねッ!!』
『地獄に堕ちろ!!』

『今のお前は俺以上のクズだよ。』

「―――ひっ……!!!」

オトギリは脳裏にフラッシュバックした光景に両目を見開き、頭を両手で押さえた。
14歳の少年には余りにも過酷過ぎる体験。オトギリは震えが止まらなかった。
瞼を閉じた後、後頭部や右腕、腹部。下半身は何度もやられた気がする。全身に継続的に続いた鈍い痛み、鋭い痛み。
全てが嫌な程鮮明に思い出される。罵声罵倒の嵐。彼の人生を否定するあの男の言葉。
オトギリは震えた。例え身体は治ろうと、僅か14歳の少年に植え付けられた恐怖は見事にその心を破壊したのだ。

―――不意に風が吹き、窓が揺れた。

「―――うわああああああああああああああ!!!!!」

オトギリはベッドから転げ落ちる。その際に点滴が幾つか抜け、オトギリの皮膚に血が滲んだ。

「どうしましたか!?」

病室に飛び込んで来るジョーイさん。

「―――あいつらが!あいつらが!!」
「大丈夫です!唯の風ですから落ち着いて、落ち着いて……!」

ジョーイさんが必死に宥める。だが、オトギリはそれでも尚暴れ続けた。
自己を正当化して己の正義を振りかざし続けた、その報いなのだろうか。そのベッドの下でジヘッドが必死に鳴いていた。
だが、オトギリが落ち着く様子は無かった。叫び、暴れ続けた。

病室に飾られたグラシデアの花は、もう枯れていた―――。
もうすぐ、夜が来る。
太陽は沈みつつあった―――。
295オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)03:00:50 ID:sTq

「―――何が、一体何があったら僅か14歳の少年がこんな目に……」

ジョーイさんがカルテを片手に病室の前で立っていた。
病室の中では奇声を上げる少年を必死に彼のポケモンが宥め続けている。

「……あら、この子のポケモン……。」

ジョーイさんがカルテを見ていると彼のコロトックについての情報が目に入った。
上の階の病室で入院しているコロトック。どうやらそのトレーナーらしい。
ジョーイさんは胸を痛めた。……とてもではないがあの姿をコロトックには見せられないだろう。

現にジヘッドは彼の姿を見て非常に心を痛めているに違いない。
そして、トレーナーを守れなかった自分を責めているに違いない。
……言葉はわからないが、ジヘッドの様子から想像するに容易かった。だからこそ、胸が痛んで見ていられなかった。

コロトックにまで同じ思いをさせる訳にはいくまい。

(……何で、こんな事に……。)

涙を流しながら、ジョーイさんはオトギリの病室の前から早歩きで立ち去った―――。
296ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)03:15:48 ID:H03()
>>293

『ユラァッ……!!ユラッ!?』

光を放つ冷気と共に、バチィッ!と胴体ど真ん中にビームを喰らったユレイドル。
宙に上がっていた体は体制を立て直せず、そのままアマルスの目の前に崩れ落ちる。

『ユ……ラ……!』

「ユレイドル、じこさいせい。」

『ユ……ユララ……』

どちらかと言うと、ユレイドルは積み技と回復手段に富んだ耐久寄りのポケモンだ。
いくら弱点とはいえ、進化前ポケモンの技で落ちるほど柔くはない。
だからと言って、こうも肉弾戦ばかりをしたがるユレイドルというのもかなり珍しいものである。

「一本取られましたね、ゆらゆら―――技を喰らうにも場面というものがあるでしょう?」

「確かに他のユレイドルよりアグレッシブな動きはできるキミですが、少々攻撃として用いるには、欠けるものが多い。」

「そういう点を補いつつ、キミらしく戦えるやり方があるはずです……さて、フロンさんと言いましたっけ?そちらのアマルスはまだやれそうですかね?」

ユレイドルに回復行動を取らせつつ、ピタヤは帽子をくいっと上げ、継戦の是非を聞く。是であれば、ユレイドルは再び攻勢に転じるだろう。
297フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)03:41:57 ID:nWq
>>296

「今ので落ちねえか!さすがはユレイドル、ってとこだな」

機動力を奪って作った隙に攻撃を完璧に当てる。アマルスの必勝パターンだ。
それでも耐えてしまうのだから、流石というほかはない。

「ったく、ユレイドルってのはもっとこう搦め手メインで立ち回るポケモンなイメージなんだけどな」

ギガドレインにねをはる、こうごうせいにじこさいせい。
高い防御力と豊富な回復技をベースに、しめつけるやまとわりつく、ステルスロックなどの搦め手で此方の自由を奪ってくる。
ユレイドルとはそういったポケモンだと記憶している。ここまで飛んで跳ねてを繰り返す個体は相当珍しいものだ。


「おう、勿論行けるぜ。
 けど作戦タイムはそんなもんで大丈夫かよ?今しっかり教え込んでおかねーとまた同じことの繰り返しだぜ?」

『るうぁっ!るうぁっ!』

アマルスもまだまだ元気だと上下に首を振ってアピール。
ただ、再開するにあたってこの位置は近すぎる。今のうちに再び間合いを取ることにして。
298ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)21:09:34 ID:8Nc
>>297

「ええ、伊達にユレイドルに進化するまで育ててませんからね!」

『ユララ……ユラ……!』

痛恨の一撃を喰らいながらも、まだ彼の闘志は潰えていない。
ユレイドルは麻痺に触手を痺れさせながらもその重い頭をもたげアマルスを睨みつける。

「ゆらゆら。ワンモアチャンス、というやつです!今度は決めますよ!リバウンド、ターンレフト!」

『ユラッ……!』

彼の触手と頭が驚くほど長く伸びたかと思うと、ズガッ!と八本の触手が地面を掴む。
そして、アマルスの手前で地面を掴んだ触手が、その伸縮で一気に距離を縮める。

「タネマシンガンでなぎ払うのです!」

『ユララララララララ!!!』

勢いに任せた攻撃をしないよう、ピタヤは遠距離の攻撃を主体に攻勢をかけさせる。
近距離の一撃を、タイミングの合うときまで使わせないように、慎重に、しかし大胆に、盤面を動かす。
299フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)21:26:45 ID:kXP
>>298

「そうでなくっちゃあな!アマルス、迎え撃て!」

『るるぅっ!』

距離を詰めに来るユレイドルと、そこから放たれる連続攻撃。
アマルスにとって弱点の攻撃だ、全段命中すれば残りの体力を一気に持っていかれてしまう。

「もう一度こごえるかぜ!」

『るるぁぁ―――!!』

ゆえに、先ほどと同様に凍える風で迎撃。
先ほどと違うのはダメージの蓄積具合だ。原始の力によってアマルスが受けたダメージは凍える風の威力を低下させている。
結果、タネマシンガンを跳ね除けた後、ユレイドルに届くころにはその勢いは以前より和らいでいて。
回避することも不可能ではないだろう。ユレイドルが冷静さを欠いていないのならば、の話だが。
300ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)21:51:45 ID:8Nc
>>299

「ゆらゆら、サイドへ!そのまま側面を取るのです!」

ピタヤは直進一辺倒だったユレイドルを、触手の伸び縮みを駆使して回り込ませる。
タネマシンガンを打ちながら旋回するユレイドルは、凍える風の風向きの対角線上にガガガッと旋回する。

その瞬間、アマルスの土手っ腹に割り込むようにタネマシンガンを打ち込みに来るだろう。

「ゆらゆら!今です!」

『ユッラァ……!』

間合いを取り直そうとしたアマルスの足に、伸びる触手が絡み付きにくるだろう。
粘性の体液は獲物に接着した途端、糊のように固まり、相手に「まとわりつく」かもしれない。

『ユラ……ユラ……ユラ……』

そして、残る数本の触手が……アマルスに硬い拳の形を取って狙いを定める。
ピタヤのユレイドルのオリジナル、触手の百裂拳の構え。

「僕としては……ゆらゆらのファイター的側面は生かしたいのですよ」
「不意を付く事以上に……彼がそれを楽しいと思うのなら!」
301スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/29(日)22:22:21 ID:779
夜風が凪いだ。昼間は騒がしい程に賑わう公園も夜ともなれば静かなもので、ただそこに佇むだけで街の息遣いを感じ取れる。
今宵感じる風は───何処か不安を感じる良くない風だった。

「胸騒ぎが止まらない───」
「この街に何かが起きているのか、もしくは……」

「……もしくは、そろそろ反省会の時間だから皆が僕を探しているからかな?」

夜風に吹かれ、特徴的なマントを揺らして佇む男は一人呟いた。
今日の公演を終えて、そろそろブリーフィングの時間が来る、少し外の空気を吸って来ると抜け出して来て何分くらい経っただろうか。
もう少ししたらメンバーが恐ろしい形相で探しに来る所だろう、そうしたらどうしよう、何処か隠れる場所を探しておくべきか。
302フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)22:26:51 ID:kXP
>>300

「くっ……!逃げろアマルス!」

接近を許せばどう考えても不利なのはこちらだ。
触手を用いて小刻みに方向転換をしながら旋回移動するユレイドルに技を当てるのは困難と判断し、こちらから逃れる命令を下す。

『る、るぅっ!』

そうした動きでタネマシンガンを回避するが、続く触手に対応しきれず後脚を拘束されてしまう。
当然だ。アマルスというポケモンは決して素早さに優れたポケモンではないのだから。

「アマルス!オーロラビームをぶち込め!」

捕らえられてしまえば進化前ポケモンの力で引き剥がすことは叶わず。
出来ることといえば至近距離からオーロラビームを放つくらい。
しかしそれも弱弱しい最後の抵抗のようなもの。まとわりつかれて更にスリップダメージを加えられれば、あとはユレイドルの手のひらの上だ。


そして、問題はここからともいえよう。
奇しくも現状は先ほどのバトルと酷似。ユレイドルからすれば対戦相手をダウン直前まで持ち込み、マウントを取った状態だ。
この状況でもトレーナーの指示に従うのか、或いはそのコントロールを離れてひと暴れしてしまうのか。
303オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)22:32:35 ID:sTq
>>301

―――夜の公園は昼の顔とは打って変わって非常に閑寂なものだ。
とは言え、この街ではポケモンバトルが盛んで、遥か遠方には微かにトレーナー同士バトルをしている姿が見える。

「―――ここなら大丈夫かな、オトギリ君。」

「―――。」

虚ろな表情、周囲の雑音にも一切反応せずに、オトギリは車椅子に座ったまま唯々俯いていた。
彼が入院してから少し経つ。だが、様態は改善するどころか悪くなる一方だった。
今の彼は完全に廃人と化していた。
最早ポケモンを使役しチャンピオンを目指していた頃の少年の面影は無かった。

「……何か、思い出した?」

遠方に見えるポケモンバトルをしているトレーナー達の姿を眺めながら、ジョーイさんは車椅子を止めた。
車椅子に座るのは病衣を着たオトギリ。少し髪が伸びたかもしれない。
以前と比べて酷く痩せていた。

ジョーイさんの問いかけにオトギリは一切答えず、虚ろな目で唯々俯いていた。

「――――あなたも、ポケモントレーナーの方なんですか?」

暗い表情でジョーイさんはその奇抜な身形の男に問うた。

「「……。」」

その足元には一匹のジヘッド。然し酷く窶れている。
足取りは重い。その奇抜な身形の男の方に顔をわずかに傾けた。
前髪の様な体毛の隙間から微かにサザンドラに見られる赤い瞳が覗いた。
304ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)22:51:10 ID:8Nc
>>302

『ユラァァァッ!!!』

じこさいせい分の体力が、至近距離のオーロラビームで持っていかれてしまう。
しかし、ユレイドルの特殊耐久はそれを抑えてまだ有り余る闘争心を、絡め取ったアマルスに向けていた。

『ぷにぷに……ぷに……』

ランクルスが心配そうに見つめている。それは彼と共に幾日もバトルを見てきたが故の心配。
そう、この状態でマウントを取ったユレイドルは加減を知らないからだ。
うみゆりポケモンが如く根に持つタイプなのか、浮かんだ青筋や無機質な表情はアマルスには空恐ろしく見えただろう。

固まった体液を重石にして、触手の拳が振り下ろされる―――その寸前。

「―――ゆらゆら!」

「……昔からこのポジションに付いたキミが負ける場面はそうありませんでしたよね。」

『ユラ……ユラ……!』

今すぐにでもラッシュを決めさせろ、と言わんばかりの眼光が、ピタヤを睨みつけている。

「ですがこれはキミを「抑える」訓練です。キミの獲物は進化前で、しかも同胞の相手。」
「「手加減」というものを、見せてくださいね」

ピタヤは、糸目を微かに開けて微笑み、後の展開をユレイドルに一任した。

『ユ……ラ……』
『ユラ……ユラ……ユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラユラ!』

ドガガガガガガガ!!!と地面が抉り取られる。土飛沫が舞う。百裂の触手は容赦なく―――
アマルスの「周り」へ振り下ろされていた。

『ユラァッ―――――ユラリ』

ユレイドルが直接的に当てたのは、その最後の拳。
拳を緩め、アマルスの額に、触手のぷにっとした触感を感じる程度の打撃だった。

「………そうです。それでよいのです」

ピタヤは心底納得した様子で、完全に一本決まった勝負に静かにうなずいていた。
305スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/29(日)22:54:30 ID:779
>>303
さて、そろそろ他の場所へ移動して追手の目を撒こうか……などと考えていた所で、車輪の音が近づいて来るのに気付き眼を向けた。
ジョーイさんに押される車椅子に乗った少年、眼は虚ろで生気は無く、彼女の言葉にもまともに答えない。
だが、確かにその顔にスパーダは見覚えがあった、たった数日前に会っただけの彼の顔を確かに彼は覚えていた。

「……えぇ、そうです」
「……彼は一体どうしたのですか?何処か怪我でも?」

ジョーイさんに声を掛けられ、スパーダは静かに頷き、トレーナーである事を肯定する。
真剣な眼差しで、オトギリとジヘッドを見つめ、そのただならぬ様子を問い掛けた。
306オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)23:06:11 ID:sTq
>>305

「……酷いものです。」

ジョーイさんは暗い表情で呟いた。
スパーダとの面識はあるであろうオトギリだが、その声には微塵も答える気配が無い。
やはりぼんやりと膝元を眺める限りである。

―――身体の各所に打撲、内出血の跡。右腿の複雑骨折、鎖骨骨折、左目は失明、一部内臓の機能不全。
加えて睾丸は完全に潰されていた。第二次性徴真っただ中の少年からそれが無くなるとホルモンバランスの崩れによる精神不安定が懸念される。
ジョーイさんは外傷の惨さを思い出していたら思わず吐き気を催しそうになった。

「……本当に当時の状態は酷いものでした。」

「先日私がポケモンセンターの前に倒れているのを発見したんです。」

「恐らくは集団リンチに遭ったものか、と……。」

思わず涙を零す。
この少年には身寄りも無いらしい。
連絡を取ろうとシティのデータベースから調べてみたが、彼の両親は数年前にロケット団が起こしたテロで既に死んでいた。
―――今までずっと一人で生きて来たのだ。
その境遇も相俟ってその不幸を嘆かずにはいられなかった。

「……貴方、この子の事を何かご存知ありませんか?」

ジョーイさんが小さな声で男に問うた。
トレーナー同士の横の繋がりが広いこの街。もしかするとこの少年、オトギリについて何か知っているかもしれない。
そこに回復の糸口があるのではないだろうか。
そう思っての問いだった。
307フロン◆lSQnfoNoJk :2018/04/29(日)23:10:16 ID:kXP
>>304

『る、るる……ぅ…』

拘束されて今にも倒れそうになりながらユレイドルに覆いかぶさるように襲い掛かられれば、当然のごとくアマルスの表情は恐怖に歪む。
一方のフロンは腕を組んで、やや険しげな表情でその様子を見守っていた。

そしてピタヤと名乗った少年がユレイドルを説得し、そしてユレイドルの方もそれに応じる姿を確認すると。

「おう、参った参った!こっちの負けだぜ、完敗だ」

そう言って左手をひらひらと振りながらユレイドルとその傍らで目を白黒させているアマルスへ近づいていく。
そしてアマルスの頭を軽く撫でて「お疲れさん」と声をかけると、右手のモンスターボールへ回収するのだった。

「いい勝負だったぜ。そんで、どうやら目論見通りいったみてーだな?」
308スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/29(日)23:26:43 ID:779
>>306
「………………」

ジョーイさんから聞いたオトギリの症状を聞き、スパーダは無言で顔を彼方へと向けた。
恐らくは表情を見せまいとしたのだろう、同情とも怒りとも取れぬ感情を、僅かにでも表情に浮かび上がらせるのを悟られまいと。

「そうか……君はまだあの場所で…」

以前にオトギリと会い、バトルを行なった場所は街の中でも治安が良い場所だとは言えない場所であった。
加えて彼のあの様子、恐らく相当な恨みを買っていただろう事は想像に難くはない。それを自覚出来なかった、若しくは自覚しつつも辞めなかったオトギリにも責任はあるのだろう。
だが───だとしても、バトルでの恨みをトレーナー個人にぶつけるなど、容認して良いものか。

「……いえ、僕は彼の事は何も知らない」
「ただ一度バトルをしただけで、彼の事を憶測で語る事は出来ません」
「ただ……あぁ、そうだ」

「───君達は、チャンピオンを目指していた、そうだろう?」

ジョーイさんの問い掛けにスパーダは静かに首を振った、初対面ではないが、オトギリの事を物知り顔で語れる程の仲ではない。
だが、彼が力強く宣言した夢と、ポケモンに対する思いだけは確かに知っているつもりだった。
虚ろなオトギリに、まだその夢は胸の中に埋もれていない事を願うように問い掛ける。

「……君はこの子のポケモンかな?」
「…コロトックは元気かい?」

そして、傍にいたジヘッドにも、目線を合わせるように膝を曲げ、優しい笑顔で問い掛けた。
あの時戦ったコロトックのダメージは凄まじいものだった、この場にいないという事はまだ回復もしてないのだろうと、そう思い。
309ピタヤ◆mMItnivpDI :2018/04/29(日)23:37:41 ID:8Nc
>>307

『ぷにー(安堵の表情)』

「よくやりましたよ、ゆらゆら」

ピタヤもユレイドルを引き戻し、再度布で拭いて手入れする。
バトルが終わった後のユレイドルは、盆栽か何かのように微動だにせず、ピタヤの手入れを受け入れる。
まるで、さっきまで飛んだり跳ねたりしていたのが嘘のようだ。

「古代ポケモン同士だからこその情が湧いたのかもしれませんが……珍しく僕の顔を立たせてくれる勝ち方をしてくれました。」

「ゆらゆらには収穫のある試合でした。ありがとうございます」

ユレイドルをボールに戻すと、ピタヤも帽子を脱いで深々と礼をする。

「そうそう……近頃、この街ではポケモンを使った違法行為が増えていると聞きます」

『ぷにっぷに(これをどーぞ)』

ランクルスがフロンになにやらカードを取り出す。名刺のようなものだろうか?
フロンは ピタヤの連絡先 を 手に入れた!▽

「僕はちょーっとこの街で、とある一件を探っていましてね……
顔を隠した集団がポケモンを使って何かしているような所を見つけたら、どうかご一報ください」

ピタヤは、その細い切れ長の目で不敵に微笑んでいる。
サイキッカー風のゆったりとした服装が風に揺れていた。
310オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/29(日)23:49:07 ID:sTq
>>308

「……そうですか。」

ジョーイさんは作り笑いをした。

「チャンピオンを目指していたんですね、この子は。」

チャンピオン。多くの少年少女が一度は夢見るであろう、その地方のポケモントレーナー達の頂点に君臨する者。
この少年もまた例外では無かったのだ。

「「……。」」

ジヘッドは俯いて彼の問いかけにも一切答えようとはしない。

「……この子のコロトックは今は重篤です。今朝から意識が無いんです。」

「怪我は治ったんですが、相当前から悪性のポケルスに感染していたみたいで……。」

ジヘッドの代わりにジョーイさんは益々暗い表情になって答えた。
スパーダのキリキザンとのバトルによる怪我も、、アキのサンドパンとの戦いの怪我も、メユリのラグラージとのバトルによる怪我も一切関係が無かった。

あのコロトックは何時からか、悪性のポケルスに身体を蝕まれていた。
だというのに無理をしてオトギリとバトルを続けていたのだ。それが災いしてポケルスの進行を早めた。
あまり考えたくもないが、今のままでは命はそう長くは無い。

遠方、ジョウトのタンバシティで手に入る名薬さえあればコロトックは助かるだろう。
だが、そんなものは此方では滅多に手に入らない代物だ。第一、ジョウトまで買いに行く猶予も無いのだ。

「……っ……!」

ジョーイさんはその場で膝から崩れ落ちた。

「……こんなっ、こんな事に……!何で、この子だけ……!」

「主治医と、話し合った結果、明日の朝には、人間用の精神病棟に、移されるんですっ……!」

ジョーイさんの口から告げられる事実。
主治医の判断にジョーイさんは反対したが、ポケモンセンターはポケモンの治療を専門とする機関だ。
人間の精神病患者を診る程の余裕は無かった。
いつか、オトギリが暴れて他のポケモンを傷付けるかもしれない。そうなってからでは遅い。

冷酷に思えるかもしれないが仕方の無い事だったのだ―――。
311スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/30(月)00:14:12 ID:0sx
>>310
「…………」

何と答えるべきか、スパーダは言葉に詰まっていた。
眼を閉じ、聞いた顛末を回想して噛み砕くも、例え何を言おうと事を好転させられるとは思えない。
不幸そのものが彼を襲っているとしか思えない、どこまでも残酷な人生。

スパーダは自分の無力を呪った、普段からあんなにも他人を楽しませようなどと謳っているのに、今一番必要な人間にそれが出来ない。
本当に楽しみを思い出させるべき少年に、言葉の一つすら掛けられないのだから。
これが無力と言わずして、何という?

「少年───」

名も知らぬ少年に、スパーダが何か声をかけようとした、その瞬間。
スパーダの持つモンスターボールが一つ勝手に開き、その中から一匹のポケモンが飛び出した。

「……ザン」

「キリキザン!?一体どうし……」

突然の事にスパーダが驚くのも束の間、飛び出したキリキザンはズンズンとオトギリのもとへと歩み寄ると、その手で病院着の胸倉を掴み上げた。

「……ザン…!!」

グイ、と顔を寄せ、鋭い眼差しでオトギリの顔を覗き込むキリキザン、その表情は何かを言いたげに、視線が訴えかけている。
312オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)00:31:17 ID:yay
>>311

――――掴まれ、車椅子から引き離されるオトギリの身体。
だが、オトギリは微動だにもしない。然しキリキザンの瞳をオトギリは無意識に覗き込んだ。

鋭い眼差し―――。
宿る闘志―――。

『今のお前は俺以上のクズだよ。』『正義を振りかざすヒーロー気取りのクズ野郎』

『―――死ね』

「―――うわああああああああああああああッッッ!!!!」

オトギリがその瞳で思い出したのは、嘗て彼が持っていた闘志や熱いバトルの数々では無かった。
あの男の言葉、彼に暴行を加えた男達の言葉。
胸倉を掴まれたままじたばたと、動かぬ身体でもがいた。オトギリの奇声が公園中に響き渡った。

「落ち着いて!オトギリ君っ!」

ジョーイさんがオトギリを抱き締める。だが、オトギリは一向に落ち着く気配が無い。

「「グオオオオ、グオオオオ」」

足元でジヘッドも彼をなだめようと必死に鳴いていた。
だが、やはりオトギリが落ち着く様子は無い。ジョーイさんは震える手で懐から薬を取り出す。

キノガッサの胞子。
睡眠薬として使われる事の多い即効性のある粉末を人間様に調整し、錠剤にしたものだ。

ジョーイさんは暴れるオトギリの口に錠剤を放り込んだ。
直後、先程までの様子が嘘の様にオトギリは寝息を立て始める。ジョーイさんはオトギリを車椅子に座らせた。

「……驚かせてしまってごめんなさい。これが、今のこの子なの。」
「集団リンチの記憶が頭から離れないみたいで、些細な事が引き金になって思い出されるみたい。」
「……キリキザン、あなたは何も悪くないわ。驚かせちゃってごめんなさい。」

暗い表情でジョーイさんは苦笑いした。
彼のキリキザンに視線を合わせる様に中腰になると、満面の作り笑いをして一言詫びた。
ジヘッドが俯く。もう嘗ての面影の無い主人を悲しみ、静かに涙を流していた。
313スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/30(月)00:51:58 ID:0sx
>>312
キリキザンは確かにオトギリの瞳を覗き返した、その中にあるのは以前のようにギラついた闘志ではなく、恐怖に染まった光無き瞳であった。
揺らぐ眼差し、焦点の合わない目で暴れ出したオトギリを、しかしキリキザンは決して離さなかった。
何も言わぬまま、何もせぬまま、ジョーイさんに鎮静されるまで手を離さない。

「キリキザン!いきなりどうしたんだ?」

突然飛び出したキリキザンと、混乱した様子のオトギリに驚きを隠せない様子でスパーダが駆け寄る。
キリキザンの手をオトギリから離させて、落ち着いたオトギリの顔を覗き込んだ。

「……そうか、余程恐ろしい目に遭ったんだね」
「すみません、僕のキリキザンが辛い事を思い出させてしまった」

謝るジョーイさんに、スパーダもまた申し訳なさそうに謝罪を返す。
突然の事とは言え、知らなかったとは言え、これは自分のポケモンがやった事、トレーナーが謝るのは当然の事だ。

「ほらキリキザン、君も───」

そうして、キリキザンにも直々に謝罪を促した、その瞬間である。

───キリキザンが再び、オトギリの胸倉を先程よりも強く掴み上げ、車椅子から無理矢理引き剥がす様に地面に打ち捨てようとした。

「なっ───キリキザン!?何をしているんだ!!」

「        ザ        ン        !!」

一度あんな事を起こしておきながら舌の根も乾かぬ内に同じ事を繰り返そうとするキリキザンを、流石のスパーダも慌てた様子で止めようとする。
だが、キリキザンはそれでも止まらない、帰ってくるのは恐ろしい眼光と、反論をバッサリ断ち切るような一喝だけだった。
314オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)01:04:52 ID:yay
>>313

―――キリキザンに引き剥がされたオトギリは何一つ抵抗せずに地面に伏した。
キノガッサの胞子が効いているのだろう、微塵も反応を示さず、唯々寝息を立てるばかりだ。
ジョーイさんも掛ける言葉が見付からない様子でキリキザンを見ていた。

「……」

寝息を立てるオトギリ。

「「グゴオッ!!」」

二人の間に割って入る様にジヘッドが飛び込む。
必至に吠えている。種族が違うとは言え、同じポケモンだ。言葉が通じるかはわからない。
だが、「もうこれ以上オトギリを傷付けないでくれ」と訴えていた。

オトギリは土に汚れながらもお構いなしに寝たまま呻きながら仰向けになる。
ジョーイさんがオトギリを抱き抱えた。

「「グゴオオオ!!」」

―――ジヘッドは「これ以上やるのなら俺を倒してからやれ」と必死に訴えている。
然し彼はストレスにより殆ど眠っていない、疲弊しきった身体故にまともに戦える状態ではない。
仮にキリキザンが攻撃すれば容易く倒れるだろう。

「ごめんなさい、お願い、争うのはやめて……」

ジョーイさんが涙を流しながら詫びる。オトギリの身体を持ち上げて、再び車椅子に座らせた。
これ以上此処に居てもこの二匹の争いが始まってしまいかねない。

「……そろそろセンターに戻りましょうか。」
315スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/30(月)01:27:23 ID:0sx
>>314
「…………」

地面に倒しても起きないオトギリを、キリキザンは「これでも起きないのか」とでも言いたげに、忌々しげに見下ろした。
ならば痛みで叩き起こしてやらんと拳を振り上げた時、目の前にジヘッドが割り込んでくる。

「……ザン?」

ジヘッドの悲痛な叫び、彼が何を思い叫んでいるか、キリキザンにはよく分かった。
当然だろう、傷付き弱った主人を守る為に身を呈する、美しい主従関係だ。

「───ザン!キル!!」

〝───「反吐がでるんだよ、甘ちゃん共が」〟

「キルキルキルキルキルキル!!!ザン!!」

〝寄ってたかって袋叩きにされた?相棒が傷付いている姿を見るのは辛い?もう戦いたくない?〟
〝ふざけるんじゃねぇ、そんな腰抜け共にオレは負けたのか、一度決めた事を死ぬ寸前まで守る覚悟もない奴等に敗北したのか。〟
〝まだオレの復讐は終わっていない、あのコロトックを完膚無きまでに叩き潰すまで、例え死んだとしても勝ち逃げは許さねぇ。〟

「ザンッ!!キルッ!!」

〝そのボケトレーナーとクソコロトックが起きたら伝えておけ。〟
〝テメェら勝手に折れて勝手に逃げてんじゃねぇってな。〟

ここで弱ったジヘッドを倒しても何も変わらない、その判断がつくくらいにはキリキザンは冷静だ。
いや、だからこそタチが悪い、冷静さを持ちつつこんな行動に出たのだから。
彼が何を言っているかは同じポケモンであるジヘッドにしかわからないだろう、しかしスパーダはそのニュアンス自体は察しているようだった。

「キリキザン、もう辞めるんだ」
「……重ね重ね申し訳無い、このキリキザンは以前彼のコロトックに負けていてね…少し思う所があったみたいだ」
「…少年、僕は……」

キリキザンの肩を叩き、落ち着かせる様に語り掛けてからスパーダはオトギリの顔を見つめる。
今の彼の為に何が出来るだろうか、きっと自分はキリキザン以上に何かを揺さぶる事は出来ないのだろう。
316オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)01:53:15 ID:yay
>>315

「「……」」

ジヘッドは何も言い返さなかった。いや、言い返す気力も無かった。
今の言葉がオトギリには届いていない事。そして人間とポケモンが異なる言語を喋っている事に感謝していた。
静かに頷くとキリキザンに背を向けて一人、ポケモンセンターの方角へと歩み始めた。

「……ジヘッド。」

去って行くジヘッドの姿が酷く弱弱しく見えた。そこにはらんぼうポケモンと呼ばれるジヘッドの面影は見られない。
キリキザンはプライドが高いポケモン。過去に一度この少年に敗北しているという事を踏まえると彼が言っている事も想像はついた。
ジョーイさんはキリキザンの方へと歩み寄るとにこりと笑った。

「大丈夫ですよ。きっとあの二人は良くなる。」
「どうか、少し待ってあげて下さい。彼に時間をあげて下さい。彼は……あの二人は……少し走り過ぎて疲れているだけです。」
「また元気になったら前みたいにバトル出来るようになりますから、きっと―――。」

にこりと笑い、そう告げるとジョーイさんはオトギリが座る車椅子の所まで戻った。
スパーダの方を向き直す。

「……急に声を掛けてすみませんでした。」
「最後に、誠に勝手ながらも一つお願いがあります。どうか、この子の事を覚えていてあげて下さい。」
「この子には一人も身寄りがいません。閉鎖病棟に入ると、社会からこの子の存在は隠されてしまいます。」
「……だから―――」

「―――だから、この子の事を忘れないでいてあげて下さい。頑張って来たこの子の事を。
それだけでもこの子は報われると思うから……。」


「……失礼しました。
私はそこのポケモンセンターに勤務しております。またポケモンセンターでお会いしましょう。」

涙を拭うとジョーイさんは一礼し、車椅子を押しながらその場を立ち去ろうとした。
317スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/30(月)02:10:46 ID:0sx
>>316
「えぇ……忘れませんよ、忘れる物か」
「少年、前にも言ったね、君とまたバトルがしたいと」
「きっとまたバトルをしよう、その時を待ち望んでいるよ」

ジョーイさんの願い、オトギリという少年の事をいつまでも心の中に留めておいて欲しいという彼女の言葉。
スパーダは頷き聞き入れる、彼の事を決してわすれはしないと、そして願わくばまたバトルがしたいと。

そうしてスパーダは車椅子を押すジョーイさんの背中を見守る、キリキザンは黙ったまま、そちらの方を一切見ようともしなかった。

「キリキザン……」

「……ザン」

オトギリ達が去った後、キリキザンを気遣うように声を掛けるスパーダ、キリキザンは静かに苛立ち混じりの声で答え。
腕を一振り、街路樹を真っ二つに切り落とした。
ただの八つ当たりだ、まだ治らぬ怒りを何かにぶつけたくなった。

「……………」

そんなキリキザンの気持ちはよく分かる、やり切れない思いを抱くのは自分も同じだ。
スパーダはただ黙って、夜の空を見上げた。
318オトギリ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)02:22:44 ID:yay
>>317

―――翌日、『ナナイタシティR地区病院』と掛かれた看板が付けられた門の前に一匹のジヘッドが立っていた。
その後ろには暗い表情で俯くジョーイさんの姿があった。

「……貴方はどうするの?」

ジョーイさんの問いかけにジヘッドは答えない。唯、病院の方をじっと見つめたまま。
それが彼の答えだった。

「……待つのね。」

ジヘッドの決意。一体何時、あの病院から出られるのかもわからない。
それでもジヘッドは変わらずに、主人の帰りを待つのだ。

「……。」

もう何て声を掛ければ良いのか、ジョーイさんにはわからなかった。自分にはたまに毛布を持って来たり、食事を与えたり。
そんな事しか出来ない。それが彼にしてあげられる精一杯だ。彼を救う言葉を掛けてあげる事は到底出来ない。
ジョーイさんの表情は暗かった。

「オトギリくん―――。」

『またいつか会おう』。そういう再開の願いを込めて、人は『またね』と言う。
ジョーイさんに出来る事と言えば、またオトギリと再会する事を、元気になったオトギリがジヘッドと再会する事を唯々願う事。

「―――またね。」

ジョーイさんは涙を堪えながらジヘッドに背を向けると、病院を後にした。


―――もうすぐ昼が来る。もうすぐ夜が来る。もうすぐ夏が来る。もうすぐ秋が来る。冬が来る。

季節が幾ら移り変わっても、ジヘッドは変わらずそこに居た。主人の帰りを待ち続けた。
319キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)19:24:21 ID:Ta6
ナナイタシティ・ウエストストリート近郊:寂れた旧市街地。治安は悪め。

「ンッダックォラテメコラ!」
「ッンノカテメッタココラ!」

ドラム缶の焚き火、そこら中に散らばった古タイヤや鉄屑、イキる不良達。
嘗ては繁栄を極めた旧市街地も今ではすっかりシャッター通り。
あちこちにカラーギャングのポケモンアートが描かれたなんともストリートスタイル溢れる地域だ。

バーガーショップから出てきたのはまだ少女といった風体のパーカーの少女。
後ろにはみのむしポケモンのフォレトスがゴロゴロと重い身体を転がしながら付いてくる。

「(……フォレトスってハンバーガーみたいよね)」

『ガコッ・・・ギギッ?』

「あんたは駄目。共食いだから」

『ギゴッ?』

「このへんって昔からこんなんだったっけ?最近は更に荒れてる気がするわね……ま、どうでもいいけど……もぐ」
320ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/04/30(月)19:33:58 ID:9PP
>>319

「あぁっ!待ってください!それは僕の当面の生活費……!」

高笑いして、札を数えながら歩いていく不良とすれ違うだろう
そのあとを追っていた青年はやがて立ち止まり、諦めのため息をついた

「……何みてんのさ」

別に見てないかもしれないが、悔しい気持ちがそんな因縁ぽい言葉を吐かせたのだろう
321キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)19:48:04 ID:Ta6
>>320

「ん、見てただけ」

ミニスカートの少女は、目の前で旅費をカツアゲされるバックパッカーを冷めた目で見ている。
この地区で無用心に歩いていれば当然の顛末だろう。無用心にしている方が悪い、という態度で。

「そもそもバックパッカーが来るような通りじゃないし、トラベルガイドも見れないようじゃ甘いわね……もぐもぐ」

半分独り言気味にハンバーガーを頬張って青年の横を通り過ぎる。

『ゴッ……ガシャッ』

「この地区で身を守るポケモンの一つくらい持ってないようじゃ、病院送りになっても文句言えないわ。」

『ゴロゴロゴロ……ジーッ……ゴロゴロゴロ』

フォレトスは無機質な表情で項垂れる青年を見つめていたが、すぐにまたゴロゴロと少女の後を追う。
322ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/04/30(月)19:58:00 ID:9PP
>>321

「持ってるよ、でも、脅しみたいには使いたくないんだ。道具じゃなくて旅の仲間だからね
どこでもいくからバックパッカーなの、どうしてもここを通らなきゃならなかった。嫌な予感はしてたんだけどね」

青年は見るからに頼りない、体もひょろついているし眠たげな眼がボケてる感じの顔にくっついてる
人間相手にオラつくのは難しいがポケモン相手ならそうでもないぞと言わんばかりに

「頭から決めつけてくれてるけど、そんなに言うならバトルしてみる?」
323キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)20:17:40 ID:Ta6
>>322

「うわ、早口で喋るタイプのオタク」

煽り全一。付いてくるや否やそんな風にまくし立てられたらそんな感想も出るかもしれないが。
空き地のパイプの山に腰掛け、ポテトをフォレトスに与えながら暫しの休憩。
一方で青年の方はバトルを持ちかけてくる。

「……甘ちゃんにも程がないかしら。この地区の警察は恐喝程度じゃ相手にしてくれないわよ?」

少女としてはまるで温室育ちの典型例を見たような印象だった。
都会暮らしに慣れていないのか、唯のバカなのか。

「ま、いいわ。暇だし。一戦くらいなら交えてあげる。"フォートレス"」

『ガゴッギ』

「……食べきる内に勝てたら、ハンバーガー一個くらいは分けてあげる」

『ゴリゴリゴリ』

フォレトスは重い鋼の殻をこすり合わせ、ウォーミングアップをし始めた。
324ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/04/30(月)20:30:43 ID:9PP
>>323

「いちいち煽ってくるのやめてよ……。まあキミの言うことにも一理あるけどね。金がなくても生活はできるしそんな気にはしてないよ
やられたときはショックだったけどね」


年下の少女にいいように言われてもため息一つで済ませる程度には優しいらしい
本人は

「……結構久々だな。鈍ってないと良いけど」

モンスターボールと言うのは投げるのが通例だが青年はよっこいしょと膝をついて丁寧に地面に置いた上でボタンを押す
ボールが開くが……何も出てこない

「……無用な心配だったかな、『しんげん』」


しかし青年は嬉しそうにそう呟いた
出てこなかったのではなく、ボールのなかで力を溜め、解き放つように高速でフォートレスの側面に一体のグソクムシャが移動していたのだ

『グァシュァァァッ!』

「『であいがしら』」

フォレトスの殻と殻の間に鋭い爪を叩き込み力一杯こじ開けようとするだろう
325キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)20:50:36 ID:Ta6
>>324

『!!?』

ガキン!!!とフォレトスが反射的に殻を閉じる。
防御を取ったというよりは、中身に手を出されることを嫌った本能的な動きだ。
鋭い爪をひっかけるグソクムシャに、殻をこじ開けられまいと、必死に抵抗する。

「……いいポケモン持ってるじゃない」

「ああいうバカ共にはね、力を見せびらかす位が丁度いいのよ。」

「だからあたしもフォートレスはボールに入れない。だって分かるでしょ?一目でボディガードって。」

『……ゴリッ』

外殻がグソクムシャの爪をがっちり押さえたまま、赤い色をした内殻が開き、その視線を見せる。
フォレトスは、怖気づいている訳ではない。ちゃんと準備していたのだ。

『ズガガガガガガガガッ!!!!』

殻の隙間から、「ミサイル針」を至近距離で放つために。
326ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/04/30(月)21:04:32 ID:9PP
>>325
「やだよ。ああいう手合いほど変に勝つとあとが面倒なんだ」

ミサイル針が放たれた次の瞬間だった
腕を引き抜いたグソクムシャの体は再び背中から吹き出した水によって加速し加速度を得る
至近距離で放たれた針の合間を縫うように通り抜け、再びフォレトスの至近距離に肉薄する
わんぱくな性格なのか、ごちんとその殻に額をぶつけてニヤついた
かすったミサイルがわずかに横腹を削り取っていたが、意にも介していないようだ

「『アクアジェット』、からのー」

再び鋭い右腕が振り上げられ

「『アクアブレイク』」

噴出する水の勢いを借りた強烈な打撃がフォレトスを吹き飛ばそうと襲いかかった
327ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)21:08:40 ID:yay

『―――本日は此方、シティ西部の広場に取材に来ております。』
『ご覧下さい、広場はこの時間でもトレーナー同士のバトルで白熱しており―――』
『―――トレーナーの一人にインタビューをしてみましょう。すみません!』

『……?』

『すみません、バトル中失礼します!テレビ局の者ですけどインタビューを―――――』

『今日は非常に好調とだけ言っておきましょう。っと、そろそろ決着が着きそうだ。』

『ありがとうございま……キャッ……』

―――突如吹きすさぶ凄まじい猛吹雪。カメラにはその中を悠々と歩く一匹の闘牛のシルエット。
そのシルエットの下には傷だらけになってぐったりと倒れるボーマンダの姿。

『ブモオオオオオオオオオオオオッ!!!!』

広場に響き渡る叫び声。電波障害により、中継は途絶えた―――――。

「―――やれやれ、まさかインタビューを受けるなんてな。ケンタロス、オボンのみだ。次のバトルに備えてたんと食えよ。」

今も尚トレーナー同士のバトルが繰り広げられる広場から少し離れた公園に先程インタビューを受けたトレーナーが居た。
青の帽子にジャケット、黒のジーンズという出で立ちの青年である。彼の名はガイセイ。
彼は籠一杯のオボンのみをケンタロスの前に置くと、ポケットから取り出したオボンのみを彼の傍を飛んでいるライチュウに投げた。

「ほらよ。」

「ライラーイ♪」

ライチュウがオボンのみをサイコパワーの様な力でキャッチする。この辺りでは珍しい、アローラのリージョンフォルムのライチュウだ。
普通のライチュウよりもぶよぶよと太った体型が特徴である。
ガイセイは懐からシルフカンパニー製のバトルサーチャーを取り出した。便利なものだ。この機械があれば対戦希望か否か周囲のトレーナーに知らせる事が出来る。
ケンタロスが食べ終わるのを確認すると、ガイセイはバトルサーチャーの設定を対戦希望に設定した。

「……さて、今日はもう三戦くらいやるか。行くぞ、ライチュウ、ケンタロス!」

彼は指をポキポキと鳴らすと公園に用意された対戦用フィールドの所定の位置に立ち、自分がバトルサーチャーで発信した情報を見たトレーナーを待った。
時刻は夜。公園は静寂に包まれていた。だが、騒がしい広場に比べれば幾分かバトルに集中出来る。少なくともさっきみたいな横槍が入る事も無い。
さぁ、彼に挑戦するトレーナーは―――?
328エイジ :2018/04/30(月)21:23:49 ID:RN8
>>327

 「ーーーよぉ、、あ。」

 公園の暗がりから、真っ赤な髪の青年が藪から現れては素っ気ない態度で、鋭い視線で睨み付ける様に髪を揺らせば、木の葉が1枚ヒラリ、と。舞い落ち一度元の場所に戻る。
片手には、ポケナビが光を灯し懐中電灯代わりとして機能している。

 ごほん、と。態とらしく咳をすれば仕切り直しとして、ガサガサ、と。再び現れ『よぉ。』と同じく声を掛ける。


 「おい、お前“強い”のか? ……ま、どっちでもいいけどな」

 「おい…!ーーーやるからは“本気”で掛かってきなッ!」
 「俺の『強さ』…。他の奴等とは一味も二味も違うぜッ!」

あかがみの せいねんが しょうぶを しかけてきた▼

 瞳を薄く閉ざし、高まる鼓動を押し殺せば神経を奥深くまで研ぎ澄まし、野生の獣の様に、カッ、と。瞳孔を見開き。モンスターボールを構える。
弧を描く様に投げられたモンスターボールは、一度バウンドし眩い白き閃光に包まれると。“浮遊霊の様な黒き影”が顕現する。

 『……。』

 フィールドに現れしは、手招きポケモン“サマヨール”。
 その姿はまさに不気味の一言である。それ故に、独特の威圧感が場を制す。

 ーーー特性。“プレッシャー”。
329キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)21:30:54 ID:Ta6
>>326

「……別に、手当たり次第に喧嘩売れって言ってるわけじゃないのよ?。」

「連れ歩いてればそれでいいのよ。あんなバカ共でもポケモンで身を守ってる人間に手を出すバカはそう居ないから。」

『ズガガガッ!ズガガガッ!』

綺麗な三点バーストで、駆け抜けるグソクムシャを追い撃つ。
一方のグソクムシャもそれをあちらこちらと避け、バトルとしては見栄えのする動きをする。

『………』

フォレトスは動きこそ遅いが、振りかぶられる水勢はしっかり目で追っている。
ふと、ミニスカートの少女に目配せをした。

「……ま、たまに居るっちゃ居るんだけどね。フォートレス、『プランA』」

『ガゴンッ』

少女の口から、初めてフォレトスへ指示らしい支持が出された。ここまでポケモンの自主性に任せた戦闘をさせるあたり、信頼関係は並大抵のものではなさそうだ。
それは、アクアブレイクを真上から直撃したかに思えた瞬間だった。

『ズギュルッ……!』

中心を外し、殻の淵側にアクアブレイクが当たる。傾斜装甲の要領で、フォレトスは威力を殺しながらクルクルと回るように吹き飛ばされる。殻は欠けたが、急所には程遠い。
それは、その回転を維持したまま、凄まじい速度で放たれた。

「ジャイロボール、だったかしら」

『ギュイイイイーーーン……!』
330ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)21:38:46 ID:yay
>>328

「サマヨールか。ゴーストタイプのポケモンだな。」

(―――恐らくはしんかのきせきを持っている。タイプ相性的にも、此処はフーディンはこの戦いには向かない。)

(よし、ならば―――)

「行け、ケンタロスッ!!」

「―――ブモオオオオオオオオオオオオッッ!!」

ダン、と公園の砂を荒々しく踏み付けながら一匹のポケモンが場に繰り出された。
あばれうしポケモンのケンタロス。かなり気が立っているのか、サマヨールを見るや鬼の形相で睨み付けた。
サマヨールによるゴーストのプレッシャーに対しても全く怯える気配も無い。

「――――俺が強いか弱いか。それは戦ったら一発でわかるぜ?」

―――両者、ポケモンが出そろった。試合開始だ。

「ケンタロスッ、だいもんじ!」

ガイセイの命令と同時にケンタロスの身体が紫色の闘気に覆われる。
いのちのたま。
技の威力を高めるが、その対価として所有者から生命力を珠が奪うというハイリスクハイリターンなアイテムだ。

―――だが、ケンタロスの生命力は一切吸われる気配はない。

このケンタロスの特性は『ちからずく』。
ちからずくの効果により、一部の技はいのちのたまのメリット効果をそのままにデメリットを打ち消す事が出来るのだ。
加えてちからずくの技の威力強化。技の火力は元の威力と比べると桁違いなものと化す。

「―――ブモオオオオオオッッ!!!」

―――ケンタロスの口から巨大な火球が放たれた。
火球は徐々に「大」の字へと変形しながら真っ直ぐにサマヨールへと向かう。果たして―――。
331ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/04/30(月)21:43:30 ID:9PP
>>329

「『やるとなったらさ』……」


ため息し、いや、と首をかしげる。これは言って良いものか。少女の性格的にまた内弁慶のネクラオタクとかいわれそうだけども……

「……無事で済ませる自信がないんだ。キミくらいに強くないとね。何せボクのグソクムシャ、すごいわんぱくだから。一回始まるとなまなかな静止じゃ止まらなくなっちゃう
襲ってこなくっても襲いかねないから」

穏やかな青年の性格と相反してグソクムシャのしんげんは激しい性格をしているようだった
ジャイロ回転しながら向かってくるフォレトスに対しても全く動じる気配がなく、むしろ真正面から受けて立つ心意気の様だ
まさしく荒武者
甲殻の表面にびきびきと血管らしきものが浮き上がり両手を前につき出す

「いや、そこは避けろって……くそ、ほんとに言うこと聴かないんだからお前は……」

防御力はフォレトスに勝るとも劣らずのようだ

『グァシュァァァあああああああッ!!』

再びのアクアブレイク。
向かってくる的を狙い打つ様に叩き込もうとする
腕は無傷とは行くまい、それでもそうした
男比べでも挑んでいる気になっているらしい
相手の性別もわからないが
332エイジ :2018/04/30(月)21:56:47 ID:RN8
>>330

 「へっ!…飼い主によく似て吼えてらぁ。“弱い”奴程よく吠えるってな。」
 「せめて俺の心を滾らせてくれよなァ!」

 ーーートリックルーム!

 サマヨールが無言でゆらり、と。怪し気に揺れ動けば。サマヨールの身体から歪む様な波が波紋し『摩訶不思議な空間』が周辺の範囲に及ぼし発生する。

襲い掛かる猛火の焔が、ゆっくり、と。ゆっくり、と。遅くなっていくのが目に見える。

 ふわー、と。横にズレて躱すと。サマヨールは直ぐ様に両手を開いて空気を振動させれば、闇の瘴気が徐々に“丸い形”となる。 

 「シャドーボールッッ!!」

そして、凄まじい程のドス黒い『シャドーボール』がサマヨールの手前に発生すれば、地を削りながらもケンタロス目掛けて、放たれるだろう。
333キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)22:08:52 ID:Ta6
>>331

「……ふぅん、性格に難アリなのね。」

『ギャリルリルリリリリ!!!!』

フォレトスも負けじとグソクムシャの甲殻を削り取りにくる。
ぎざぎざした鋼の甲殻の破片はダイヤモンドカッターのようにグソクムシャの腕を切りつけていく。

同時に、再びアクアブレイク。回りながら受けるそれはやはり急所とは行かないが、着実にフォレトスの分厚い甲殻を削り飛ばすだろう。

そうした応戦が何度か続いた。当たっては弾け、当たっては弾け。
四方八方からジャイロ回転で襲い来るフォレトスと、それをはじき返すグソクムシャ。

「……ま、私から言わせれば、訓練不足なんてスラムじゃ言い訳にならないわ……よっと」

ハンバーガーの入った紙袋を退けたすぐ横を、フォレトスが掠める。
ビルの壁にギャリギャリギャリ!!!と派手に傷を付けながら、空中に高く浮いた。

『ゴシャンッ……』

殻を閉じる。再びジャイロボールを仕掛けてくると思いきや。

『ゴッ・・・ズズゥゥウウン・・・・・!』

フォレトスは意表を付いたように、”じしん”で、追い込みをかける。
フォレトスは手足がない分、非接触の物理技に恵まれている。そうした特性は、バトルスタイルにも強く現れる。

『ゴギ……ゴギ…』

只、この乱戦は流石にかなり体力を消耗したようだ。ちなみに彼はちゃんと♂です。

「……決まったかしら」
334ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/04/30(月)22:22:21 ID:9PP
>>333

フォレトスの着地点に追い討ちをかけようとしていたグソクムシャの表情が変わった
ニヤついていた表情が引き締まり、アクアジェットを前方にむけて発射
後方に滑るように退避し、直後にじしんの揺れが地面を割った

「昔はすごいおくびょうだったんだ。コソクムシって名前でね……
野生ポケモンとの闘いもすぐ逃げちゃってたし。その名残でまあ今でも危ないときは退いてくるからいんだけども、さ」

削れた爪を見てニヤリと笑い、ここまでかと察したように、自律的にボールに戻る

「しんげんはかなり自己判断が効くからね、変に人間目線からああしろこうしろと捲し立てるより勝手に暴れさせておいた方が強い
訓練は心配されずとも積んでるさ、キミはちょっと頭から決めつけるクセがあるみたいだな」

入れ替わるようにサンダースが飛び出してきた
グソクムシャは他のポケモンのボールに勝手に押し入ったようだった

『……び、ビジジッ!?』

「おちつきなえれき。もう終わったよ」

あわてて帯電を始めるそれを抱き上げて、肩に乗せる
こけおどしにもならないがたまにはボールから出しておかないと拗ねるのだ

「……ま、解ってくれたろ?以上の理由で僕はポケモンを一切自衛には使わないことにしてる。えれきはナイーブだしね」
335ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)22:24:15 ID:yay
>>332

「……。」

「―――。」

歪む空間、回避されるだいもんじ。放たれたシャドーボール。
―――にも関わらず、ガイセイは俯き、暫し黙って物思いに耽っていたかと思えば顔を上げた。
その顔には清潔感溢れる表情が描かれていた。

避けもせずに正面からケンタロスは迫ったシャドーボールを頭から受け止める。
その足が微かに後方へと下がった。
これ程のシャドーボール、直撃すればタイプ相性関係無しに危ういだろう。
―――が

「ブモオオオオオオオオッ!!!」

―――咆哮。同時に軸がズレてシャドーボールは飛んで行き、後方にあった木に衝突した。
消し飛ぶ大木。どんな攻撃も敵本体に当たらなければ意味は無い。

ケンタロスがやった事は攻撃の軸ずらし。シャドーボールの軌道を変えたのだ。

大木に巻き込まれ、いくつかの遊具が破損する。
ガイセイはそれを気にも留めずに両目を見開き、ゾっとする笑みを浮かべた。
この間ガイセイは無言だった。ガイセイが何も言わずともケンタロスは勝手にシャドーボールに対処する様に行動したのだ。
”弱い”奴程よく吠える。

「―――悪い、俺、ちょっと強いかもしれないな。」

「ケンタロス、ふぶき。」

―――ケンタロスの背後から放たれる局所的な圧倒的冷気がサマヨールへと襲い掛かる。
遅くなれど、冷気は冷気。範囲攻撃だ。これは果たして避けられようか。
336スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/30(月)22:44:43 ID:0sx
ナナイタシティの夜、街の灯りが人々を照らすその裏で、光の当たらない所も存在する。
総じてそう言った場所には隠し物をするのが最適で、何かを隠したがる者が導かれるのだ。

「───ああ、そうだ、シンオウの湖の───」
「───或いは……うん、そうだね…出来るだけ早くお願いできるかな」

街の裏通り、建物の壁に背中を預けながら何処かへと通話をする男がいた。
特徴的な仮面とマントは彼の印象を強く焼き付け、その不審な容姿と通話の内容から聞こえるワードは彼を不審人物とするには十分過ぎた。

「うん……感情を操る力があれば……わかってる……」
「それじゃあ……連絡を待ってるよ…」
337エイジ :2018/04/30(月)22:45:14 ID:RN8
>>335

 「やったか?…何ィ!?」

 軌道は逸れる事無く間違え無く。『対象』に直線を描いて、暗黒物質《ダークマター》の球体は、直撃を免れないだろう。
 しかし、エイジの思想とは裏腹に見事に軌道を逸らされ、直撃する事は無かった。

 「成る程、な。 …様子見なんか野暮な真似して悪かったなッ!!」
「だかよ、悪いがーーー俺の方が強い。思う存分暴れてやんよ!」

 エイジの顔付きが少しずつだが、変わって行くのが目に見えて分かるだろう。それ程にまで集中し真剣で戦っている。

 サマヨールの身体に、氷の礫や刃が切り裂き徐々にだがダメージを与えているーーーハズだが…?ダメージ力の割にまるで平気な面をしている。

 ーーーそれ程までに恐ろしい“防御”を誇り、そして持ち物の“しんかのきせき”の性能がマッチしている。

 「地獄の猛火…。浴びろ。ーーー鬼火っ!」

 銀世界に灯る“紫の焔”がサマヨールの両腕から揺れ放たられば、縦横無尽にケンタロスに襲う。
338キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)22:58:09 ID:Ta6
>>334

「決め付け?ハッ。貴方、周りの人間が皆ナントカタウンの善良な村人だと思ってるタチ?」
「ここらへんのバッドでバカな連中はね、そんなの理解してくれないってだけよ。」

彼女の目は、ひどく冷めていた。途轍もなく現実的で、希望を失ったような、そんな目だった。
キャスタナにとって、ポケモンは鎧だった。ボディーガードとしての盾でもあり、心の盾でもある。
硬く殻を閉ざしたような彼女の性格は、彼女に忠実に仕えるフォレトスの風体にそっくりだ。
彼女の生い立ちに何があったのかは想像もつかないが、彼女はそんな現実主義的な、ある種ニヒルな視線でロータを見ていた。

『ゴゴリゴリ……』

フォレトスの殻は、内側から再生されるらしい。
傷や穴の開いた古い殻をボロッと捨てると、真新しい鋼の殻の再生を待つ。

「別に貴方のポリシーには何も文句無いわ。」
「ま、試合としては見れたものだった。はいパイルバーガー」

パイプ管を降り、すれ違いざまにハンバーガーを一つ投げ渡す。パイルの身を挟んだポピュラーな軽食だ。
ロータを見つめる相変わらず冷めた瞳だが、同時に物悲しげな顔をしていた。
口元が少し和らいでいたように見えたのは気のせいだろうか。

『ゴロゴロゴロ………』

殻の再生したフォレトスも、ミニスカートの足元にくっ付くように転がって付いていく。

「……はぁ、そのまくし立てる喋り方で覚えちゃったわ。またね、オタクくん」
339ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)23:06:36 ID:yay
>>337

確実に当たったふぶき。ドラゴンタイプを屠る氷の刃、その息も凍て付かせる低温。
だが、サマヨールはピンピンしている。
案の定だ。

「しんかのきせきか。俺は好きだな、その道具。耐久特化のポケモンも大好きだ。」
「進化の可能性を捨ててそのエネルギーを肉体の強化に充てる。とは言え上がるのは耐久力のみ。」
「―――殺し放題。まるでサンドバッグだな。」

ニタリ、とガイセイは不気味な笑みを浮かべた。
直後、下る相手の命令。おにび。青白い、紫色の炎。

「おにび?おにびなぁ。」

すっかりその笑みが顔に染み付いたガイセイは少し困った表情で顎先に指を添える。
おにび。ポケモンをやけど状態にする技。……まぁ、ねむりだとかもうどくだとか。そんなのに比べれば。
火傷程度であれば良いだろう。どうせ物理攻撃なんざやったってあのサマヨールには効きやしない。

―――考えてみろ、第一相手はゴーストタイプだ。
どんだけ破壊力があろうとノーマル技何て効きやしないんだ。

「―――溜めろ、ケンタロス。」

ガイセイは回避の命令も一切下す事無く、ケンタロスに攻撃へ転ずる為の命令のみを下す。
刹那、周囲に激しい電撃が走った。破壊される電灯、照らされる公園。
だが、これは攻撃ではない。

―――直後、炎の雨がケンタロスに降り注ぐ。一つ一つが命中し、着々とダメージが蓄積される。

苦悶の表情を浮かべるも、ケンタロスはチャージを中断する様子は無かった。
おにびがすべて命中し終える直前、ガイセイの命令が再び下る。

「―――かみなり。」

命令と共に蓄積された電気が、一気に裁きの槍と化して天を穿った。
―――直後、地響きの様な音が轟く。地面から?否、天からだ。

「やれ!」

恍惚の表情を浮かべながら、ガイセイは叫んだ。同時に天よりサマヨール目掛け落下する一筋の光。
トリックルーム下ではあるが故にそのスピードは非常に鈍い。だが、確実に地面へと近付いていた。
さて、先程のガイセイの言葉。それはかみなりに対して発したものではない。
ケンタロスは既に次の一手を打っていた。

「―――でんげきは!」

ケンタロスが放ったのはでんげきは。相手の回避率関係無く等しい命中率で敵を穿つ技。
これはかみなりにより蓄積した電気、その残滓で放ったものである。
正面からはでんげきは、頭上からはかみなり。果たして、サマヨールはどう動くか―――。
340ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/04/30(月)23:06:40 ID:9PP
>>338

「思ってねえよ」

切り捨てるような一言だった

「だからきっちり訂正させて貰ってんだ
『決めつけんな』ってよ。ほっといたらそうなっちまうだろうが。お前こそどうなんだ?
自分の頭のなかでかんがえてるように他人が生きててくれるなんて甘い考えを抱いてるんじゃないのか?」

おっと、と口元を抑える

「良くないな。品がない――ま、僕は基本的に平和主義だからほら。多少の犠牲で場が収まるならそれでいいかなってそう言う話」

どうも、と、バーガーを受け取り、ぱくりとくわえる
粗食が基本のバックパッカー、こんなジャンクな飯でも食うと美味に思えてくるから不思議なものだ

「そのオタクくんっての辞めてよ。僕は取り立ててそう言う文化に精通してる訳じゃないし、画面のなかに映ってるものに変な感情を抱くほどアホでもないさ。僕にはロータって名前があるのさ」

まてまて、と言わんばかりに去ろうとする肩を叩いて

「で、キミは」
341マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/30(月)23:09:36 ID:yCU
>>336
夜のナナイタシティ。
様々な人間の思惑が交差するその場において、彼女は完全に『出遅れて』いた。

「何の組織か知らんけど、はよぉ足洗いや。」

『スパイ!!』

足元に転がるのは、アリアドスの糸で簀巻きにされ、口を塞がれたスキンヘッドと、グラエナ。
なんとか、とかいう組織の名前を叫んでた気はするのだが。

静寂の訪れた裏通りで、何者かの話し声が聞こえる。

「ん……?この声……。」

彼女はその声に覚えがあった。
ゆっくりと移動し、曲がり角からこっそりと覗くと、いつぞやの胡散臭い仮面が目に入る。

(仮面野郎やんけ……。シンオウ?感情を操る?あんまよう聞こえへんな……。)

少女は後ろをついてくるアリアドスに、シーっと合図を送ると、そのまま、スパーダの様子を探る。
兎にも角にも、彼女もこのナナイタを巡る攻防に巻き込まれることとなる。
342スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/30(月)23:21:14 ID:0sx
>>341
「さて、と……」

通話をやめ、端末をタキシードのポケットにしまうスパーダ、彼の事を見ている者がいるとは気が付いていないようだった。
……その代わり、マユズミから見て奥の方からスパーダに近づいて来る者がいた。

「おうおう兄ちゃん!随分とケッタイな格好しとるのう!!」
「ここが誰の縄張りか知っとんのか?オウ!?」

……何やらヤケにデカイ声の、ガラの悪い男に絡まれだした、マユズミの方からは何やら応対しているように見えるが───
やがて、ガラの悪い男の方がボールからスカタンクを出して攻撃を命ずる、スパーダはそれでも落ち着いた様子で話しているようだ。

───が、とうとうスカタンクが口からヘドロばくだんを吐き出して攻撃する、しかしスパーダはそれをヒラリと華麗に回避してみせた。
……回避されたヘドロばくだんが飛んでいくのは、偶然にも綺麗な放物線でマユズミの方向へ向かってである。
素早く回避するか防御をしなければ、直撃してしまうコースだ。
343エイジ :2018/04/30(月)23:27:06 ID:RN8
>>339

 「なーに、バトルの最中に何べらべらと喋ってやがんだァ!あ”ァ”?!」
「サンドバックだぁ? ……テメーの攻撃じゃ傷一つ付けら……ッ!?」

 荒々しい語彙から、熱気と熱意に包まれ身振り手振りと振り回す。ーーーエイジの悪い癖だ。熱くなると周りが見えなくなる癖があり、それは今回に限って顕著にみられる。

 鬼火がケンタロスの身体を蝕み、コンドハ確実に当たった。ーーーーハズだ。一瞬だが何か妙な、胸騒ぎが過る。
それは、『迸る電流。』気付いた時には既にサマヨールに命令していた。

 それは、長年の経験による“アイコンタクト”。口にするよりも伝達は早いが、絆が無ければ出来ない芸当だろう。

 襲い掛かる雷鼓の轟にサマヨールは大きく後退し幸いにも『トリックルーム』内のお陰で避ける事は可能だったが、その後に襲い掛かる第二波に、動いた直後に動ける訳も無く。
      『直撃。』

 静かに歪んだ空間は綴じ、そして同時にサマヨールは倒れる。

 「………戻れ。」

 静かにモンスターボールに戻される。
勝負は終焉である。
344マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/04/30(月)23:39:34 ID:yCU
>>342
ガラの悪いが鳴り声が辺りに響く。
どうやら仮面の彼にケチをつけているらしい。

(何を話しとるん……?あんまよぉ聞こえんな……。)

どうやらチンピラがポケモンを繰り出したらしい。スカンクポケモン、スカタンクだ。
少女はより様子を詳しく見ようと、角から壁を出す……。

と、目の前にヘドロばくだんが迫っていた。

「ちょっ……!?」

少女は咄嗟に体を回転させ、ヘドロを避けようとする。
しかし、スパーダの様に華麗にはいかなかった。反応が遅れてしまったためか、その足、丁度ふくらはぎの辺りにヘドロが当たってしまう。
酸性のヘドロが彼女の皮膚を焼く。

「いっつぅ!!?」

『スパーーイ!!?』

少女は足を抑え地面に倒れる。
咄嗟に彼女の前にアリアドスが立ちはだかった。
345スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/04/30(月)23:51:12 ID:0sx
>>344
ヘドロばくだんを回避したスパーダは、そこで漸くボールを手に取り構える…が、直後に背後から聞こえた悲鳴に振り向いた。
そこに居たのは一人の少女とポケモン、その様子を見て何が起きたのかを察したスパーダは、ボールをその場に投げてから一直線にマユズミの元へと駆け出した。

「やあお嬢さん、また会ったね」
「いきなりで済まないが話は後だ、こんな所に女の子一人で来るものではないよ」
「さ、そこのアリアドスも一緒に来るんだ」

そう言うとスパーダは笑顔を浮かべ、マユズミの体を抱え上げようとする。
抱える事に成功すれば、マユズミを抱えたまま表通りまで走って逃げようとするだろう。
チンピラとスカタンクの方は彼のエアームドが引きつけている、追い付かれる事は無さそうだ。
346キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/04/30(月)23:55:12 ID:Ta6
>>340

一瞬声を荒げかけたオタ……じゃなくてロータにただ見つめ返すキャスタナ。
物悲しげな困り眉はそのままだが、口元は少しニヤついている。
此処まで煽られてくれるともっとからかいたくなってくる。が、我慢。

「クスクス……そういうの"オタクくん(nardboy)"っていうの。」

……しきれなかった。
キャスタナには「平和主義」とやらが妙にツボに入ってしまって、可笑しくてそう挟んでしまった。

『ゴゴリゴリ』

駆け寄って肩を叩こうとするロータを訝しげに見つめるフォレトス。
けん制はするが、攻撃するほどでもない。あくまで彼は彼女の命令に忠実なだけだ。

「キャスタナ。――――忘れていいわ」

それだけ言うと、フォレトスはロータを棘で牽制しながら、彼女の後を転がっていくのだった。
347ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/04/30(月)23:58:24 ID:yay
>>343

―――ケンタロスが飛び掛かり、倒れたサマヨールに追撃を仕掛けようとした。
命を奪わんとするトドメの一撃。狂牛らしい判断だった。だが、その一撃はサマヨールがモンスターボールに戻った事で唯土埃を上げるのみだった。
この行動をガイセイは一切止めようとはしなかった。自分のポケモンは大事だが、他人のポケモン等どうなろうと知った事では無い。
それがポケモンバトル。命と命の奪い合い。それがガイセイの価値観だ。
冷ややかな目で対戦相手の男を見据える。

「―――さて、答えを聞かせて貰おうか。」

「『私』は"強かった"かな?それとも"弱かった"かな?」

ケンタロスをモンスターボールに戻すと、ガイセイはフィールドの対岸からエイジに問うた。
冷ややかな紅い目。先程とは打って変わり年配の男の様な低いトーンの声。
その胸からシルフカンパニー製のバトルサーチャーを取り出すと「対戦不可」の状態に切り替える。
次の対戦までにケンタロスを回復しなければならないからだ。

「―――まぁ、私はどっちでも構わんがな。」

「―――また私に挑みに来い。そのサマヨールはケンタロスの良い玩具になる。」

「―――ズタズタになるまで使い込んでやろう。壊れて、使い物にならなくなるまで。しんかのきせきも忘れずに持たせておけ。」

「或いは、一矢報いたいのならばそのサマヨールはヨノワールに進化させた方が"まだマシ"かもしれんな。」

敗者を見る強者めいた表情でガイセイはそのサマヨール使いに何かを投げた。
――"れいかいのぬの"だ。これでそいつを進化させてやれ、という事なのだろう。
それは相手に対する敬意でも慈悲でも無い、憐みによるものだった。

情けだった。

「―――。」

ガイセイはそれ以上何も言わず、唯々憐れむ眼差しを彼に向けると、彼に背を向け、歩み始めた。
348マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)00:06:16 ID:kOH
>>345
「へ?ちょ……!?」

いつもなら"あばれる"ところだが、足の痛み故か、それとも隠れて様子を探っていた気まずさ故か。あまり抵抗するでもなく彼女は抱きかかえられる。
しかし、言う事を聞かなかったのは、アリアドスの方だった。

『スパーーーイ!!!』

主人を傷付けたことへ腹を立てたか、エアームドの攻撃の隙を見て、相手のスカタンクに"とびかかる"。
そのままアリアドスは、エアームドに加勢することになる。
349エイジ :2018/05/01(火)00:16:11 ID:u1I
>>347

 「ーーーー“弱ぇ”」 
 「……俺は弱い…。」

 それは対戦者に対して向けた言葉では無く。己の弱さに対しての認識を改めさせる言葉であり、その言葉尻は微かだが震えてた様にも聞こえた。
 それ程までに『敗北』の二文字はエイジにとって“恐怖”の存在であり、油断すると目の前が歪む感覚を思い出し吐き気を催す程に。


 ーーーーいつからだろうか…。ここ迄強さに拘ったのは。確か、子供の頃に___。

 ぼんやり。
 微かに。
 朧げに。

 ーーー思い出す。

 「…っ…目で、……そんな目で俺を……っっ!」
 「……。」

 “サンドバック扱い”や”サマヨールを侮辱“した事よりも自身のプライドを傷付けられた事に、怒りが頂点を突破し殴り掛かる寸前に過呼吸で膝を折る。

 何か言いたいが、感情の逆流が喉元を侵し言葉を遮る。目の前に広がる耽美な布を一点だけ、ぼー、と。覗く。
350スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/01(火)00:17:36 ID:oYf
>>348
『ぬおぉぉっ!?なんじゃお前ら!?』
『二対一とは卑怯じゃろうが!!えぇいここは引くぞスカタンク!!』

エアームドとアリアドスの猛攻を受けて怯んだスカタンク、突然の乱入に驚いたチンピラはスカタンクをボールに戻し退散を始めた。
チンピラを退けたエアームドはフンと鼻を鳴らしてアリアドスを見下ろす、それからアリアドスを脚で掴むとスパーダ達が走った方向へと飛び立った。

「───ふぅ、ここまで来れば一安心だろう」
「すまないね、まさかあんな所に君がいるとは思わなかったんだ」

路地裏から逃げ出したスパーダは、公園にあるベンチにマユズミを座らせた、怪我の様子を見てポケットからハンカチと薬品を取り出す。
ポケモン用のどくけしだが、応急処置としては使えるだろう、マユズミの怪我に吹き付けてからハンカチを巻く。

「さっきも言ったが、あんな場所に女の子が一人で居ては危ないよ」
「ポケモンもいるとは言え、何処から何に襲われるかわからないのだからね」

マユズミの怪我の治療をしながら諭すように言うスパーダ、そうこうしている間にアリアドスを連れたエアームドが空から舞い降りた。

「スラァーッシュ!」

「お疲れ様、エアームド。怪我はなかったかい?」
351マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)00:30:27 ID:kOH
>>350
裏路地を抜けだして、やってきたのはとある公園。
少女は首を掴まれたニャースの様に静かにベンチに腰掛ける。

「煩いわ大丈夫や。って言ってもこれやとあんま説得力ないなぁ。」
「いてて……。」

毒消しが傷口に染みる。どうやらこけた際に擦ってしまったらしい。
あーあ、と上空を見ると、エアームドが空から帰ってきた。アリアドスもどうやら連れてきてくれたようだ。

『スパイッ!』

「ありがとな、アリアドス。」

駆け寄ってきたアリアドスに微笑みかけると、少女はその頭を軽くなでる。

「あー……、アンタにも礼いわなあかんなぁ。」
「ありがと。助かったわ。」
352ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/01(火)00:31:48 ID:cFr
>>349

―――ガイセイは足を止めた。周囲を浮かぶライチュウはキャハキャハと対戦相手の男を嘲笑い続ける。
微かに顔を傾ける。
あの男には餌を与えた。このまま強さの沼に堕ちるか否か。勝利と敗北の螺旋を転がり落ちるか。
全てはあの男次第だ。

「―――。」

それ以上は何も特に思わなかった。あの男も所詮は何人ものトレーナーの内の一人に過ぎない。
ガイセイにとっては路傍の石でしか無かったのだ。
懐からバトルサーチャーを取り出すと、ガイセイは対戦待機の状態に設定した。

「ライラーイ♪キャハハハ♪」

―――自分の尻尾の上でへらへら笑うライチュウの口にオボンのみを突っ込んで黙らせる。

時刻は0時を回った頃。
とは言え、広場では依然としてバトルをしているトレーナーは多い。
ケンタロスの回復を終えたガイセイは次の対戦相手を求め、街灯に照らされた明るい世界へと姿を晦ました―――。
353スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/01(火)00:46:10 ID:oYf
>>351
「いやいや、僕には礼は必要ないよ」
「その分アリアドスに言ってあげてくれ、君を守ろうと飛び出したんだ」

マユズミの脚にハンカチを巻いて、これで応急処置は終了。
念の為病院に行った方が良いことも付け加えて、スパーダは立ち上がり傍のエアームドの頭を撫でた。

「……所で、君はこんな時間にあんな所で何をしていたんだい?」
「バトルをしたいのなら、わざわざ治安の悪い所へ行ってまでするべきじゃない、と言わせてもらうよ」

エアームドの頭を撫でながら、スパーダはマユズミにあの場所にいた理由を問い掛ける。
まだ彼は通話が聞かれていた事については気が付いていないようだ、それを問い掛けるなら今がチャンスかもしれない。

それとは別に、スパーダは本当に心からマユズミの身を案じていた。
それは彼女が幼い少女だから、というだけでも無くて、何かがあったのだということを声色から伺わせる。
354マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)01:06:12 ID:kOH
>>353
「うーん……。」

ハンカチを巻かれた足を見ながら、彼女はしばし、思案する。
どこまで話していいものか、ということと、果たして先程の電話の内容、聞いていいものか、ということ。

「まぁ、なんというかな。正義の味方気取りやってん。」
「最近この辺りガラが悪いやろ。なんとなく風のうわさで、裏で変な組織が出来てるって話を聞いたんや。」
「んで、ちょっと探ってみようと思ってな。」

自分で言ってて恥ずかしくなった。
まるで子供みたいな正義感を掲げて、このザマかと思うと情けなさもあった。

「昔色々あってな。そういう組織とかっていうのがどうしても許せへん。」
「ほんで、絡んできた輩倒しながら、情報集めとったら、アンタを見かけたんや。」
「……たまたま電話しとった所にな。ほんで、気になったから隠れて様子伺っとった。」

色々考えたが、結局は正直に吐露することにした。隠し立てをすることは、そもそも彼女の得意とするところではなかったから。
彼女は少しバツの悪そうな表情を浮かべていた。
355スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/01(火)01:28:01 ID:oYf
>>354
「変な組織……?」
「それは、ロケット団みたいな組織のことかい?」

マユズミの話を聞いて、そこで出てきた『変な組織』というワードに反応した。
各地方を巡る劇団に所属するスパーダは様々な話を聞いている、どこの地方にも良からぬことを考える組織がいて、壊滅させられたり現在も裏で活動しているなどと言う話を聞いた。

「……ああ、あの電話を聞いていたのか」
「……そうだな、少し話をしようか」

電話の話を聞いていた、とマユズミから告げられたスパーダは、意外にもそれを隠そうとはしなかった。
逆に優しい微笑みを浮かべ、エアームドをボールに入れてからベンチに座る。

「どこから話そうか……そうだね、僕が劇団員という事は言ったかな?」
「ポケモンと共に劇をする劇団でね、各地を巡りながら公演している」
「そのおかげで色んな所に知り合いが多くてね…電話していたのはシンオウ地方の知り合いさ、その人に調べ物を頼んだんだ」

「───伝説のポケモン、シンオウ地方の湖に眠ると言われている、感情を司るポケモンの事を」
356マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)01:55:35 ID:kOH
>>355
「せや。ロケット団。昔、あいつらのせい……でもないんやけど。ちょっと人生狂わされてん。」
「ああいう組織の奴らは許せへんかってん。」

その結果がこれやけど、と決まりの悪そうな表情で足を見る。
彼女の前向きな行動力の原点。それはあまりにも暗いものだった。

「感情を、司るポケモン……。聞いたことあるで。」
「確か、エムリット……。」

彼女は、その旅の目的故、伝説や幻のポケモンにはそれなりの知識を備えていた。
人々に感情を与えたとされるシンオウの伝説のポケモン、エムリット。聞きかじりではあったが、確かそんな名前だった。

「伝説のポケモン……それを調べて、どうすんねん?」
357スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/01(火)02:18:34 ID:oYf
>>356
「そう、かんじょうポケモンのエムリットだ、よく知っているね」
「人々に感情をもたらした存在…そう語られているポケモンだ」

「……その力を借りる事が出来れば、ある少年を救えるんじゃないかと思ってね」

スパーダが語る、伝説のポケモンを求める理由、それは誰かを助ける為、献身の為である、そのように語られた。
だが、彼の自嘲気味な笑顔はこう語る、『こんなのは自分勝手な行為だ』と。

「……人々を楽しませるだなんて言っておいて、重要な所で僕は無力だ」

それは多くは語らないが、彼の心に残ったしこりである。
酷い暴力を受けて心が壊れてしまった少年に、再びバトルの楽しさを思い出して欲しい、また自分のポケモン達と笑って欲しい。
その為に自分に出来る事は、結局の所あるかどうかもわからない力に頼るしかなかった。
そして、それを本当に彼が望んでいるかも知らない、つまりは自分勝手な行為だった。

「……ああすまない、湿っぽい話はこれくらいにしようか」
「そうだな…うん、正義感を持つのは立派な事だ、でも無茶をしてはいけないよ」
「そういうのはジュンサーさんや、大人に任せておくべきだ、君達のような子には危険だからね」
358マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)02:45:46 ID:kOH
>>357
「ある少年……?」

少年を救いたい、そのために感情を司るエムリットを利用するというスパーダ。
少女にはその少年の事は見当がつかないし、個人の目的のためにエムリットを利用することの善悪もはっきりとは言えない。
事と次第によっては、あの時この男を止めておけばよかった、と思う結果になるかもしれなかったが。

「ええんちゃう?絶対エムリットはおるし、助けてくれる。」

なんの根拠もない、救いにもならないような言葉だが。
少女はかつて自身に同じ言葉をかけてくれた女性の事を思い出す。
そして、彼女に対して、かけた言葉も少女は覚えていた。

「アンタがエムリットの力を間違ごうて使った時には、ウチがすぐに殴りに行ったるから安心するとええ。」
「せやから、またウチがピンチやったら助けに来てや。」

と、言ってから自分でも妙なことを言ってしまったと思い、少女は顔をその手で覆う。
359スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/01(火)03:02:01 ID:oYf
>>358
「…………!」

マユズミの言葉に、スパーダは仮面の下で目を見開いた。
まさか、こんな子供にこんな風に励まされるとは、自分は自分が思う程出来た人間ではなくて、彼女は自分が思う程子供じゃないのかもしれない。
ああ、まったく……この歳になってもまだ学ばされるというのはなんとも楽しいものだ。

「ありがとう、お嬢さん」
「君の言葉はとても励みになったよ……そうだな、正しいかどうかやる前から迷っていても仕方がないか」

エムリットの力を借りて感情を取り戻す行為、それが間違いであるかどうかを悩んでいてもしょうがない。
重要となるエムリットにすら会う前からそれを考え二の足を踏むよりも、自分から一歩進んで行かなくてはならない。
それを彼女の言葉から学んだ、スパーダは頷きながら笑顔を浮かべる。

「そうだね、君のおかげで思い切りが出来た」
「このスパーダ、最大限の感謝を君に贈ろう!もし何か困った事があった時は僕の名前を呼んでくれ」
「何時、何処であろうとすぐに駆け付ける、絶対だと誓おう」

バサリとマントを翻し、ベンチから立って数歩歩く。
仰々しい演技のように声を張り、マユズミに感謝の言葉と誓いの言葉を告げた。何処へいようとピンチの時は駆け付けると。
……連絡手段も無しにそんな事で大丈夫なのだろうか、出来そうな雰囲気はそれなりにあるが。
360マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)03:22:49 ID:kOH
>>359
「う、うん。」

急に元気になり演技じみた言葉で語り掛けてくる男性に、少女は若干引き気味だった。
受け売りの言葉でここまで元気になってくれるとそれこそエムリットに感情を見てもらった方がいいのかも、とか思いながら。

「そーいう所は相変わらずやけど。」
「まぁ、そっちのが『らしい』わ。ムカつくなぁ。」

そう言いながら少女はようやく笑顔を見せていた。
最近、チンピラたちと戦いすぎて、消耗していたのかもしれない。
少女はゆっくりと息を吸うと。よし、と立ち上がった。どうやら応急処置のお陰か。なんとか動けるくらいにはなっていた。

「それじゃ、ウチは病院行くわ。ありがとう。いくで、アリアドス。」

『スパイ!!』

少女はそう言うと、アリアドスを連れてゆっくりと公園を後にする。
361スラッシャー◆.IDg46Dt9KQ. :2018/05/01(火)21:21:04 ID:Sdy
『うわああああああん!ヤヤコマー!ファイアロー!』

草原に絶叫が響いた

『やめてよー!もう倒れてるじゃない!なんでそんなに執拗に攻撃するのよー!!!
もうやめてよぉ!許してよーー!!』

声の主はミニスカートの少女である。ヤヤコマとファイアローを庇って上に覆い被さっている
服の背中が切り裂けて薄く血が流れ出していた。ポケモンはもっと酷い。飛行の要である風切り羽を切断され虚ろな眼で俯いている
夕暮れの草原、周囲にはなにも見えないが肌にまとわりつくようなプレッシャーがなんらかの存在を感じさせた


〘ダメだねェ〙

脳髄を揺さぶるような声が、その光景を目撃した物の頭の中に響くだろう

〘お前らは『皿の上に乗った』のさ。大人しくしてなよ、苦しまないやり方は知ってるんだ〙

草原に一本だけ立った大木に、深々と爪痕が着いている
察するに野生ポケモンのテリトリーに入ってしまった様なのだが、姿を見せていないそれは、なんとテレパシーで人間と会話できるようなのだ

『お前らステーキって大好きじゃん?あんな感じで綺麗に分けてやるからよ、ギコギコと』
362ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/01(火)21:21:48 ID:cFr

「―――終わりだぜッ!ケンタロス、かみなり!」

―――トレーナーの集うシティの片隅の公園に雷鳴が轟いた。
ぱたり、と倒れるポッタイシ。その腹部をズシン、と踏み付けるとケンタロスはポッタイシを睨み下ろした。

「ブモオオ……。」

赤く染まるケンタロスの両目。徐々に傾く角。
危機感を感じたポッタイシのトレーナーが咄嗟にポッタイシをボールに戻し、何か言いたげな眼差しを対戦相手に向けるとそそくさと立ち去る。

(―――所詮はこの程度か。私の相手にならんな。)

彼の名はガイセイ。唯強さを追求するトレーナー。
冷ややかな目で逃げ去るトレーナーを横目に見ながら戦いを終えたケンタロスにオボンのみを与えた。

「―――キャハキャハ♪キャハ♪キャハ♪」

彼の傍をふよふよと浮いているライチュウがオボンのみを食べながら、逃げ去るトレーナーを嘲笑っていた。
ガイセイは懐からバトルサーチャーを取り出すと、設定を対戦待機状態にし周辺地域のトレーナー達に発信する。
バトルサーチャー。シルフカンパニー製の最新式のそれはポケッチやポケナビと言った機器とも連動しており、速やかにトレーナーの情報がそれらの機械にも送られるのだ。

例え持っていなくとも彼の様子から彼がトレーナーである事は一目瞭然である。

「ほら、ちゃんと食っとけよ、ケンタロス!」
「俺達のコンビネーションを発揮する為にもエネルギー補給は大事だぜ!」

黙々とオボンのみを食べるケンタロスの頭を撫でると、ガイセイはにっこりと笑った。

―――ケンタロスが食べ終わったのを確認すると、ガイセイは立ち上がり「よし」と呟き、背伸びをした。
時刻は午後9時を回った頃。遠方に見えるシティの摩天楼は明かりで彩られて煌びやかに輝いている。
さて、彼に挑むトレーナーは―――?
363マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)21:46:53 ID:kOH
>>361
草原に響く悲鳴に呼応するかのように、一人の少女が声を上げる。

「デルビル、『あくのはどう』!」

『ガウッ!!』

遠くから放たれる黒色の波動が、エーフィに向かって急襲する。
駆けつけたのは草原に似つかわしくない、一人の少女。

「人もポケモンも、気に食わん輩はおるなぁ。」
「デルビル、油断したらあかんでぇ。」

『ガウッ!!』

デルビルは大きく一度吠えると、エーフィとミニスカートの間に割って入る。
少女はミニスカートの傍まで近づくと、なんとか立ち上がらせる。

「ウチらがなんとかするからはよぉ逃げぇ!!」


『う、うん!ごめんなさい!!』

ミニスカートはモンスターボールの中にファイアロー達を仕舞うと、足を引きずりながら草原を後にする。
少女は改めてエーフィと対面することになる。

「野生の癖にえらい育ってんなぁ。」
「デルビル、こいつ―――。」

「ええ『エサ』になるで。」
364ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/01(火)21:55:17 ID:8tq
>>362

ガイセイのバトルサーチャーが反応すると同時に、真っ先に通知音を鳴り上げたのはソウジのポケッチだった。
待っていましたと言わんばかりに、彼はケンタロスとそのトレーナーを繋ぐ線上に乗り出る。

「いいケンタロスです…ポッチャマと戦っているみたいだった」

たまたま通りかかった道で目に入ったバトルを観戦していた筈が、とんだ骨のあるトレーナーと出会ってしまった。
ソウジはまず対戦相手の勝利を讃えてから、腰に並んだモンスターボールを一通り人差し指で触れる。
ケンタロス………見た目からも分かる通りパワータイプ。それでいて、離れ業を使いこなす手合である可能性も十分にあるポケモンだ。

「よし、ゆけっ!エレザード!」

一瞬の思考の後、ソウジがボタンをつついて拡大させたスーパーボールは投げつけるまでもなくその蓋を開いた。
ケンタロスの眼の前に出現したのは、オレンの真っ青な花を咥えたエレザード。
つんのめってケンタロスをさも野蛮な動物かのようにけろっと見下ろすさまはひと目見て、気取り屋な性分だと分かるポケモンであろう。
ソウジは固めた右手を包んで、順番に指を鳴らしていく。やはり強そうな相手に立ち合うほど、バトルすれば燃え上がる闘志は心地よい熱量に感ぜられる。

「さて………オレたちもボコボコにしてもらおうかな?」

ソウジが突然口走った発言に驚いたエレザードが、ぎょぎょっと驚いて口の花を吐き落とした。

「…ウソウソ!お前だって負ける気はない、そうだろ?」

慌ててこちらを振り向いたエレザードにソウジはニカっと歯を見せてウィンク。

「エレッ!」

当たり前だと平静を取り繕うように、エレザードは腕を広げ、ケンタロスに威嚇する体勢を取った。
返した人差し指をこちらへ拱き、片端をニヤリと吊り上げたソウジが、先行は譲るという合図をガイセイに向ける。
365スラッシャー◆.IDg46Dt9KQ. :2018/05/01(火)22:05:41 ID:Sdy
>>363

〘っと!あぶね〙


耳ざとく指令をきいたその『白いエーフィ』は、素早く草影から波動の範囲の外に飛び出し、直撃を避けた

〘なんだよなんだよ。なに邪魔しちゃってくれてんのォ?つーか?よぉく聴こえなかったんだけどさあ――――〙

――粘りけのあるプレッシャーが強まった。

〘――俺がいい『なに』になるって?〙

ポケモンにも表情はある
それが浮かべたのは、人間のそれとは比較にならない狂気を孕んだ、獣の笑みだった
エーフィのそれとは思えないほど鋭く生え揃った牙を向いて、一回り大きな体を嘲笑に膨らませて――。

〘――あく/ほのおタイプか。クク、キキキ。うふふフフフフふふふふ。好きなんだ、そう言うの〙

タイプ相性は指標であって絶対ではない――。
この存在はそれを知っていて、なおかつ理解しているらしかった。

〘餌になるのはどっちかな。結果は神のみぞ知るって所だが、少なくとも俺じゃあない〙
〘ケケケケケケ、ケケ、ケ。俺じゃあない〙

――サイコキネシスは本来、あくタイプには極めて聴きにくい。
しかし、この存在はそれを知っているから、直接ぶつけることはしなかった
デルビルが気付くか、はたまた、マユズミが察知するのか定かではないが。地面を大きくまくりあげて高く跳ねあげ、高所から地面に叩きつけるような攻撃を行うだろう。
浮遊感の察知が回避の鍵になる
366ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/01(火)22:19:58 ID:cFr
>>364

「……お褒めに与って光栄だぜ。」

"先程までのトレーナー共とは違う"。直感的にガイセイは感じた。

―――バトルサーチャーに反応あり。目の前に現れたのは一人の少年。
にやにやと笑うライチュウ。そのサイコパワーを帯びた瞳には少年の顔が写っていた。
ガイセイは青い帽子の鍔を軽く持ち上げると少年の顔を見る。

「ああ!言われなくてもボコボコにしてやるぜ!俺達のコンビネーションを見せてやる!
行け、ケンタロス!」

「ブモオオオオッ!!!」

ダン、と戦場の砂を踏み付けながら颯爽と場に繰り出されるケンタロス。
両者がポケモンを繰り出した。これがバトル開始の合図だった。

ケンタロス。あばれうしポケモン。彼の個体はそのパワーに固執せずに三属性の技を中心に戦う異形とも言える型だ。
対するはエレザード。はつでんポケモン。特性はかんそうはだか、すながくれか、サンパワーか。
第一に警戒すべきはあの電気。まともに食らえばケンタロスとて一たまりもない。

「お互い全力でぶつかり合おうぜ!ケンタロス、ふぶき!」

突如、紫色の闘気を帯びるケンタロス。その闘気の正体はケンタロスが持つ"いのちのたま"だった。

―――いのちのたま。
所持者の技の威力を上げる対価として所持者の生命力を奪う輝石。
然しその対価はケンタロスの特性「ちからずく」によってメリットのみを残し無効化されていた。

ちからずくの「追加効果が発動しなくなる代わりに技の威力を向上させる効果」。
いのちのたまの「技の威力を向上させる効果」。

この二つが合わさりケンタロスの技の破壊力は並々ならぬものと化す。

「ブモオオオオオッッッ!!!!」

―――咆哮。
同時に急低下する気温、薄暗くなる公園。直後、ケンタロスの背後から凄まじい冷気が押し寄せた。

雪が、氷の粒が、冷気が、エレザードへと一斉に襲い掛かった―――。
367マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)22:26:17 ID:kOH
>>365
「デルビル、よぉく構えとき。」

デルビルは少女の命令通り、じっくりと上体を下げ、エーフィを睨みつける。
放たれたサイコキネシスを避けようともしないのは、一つの指標としてのタイプ相性のためか、それとも別の自信の為か。
いずれにせよ、エーフィの狙い通り、地面が盛り上がる勢いで、デルビルの体は上空へと跳ね上げられる。

『グルルッ!!』

「悪いけどなぁ、デルビルは前にも空から落とされてんねん。」
「対策練らん訳がないやろ。」
「デルビル、地面に向かって『ねっぷう』や!!」

地面に叩きつけられる瞬間、大きく息を吸い込むと、地面に向けて吹き付ける。
比較的軽いデルビルの体が、勢いを殺し、ふわりと舞い降りる。
周囲にジリジリとした熱が漂う。

「聞こえへんかったか?お前はエサや。」
「腐りかけのエサはよぉく焼いてから食わへんとなぁ。」

「『ねっぷう』からの、『ほのおのうず』!!」

地面に着地したデルビルは、熱風を吐き出す勢いそのままに、エーフィの周りに炎の渦を巻き起こす。
渦は周囲の草を燃やしながら、漂う熱波を巻き込み、勢いをすぐに増していく。
368スラッシャー◆.IDg46Dt9KQ. :2018/05/01(火)22:44:19 ID:Sdy
>>367

〘ほォ――――〙

目を見開く。感嘆したようだった
他人が何か驚くようなことをやるとは欠片も考えたことが無いのだろう、見惚れるように冷静な対処を行うデルビルの熱風を受け、じりじりと体毛が焦げる。直撃しているようだったが小賢しくもサイコキネシスで熱風を掻き分け威力を減衰していた。

〘さすがにそいつは困るな、うふふフフフフ、このままじゃ焼かれちまうな。どうしようかな〙

炎の渦に巻き込まれていく
サイコキネシスでの防御も長くは持たないだろう、しかし、危機的状況にあってもその余裕は崩れない。炎の中、影が笑った。

〘うふふフフフフ、ふふふふ〙

そしてそれは、二人の背後に即座に瞬間移動した
焦げた体毛をねぶって毛繕いしている。ダメージは決して浅くない。だが、精神の調子はあまり変わらない様だった。

〘じゃ、こうしよう。名付けて即席原始の力ってとこだなァ〙

エーフィの周囲の地面が再び盛り上がる。
しかし、質量が先程の地盤返しとは桁違いだ
大岩ともみまごうサイズが三個浮き上がり、高速で射出される。まずは一個。デルビルの対応を確かめるように。避けるか防ぐか、対応の出鼻を挫くように二個を上から叩き落とすだろう。
巧妙にタイミングをずらし、確実にダメージを与えていくつもりのようである。
369ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/01(火)22:52:21 ID:8tq
>>336

ケンタロスが怪しげな殺気を妖的に醸し出す。
思わず身構える、並々ならぬ雰囲気だ。そしてこの猛烈な吹雪のエネルギーは、どこから現れ出でるものなのか。

ノーマルタイプはトライアタックという技に代表されるような、三属性を使いこなすオールラウンダーとしての側面をも併せ持つものだ。
ケンタロスといえばまさにその典型例…ふぶき、かみなり、だいもんじ。各タイプにおいても高位に位する技を使いわけてくる。
特性が力ずくの個体には命の珠の力を我が身の物とする場合もある、この妖気を纏った姿を見るに、恐らくはその手合い。
幼い頃に使い古したポケモンバトル全集を頭の中でパラパラと目繰り返しながら、ソウジは思索を巡らして次の一手を決断付ける。

「エレザード、10万ッボルトぉ!!!!」

エレザードは指示の内実を理解した。確かにふぶきは強力な技ではあるが、その命中率は安定しないというデメリットに着目したのだ。
襟巻き状の膜が傘のようにバサリ、ヒマワリのような輪郭が目に痛い光色をまとって、十分に練られた電気エネルギーを開放。
自身に迫りくる礫や雪辺のたぐいを、自律的に標的を誘導する電雷が弾き飛ばしていく。
ふぶき自体に対するダメージ自体は軽微。だが、その息も凍りそうな冷気は確実にエレザードのスタミナを削っていた。

「くっ………かいでんぱだ!」

ソウジは顔の表面に張る氷の膜をぐっと拭って、膠着した戦況を打開するべく次の技を指令する。
ポケモンの技における怪電波とは、体内で熟成した不可視の悪性磁気を身体から放出して、技の集中を乱す妨害戦術。
エレザードはそのまま放出する電気のパターンを変える要領で、10万ボルトをかいでんぱに切り替えた。
おそらくこれで、ケンタロスのふぶきには隙ができるはずだ。

「続けてエレキネット!足を止められればいい!」

襟巻に充満していたエネルギーを口に集め、網目状に吐き出す。いくつかの技の連続の後でそのエネルギー練度は低いが、次放たれる技を遅らせることはできる筈。
地味な一手一手に甘んじてはいても、あくまで適切に対処する。それがエレザードの基本的な戦い方だった。
370マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)23:05:30 ID:kOH
>>368
「消えた!?」

エーフィに『テレポート』されるとは思ってもいなかった少女。
背後に立つエーフィは再びサイコキネシスのパワーで地面を抉る。

「デルビル、『ニトロチャージ』!!」

『ガウッ!!』

迫りくる巨大な地面に、対し、デルビルはニトロチャージによる高速移動で応戦する。
巨大な岩は躱すだけで大きな隙になる。
更に3つの岩をそれぞれタイミングをズらすことで、確実にダメージを与えに来ている。

(対策なんか一つやわなぁ。)

「デルビル、そのままエーフィに突っ込め!!」

デルビルは炎を身にまとい、直接エーフィを狙いに行く。
威力を考えての大きな岩だ。それが確実に自身へと向かってくるのであれば、相手の懐に潜り込むしかない。
デルビルの素早さであれば、勢いそのまま岩から逃げ出すことも不可能ではない。
371スラッシャー◆.IDg46Dt9KQ. :2018/05/01(火)23:20:13 ID:Sdy
>>370

〘おォ良いね、そう言う暑苦しいの〙


あろうことか、エーフィもまた身を低く沈めて突進の体勢を取った。右腕から鋭い爪が飛び出し砂のように影がより集まっていく。

シャドークローだ

タイプ的には不一致。だがこのエーフィの物理攻撃力は、一回り大きな体から見ても解る通り通常種のそれを遥かに凌駕する。
引っ掻くのではなく槍のように突きだして柔らかい急所の鼻の部分を突こうとする嫌らしさも合わされば相性が悪くないとはいえそこそこのダメージは免れ無いだろう
だがそれはエーフィも同じ。面に対し突で応戦するのだから、右腕は使い物にならなくなってしまうだろう

〘男比べって感じのぶつかり合いィ、嫌いじゃないぜおるァよォオオオオ!!!〙

更にテレポートを小刻みに発生させて擬似的な影分身を形成。二体並ぶエーフィがどちらから来るのか悩むかも知れない。
二体の幻影の間からテレポートで現れた本体がデルビルとぶつかることになろう。

〘花びら大回転だ、デルビルゥ!聴こえてんだろ俺の声がァ!!!人間なんぞに操られてねぇでお前も自由に生きてみろよォーー!〙

ぶつかり合いの刹那、デルビルにポケモンにしかわからない言語でそう語りかけるだろう。
372ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/01(火)23:20:44 ID:cFr
>>369

―――弾かれる氷礫。然し冷気がエレザードのスタミナを削っている事に違いは無い。
途切れる事無く吹きすさぶ吹雪も突如として放たれたかいでんぱによって一時的に止んだ。
呻き声を上げはしないものの、その不愉快な音に思わず眉間に皺を寄せるケンタロス。脳細胞への悪影響。特殊技の発現への支障。

「ライラーイ♪」

サイコパワーで膜を張り、かいでんぱから自信とガイセイを守るライチュウ。
―――直後、休む隙も与えずに展開されるエレキネット。思わず跳ねて回避を試みたケンタロス。
だが、右足がエレキネットに引っかかってしまった。

「ブモオオオオッ!!!」

全身に流れる電流がケンタロスの筋肉を一時的に麻痺させた。
転倒はしなかったものの、その場でふらふらと揺れるケンタロス。目の焦点が合っていない。
この状況を見たガイセイは「ふむ」と顎先に手を当てて物思いに耽った。

「―――ケンタロス、じしん。」

「―――ブモオオオオッ!!!」

―――トレーナーの命令が、ケンタロスのDNAに刻まれた本能を呼び覚ます。
万事休すかと思われたケンタロスの両目が赤く光った。咆哮と同時に地震を縛っていたエレキネットを引き裂くと、高らかに前足を上げる。
そして有り余るケンタロス特有のパワーで大地を穿った。
直後、響く地鳴り。

ワンテンポ遅れてケンタロスを中心に広範囲に隆起して行く地面。

「ライラーイ♪」

トレーナーへの被害を考慮したライチュウがソウジとガイセイの周りを囲う様にリフレクターを展開する。これで双方トレーナーへの被害はほぼ無いだろう。
さて、一方の戦場はケンタロスにじしんにより大地が波打っていた。衝撃で半壊する公園。
徐々に隆起する地面が波となってエレザードを飲み込まんとした。

「勿論、特殊技だけじゃないんだぜ?ケンタロスは本来こっちが十八番だからな。」

ガイセイは帽子の鍔を抑えながら揺れに耐えつつも口角を微かに釣り上げた。
373キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/01(火)23:46:21 ID:oYf
「ちょっとおじさん!これどういう事さ!!」

「だからおじさんじゃねぇって!まだ25だオレは!」
「それにどうしたもこうしたもねぇよ、買ったのはお前だろ?」

日差しの強いナナイタシティの街角で、何やら言い合いをする声が響いている。
どうやら、そこにいる白いスーツの男に対して子供が何かを訴えかけているようだった。
飄々として誤魔化しの言葉を吐き続ける男に子供が怒りを露わにするが、男の方は聞く耳を持たない。

「だってこのわざマシン!なんのわざも入ってないじゃないか!」

「あー……いや、オレは『物凄いわざマシン』とは言ったぜ?言ったけどな」
「『何のわざ』が入っているとは一言も言ってねぇよなあ?」

「小学生みたいな屁理屈言ってんじゃねーーー!!?いいから金返せよオジサン!」

「だからオジサンじゃねえっつってんだろバーカ!!」

……真昼間から響き渡る子供といい大人の罵り合い、側から見れば微笑ましいような恥ずかしいようなそんな光景。
しかしその会話を良く聞けば、明らかにこの男が行なっているのは子供相手の詐欺行為だった。
374マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/01(火)23:47:17 ID:kOH
>>371
「シャドークロー……。」

また相性不利な技を敢えて使う。
なるほど、人間の考える『相性』、それすらも彼にとっては反発の対象か。
分身したエーフィが、いつでもいいぞとその首を狙っている。

<<馬鹿馬鹿しい。>>
<<人間から逃げようとするあまり自分の行動すら自分で制限してる。>>
<<自由が聞いて呆れる。そんなことしなくたって。>>

「デルビル!!」

<<とっくに俺は自由だ。>>

「カウンター!!」

シャドークローと交差するように、デルビルもその前足をエーフィへと突き出す。
ニトロチャージの勢いそのままに、相手のシャドークローの勢いをプラスしそのまま突き返す。
まるでボクシングのクロスカウンターの様に、お互いの拳が交差する―――。
果たして。
375シエン◆Ew5h1s1UAA :2018/05/01(火)23:59:34 ID:Hhl
>>373

「争いは…同じレベルでしか発生しない…らしいな。うん…あの言葉はどうやら本当だったみたいだね。ハハハ…」

あまりに悲しい争いに乾いた笑いしか出てこなかった。少しずっこけたみたいでいつもかけているメガネが傾く。

「なあおじさん。子供相手に真昼間から何やってんの…?」

とても呆れ返ったような声を出しておそらく詐欺をしてるであろうおじさんに声をかける。非常に穏やかな声で話しかける。見た目は優しい青年だ。ナリだけ見ればまだ高圧的な態度を取れるはずだ。

「あんまり酷いようならジュンサーさん呼ぶよ…?」

子供相手に詐欺を働く大人だ。問答無用で突き出しても文句を言われない筈だ。
376ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/02(水)00:15:59 ID:u2L

>>372

「エレザード!気を付けろ、『じしん』だ!

「エ、エレッ!」

ソウジの側には、エレキネットの効果で次の一手を読む余暇が与えられていた。
だが、メインウェポンの中でも強力な技であるじしんを猛々と放てるであろう相手に追撃を仕掛けるのは、悪手。ソウジは緊急回避を決めた。

エレザードが俊敏な動作で飛び上がり、足底に電気を滾らせた滑空を開始する。
タイムラグの限界まで削られた反応速度は、流石、パーティーの中でソウジと一番付き合いが長いポケモンといった所か。
慣れ親しんだ故のコンビネーションからくるコールアンドレスポンスは、もの言わずとも、完成されているものだった。
良い意味でも、悪い意味でも。エレザードの実力は三匹の中で伸び悩んでいる所があった。

「これは…?」

そして、じしんはその威力もさながら、トレーナー側にも負担の向く荒技だ。踏ん張った足に力が篭り、来るべき衝撃に耐えようとする――――
違和感。その正体は、身体を覆い始める膜状のエネルギーによって明らかになった。……これは、何処から?
バトルに支障が出ない程度に辺りへ目を走らせれば、先程からガイセイの傍らで無邪気に二匹のバトルを品定めしているライチュウが視界に入った。
目にしたことのない外見をしているが、明らかに異なる容貌は色違いのそれとは明らかに違う。ライチュウはエスパータイプの技を使うポケモンだっただろうか…
とにかく相手方も粋な心遣いをしてくれるものだと、安堵の息を吐く。

「"両刀"、ですね……?やっぱり、そうこなくちゃ」

色々な呼び方が広まっているが、両刀。それが、遠近の攻撃レンジに長けるポケモンの役名だった。
むろんそれらを両立することには並々ならぬ鍛錬が必須。ケンタロスの練度には申し分ないと、ソウジは勇ましい微笑みを返す。

「でも、こっちは一点特化………!」

ソウジは何やら複雑なハンドサインでエレザードに合図をする。
エレザードは待ってましたとばかりにギザギザの歯をぐばっと開け、仰向けに天を仰いでみせた。

「エレェェェェェェェ…………ッ!!」

エレザードの独特な唸り声が周囲に響き渡った直後、彼へ一点の光明が舞い降りる。
ケンタロスの頭上を射していた太陽が雲を払って、視界を眩しく照らすだろう―――歴戦のケンタロスとガイセイになら、瞬時に状況の理解は可能な筈だ。
――――はかいこうせん。ソウジのエレザードは特性のサンパワーを使って、技の威力を数段上に引き上げることができるのだ。
おまけに、エレザードはノーマルタイプの適正も持つ。ノーマルジュエルを所持していてもおかしくは無い。
様々の要素を集約し、このはかいこうせんは決して直撃せずとも、破壊的エネルギーのビックバンでフィールドをも一溜りもなく壊滅させる大技と化す。
エレザードはエネルギー豊富な太陽の光を浴びて、人間であるトレーナーからも見ても分かるほどの強烈な覇気を帯びていく。
むろん、発射は即座ではない。ケンタロスにも対抗する術は残されていた。
377キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)00:19:11 ID:Quc
>>375
「あっ!お兄さん聞いてよ!このオジサン詐欺師だよ詐欺師!」
「何のわざも入ってないわざマシンを買わされたんだよ!1200円で!」

「ちょっと待てなんでそいつがお兄さんでオレはオジサンなんだよ!?見た感じあんまり歳変わんねーぞソイツ!!」

話しかけてきた青年に子供が振り向き、ふくれっ面で事の次第を説明する。
それが本当なら───どう考えても事実だろうが───たった1200円を子供から騙し取って必死になるこの男もこの男である。

「クソッ……ジュンサーさんを呼ばれちゃ堪んねえぜ!」
「じゃーなクソガキ!今日の所はこれで勘弁しておいてやらあ!!」

青年が爽やかな表情で言う『ジュンサーさんを呼ぶ』という言葉に、バツが悪い表情をして男は脱兎の如く駆け出した。
やはり詐欺の自覚はあるのか、捕まるのはまずいらしい。

「いや金返せよ!?」

───しかも金は結局返してない、男の逃げ足は速く、しかも危険な路地裏の方へと逃げていった、子供では到底追い付けないだろう。

「お兄さん!あいつ追っかけて捕まえて来てよ!お願い!」

それをよくわかっているのか(展開の都合とも言う)、子供は青年に男の捕縛を依頼する。
378シエン◆Ew5h1s1UAA :2018/05/02(水)00:37:31 ID:Ahy
>>377

「あらら…そりゃ良くないね。うん…良くねえな
君はケガはないか?他に何にもされてないか?」

温和な表情は崩さないがそれなりに心配そうな声をかける。

「そりゃあ…人徳でしょ。悪いお兄さんって言われ方はしないからね…悪いとおじさんに早変わりだ。あとそうだな…眼鏡とかかけてみたらどうだ?」

軽口を叩いて目の前の青年を挑発する。

「つーかおっさん…子供から1200円巻き上げるってどうなのよ…やるならもっと高い額にしなきゃ意味ないだろ」

と言ってもいいかわからないアドバイスを言ってみる。

「うっわぁ…逃げ足早いなぁ…いい身のこなしだな…」

無駄に素直に感心する。いや、全く良くないことなのではあるが…見入っているうちに男はかなり向こうへ行ってしまったが、
青年は全く焦る様子もなく路地裏の方向へ顔を向ける。

「うーん…俺はやんないよ?あれを捕まえんのは警察の仕事だからね。まぁ…でもその前に捕まっちまったら運がいい。取られたものは取り返せるさ」

飄々と言い放つと路地裏を走っている男の目の前に、アブソルが現れるだろう。少し機嫌が悪く…男を懲らしめないと気が済まないようだ。
379キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)00:56:27 ID:Quc
>>378
「……お兄さん結構悪い人だね」

男が逃げていった方向を青年と共に見詰めつつ、子供は冷ややかな表情で呟いた。

所変わってここは路地裏、男が逃げて来た先である。
青年も子供も追いかけてこないのを確認すると、これはしめたと男はニヤリと笑う、このまま逃げ切ってやると前を向きなおした瞬間。

「うおっ!?なんだお前!?」

目の前に現れたアブソルに驚き急ブレーキ、どう見ても大人しく通してくれなさそうな様子に狼狽する。

「チッ……なんでこんな所にアブソルが…しょうがねえ」
「ダーテング!出て来い!!」

「イヨォーッ!!」

こうなれば歯には歯を、ポケモンにはポケモンだ。
キブシは ダーテングを くりだした!

「先手必勝だ!ねこだまし!」

「ヨヨイ!!」

ボールから出たかと思えば、間髪入れず素早く指示を出すキブシ、ダーテングは一気にアブソルへと飛び込みながら目の前で両手を叩いて音を鳴らした。
ねこだましによってアブソルを怯ませ、その間にさっさと逃げる算段のようだが…?
380ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/02(水)01:01:19 ID:Iya
>>376

(―――ほう……大したものだな。)

ガイセイは両目を見開き、感心した様子でじしんを回避したソウジのエレザードを観察する。
並大抵のエレザードではない。そこらのトレーナーが使うエレザードであれば今の一撃で沈んでいてもおかしくはなかった。
血が騒ぐ。久々に面白い使い手と巡り会えたものだ。

「ブモオオオオオオッッ!!!」

両目を赤く光らせたケンタロスが荒れ果てた公園の中心で咆哮を上げた。ふるいたてる。攻撃と特攻を向上させる技だ。
―――刹那、不意に天より差し込めた光にガイセイは右手で顔を覆いながら空を見上げた。
太陽。天より力を賜るエレザード。

「―――やはりかッ……。」

確信した。奴のエレザードの特性はサンパワー。サンパワーは太陽の力を得てその特攻を高める特性。
然しその代償として体力を激しく消耗してしまう。相手側にもあまり余裕が無い、という事か。
即ち次の相手の一手は幾つかの大技に絞られるだろう。この状況で考えられる技。
―――はかいこうせん。

「―――ふるいたて続けろ、ケンタロス。」

徐々に覇気を帯びるエレザード。最早発射まで一刻の猶予も無い。それでも尚、ケンタロスはふるいたて続けた。
最初のエレザードによるかいおんぱ。それによる特攻の低下は失せた。後は上がるのみ。
エレザードの発する圧倒的覇気。然しケンタロスは怯む様子も無く静かに己を奮い立たせていた。

「―――駆けろ。」

ガイセイが囁く、それと同時に放たれた矢の如く駆け出すケンタロス。間も無くエレザードのはかいこうせんが放出される。
あれ程の大技を零距離で浴びれば最早生き延びられるのかすら疑わしい。
―――だというのにケンタロスは一向に止まる気配が無かった。
エレザードの至近距離まで達した所でガイセイが両目を見開き、命令を下した。

「――――――ケンタロスッッッ!!!ギガインパクトッッッ!!!」

ケンタロスの全身を覆う白い光。両者のエネルギーを受けて天へと落ちる様に崩壊していく大地。
この状況をけらけら笑いながら楽しむライチュウ。
ライチュウが何重ものひかりのかべとリフレクターを双方トレーナーの周囲に展開し、シティの一角を吹き飛ばしかねない程の衝撃に備えた。

文字通り正に放たれた一本の矢と化したケンタロス。
そして今にも放たれるであろう、エレザードのはかいこうせん。

神々と謳われしポケモン達ですら滅びかねない二つの矛が今にも衝突せんとしていた。
ガイセイは後は結果を待つのみ、と、冷静な趣で帽子の鍔を抑えながら唯々結果を待つ―――。
381シエン◆Ew5h1s1UAA :2018/05/02(水)01:18:27 ID:Ahy
>>379

「まぁ…あくタイプ使いだからね。多少はワルだよ」
「でも良かったじゃないか!アブソルがおっさんを足止めしてくれたみたいだ。運が良いね君は」

ふふっと少しいたずらな笑みを浮かべると路地裏の方向を指差した。

「んじゃあ…僕はちょっとあっちに言ってくる。ここで待ってると良いよ。あくタイプ…好きだからね」

これからが楽しみだと言わんばかりに楽しそうな足取りで路地裏に向かう。

「運が悪かったみたいだね…おっさん。こんなところでポケモンに睨まれるなんてさ。ってもまぁ…僕のポケモンなんだけどね」

そんな小言を履いているうちに相手はねこだましを繰り出してきた。

「アブソル…かわして!そっからつばめがえしだ」

淡々となれた口調で指令を出す。それを慣れたようにアブソルが受け取る。少し余裕を持ってねこだましを交わすと特有のプレッシャーを持った目つきでダーテングを睨みつける。
それも束の間、空間を切り裂くような鋭いつばめがえしを至近距離で放とうとする。アブソルといえばあの特徴的なツノだ。食らえばかすり傷では済まないはずだ。
382スラッシャー◆.IDg46Dt9KQ. :2018/05/02(水)01:27:30 ID:yo3
>>374
〘――そうなんだよな〙

かくとう、ゴースト。
共に相性不利
故にどちらも致命打にはならず
それでも深いダメージを刻み合う事になる

交錯の瞬間、エーフィは煮えたぎるような激情の熱を一瞬消して、ぽつりと呟いた。

〘生命は原則、自由のもとにある。テメェの命をどう使おうがテメェの勝手だ。舌噛み切ってくたばろうが、他人ぶっ刺して殺そうが、どうにだってつかえんのによ〙
〘もっとよりよい生き方があるのによ――〙

ぎろり、と、紅い眼がデルビルを向いた

〘お前にいってんだぜ〙
〘俺ァやだよ、なんでお前そんな訳のわからねえ生き物の言うこと聴いてンだ?テメェで考えた方がよほど良いってのは俺が証人だぜ。トレーナーとのペアとも互角に闘える〙
〘オアソビを抜きゃ、またこの結果は違っていたかもしれない〙


頭を振り、後ろに飛び退いて、唾を吐いた。

〘心はナワバリだ。俺はそこに踏みいられるのが嫌だ。血が沸騰するんだよ。人間の臭ェ口が俺を操れると思ってる事実に納得がどうしてもいかねェエエんだよ〙

〘毛先一本細胞一粒まで俺は俺なのに、なんで他の存在の――それも交尾もできねえような異種族の命令に介入されなきゃならんのだ?
お前もお前なんだよ、デルビル。ポケモンはポケモン、人は人だ。喰われる側は喰われる側で、食う側は食う側なんだよ……〙

その姿は薄れて、落ちてきた夜のとばりの中に溶け込んでいく。


〘――だから、俺はひっくり返す事にする〙




にい、と。
最後に、牙を剥いて笑い。
その存在は消えていく。


〘愉しかったぜ、またやろうや。
今度は、うふふフフフフふふふふ
トレーナーがいない方が、面白いかもな〙

そんな残滓を、虚空に残して――。
383キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)01:34:42 ID:Quc
>>381
「うおっ!?追い付いて来やがった!!つーかやっぱりお前のポケモンかこのアブソル!!」
「だからおっさんじゃねーっつってんだろ!オレはまだ25歳なの!若々しいだろーが!!」

「ヨイッ!?」

不意打ち気味のねこだましを回避するアブソル、どうやら相当な手練れのようだ。
反撃のつばめがえしを回避出来ず、ダーテングは腹をアブソルに斬り裂かれ吹っ飛んだ、そしてそのまま地面に転がる。

「クソッ!ダーテング、こっちも反撃だ!!」

「……ダーテング?おい、ダーテング?」

こんな所で負けてはいられないとダーテングに指示を飛ばすキブシ、しかし彼の指示を聞いてもダーテングは地面に転がったままピクリとも動かない。
何か様子がおかしいと思ったキブシがダーテングに駆け寄りその体を揺さぶった、それでも無反応のダーテングの姿を見て、俄かに顔が青褪める。

「し……死んでる……!」

───どうやら、相当に当たりどころが悪かったらしい。
ダーテングは不慮の事故によって還らぬ人……もとい還らぬポケモンとなってしまった。本当かよ。
384シエン◆Ew5h1s1UAA :2018/05/02(水)01:44:12 ID:Ahy
>>383

「そりゃもちろん。でもまぁ…結構自由な子だからね。すぐどっかに行きたがる。今回はたまたまあんたの通る場所にいたみたいだ」
「まぁまぁ…その辺は気になさんな。悪いことしてたらおっちゃんになるのさ」

底の知れない笑顔を見せて怪しげに近付いてくる。果たして本当に悪い大人はどちらなのだろうか。どうみても悪役にしか見えない。

「あ、あら〜……もしかしてやっちゃったかな?そんな加減の効かない子じゃないはずなんだけどね」

今度は苦笑い。今までこのような体験はなかったため、若干困惑してはいるが…まあどうせハッタリだろうと高を括る。少し困惑気味のトレーナーとは違って、アブソルはジトーッとダーテングの方を見ていた。

「まぁ…でもあれだな。とりあえずお金返してくんない?」

完全に容赦のない言葉を浴びせてみる。
情けは無用…?なのか
385キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)01:59:28 ID:Quc
>>384
「人の心が無いのかテメェは!?」

ポケモンが目の前で死んだって言ってるのに困惑どころか返金を求めるとは。
思わず演技を忘れて本音を突っ込む、借金取り取りを思い出すレベルの鬼畜生だ。

「クソッ!見抜かれてたか!!しょうがねえダーテング!アレをやるぞ!」

「イヨォイ!!」

……まあ、結局の所嘘だったのだが。
勢いよく跳ね起きたダーテングは、両手を叩きあわせて力を溜め、そのまま跳び上がって地面に両手を付ける。
その瞬間、アスファルトだった地面に一斉に草が生え始めた、これは草タイプに有利なフィールドを発生させるわざ、グラスフィールドである。

「ククク……このグラスフィールドを展開した今!お前らに勝ち目は無くなった!!」
「ダーテング!やっちまえ!!」

「イヨォォッ!!」

グラスフィールドにより展開された草原、これらの草は全てダーテングの支配下にある。
ダーテングが大地を踏みならし力を込めると、アブソルの足元の草がニョキニョキと伸びて脚を搦め捕ろうとしてくるだろう。
386シエン◆Ew5h1s1UAA :2018/05/02(水)02:22:38 ID:Ahy
>>385

「そりゃお互い様だよ。子供からお金取るのもこれも一緒さ。
あと嘘には慣れてる。どっかのギャンブラーのせいでね〜」

過去を思い出し、少しだけ思い出し笑いをする。
基本的に優しい穏やかな人間ではあるが…それはバトルでも同じ。穏やかに容赦なく、普段と変わらない雰囲気で真っ向から潰しにかかる。下手な借金取りよりも末恐ろしい。

「アレ…?ってうおお!グラスフィールドか!こりゃたまげた!
こんなの隠してるなら言ってくれりゃいいのにさ!」

グラスフィールドを見てむしろ興奮気味になる青年。一筋縄ではいかないとなって逆にやる気になってきたようだ。
これは楽しみだと胸を踊らせる。

「アブソル!やれるね?」

「…………」コクッ

ジトーッとした目を保ちながら頷き、地面に目線を向ける。搦め捕ろうとする草を少しかわしながらぴょんぴょんとジグザグに飛び跳ね、ダーテングに近づいていく。そしてひときわ高く飛んだ時にツノにエネルギーが集中する。

「アブソル…シザークロス!」

トドメをささんと一対の閃光がダーテングを切り裂こうと襲いかかる。無論最終的には着地をせざるを得ないため…草がある程度成熟したグラスフィールドに足を着く。この攻撃が当たろうが当たらまいが、草に足を取られることは間違いない。
387キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)02:40:47 ID:Quc
>>386
「そう何度も同じ戦法が通じるか!退がれダーテング!」

「イヨイ!!」

アブソルのシザークロスを、大きく背後に飛び退る事で回避するダーテング、つばめがえしに比べれば遥かに軽い足取りで回避する事が出来る。
両手の葉扇を振るって風を巻き起こし、それに乗る事で一時的に空中に浮遊する、高い場所からアブソルを見下ろしつつ旋風に草のエネルギーを集めて行く。

「いよっしゃあ!くさむすびが効いてる今がチャンスだ!」
「ぶちかませ!リーフストーム!!」

「イイィィヨオオオオオオオオッッ!!!」

アブソルがグラスフィールドの草に結ばれている間に準備を完了したダーテングは、草葉を巻き上げた強い風を渦巻き状にしてアブソルに向けて打ち出した。
尖った葉っぱが混ざった旋風、まともに食らってしまえばひとたまりもないだろう。
388シエン◆Ew5h1s1UAA :2018/05/02(水)02:54:42 ID:Ahy
>>387

「くぅ…流石に安直すぎたかな…?」

上手いことシザークロスをかわされてしまったようで、少し悔しそうにする。しかしグラスフィールドはそう暇を与えてくれるわけではない。みるみるうちに足を絡まれる。しかし…

「足元固定した方が撃ちやすいよな…?なぁアブソル!」

「……!!」

コクリと頷き全身から炎のエネルギーを放つそしてそれを大の字に形取らせる。あたり一帯を焼き尽くさんとする大文字の炎だ。
収縮させた炎をリーフストームにぶつけてやろうと試みる。
真っ正面から撃ち合う。これがアブソルのスタイルなのかも知れない。
おそらく、だいもんじとリーフストームが拮抗した状態でぶつかり合うだろう。焼けた木の葉が風に吹かれあたり一面を覆い尽くす。狭い路地裏の状況も相待ってか風が通常よりも強く感じお互いのトレーナーは目を開けることもままならないだろう。

結果は…どうなるのかわからない。
389キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)03:10:11 ID:Quc
>>388
「ぬおおおおぉぉぉッ!?マジかよだいもんじまで使うのか!?」
「やべぇぞダーテング!何とか耐えろ!お前はやられてもいいからオレが逃げる時間は稼いでいてくれ!!」

「イヨッ!?」

リーフストームにぶつけられるだいもんじの余波が熱風となり襲い掛かる、キブシは薄く眼を開けながら事の成り行きを見つめ、それでも草タイプが炎タイプのわざに勝てるわけがないと直感した。
だからここはどさくさに紛れてさっさと逃げるしかない、ダーテングに頑張って貰いつつ自分だけでもその場から逃げようとする。

「イヨオオオォォォッ!!!」

当然ながらそんな行為をダーテングが許すはずもなく、怒りの形相で神通力を操り虚空にエネルギーを凝縮しだした。
アブソルのだいもんじをリーフストームで抑えながらも作り出したエネルギーは、一度凝縮してから臨界点を迎えて爆発する。

───そう、〝だいばくはつ〟である。
最早勝ち目なしと見たダーテングは、自分を置いて逃げようとするトレーナー諸共全てを爆発させて吹き飛ばしてやろうと画策した。
当然そうなると自分もただでは済まない、青年達には見えただろうか、爆発の衝撃によって空の彼方へと吹き飛んで行くダーテングとキブシの姿が…
390シエン◆Ew5h1s1UAA :2018/05/02(水)11:22:43 ID:Ahy
>>389

「そりゃあまあ…覚える技だしね。取れるもんはとっときたい」
「っておい…そりゃ言っちゃいかんでしょうに…なんでポケモン見捨てようとするかな」

やっとテンションが上がってきた頃だったのだが彼とは違い目の前の男は逃走を図っている。少し気持ちが冷めてしまった。
ポケモンを信じるのがトレーナーのやるべきことであろう。それを放棄してしまっては勝ち目のある戦いも負けてしまう。

「というか逃げてもダーテングから身元バレたりしないか?流石にないか」

「って!だいばくはつか!ヤケクソかよ!」
「アブソル!なんとか耐えてくれ!なるべく遠くにいけ!」

あまりの扱いの酷さに我慢ならなかったのか目の前のダーテングがだいばくはつをし始めた。それをすぐ察知したのか素早くその場から離れるよう指示を出す。
こんな狭い場所でやられると割とシャレにならない。最低限のダメージに抑えられるよう距離を置く。

「あーもう!結構堪えたな〜。あの距離でだいばくはつはシャレになんないな〜。案の定あっちは吹っ飛ばされたみたいだしな。
ま、それは俺も同じことか…って痛え…」

当然逃げ切れるはずはなく…爆発の余波で彼も吹き飛ばされてしまった。路地裏のゴミ袋に激突しなんとかひどい結果にはならずに済んだが、結局こちらの目的は達成出来ず…今回はあの詐欺師の勝ちということだろう。何せよ1200円は彼の手中にある。

「………」

吹き飛ばされたトレーナーを少し不機嫌そうな目でジーッと見つめるアブソル。幸い大きな怪我はなく済んだが…この結果には満足していなかった。勝てるはずだっただろうと言いたげだが…
結果はそうはならなかった。

「ごめんなアブソル…お前のいいとこ見せられなかったわ。
もうちょい真面目にやっとくべきだったかな。
まあ少年には僕直々にお金を渡すとしよう!これは負けた罰だな。しょうがない。」

飄々とした態度を崩さず…ゴミ袋から身を起こす。軽く埃を払ってから少し伸びをして、肩をぐるんと回して、きた道を戻ろうとするだろう。ついでにアブソルをモンスターボールに戻す。

「昔っからああいう手合いには相性が悪い。ツイてないなホント」

少々昔のことを思い出し、少し苦笑い。もうそろそろ路地裏から出てくる頃だろうか。少年の姿も目に入るはずだ。

「悪いね。さっきのだいばくはつで、あのおっちゃんどっか行っちまったみたいだわ。お金は取り返せなかった…けど。まぁ俺が今回の金は払うよ。はい。」

そういうと彼は懐から財布を取り出し少年に12,000円を渡そうとする。

「値段は気にしなくていい。僕は弱いからね!弱いとこれくらいは払わなきゃダメなのさ…今回はあのおっちゃんを捕まえらんなかった。けど、君が強くなって、僕の代わりにあの人を倒せるようになったらいい。そのためには多少のお金も必要だからね」
「これからは騙されちゃダメだぞ?悪い大人はいるもんだ。
今度からはそれなりに警戒するように!じゃあ僕はこの辺でお暇するよ。バイバイ!」

余裕のある態度を崩さず、少年のこれからを楽しみにしてその場を後にするだろう。引き留められない限りは歩みを止めることはないだろう。
391キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)12:17:05 ID:Quc
>>390
「見てたよお兄さん、見事な爆発オチだったね」

帰って来た青年を律儀に待っていた少年が、開口一番子供らしい辛辣な感想で出迎えた。
ゴミ袋に突っ込んだ青年の手から渡されるお金を少し嫌そうに受け取り、財布に入れながら少年は言った。

「別に、気にしてないよそんなに」
「あのオジサンこの街にまだいるみたいだし、お父さんのポケモンにやり返してもらうから」

……なんだか、現代っ子という感想が残りそうな少年である。

「バイバイお兄さん、アブソルをちゃんとポケモンセンターに連れて行ってあげてね」

去って行く青年に手を振ると、少年は駆け足でその場を後にした。




「……いててて…随分吹っ飛ばされたな」

「イヨォォッ!!」

所変わってナナイタシティの外れの森、爆発の煤と木の枝に塗れて、キブシとダーテングが倒れていた。
落ちていた帽子の埃を払うキブシに、ダーテングが不満げに声を荒げる。見捨てられそうだったので当然なのだが。

「そうマジになって怒んなよダーテング、あれは相手を油断させる為の作戦だったんだって、マジで」

「イヨオッ!!」

「あーわかったわかった、お詫びに稼いだ金で好きな木の実買ってやるから機嫌直せって」

今日の戦果はポケモンのご機嫌取りに消えそうだ、邪魔さえなけりゃもっと稼げたのに。
キブシの大きな溜息が、森の中に消えて行った。
392スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)23:01:32 ID:Quc
「ふーむ……キリキザン、まだ落ち着かないのかい?」

「……ザン」

ナナイタシティの街中にあるとある建物、バトル道場と呼ばれるこの施設には、気軽にバトルを楽しみたいトレーナーが訪れる。
現在その施設で勝ち抜いているトレーナーは、特徴的な仮面とマントを身に纏う男性と、彼のポケモンであるキリキザンであった。

「そうか…でもそろそろ稽古の時間だ、あと一戦闘ったら終わりにしよう」

「ザン……」

未だ闘いに物足りなさを感じている様子のキリキザン、何処かに歯応えのある相手はいないかと、ポケモン自ら辺りを見回して相手を探した。
393キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/02(水)23:36:46 ID:JCg
『……ガコッ』

みのむしポケモン、フォレトス。はがね/むしタイプ。
野生の個体は近づくと反射的に撒きびしを巻く習性があるらしいが、トレーナーに訓練されていればその心配はない。

『ジー』

眠っていた所に、近づかれて気配を感じ目を覚ました彼は、訝しげな目線でキリキザンを見上げる。
斬撃の使い手に硬い鋼の殻は確かに手強い相手となりそうだが……

『ガコッ………ゴロゴロゴロゴロ』

フォレトスの方はあまりやる気がないのか、ゴロゴロと転がっていく。
然し、すぐ先であるトレーナーの足元で止まり、ちょいちょい、と足をつついた。

「……なに?フォートレス」

フォレトスが見上げる先には、ミニスカートにパーカー、首にガスマスクをぶら下げた風体の少女。
携帯を弄りがちに道場のバトルを眺めていたが、フォレトスに促されてキリキザンにそのジト目を運ぶ。

「……キリキザン?フォートレス、その子とやりたいわけ?」

『ゴギギ……』

「……違うの?」
394ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/02(水)23:50:20 ID:u2L
>>380
「突っ込んでくるのか…!?」

ケンタロスに下るギガインパクトの指令。それは、特殊技であるはかいこうせんへの物理体撃を意義していた。
とんでもない事を考えつく…発射が少しでも遅れれば間に合わない……ソウジが焦りを滲ませた顔をエレザードに向ける。
だが、エレザードは余裕だと言いたげな表情で、ソウジに視線を返した。

まさに額を擦らそうかというほどに二者の顔面は接近する。
全員の注目がズームカメラのように一点にその場へと絞られ――――エレザードは瞬時、ぐわりと目を見開いて眼前のケンタロスに視線を交わした。
ケンタロスの角先が肌に食い込むほぼ直前、豊潤のエネルギーを溜め込んだ口蓋が口角を吊り上げ、禁断のエネルギーの封が始動を切る。

「エ゛レェェエェェゾォォォォオ゛オ゛ォォォォ―――――!!!!」

それは半ば絶叫のようだった。
腹の底を枯らす勢いでの喚呼が合図となり、大きく開放された喉の奥から強烈な閃光の束が渦を巻いてケンタロスに降りかかった。
ケンタロスの纏うギガインパクトと破壊光線、どこまでも単純に暴力的なノーマルタイプ技の伯仲。
エレザードが留めるところを知らず吐き出し続ける全力のエネルギーは、ケンタロスの猛撃をも脆ともしない勢いで拮抗していた。

されどケンタロス側のギガインパクトもまるで激流を分かつ剛岩のように、破壊光線のエネルギーを掻き分けてやってくる。
ノーマルへの素養と陽光力を山積みにしたエレザード、ちからずくに命の珠の魔力を我が物にしたケンタロス。
二者の激突はまさに五分の様相を呈していて、その相克の余波は尋常なものではない――――――

「…っぐッ………!エレザード……やり、すぎ…だ…!」

ある一方がもう一方を押すたびにどわっと湧き出る衝撃が、トレーナー達の踵を擦らせる、大樹の幹すら軋ませる様はまさに台風の目の中にいるかの如く。
行き所を失ったはかいこうせんの跳ねっ返りは、公園の外郭を構成する木という木を根本からねこそぎ断ち切っては薙ぎ倒していく。
ソウジがその場に居続けられるのはもはや、相手のライチュウによるリフレクターが辛うじて飛び舞う礫なりを防いでくれるからだ。

しかし、加減を知らないエレザードは辟易するソウジを顧みず、彼はこの状況を心から楽しんでいた。こいつはよく耐えるものだ。
ケンタロスの決しては簡単に沈まない鬱陶しさのような憤りが激突の中で、一種の尊敬の思いへと姿を変えていく。
今は自分のスタミナも、技の使い方も全て忘れて、力の塊を吐き出し続ける。こいつとは―――――何処までも続けられる気がした。
395スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/02(水)23:58:07 ID:Quc
>>393
「ザン?」

何処かに相手はいないかと探していると、足元で何かが転がった。
いや、それはポケモンだ、同じく鋼タイプのポケモンであるフォレトスと目が合った。
ゴロゴロと転がって行くフォレトスを視線で追って、その先にいるトレーナーが視界に入る。

「おや、あの子は……」

キリキザンの背後からスパーダが声を上げる、キリキザンが見ている先にいる少女とフォレトスには見覚えがある。
優しい笑顔を浮かべ、手を振りながら少女へと歩み寄っていった。

「やぁお嬢さん、また会ったね」
「君もバトルをしに来たのかな?いやいい事だよ、危険な場所でバトルをするよりもずっといい、うん」

キャスタナは覚えがあるだろうか、そのエアームドを模した仮面とマント、そしてその雰囲気に。
396キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/03(木)00:17:02 ID:rRJ
>>394

「あ、あの時の変な人……」

携帯を弄る片手間にスパーダを発見するなり第一声からしてこれである。

「その仮面いっつも付けてるの?……そうね、次は貴方にしようかしら。」

「……フォートレスは乗り気じゃないみたいだけど」

『ガチャン』

殻を閉じて居留守を決め込むフォレトス。
長期戦が嫌いなのか、鋼同士で争いたくないのか、それとも単に眠いだけなのか。

「うわーっ、コジョフー、しっかりしろー」

と、彼女の目の前で、別のバトルの勝負が付いたらしい。
倒れたポケモンは、体に大きなつららの針を突き立てられていて、見るに堪えないほど痛そうにうめいている。

「そうね……少しは相手になるかしら?ブローニング」

そう名付けられたポケモンは、重々しい動きでキリキザンに振り向き、その図体を晒した。
フォレトスと同じく、やはり固く閉じた殻を持ち、フォレトスとは比べ物にならないほど、

『シェルルルルルル………』

大きく、刺々しい姿をしていた。

「で、ヤるの?ヤらないの?」

殻の隙間の僅かな暗闇から、小さなポケモンはそれだけで震え上がりそうな、ぎらついた目を向けている。
397スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/03(木)00:34:47 ID:LDl
>>396
「そう言えば名前を忘れていたね、僕の名前はスパーダだ、よろしく」

「ザン……」

出会い頭に言われた罵声はスルーしつつ、爽やかに名前を名乗るスパーダ、キリキザンは腕を組みフォレトスを見つめた。
殻にすっかり篭ってしまった彼を見て、溜息を吐き目線を外すキリキザン、その視線の先にまた別のポケモンが捕らえられた。

「あのポケモンは……あの子も君のポケモンかい?」
「そうだな……どうだ?キリキザン?」

「ザン!」

そちらの方から聞こえた叫び声にスパーダも振り向き、勝ち残ったポケモンが少女のポケモンだと彼女の口から語られる。
戦うのか、という問い掛けの答えをキリキザンに任せ、キリキザンが頷くのを見るとスパーダは笑った。

「よし!決まりだ!では僕のキリキザンの相手をして頂こうか!」
「キリキザン、存分に相手をしてもらえ!」

「ザン!」

そして、キャスタナのポケモンの前に歩み寄り、向き合う様に立ったキリキザン、両腕を組み相手の出方を見る構えを取っている。
398キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/03(木)01:05:47 ID:rRJ
>>397

『シェルァァァ………』

パルシェン、二枚貝ポケモン。
しかし彼の殻は、貝と言うにはあまりにも暴力的な形をしている。
触れるもの皆傷つけると言わんばかりの無数の棘。
先ほどのバトルでああなったポケモンを見るに、舐めた防御で彼に挑むのは自殺行為でしかない。

「そ。気をつけてね。」

彼女は「バトル」というより「喧嘩」をさせるような口ぶりだ。

「その子、見た目に違わずギザギザな悪ガキなのよ、小さい頃からずっとね」

「ね?ブロゥニン。だからこの子を相手にするなら"どうなっても責任取らないわ"。」

『………ニヤァ』

二枚貝の中は暗闇しか見えないが、明らかに「狩る者」の目つきをしていた。
重たい貝は動かない。棘先一つ動かさない。渡り合う両者に沈黙が続く。

ふと、とげとげの殻の一番小さい棘を、ぽしゅっ。っと一発、キリキザンの足元にコロコロと転がした。
399スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/03(木)01:17:15 ID:LDl
>>398
「うーん、随分と自信があるみたいだね、これは楽しみだ」
「僕のキリキザンも物足りなかったみたいだし、いい勝負になりそうかな?」

キャスタナの辛辣な言葉に対して、前と同じ様にスパーダは動じずマイペースに、言って仕舞えば都合良く解釈して言葉を返す。
それこそ精神的に余裕がある故の言葉選びなのかもしれない、彼の雰囲気からは勝ちたいという『欲』も、勝てて当然という『傲慢』も無かった。
ただ単純に、楽しみに思う気持ちと、指示を下すという意気込みだけ、無邪気な子供と同じそれである。

「……ザン?」

戦闘が開始したというのに、全く動く様子の見せないパルシェン。
足元に転がされた棘が発射された瞬間は身構えたが、それも自分に届かないとわかると、キリキザンは拍子抜けした様子で棘を軽くパルシェンの方へと蹴り返そうとした。
400ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/03(木)01:22:32 ID:697

「―――ッ……!」

二つの力の衝突。屈折したエネルギーの余波がライチュウの展開した防壁に衝突し激しく発光した。
その膨大なエネルギーを間近に感じ、冷や汗を流しながらも思わず歓喜の表情を浮かべるガイセイ。

(―――素晴らしい。これ程か、ポケモンの秘められし力は。)

「ブモオオオオッ!!!」

はかいこうせんとギガインパクトの鍔迫り合い。永遠とも思われたほんの数秒間の駆け引き。
出力を増すエレザードの放った一撃にケンタロスは徐々に押される。押されては両目を真紅に輝かせながら一歩、また一歩と前進する。一進一退、その繰り返しだった。
時折エネルギーの余波が幾度か迫ったがガイセイは怯まず、瞬き一つせずに光の中心で対面する二体のポケモンの姿を見据える。
―――だが、その"楽しい時間"にもとうとう終わりの時が訪れた。ケンタロスの両角に入る亀裂。両目を見開き、それでも尚耐えていたケンタロス。
じりじりと迫る光線が、爆発的な熱量がケンタロスの爪を砕く。皮膚を焦がす。然し耐えた。狂気とも言える形相を浮かべながら前方より来るエネルギーの波を全身で受ける。
そのやり取りの果てに咆哮を上げるケンタロス。ケンタロスの生命エネルギーが爆発し、微かにエレザードに肉薄した。
―――同時にケンタロスの両角が音を立てて爆ぜた。

「―――おお……。」

―――――視界を遮る激しい発光。

「―――!」

―――光が晴れた。同時に遂に耐え切れず、パラパラと崩れ落ち始めるライチュウの防壁。
ガイセイが見た景色は凄惨な物だった。両トレーナーを除いた公園一帯が完全に消し飛び、クレーターが生じていた。
身を乗り出すライチュウ。その瞳に写るは、クレーターの中心部で対峙する二匹のポケモンの影。一匹はケンタロス、もう一匹はエレザード。
口角を釣り上げて笑うガイセイ。

「ブ、ブモッ……」

部分的に炭化した皮膚。両の鼻から放出される黒煙。拮抗した、とは言え、あの鍔迫り合いの末にどうやらはかいこうせんをまともに浴びた様で無事ではなかった。
黒ずんだ肉体に二つの光。赤い瞳が、エレザードを睨む。ギガインパクトの反動とはかいこうせんのダメージで言う事を聞かない身体に強引に鞭打って一歩、また一歩と前進する。
トドメを。完全な、トドメを。
暴走した本能がそう命令していた。片や、エレザードの様子はまだ煙に覆われていて見えなかった。
五歩程進んだ先でケンタロスは立ち止まる。エレザードの影の前。前足を掲げる。

―――コロス、コロス、コロス、コロス、コロ―――

「――――ブモォッ……」

―――だが、その前足が振り下ろされる事は無かった。前足を掲げたまま、白目を剥いて後方へと倒れるケンタロス。完全に戦闘不能である。
勝負あり。
果たして、対するエレザードは―――。
401キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/03(木)01:43:53 ID:rRJ
>>394

気の抜けたような、子供の悪戯のような小さな飛び道具。
コロコロと返される棘から、キリキザンが目線をパルシェンに戻したその瞬間だった。

『バギャルルルルルルルルル!!!!!』

確かにそんな音が聞こえた。
沈黙を切り裂くようにやかましく鳴り響いた音だった。何にも例え難い音だった。
強いて言うなら、金属製のタライをバチで連打したような、そんな音だった。

近くにいた何人かは思わず耳を塞いだだろう。周りのトレーナーも一瞬何事かと目を向ける。
その場の殆どが目撃したのは、道場の下土を巻き上げてもうもうと舞い上がる煙だけだった。

「………ほんっと自分の手持ちながらうんざりするわ、"ロックブラスト"」

跳弾を防ぐため、キャスタナはフォレトスを盾に隠れるようにして、遮音性の高いヘッドホンを装着していた。

フォレトスのそれが「機関銃」なら、パルシェンのそれは「機関砲」か。
スキルリンク。連続技を必ず最大量で出せる特性だ。
402スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/03(木)02:01:38 ID:LDl
>>401
「───流石のスキルリンクと言った所かな、驚いたよ」

キャスタナの隣に立ち、もうもうと燻る砂埃を見つめつつスパーダは語り掛ける。
最大まで打ち出されたロックブラストをまともに受けてしまえばタダでは済むまい、しかもこれが本領ではないとスパーダは知っていた。
……ていうか耳も塞がず動じた様子も無く通常運転、本当に人間かこいつ

「キリキザン、無事かい?」

煙る砂埃、それが自然にはれる前に内側から切り裂いて、飛び出すキリキザンは全身の硬度を一時的に増していた。
『てっぺき』を使用して自身を硬化させ、襲い掛かるロックブラストのダメージを大きく抑えたのだ、そして防御を解除して向かうのは反撃の構え。

「ザンッ!!」

右手の刃を振り上げ、パルシェンの硬い殻に向かって振り下ろす、キリキザンのかわらわりはリフレクターすら割砕く、その程度の殻など簡単に砕いてやるという自信だろう。
その様子を冷静に見ているのは、トレーナーであるスパーダだった。

「……ふむ」
403キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/03(木)02:24:38 ID:rRJ
>>402

『シェルッ!?』

バキィッ!と、折れる棘。
先ほどのにやけた目つきが消えた。『狩る者』は『喧嘩』の目に変わった。
それが僅かな殻の隙間からでもわかる。目つきのぎらつき方が違う。

それは、キリキザンを「好敵手」として認めた瞬間でもあった。

『シェルルッ……!』

パルシェンは身をよじり、わざとキリキザンに大きな棘を向けていた。
まるで最初から「割らせる」のが目的のように。

バキィ!と音を立てて大棘が折れる。
意外にも、棘の中身は空洞だ。恐らく棘を押し出して飛ばすためにこういう構造になっているのだろう。

つまり、狙うのは、至近距離からの、痛撃。

「「アクアブレイク」って最近出てきた技らしいわね、ドロポンと違って水を使いすぎないから助かるわ」

と戯言を呟いたアクアブレイクの「ア」のあたりで、白い一閃の飛沫が上がる。
高圧の水の槍が、キリキザンの鋼の肉体を貫かんとする。
404ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)02:38:04 ID:olH
「お空は真っ暗、こっちの心も晴れ模様とはいかないか……」

夜、森のなかに張ったテントの下で青年は呟いた。
ざあざあと降り注いでくる雨が屋根を打つ。雨が好きでないロータは、石で囲んだ火の上にポットを置いてため息をした。

「えれきもくろろも体調崩しちゃうし、ツイてないなァ。ほんの少し前までは全然元気だったのにどうしたんだか」

火の傍らで、サンダースとブラッキーが、タオルケットをかけられて横たわっていた。
小刻みな消え入るような呼吸は、並々ならぬストレスを感じたことを示している。
ポケモンセンターの職員も理由が全くわからないようで首をかしげていた

「……なんだってんだ?」
405スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/03(木)02:43:28 ID:Xyx
>>403
パルシェンの見る目付きが変わる、それを睨み返すキリキザンの視線と交差した。
『さっさと本気を出せ』と言わんばかりの冷たい視線で、折れた棘がキリキザンの頬をかすめて行く。

「最近わざと定義された物だね、なんでも水の力を使った物理攻撃をそう呼ぶ様にしたとか」
「ははは、僕も中々勉強しているだろう?」

キリキザンの攻撃の後隙を狙ったアクアブレイク、胴体を貫かんと至近距離で放たれるそれを、キリキザンはギリギリの所で回避した。
……いや、回避とは言っても直撃を避けただけだ、アクアブレイクがキリキザンの硬い脇腹を削り取る。

「……でも、バトルの腕も負けないよ?」
「キリキザン!今だ!!」

「ザンッ!!」

だが、これはキリキザンにとって臨んだ行動であった。
パルシェンのとくせいであるスキルリンクで撃ち出される連続わざは、全弾命中の威力を見れば確かに大きい、しかし一発ずつのダメージは小さい物だ。
だから、一撃の威力が大きいわざをパルシェンに繰り出して貰う必要があった、その為に連続わざが打ちにくい懐へと潜り込んだのだ。

何故パルシェンにアクアブレイクを出させたか?それは次にキリキザンが放つわざに全てが集約される。

「───メタルバースト!!」

「ザァンッ!!」

受けたダメージを倍にしてそのまま返すカウンターわざ、メタルバースト。
直撃とはいかないまでも受けたダメージは小さくはない、その威力を倍にして両腕に集中させる。
アクアブレイクの槍の側面を転がる様に受け流しつつパルシェンへの距離を更に詰め、ゼロ距離という逃げ場のない距離で放たれる、両掌低。
これがキリキザンの戦法、メタルバーストを使用したカウンターである。
406ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)02:47:15 ID:kIV
>>404
テントの外、大きな声と、ドラゴンタイプっぽい足音が聞こえてくるだろう

「最っあく!!なんでいきなり雨降ってくんのよー!」

その声は女性の声で、音楽やTV等に興味あれば聞き覚えがあるかも知れない
そして、その少女はヌメルゴンの下に被さるように歩いている
要はヌメルゴンに雨から守って貰っているのだ

「ちょっと!ヌメヌメー!私を雨に晒さないでよー!っとにこの子は~・・・!!」

ヌメルゴンはと言うと、呆れた調子の表情で歩いている
その様子を見ると若干トレーナーの少女を舐めているようにも感じられるだろう
407ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)02:52:11 ID:olH
>>406

「君も雨にぶち当たったクチかい
お望みとあらばテントの下にいれるけど、どうする」

そんな光景を見かねたのか、ひょっこりと屋根から顔を出してロータはいった

「ヌメルゴンは悪いけど引っ込めてね、そんなに広くないからさ」
408ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)03:00:25 ID:kIV
>>407
「え!?いいの!?」
テントから現れた少年の提案に両手を合わせて大喜びです
「ぬ~~~」
ヌメルゴンはと言うと引っ込めてねっと聞くと嫌そうで、雨を喜んでいて

「・・・んじゃ、こいつはこのまま外に待機させとこっかな~、この子、雨が大好きだからさ」

ヌメルゴンの首元をなでなでしながら言うと、テントの入り口へと走ります

「お邪魔します~・・・もう服とかも濡れちゃってて・・・はぁ・・・」

金髪でサングラスを掛けた少女はテントの中へと入って行きます
409ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)03:05:14 ID:olH
>>408
「そうなの。ま、中が濡れなきゃいいけどね」

テントの中は人が二、三人入れる程度
生活用品が最低限広げられている

ロータはビスケットをかじりつつ、茶を飲むために湯を湧かしているところだった

「……ところで君、どっかで会わなかったかな?
なんか見たことあるんだけど……。ナンパとかじゃないよ、ほんとに既視感があるんだ、君の顔に」

そんなことを言いながら、ビスケットの袋をミカの方へちょいと寄せる
つまんでもいいよ、と言うことらしい

「うーん、記憶違いかなぁ」
410キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/03(木)03:11:57 ID:rRJ
>>405

両腕の一閃が、直撃と同時に爆発を起こした。
いや、厳密にはパルシェンの外殻が、弾けた。

鈍い音と共に破片が飛び散った。深い紫色の外殻はほとんど弾け、薄い色の内殻が露になる。
パルシェンの内殻は、中身を保護する程度の副次的な器官であり、外殻ほどの硬質さは無い。

そして、中身に攻撃を貰うということは、パルシェンにとって即敗北を意味する。
つまり、パルシェンのこの状態は――――一転して窮地というわけだ。

「……チッ」

すました表情だったキャスタナの顔が、少しだけ歪んだ。

「………ブローニング、ここまで派手にやられたの」

「随分久しぶりじゃない!!!!!」

ギンッ!!!とパルシェンの殻から覗く血走った眼光が露になった。
キャスタナが、印象とはうって変わって、腕を組み、厳しい大声を張り上げた。
まるで、氷柱針のように鋭い視線。キャスタナの殻も割れたような、そんな顔つき。

直後、激しい水飛沫と、先ほどと同じ耳をつんざくような爆音が上がる。判断するまでも無い、棘の乱射が始まったのだ。
土煙を上げて、すさまじい弾幕が道場中を騒音で包む。
そこら中に跳弾が飛び散り、爆音で耳を塞ぎながら各々のポケモンが跳弾から主人を守ろうと悪戦苦闘する大惨事になっている。

「からをやぶる」。パルシェンの技で最も有名な、最初で最後の最大の切り札だ。
411ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/03(木)03:14:42 ID:6MB
>>400

視界を閃光から守った両腕を下げた先に、いつの間にか、リフレクターは砕け散っていた。
今まであった暴力の嵐が嘘のように、静寂が訪れている。ただ一つ残った枝の燃え散るような音がぱちぱちと、どこか観衆からの拍手のように思われる。
間違いなく、勝負は決していた。

ソウジは、半ば放心したように口を開けて煙の向こうにぼんやりと目を張った。


「エェレぇ……」

でこぼこに抉れきった砂地、残り火に浅黒い煙を焚く残骸、倒れ伏したエレザードにはもはや立ち上がるスタミナは残されていない。
対してケンタロスはタフな奴だった。土煙が舞って定まらない視界の向こうに、まだこちらへ歩み寄る姿がある。
あれだけの光量を喰らったというのに、まだ向かってくるのだ。
振り上げられるその前足、緊張が疲労に解かれ、穏やかな諦観が身体を支配し、エレザードは敗北を覚悟する――――だが、その時は来ない。

「エ…レ……」

エレザードは辛うじて働く目を動かす。傍らには、動かなくなった好敵手の姿が転がっていた。
…勝った。呆気ないような、悔しいような。それは少なくとも単純な喜びではなくて、複雑な感情が胸すじを通り抜けた。
形としては自滅に近いのかも知れないが、ケンタロスが与えたプレッシャーが、エレザードにここまでの疲労困憊に追い込んだのは事実だ。
彼にはもう意識がないだろう…それでもエレザードは最大のリスペクトをもって、激闘を共にした戦友へ力強くサムズアップを残した。

「……っはぁ…」

安心が胸を撫で降ろす。ソウジは詰まった息を吐いた。
足に力が抜けて、すとんと腰が落ちる。
…どうにか押し切れたようだ。はかいこうせん、ギガインパクト……使用者に消耗を要求する技の代表格。
一発屋のエレザードにとってはとくにそのデメリットが色濃い存在だった。一撃で決まらなければ、一巻の終わりであった。

「大丈夫か…?エレザード」

「エレ~~~~~」

黒焦げになったオレンの花を口でつつきながら、エレザードはしなびきった声を伸ばす。
彼の出した声があまりにも間の抜けていたので、ソウジは少しクスリと来た。ケンタロスに立ち上がる気配はない…ぎりぎりの勝ちは取れたということか。
ソウジはエレザードに歩み寄った。彼方此方が焦げ付いてしまったエレザードの身体は、糸が切れた人形のように動かない。
ポケモンとはこうやって何度も戦い、生命の焔を燃やし輝かせるものなのだから…凄いものだ。

「勝手でしたら、すみません!」

ソウジは元気のかけらを二匹の口に放り込んだ。間もなく、ケンタロスは意識を取り戻すだろう。

『…アンタはまだ戦えた。…俺の負けだよ』

のそっと胡座を搔いて両腕を組んだエレザードが、気恥ずかしそうに声を掛ける。
412ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)03:15:12 ID:kIV
>>409
「とりあえず、ありがとうね」
口元が緩み、まずテントに入れて貰ったお礼を言うと、ビスケットを受け取って、口にすると美味しい、とまた笑顔になります
そしてロータの問いに対して、少し考えて

「ま、一晩ここで泊めて貰うんだしね」

サングラスを外します。その素顔はTVとかで見た事あるだろう

「見た事はあるかも知れないね、でもとりあえず、はじめましてかな。私は知ってると思うけどミカよ、よろしくね」

微笑みながらもロータに言って

「相棒達も紹介しとくと~、外のはヌメルゴンのヌメヌメで、後はチルタリスのチルチルに・・・リザードンのカゲッチね」

相棒達は見事にテント内で出せそうに無い奴らばかりで少し苦笑いしてます
413ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)03:23:35 ID:olH
>>412

「一晩!?冗談じゃないよ、雨が上がったら帰ってくれよな……ま、やまなきゃそれもやむ無しではあるんだけどね……」

時間は深夜。雨はやむどころかむしろ勢いを強めている
どうやらロータの思うようにはいかなさそうだ

「僕はロータ。……うーん、知ってるような、知らないような……。
町とかで見た気がするんだけど……。まぁいいか……

僕の手持ちは、そこで潰れてるの二匹」

と、サンダースとブラッキーを指差す
生まれたときから一緒なのだろう、互いに母に抱きつくように絡まりあって寝ていた

「と、こいつ」

ぽん、とボールが開き、一体のワンパクそうなグソクムシャがロータの頭の上に顎を乗せた
ぐしゅああー、と、馴れ馴れしく鳴く。人間のものに言語化したら、姉ちゃんいくつ?ってところだろう

「……しんげん、重い。可愛いからってあんま調子のんなよなー
ポケモンの癖に美人に目がないんだ、こいつ」
414ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)03:35:46 ID:kIV
>>413
「だって、この雨・・・強くなってって、やみそうにないよ?」
その強まる雨がテントに当たる音も激しくなって行き
外では更に強くなった雨にヌメルゴンは大喜びしてるのかドスドスと音を立てて多分ゴロゴロとしてるのだろう

「ロータ君って言うのね、ほんとありがとうね」
また首傾げてにっこり笑顔するも
「て、私の事ははっきりとわからないのね・・・私の知名度もまだまだなんだ・・・」

ガクッとします、しょぼーんとなっていて

「可愛い・・・こんなに抱き合ってて」

サンダースとブラッキーを見て微笑ましくなったのか、その様子を見て和んでる所、グソクムシャにわっと驚きます

「あはは、めっちゃ懐いてるじゃない、その子はなんて言ってるのかな?」
興味津々に聞きます

「美人に目がないって、ポケモンなのに変わってるね~」
等と言ってグソクムシャの頭を撫でてみる
415ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)03:43:28 ID:olH
>>414
「ふたごだからね
信じられないかもしれないけど、ひとつの卵に一緒にはいってたんだ、そいつら
イーブイにしては重いなぁとは暖めてたときから思ってたけど、産まれたときはおったまげたね

……こいつがなにいってるかはわからないけど
想像はつくよ、女の子大好きだからね。ナンパなかんじのこといってるんだろ」

美人ってのは特だよね、笑うだけで金になるんだから……
そんなことを思いながらバックからとりだしたタオルと、着替え用のすっぽり被れるタオルを投げる

「僕のTシャツで良ければ貸すよ。目のやり場にこまるからさ……。
ところで君の手持ちにはドラゴンが多いけど、出身はジョウトだったりしない?」

奇妙な質問

「と言うのも僕がそうなんだ。ジョウトのドラゴンタイプが盛んな町で育ってね
昔はカイリューとガブリアスを使ってたんだ
いまは故郷で祖母の介護をしてもらってるけど……
なんにしたって、その偏ったパーティーにはちょっと親近感を感じるね、昔の僕に似てる」
416ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)03:58:27 ID:kIV
>>415
「へー、双子のイーブイとか・・・同じタマゴから出てきたってそんな事ありえるんだ・・・
で、この子の方は私をナンパしてんのか~、見る目あるじゃんこの、この」

グソクムシャの頭を軽くこつん、こつんと二度やり、タオルを受け取ると

「あー、確かに・・・ありがとうね、それじゃあ借りよっかな・・・この雨じゃなかったらチルチルに乗って帰るつもりだったし・・・着替え持って来てなかったのよね」

恥ずかしそうに顔を赤らめてそう言うと、タオルを被りながら

「ジョウト・・・よくわかったね~」

ジョウトだったりしない?の質問には、驚きながらも答え

「え?そうなの?・・カイリュー!ガブリアス!へー!」

カイリューやガブリアスの名前を聞くと目を輝かせてます

「んじゃ同郷なのかもね、ドラゴンタイプが盛んなジョウトと言えば一つしかないし・・・まぁ他の地域ならドラゴンタイプの街あるみたいだけどね」

更に

「でもカゲッチだけはドラゴンタイプじゃないからね~、でもこの子は外したくないからどーしてもリザードナイトXがほしくて」

リザードンはドラゴンタイプではないが愛着が強いようです
417ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)04:21:57 ID:olH
>>416
「あんま調子に乗らせないでよ、ほんとに手がつけられないわんぱくものなんだから」

現に調子に乗って今にも着替えを始めたミカへ抱きつきたさそうに手を伸ばしている
それを抑えるロータはジト目である

「フスベシティだったら同郷だね。
ってことはワタル兄ちゃんもしってんのかな、チャンピオンやってる人」

ジョウト地方の現チャンピオン、ワタルについて言及

「本当にドラゴン好きなんだね……。
リザードンのメガシンカアイテムか……。僕もあまり明るくないな……。強くなりたいの?」
418ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)04:34:22 ID:kIV
>>417
「そっか、ごめんね。ほら、ちょっと大人しくしててね」

グソクムシャに言うと、タオルを被りながら着替えて

「やっぱり!まさかこんな所で同郷の人と会うとはおもわなかったな~」

その偶然に若干感動しているようです

「ワタルさんはもちろん知ってるよ~、そりゃもう、憧れるよね。それにやっぱフスベシティの誇りじゃないあの人」

そして着替え終わったようで、タオルはありがとうと返して、服なんかは乾かそうと火に近づけて

「んー、強くなりたいってのもあるけど・・・ほらやっぱカゲッチだけドラゴンタイプじゃないのが気になるのよね
あ、でもこの子は昔、街に来てた博士に貰った、言ったら私の一番最初のパートナーだから外す気は絶対ないんだけど」
419ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)06:08:32 ID:olH
>>418
「すごいよね。僕も昔はよく挑ませて貰ってたよ……軽くあしらわれてたけど。あんなのにも勝っちゃう人がいるんだから、世界は広いね」

今やったら多分結果は違うけどね、と、内心舌を出しつつ

「……最初のパートナー、か」

ふと表情を曇らせる

「いいパートナーを持てて良かったね。……濡れたタオル渡されても困るよ、乾かして」
「まぁ、タイプの統一性なんか気にしても仕方ないよ。シンオウチャンピオンのシロナは、多彩だからこそ最強と言われている訳だし」
「勝ちの幅が広がったと思えばいいんじゃないの?」
420ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)10:57:53 ID:kIV
>>419
「ロータ君って・・・ワタルさんと仲良かったのってか身近だったんだ・・・」

めちゃくちゃ羨ましそうに見つめて言う少女

「それもそっか~・・・そだ、これサイン書いてあげよっか?」
タオルを乾かしつつ、冗談っぽく言って、寝てるブイズを撫でてみたり

「うーん・・・それも・・・そうか~・・・まぁ私もメガ進化はできたらいいなー程度しか思ってないからいいんだけど」
421ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)11:52:23 ID:olH
>>420

「そうだよあのクソ……いやなんでもない」

色々思うところはあるらしい

「……サインって、君はやっぱり、なにかそういう職業についてる人なの?モデルとか
綺麗だもんね。
とはいっても僕もバックパッカーだから使い道なんて思い付かないしね。別に平気」

アイドルやらに心酔する気もないし、サインなんかもらっても、と言う話だ

「嫌な話するけど、結構お金に困ってるから君のサインアイテムをファンに売り付けてもいいってのなら貰っておくよ」

ジョーク8割、2割は本気
なにせよくカツアゲされる身の上である
常時金欠だ
422スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/03(木)12:16:12 ID:LDl
>>410
「どうだい?中々やるだろう?」
「どうするお嬢さん、これ以上ポケモンに怪我をさせたくないのならこの辺りでやめにしておくべきだと僕は思うけど」

パルシェンの殻をメタルバーストの一撃で砕き、キリキザンは拳法の残心のような動作を行い息を吐く。
パルシェンの硬い外殻が砕けた、決して少なくはないダメージの筈だと、スパーダは余裕を湛えた笑みでキャスタナを見た。
それは挑発に他ならない、口では降参を薦めているが、パルシェンの本気はまだ見てないのをスパーダは理解している。

「───うん、やっぱりそう来るよね」
「ニダンギル!出番だ!」

当然、キャスタナがここで諦める筈がないのも、パルシェンがそのわざを使うのも予想がついていた。
殻を自ら砕き、防御を捨てた攻撃形態にシフトチェンジする大技、からをやぶる。
砕かれた殻の欠片が飛び散るのを、スパーダのボールから自ら飛び出したニダンギルがワイドガードを用いてスパーダとキャスタナを跳弾から守る。
これはパルシェンの所謂本気の表れだ、キャスタナが叫び声を上げたのも相俟ってスパーダはそれが嬉しかった。

「いい表情をするじゃないかお嬢さん、仏頂面よりよっぽどいい」
「じゃあ僕達も少々激しく行かせてもらうよ、キリキザン!」

「ザンッ!!」

今までつまらなさそうな表情だったキャスタナが、感情を見て感じられる表情に変わる、それだけこのバトルに思い入れをしてくれている証拠だ。
そうでなくては面白くはない、これから起こる激しい戦いを予感しスパーダは楽しそうだ。

パルシェンの飛び散る殻を防御姿勢で防いだキリキザンは、殻を破ったキリキザンに向かって右手を伸ばし、クイクイと指を曲げた。
『かかって来い』という意の、ちょうはつである。
423ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)13:29:36 ID:kIV
>>422
「ま、そう言わずに。ここであったのもなんかの縁だしこのままなーんも無しにサヨナラも寂しいじゃない」

半ば意地?表情は笑顔取り繕い、乾いたタオルにサインして渡しますね

「・・・一応、アイドルやってるんだけどね~、TVとかで見た事ない?」

そう言いながらもグソクムシャを撫でてます

外ではヌメルゴンが眠りについたのかいびきのような声が聞こえる

「ちなみに私のチルチルなんかはよーくいっしょにステージに出たりするよ。ほら、そらをとぶ使って乗りながら歌ったりね
チルチルもカゲッチもちょっと大きいから、ここじゃ見せてあげられないのが残念~。外は大雨だしカゲッチは特に心配だしね」

実際、ポケモンを使ってパフォーマンスなんかもこの世界では珍しい事では無いのだろう
424ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/03(木)14:19:07 ID:697
>>411

―――意識を取り戻したケンタロスが両目を見開く。激しく鼻息を噴出しながら立ち上がると、エレザードを睨み下ろした。
このケンタロスは特に血の気の多い個体である。エレザードを睨み下ろすや否や、前足を再び掲げ―――

「―――やめろ、ケンタロス。」

―――ケンタロスの真後ろ。
重みのある、年配の男の様な低い声が響いた。その声の主はガイセイである。
先程の好青年の様な明るい声調とは打って変わっていた。全身に得体の知れないサイコパワーを帯びてそれ以上ケンタロスは動かない。
そのサイコパワーの正体はライチュウである。

「―――勝敗は決した。我々の負けだ。」

『ごめんね、こいつとびっきり狂暴で話が通じないんだ♪』

ライチュウがニヤニヤと笑いながらエレザードに詫びる。ケンタロスはガイセイが腰から取ったモンスターボールに戻された。
ふぅ、と一息吐くとガイセイは少年とエレザードを腕を組みながら見た。
死闘だった。ギガインパクト、はかいこうせん。二つの大技のぶつかり合い。その余波によりほぼ消し飛んだこの一帯が戦いの激しさを物語る。
組んでいた両腕を解き、ガイセイは好青年らしい表情で笑みを浮かべる。

「良い勝負だったぜ!手に汗握ったこの勝負、お前たちの勝ちだ!」

明るい声でガイセイは負けを認め、二人に賞賛を送った。
握手を求め、右手を差し出すガイセイ。

「俺の名前はガイセイ!さっきはケンタロスにげんきのかけらを与えてくれてサンキューな!えーっと……」

「あ……えっと、君の名前は?」

そういえば、と、まだ名前も聞いていなかった事を思い出し困り顔で少年の名を問う。
その傍でふよふよと浮くライチュウが少年の顔をじーっと見つめていた。
425ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)14:24:09 ID:olH
>>423

「ごめんね。一ところにとどまらないからあまり世情には疎くない。
そういう人間にも広く伝わるようアイドルとして精進してくれたまえってところかな、記憶にはひっかかったし、知名度は相当のものだろうけど」

撫でられたブイズは少し楽になったようだ
早い呼吸が正常なものに戻っている
グソクムシャは嬉しそうに鳴いて、お返しのようにミカの頭にその大きな腕を乗せた

「……」

タオルは売ろう、と。内心で思った。

(すまない……こんなつまらない男で本当にすまない……)
(しかし旅の資金は欠かせぬのだ)

「派手だね。僕のポケモンはそういう使い道考えたことなかったや、バトルとか、日常生活位でしか」
「今じゃ無理だけど、えれき――サンダースがいれば食料には困らないし」
426キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/03(木)19:08:19 ID:rRJ
>>422

『シェル゛ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛………』

パルシェンの目は血走って真っ赤に染まっている。鬼の形相とは正にこの事を言うのだろう。
殻がボロボロになったせいで、体から射出する棘が直接露になり、余計に刺々しさが増している。
パルシェンのそれは、まるで怪我をしてからが本番と言わんばかりの、すさまじい反骨精神を漂わせている。

「その言葉、そっくりそのまま返すわ。貴方よっぽど死にたいみたいね」

仁王立ちで腕を組み、殻を開けてうろたえるような目線のフォレトスに目配せすらしない。
ピシッと、彼女の頬に一筋血が垂れた。言うまでも無く、フォレトスから一度身を乗り出せば跳弾は容易に人の肉など引き裂く威力なのは目に見えている。
しかし、それが動揺からのものでもないことは、その鋭く見据える目線からも分かった。
挑発など無くとも、スパーダは今、真正面から彼女の純粋な怒気を引き出している。

「”落とし前”付けなさいよブロゥニン!!!」

『ギャリンッッ!!!!!!』

トレーナー自ら、パルシェンを奮い立たせているのが口調からはっきりと伝わった。
あの夜のような殻を固く閉ざしたような彼女の立ち振る舞い。その殻の内側に、意外なほどに激情家の一面を隠していた事がようやく分かった。

目を回すような高速戦闘が始まる。水を噴射してスラスターのように使う立体軌道。轟音と飛び散る破片が、三次元化して襲い掛かる。
もはや周りのトレーナーはバトルを中断してポケモン達の作る盾に隠れ、激情したパルシェンのバトルに付き合うしかなかった。

パルシェンはすぐには水の大技を使おうとしない。それどころか、氷柱針の表面に水を含ませ、少しでもダメージを蓄積させようと工夫している。加えて、なるべくキリキザンの「足」に攻撃を集中させていた。
激情しながらもその思考は極めて冷静にキリキザンを「破壊対象」として分析している。
こんなものを手持ちに入れるほどの彼女は、一体何が恐ろしくてこんな兵器のようなポケモンばかり持っているのだろう……?
427ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)20:15:43 ID:WWl
>>425
「そっか・・・ところで、この子達、どーかしてるの?」

知名度は相当、そう聞くと若干嬉しそうに笑顔になる
そしてブイズ達の呼吸が荒かった事に言及する

「今は無理ってもしかして・・・病気かなんかに?」

更に目の前の青年が言った、今は無理だけど。この一言にも引っかかる事があるようで
428ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/03(木)20:36:59 ID:6MB
>>424

エレザードの手当に回っていたソウジの上に黒い影が落ちる。
彼はまだ戦おうと言うのか――――腰を抜かして尻餅をつくソウジをかばってエレザードが立ちはだかる。
だが、その怒り狂った前足が肌に触れる寸前…ケンタロスの身体は光の粒子に転換され、ガイセイのボールに還っていった。
じゃじゃ馬なケンタロスとの戦いに気疲れが重なったエレザードもまた、どすんと腰を降ろし。

『まったくヒヤヒヤさせてくれちゃうよ…、っつーかポケモン公用語くらい仕込んどこうね!』
『……お前ら、普段どうやって会話してんの…?』

その場を弁解したライチュウに呆れ気味なクレームを送りつつ、額に浮き出た冷たい汗を拭きやる。

『…ま、いーや。あの目は"楽しんでた"だろーからさ。それでいい。』

…アイツは戦いの為に生きている存在だった。自分を受け止めてくれる相手…そんな好敵手と身骨を削り合わせる事が、あいつの生きがいで、自分だけの居場所。
血走っていて焦点の定まらない、あのケンタロスの眼差しに一すじの鮮やかな光を思い返したような気がして、一人納得するようにエレザードは頷く。

一方、何の会話をしているのだろうと尻餅を付いたまま二匹のやり取りを清聴していたソウジは、ガイセイから声を掛けられて気を取り戻す。

「……あっ!あ、いえ、ダウジングマシンで拾ったやつですから大丈夫ですよ」

快く差し伸べられた右手を取って立ち上がり、頭を掻く。
そう言えばお互いにずっと前のめりで名乗らなかった事を言われて思い出し、ソウジも慌てて応える。

「オレ、ソウジって言います。…それにしても物凄い勝負でした。ギガインパクトとはかいこうせんがぶつかったら、こんな風になっちゃうんですね…」

もはや滅茶苦茶になったこの公園は、かつての原型を思い出せないほどにまで壊滅していた。二匹が遺した技の爪痕の大きなものを確認しながら、改めて驚愕する。
ガイセイに視線を戻す手前で、こちらの表情を伺うライチュウと目が合った。
そう言えば。このライチュウはどこかカントーに生息しているのとは少し雰囲気が違う。
特に目とか、目とか。サファイア色に輝くきらびやかな眼に、ソウジの視線は釘付けになっていた。
429ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)20:37:36 ID:zw0
>>427

「うん……昨日までは元気だったのに、今朝から急に具合を崩してね……」


風邪の予兆なども全くなかった
出し抜けに崩したのである

「こんなこと、いままでなかったんだけどね。――何かいやな知らせなんじゃないかと、思うよ」

サンダースがわずかに顔をあげ、弱々しく泣いた。その眼には色濃い怯えの色がある
今まさにどこかから迫ってきている何かに、怯えているかのような

「……まさか、な……バカみたいな質問をしていいか?」



「――君は、白いエーフィを……見たことがあるか?」
430スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/03(木)20:47:51 ID:LDl
>>426
「はっはっは、お嬢さん、そんな言葉遣いは感心しないな」
「それに……うん、死にはしないよ、死なせもしない」
「バトルに命を賭けると言うくらいの意気込みだと受け取っておこうかな」

「スラァァーッシュ!!」

周囲に甚大な被害が及ぶ中、スパーダの立ち振る舞いは何一つ変わってはいなかった。
その内でもう一匹の相棒であるエアームドを出して他のトレーナーやポケモン達の避難誘導を行う。

高速で移動するパルシェンに対するキリキザンは、待ち構える構えを取って攻撃する隙を伺う。
相手が捕まえられない程早いのなら無駄に動かず確実に一撃を入れられるタイミングを計るべきだと考えたようだ。
……だが、その判断が果たして本当に正しいのか。

「所でお嬢さん、少し世間話でもしないか?」
「何、ちょっとした身の上話さ───『彼』のね」

自身に向かって来る攻撃のうち、直撃しそうな攻撃だけをステップで回避するキリキザンの動きを見詰めながら、スパーダは傍のキャスタナに語り掛けた。
今はキリキザンの判断に任せている、それに彼女の方も纏まった指示は出していないようだし、話を聞くくらいは出来るだろうと。
431ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)21:05:56 ID:WWl
>>429
「そうなんだ・・・心配だね」

と、ブイズ達を見つめていると青年からの突然の質問に

「白い・・・エーフィ?」

首を傾げる、この様子では見た事はないのだろう

「・・・白いエーフィは見た事ないんだけど・・・それがどうしたの?」
432ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/03(木)21:18:39 ID:zw0
>>431

「だよな……ならいいんだ。僕は今ものすごくバカなことを言ってる……」

深いため息

「もし白いエーフィを見たなら――ありえないだろうけれども、もしであってしまったなら、全力で逃げた方が良い
……茶をあげるよ、冷えただろ」

ハンドタオルを手に巻いてポットを手に取り、ロータはマグカップをミカに手渡した
ポットからはミルクと茶葉の混ざった甘ったるい香りが溢れている

「チャイだ。ガショウの実を削っていれて煮込んだから、暖まるよ」

ガショウの実が何かはアナグラムなので察して欲しい

「僕はこいつらの看病もあってあまり深くは眠れないから使い古しでよければ寝袋を貸すよ
それを飲んだら寝た方が良い。いまは短期連休だからね、稼ぎどころだろう?アイドルは。それとも休暇は普通だったりするのかな
なんにせよ明日に支障を残さないように」

苦笑

「同郷のよしみだ。朝イチで起こしてやるから、安心してぐっすり眠りなよ」

ミカが眠るのを確認したら、ロータもチャイを舐めながら読書を始め、夜が過ぎるのを待つだろう
不思議な縁でふれあった同郷の二人、はてさてこれからどうなることやら――――

/つぎで絞めてしまってくだされー
433ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/03(木)21:22:52 ID:697
>>428

「ソウジって言うのか!よろしくな!」

(―――ソウジ?何処かで聞いた事のある名前だが……。)

にこりと笑うガイセイ。然しはて、何処かで聞き覚えのある様な。
諸事情でリーグ関係者及びジムリーダーについて詳しい彼はその名前に聞き覚えがあった。
―――とは言え、考えても答えは出て来ないのでその疑問を頭の片隅に起き。

『~♪』

―――どうやって会話をしているのかという問いかけをはぐらかす様にライチュウはオボンのみを頬張る。
ふと視線が合うライチュウとソウジ。ライチュウが『そんなに珍しい?』と言いたげな表情でソウジの事を見た。
そんな二人のやり取りに気付いたガイセイ。

「こいつはライチュウだぜ。……とは言っても普通のライチュウじゃない。」
「アローラ地方のライチュウ。アローラ地方じゃライチュウはエスパータイプを備えてるんだ。」

「……ま、こっちじゃ珍しいだろ?」

―――アローラのライチュウ。マラサダの食べ過ぎで肥満体型になったライチュウがエスパーに目覚めた。
……だなんて馬鹿げた説もあるが、実際の所、何故ライチュウがエスパータイプに目覚めたのかはハッキリとはしていない。
カントー地方やジョウトでは一切見られない、こっちでは希少なライチュウだ。
自分の事を興味深そうに見るソウジの事をにやにやと見つめながらライチュウはふよふよと宙を浮いていた。

「ああ、手合わせしたのも何かの縁。さっきのげんきのかけらのお礼も兼ねてこれをやるよ。」

ガイセイは鞄から袋一杯に詰まった木の実を取り出し、ソウジに差し出した。

「実家がシンオウにあってな、木の実農家やってんだ。チイラのみとかバトルで使える木の実も結構あるから、是非使ってくれ!」

チイラのみ、シュカのみ、サンのみ、ナゾのみ……袋の中に入った木のみは何れも希少なものばかり。
そしてバトルでも有用なものばかりだった。現にガイセイの実家は木の実農家で毎週鬱陶しい程にこの手の木の実が送られて来る。
沢山あって食べる事には困らないのだが、最近は送られて来る量が増えて処分に困っていた。
なので熱いバトルが出来た相手にはこうして木の実を無償で渡しているのだ。お裾分け、である。
434ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)21:41:04 ID:WWl
>>432
「赤いエーフィね、了解。忠告ありがとう」

微笑んで、受け取ったお茶を飲み美味しいと呟く。ガショウの美を入れて平然と飲んでます
寝袋も、甘んじると

「優しいんだね、それじゃあ私は寝るけど・・・ロータ君もあんまり無理したらダメだよ」

そんな事をロータに言うと、寝袋に入り、ブイズ達にもおやすみと微笑みかける
そして眠りにつくだろう


//了解です、絡みありがとうでした!
435ミカ◆2NA38J2XJM :2018/05/03(木)21:41:34 ID:WWl
赤い→×
白いに訂正で
436ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/03(木)22:08:44 ID:6MB
>>433

「アローラ………じゃあ、これが"リージョンフォーム"…」

ガイセイがアローラ固有の種だと語ったライチュウの身体を全方位から眺めて回る。
急激な環境の変化に対応した外来種が長い時間を掛けてタイプや姿を変えるといった生態の総称…。
確かに、そう言われてみればバターロールのように渦巻いた耳、サーフボードのように発達した尻尾…それらにはどこか南国の雰囲気が香る気がした。

「シンオウの木の実ですか!?」

本当にいいのかといった驚きで目を丸くしたソウジは快く木の実の袋を受け取って、中身の色とりどりを確認する。

「センゾウじいちゃんが言ってました、シンオウには良い木の実が育つって。…美味しくいただきます!」

焼け散ったオレンの花の腹いせか、エレザードはソウジが受け取った袋からとびきり新鮮そうな木の実を掠め取る。
味のほうは中々行けるのだろう、悔しまぎれに口をはげしくもぐもぐさせながら、答えをはぐらかしたライチュウの方に睨みを利かす。

「こ、これ…スターの実もあるじゃないか……」

袋の中を探っていたソウジが珍しい木の実の数々に目を光らせて、一瞬考えに耽る。

「エレ!」
「な、なんだよエレザード。おこづかいにしようなんて考えてないって!……ん?」

短パンの裾を引っ張るエレザードの手を慌てて振り払う。当のエレザードはどうだかなぁといった態度で腕を組んでいた。
――――――と、公園の周りを囲む住宅街の向こう、複数のサイレンの音が二人の耳に流れ込んでやってくる。
とてつもない爆発で辺りは滅茶苦茶だ。ジュンサーさんが飛んできても不思議ではない。面倒事を避けるなら、そろそろ別れ時だろう。
437ガイセイ◆fex0ajYp8c :2018/05/03(木)23:19:59 ID:697
>>436

("センゾウ"だと……?)

その言葉にガイセイは思わず両目を見開いた。とうとうソウジという名前が耳に残った理由を突き止めた。
センゾウ、ジムリーダー。エレキブルの使い手で相当な実力者だった。
あのジムリーダーには孫が居たと聞いていた。この少年がそうなのだろう。

(―――そうか。そういう事か。)

「―――金の卵ってわけか。」

ソウジにも聞こえない様な小さな、そして低い声でポツリと呟く。その表情には笑みが浮かんでいた。
この少年はもっと強くなるだろう。それ程の素質を秘めている。益してやあの老人の孫と来たものだ。
もしかすると、この少年はあの老人すら超えるトレーナーになるかもしれない。そう考えると武者震いが収まらなかった。

「……♪」

―――ライチュウがソウジの顔を見詰める。
ふと周囲に気を配ればサイレンの音。流石にこの騒ぎで誰かが通報したのだろう。まぁ仕方の無い事だ。
ガイセイはモンスターボールから一匹のポケモンを繰り出した。

(―――私をシティの都市部辺りに。この少年は何処か安全な所に飛ばしてやれ。
どうだ、出来そうか?)

「……ディン」

モンスターボールの光に包まれてまだその姿が見えない内に、そのポケモンは何かサイコパワーを練る。
直後、ガイセイの身体が光を帯びた。テレポートである。
その力はきっと、ソウジとエレザードにも及ぶだろう。

「安全な所までテレポートで送ってやるぜ。とは言っても、俺とお前が着く場所は違う場所だろうけどよ。
あれだ、つまりこれでお別れだ!また会おうな、ソウジ!」

「次は負けないぜ!」

「ライラーイ♪」

ガイセイとライチュウはソウジに手を振ると、二人の姿は光の中に消えて行った。
時期にソウジの身体も光に呑まれ、何処か安全且つ人気の無い場所へと転送されるだろう―――。
438ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)00:00:30 ID:vym

昼下がりのナナイタシティ。大通りに面した公園にキッチンカーが停まっている。
近づけばきのみのもつ芳醇な香りが漂ってくるだろう。どうやら移動販売式のお店を出店しているようだ。
展開しているキッチンカーの側面にはこの店の名を示す『Balmy Autumn』の文字。
シティの情報に通ずる者であれば、最近トレーナーズスクールの学生たちを中心に話題のクレープ屋、として名前を知っているかもしれない。

「お待たせしました~。こちら、『マゴカスタード』と『ミルククリームベリブ』です」

店主と思しき女性は、穏やかな笑みで一組の男女にクレープをそれぞれ丁寧に手渡して。
カップルが賑やかに公園奥へ去っていくのをお辞儀をして見送ると、どうやらそれで仕事にひと段落ついたようで。
カウンター前で二人組に手を振っていた一匹のポケモン、カリキリに視線を落とす。

「カリキリもおつかれさま。お客さんも落ち着いてきたし、そろそろ休憩にしようかしら?」

『きりりっ!』

嬉しそうに鳴き声を上げて飛び跳ねるカリキリ。それを抱き上げると頭を一撫でし、モンスターボールに回収する。

キッチンカーの周囲にはテーブルやベンチが一定数並べられていて、そこでは何人かの客が手持ちのポケモンや友人らと銘銘にスイーツを楽しんでいる。
彼らを幸せそうな表情で眺めながら、店主は次なる客が現れるのを待っていた。
439マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)00:15:24 ID:Nwa
>>438
学生の情報網は伝達が早く。
お得なお買い物情報や、人気のアプリ、妙に耳に残るEDMや妙な人……。
最近話題のスイーツ店ともあれば、通信端末を持ち、SNS等に触れていればすぐにその情報は入ってくる。

「お、ここやここや。」

スマートフォンとインターネット上の写真を見比べながら、公園へとやってきたのは一人の少女。
バトルばかりの日々からは想像もつかないが、彼女も年相応に、クレープなんてものは大好物だし、話題のお店に足を運ぶこともある。
丁度空いてきた時間らしく、これはラッキーとキッチンカーへと駆け寄る。

「すみませーん!注文ええですか?」

なんとも可愛らしいフォントで彩られたメニューをみながら、店員に声をかける。
既に鼻へと、甘酸っぱいような、それだけで幸せになれそうな香りが漂ってくる。
店員が対応するため顔を出すと、少女はメニューを見ながら尋ねる。

「これってポケモンも食べれるんですか?」
440ソウジ◆vbGLKljvKw :2018/05/04(金)00:16:27 ID:1OF
>>437

「――――きんのたま?」

ガイセイが中途半端に声を潜めたために、ソウジはあってはならぬ聞き違いをしてしまった。
…だがそんなくだらぬことを追求する間もなく、サイレンの音は反響を増してやってくる。
それでもどうやら大事にはならなくて済みそうだ。二人のポケモンバトルはテレポートで終幕となる運びらしい。

自分はまだガイセイの全力を見ていない―――、彼とはまた会える気がした。そして同時に、来るべき死闘への期待は高まる。

「はい!ガイセイさん、また――――――」

「エレッ―――――――」

光に包まれゆく視界の中、エレザードは消えかかった声で呟いた。
妙に苛立つあのライチュウ…そのぬくぬく肥えた土手っ腹に、次こそははかいこうせんを打ち込んでやると。


その日のナナイタイムズの夕刊は、『カシギ公園に謎のミステリーサークル?ウルトラビースト襲来か』のタイトルが1ページ目を飾ったそうだ。
441ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)00:34:46 ID:vym
>>439

「いらっしゃいませ~」

新たに訪れたお客さんに笑顔を向けながら、手のひらでカウンターテーブルのメニュー表へ視線を誘導する。
どうやらはじめて来てくれたお客さんらしい、ありがたいことだ、なんて思いながら。

「ええ。きのみを使ったメニューがこのお店の特徴ですので、勿論ポケモンでも食べられますよ~。
 お持ちのポケモンたちにも食べさせてあげてください。きっと喜ぶと思います」

テーブルのトレーナーたちも、ポケモンのために買い与えている者から自分の分をポケモンに分けてあげて居る者まで様々だ。

「おすすめは……そうですね、はじめてのお客様には定番の『生クリームチーゴ』、『ナナチョコレート』辺りでしょうか。
 最近は少し暖かくなってきましたから、さっぱりした味わいのノメルのみを使ったメニューもおすすめですよ」

もし少女が決めあぐねている様子であるならば、そんな助け舟を出すことだろう。
442マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)00:52:55 ID:Nwa
>>441
「おー、良かった良かった!」
「うわー、どれもええなぁ。悩むなぁ。」

ポケモンも食べれるとあれば複数個買ってもいいだろう。
ウチの手持ちだとあの子はアレが好きだし、この子はあれが……。考えはじめればキリがない。

「えっと、それじゃあその『生クリームチーゴ』とノメルのみのやつを一つずつで!」

店員さんの助け船に乗っかっる形で、2種類、注文することにする。

「よっしゃ。みんな出てきぃや。」

注文が通ると、彼女は自分の手持ちポケモンたちに声をかける。
すると、腰に下げられたボールから、3匹のポケモンが三者三様、それぞれ顔を出す。

アリアドス、デルビル、アシマリの3匹だ。
みんなもそれぞれ辺りに漂ういい香りに心躍らせている様子だった。
443ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)01:11:52 ID:vym
>>442

「ありがとうございます~。
 では、少々お待ちくださいませ」

そう言うと、クレープ生地を熱したプレートに薄く広げる。
片面が焼けてきたところでひっくり返し、すぐに調理台の上へ移す。
おっとりとした話しぶりからは想像もつかない機敏な動きだ。おそらく毎日毎日、何度も何度も繰り返して身にしみこませてきた技術なのだろう。

そんな作業をしている隣に、キッチンカーの奥の方から一匹のポケモンが現れる。
白と桃色というカラーリング、ファンシーな外見のホイップポケモン、ペロリームだ。

ペロリームは店主が焼き上げたクレープ生地の上に絞り袋で生クリームを絞りだすと、さらにカットしたチーゴのみを並べていく。
そしてそれが終わるころには店主が二枚目のクレープ生地を焼き上げる。流れるようなコンビネーションだ。

『ぺろり~!』

「ええ、ペロリーム。ありがとうございます」

そんな会話(?)もこなしながら、店主がクレープを折りたたみ、紙の包装で包んで完成だ。

「はい、お待ち遠様です。『生クリームチーゴ』と、こちらは『ハニーノメルシュガー』になります~
 お値段の方、2点で640円でございます。ごゆっくり召し上がってくださいね~」

現れた3匹のポケモンたちの期待に満ちた表情を見まわして、心を込めて告げる。
ペロリームも、『ぺろぺろり~!』と。言っている内容はおそらく同様なはずだ。
444マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)01:31:15 ID:Nwa
>>443
「へー、ポケモンもお手伝いしはんねや。」

奥から出てきたペロリームは、確かに図鑑にも『パティシエの手伝いをする』という記述がある。
しかし、実際にこうも手際よく作業しているのを見ると、改めて感動があった。

「ありがとうございますー!ほら、みんなどっちがええ?」

少女は支払いを済ませると2種類のクレープを受け取り、3匹の前に差し出す。
デルビルとアリアドスがノメルのみを使った爽やかな香りのするクレープに興味を示す。
カバンの中からポケモン用のお皿を取り出すと、『ハニーノメルシュガー』を2等分し入れてあげる。

「仲良く食べえや。それじゃ、アシマリ。ウチらはこっちもらお。」

『おしゃま!!』

2匹がそれぞれ嬉しそうにクレープに噛り付くのを見届けると、少女はアシマリを抱きかかえ、その口元にチーゴのみと生クリームが一杯のクレープを持っていく。
アシマリは目をキラキラさせると、嬉しそうにそれを一口。

「それにしても、本当にそのペロリーム賢いなぁ。」

少女はアシマリを抱きかかえたまま、店主とペロリームの方へ向きなおる。
445ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)01:50:12 ID:vym
>>444

ポケモンたちの嬉しそうな表情、雰囲気を見ているとこちらまで嬉しくなる。
食べる前のワクワク感、食べている最中の幸福感、食べ終わった後の満腹感。
それらすべてが作る側にとっても喜びになるのだ。

「ふふっ、ええ。私の自慢のパートナーですから。
 特にこの子とは、こうしてクレープ屋さんを開く前からのお友達なんです」

マユズミが興味を示せば、店主はやや恥ずかし気に、しかしそれ以上に誇らしげな表情で自らのパートナーポケモンを語る。

「だからこうして仕事をしていても息が合うんだと思います。
 お客さんも、ポケモン達とは強い絆で結ばれているように見えますね」

わざわざポケモン用のお皿を持ち歩いている辺り、きっと普段からそういったコミュニケーションをとっているのだろうと想像がつく。
自分のポケモンに対してそういった気遣いができるのなら、きっとポケモンたちもよく懐いているのだろう、と思って。

肝心のペロリームは、トレーナーがマユズミと話しているのをいいことに背後でチーゴのみをひとつふたつかすめ取ってつまみ食いしているのだが……はたして店主は気付いているのやら。
446マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)02:15:27 ID:Nwa
>>445
少女の腕の中でアシマリが口の周りを生クリームで汚している。
ちょっと、ウチのも残しといてや、と声をかけながら、続ける。

「まあ、特にデルビルとは長いこと一緒ですし。お互いの考えとることは何となくわかる気がします。」
「そのペロリームも楽しそうにしとるし、本当にパートナーって感じなんやろうなぁって伝わってきますよ。」

少女はチラリ、とデルビルの方を一瞥する。夢中になってクレープに噛り付いていたデルビルが、チラッとマユズミと視線を合わせる。
ちょっと頂戴や、とアシマリに声をかけ、少女もクレープを一口。
甘ずっぱい味が口いっぱいに広がる感じは、なるほど、ネットで話題にもなるハズだ。流石の美味しさだった。

「んー!!美味しい!!」
「ホンマ、最近災難続きやったから体に染みるわ。」

まるでオッサンみたいな言い方だが、これはこれで彼女なりの美味しい、の表現だった。
447ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)02:37:48 ID:vym
>>446

「付き合いが長いと、だんだんそうなってきますよね。
 そういって褒めていただけると嬉しいです。なんというか……励みになりますね」

それはペロリームとの関係性に関してもだが、クレープの味に関しても同様だ。
最近は、ありがたいことにインターネット上で口コミ的に拡散されて話題にしてくれることが多い。
そしてそれ以上に生の声を聞けるというのはとてもありがたいことなのだ。

「災難、ですか…?」

身体に染みる、という表現は彼女のような世代の女子が使うに似つかわしくないな、と胸中で思いつつも、口を衝いて繰り返すのはそんな言葉。
「災難」という言葉もまた、今どきの女子から出るにはなかなかに物騒だ。
近年、ポケモンを利用した悪事は世界各地でニュースとなっている。
この辺りでもバッドボーイのような集団が勢力を増しているという噂を耳にしたことがある。
ゆえに、店員と客という浅い関係でありながらも、年下である彼女に対して心配そうな表情を向けるのは自然なことであるといえた。
448マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)02:47:29 ID:Nwa
>>447
「もっと流行ったらキッチンカーじゃなくてお店持てるんとちゃいます?」

今回はたまたま空いた時間帯に来ることが出来たが、ネットでの話題は日に日に増している。
いわゆる『まとめサイト』みたいなところで特集されているのを見たこともあった。
素人目に見ても、益々繁盛するだろうし、流行っていくだろう。

「うん。」
「最近変な組織が夜中あちこちで歩き回ってるし。」
「この間は人に話しかけてくる暴れん坊の野生のポケモンとも出会うし。」

ここ最近、この辺りにも物騒な噂が飛び交い、チンピラが夜毎闊歩しているのを見かける。
怪しい組織があちこちで暗躍しているという話も聞く。

「店長さんも気を付けた方がええで。」
「人気のお店って、変な人もやってきやすいって言うし。」
449ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)03:06:38 ID:vym
>>448

「あはは、そこまで行くのはまだまだ先ですねえ」

キッチンカーなら出店する日だけの経費を考えればいいが、店を構えるとなればそうはいかない。
以前軽い気持ちで計算してみたことがあるが、文字通り桁が違って驚いたものだ。

「それにこのフットワークの軽さは気に入っているんですよ。自分が売りたいところへ売りに行けますからね」

勿論場所を確保するために許可こそ必要になるが、季節や時間帯などによる需要に応じて自分で売り場を移動できるのは大きい。
求められている場所へ自分から出向いて店を出しに行く。
そういったことができる点も移動販売ならではなのだと彼女は言う。

「人の言葉を話すポケモン、ですか…!?ペラップなどの声真似がうまいだけのポケモンではなく?」

前者はまあ、治安が悪いなあ程度で済む話だが後者はそれでは済まない。
店主にとって想像もしない話であったらしく、信じられないといわんばかりに目を丸くする。
450マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)03:18:27 ID:Nwa
>>449
「へぇ。確かにこういう公園で店構えてくれた方が雰囲気に合うとるかもなぁ。」

昔、地元の公園にもこういうキッチンカー形式のお店が来ていた気がする。
その時は、親の都合で買っても貰えなかったが。
それでも公園で子供が群がって、たい焼きやら人形焼きやらを買い漁ってる風景は、こういった公園にピッタリきた。

「うん。話すっていうか念力?で脳内に直接語り掛けてくる感じ。」
「なんというか、色違いのエーフィ?って感じ。凶暴で戦闘不能になってもトレーナーごと襲ってくるらしいわ。」

エーフィに襲われた後、ネットで喋るエーフィについて調べてみると、何件かの被害が報告されていた。
そうでなくとも、最近は少年が一人廃人にされたとか、物騒な話題が多い。
人気のあるお店なら、チンピラに目を着けられてもおかしくない。

「気ぃ付けてくださいね。ウチ、またこのお店来たいんで。」
451ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)03:38:59 ID:vym
>>450

「お祭りの時に屋台に並べたりもできますからねぇ。
 あと、お客さんとの距離が近いのもメリットの一つなんですよ」

店舗として構えてしまえば、サラリーマンがふらっと立ち寄ったり通りすがりの通行人が引き寄せられたり、といったことは少なくなってしまうだろう。
そういった偶発的な出会いを大切にしたいと店主は考えていた。

「なるほど、テレパシーで会話するエーフィですか。高度な知性を持っているのですねぇ」

ちょっと会ってみたい気もしたが、凶暴な性格ならば自分にはきっと扱いきれない問題だ。
それなら近寄らぬが吉だろう。

「ええ。私、バトルの方は本当にからっきしなので。そういう危ないことには極力関わらないようにしているんですよ。
 ふふ、ありがとうございます。それじゃあこれ、お渡ししておきましょうか」

また来たい、と言ってくれた少女に差し出したのは、やや手作り感の溢れるこの店のポイントカードだった。
名刺代わりにもなっているそれには、店の名前である『Balmy Autumn』と、連絡先の番号。そしてピスキスと店主の名が記されていた。
452マユズミ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)03:56:43 ID:Nwa
>>451
「お祭りかぁ。ええですね、子供とかいっぱい来そうやわ。」

こんな雰囲気のいいお店だと祭りでひときわ目立ちそうだ。子供たちが集まる様が浮かぶようだ。

「ポイントカード?ピスキスさんか……。」
「ありがとうございます!絶対また来ますね!!」

少女はそういうとポイントカードをヤドンがあしらわれた財布の中に大切そうに仕舞う。
こんなに良くしてもらったのだ。また来なければ申し訳ないとさえ思える。
変な輩に絡まれていたら、自分が助ければいいや、と楽観的に捉えていた。

「ほら、アシマリ。全部食えたん?」

『おしゃま!!』

口の周りにクリームやソースを着けて、アシマリは満足そうに返事をする。どうやらあっという間に完食してしまったらしい。
少女はハンカチを取り出すと丁寧にクリームを拭ってやる。
そして、後ろでも残りの2匹が綺麗にクレープを平らげたところだった。

「それじゃあ、ウチらそろそろ行きます。」
「ご馳走様でした。また来ます!!」

『おしゃま!!』

少女はそう言うと、ポケモンたちをボールの中へといざない、お皿を片付ける。
そして、軽く店主へと一礼すると、元気よく公園を後にしていった。
453ピスキス◆lSQnfoNoJk :2018/05/04(金)04:06:23 ID:vym
>>452

「ふふ、ポケモンたちにもご満足いただけたみたいですね」



「はい、ありがとうございました~。
 是非またいらしてくださいね」

ほわっと微笑んでお辞儀を返し、マユズミの背中を見送る。

気が付けば日が傾きかけ、テーブルの客足も疎ら。
それならば今日は後片付けに入ろうかと、気持ち御機嫌にキッチンの方の作業へ入っていくのだった。
454エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)23:15:28 ID:JGK
特に好きでもないのに、男は今日も煙草に火を着ける。
『悪ぶりたかった』子供の頃の名残なのだからなんでもいいのに、金マル以外は合わない、なんて言う。
裏路地で、チンピラに襲われたのであろう、気を失った恰幅のいい男性を見て、笑っているのも、名残か。

「どうも、ぼちぼち楽しくなってきそうじゃねえの。」

『ふるる……。』

足元で、ブラッキーが伏せた状態で男の方をちらりと見る。
ひょろ長い男だ。ハットを被ったそこからは、何もうかがい知ることが出来ない。
ブラッキーは密かに思案する。この目の前の現状を見て、彼は何を思うのか。
言葉通り、この街での『暗部』が活発になってきているのを楽しんでいるのか、過去に思いを馳せているのか。

「吸いなよ旦那。明日はホームランだぜ。」
「行くぜ、フェンガリ。」

男はそう言うと、まだ一口しか吸っていない煙草を、埃っぽいアスファルトの上に放る。
ブラッキーは一度欠伸をすると、立ち上がり彼の後ろをついて、裏路地を抜けだす。
最近物騒だから。そんな理由で人通りの無い通りに出た男性は、ここでもまた、一つの出会いをすることになる。
455ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/04(金)23:21:31 ID:qY8
>>454
「いやーっちょっとそのすいませんお金は実のところ一文も持ってないんですよいや申し訳ないことに」
「っせんだよグチャグチャくっちゃべってんじゃねぇ!」「金がねぇならポケモンなり技マシンなり出しやがれ!」
「殺されてーのかクソガキ!オオ!?」「あんま調子乗っちゃうとマジコロだよ?スマートホーンぶちこんじゃうよ?」

飴に群がる蟻のような光景
一人の頼りなさげな青年が土下座の体勢で集団に囲まれているではないか

「ああも、うっさいなぁ……無いものは無いんですってどーかこの通り、寛容に事を運んでくださるとですねー?」

不良の持っているココドラやストライクが青年をこづいて脅しをかけている
青年はいい加減うっとおしさを感じつつもポケモンを出して抵抗する様子もないようだった
456エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/04(金)23:31:44 ID:JGK
>>455
身内なのかは知らないが、チンピラによる、いわば『稼ぎ』中だったらしい。
彼らにとっては今晩楽しく過ごせるかどうかの境界線だ。死活問題なんだろう。なんだろうが、なんだろう。

「志が低いっつーんだよな。」

「オイオッサン今なんつった?」「舐めてんの?俺ら舐めてんの?」
「オッサン、コイツの代わりに金出せよ。」

別のエサが紛れ込んできたとでも思ったのだろうか。
男の何気ない呟きはどうやらチンピラたちの耳にも入ってきたらしい。

「ええ……。勘弁しろや。おじさんから毟るこたぁ無いだろ?」
「ちょっとそこの坊やもさ。絡まれてたのそっちでしょ?助けてよ。」

逃がさねえぞこの野郎、と男は土下座の少年に声をかける。
457キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/05(土)00:14:01 ID:nYs
>>430

傍らに歩み寄ってきたスパーダにもキャスタナは、精悍な目つきを緩めることはなく。
最初のぶっきらぼうな態度は消え失せ、パルシェンの高速機動を真剣に目で追っている。

『ギュルルン!!ドギャン!!ドギャン!!』

パルシェンは時折、キリキザンが全力移動できる、両足で動ける範囲に絞って偏差射撃を試みている。
加えて、その機動は土煙に紛れて常にキリキザンの死角に移動しながら、段々と近づいてくるのがわかる。
言うまでもなく、威力を上げるためと、カウンターの範囲を見極めるため。
目は血走ったままだが、見せる表情に一瞬、不適な笑みが見えた。キリキザンの腕の届くギリギリの位置に、パルシェンが急加速してくる。

「好きにして。聞き流しておくから」

彼女はバトルを観察しながら携帯のカメラで時折動きを取っている。
パルシェンが殻を破って動くことは彼にとってもすさまじい負担な筈だ。訓練だけでは得がたい動きが、今のバトルには詰め込まれている。

落ちた氷柱針は溶けながら、次第に地面を濡らしていく。ふとした位置にも、鋭く尖った氷柱の撒きびしが突き立っている。
458スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/05(土)00:41:36 ID:TMx
>>457
「そうかい?じゃあ勝手に話させてもらおう」

まるで会話になっていない、辛辣な言葉の裏にある拒否の旨を理解していないのか……否、彼は流石にそこまで空気の読めない人間ではない。
敢えて興味が無いと言われていようと話を続ける、何故かと問われれば、それは彼がバトルに対してどのように考えているかの違いだ。
スパーダにとって、ポケモンバトルに求めるのは『勝利』ではない、勝敗の是非ではなく、それ自体に付随する感情にこそ意味を見出している。

───つまり、彼はバトルをコミュニケーションの手段として考えているのだ、このバトルにおいてもキャスタナという少女とのコミュニケーションだと思っている。
故に会話を無理矢理にでも交わそうとする……だって悲しいだろう?折角自分が腕を掛けて絆を結んだポケモン同士を見せ合っているのに、褒め言葉の一つも交わされないなんて。

「彼はね、シンオウ地方を公演で回っている時に出会ったんだ」
「知ってるかい?シンオウ地方にキリキザンとコマタナは本来生息していないんだよ、にも関わらず僕は彼と出会った」
「───まだ幼いコマタナがたった一匹で、寒い森の中にいたんだ」

「───ザンっ!!」

視線で追うのがやっとの速さを、必死に死角に逃すまいと追いながら激しい攻撃に対応する。
一歩、また一歩と壁際に追い詰められながら、それでも攻撃する隙は見つからず、オマケに凍った地面が不意に脚に刺さってそれも細かいダメージを蓄積していく。
苛立ち、キリキザンの胸には焦燥とそれが段々と溜まって行き、ごく僅かながら少しずつ動きが大雑把になってきた。

「きっと、産まれてすぐに捨てられたんだろう、どこの誰がそうしたかはわからないけれど」
「何もわからない、家族も同族もいない土地で一人、それでも必死に彼は生きてたんだ」
「僕が最初に握手を求めた時も警戒されてね、あの時は大変だったよ」

「ザッ───!?」

懐かしそうに思い出しながら語るスパーダ、その目の前では激しい戦いに動きがあった。
キリキザンの目の前に突如としてパルシェンが迫る、不意に大きくなるシルエットにキリキザンは怯みながらも、右腕を振り下ろしてかわらわりで迎撃しようとした。
……が、やはり怯んだ分攻撃動作が遅い、パルシェンの素早さならその前にいくらでも攻撃を入れられるだろう。
459ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/05(土)01:10:26 ID:EOk
>>456

「えー」

案の定そそくさと逃げようとしていた青年はくるりと振り向いて、露骨に嫌そうな顔をした

「おじさん、僕そう言うの苦手なんですよ。
そっちこそ、そいつらぐらいなら軽く捻れるでしょ?わかりますよ、同じトレーナーとして、大体見れば
だからどうかここは――」

「テメェやっぱバカにしてんだよなぁこっちのことよぉ!?」「もう面倒だ、二人まとめてやっちまえ!」「テメーら明日の朝にはナナイタ湾でバスラオの餌だコラァ!!」


「あーもう」

どんどん状況はめんどくさくなっていく
ロータの腰にかけられたボールのひとつが震え始めた、もう我慢できないと言いたげに
しかたない。ポリシーを曲げよう、時には
そう思いながらボールを取り、ボタンを押す


瞬間、現れたグソクムシャが不良の一人の頭に向かって渾身の力で腕を振るった
周囲がしんとする。血がぽたぽたと垂れる音がする。良くわからない声をあげながらぺたりと尻餅をついた不良の一人の顔には、決して深くない傷跡が一筋

『グシュァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!』


殺されてーのかてめえらああああああああああああ
そんなところだろうか。

「あー、こいつ暴れたらトレーナーもポケモンもおかまいなしだけど、それでもやる?
いまの的はずしちゃっただけで、本当ならそこの彼は多分頭の原型止めてない」

ロータが痛む頭を抑えながらそう言うと、まず傷をつけられた不良が逃げ出し、他のメンバーもそれに追随して逃げ始めた

「……納得いかない。これで良いのだろうか」


ロータはそう言いながらいまだ興奮冷めやらぬ様子でハーハーと熱い息を吐くグソクムシャを撫でて、なだめると、ボールに戻した

「いや、全くご迷惑おかけしまして」

ふとエニグマにそう言う
460エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/05(土)18:34:52 ID:3dj
>>459
「uh-oh」

グソクムシャ。むしタイプらしからぬ怪力は有名なところだが、図鑑と実物では迫力が違う。
まるで相撲取りに全力でド突かれたか、軽車両とぶつかったかのようなエネルギー。
流石にチンピラ、逃げる様が板についてる。こうそくいどうで明日へと去っていくのは、見ていて爽快でもある。

「いやいや。すまねえな助けてもらっちゃったよ。」
「お互い災難だったってことかな。」

とはいうのはあくまで謙遜か。
お互いがお互い、悪党に襲われたとは思えない涼しい顔。災難を災難とも思ってない様子だ。
ブラッキーが足元に擦り寄ってくる。

「にしてもお宅のグソクムシャ、ありゃすげぇな。」
「あんな強力なのがいたら、お宅があんなチンピラ相手に頭下げる必要もねえんじゃねえのか。」
461ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/05(土)20:07:22 ID:pTj
>>460

「祖父母の影響でね」

脳内に、軍服をマントのように翻らせる祖父の顔が浮かぶ

「『ポケモンに頼るな、人間の事は人間だけで解決しろ』ってのがポリシーでして。あと僕のしんげんは極めつけにアレですから」

いまだ怒りを抑えきれていないようで、ぼたぼたと口からよだれが溢れている
なるほど、これを下手に振るえば、最悪死人が出かねない

「できるかぎり、謝ったりお金を渡して帰って貰うようにしてるんです、ああいう手合いは。今回は金が全くなくて弱りましたけどね」
462エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/05(土)21:34:55 ID:3dj
>>461
「立派なポリシーだが、命あっての物種って言葉もあるぜ?」
「とはいえ、あんな力をひけらかして暴れ回るだけのチンピラよりは幾倍人間が出来てるか。」

それに、こんな凶暴なポケモンが立ちはだかったら仕事がしにくくて仕方がない、と男は内心ありがたく思ってもいた。
ポンチョの裏から何かをゴソゴソと探す。

「それならこんな時間にこんなとこうろつくなって。俺が言えたことじゃねえがな。」
「まぁ、そんな手持ちがいるなら、いざって時は安心ってか。ほれ。」

そう言うと、男性はポンチョの中から何かを取り出し、少年へと放る。
手に取ればわかるだろうが、所謂換金アイテム、『でかいきんのたま』。
決して卑猥な意味合いは無い。

「助けてもらっちゃったからなぁ。こいつぁ『お礼』だ。」
463ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/05(土)21:43:09 ID:pTj
>>462

「……良いんですか?僕今かなりお金に困ってますから、貰っちゃいますよこれ」

と言いつつもすぐさまポケットにしまっている辺り彼のお金不足は結構深刻らしい
ここだけの話、回復薬なんて上等なものは使えないので道端に生っているオボンの実などを使っている

「とあるアイドルのライブを見に行こうと思いましてね
夜通し歩かないとちょっと間に合いそうもない距離だったので」

長い髪の毛をいじりながらそう言っていると頼りなさげな顔と合わさってオタク青年にしか見えない
いろんな意味で損をしている青年だった

「もっとも、入場料なんて無かったから高台にでも登ろうと思ってたんですが
おかげさまで、会場には入れそうですよ」

うふふふふ、と、笑う様子を見ていると、アイドルなんぞを追っかけている連中の中にはよく馴染めそうである
464エニグマ◆7LQ07W1ZOU :2018/05/05(土)21:53:54 ID:3dj
>>463
「あぁ。強そうなトレーナーには借りを作りたくない。後々面倒だからな。」
「俺も、金で解決できることは金に頼る主義でね。」

職業柄、今の仕事について以降はお金に困ったことは無かった。
先程の連中も、一人絡まれたなら半端な金を渡して済ませようと思っていたところだった。

「最近の若ぇ奴らのバイタリティはあやかりたいもんだね。」
「生活費削ってまで趣味に没頭できる気がしねえやおじさんは。」

オタク趣味、とは言わなかったが、あーいるいるこういう奴、程度には思っていた。
手持ちと似て、怒らせたら何するか分からないタイプだ。
正直、そこら辺のチンピラよりよっぽど怖い。

「そっか。止めちゃって悪かったな。」

なんにせよ、彼はこのまま夜通し歩いてその『アイドル』のライブに行くのだろう。こんなところで引き留めるのも申し訳ない。
465ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/05(土)22:19:13 ID:pTj
>>464
「あはは、でしょ? おじさんも捨てたもんじゃないとは思いますけどね」

別に趣味と言う訳ではなく、一度時間を共有したから故の義理なのだが、なんてヤボなことは言わない
だって世の中見た目が八割。ポケモンも見た目でタイプを間違えることだってあるのだから
そう見られたなら、そう見て貰っていれば良いのだ

「いえ、貴重な時間でしたよ。臨時収入もありましたしね、うふフふフフふフふ
じゃ、またどこかで――僕、基本はバックパッカーなんであちこち出歩いてます。見かけたら声でもかけてやってください

名前は――ロータ」

そういって、青年は踵を返すと、歩きだした
やっぱりひょろっとしたその背中は、どこか頼りない感じをたたえているのだった……

/ではこれで〆で!ありがとうございました!
466キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/05(土)23:02:01 ID:nYs
>>458

「・・・・・・ふぅん、孤児に手を差し伸べた、って所かしら。」
「――――じゃあ私は逆ね。」
「ポケモンを捨てた。一度じゃない。何度もね。」

キャスタナの口から、意外な話が引き出される。鋭い目線は全く変わっていない。
然し、怒気を伴っていたキャスタナの雰囲気が、元のニヒルな雰囲気に戻っていたのを感じた。

「この街に来る前の話よ……色んなポケモンがメタモンの培養層に入ってたわ。」
「卵は出来たらすぐ「HABCDSs」に入れるの。規定値に満たない卵はその場で破壊する。」
「閾値に達した卵が初めて孵化を「許可」されるの。そこからも「破棄」が”いくつ”も出るんだけど。」

柔らかい殻の上に振り下ろされるかわらわり。至近で放たれた棘が硬い手刀に両断される。
パルシェンは突っ込むその瞬間に、水を一点に集中させる。
体力的にこの一発が関の山だろう。

「可哀想だったわ。爆破任務でぼろぼろになったフォートレス。パージテストで使い物にならなくなったブローニングも見てられなくて。経年劣化で破壊処分になりそうだったエイブラムスもそう。」
「でもね、マスタングは手遅れだった。ミニミは発狂して手が付けられなくなった。あと、レキシントンね。彼のクレイジーさに付き合える奴なんかいないわ」
「そのあたりからかしら。私が「破棄」の数を数えなくなったのは」

白い飛沫が、一瞬視界を遮った。水圧が土やつぶてを濁流に変える。
飛び散っていた破片は小さな雨に変わり、キャスタナの髪を濡らす。
飛沫の後に残ったフィールド。パルシェンのその殻は、砲口から水滴を垂らし、土に棘が埋まったまま、沈黙していた。
467スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/05(土)23:34:27 ID:TMx
>>466
「……───」

やっと、キャスタナは自分から口を開いてくれた、彼女の事を聞き出して、その情報をどうするという事もしないが。
彼女がほんの少し歩み寄ってくれた事を嬉しく思う反面、その語られた内容に複雑な気持ちもあった。

「君は───」

スパーダがキャスタナに言った言葉の後半は、パルシェンがキリキザンに突っ込んだ事による衝撃音に掻き消される。
捨て身の一撃の威力は凄まじく、その反動もまた凄まじい、激しいバトルの結果は両者が倒れるという結果に終わった。
訪れる静寂、誰もが息を呑む中で雨に濡れ、スパーダはゆっくりと歩き出した。

仰向けに倒れたキリキザンに歩み寄り、優しく上体を起こしてかいふくのくすりを吹き付けてからボールに入れる。
キャスタナに振り向いたスパーダは、自分のポケモンが傷付けられたというのにも関わらず優しい眼をしていて。

「君の───いや、君達のする事を僕は悪いとは言わないよ、良い事とも言わない」
「その結果が何であるかを君が見て、感じ、決める事だ」

キャスタナに歩み寄りながら、やはりスパーダは彼女の事を肯定も否定もせずに、しかし確かな事としてそれがキャスタナ個人の行動でない事を見抜いたと取れる事を語った。
それから、マントの下からげんきのかけらを取り出し、キャスタナに差し出す。

「何はともあれ、ナイスファイトだったよ、お互いにね」
「これは僕からのお詫びとして受け取って貰いたい」
468キャスタナ◆mMItnivpDI :2018/05/06(日)00:18:54 ID:TUk
>>467

「ブロゥニン。あんたのパージテストの時を思い出すわね」

「・・・・・・ポタッ ポタッ ポタ」

力尽きたパルシェンは、ただ水音を鳴らすだけだった。
先ほどまで鼓膜を破壊するが如く轟音を響かせていた機関砲の、その無残に砕けた外殻を優しく撫でる。
パルシェンをボールに戻すと、フォレトスも硬く閉ざしていた殻を開け、安堵の息をついて転がりはじめた。
元よりパルシェンに鋼タイプは天敵だ。相打ちに持ち込めただけでも十二分に異常なのだ。

「ん。ありがと」

もう先ほどの覇気は消え、キャスタナのそれはいつもの気だるげな顔に戻っている。
差し出されたそれをフランクに受け取る。が、恐らく足取り的にはポケセンに戻るつもりなのだろう。
そして、すれ違いざまに、一言だけ言い残した。

「――――私の殻を破った代償、覚悟しておくことね」

顔は澄ましているが、闘争心に溢れた激情が、声色のそれから感じられていた。
フォレトスは転がり、パーカーの彼女は凝視するギャラリーに見向きもせず、静かに道場を後にした。
469スパーダ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/06(日)00:48:28 ID:7m7
>>468
道場を後にするキャスタナの背中を見詰めながら、スパーダは溜息を吐いた。
幾らかは打ち解ける───もとい、印象に残る事が出来ただろうか。
彼女の最後の言葉、それがこの結果に納得がいっていない事の証明だったとすれば、また会う事もあるだろう。

───〝君は優しいな〟

彼女の言っていた『選別』が事実だとすれば、そんな非人道的な行為は許されたものでは無い。
だが、彼女の個人的な話からはそんな非人道的な雰囲気は感じられなかった、むしろ彼女自身は見棄てられた存在を惜しみ、命を弄ぶ実験を良く思っていないようにも。
そうだ、そんなにもポケモンを命と思わない者に、あんな風にポケモンが付いていくものか。

「さて……と」

キャスタナを見送ってからスパーダは振り向き、道場の中の惨状を見る。
いくら日夜バトルが行われているとはいえ、ここまで酷く荒らされる事はそうそう無いだろう。

「……やれやれ、団長に怒られるなこれは」

苦笑いを浮かべながら、こうなってしまった原因でもあるスパーダは、道場の復旧に暫く時間を使った。
劇団の今日の稽古には遅刻しそうだ。
470ロータ◆33A2nm/b.SOC :2018/05/06(日)22:56:14 ID:8NA
「きょーぉもたーのしいスローラーイフーっと」

調子っぱずれに歌う青年、昼下がりの清流で水遊びするブラッキーとサンダース、魚を狙って息を潜めるグソクムシャ――。
自然をよくよく反映した光景。苔むした岩の上で寝転がって本をめくるロータは、ふと文から視線をはずし、それに微笑んだ。

「どうしようかな。僕もたまには釣りでもしてみようか」

悩むような言葉を放ちつつもボロボロの靴を脱ぎ、長い髪の毛を結んで珍しくデコッパチすたいるになって、バッグから釣りざおを取り出す。眼鏡も装備。瓶底マルメガネナード仕立てである。
なんとも陽気な雰囲気の中、火を囲む石の上に乗ったポットがこぽこぽと音を立てていた。
471キブシ◆ZlivUeMr0PTi :2018/05/06(日)23:11:19 ID:Hpw
「ひーふーみー……」

人目に付かない街の路地裏、乱雑に積まれた木箱に腰掛けてその男は札を数えていた。
これは今日の取れ高だ、街行く皆さんからスっ……〝少し分けて頂いた〟この金を元手に、夜の稼ぎに出る下準備。

「よーし、お前のおかげで中々稼げたぜ、今日の晩飯は豪勢に行くとするか!」

「ワタ~」

男の肩に捕まりヒョッコリと顔を覗かせ、札を見つめるのはエルフーン、モコモコとした綿毛を揺らし嬉しそうに目を輝かせている。

「……その前に、ちょっとコイツを倍にして来るか」
「そうすりゃもっと美味いもんが食え……あ?なんだよエルフーン」

「ワタ!ワタ!」

よっこいしょと木箱から立ち上がり、ポケットに札を